南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

エヴィス

ライトオンがエヴィスの別注品の販売を開始

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 お盆休みのころ、Eメールでお知らせがきた。
ライトオンのオンラインショップからである。

ライトオンでエヴィスジーンズの別注商品の販売を開始するそうで、その先行予約販売の案内である。

あのエヴィスがライトオン用の別注を作るというのでちょっと驚いてしまったのだが、これについて独断と偏見を交えながらあれこれ考えてみたい。

価格は通常のエヴィスより少し安い13000~16000円(税抜)。

素材は全型綿100%であり、ストレッチ素材は入っていない。

サイトで見る限り、4型である。

ワイドセルビッジ
テイパードセルビッジ
レギュラー
スリム

である。
そしてレギュラーとスリムはワンウォッシュと加工の2色ずつがあるから、全部で6種類ということになる。

予約期間は8月27日までで、9月下旬に届くことになっている。

すべての商品には男性モデルが着用しているが、それを見る限りにおいてトレンドとは一線を画している。
直接的に言えばトレンドとは無関係である。

スリムとなっているが、画像で見る限りにおいては、他ブランドのレギュラーストレートくらいの太さがあるように見える。
個人的にはこれにはちょっと食指は動かない。

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(スリム加工色)

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(スリムワンウォッシュ)


綿100%デニム生地を使っているのだから、ある程度の太さがないと動きにくい。
いわゆるトレンドの細身シルエットをこの素材で作ることは無理である。

さて、顧客ターゲットはどこだろうか?

筆者はマイルドヤンキー層ではないかと考える。
もしくはマイルドでないヤンキー層も含まれるかもしれない。

エヴィスは90年代半ばのビンテージジーンズブームで脚光を浴び、その後、ヨーロッパでのライセンス生産という戦略によって国際的に人気を高めた。
2002年の日韓ワールドカップの際、イングランド代表のベッカム選手が着用していたことから再び注目を集めた。

2005年くらいまではファッション層が着用することが多かったように思うが、2004年ごろからよりスタイリッシュな欧米プレミアムジーンズがブームとなり、ややトレンドからは外れた印象がある。
2008年からはストレッチデニム素材を使用した極細のスキニージーンズが人気となったことから完全に非トレンドブランドとなった。

この2005年前後くらいから、ファッション層が離れ、エヴィスの着用者は都心・郊外を問わずマイルドヤンキー層が主流になった印象が強い。
それから10年弱が経過している。
筆者はマイルド&マイルドでないヤンキー層向けのジーンズブランドというイメージが世間に定着したように感じる。

またエヴィスの直営店からもディスプレイや内装、外観すべてにヤンキー層志向を感じる。
同じビンテージ系ブランドのウェアハウスの直営店とはすべての印象が大きく異なる。


業績が伸び悩んでいるライトオンとしては、そのヤンキー層を積極的に取り込むつもりなのだろうか。
たしかにライトオンにはこれまであまり来なかった客層かもしれない。


ただ、それが実現した場合、店舗イメージは良くなるなると思うのだが、それはどう考えたのだろうか。


一方、ジーンズ業界全体を見渡してみると、エドウイン、リー、リーバイス、レディースのサムシング以外にナショナルブランドと呼べるジーンズブランドが消滅してしまっている。


必然的にライトオンだろうがマックハウスだろうがジーンズメイトだろうがこの4ブランドを扱うほかない。
そうすると、品揃えは同質化してしまい、あとは価格勝負になる。
もちろん販売定価が決まっているからむやみな安売りは自分の利益を削ることになるためできない。

やれるとしたら廃盤品の値引き合戦である。

新たに導入できるブランドは自社企画品くらいしか残っていない。

となると、トレンドは無関係だが、それなりに知名度が高いエヴィスはうってつけといえる。
エヴィスとしてもピーク時よりは確実に売上高が落ちているだろうから、ある程度の販売数量が見込めるライトオンとのタイアップは悪い話ではない。
単なるエヴィス側からのライセンス権供与だとしても、エヴィスにはライセンス料が入るから悪い話ではない。

