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ユニクロもGAPもアバクロもファストファッションではない

 今月、アメリカンイーグルが原宿にオープンする。
それを見越して昨日のこのような記事が掲載された。

最後の大型ブランドが上陸 ファストファッション戦争再燃か
http://diamond.jp/articles/-/16873

まあ、いつ鎮火していたのかわからないのだが、

日本にファストファッションブームが巻き起こったのは2008年のこと。安くて多店舗展開するファストファッションといえば日本ではユニクロが有名だが、世界にはより巨大なファストファッションが存在する。その1つであるH&M(Hennes&Mauritz)が08年に東京・銀座に初出店し、09年には「1万円あればキュートな服からバッグ、靴までトータルコーディネートできる」を合言葉にしたフォーエバー21(FOREVER21)が原宿に進出。「黒船襲来」と称され、両店とも連日入店待ちの行列ができるほどの盛況となった。

とあり、このあとGAP、オールドネイビー、ZARA、アバクロと例が挙がってゆく。

しかし、ユニクロ、GAP、アバクロをファストファッションにまとめているところが、すでに間違っている。
おそらく記者は、これまで隆盛を極めてきたワールド、オンワード、ファイブフォックスなどの従来型日本ブランドではなく、ユニクロという新しいSPAブランド(企業自体は古くからあるが)や、GAPやH&M、フォーエバー21、ZARA、アバクロなど海外SPAブランドが進出めざましいことを伝えたいのだと推測する。

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しかし、これらを指して全部まとめて「ファストファッション」と言い切るのはあまりにも乱暴な定義である。
業界の先輩である剱英雄さんの言葉を借りるなら

ファストファッションとは「トレンドデザインに特化し、品質と開発期間を圧縮して、低価格と鮮度を実現したもの」である。

ということになる。
この定義に則ると、品質が悪くなく開発時間に時間がかかるユニクロはファストファッションではない。
またユニクロには劣るもののH&Mやフォーエバー21よりも品質が高く開発時間がかかるGAPもファストファッションではない。
さらに、過度なトレンドを追求せずに価格も高いアバクロもファストファッションではない。

ファストファッションの定義に則っているブランドは記事中ではH&Mとフォーエバー21くらいである。

今度上陸するアメリカンイーグルは低価格になるそうだが、トレンド追求型ではなくアメリカンカジュアル路線になるので、これも低価格SPAとは言えても「ファストファッション」とは言えないだろう。

経済誌、一般紙ともにこの手の間違いを良く犯して十把一絡げに「ファストファッションが隆盛を極める」と報道するのだが、正しくは「新興の国内低価格SPAブランドと、海外SPAブランドが隆盛を極めており、その海外SPAブランドの一角にファストファッションブランドがある」という位置づけになる。

さて、何故かダイヤモンドが期待するアメリカンイーグルだが、
展開前の予想としては、手放しでは楽観できないのではないかと個人的には考えている。
価格は記事の通りだと競争力はあるが、問題は国内店舗網を運営するのが紳士服大手チェーンの青山商事であるところである。

外部から人材を招き入れて今回は対応するのかもしれないが、過去に青山商事がカジュアル店舗で成功した試しがない。キャラジャは店舗数が激減しており、カジュアル業界では存在感は薄い。
自前のカジュアルブランドに懲りたのか、昨今ではリーバイスストアのフランチャイズ経営に乗り出し、今回はアメリカンイーグルを獲得したが、会社の根幹の風土というのはそう簡単に変わるものではない。
筆者はそこに危惧を感じている。

ただ、スーツ着用人口も減少しているし、スーパークールビズやウォームビズの奨励によって、さらにスーツは需要が減少している。
青山商事としては、カジュアル部門に活路を見出すしかないと思うので、その動きは理解できるが、果たしてスーツチェーン店にカジュアルショップのオペレーションが根付くのかどうか。
「ブランド力・ブランド知名度」だけではそう簡単ではあるまい。
それならとっくの昔にリーバイスストアは成功しているはずである。

アメリカンイーグルの動向はしばらく注視が必要だと考えている。

ツープライススーツショップの元祖はオンリーの「ザ・スーパースーツストア」

 もう時効だと思うので書いてみたいが、ツープライススーツショップの元祖は、オンリー(本社・京都市)の「ザ・スーパースーツストア」である。
御存知のようにツープライススーツショップというのは、19000円と28000円の2つの価格でスーツが選べる販売店のことである。165cmから5cm刻みで身長別になっており、Y体・A体・AB体と3つのシルエットに分けられている。大雑把に言えばY体がタイト、A体がレギュラー、AB体はリラックスということになる。

現在では各社が当たり前に出店しており店数も増えたし、あまり注目を集める業態でもなくなってきているが、登場当初はセンセーショナルだった。

オンリーのこの販売方法と価格設定は画期的で、すぐに各紳士服チェーン店が追随した。
青山商事は「ザ・スーツカンパニー」、アオキは「スーツダイレクト」、はるやまは「パーフェクトスーツファクトリー」、コナカは「スーツセレクト」という類似業態を立ち上げた。価格設定も身長別・シルエット別の分類もそっくりな上に、白を基調とした内装もほとんど「ザ・スーパースーツストア」と同じである。おそらく、アパレル業界に詳しい方でないと全部同じ企業ブランドだと感じたのではないだろうか。

その後、ツープライススーツショップブームもピークが過ぎ、今では3プライスになったり、パターンオーダーシステムを入れたりと少しずつ各社が変化してきている。アオキは「スーツダイレクト」を廃止して、もう少し上のプライスもそろえた「オリヒカ」にブランドを変更をした。

今回、何が言いたいのかというと、もしオンリーが「ザ・スーパースーツストア」開始当時にこの販売方法と内装をすべて特許申請すれば市場はまた違ったものになっていたのではないだろうか。特許出願が難しければ商標登録などで知的所有権を守ることも可能だったのではないか。青山、アオキ、はるやま、コナカ各社のショップはオンリーのショップがなければ実現できなかった物である。しかし、残念ながら企業規模でオンリーはチェーン店各社に勝てず埋没した感がある。

アパレル・ファッション業界はブランド名や商標権は比較的厳しく管理されているが、色柄デザインや販売方法・店舗設計などの知的所有権管理はかなり緩い。ある意味でのパクリ合いがこれまでアパレル・ファッション業界を発展させ、市場を拡大させた側面がある以上、緩い管理は仕方がないのかもしれない。厳密に管理すれば、ジーンズのストーンウォッシュ加工は世に広まらなかっただろうし、襟内部にワイヤーを入れて不規則な変化を維持させる技法も特定企業が独占したままだっただろう。

しかし、ツープライススーツショップという販売方法は知的所有権として管理するべきだったのではないだろうか、と今にして思う。もしある程度の管理がされていれば、ツープライススーツ市場はこんなに早くに飽和状態になり、消費者から飽きられただろうか?もう少し長持ちしたのではないだろうか?

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