業界のニュースを読んでいると、ちょこちょこわけのわからないネタにぶつかることがある。
媒体側のまとめ方が下手くそな場合と、ネタを発信した企業やブランドの組み立てが極めておかしな場合との2つがある。

先日、企業やブランド側の組み立てが極めておかしいネタを読んだ。

オンワードがEC専売のシャツブランドを始動 「五大陸」がプロデュース

https://www.wwdjapan.com/476309

なのだが、ちょっと見てみよう。

オンワード樫山が10月20日、シャツに特化したEC専売の新ブランド「THE T.I.E」をローンチする。「世界で一番“ワイシャツ”が揃う店」をテーマに、着まわしのきくベーシックなドレスシャツを約500型用意する。同社ブランドの「五大陸」がプロデュースを担当し、価格は6300円から。ビジネスパーソンをターゲットに、自社ECサイト「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET.)」のみでの販売を予定する。

これを読んだ方々はどういう感想を持たれたのだろうか。

正直、当方はちょっとわけがわからないなあという感想しか持たなかった。

まず、新ブランドをオンワード樫山のスーツブランド「五大陸」がプロデュースするという点。
ブランドをブランドがプロデュースというのはちょっと聞いたことがない。個人やそれに近しい少人数グループが展開しているデザイナーズブランドや小規模ブランドがプロデュースをするというのなら、まだわかりやすいが五大陸のような大手ブランドが新ブランドをプロデュースというのはちょっとピンとこない。

プロデュースというからには、個人や少数グループにさせるべきで、大手ブランドのプロデュースというのは単なる言葉遊びではないかと思う。

それなら、もっとわかりやすく、五大陸の派生ブランドとか兄弟ブランドとかという位置づけにした方がよかったのではないか。

それに、そもそも「五大陸プロデュース」が注目を集めるかというと、そこも疑問だ。はっきり言って、メンズスーツブランドの中では極めて知名度が低く、存在感がない。きっと10代・20代の消費者ならブランド名も知らないだろう。

以前に、小島健輔さんが「五大陸の知名度が低下している」という内容のブログを書かれていたが、まさしくその通りで、47歳たる当方だってスーツを買うときに五大陸は選択肢に入れていない。というより、平素暮らすうえで、五大陸のブランド名なんて思い出すこともない。まだレナウンと合併させられたダーバンの方が知名度が高いし存在感もあるのではないかと思う。

つぎに疑問なのが、新ブランドのブランド名だ。
シャツ専門のブランドなのに、なぜブランド名が「THE T.I.E」なのか?これではまるでネクタイブランドではないか。ネクタイをメインにしながらシャツも売るというならわかるが、このブランドはシャツブランドであり、ネクタイも扱うのかもしれないが、それはあくまで従属的だ。メインはシャツなのだから、もっとシャツとわかるブランド名にすべきではないか。

このあたりの組み立てははっきり言って、わけがわからないし、消費者だって理解しづらいだろう。

このことに疑問を先んじて呈していた記事がある。

https://note.mu/fukaji/n/nff7709a31acd?creator_urlname=fukaji

概ねその疑問には賛同である。

ただ、価格のことはちょっとだけ異論もある。

ツープライスとは競合するつもりがないのだと思う。ツープライスのシャツは2900円と3900円で、さすがにそこは競合とはしていないのだろうと思う。ただ、6300円という価格設定はどうなのかなあという点は同感である。

5000円の鎌倉シャツがあり、1300円高いというのは果たしてどうなのか、なかなか消費者には選んでもらえないのではないかと思う。
一部過剰に報道されているきらいがあるとはいえ、鎌倉シャツは5000円というリーズナブル価格だけでなく、自社縫製工場もあり、物作りの背景もしっかりと伝えられており、多くの消費者にも認知されている。その部分が付加価値となっている。

果たして、そういう付加価値をオンワード樫山が作れるのだろうか?というところが極めて疑問でしかない。
1300円高いということは、鎌倉シャツを越える付加価値を作る必要があるということで、それが容易く実現できるとは思えない。
かなり難しい作業になるが、オンワード樫山はそのことを理解していないのではないか。

オンワードお得意の百貨店を含む商業施設内への出店なら偶然通りがかったお客に見つけられて認知してもらえる可能性があるが、今回はECのみでの販売となる。
EC市場の成長率を見て、続々と参入しているが、ポっと出のブランドなんてネットで検索してくれる人はほとんどいない。ネットショップが何百万店とある中でどうしてわざわざ知名度も注目度もない新ブランドが検索してもらえると思うのだろうか。不思議でならない。

そのことを考慮しての「五大陸プロデュース」なのかもしれないが、残念ながら五大陸もそんなに注目されていないから、ネットで検索されることは極めて稀だろう。この1年で五大陸をネットで検索した人ってどれだけいますか?

となると、そこにたどり着く人はかなり少ないということになる。

ECはどれだけ人をネットで集められるかがカギとなるが、オンワードという名前でも五大陸という名前でもそれだけではほとんど効果がないことを知るべきである。
他方、ユニクロやジーユー、ZOZOTOWNなどはますますネットでの集客に力を入れて新たな機能を持たせている。EC草創期なら「単に開きましたよ。昔の大手ブランドですよ」というやり方でも良いが、すでに成熟期に差し掛かっていて、ネットでの戦略は極めて高度化している。その中に新規参入するということは、先行する大手と同等以上の大規模戦略が不可欠で、それがなければネットの海に埋没してしまうだけである。

おそらくはそれなりの対策は考えているのだろうとは思うが、これまでの大手アパレルの常識は一切通用しない世界だということを再認識して取り組まねば、確実に失敗に終わってしまう。

再度、組み立てから見直すことをお勧めしたい。

NOTEを更新しました⇓
「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

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