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社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。

バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。

で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。

ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



ワールドの持株会社の新社名を見て感じること

 かねてより4月1日から持ち株会社に移行すると発表されていたワールドだが、その各社の新社名が発表された。

数が多すぎて覚えきれないので以下を参照してもらいたい。

http://www.senken.co.jp/news/corporation/world-170214/

さて、一覧表でみてもらってもわかるように「ワールド」の冠が付く会社と、そうでない会社がある。

ここからは個人的な意見になるが、「ワールド」の冠が付かない会社は基本的に今後売却される方向になるのではないかと見ている。

そもそも「持ち株会社」にするメリットとは一般的に

企業買収や事業売却などがスムーズに行いやすい事です。

他の会社を買収する際、吸収合併するには時間も手間もかかります。買収される側の企業には、クライアントや顧客への社名変更の告知、あるいは看板やら社員の名刺やら、色んなものを変更する必要があり、膨大なコストが掛かります。社名変更に伴い、手違いなど大小様々なトラブルも起こるでしょう。

ところが、持株会社を設けていて、その傘下に入る形式にすれば、買収される企業はそのままの社名で事業を継続でき、コストやトラブルはほとんど発生しません。同様に、事業の一部を売却する場合も、持株会社にしていれば様々な手間やコストを省略できます。

http://www.777money.com/tameru/column/motikabu_riyuu.html

と説明されている。

だから、ワールドが持ち株会社制にするのは、企業買収もさることながら、不振ブランドの売却が目的ではないかと個人的には見ている。

そして「ワールド」の冠が付かない新会社はその対象ではないかと思う。

先程の繊研プラスの一覧表を見ると、ワールドの冠が付く会社はいわゆる管理、開発会社がほとんどで、それ以外のメンズ、レディース、セレクトなどの業態はすべてワールドの冠が付かないので、今後ワールドは管理・開発関係の会社のみ残して、メンズやレディースなどは条件次第で売却することがあり得るのではないかと思う。

一つだけ奇異に感じるのは、卸売り事業だけが「ワールド」の冠を付けた社名を与えられており、ここは手放すつもりはないようだ。

アパレル業界は90年代後半から狂ったようにSPA化を推進してきたが、近年、そのSPA事業が行き詰まる企業が増えた。
ワールドしかりイトキンしかり三陽商会しかりである。

逆にここ2~3年は卸売り事業が見直される会社も出てきた。
ワールドもその一つである。
売上高は大きく伸びないものの、ある程度の利益率は確保できるからだ。

ワールドは寺井秀蔵社長のもと、97年から猛烈な勢いで卸売り事業を毎年縮小し続けてきた。
2003年ごろまで筆者は決算会見に出席していたが、「今年は卸売り事業を〇〇%縮小しました」とむしろ誇らしげに発表されていたことを覚えている。

しかし、猛烈なSPA化は近年の業界を見ていれば諸刃の剣だったことがわかる。

SPAはたしかに成功すれば高収益が見込めるが、売り上げ不振に陥れば立て直すことが難しい。
なぜなら、企画から販売までを一貫で手掛けているため、店頭の売れ行きを修正しにくいからだ。
売れないということはその店自体、ブランド自体が支持されにくくなっているため、店舗内装も含めてよほど大幅な軌道修正でもしない限りは、消費者に振り向いてもらうことができない。

