この土日に業界で話題となったのは、このニュースだろう。

日鉄住金、遊心クリエイションを清算
http://www.senken.co.jp/news/management/nssmc-yushin-151205/

いくつかの媒体を読み比べてみたが、経緯の詳細ではこの繊研新聞の記事に勝るものはない。

抜粋しつつ紹介したい。

日鉄住金物産は100%子会社で「イーブス」「アソコ」などを運営する遊心クリエイション(大阪市)を清算することを決めた。来年1月末をめどに全店の営業を停止し、清算手続きに着手する。清算結了は来年9月をめどとしている。

 遊心クリエイションは02年、森島純嗣前社長が設立し、10年に住金物産(現日鉄住金物産)が株式35%を取得、14年11月には全株式を取得していた。現在の店舗数はレディス・メンズの「イーブス」34店、レディスの「グランデベーネ」7店、低価格雑貨業態の「アソコ」4店の合計45店。

とある。

主力業態のイーブスは、グローバルSPA(製造小売業)をはじめとする競合激化や不良在庫が膨らんだこと、不採算店舗を数多く抱えたことで不振が続いていた。一時期大きな話題を呼んだアソコも、店舗ごとの収益性にばらつきがあっり、効率性の悪さもあって、収益面では厳しい状況だった。

 会社全体の業績も13年2月期こそ黒字を確保したが、14年2月期は売上高58億4000万円で、最終赤字に転落。債務超過に陥った。15年2月期も売上高56億5000万円で、引き続き赤字。今期(16年2月期)も赤字が避けられない状況となっていた。

この決算内容では日鉄住金が会社清算を決めても不思議ではない。
アパレル業界からすれば56億円というのは中堅企業だが、日鉄住金からするとそれほど大きな売上ではない。
それほど大きな売上ではないくせに3年連続の赤字で、2年前には債務超過に陥った会社なんて単なるお荷物に過ぎない。解散か売却、清算というのが日鉄住金側からすると妥当な判断である。

その上で、

事業継続を念頭に、自社での再建だけでなく、事業譲渡の可能性も検討。アパレル企業、ファンドなどと交渉を重ねたが、現状での赤字に対する懸念が強かったことに加えて、新規出店、不採算店舗の閉鎖など事業建て直しには大きな投資が必要と判断されたことから、不調に終わった。

とあるから万策尽きたということである。

関係者から聞くと一縷の望みをもってまだ水面下では動いているらしいとの情報もあるが、実際のところ、すでに全店閉鎖が決まっている会社が万が一にも存続できたとして、当面の売り場確保はどうするつもりだろうか。
また再出店するならどれほどの出費が必要となるのか。
さらにいえば、卸売業務をすでに廃止している。
これらを考えると、スポンサーになる、もしくは会社ごと買収しようという企業が現れる可能性は限りなくゼロに近い。
水面下での動きがもしも仮に本当だとしたら、完全なる徒労に終わると見ている。

アパレル業界にとっては「イーブス」の方が注目度が高かったが、世間的には「ASOKO」の方が注目されていた。アパレルにまったく詳しくない経済誌記者も「ASOKO」は知っていたほどである。

世間が「ASOKO」の何にそれほど注目したのかよくわからないが、店舗数から考えてみても遊心の主要業態は「イーブス」であり、「ASOKO」はアクセントであり、今後の育成業態に過ぎない。
そういう意味においては世間は主客反対の認識を持っていたといえる。

まず「ASOKO」から考えてみよう。

一説には採算が取れていた店舗もあったというが、雑貨の型数は洋服どころではないほどに多い。
しかも単価は安い。
となると、大量生産による製造費引き下げしか利益率を確保できない。
もし、ASOKOが当初の計画通りに3年間(2016年までに)で国内50店舗体制になっていれば採算性は変わったのかもしれない。
しかし、結局、4店舗体制にしかできなかった。
たった4店舗分の生産ロットでは採算性の改善はほとんど見込めない。
雑貨は単価が安い分、洋服よりも製造ロット数は大きくなるからだ。
4店舗分では雑貨の経済ロットには達しないと見るべきだろう。

4店舗体制から増やせないという状況に陥った時点ですでに事業としては破綻したといえる。

次に「イーブス」である。
これはユニクロも含めた低価格グローバルSPAに対抗した低価格SPAブランドである。
センスは悪くない。デザイン性は高かった。
けれどもどういえば良いのかわからないが、今一つパンチ力がなかったように感じる。
これは商品的なことではなく、販促・広報的な面でだ。
あの価格帯を買う層、イーブスが出店していた郊外型ショッピングセンターに来る層に対して、響かなかったのではないかと感じられる。

またピーク時でも40店舗強、現在は34店舗という店舗数もあの価格帯の製品を作るのなら少ない。
最低でも100店舗は欲しいところだ。

あの価格帯で製造するならアジア地区でしか無理であり、中国には比較的小ロットの工場も現れているし、韓国は小ロット専門だが、それ以外のアジア地区はまだまだロット数が必要である。
となると、100店舗くらいあると全店に10枚ずつを配送しても1000枚となり、アジア地区での生産も可能になる。

ところが40店舗しかないなら、10枚ずつなら400枚だ。
そうなるとやはり製造コストは劇的には下がらない。あの価格を維持するには難しかったのではないかと思う。

遊心クリエイションは、昨年4月に創業社長であった森島純嗣氏が退任して、久保木大世氏に社長が交代している。その後、昨年11月には森島氏が退職している。

業界には「創業社長が去った時点で終わっていた」という意見もあるが、その通りではないかと思う。

アパレルはよくも悪くも創業者のセンスとカリスマ性で成り立っている部分が多い。
創業者が去った時点で会社は別物となるし、その製品も別物となる。
大きく成長しきったアパレルならそれでも次代、次次代と存続する場合もあるが、遊心クリエイションのようなベンチャーで成長段階にあるアパレルではそれでは存続できない。

もちろん、各氏が指摘するように、採算性と資金繰りの悪化から、創業社長が居続けたとしても財務面での破綻はあったかもしれない。

それにしても「寄らば大樹の影」ではないが、大手の傘下に組み込まれるのも善し悪しの場合がある。
遊心クリエイションの場合、資金的に行き詰ったから5年前に日鉄住金に35%の株式を売却したのだろう。しかし、大手には大手の論理がある。
大手の後ろ盾は心強いが、採算性が彼らの望むような向上を見せなかった場合、売却、解散ということになる。

別に遊心だけではない。過去にもそういうアパレルがたくさんあった。
今年2月末に解散したTSIホールディングス傘下のフィットもその一例といえる。

資金繰りがなんとか自前でできたなら、遊心クリエイションという企業はもう少し永らえたかもしれない。
売上高30億円くらいでカツカツで苦しいけれども創業者とその仲間であと5年か10年くらいは継続できた可能性はある。

あと、卸売り業務の廃止で直営店一本槍という経営方針の変更も会社清算を結果的に早めたのではないかとも思える。
集中と選択とは一昔前に流行った言葉だが、もしその博打に外れた場合、他に逃げ道がないということである。
液晶画面を選択して集中しすぎたシャープは今どうなっているか。それと同じことである。

それにしてもフィットに続いて、大阪拠点の有名アパレルがまた消えた。
そういう意味での感慨もある。

報道に接しての思うところをまとめてみた。

PCメガネ (子ども用) 赤
株式会社遊心クリエイション


PCメガネ (子ども用) 黒
株式会社遊心クリエイション