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三越伊勢丹、自壊の予兆

 三越伊勢丹HDの大西洋社長の電撃解任の背景の全容が各社の報道によってほぼ明らかになってきた。

その中でも日経ビジネス3月20日号の巻頭6ページ特集「三越伊勢丹、自壊の予兆」は経緯があますところなくまとめられており、自分の個人的見解とも重なる部分が多く、秀逸といえる。
ぜひ、ご一読をお薦めする。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/031300536/?ST=pc

各社の報道で改めて浮き彫りにされているのが、大西洋社長は現場の若手社員からはそれなりの信望を得ていたが、中間管理職や経営陣からの信望は得ていなかったということである。

大西社長はマスコミに積極的に顔を出し、マスコミでの発表を行うことで、社内を動かそうと考えていた。
実際に在職中にこれほど頻繁にテレビ、新聞、雑誌などのメディアに登場した百貨店社長はいないだろう。
これを「出たがり」「スタンドプレー」と評する人もいるが、実際に数度に渡ってインタビューしてみると「三越伊勢丹という社名の知名度をもっと高めるために、あえて積極的に出るようにしている」という答えが本人から返ってきたことがある。

それはおそらくその通りなのだろうと感じた。

一連の大西社長の独断専行は、「百貨店が今のままでは存続できない」という強い危機感からだった。
外部から来た人がその組織に対して強い危機感を抱くことは百貨店に限らず珍しいことではないが、生え抜き社長がここまでの強い危機感を持つというのは本当に珍しい。

逆に何がそこまで生え抜き社長の危機感を強めたのか不思議でならない。
ストレートにそれを質問したことがあるが、こちらの尋ね方が悪かったのか、納得のできる返事はなかった。

今回の日経ビジネスの特集でも書かれているように、大西社長の一連の行動は「百貨店事業を守るため」だったことは間違いない。
その真意が経営陣や管理職には伝わらなかったということで、伝え方が不味すぎたという部分は大西社長が反省すべき点である。
伝わらないということは、思ってもいないのも同然だからだ。

よく引き合いに出されるJフロントリテイリングと高島屋という競合他社は、百貨店事業から不動産事業や商業施設事業へと大きく舵を切っている。

強い者が生き残るのではなく、変化に対応できた者が生き残るとよく進化論が引き合いに出されるのだが、百貨店事業から他事業へと舵を切って生き残ることは正解の一つだといえる。
企業は「存続できてナンボ」みたいな部分があり、いくら理想をぶち上げても倒産してしまえばお終いだからだ。

三越との統合で生じた余剰人員を削らず、さらに百貨店事業をある程度守ろうとするなら、大西社長の取った多角化事業(個々の事業内容の正誤は別として)しか方法はなかった。

今回の一連の騒動で、週刊誌からも取材を受けたが、その中で週刊誌記者が「OBや現職に聞きまわったのですが『大西社長は優しいところがあるからリストラは避けたかったんじゃないか』という意見もありました」と話していて、それは事実なのだろうと感じる。

大西社長の一連の改革は未完のまま終わることになるが、どのような完成形を描いていたのかというは一度尋ねてみたい気もする。
日経ビジネス誌の中には、カルチュアコンビニエンスクラブとの提携が、実は「枚方Tサイト」の手法を地方店に導入する目的があったと書かれているが、これはその通りで昨年のインタビューの中でも直接聞くことができた。

解任騒動の決め手となった地方店の業態変更の具体案は「Tサイト」型店への移行をにらんでいたのではないかと推測している。

それにしても、大西社長を解任した結果、登場した新社長が「新規事業よりも構造改革を優先する」と明言したことは、中間管理職や経営陣にとっては、どう映ったのだろう。
否応なく、リストラが先行することになるのだが、大西社長を退任させたことは彼らにとって藪蛇だったのではないかと思える。