極端な話、ブランド名は同じでも丸っきりすべてを変えてしまうくらいのことが要求される。

一方、卸売りは、売り上げ規模を大きくするのは難しいが、売り先を変えることができる。
なぜなら、売り先は自社店舗ではなく他社店舗だからだ。

A店から売り先をC店に変える。

そんなことが可能になる。

結果的に、C店に変えたおかげでブランド自体の消費者イメージが変わることもある。

だから卸売り業態が見直されつつあり、ワールドもその例外ではないといわれており、卸売り事業だけがワールドの冠を残すようになったと業界ではみられている。

ワールドに限らず、業界には売りに出されているブランドが数多くあるが、不振SPAブランドは総じて評価が低く買い手がつかない状況にある。

さて、今後は、ワールドも含めて様々なかつての著名ブランドが売却や廃止の憂き目を見ると考えられており、ブランド勢力図は大きく変化することになるだろう。

5年後、10年後はどのようになっているのか、なかなか想像もできない。



コスト削減だけでは縮小し続けることになる

 経営が悪化した企業はコスト削減を行う。
これは定石だが、削減した後に新たな方策を打ち出さないと、そのまま業績は縮小し続けることになる。

先日、ワールドの2016年3月期の決算が発表された。
利益は大幅に改善されたが、これはブランド閉鎖、店舗閉鎖、首切りを含めたリストラによって生じた利益で、
本体事業が好転したわけではない。
要するに服が売れて業績が回復したのではないということである。

ワールド、営業利益2.2倍  13ブランド・479店舗閉鎖で販管費圧縮
https://www.wwdjapan.com/business/2016/05/17/00020547.html

ワールドの2016年3月期決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比93.2%の2782億円、営業利益が同221.7%の116億円、純利益が16.5%の7億4300万円だった。抜本的構造改革で推進したブランド閉鎖と不採算店舗退店によって減収したものの、販管費を約180億円圧縮したことで営業利益は倍増した。上山健二・社長が昨年の就任時に宣言した「17年3月期に営業利益100億円突破」の目標を1年前倒しで達成した。

不採算事業の整理では、上期の「アニマ」「ジンジャーエール」に続き、下期に「コキュ」「ミニマム」「フリーピープル」「ボイコット」「ラギッドファクトリー」「ブラウンバニー」「アナザーサイドスクエア」「メディテラス」「フォブコープエンテーゼ」「ラフマ」「ブールアネージュ」の13事業を閉鎖した。国内連結退店数は479店舗。終了事業の赤字総額は10億円だった。

とのことである。

ワールドが今期何か効果的な新しい取り組みがあるかというと筆者の目には皆無に見える。
ネット通販の強化を昨年に発表したが、正直なところ今のワールドのやり方でネット通販が大幅に伸びるとは思えない。
ワールドだけではない。オンワード樫山もファイブフォックスもTSIもイトキンも今のやり方ではネット通販が大きく伸びる可能性は限りなくゼロに近い。

そもそもこれらの旧大手各社はウェブ上での露出があまりにも少ない。
投稿があったとしても職務を遂行したレベルの面白みのない投稿しかない。
これではウェブでのファンは増えない。

インスタグラマーを積極的に使っている(もちろん有料で)ユニクロやジーユーの後塵をここでも拝しているわけである。

上にワールドの廃止ブランドが列挙されているが、例えばアニマとかジンジャーエールみたいな泡沫ブランドはともかくとして、ボイコットなんていうかつての著名ブランドが廃止になっているが、ウェブ上ではほとんど話題にはならなかった。
それほどまでに旧大手の各ブランドの注目度は低下しているといえる。

コスト削減だけを続けているなら、このまま縮小し続けていくことになるだろう。

大手ばかりではなく、中小零細企業でもそういう企業がアパレル業界には多い。

先日、某カジュアルアパレルに勤務する知人から連絡があった。
コンサルタントの進言を入れて、コスト削減に取り組むそうである。
まあ、他人の会社なのでどうなろうとまったく構わないのだが、聞いていると基幹ブランドだけ残して、新規ブランドはすべて廃止するそうである。

こういう企業は身の回りでけっこうある。

コスト削減に取り組むことは当然として、そもそもその基幹ブランドが凋落してきたから新規ブランドを開始したという経緯がある。
ブランドというものはいずれ勢いがなくなるので、その時に備えて複数のブランドを展開しておくほうがリスクが少ない。
新規ブランドを廃止して、凋落した基幹ブランドに特化したところでこれまでのやり方を改めることができなければこのまま縮小し続けることになる。

