南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

イーブス

髙い事業計画を掲げる新生イーブスの勝算は?

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 会社清算された遊心クリエイションのSPAブランド「イーブス」の商標権をはるやま商事が買い取った。

はるやま商事が「イーブス」を取得
https://www.wwdjapan.com/business/2016/06/28/00020869.html

はるやま商事は7月、新たな子会社を設立し遊心クリエイションが運営していた「イーブス(YEVS)」の商標権を譲り受ける。新たなターゲットは28~45歳の女性。価格帯はトップスが2000~6000円、ボトムが3000~7000円などを予定する。今秋から、年間5~10店の出店を計画し、5年後に売上高100億円を目指す。

とのことである。

それにしてもはるやま商事は、廃止・倒産ブランドの引き取り専門業者になった感がある。
倒産後、ポイント(現アダストリア)に引き取られながらそこでもブランド解散に追い込まれた「トランスコンチネンツ」、倒産したテットオム、ジャヴァで畑違いの異色メンズブランドだった「ストララッジョ」をすでに引き取っている。
このラインナップに今度はイーブスが加わったわけである。

イーブスは今後どのような展開をするのだろう?
個人的な予想を書いてみたい。
遊心のころはメンズ、レディースの複合ブランドだったが、この記事を読む限りにおいては、レディースのみの展開となりそうである。価格帯は遊心のころとほとんど変わっていないので、販路は、ショッピングモールと一部のファッションビルとなるのではないか。だとするとこれも遊心時代と変わらない。

年間5~10店舗を出店して5年後に100億円体制にすると書かれているが、5年後は25~50店舗になっているということである。
1店舗あたりの平均売上高は2~4億円ということになり、これはかなり高いハードルといえる。

最盛期のイーブスは40店舗強あり、売上高が20~30億円だった。
店舗数はほとんど変わらず、3~5倍の売上高を目指すというのだから計画達成はかなり難しそうだ。

商品単価が高ければ達成はまだ容易だが、単価も低価格のままでほとんど変わらない。
なら売れる枚数を3倍増くらいにさせないと計画は達成できない。
かなり厳しいと言わざるを得ない。

スーツの「はるやま」内部でも売るのじゃないかという指摘があるが、これはちょっとピントがズレているのではないか。過去に引き取ったブランドでそのような展開をしているブランドはない。
別店舗として運営されている。ストララッジョもテットオムも相変わらずファッションビルに単体店舗として継続されている。

トランスコンチネンツはほとんど鳴かず飛ばずで見かける機会もほとんどないままに何年も過ぎているが、これはさすがに再生不可能なのではないか。


末期の遊心は卸売りブランドをすべて廃止し、SPA型の3ブランドを展開していた。
雑貨のASOKO、このイーブス、レディースのグランデベーネである。
ASOKOは早々にパルが引き取ることを決定した。スリーコインズを社内最大のブランドとして展開しているパルにとっては親和性が高いからである。

残り2つのブランドの引き取り先がなかなか決まらなかったが、イーブスが今回決定した。
残念ながら規模が小さく、もっとも話題性に欠けたグランデベーネはこのまま廃止になるだろう。

イーブスが今まで引き取り先が決まらなかった原因は、「鶏肋」だったからではないかと見ている。
鶏肋とは三国志からの逸話である。

曹操と劉備は漢中という土地を巡って激突するのだが、戦下手の劉備が珍しく優勢に軍を進め、曹操軍は苦境に立たされた。
どのようにすべきかと考えたときに、曹操は「鶏肋」と言ったのである。

鶏の肋(あばらぼね)は食べようとすると肉はないが、かといってしゃぶれば旨味があるので捨てるのは惜しい。漢中はそういう土地だというのである。
それを踏まえて曹操は漢中を放棄して撤退した。鶏肋を捨てて損切をしたといえる。

個人的にはイーブスはこの鶏肋だったと感じている。
すごく美味しくはないが、捨てるには惜しい。そんな立ち位置だと思う。
40店舗・30億円という規模のSPAブランドは捨てるには惜しいが、すごく美味しいというわけではない。