記事には「うちはJフロントリテイリングのようになってほしくない」という社員の声が採り上げられているが、杉江新社長の方針を素直に読むなら、Jフロント型百貨店への移行だと読める。

日経ビジネスでは、82年に会社を私物化して解任された三越の岡田茂社長、93年に改革を独断専行して解任された伊勢丹創業家4代目の小菅国安社長の事例も引き合いに出している。
スキャンダルまみれだった三越・岡田社長の解任は当てはまらないとしても、改革を急ぎ過ぎた伊勢丹・小菅社長の解任は、今回と重なる部分がある。

個人的に見るなら、伊勢丹という百貨店の弱みは、新宿店のみが突出し過ぎており、地方店が弱すぎて極めてアンバランスだという部分にある。
小菅社長は新宿本店依存度を下げる改革をしたかったとあり、大西社長はリストラを回避したままで百貨店事業依存度を下げる改革をしたかったという部分が重なる。
そして、その改革はどちらもほぼ独断専行で進められた点は同じだ。

ただ、改革は独断専行でないと成功しないこともあるから、一概に独断専行が悪く、合議制が正しいとも言えない。独断専行ができずに潰れてしまった企業もこれまで数多くある。

記事中には「腰が低く、改革を愚直に進めようとした大西社長に『独裁者』の表現は似合わない」とあるが、それはその通りで、世の中の人が思い描く「独裁者」像とはまるでかけ離れた紳士だった。
アパレル業界にはそれこそ絵に描いたような独裁者社長は多くいる。独裁者、暴君なんて掃いて捨てるほど見てきた。

そういう人々と比べると大西社長の人間性はまったく異なっている。

さて、日経ビジネスが指摘するように、三越伊勢丹は今回の騒動によって、ブランド力は相当傷ついている。
対応を誤るとタイトルにもある通り「自壊」しかねない状況にある。

三越と伊勢丹が合併して百貨店の王者になったと目されたが、実は経営は危機に陥っていたということになる。
統合後10年が経過してその病巣が白日の下に晒されることとなったが、これを取り除くことができなければ、市場から退場することになるだろう。


誰からも信頼される 三越伊勢丹の心づかい
株式会社三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ
KADOKAWA
2017-02-24



三越伊勢丹の社長解任劇で感じた百貨店従業員の認識の甘さ

 三越伊勢丹ホールディングスが杉江俊彦・次期社長の会見を行った。
出席していないので、それについて書かれた記事を読んだ感想をまとめてみたい。

ちなみに三越伊勢丹ホールディングスの次期社長は決まったが、百貨店事業を手掛ける三越伊勢丹の次期社長はまだ決まっていない。

各報道とも言葉遣いや書き方には違いがあるが(書いている人が違うため当たり前)、論調はほとんど同じだ。

三越伊勢丹、トップ交代で明示された「進路」
杉江次期社長「私は構造改革を優先する」
http://toyokeizai.net/articles/-/162603

社長辞任の三越伊勢丹、新トップは「大丸流」 数値・利益重視の経営目指し、不動産事業にも意欲
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031300619/?rt=nocnt

東洋経済オンラインと日経ビジネスオンラインの記事だが、論調はほぼ同じだ。

主要な骨子となる要素を箇条書きで挙げてみる。

1、杉江次期社長は、大西社長を支えてきた人物で大西路線を「基本的には」踏襲する
2、始まっている新規事業は当面継続するが、着手していない新規事業は再考する
3、構造改革、人件費削減を優先して進める
4、マネージメント層、管理職、役員との対話を優先する
5、おそらく百貨店事業は大西時代より重視されない

ということになる。

賛否はあったが、大西社長が新規事業を積極的に立ち上げたのは、各識者が指摘しておられるように、大規模なリストラを回避する目的があったと見られている。

百貨店という事業に人一倍の愛着を持っていた大西社長は百貨店事業を存続させるために、新規事業を多数立ち上げて事業の多角化を実現し、愛着のある百貨店事業を守ろうとしていた。
よく引き合いにだされるJフロントリテイリングは、「脱百貨店」を掲げており、各店舗内の百貨店従業員をかなり削減し、ユニクロやアダストリアなど従来百貨店には適さないとされていた低価格ブランドをテナントとして入店させている。

