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社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。

バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。

で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。

ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。

インスタグラム始めました~♪
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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



三陽商会のV字回復はありえない

 三陽商会が遅れてきた中期計画を発表したのだが、無難な感じにまとめられており、新鮮さ斬新さはなかったと感じた。

長らく百貨店にほぼ特化してきた同社だが、ショッピングセンターへ進出し、ファッションビルとネット通販を強化するという内容で、常識の範囲内でまとまったという印象が強い。

即効性はほぼ期待できず、どれだけ地道に気長に根気よく取り組めるかにかかっていると思う。
この内容で、V字回復できると思っている人がいるなら、ちょっとその見識を疑う。

三陽商会、直営店とECに投資 新中計を策定
https://www.wwdjapan.com/381482

この記事が過不足なく公平にまとめていると思う。

同社にとって売上高の7割を占める百貨店の市場縮小を見据え、ECやショッピングセンター(SC)での事業拡大に乗り出す。

とあるが、残念ながらショッピングセンターも市場規模は縮小しているし、ECは市場の拡大ペースが鈍化しており、優勝劣敗が鮮明になりつつある。
とても後発の企業が一朝一夕で業績を拡大できる状況ではない。

ちょっと脱線するが、同じ事柄でも書き方一つで大きく変わる。
このWWDの記事や繊研新聞の記事なら、「新鮮味はないがまあ、それしかやりようがないよな」という感想を持つが、正式発表の前に書かれた日経新聞の記事なら「今さら何を言ってるの?三陽商会の首脳陣はちょっとおかしいんじゃないの?」と感じられる。

記事の切り抜き画像を貼っておく。

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見出しは「三陽商会、SCや駅ビルに活路 百貨店苦戦で 低価格の新ブランド」となっており、現在のSCや駅ビルの状況を知っている人間にとっては「そこに活路なんてないわ」としか感じられず、そこに「活路がある」と思っている経営陣はおかしいのではないかと感じられてしまう。

日経新聞としては、新機軸をより集中的に書くことで、記事への注目度を高めたかっただけだと思うが、この書き方では注目は集まるかもしれないが、三陽商会の首脳陣の見識が疑われる方が可能性が高いのではないかと思う。

自戒も込めて気を付けなくてはならないと改めて思う。

それはさておき。

識者の方々は置いておくとして、SCももう青天井の状態ではない。
単なる体感で語ってるわけではなく、数字がそれを示している。

2016年(暦年)の既存SC売上高対前年比は▲1.1%と2013年以来3年ぶりに下回った。
http://www.jcsc.or.jp/cat_sales/p_20170209_6586

日本ショッピングセンター協会の正式発表である。
既存店ベースでは前年割れを起こしているのであり、個人的には来年以降もこれが続くのではないかと考えている。

ちなみに新店も含めた業績は

SC年間総売上高(全SC 3,212ベース・推計)は、速報値で31兆1,241億円で前年比+0.1%となった。テナント総合は▲0.9%、キーテナント総合は▲1.4%となった。

とあり、▲はマイナスという意味で、新店を合わせてすら0・1%増にしかなっていない。
新店効果はほぼなかったということである。

ショッピングセンターにこれから新規参入する三陽商会は並大抵ではない苦戦を強いられるであろうことは容易に想像できる。
さらにいえば同じ大手の一社であるイトキンはショッピングセンターを大幅縮小しており、そこに三陽商会が新規参入するというのはよほどキチンとした構想を持って当たらないと確実に失敗するだろう。
どのような構想を描くのか注目したい。

また駅ビル(いわゆる駅近隣のファッションビル)だが、これもすでに成長分野ではなくなっている。
しかし、定期的に不振テナントを入れ替えるため、最初のチャンスくらいはもらえるだろう。
問題はそこで出店した後、実績を残し続けられるかどうかである。
売り上げ不振が続けばテナントを入れ替えられるだけである。

業界紙の中には、小規模ながら実績を残した同社のギルドプライムに期待する声もあるが、ギルドプライムはかなりニッチな層に特化しており、大規模に成長する見込みはほぼない。
テイストを薄めるとそれは可能かもしれないが、おそらく「ブランドらしさ」がなくなって逆に大苦戦に陥るのではないか。

WWDの記事中にもあるように新ブランドを立ち上げて対応するしかないが、マンパワーが低下した三陽商会にヒットを飛ばせる新ブランドを立ち上げられるような人材が残っているのかどうか疑問を感じる。

