「アパレルは水商売」という言葉を良く聞く。
確実性が無いという意味で「水商売」といわれるのだが、これはものすごく正しい。

アパレル企業の経営は好不調の波が激しく、つい最近まで好調だったアパレルが、いきなり倒産することも珍しくない。

つい先日、最終回となった読売新聞連載のコラム「ニュースで学ぶNGスタイル」にその辺りが触れられているのでご紹介したい。
http://otona.yomiuri.co.jp/pleasure/fashion/110927.htm

レディースファッションの「ララ・プラン」が8月31日、倒産しました。ギャルファッションの代名詞「厚底」を覚えている方なら、“厚底”ブームに火をつけた会社といえば、おわかりになるかもしれません。09年2月期の決算では125億強の売り上げがありましたが、そのわずか2年半後に70億弱の負債を抱え民事再生法の適用を申請することになったのです。

 1994年に東京・渋谷のファッションビル「SHIBUYA 109」に「LOVE BOAT」ブランドの1号店を出し、その後、破竹の勢いで成長、絶頂期には月間の坪当たりの売り上げが300万円近かったように記憶しています。もしかしたらそれ以上だったかもしれません。

とのことである。
このララ・プランという社名は聞きなれない方が多いかもしれないが、基幹ブランドは「LOVE BOAT」である。
109を始め、OPAなどヤング向け商業施設では良く見かけるブランドだ。

そして、このコラムでも触れられているように、109系のブランドは全般的に経営基盤が脆弱であり、大ヒットを飛ばしたブランドでもわずか数年後に市場から退場することは決して珍しくない。

例えば、今年5月に「ギルフィー」を手掛けるギルド・コーポレーションが、営業不振を理由に1円(何億円もの負債も込みなので売価は1円)で親会社のフルスピード社からサンフランシスコ社に売却されたのを皮切りに、6月に「ジョイアス」のフォーアンドコレーが負債10億円で民事再生法を申請した。

また、昨年には、JL MOVE傘下のギャル系ブランド「ソードフィッシュ」と「ディアラ&ガブリエル」が消滅している。
極言すれば、ギャル系ブランドはどれが潰れてもさほど不思議ではない。

その原因の一つとして、コラムでは「経営の杜撰さ」を挙げておられる。

その多くの企業の経営幹部やデザイナーたちは当時としては破格の給与をもらい、派手な高級車を乗り回し、毎晩、飲食店で派手に遊び回り、湯水のように会社のお金を使いまくっていました。

この一文はバブル期のDCブランドのことを指しておられるのだが、109系ブランドにもまったく同じことが当てはまる。ついでに言うなら、かつてのDCブランドと109ブランドを対比して評論しているのは、このコラムだけなので秀逸な視点であるといえる。

繊維・アパレル業界に身を置く方なら痛感されておられると思うが経営基盤が脆弱なのは、なにもギャル系ブランドだけではなく、アパレル全般がそうだといえる。

DCブランドもバブル崩壊後は、数々の倒産があった。倒産はしていないが、店頭からもすっかり姿を消したブランドも数多い。
そのころ民事再生法を申請したブランドといえば「アトリエサブ」が思い浮かぶし、店頭から消えたブランドといえば「バツ」が思い浮かぶ。

またジャンルは異なるが、アパレル業界のはかなさを体現した企業といえば、小学校高学年女児から中学生女児にかつて絶大な人気を誇った「エンジェルブルー」を展開していたナルミヤインターナショナルもその一例である。
百貨店にショップを次々とオープンしたものの、いつの間にか人気は沈静化してしまい、経営が傾いてファンドに支援を求めざるを得ない状況になった。売上規模は年々縮小しており、最近では、新生「エンジェルブルー」と新生「ミニケー」をイオン専用ブランドとして再生する新方針を掲げている。
つまり、百貨店を撤退してイオンの専属ブランドとして再出発するということである。

このほか、短期間のうちに乱高下を繰り返すジェットコースター経営で消え去ったアパレルは枚挙にいとまがない。

このような激しすぎる栄枯盛衰を見ると、アパレル産業を目指す若者が減少するのも仕方がないと思える。もっとも若年人口が減っているからそう見えるだけであって、もしかしたらアパレルを目指す人の比率はあまり変わっていないのかもしれない。

さて、件のコラムの秀逸な一文を最後にご紹介したい。

最後は、ブランドを支えていた人たちです。ブランドを作るのは、経営者やデザイナーです。力持ちとして支えるのは、店頭の販売スタッフです。DCブランドでは「ハウスマヌカン」として歌(「夜霧のハウスマヌカン」)にもなったほどで、時代を象徴する存在でした。109系ブランドでは「カリスマ販売員」と呼ばれました。若い女性たちの間ではスター並みの存在としてあがめられていました。ハウスマヌカンが夜霧に消えて行ったように、カリスマ販売員もどこかに消えてしまい、今109系ブランドを支える人たちがいなくなっているのです。

 このような両者の共通点を考えていくと、いくつかのブランドは生き残るにしても、ブームとしての「マルキュー系」ファッションは早晩、終わりを迎えるでしょう。非常に残念でなりません。

とのことである。

「ハウスマヌカン」なる言葉を耳にしたのは数年以上ぶりである。もはや死語の世界だ。
この、夜霧に消え去ったハウスマヌカンたちにしろ、何時の間にやら話題にも上らなくなった元カリスマ店員たちを見るにつけても、アパレル産業の人員の使い捨てぶりには背筋が凍る思いである。