つい先ごろは栄の松坂屋にもヨドバシカメラをテナント入店させた。

大西社長はそのような「脱百貨店」はしたくないということを再三、過去のインタビューでも答えていたし、筆者が昨年行ったインタビューでも繰り返していた。

今回の電撃解任の理由は、労働組合とそれに同調した役員、管理職などによるものだとされていて、彼らの反発の原因は

1、相次ぐ新規事業の立ち上げによる労働強化
2、機関決定されていない地方店の縮小や業態転換などに言及した
3、地方店の縮小や業態転換への発言をリストラ解雇が始まると理解してしまった。(実際は誤解)

とされている。
個人的には、これら以外にも大西社長の持論である「スピード感重視」「危機感の強制」ということへの情緒的反発もあったのではないかと想像している。

大西社長のいう「スピード感」というのは、なんでも「早くやれ」「すぐに結果を出せ」ということではなく、即断即決、意思決定の速さ、行動に移るスピードアップということが主眼だったが、そこも誤解された部分もあるのではないか。
また、「危機感の強制」というのは、大西社長の百貨店事業への危機感というのは相当強く、筆者は「生え抜きでここまでの危機感を持つのは珍しい」と感じたほどである。

実際に、従来通りの百貨店事業を存続させようとすると、かなり難しい状況にあるし、生半可なことでは存続させることは難しい。今後は、大手百貨店も淘汰されることは目に見えており、例えば、そごう西武の決算はかなり追い込まれている。

すべてを捨てて「脱百貨店」をする必要はないが、百貨店事業を存続させるためには「何か」は変革しなくてはならなかった。

大西社長の立ち上げた新規事業や施策がすべて正しいとは思わないが、これまで通りのやり方では活路がなかったのは間違いない。

今回の電撃解任、次期社長の会見を見て感じることは、百貨店従業員の認識は恐ろしく甘いということである。
また、大西社長を引きずり降ろしたがために逆に構造改革・リストラが始まることになってしまっており、従業員側からすれば、なんというバカげた結果になっているのだろうと呆れてしまう。

ぬるま湯で保守的な体質な百貨店従業員は、急激な変化に反発を感じ、その元凶だと感じた大西社長を引きずり降ろしたが、それがかえってリストラを始めるきっかけになってしまうという結果になった。
今頃、彼らはどういう思いで次期社長の会見や一連の報道を眺めているのだろうか。

リストラを回避させるために行った解任劇がリストラ開始の引き金になっているという構図は、外野から見れば喜劇以外何物でもない。

先ほど挙げた日経ビジネスオンラインの記事にはこんな一節がある。

社内からは「経営者のタイプが変わったとしても、事業構造としてJフロントのような企業にはなるべきではなく、百貨店らしさを追求するべきだ」という声も聞こえる。

もうアホらしくて失笑を禁じ得ない。

百貨店らしさを追求したいのであれば大西社長を引きずり降ろすべきではなかったのである。
大西社長は「百貨店らしい百貨店」の存続を目指していた。計数に強い新経営者になれば、採算性の低い業態の在り方を変えられるのは当然だろう。

その程度の判断もできず、目先の現象のみに反発していた百貨店従業員というのは、本当にぬるま湯体質で危機感が欠如している。今回の一連の騒動でそれが明確に浮かび上がったといえる。

たしかに大西社長には対話や根回しが欠けていたかもしれないが、大規模リストラを回避し続けてきた。一方、次期社長は対話を重視する(と言っている)が、構造改革やリストラを先行させるのである。