その鶏肋をはるやま商事が拾った。

かつての遊心のメンバーはとうの昔に散り散りになっているので、運営メンバーは一新される。

ただ、ブランドとしての立ち位置は新生イーブスは難しいのではないかと感じる。

遊心がイーブスを開始したのは2008年。これはフォーエバー21やH&Mなどの低価格グローバルSPAが上陸した年で、低価格高トレンドという部分が日本の消費者に大いに受け入れられた。イーブスはここの取り込みを狙って立ち上げられており、それはある程度は成功した。

しかし、それから8年が経過している。

低価格高トレンドというブランドは国内にも多数現れている。
それぞれテイストは異なるが、ジーユー、ウィゴーなどである。
タイムセールの鬼、アースミュージック&エコロジーもその範疇だろう。
アダストリアの各ブランドもそうだ。
また急成長中のアーバンリサーチのセンスオブプレイスもある。

中でもジーユー、ウィゴーの成長ぶりは目覚ましく、ジーユーは近々売上高2000億円に手が届くだろう。
ウィゴーも200億円を突破している。

イーブスが開始された当時のように真空状態の市場ではなく、かなりの強豪がひしめき合うサバイバル市場といえる。後発となる新生イーブスがその中に割って入って、売上高を稼ぐのは容易なことではなさそうだ。
はるやま商事と新生イーブススタッフの健闘を祈るほかない。

さて少し横道にそれるが、紳士服チェーン店各社の方向性がこれであらかた出そろったように思う。

青山商事
AOKI
はるやま商事
コナカ
オンリー

である。

メンズのスーツは今後需要が増える要素がない。

1、団塊の世代の定年退職で需要人口が激減する
2、オフィスのカジュアル化によってスーツ需要が減る

この2点が理由である。

そこでこの5社はそろってレディーススーツを強化した。
男がだめなら女も取り込もうという判断である。
人口の半分は女性なのだから、男性需要が減った分を上手く取り込めればカバーできる。
そしてその女性客狙いはそれなりに効果を出した。

レディースのオフィススタイルはメンズほどドレスコードが明確ではないから、かなりあやふやである。
メンズ並みのスーツスタイルもありだし、極めてカジュアルな服装も受け入れられる。
それゆえに、今までレディースのスーツ販売店というのはかなり少なかった。
この5社が販売してくれて助かっているという女性客は意外に多い。

しかし、その市場も開拓しつくした。
次はどうすべきか。

青山商事とはるやま商事はカジュアルの強化を選んだ。
残り3社はカジュアルには乗り出していない。

AOKIはウエディングなどの異業種に乗り出した。
一度カジュアル強化を開始し始めたのだが、失敗した。
マルフルという地域カジュアルチェーン店を子会社化したが、店舗は閉鎖され、実質的に活動は中止となっている。

コナカとオンリーに新しい動きは見えない。
コナカが何年か前に東南アジアに「スーツセレクト」を出店したくらいだろうか。

青山商事は、リーバイスストアのフランチャイズ展開とアメリカンイーグルアウトフィッターズの国内展開を手掛けている。
なぜかあまり話題とならないが、アメリカンイーグルを日本で運営しているのは青山商事と日鉄住金物産の合弁会社なのである。

はるやま商事は先にも書いたように廃止・倒産ブランドを引き取っている。

両社に共通しているのは、すでにある程度のネームバリューのあるブランドを導入するという点である。
これは畑違いの両社にはカジュアルブランドを開発するノウハウがないため極めて当然の選択だろう。

正確にいうと青山商事にはオリジナルのブランドがある。
キャラジャとユニバーサルランゲージである。
しかし、キャラジャは拡大し損ねたままで鳴かず飛ばずだし、ユニバーサルランゲージも成長しているとは言いにくい。この両ブランドを見ていると、オリジナルでのカジュアルブランド開発はやはり不得手なのだと感じる。

なにはともあれ、紳士服チェーン店各社の熾烈なサバイバルゲームの行く末がどうなるのか見守りたいと思う。










イーブスが成長するための課題

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 創業者である森島純嗣氏が退職をして完全新体制となった遊心クリエーションだが、2月24日の繊研プラスに現状と今後の方針に関する記事が掲載された。