EC(いわゆるネット通販)に関しても同じで、成長分野と目されているものの、アパレルに関してはなかなか厳しい状況になっている。
先日、ここでも書いたが、先行していた通販のスクロールがアパレルECの撤退を決定した。
年商600億円規模の通販会社ですらアパレルECは成功できなかった。

これまでEC分野では、ほぼ鳴かず飛ばずだった三陽商会がすんなりと業績を拡大させてもらえるとは到底考えにくい。

今回中期経営計画で打ち出されたいずれの項目も、苦戦が予想されるので、三陽商会は引き続きイバラの道を歩むことになると思う。

記事中では、駅ビルに関して

それでも岩田社長は「失敗の経験も生かせるはず。モノ作り、MD、価格設定などうまくいかなかった理由を分析し、一つ一つつぶしていく」と再チャレンジに意欲を見せる。

という抱負が述べられているが、駅ビル以外のSC、EC、その他全分野に対してこの姿勢で臨む必要がある。

そうすればもしかすると将来的には展望が開ける可能性がわずかながら残っている。
どの分野に対してもイージーには考えておられないとは思うのだが。

くどいようだが、今回打ち出されたどの販路もすでにレッドオーシャンになりつつあり、V字回復できることは考えにくいので、その部分を加味して取り組んでもらいたいと思っている。


執拗に告知を繰り返しても消費者にはやっと覚えてもらえる程度

 経営不振の引責で、三陽商会の社長交代が先日発表となった。

ここに至るまで様々なメディアに三陽商会苦戦の原因を報道したが、やたらと厳しすぎるなあと感じられる記事もあったし、マッキントッシュロンドンの不振のみにクローズアップされた記事が多かったと感じている。

オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがまとめられている不振の原因が最も的確ではないかと思うので、ここに引用してご紹介したい。

http://www.apalog.com/ochi/archive/385

原因は、唯一ブランド戦略ミス(マーケットの読み違い)です。

1、バーバリーがグローバル戦略を取り、ライセンス契約の喪失が見えていたのにも関わらず、自社ブランドを準備出来ていなかったこと。

2.マッキントッシュフィロソフィーが百貨店のボリュームゾーンで広がっていたにも関わらず、格上のブランド「マッキントッシュロンドン」を仕掛けた事。(下から上では逆)

3.クレストブリッジブルーレーベルやブラックレーベルは、バーバリーのブルーレベルとブラックレーベルの企画力と同じだから、ある程度(80%程度)売れると判断した事。
(バーバリーと無名のクレストブリッジ(のブランド認知度・信頼度の差)

4.前社長の力で、百貨店の80%以上の売場を残せたにも関わらず、ブランド力のない商品で
  売上を確保できなかった事。

単品企画力があっても全体のマーチャンダイジング力不足で、良いものでも売れないのです。作り手・売り手の良いものであり、買い手・使い手の良いものではないからなのです。

とのことである。

この中で個人的にも感じているのが、3である。
これは広報宣伝、告知のミスともいえるのだが、発売元と消費者の認識のズレというのは常に起きる。
発売元とすると、その商品を毎日触っており、ブランド開始まで毎日のように準備しているから、そのブランドについては何から何まで熟知している。(当たり前のことだが)

当然、三陽商会のスタッフも「クレストブリッジ」のことは熟知しており、それがバーバリー社との新しいライセンス契約によるものは、社員にとっては「当たり前」のことになっていただろう。

しかし、世間の一般消費者には「クレストブリッジ=バーバリーとの新契約ブランド」という情報はほとんど認識されていなかった。
報道されなかったわけではない。報道もされていたがその程度では一般消費者の記憶に残るほどではなかったということなのである。

実際に、筆者が講義するファッション専門学校で「クレストブリッジがバーバリーとの契約ブランドだと知っている人」と尋ねると、9割の学生は知らなった。
答えてくれた学生の数を合計すると40人弱くらいになるだろう。

「最近の学生は勉強不足」なんて老害みたいな脊髄反射をするなかれ。
そんな老害レスポンスにはまったく価値がない。

ここで注目しなくてはならないのは、世間一般よりもファッションに比較的に興味のある専門学校生のほとんどが知らなかったという事実である。
専門学校生でのこの程度なら、世間一般の消費者の認知度はもっと低いということになる。

これは明らかに三陽商会の広報宣伝、告知のミスである。

おそらく、スタッフは自分たちにとって「当たり前」のことだから、執拗にしつこく広報宣伝、告知をしなかったのだろうと思う。
筆者が目にした範囲でもそれほど「クレストブリッジ=バーバリーの新契約ブランド」ということは強調されていなかった。