従業員的立場に立つなら、どちらが自分たちにとって有利だったのか明らかではないか。

次期社長がいつごろから、どれくらいの規模で構造改革やリストラを行うのかは示されていないが、その時になって労働組合や従業員が「雇用を守れ」なんていう声を挙げてもナンセンスすぎて、外部からの支持は集まらないだろう。自分たちが望んで引き起こした結果である。

強いリーダーシップによるトップダウン方式の経営に激しい拒絶を見せた今回の電撃解任劇は、三越伊勢丹の「終わりの始まり」になるのではないかと、個人的には見ている。






改革路線が潰されて大規模リストラが始まる可能性も

 三越伊勢丹HDの大西洋社長が電撃解任される直接的な働きかけは労働組合からだった。

これを見るにつけ、一連の大西改革は現場社員にとっては苦痛だったのだろうと察せられる。
日経新聞の記事によると、少ない人員に対して次々と新しい仕事を積み上げられて現場は疲弊していたとされているが、まあ、それはその通りだったのだろう。

2012年から始まった大西改革の眼目は、

1、新規ビジネスを作り出すこと
2、従業員の意識改革

にあった。その次の段階もあったのではないかと思われるが、もうそれが形になることはない。

まず、1についてだが、外食やブライダルなどとの合弁会社設立、エステや旅行会社のM&A(企業買収)などを実行した。

EC強化やファッションヘッドラインという自社ウェブメディアの立ち上げもあった。

個々の事例を見ると、その意図がよく分からないものもあるし、効果があったとは言い難いものもある。

三越伊勢丹HDの百貨店依存比率は92%に及ぶ。
文字通り、「百貨店のみの一本足打法」である。
その一方で、百貨店事業の利益率は1%強しかなく、Jフロントリテイリングや高島屋に比べて格段に低い。

きらびやかな伊勢丹新宿本店のイメージや大西改革による話題性であまり注目されてこなかったが、足元はすでに崩れ始めていたといえる。

経営者ならここで選択が迫られる。

1、大規模な解雇を含めたリストラを行う
2、大規模解雇を回避するならほかの成長エンジンを作る

である。

実際に6回ほどインタビューをした個人的感想をいえば、大西社長は百貨店が大好きだった。
Jフロントリテイリングのような「脱百貨店」を唱えるつもりは毛頭なかった。

そうなると、大好きな百貨店を守り、雇用を守ろうとすると「百貨店自体を成長させる」か「百貨店事業以外の新規事業を立ち上げ、ホールディングス全体の収益をかさ上げする」という方針にならざるを得ない。

そして、大西社長は後者を選んだ。

小島健輔さんが、「大規模なリストラを先延ばしして受け皿としての新規事業作りを行っていた」と指摘されるのは、言い方は別として、そういう側面も十分にあったと考えられる。

「百貨店自体を成長させる」という構想は不可能だったのだろうかという疑問を抱く人もいるかもしれないが、これはかなり難しいのではないかと思う。
それほど簡単にできるなら、とっくの昔にどこぞの百貨店が実践しているだろう。

状況から大西社長の思考をたどると、

百貨店を守るために新規事業で収益をかさ上げする

そのためには従業員の意識改革が必要だ

という結論が導き出されたのだろうと思う。

いくつかの百貨店で催事販売をしたり、取材した感想でいうと、百貨店の従業員や管理職者は保守的でスピード感がなくて、危機感のない人が多い。(全員がそうだとは言わない)

大西社長はその体質に危機感を持ったのだろう。

自身の過去の著書でも、昨年のインタビューでも盛んに「スピードが遅い」「危機感がなさすぎる」を連発されている。

他業種の成長企業のスピード感を取り入れることを最重要課題としていた。
それが従業員にとっては苦痛だったのだろうと想像できる。

百貨店業界の危機を煽られるのも苦痛だったのかもしれない。

それでも状況を眺めると、百貨店業界は危機に瀕しているといえる。
売上高が6兆円を割り込み、地方店の閉店や撤退、倒産、営業譲渡が相次いでいる。

だからこそ、スピードを上げて新規事業や百貨店改革を成し遂げたかったのだろう。
もう百貨店にはのんびりゆっくり改革している時間はない、という思いだったのだろう。

今回の電撃解任は労働組合と現場従業員によるものなので、後任社長は当然、現場に対する配慮を強いられ、大規模で急激な改革はできにくくなる。
なぜなら、また労働組合と現場によって電撃解任される恐れがあるからだ。