おそらくこのまま基幹ブランドにしがみついて縮小スパイラルに陥っていくと見ている。

基幹ブランドを大胆にリニューアルすることもできなければ、これまでのやり方を墨守して、あと10年持つかどうかではないかと思う。

コスト削減、不採算ブランドの廃止は経営回復には必要不可欠だが、次の成長戦略も同時に必要とされる。
アパレル業界は閉塞感が長らく漂っているがゆえに、新たなことに積極的に取り組める体質ではなくなりつつある。
失敗ができるほど余裕がない。もっと正確にいうと経営者に余裕がない。

今回挙げた旧大手や某カジュアルアパレルのように縮小スパイラルに突入して、遠からずなくなる企業、ブランドがまだまだ現れることだけは間違いないだろう。




ファッション雑誌掲載とタレントとの契約は必ずしも効力を発揮しなくなった

 衣料品ブランドの販促について考えさせられることがあった。

まったく無力化しているわけではなく、それなりに効力がある場合もあるのだが、ファッション雑誌への掲載・広告出稿とタレントとの契約は格段に影響力が小さくなっている。

ファッション雑誌への掲載・広告出稿と人気タレントとの契約という手法は2000年代半ばでピークアウトした手法だと感じる。

70年代・80年代にこの手法がどれくらい有効だったのかは、筆者が学生だったのでわからないが、90年代はこの手法がもっとも有効だった。
2016年現在も多少の効力は残っており、ときどきこれが当たるブランドもある。
しかし、90年代から2000年半ばまではこの手法を採れば8割くらいのブランドがなんらかの効果を得ていた。

現在だとこの手法で効果を得られるブランドは2~3割ではないかと思う。
決して今でもバカにはできない手法だが、必ず効果のある手法ではなくなったといえる。

【 実践 】雑誌の編集方法から学ぶ、売れる販促・プロモーション術 <前編>
https://armador.co.jp/blog/promotion2/

まずファッション誌に掲載するという選択肢は、予算があったとしても即刻選択肢から外します。理由としては、営業担当者が持ってきた好きでもないブランドが編集担当者にぞんざいに扱われ、フォーマット通りのタイアップページしか出来上がってこないことを知っているから。

あ、すいません!いきなり核心ついてしまいましたか?じゃ濁します。そういうところが中にはあるから(笑)。

雑誌に何百万もかけて掲載するなら、美容師さんのように一着売ったら何%バックという感じで店舗スタッフの方に還元した方がよっぽど売上が上がると思います。つか上がります。

じゃ、どうするかというと自社のシーズンカタログ、ニュースレター、メルマガ、SNS、通販ページのランディングページといった自社が持つメディアを使っていきます。

と書かれており、一部の例外を除いて大部分はここで指摘されている通りである。

これが2016年現在の販促のセオリーではないか。

先日、久しぶりに某大手アパレルの人と話す機会があった。
そのアパレルはショッピングセンターへのテナント出店用の低価格ブランドを展開しているのだが、そのブランド名を存じ上げなかった。
しかしよく聴いてみると売上高が80億円内外あるそうである。

いくら量販店内のテナントとはいえ、80億円というとそれなりの規模であり、1月末で全店閉鎖になるイーブスや、先日民事再生法を申請したWOMBよりもよほど大規模である。

それでもブランドの知名度が低いということは、販促、広報活動が効果的ではないということになる。

さらにいろいろと尋ねてみると、かつては佐々木希さんや優香さんをキャラクター起用したこともあるとのことだが、それすらも筆者の記憶にはまったく残っていない。
ついでにいうとそういうタレントは2,3年おきにいろいろなブランドと契約するので、どのブランドと契約していたかなんてすべて把握するのはよほどタレント自体に興味を持っている人以外は不可能である。

そして筆者はタレントにこれっぽっちも興味を持っていない。

すでにタレントとの契約にそれほど効果がないということはこの80億円規模のブランドが証明しているではないか。
もちろん例外もあるが、最早「人気タレントと契約していれば確実」という時代ではなくなっている。