これは、発売元では「当たり前」のことでも、消費者には何一つ伝わっていないという好例である。

これは三陽商会に限らず、筆者も含めてすべての企業やブランドにいえることで、当事者にとっては「当たり前」のことでも、執拗に何度も広報宣伝をしないと消費者には認知されないということである。

そしてそういう事態が、衣料品業界では頻繁に起きている。
だから衣料品不振にもつながっている側面がある。

例えば、全国の生地産地の人たちと話していると、産地の人たちは「自分たちの産地のことは業界全体で知られている」と感じていることがわかる。
しかし、製造加工に携わっていない業界関係者に尋ねると、その産地については「ほとんど知らない」という答えが返ってくることは珍しくない。

もちろん、この場合は業界関係者に対して「不勉強だ」と指摘することは当然だとしても、逆に産地関係者はもっと執拗にしつこく、広報・告知をするべきなのである。
むしろそれくらいでやっと覚えてもらえるくらいなのである。

三陽商会にとっては「クレストブリッジ=バーバリー」の認識だったが、一般消費者にとっては「クレストブリッジ=謎の新ブランド」であり、バーバリーに結び付けて考える余地は皆無だった。
そのため、バーバリーブルーレーベル、ブラックレーベルよりも大きく売れ行きが劣ることになった。

知名度は皆無なのに、価格はバーバリーブルーレーベル、ブラックレーベルと同格なのである。
無名のくせに高いブランドなんて売れるはずもない。

そしてそのブランドの背景やストーリーが語られることも不足していた。
正体不明で価格が高い無名ブランドなんて買いたいと思う消費者なんて存在するはずがない。

クレストブリッジに関しては、三陽商会だけの問題ではなく、発売元と消費者の認知のギャップと、広報告知の在り方を考えるうえでの格好の好材料といえるのではないか。


(ブルーレーベルクレストブリッジ)ニット セーター38
BLUE LABEL CRESTBRIDGE (ブルーレーベルクレストブリッジ)



無名ブランドとのライセンス契約は高リスク

 三陽商会が2016年12月期業績の見通しを発表したが、営業・経常・当期損益ですべて大幅な赤字となり、来年上半期までにさらに5ブランドの廃止も明らかにした。

三陽商会、今期95億円の最終赤字へ 追加で来期5ブランドを撤退
https://www.wwdjapan.com/business/2016/07/29/00021116.html

三陽商会は、2016年12月期業績が95億円の最終赤字を計上する見通しだ。期初予想は3億円の黒字だった。

過去最大の赤字になる。昨年6月末で契約終了した英「バーバリー」の後継として投入した「マッキントッシュ ロンドン」および「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の販売が計画を大幅に下回ったため。

売上高は700億円(期初予想は770億円)、営業損益は68億円の赤字(同20億円の赤字)、経常損益は66億円の赤字(同17億円の赤字)にそれぞれ下方修正する。

とのことで、経営危機に陥ったといえる。

原因は明言されているように「バーバリー」がなくなったあとの「マッキントッシュ ロンドン」と「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振である。

多くの方が書いておられるように、「バーバリー」亡き後をこの3ブランドに託すことを三陽商会は甘く見すぎていたのではないか。

英バーバリー社とのライセンス契約打ち切りに懲りて、日本の企業である八木通商が経営権を持っている「マッキントッシュ」とライセンス契約を結んだ。
たしかに外資ブランドのように突然に契約打ち切りを行うようなことはないだろうが、バーバリーとマッキントッシュとではブランドの知名度に雲泥の差がある。
現在のバーバリー顧客がすんなりとマッキントッシュなんぞに乗り換えるはずがないことは素人にでもわかる。

三陽商会もそれくらいは覚悟はしていたと思いたい。

中長期的にブランドを育てるほか、マッキントッシュの浮上策はない。

業界に携わる人にも考えてみてもらいたいのだが、20万円のコートを買うときに、バーバリーと無名ブランドのどちらを買いますか?