自然と、改革のスピードは遅くなるし、改革自体がなくなる可能性もある。

違法なブラック経営者に従業員がNOを突き付けることは当然の権利だし、そうすべきである。

しかし、今回の場合はそれに相当するのかどうか。
むしろ、従業員の収入源である会社そのものが業績低迷をすると、大規模解雇をせざるを得なくなる。
百貨店という旧態依然とした企業が、従来通りのやり方では生き残れないというのは衆目の一致するところである。

大西改革をつぶしたことで却って大規模解雇を招きかねず、従業員は自分たちを窮地に追い込んだのかもしれない。

仮に、今後、三越伊勢丹が従来路線に戻るとするなら、その業績は必ず今以上に低迷する。
そうなった際には問答無用の大規模解雇が始まるだろう。
その時に労働組合が「雇用を守れ」と言い出してもそれは、後の祭りでしかない。




三越伊勢丹の従業員は「変わらないこと」を選んだように見える

 三越伊勢丹ホールディングスの今回の社長解任劇は、本当に興味深い。
大西社長を追い落としたのは誰だったのかというところに注目が集まっていたが、日経新聞の報道によるとそれは労働組合だったとのことである。

なんという強大な労組なのだろうか。

三越伊勢丹、大西改革に労組反旗 石塚会長が辞任迫る
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07I3B_X00C17A3EA2000/?dg=1&nf=1

百貨店最大手、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の経営トップが代わる。7日、大西洋社長(61)が辞任し、杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で昇格すると発表した。大西氏は収益の柱を増やそうと、多くの新規事業を進めてきた。これに現場が反発して、労働組合が辞任を要求。経営から距離を置きつつあった石塚邦雄会長(67)が辞任を迫る異常事態だった。

とのことである。

記事自体は途中までしか読めないが、この報道を元にまとめられたこのブログでおおよその顛末はわかる。

[三越伊勢丹社長降ろしのドラマが深い] 三越伊勢丹HDの労組が大西改革に反旗。辞任というより降ろされたに等しい。次期社長の杉江氏は融和派だが、また百貨店一本足経営に戻るつもりなのか、今後どうするのか。
http://www.okatai.com/blog/2017/03/07/mitsukoshi-isetan-rouso-onishi-sugie/

新しい試みに現場社員の負荷は増え続けていたが、インバウンド(訪日外国人)や富裕層による消費が拡大している局面はよかった

その効果がはがれ落ちると「『新規事業で収益を上げろ』と厳命されても対応できない」(関係者)と、隠れていたひずみが表面化

本業の立て直しに追われている中、最終的には労働組合の関係者が石塚氏に泣きつき、改善を強く要求する事態となった

事態が動き出したのは4日午後

「現場がもうもたない。構造改革による混乱の責任をとりやめてもらいたい」
三越伊勢丹HD本社の一室で石塚氏は大西氏にこう切り出し辞表を差し出した
 
なんと労働組合関係者が会長に直訴。で、会長が大西氏に、辞めてくれという事態。完全に社長降ろしの現場。

とのことである。

当初は、三越派による巻き返しかと考えられていたが、労組と現場が反発していたということで、もちろん、それに同調した上層部もいたことだろう。

三越伊勢丹に限らず、複数の百貨店で催事販売をした経験からいうと、百貨店の社員は基本的に保守的で新たな試みを嫌う人が多いと感じる。

矢継ぎ早にさまざまな改革が行われれば、当然それに対する現場からの反発はあっただろうと推察される。
また、大西社長自身もそれを知っていたので、なかなか現場が変わらないという発言もあった。