ドラマへの衣装提供は効力を発揮する場合があるといわれているが、これとても90年代後半から2000年代半ばまでの比ではない。
効力を発揮する場合もあるが、まるで無反応な場合も多い。

雑誌、タレントとの契約、ドラマへの衣装提供、この3つにこだわる広報、プレスは現在も数多く残っているが、2000年代半ばまでの成功体験に固執しているだけだといえる。

また別のメンズブランドは2010年以降、超人気俳優を起用して3カ月連続で6ページごとのタイアップ記事をファッション雑誌に掲載したが、あえなくブランドは休止である。
その人気俳優は松本潤さんとか小栗旬さんとか松田翔太さんクラスの人気俳優であるが、結果的にはまったく効力がなかったといえる。

オムニチャネル化が叫ばれている現在では、先のブログが指摘する通り、雑誌への掲載はもっとも後回しにしてSNSを活用してECを強化することが最重要課題ではないかと思う。

しかし、以前にも書いたように、すでに大手ECモールと直営サイトがひしめき合っている状況下において、「単に出店」すれば良いというものではない。
それでは確実に埋没してしまう。

昨年、ワールドの新社長に就任した上山健二氏はインタビューでこう答えている。

https://www.wwdjapan.com/focus/interview/president/2015-05-07/6913

上山:カギを握るのはウェブだ。出店だけがお客さまへのアプローチではない。もっとウェブでバズを起こして、お客さまに商品やブランドを訴求する方法があるはず。リアル店舗を否定するわけではないが、まず出店ありきという発想は変えないといけない。ワールドが持つ魅力的なブランドや多様な店舗網とウェブを効果的に連動させたO2Oを構築する。eコマースにも注力する。当社のデジタルプラットフォーム本部は「WWW.300(ワールドワイドウェブ300) 」という目標を掲げた。現在、eコマースの売上高は130億円内外。これを中期的に300 億円規模に育てる。

とのことである。
目標設定としては過不足ない。
しかし、どうやって売上高を2倍以上に高めるつもりだろうか?
またぞろ、ファッション雑誌、タレント契約という過去の遺物の手法に頼るつもりだろうか?
それがまったく効果がなくなったことはワールド自身が一番感じていると思うのだが。

続けて

当社のeコマースは今 のところ自社ブランドを巨大モールのようにそろえる「ワールド オンライン ストア」で行っている。だが、ブランドのコアなファンのお客さまの心に響くようにするために、ブランドごとに個性的なeコマースサイトを作 る必要がある。店舗の内装を磨くように、各ブランドのサイトを光らせたい。

とも述べておられるが、内装を光らせるだけではウェブの場合、集客力は上昇しない。

例えば、雑誌的コーディネイトを数多く掲載している携帯通販の夢展望が赤字を続けている。
陳列手法から言えばピーク時から変わっていないし、ピーク時から年月が経過した分、洗練されているはずであるが、厳しい業績が続いている。

単に「陳列手法」だけでは効果がないという実例ではないか。

SNSで注目を集めるためには、「広告」「宣伝」的な書き込みよりも、「読み物」的な書き込みを強化する必要がある。
「読み物」的書き込みを強化すれば、当然好き嫌いが生じ、ファンも獲得できるがアンチも相当数生んでしまう。

全方位を狙った優等生的書き込みを続けているワールドを含めた大手アパレル各社がそこに踏み込むことができるだろうか。
筆者はできないと見ている。
なぜできないかというと上層部と現場スタッフがアンチを生じさせることを過度に恐れているからだ。

ユニクロのように全世代に売ることを目指しているならそういう姿勢でも良いが、大手アパレル各社は最早そんな悠長なことを言っていられる状況ではない。
どうせ数十億円規模の各ブランドを強化するほかないのだから、ブランドが顧客を絞り込まねばならない。
そのためには万人に過不足のない書き込みよりも、アンチが生じようとも、ターゲット層に響く書き込みをする必要がある。