マッキントッシュは一般的には無名ブランドの立ち位置に近い。
同じ20万円のコートを買うときにバーバリーとマッキントッシュのどちらを選ぶか。
おそらく9割の消費者はバーバリーと答えるだろう。
2000円のコートなら無名ブランドを買って失敗しても惜しくはないが、20万円という大金なら失敗は絶対に許されない。
失敗しないためには定評のある方を買う。

バーバリーというブランド名はファッションに興味のない人でも多くに知られている。
マッキントッシュというブランド名はどうだろうか?ファッションに興味のない人にはほとんど知られていない。

だったらどちらを買うかは目に見えている。
これがいわゆる「ブランド力」とか「ステイタス性」とか言われるもので、こうなるまでには長い月日と多額の費用が必要になる。

おそらく、三陽商会もマッキントッシュが定着するまでに長い月日と多額の費用が必要なことは理解していただろう。理解していなかったらおしまいである。

そういうわけでマッキントッシュの推移は今後見守るしかない。

個人的には、マッキントッシュよりもクレストブリッジの方が問題だと思う。

今回、追加で廃止される5ブランドについて具体的名称は挙がっていないが、個人的には「クレストブリッジ」の両ラインを廃止したほうが良いと思う。

三陽商会はクレストブリッジは旧両ラインのファンがすんなりと乗り換えてくれることを期待していたのだと勝手に想像する。
なぜなら、クレストブリッジはバーバリーとのライセンス契約から生まれたブランドだからだ。

三陽商会からすれば、バーバリーとの新たなライセンス契約から生まれたクレストブリッジを、旧両ラインのファンはすぐさま支持してくれると考えていたのではないか。
しかし、それは甘い想像にすぎない。甘すぎる。

一般消費者はクレストブリッジがバーバリーとのライセンス契約によるブランドだとはほとんど知らない。
もしかしたら業界人ですら知らない人がいるかもしれない。

となると、消費者からするとバーバリーとクレストブリッジは全く別ブランドなのである。
去年生まれたポッと出のブランドとクレストブリッジは同一線上にいるのと同じだ。

知名度はまるで違うのに、価格はバーバリー・ブラックレーベル、バーバリー・ブルーレーベルの旧両ラインと同じである。こんなバカ高い無名ブランドの商品を誰が買うというのだろうか。
三陽商会とクレストブリッジ関係者は本当にそれで「ある程度は売れる」と思っていたのだろうか。もし思っていたのなら本当におめでたい。

マッキントッシュを育成できる可能性よりもクレストブリッジを育成できる可能性の方が低いのではないかと、個人的には見ている。だから廃止をお勧めしたい。

バーバリー社との契約内容にもよるのだろうが、三陽商会の自社ウェブサイトにもクレストブリッジは掲載されていない。クレストブリッジ単体で別にウェブサイトが開設されており、こんな扱いでは三陽商会にとっては何の旨味もなく、シビアにいえば、バーバリー社にライセンス料だけを搾取されていると言っても過言ではないだろう。

それにしても、バーバリーとの契約打ち切りで泣かされた三陽商会が、その穴埋めに選んだ方策が「別のブランドとのライセンス契約」というのはちょっとギャグかコントにしか見えない。
違うのは、マッキントッシュの経営権が日本の企業である八木通商が握っており、外資ほどドラスティックな契約更新はしないだろう(という期待感)という点だけである。

自前ブランドを育成してこなかったツケが一気に押し寄せており、ライセンスブランドに裏切られてもまだ自前ブランド育成に踏み出せなかったことが今回の経営危機を招いているといえる。
一時期はバーバリーの代わりとしてポール・スチュアートというブランドを想定したこともあるが、これとてもライセンスブランドであるから、根っからのライセンス依存体質なのだといえる。

しかし、ライセンスブランドが効力を発揮するのは、ブランドの知名度が高い場合に限られる。
無名のライセンスブランドは自前ブランドを育てるのと同じくらいに労力と費用がかかる。
自前ブランドなら労力と費用の持ち出しだけで済むが、ライセンスブランドはそこからライセンス使用料がさらに徴収される。どちらが資金的に苦しくなるかというとライセンスブランドの方である。
だから、自前ブランドを育てるよりも、無名ブランドとのライセンス契約の方がリスクが高いといえる。

自前ブランドの育成が三陽商会には最善の策だと思うが、すっかり長い間にライセンスブランド依存症となっている。当然、自前ブランド育成のノウハウがなくなっているだろうから、どちらの道を採ろうと苦戦は免れ得なかっただろう。
追加のブランド廃止があるということは、さらなる人員整理もあるということである。
三陽商会の苦境は当分続く。




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マッキントッシュの苦戦よりもクレストブリッジの苦戦の方が痛かったのではないか

 三陽商会から250人のリストラと、2016年1~6月期の下方修正が発表されて、それに対する報道、論評が数多く見られる。ファッションやら経営やらの話はそれらに任せて個人的な感想をまとめてみたい。