大西支持者の社員もいたが、結局は少数派だったということだろう。

著書でも買いているように、大西社長はとにかくスピードを上げることを重視した。
個人的な経験で言っても、百貨店はなかなか物事が決まりにくい。

そういう多くの社員はスピード化に反発を覚えたのだろう。

それでも実際のところは、社員が反発するほどのスピード化でもなく、三越伊勢丹との合弁相手の会社に取材をしたこともあるが、やっぱり百貨店の意思決定は遅いという感想を相手が抱いていた。

一例でいえば、出張でもそちらは即決するが、三越伊勢丹はなかなかその稟議が通らない。

現場からするとスピード化を強制されて苦痛だったのかもしれないが、異業種と比べるとまだまだ遅いのが実情である。

各報道で指摘されているように、三越伊勢丹の業績悪化に対する大西社長の経営責任はある。
4年以上も社長に就いていたのだから、責任追及されることは仕方がないだろう。

それでも百貨店事業比率が高すぎ、その百貨店事業そのものが苦戦に転じた状況下で、多角化という方針は完全なる間違いとは言えないのではないかと個人的には思う。

逆に新社長に就任する杉江俊彦専務が、「本業回帰」というメッセージを発しておられるが、大丈夫だろうかと疑問を感じる。
大西社長も多角化とは言いながら、本質的には百貨店重視の姿勢であり、その結果が現在の業績悪化なのである。これ以上さらに百貨店を重視するという姿勢で効果が出るのだろうか。

また、今回の解任劇で三越伊勢丹のイメージは悪化した。
この悪イメージを逆転させるのは簡単なことではない。

単なる本業回帰だけではまったく効果がないだろう。

これから中期的には三越伊勢丹にかなり厳しい状況が続くだろうと見ているが、果たしてどうなることやら。



大西洋漂流76日間 (ハヤカワ文庫NF)
スティーヴン キャラハン
早川書房
1999-05



1月のセールも遅らせちゃうの?

 今日から三越伊勢丹グループが夏のセールを開始する。
これで夏のセールが一通りそろったことになるが、何だか間延びした印象しかない。

このセールが始まる前に、ルミネと三越伊勢丹が早々と来年1月のセール日程を発表したと耳にした。
ルミネが1月17日から、三越伊勢丹が1月18日からだという。

もしこれが本当に実行されたら、今年7月のセール以上に店頭はカオスな雰囲気になるのではないだろうか。

1月のセールは郊外型ショッピングセンターだと元旦から、都心百貨店・ファッションビルは2日からとなっている。
元旦も2日も福袋目当ての買い物客でにぎわう。
ブランドごとによって多少異なるが、福袋販売の初売りと同時にセールを行うところと、3日か4日くらいからセールを行うところがある。

この初売りとセール開始が重なることで、冬のセールは夏の何倍も賑わう。
夏のセールでは、この10年間、開店前の行列などあまり見たことがないが、冬は長蛇の列ができる。
行列に並ぶのは嫌いだが、傍から見ていると「盛り上がり感」は感じられる。

福袋を買った高揚感で、そのまま他のセール品も買ってしまう。
そのような購買行動も珍しくは無い。

ところが、2日の福袋販売が行われて、セールが17日とか18日からになるとそこまでの盛り上がり感は生まれないだろう。
一先ず福袋は買ったとして、そのあと、10日以上もセールは先なのだからとりあえず冷静に戻る。
で、よーく考え直すと「この間見たセーターだけども良く似た物を持っていたから、買うのは止めておこう」となる。

他のファッションビルや百貨店はそのまま従来通りにセールを開始したとすると、先にそちらで買ってしまう可能性が高い。

何より、各ブランドが12月中頃から「プレセール」「フライングセール」を行うだろうから、1月17日や18日に開始するころには消費者のバーゲン熱も冷めてしまっているのではないだろうか。