その覚悟が持てないうちは、EC強化なんて絶対に実現できないだろうし、ファッション雑誌・タレント契約に固執している間はブランドの業績は絶対に上向くことはない。


海外進出が成功に結びつくとは限らない

 先日、こんな記事を拝読した。

タイトルに興味を持った。

アパレルの常識を変えたワールドとZARA、
なぜ明暗が分かれたのか
http://diamond.jp/articles/-/81941

である。

随分と興味深い比較論のようだ。
これまでファストファッションとよばれるグローバルSPAブランドとの比較対象となった国内ブランドはユニクロだった。

「ユニクロ帝国の光と影」でもその著者はZARAとの比較を行っている。

そのグローバルSPAと国内アパレルの大手、ワールドとの比較はなかなか興味深い。
そう思って記事を読み始めた。

が、期待外れも良いところだった。

3ページ目にこんな結論が出されている。引用しよう。

ザラとワールド、
明暗が分かれた最大の要因

佐藤 近年、ワールドの業績は低迷し、現在、リストラを推進しています。ザラとワールドはともにオペレーションに優れた会社でありながら、業績に差が出た理由は何だと思いますか。

ラマン 海外戦略だと思います。今、成功しているアパレルメーカーは海外進出によって成長しています。ザラがスペインの国内市場だけでビジネスをしていたら、これほど成長していなかったでしょう。

とのことであるが、アホらしくて話にならない。
海外進出をしていないからワールドがダメになったということらしいが、ワールドはすでに90年代後半に海外進出をしている。
ワールドだけじゃない。イトキンもオンワード樫山も大手は90年代後半に海外進出している。

進出先は中国だった。

結果をいうと2005年くらいまでで全社失敗している。
オンワード樫山のICBというブランドはこれはアジア進出のためのブランドだったが、2005年以降はどうだ?
ICBなんていうブランド名は業界ではほとんど耳にしない。


近隣国への進出は海外進出と言わないなんて詭弁を弄されそうだが、たとえば、日本に上陸して話題を集めた北欧の雑貨ブランド「フライングタイガー」だが、ふれこみとしてはグローバル雑貨ブランドだったが、日本以外のほとんどの直営店はヨーロッパにしかなかった。
近隣諸国にしか進出していないのに、グローバルブランドを名乗っていたわけである。
自発的に名乗ったのか、また例のごとくメディアがピントのズレた冠をかぶせたのかは知らないが。

フライングタイガーが近隣国にしか出店していないのにグローバルブランドを名乗れるのなら、ワールドらの中国進出も立派にグローバルブランドを目指した海外進出といえるだろう。
彼らは結果的には失敗したが。
失敗した理由は彼らが現地にローカライズできなかったからだ。

ローカライズできなくて撤退したグローバル企業なんて掃いて捨てるほどある。
カルフールとテスコはその典型だろう。
ウォルマートも鳴かず飛ばずだ。
別にローカライズが下手くそなのは日本アパレルだけではない。米国企業も英国企業も仏国企業も下手くそな企業はとことん下手くそなのである。

ワールドとZARAを分けたのは海外進出ではない。

ワールドはPOSレジとそれに連動したQRシステムでどんどんと売れ筋商品を深追いするシステムを確立した。
POSで読み取ったデータをQR対応で生産して10日後とか2週間後くらいにはまた店頭に並べる。
売れ筋をとことん追求するのはビジネスの基本ともいえるが、ファッション衣料ではとことん補充することが逆にマイナスに作用することもある。

10日後にはまた店頭に補充されるとわかっていたら、消費者は「今すぐに」買わなくなる。
どうせ後日来ても商品は残っているのだ。
今、わざわざ買う必要はない。
夏冬のバーゲン時期まで待ってもおそらく残っているだろう。
だったらバーゲンまで待った方がお得である。

ZARAの商品は売り切れ御免である。
店頭で売り切れた商品を追加補充することはめったにない。
だから今買わないといけないという危機感を覚える。

ZARAの店頭を見ると、メンズはけっこう投げ売り価格まで値下がりしていることが多いが、ZARAのメインはレディースである。レディースではメンズほど投げ売り商品がない。
ある商社関係者によると、ZARAの全世界売上高の男女構成比は圧倒的にレディースが多いそうである。
その人によると、売上高の8割~9割がレディースだそうだ。