売上高は期初予想の370億円を335億円へと減額し、営業赤字も同22億円から55億円へと、赤字幅が大幅に増える見通しとなっている。

さらにいうと通期での見通しは立っておらず、通期業績はさらに厳しくなるのではないかと考えられる。

今回の下方修正では、減収よりも赤字幅の大幅な拡大の方が問題である。
原因は、バーバリーの跡地ブランド(後継ではない)「マッキントッシュロンドン」と、バーバリーとの新たなライセンスで開始された「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振である。

個人的には、高価格帯の「マッキントッシュロンドン」よりも、若い年代に人気が高かった「バーバリーブルーレーベル」「バーバリーブラックレーベル」の後継ブランド「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振の方が三陽商会にとっては痛手だったのではないかと見ている。

なぜなら、コートが10万円を軽く越えるような「マッキントッシュロンドン」の売上高が「バーバリー」に遠く及ばないであろうことは、当初から誰でもが予想できたのではないかと思う。
やっぱり「バーバリー」ブランドだから10万円を越えるような高価格帯のコート類をほしいと思う人がたくさんいた。
それが「マッキントッシュ」という一般的にあまり知名度が高くない屋号に変わってしまえば、買うことに躊躇する人が増えるのは簡単に予想できる。
ましてや同じ価格帯とはいえ、バーバリーとは根本的に商品そのものも違う。買わない人が増えるのは当たり前である。

業界人にとっては「マッキントッシュ」というのはそれなりにバリューのあるブランド名かもしれないが、業界外の人にとってはあまり知名度が高くない。「アップルコンピュータのマッキントッシュとどう違うの?」というレベルではないか。

おそらく三陽商会や百貨店側もマッキントッシュが苦戦することは織り込み済みだったのではないかと思う。

大誤算はむしろクレストブリッジの不振だろう。
これはバーバリーとの新しいライセンス契約から生まれたブランドで、文字通りの後継ブランドである。しかも本体のバーバリーに比べると幾分か価格が安い。

そのため、旧ブルーレーベル、旧ブラックレーベルは長らく若い男女に人気があった。
また、本体のバーバリーは元々はかなり重厚な雰囲気の商品が多かったが、このラインはトレンドに合わせてモダナイズされているからそういう意味でも人気が高かった。

クリーニング店「クリーニングビー」を経営する壁下陽一氏によると、この両ラインは「価格が高いわりに近年は商品クオリティがかなり低下していた」とのことだが、やっぱりネームバリューはあった。

バーバリーとの正式な契約から生まれた後継ブランドで、本体よりも幾分か安いから、三陽商会はおそらく旧ブルーレーベル、旧ブラックレーベルの穴埋めがそれなりにできると考えていたのではないか。
また百貨店を含めた商業施設側もそこそこの売上高を見込んでいたのではないか。

それが崩れたため、目算が大きく狂ったというのが実情ではないかと思う。

原因はなんだろうか?

商品のデザインが云々というのはよくわからない。
人それぞれ好き嫌いがあるからだ。
ただし、あの大振りなブロックチェック柄の洋服は売れにくいと思う。
人目を引きつけるがあれほど大ぶりなチェック柄の洋服はコーディネイトに取り入れるのが難しい。
ましてやそれがスーツになっていれば、さらに難易度が上がる。

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(ブラックレーベル・クレストブリッジのウェブサイトより)

モデルとか芸能人レベルの人間でないと着こなせない。
そしてそういう人が世間一般にどれほどの数で存在するのか。
かなりの少数に向けたニッチな商品である。
果たして三陽商会と三原康裕氏はそれを認識していたのか?

次にブランドとしての露出が極端に少ないことも原因の一つだろう。

いくらバーバリーとの正式契約とはいえ、一般消費者はそこまで知らない。
「バーバリー」と「クレストブリッジ」では一般人にとっては全く別ブランドである。
よくてもせいぜい「バーバリーっぽい」ブランドという認識止まりである。

にも拘わらず、本当に露出が少ない。
ウェブ上にはほとんど出てこないし、何より、三陽商会の公式ウェブサイトにさえも掲載されていない。
これじゃ、消費者の認知が進まないのも当然である。
さらに今回の下方修正報道でもほとんど言及されていない。
メディア側からも認知されていないという証拠ではないか。

旧両(ブルー、ブラック)レーベルくらいに認知を高めたければ、ドンドンと露出させるべきなのである。
「バーバリーがクレストブリッジに変わりました」というくらいベタにわかりやすく打ち出す方が良かっただろう。