販売サイクルを見直そうという大義には賛同する部分もあるが、過去20年間に渡ってセールは早期化してきた。当時20歳だった若者は40歳の中年になっている。当時生まれた子供が今では二十歳前後の消費者に成長している。
40歳くらいまでの消費者は「セールは早くて当たり前」という認識を持っている。

それを今ごろ、セール時期を元に戻すのは並大抵の労力ではない。
かなり長期的な取り組みが必要だが、ルミネと三越伊勢丹は何年間にも渡ってこれをやり続ける意志があるのだろうか。

1月のセール開始時期を遅らせるのは、今夏のセール結果を見てから発表しても良かったのではないか。

バーゲン開始時期を遅らせても収益は改善しない

 三越伊勢丹とルミネが今夏のバーゲン開始時期を遅らせるということが決定したようだ。
23日付けの各紙で報じられている。

http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20120423/JCast_129977.html

 三越伊勢丹ホールディングスは2012年7月13日から首都圏の主要9店舗でセールを開始するため、現在準備を進めている。東急百貨店も13日から2週間、首都圏の4店でセールを実施。駅直結の商業ビルを運営しているルミネ(東京・渋谷区)も全15店でのセールを7月12日から開始するとした。

バブル崩壊後に前倒しが進められてきたバーゲンセールだが、最近の消費動向は「『暑くなる前に買う』より『暑くなってから買う』という、季節の変動に合うような消費に変わってきている」(ルミネ広報)。時期を遅らせることで「欲しい時に欲しいものが揃っている」状況を作り出すことが各社の狙いだ。

とのことである。

日経新聞は「収益改善が目的」と報じている。

たしかに、季節先取りで買う消費者は減っており、よほどのファッション好きだけである。
大多数の消費者はルミネの広報が言うように体感気温に応じて夏物・冬物を買う。

今年3月・4月の売れ具合を見てもそれは一目瞭然である。
ある百貨店向け肌着メーカーは「今年は寒い時期が長かったので4月の1週目まで保温肌着が好調に動きました」という。
昨年は11月中頃まで25度以上の気温が続いた。
そうすると、当然のことながら防寒アウターは12月まで動かなかった。
12月はすでにプレセール時期であり、20%程度の割引で販売されており定価販売ではない。

だからユニクロが7月中旬にヒートテックを売り場に投入するのを見ると「見ただけで暑苦しいわ」とつい思ってしまうし、1月末に半袖ドライポロシャツが投入されれば「見てる方が凍えるわ」と感じてしまう。
「季節先取りで憧れちゃう~」などという消費者はバブル崩壊とともに消え去ったのだろう。

しかし、である。

セールを7月13日に遅らせたからと言って「収益改善」がはたされるのだろうか?
残念ながらそうは思えない。

少し開始時期を遅らせたからと言って、7月13日まで消費者はよほど欲しい物以外はバーゲン待ちするだろうから、定価販売が増えるとは考えにくい。
さらに、7月13日にセールが始まってもその期間内に全商品が完売することはあり得ない。そのため、例年通り盆明けごろまで残った商品をさらに値下げして叩き売ることになる。
収益はほとんど改善しないだろう。

かと言って、セール早期化を野放しにしておいて、7月末から初秋物や秋物を早めに立ち上げても売れるとは思わない。
なぜなら、体感温度で買う人が主流だからだ。
7月末は暑さもピークである。そんな時期に秋物を早めに、しかも定価で買うのはごく少数のファッション大好き人間くらいである。

セール時期を7月中旬とか7月上旬に戻すという取り組み自体は賛成だが、かなり厳しい状況が待ち受けており「経営陣がどこまで我慢できるか」にかかっているとしか言いようがない。