かくして両社の思惑は一致したのではないだろうか。
まあ、あくまでも傍から見ていた感想であるが。

オランダのGスターは、現在、直営オンリーショップを全国で展開しつつ、ライトオンにも卸売りをしている。
実際の店頭でどれくらいGスターが売れているのかはちょっとわからない。
筆者もライトオンの店頭はよく覗くのだが、Gスターを手に取っている人はいつもほとんど見かけない。

しかし、ライトオン側とすればGスターを並べることで店のイメージアップを図ることができる。

おそらくエヴィス側もGスターの展開を幾分かは念頭に置いたのではないだろうか。

この取り組みが上手く行くかどうかはわからない。

Gスターのような安定的な取り組みになるかもしれないし、上手く行かないかもしれない。

トゥルーレリジョンというブランドがプレミアムジーンズブームのころに大人気だったが、今ではジャパン社さえなくなっており、日本では穿いている人はほとんど見かけない。

その最終局面前後の頃、ライトオンが9800円に値下げして大いに売りまくったことがある。

そんな風になってしまうブランドもある。












過去のテストケースを参考にしない不思議

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 以前から何度か書いていることの続きだが、高品質・高付加価値なので高価格になる、と言っても限度がある。
筆者が一番長く親しんだ分野がジーンズなのでジーンズを例にとって話を進める。

生地から縫製、洗い加工すべてを国産で行ったとして、日本で広く流通させるための価格は2万円台半ばが上限だろう。
もちろん、愛好家というのはどの分野にも必ずいて、金に糸目をつけない。
しかし、そういう愛好家の人数は少なく、市場としてはそれほど大きくない。

数万円のジーンズ、10万円のジーンズを何本か所有するのはよほどの愛好家であり、いくらファッション好きと言っても多くの一般人はそんな商品を複数本買うことはない。
そういうニッチな市場に対応するブランドがあっても佳いが、その市場で存続できるブランド数は限られたものにならざるを得ないし、1ブランドあたりの売上高も大きく成長することもない。

「俺ら、数人で細く長くやるぜ」というスタンスはありだが、どれだけのブランド数がそのビジネスモデルで生き残れるかである。

で、これはいくら欧米市場といっても構図は同じだろう。

アメリカ西海岸は世界のうちでもっとも高額ジーンズが動く市場だと考えられているが、その相場は200ドルである。ジーンズ業界では「200ドルジーンズ」と総称する。
1ドル=100円前後とすると、200ドルだと2万円内外ということになる。
わかりやすく言ってしまえば、2万円がその市場のボリュームゾーンだといえる。
決して500ドルでもないし、1000ドルでもない。
そういう商品も存在するが、それはごく小さな市場で、少人数の愛好家のための商品である。

200ドルの相場感覚は日米欧ともに共通なのではないかと筆者は感じている。

で、我が国のクールジャパン事業を振り返ると、日本国内価格で2万円以上するような商品を欧米に輸出しようとしているが、これは無茶な話だ。
輸出すれば現地価格は最低でも5万円になる。
これがそれなりの数量で売れるかというと、可能性はゼロではないが極めて小さいと指摘したい。

10数年ほど前になるだろうか、ビンテージジーンズブームの余熱が冷めやらぬ99年前後だったと記憶している。

当時まだオリゾンティが展開していたジーンズブランド「ドゥニーム」がイギリスに輸出したことがある。
当時のレートだとイギリス現地価格は5万円どころではなく、6万~7万円にもなった。
結果は大惨敗である。

一方、エヴィスも同じ時期にヨーロッパに進出した。
エヴィスは輸出ではなく、ヨーロッパ企業にライセンス生産を認めた。
その結果、現地価格は日本と同じ2万円前後に収まった。
エヴィスはヨーロッパで人気となり、イングランドのベッカム選手が着用したことで日本でも再ブームが起きた。