「紅白歌合戦で嵐に着用してもらいました」程度の広報活動ではまったく起爆剤にはならない。
もちろん打ち上げ花火程度にはなるだろうが、大爆発は起きない。

バーバリー側の意向もあるのだろうが、これまでの広報活動は完全に裏目に出ており、効果がまったくあらわれていない。

さて、今後の推移を予測すると、三陽商会はさらに厳しくなるのではないか。

バーバリーの跡地に件の3ブランドを比較的あっさりと出店することができた。7割くらいが置き換わったはずだ。
三陽商会側の努力もあっただろうし、それほど多数の店舗を一気に出店できるアパレルがないため、置き換えに賛同した商業施設も多かった。

そしていわば初年度は「お試し期間」だった。

お試し期間で好成績が出れば、さらに出店は加速するだろうが、お試し期間で惨敗してしまえば、退店が加速する。
今回の不振を受けて、次年度以降は3ブランドとも店舗数をかなり減らすのではないかと考えられる。
当然、売上高はさらに低下するし、場合によっては利益額も減るだろう。
三陽商会は厳しい業績が続くと予想される。

ディオールを失って消滅したカネボウ、アディダスを失ったものの16年かけて復活したデサント。
三陽商会がどちらになるのかわからない。できればデサントのように復活してもらいたいと思うが、今後長期間に渡って厳しい局面が確実に続く。果たしてそれを三陽商会が乗り越えられるのかどうか。

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大手総合アパレル各社の黄昏

 普段フェイスブックで交流している人たちにはイトキン関係者が多いので彼らのことを考えるとちょっと胸が痛むのだが、それでもやっぱり紹介することにした。

ワールド、TSIの大量リストラが報じられているが、それ以外でもかつての百貨店向け大手総合アパレルは厳しい状況にある。
コムサ・デ・モードなどを展開しているファイブフォックスは同社の公式サイトによると、2013年8月期売上高は887億円にまで低下している。2008年8月期には1559億円の売上高だったからほぼ半減に近い。
さらにいうと、2014年度8月期は発表されていないが、この887億円よりも低下しているのではないかと業界では推測されており、2015年8月期でも回復しているとは考えにくい。

収益の悪化したオンワード樫山も業界からは百人単位のリストラがあるとのうわさが聴こえてくる。

6月末でバーバリーを失った三陽商会だが、撤退した7割の店舗を「マッキントッシュフィロソフィー」に置き換えることに成功した。
この同社のがんばりは賞賛に値するが、「他に置き換えられるブランドがなかった」とか「これまでの三陽との付き合い」とかそういう百貨店側の消極的な理由もあったと報道されており、「マッキントッシュフィロソフィー」が成功するかどうかは次年度以降の推移を見てからでないと評価できない。

バーバリーなき三陽商会が
売り場を7割守れた裏事情
http://diamond.jp/articles/-/75958

そしてこの記事は

同条件での取引を決めた百貨店の関係者も、「損してまでは付き合えない。半年か1年入れてみて駄目だったら場所の変更、売り場面積の縮小、歩率の引き上げといった交渉に入る」という。三陽商会は最悪、条件変更はおろか、マッキントッシュとしての売り場を失う恐れすらある。

(中略)

三陽商会の本当の戦いは、まさしくこれから始まる。

と結ばれている。

そういう中にあってほとんど報道されなかったのがイトキンである。
しかし、業界内からは相当に苦しいという噂が絶えなかった。

「社債償還」に苦しむ4期連続赤字の「イトキン」
http://facta.co.jp/article/201507002.html

ファクタのことだからかなり綿密に裏取りをしていると推測される。
記事内容にほぼ間違いはないだろう。

2015年1月期は2桁減収で56億円もの最終赤字となった。前期も40億円の赤字であり、実に4期連続の赤字である。商品力不足から在庫が膨らみ、セール時期の値引き幅が広がる傾向にある。業界ではかねて辻村章夫社長(59)ら経営陣の手腕を疑問視する声があったが、ここにきて経営不安説が囁かれ始めた。

メーンバンクの三菱東京UFJ銀行はすでに債務者区分を引き下げ、「事業戦略開発室」(通称ジセンカイ)に移管した模様。「ジセンカイ」とは同行の大口問題融資先の再生を手がける専門部署で、今後は銀行主導の再建策が練られる可能性が高い。

(中略)

「もっとも状況が厳しいのがイトキン」というのが業界の見方である。

8月末には3年前にみずほ銀行の保証付きで発行した23億円の社債償還が控える。リファイナンスに向け銀行の協力が不可欠だが「いまの業況では、はいそうですかと応じる銀行はないだろう」(取引行関係者)。

ちなみに同社の創業は1950年。ワンマンで知られた創業者の辻村金五氏は12年に死去。長男浩一氏(68)が会長、次男章夫氏が社長を務めるが、実質的に経営を取り仕切るのは昭和15年生まれの松本煕副社長ら先代の番頭たち。