さて、件の元編集長がこの件について書かれている。
http://ameblo.jp/3819tune1224/entry-11232129843.html

私は元々バーゲンは春夏ものは旧盆以降、秋冬ものは成人式以降と長年言い続けてきた。

でもさあ、自分たちが売れ残りを危惧するためなのか、自分たちでバーゲン時期を早め早めにしていったのは1980年代半ば過ぎからだった。

そんなことをしたら自分で自分の首を絞めることになると言っても、だれも耳をかさなかった。ザマヲみろ自業自得だイイ気味だとさえ思った。

今じゃあシーズン・インの時期からバーゲンやっているのだから。私には信じられないことだが現実。

今ごろになってバーゲン時期を後倒しだってさ。

遅すぎるってんだ!

自分たちの反省なしで、正価販売の期間を延ばして売り上げ増をという安易な考え方ではないか。

百貨店の考えることってこんなものさ。

だってさ、もの心付いた年代からバーゲン早い時期育ちは既に30代半ば以上なんだぜ。今の若者は全員早いバーゲン育ちなんだヨ。

てことは今の若者から高齢者までなんだ。

早い時期のバーゲン買い物を長年してきた人たちに、正価販売を少しでも長くなんて考えたって見込みほど売り上げ増になるとは思えない。

自分たちの冒してきた反省をしてみることから考えないといけない。

とのことである。
まさに「今ごろ遅すぎる」である。遅めのバーゲン開始が再び定着するまで数年~10年くらいの月日が必要だろう。こらえ性のない経営者たちがそこまで我慢し続けられるか、である。
筆者は、おそらく2年か3年で音を上げると予想している。

今後の成り行きに注目したい。
動向ではなく、あくまでも「成り行き」に。

三越伊勢丹が夏セールの7月後半開始を検討

 さて、福袋なのだが、今年はクリスマス明けから販売する店が出現した。
また別の店では、12月31日から販売するという。

これならいっそのこと、通年で福袋を販売すれば良いと思うのだが、それだけ在庫が余っているのだろう。

今年は、3月の東日本大震災があり、繊維アパレル業界にとってもなかなか厳しい年だった。
震災の影響もあり、今年は6月16日から夏セールが始まった。
これまで、セールはずっと早期化が進行してきたが、6月半ばという日程は異例に早い。

もっとも、6月下旬から「プレセール」が半ば堂々と開始されていたので、実際はあまり変わらないのかもしれないのだが。

一方、冬のセールも年々早期化していたが、現在は、量販店型ショッピングモールが元旦から、百貨店・ファッションビルが1月2日からと、もうこれ以上の早期化は不可能である。
その苦肉の策として、12月10日過ぎからの「プレセール」「フライングセール」「シークレットセール」などが活発化してきた。

今回の「福袋の年内販売開始」はセール早期化の一つの新しい形態だと感じる。
新しい形態だが、これについてはまったく賛同できないのであるが。

そうした中、12月21日の繊研新聞の1面に
「夏セール、7月後半へ」という記事が掲載されている。

これは、三越伊勢丹の大西洋社長のインタビューである。
「盛夏物の需要ピークにクリアランスをして、販売機会を自分たちで失わせている」と指摘。
そこで2012年の夏セールを7月後半~8月に実施する検討を始めた。
という。

その心意気には賛同するが、これはまだ「検討を始めた」段階である。
もし、実際に7月後半からセールを開始した場合、2012年の7月販売状況は間違いなく、前年実績を割ると予想する。
これに、経営陣が耐えられるかどうかである。
百貨店に限らずだが、日本の小売り・流通業は前年実績主義に囚われている。
これを断ち切らないとセール時期をずらすという施策は難しい。
2012年7月の状況を見て、「やっぱり背に腹は代えられないよねえ」と言って、
2013年から「セールは7月1日に戻します」と宣言する可能性は非常に高いと思う。

そんなわけで「検討が終わった」後の三越伊勢丹の発表を待ちたい。

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