当時のドゥニームも決してクオリティの低いブランドではない。
しかし、5万円を大きく超える価格帯では欧州では売れなかった。

年数は少し過ぎているが、市場の反応は現在でも同じだろう。

10年ほど前に答えが出ていることを、何故今更またやるのかと不思議でならない。
10年前に5万円オーバーのジーンズは大惨敗し、2万円のジーンズはそれなりに売れたという結果が出ている。
再試行してみたところで答えは同じになる。

業界のエライ方々も行政のエライ方々もなぜこの2ブランドの事例に倣おうとしないのか不思議でならない。

ジャパンジーンズを輸出して欧米に根付かせたいのなら、いきなり500ドル市場を創出するという超難関に挑むよりは、間口の広い200ドル市場に参入する方法を考える方が成功する確率が高いと思うのだが。

幸いにして日本製デニムの知名度は欧米でも鳴り響いている。
生地、縫製、洗い加工のすべてが日本製で、たったの200ドルという文言は欧米人の心にも響くと思うがいかがだろうか?

低価格SPAによってジーンズは本来の位置付けに戻った?

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 ファッション雑誌や一般メディア、コンサルタント会社の方とジーンズについてお話をすると、ちょっと勘が狂うことがある。
どうもビンテージ系ブランドを過大に評価されているのではないかと感じる。

エヴィス、旧ドゥニーム、ダ・ルチザン、フルカウント、シュガーケーン、ウェアハウスなどなど。
最近だと桃太郎ジーンズやサムライジーンズなどもこの範疇に入るのだろうか。

いわゆる「こだわりのジーンズ」ブランド群である。

先の方々からすると「ジーンズ」といえば「こだわりのビンテージブランド」という構図になることが多いらしい。

しかし、業界記者的見地からするとそれらの市場シェアはかなり低い。
とくにこの数年はさらに低下した。

先に挙げたブランドだが、どれも年商規模は2億~10億円内外である。
最大のエヴィスですら某コンサルタント会社によると「50億には届いていない」という。

年商規模が小さいから存在価値がないということではない。
そういうニッチな市場があっても良いとは思うが、業界を左右するほどの影響力は無いということである。

ファッション雑誌や一般メディア、コンサルタント系の方はここを「業界を左右するほどの影響力がある」と考えていらっしゃるフシがあるので、話がかみ合わずに勘が狂うことになる。


現在の繊維産業というものは量産体制が基本となっているため、生産・販売数量が多いブランドが業界に対して影響力・発言力を持つことになる。
かつてだと、それはジーンズ専業メーカー各社だったが、今ではそれがユニクロやポイントなどのSPAブランドに移っている。


個人的には、ビンテージ系のブランドが年商100億円を越えるほど大きくなることは、今のやり方を続けて行く限り、今後も無いと考えている。
もっともそういうブランドを展開されている方々は、大きくすることをそれほど望んでいられないとは思うが。

まず、価格が高い。
価格については、高くしても売れるなら高いにこしたことはない。
無理に安くする必要も無い。
しかし、消費者がジーンズという衣料品に対してどのようなイメージを持つかだが、
作業服という出自を持つカジュアルパンツと捉えた場合、そこまで高い商品を渇望している人がどれだけいるかということである。
1万5000円以上するジーンズを欲しいと熱望する消費者は、それほど多くないと考える。

大多数の消費者は1万円弱くらいが妥当だと考えているのではないだろうか。

次にイメージである。
物作りを前面に打ち出して、糸、生地、染料などへのこだわりが伝えられている。
個人的な印象だが、ちょっと民芸品や伝統工芸品に近いのかな?と感じる。

高額な伝統工芸品を欲しいと感じる消費者はそれほど多くあるまい。

最後にあまりトレンドに左右されない。である。
トレンドに左右されないのはブランドとしては重要な要素ではあるが、されなさすぎるのもまたファッション衣料ではなくなる。そのバランス感覚が難しい。
だから熱烈な支持層はできるが、広がりにくいという側面もある。