とある。

正直に言って、今のイトキンにはヒットブランドが見当たらない。
財務などの評価はお詳しい方に任せるとして、展開ブランドを比べてみると、たとえばワールドやTSIは単体ならばそれなりに売れるだろうというネームバリューのあるブランドがいくつかある。
不採算ブランドを廃止して、好調ブランドだけに特化すれば売り上げ規模は小さくなっても企業自体の再生は可能だ。

となると、ヒットブランドを持たないイトキンはかなり厳しい状況にあるといえる。
安定的な顧客を持っているのは「ヒロコ・コシノ」くらいではないだろうか。
ただ、「ヒロコ・コシノ」は全社を救うほどの大ヒットブランドではないし、今後もなりえない。

90年代から2005年まで隆盛を謳歌してきたこれらの大手アパレルだが、今後、企業存続はできても短期間のうちに隆盛を取り戻すことはありえないと考えられる。
すでに絶対王者となったユニクロに対して、後追いをするという「逆ランチェスターの法則」を仕掛けるしか策を持てなくなっている。

もう一度まとめると、ランチェスターの法則によれば、

小規模な企業は、個性的な打ち出しで一点突破を図ることが最良の戦略だとされている。
一方、物量に優れる強者は物量を生かした後追いが最良の戦略だとされている。

しかし、この数年間、大手アパレル各社がやってきたことは、圧倒的物量を誇るユニクロを後追いするという最悪の選択に終始してきた。

「ユニクロが価格を下げたからうちも下げる」とか「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材をくれ」とか。

これでは負け続けても当然である。

そして、今度は絶対王者ユニクロも国内市場では飽和点を迎えて今年6月から変調を来しつつある。
売上高がいきなり半減するようなことはないだろうが、国内の売上高はこれ以上は増やすことは難しい。
あとは海外でどう増やすか?新ブランドを立ち上げてファーストリテイリングとして国内売上高をどう増やすかという課題に取り組まねばならないだろう。

大手アパレル各社が凋落し、ユニクロも変調を来しつつある、そろそろ次の時代の覇者となる企業が登場するのだろうか。

次の時代の覇者となるのは必ず異業種出身の経営者が創設した企業か、異業種から参入した企業になるだろう。業界内の既存の人材、企業は最早そんな力を持っていない。




新規参入でマス市場に飛び込むためにはセールスポイントか大資本が必要

 新規ブランドを立ち上げる際、「今、このテイストが人気だから」という分析を基にそこに飛び込む企業が多いように見える。これは何もアパレルに限ったことではなく、産地の製造加工業者でも同じである。
いや、むしろ産地の製造加工業者の方がこの手法を多用するように見える。

しかし、後発ブランドがその人気市場へ割って入るためにはよほどのセールスポイントか資本力がないと不可能である。
セールスポイントとは価格競争力、高品質、高デザイン性、雰囲気の良さ、プロモーションの上手さなどを指す。
もしこれらが決定的に欠落していたとしても大資本なら急激な多店舗出店によって、無理やりに、一時的にでも注目を集めることは可能になる。

この両方が無い場合、後発ブランドがすぐさま成果を得られることはかなり難しい。
そこを産地の製造加工業者は真剣に見つめなおしてもらいたい。

それはさておき。
では、マス市場ではないが、ファッションには必ずニッチな市場がある。
現状のジーンズ業界で言うならビンテージレプリカジーンズはマニアに向けたニッチな市場だといえる。
後発ブランドはそういうニッチな市場をあえて狙うというのも一つの成功方法ではないか。

今回はその一例ともいえる記事をご紹介したい。

「ワル」な「オトナ」がメンズファッションの隙間だった
http://t-f-n.blogspot.jp/2015/01/blog-post_19.html

少し前になりますが、12月8日の繊研新聞で三陽商会のセレクトショップ、

ラブレスとギルドプライムが取り上げられていました。

記事から概要を抜粋すると

「既存の大手セレクトショップが得意とするトラッドベースのカジュアルな商品とは一線を画」す為に

「オリジナルも万人が好むような値頃なベーシック」にはせず、

「買い付け品に負けない”攻めた企画”がほとんど」となっているそうです。

「モード系でクセの強い品揃えがコアなファンを中心に支持を広げ」、

「業績はこの5年ほど右肩上がり」となっているそうです。

とのことである。

ラブレス/ギルドプライムのオリジナルアイテムのターゲットは

いわゆる「お兄系」を卒業したような、

少し「ワル」な雰囲気を持った男性をターゲットにしていると思います。

とある。

要するに、昔、お兄系を着用していてそのままのテイストで年を取ったような男性がターゲットということである。

商品の画像を見ていただければわかるが、カジュアルはお兄系か元ヤンキーという風情だし、スーツ類はどうみてもホスト崩れか崩れホストかという雰囲気である。

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(ドクロのマークがついたダウンジャケット)