遊心クリエイション各事業の基礎固め
http://www.senken.co.jp/news/yushin-creation-kuboki/

卸売り事業を廃止してしまったので、現在のところ、同社の最大の柱はイーブスである。
そのイーブスだが、個人的には伸び悩みが続いていたと見ている。

レディス・メンズのウエアと雑貨のイーブスは、期初に39店あったが不採算の7店を閉め、32店にした。販売面では従来は8割の店で販売代行に任せていたが今は2~3割に減らした。直営化することでモチベーションが上がり、前年比4割以上伸ばす店も出てきた。

とのことである。

イーブスの特徴は低価格でトレンド性の高いことにある。
いわゆる低価格SPAだが、販売に関してはこれまではほとんどが販売代行に任せられてきた。

改善すべき課題として挙げられるのは、まず店舗数が少なすぎることである。
低価格SPAを実現するキモの部分の一つには、圧倒的な生産数量で1枚あたりの製造コストを下げるということがある。
洋服は工業製品であるから、生産数量が多くなればなるほど1枚当たりの製造コストが下がる。
例えば、1枚きりのサンプルを縫製するなら、工賃は安くても数万円になる。
しかし、これが100枚になると1枚当たりの縫製工賃はグンとさがる。

だから低価格商品を実現するためには生産数量を圧倒的に増やすことが近道となる。

しかし、イーブスの30店という規模では生産数量はそれほど多くない。
1店舗あたり1アイテム20枚ずつを配布するとしても600枚にすぎない。
そのために、繊研の記事中にあるように、「これまでは重点アイテムを作りこんで売る〝たて売り〟の手法」を採ったのだろう。
そうしないと生産数量が増えないからだ。

これからも「低価格SPA」を掲げるつもりなら店舗数を急ピッチで増やすことが求められる。
早々に100店舗体制を構築する必要があるだろう。

1店舗出店するのには莫大な費用が必要だから、売上高58億円の会社では急ピッチでの出店は難しかったと思うが、昨年11月に日鉄住金物産の100%子会社化されたのなら、少なくとも資金面での心配はなくなった。
ただし、日鉄住金物産がどこまで本腰を入れる気なのかにもよるが。

同じ課題は、雑貨店「ASOKO」にも共通である。
現在4店舗を展開しているが、オリジナル商品を製造するなら生産数量が少なすぎる。
雑貨類は衣料品よりも生産のミニマムロットが大きいから4店舗くらいではまったく製造コストに合わない。
早急に店舗網を拡大する必要があるが、単に出店すれば良いというわけではなく、物流システムの構築も必須だから一足飛びに増やすことはかなりの力技が求められる。


次に、ブランドコンセプトの刷新が必要ではないか。
イーブスがスタートした当初のコンセプトは「低価格トレンドSPA」だった。
筆者も何度か取材したが、ブランドの冠言葉は「低価格SPAブランド」だったので、そのように書いたら媒体側から「こんな冠言葉で良いんですか?」と再確認された記憶がある。
そこで再度ブランド側に問い合わせると、「そのままの冠言葉で結構です」という返答をもらって一件落着したということがあった。
何しろ、ブランド側からいただいた正式書面にそう書いてあったのだ。

ブランド開始からすくなくとも5年以上が経過している。
スタート当初は、低価格SPAの多くはユニクロに代表されるベーシック商品が多かった。
トレンド対応は外資系のH&M、ZARAくらいだった。
しかし、現在はトレンド対応の低価格SPAブランドも増えた。


そうなると、単なる「トレンド対応の低価格」というだけでは他社に埋没してしまう。
もう一つ何かプラスアルファの打ち出しが必要となる。
それをどう設定するかが課題だろう。


それと、販売代行を減らして直営店比率を増やしたというが、これは士気向上には役立ったが、販管費が大幅に増えたことになる。
このあたりのバランスを現経営陣と日鉄住金物産はどう考えるのか。
コスト面だけを見ると増えることは間違いない。
それを「必要経費なので問題ない」と見るのか、「それでもコストは削減しなければならない」と見るのかは経営陣と親会社次第だろう。



これらの諸問題を放置したままでは成長はありえない。
なんとかうまく処理して成長してもらいたいと思っているのだが。





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