しかし、こういうジャンルも業界には必要とされているのは間違いない。

話を戻すと、ファッション雑誌や一般メディア、コンサルタントの方が「ジーンズといえばビンテージ」というイメージをいまだに持っていらっしゃるのが話をややこしくしている側面がある。
今のジーンズは低価格SPAのおかげで「そこそこ安い割には丈夫で着回しの効く、気軽なカジュアル」という位置づけであろうか。
これについて「嘆かわしい」という意見があるのは承知している。
けれども、先ほども書いたようにジーンズの出自は作業服である。
作業服に高額な出費をしたい人間はそうはいない。
そんな人間が多数いるなら今頃、福山市周辺に点在するワーキングユニホームメーカー各社は儲かって仕方が無い状態だろう。

作業服を出自とするカジュアルアイテムは、「そこそこに安くて丈夫なこと」が本来のコンセプトと合致する。

そういう意味において、低価格SPAは本来の姿にジーンズを戻したという側面もあるのではないだろうか。



エヴィスとドゥニームの欧州進出の差

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 ジーンズと言えば、ビンテージレプリカ系のブランドにもすこーし言及したい。
90年代半ばにビンテージレプリカブームがあった。エヴィスやドゥニーム、シュガーケーンなどが人気だった。しかし、そのブームも3年ほどで終わる。2000年には完全に終息していた。
ブームが終わって生き残ったブランドはそう多くない。

そんな中、2002年の日韓ワールドカップで再び「エヴィス」が注目を集めた。イングランドのベッカム選手が愛用していたからだ。

他のビンテージ系ブランドを見てみると、「ダルチザン」はビンテージの先駆けのようなブランドだったが、90年代半ばにはすでに経営譲渡されており、創業者は手を引いている。その時から、経営権は児島の洗い加工大手、晃立に渡っている。現在も晃立の社長がダルチザンの社長を兼ねている。
ダルチザンはビンテージブーム時でも売上高数億円で推移しており、現在もあまり変わっていない。


2000年代前半には販路を拡大していたフルカウントも経営は厳しく、自社ビルを手放し、直営店の大半を閉店した。古株のスタッフもほとんど入れ替わってしまった。

一方の雄であった「ドゥニーム」もオリゾンティから再三の移籍を繰り返し、現在はウィゴーにブランドを買収されている。創業時のメンバーは誰一人残っていない。

現在も比較的堅調に見えるのは、先述したエヴィスとウェアハウス、「シュガーケーン」を展開する東洋エンタープライズくらいではないだろうか。
これほど、ビンテージ系ブランドの市場は狭い。


エヴィスの躍進とブランドステイタスの確立は、ヨーロッパ市場進出が成功したからだと感じている。ベッカム選手の目にとまったのもヨーロッパ進出がある程度成功したからであろう。最近では、覚えている方も少ないかもしれないが、2000年前後の同じころに、ドゥニームもヨーロッパ進出に取り組んだことがある。
ドゥニームは結局、成功せずにヨーロッパから撤退したのだが、エヴィスと明暗を分けた部分はどこなのだろうか?


それは両社の販売戦略の違いであった。エヴィスは欧州の現地企業にライセンス供与し、現地企業がライセンス生産した。一方、ドゥニームは日本からの輸出で対応した。これによって、両ブランドの現地価格は天と地ほど開いてしまうことになる。
エヴィスは現地生産であるため、日本とほぼ同じくらいの価格(1万9000円前後)で販売できた。
ドゥニームは日本からの輸出になるため、関税がかかり、日本価格の2~3倍の値段になってしまった。イギリスでの価格は日本円にして7万円前後になったという。

いくら高品質であるとは言え、7万円のジーンズにはちょっと手が出ない。日本では熱心なビンテージマニアもいるが、欧州にはそこまでのマニアはあまりいない。話題にはなるが、実際はあまり売れない。


ヨーロッパ進出の手法を見ても、エヴィスの戦略・戦術は効果的だと言える。数あるビンテージブランドの中から頭抜けた企業規模に拡大したのも今からすれば、当然だったと思える。
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