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(パンツのバックポケットにジッパーとドクロマークの装飾)

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(同ブランドのドレスシャツ)

個人的にはこの手のファッションはまったく好きではないし、この手のファッションで固めた男性と言うのも苦手であり、あまりお近づきになりたいとは思わない。

商品画像ではデカデカとドクロマークが付けられているが、ヤングならいざ知らず、ヤングを卒業した年代以上でデカデカとドクロマークを付けた服を着用して似合っている人物は、キャプテンハーロック以外にあまり見たことがない。

それでも市場としてはマスではないが確かに存在する。
そこに向けて商品を供給するというのは立派なビジネスモデルといえる。

需要があるから小なりといえども5年連続で増収しているのだろう。

またこの記事中では昨年秋に新加入が発表されたアースミュージック&エコロジーのメンズラインについても言及されている。

記事中のリンクからジャンプして商品写真を見ると、なぜこれが今更必要なのか?と首を傾げざるを得ない。
このテイストのメンズは郊外型ショッピングセンターにあふれかえっている。
チャオパニックティピーでもコーエンでもセンスオブプレイスでも似たような商品がいくらでも安く購入できる。
マス市場かもしれないが、競合がひしめき合っており、なぜ今更そこへわざわざ飛び込まねばならないのかと疑問を感じる。この記事主の主張には大いに賛同する。

現在の衣料品市場を考慮するなら、後発新規参入組はニッチ市場を狙うべきであり、同質化しやすいメンズはとくにそうあるべきだろう。よほどの大資本以外はマスを狙うべきではないと考える。
メンズに比べると市場規模が大きいレディースでも状況は同じである。

キャリアからミセス向けレディースアパレルの合同展示会主催者は、「卸売り業態で新規ブランドを立ち上げても現状では売上高3億~5億円くらいがピーク。それ以上伸ばすことは至難の業」との分析を示したことがある。これをSPA形式に換算(卸売りの売上高ではなく、店頭販売価格による売上高)すると数億~15億円程度ということになる。
よほどの大資本でない限りは、レディースのSPA型ブランドでもこのあたりが新規参入の限界点だということになる。

新規ブランドを開発する際にはこれらの事例を下敷きにすると、失敗する可能性が低減できるのではないか。

2015年以降のバーバリーはどうなる?

 海外ブランドのライセンス生産は危険だと言われる。
日本企業がライセンス生産でブランドを育てると、契約が打ち切られ、海外直轄の日本支社が作られてしまう。
年配のアパレル業界の方なら、「カネボウのディオールショック」と「デサントのアディダスショック」を思い浮かべられるのではないか。

「クリスチャン・ディオール」というブランドは90年代まで、あのカネボウが展開していた。
百億円単位の売上高があった。しかし、90年代に契約が打ち切られ、ディオールの日本支社が作られた。
「アディダス」も同じである。スポーツ大手メーカーのデサントがそれまでライセンス生産していたが、90年代にアディダスジャパンが作られたため、デサントは相当の痛手を被った。

その後、カネボウは会社自体が消滅した。デサントはアディダスショックを乗り越えて、新たなブランド群を育成している。もっともカネボウが消滅した理由はディオールではなく、ディオールがあってもカネボウは倒産しただろう。

さて、今注目されているのが、三陽商会と「バーバリー」の関係である。
これまで日本国内の「バーバリー」ブランドは三陽商会がライセンス生産してきた。
しかし、2020年まであった契約期間が2015年に短縮された。

さらに2008年には、英国本社の日本支社ともいうべきバーバリーインターナショナルが設立されており、直営店を東京に2店舗出店している。また、2012年秋冬から三陽商会のライセンス生産による「バーバリー」の子供服は廃止され、英国バーバリー社が製造したグローバルコレクションに切り替えられる。

これらはきちんとプレスリリースとして発表されている。

もはや着々と外堀は埋められている。
2015年以降、英国バーバリー社は三陽商会とライセンス契約を結ばないと予想される。
そもそも、契約を更新するつもりがあるのなら、契約期間を5年短縮しないだろう。

はてさて、2015年以降、三陽商会は「バーバリーショック」を乗り越えられるだろうか?

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