各店舗にはおそらく1型あたり30枚とか50枚くらいを配布しているのだろう。

個人経営の専門店から見れば、多いと感じる枚数だが、ZARAからするとそんなに多くない。
通常、30枚とか50枚なんて小ロットを縫製したら、縫製工賃は割高になるのだが、ZARAは世界中に店舗があるから、たとえ1店舗50枚ずつ配布しても生産数量からいうと何万枚という枚数になる。

だから縫製工賃を安く抑え、店頭販売価格も安くできる。

ZARAとワールドを比べたいのであれば、売り切れ御免とPOSとQRで売れ筋をとことんまで追求した体制とを比較すべきである。
その上で、ファッション衣料にはどちらの方法が適切なのかということを考えなくてはならない。

そうでなくて、「海外進出」にその答えを見出すのなら、それは業界をミスリードするだけに終わる。
今回の記事なんて素直に読めば「成功するには海外進出すべき」としか読めない。

海外進出が成功のカギなら、なぜ2000年代前半に中国へ進出したワールドがこれほどまでにボロボロになっているのか。

過去にどれだけの企業がこういう無責任な海外進出論に踊らされたことか。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20




都心旗艦店やスタイリスト起用などの手法は必ずしも有効ではなくなった

 ワールドの中間決算が発表された。
数字の推移よりは、どのブランドが廃止され、どれだけの店舗が閉鎖されたのかの方が今回は興味があった。

ワールド、上期に181店を閉鎖 「アニマ」「ジンジャーエール」終了
https://www.wwdjapan.com/business/2015/11/17/00018727.html

店舗の閉鎖数とブランド廃止を報じているのはこれくらいしかない。
他メディアは遠慮したのだろうか?

中身を見てみよう。

 ワールドは17日に開催した2015年4~9月期決算の会見で、「アニマ(ANIMA)」「ジンジャーエール(GINGERALE)」の2事業を終了したことを正式に発表した。上山健二・社長が掲げた抜本的構造改革の一環で、10〜15ブランドの撤退と400~500店舗の閉鎖する方針を5月に公表していた。

「アニマ」は12年春にスタートしたスポーツ・ライフスタイルブランドで、14年度の売上高は3億円、15年度上期は1億円。原宿・明治通りに面した旗艦店を含む計7店舗を閉店した。

「ジンジャーエール」はスタイリストの百々千晴を起用し13年秋に始動。14年度の売上高は2億円で、15年度上期は1億円に満たない状況だった。こちらもすでに駅ビルを中心に開いた4店舗を退店している。

とある。

どちらも年商規模が1億円程度の泡沫ブランドであるから、廃止はまったく不思議ではない。
もっと有名なブランドも今秋冬商品で廃止が決まっていると言われているが、その発表はなかったらしい。

年商1億円と書かかれているが、アニマの場合は7店舗で1億円だから1店舗あたりの年間売上高は1500万円くらいしかなかったことになる。
かなり売れ行きが悪かったことが容易に想像できる。

個人的に注目したのが、両ブランドの販売方法である。
アニマは原宿・明治通り沿いに旗艦店を出店している。
一方のジンジャーエールはスタイリストの百々千春を起用して商品づくりをしている。

アパレル業界では極めて王道というブランド戦略だが、この王道の戦略がまったく通じなかったことが印象的だと感じる。
おそらく、その手法は過去の遺物に成り下がっており、消費意欲を喚起するものではなくなってしまったということではないか。

東京都心に旗艦店を作る、スタイリストと提携した商品企画、どちらもこれまで、売れるためのブランド作りの手法として疑いを持たれたことのない手法である。

正直に言って、ファッションには疎いのでこのスタイリストが有名なのかどうなのかぜんぜんわからない。
まあ、わざわざ起用されたくらいだからそこそこは有名なのだろうと推測する。

個人的には、スタイリストという職種の人が上手く商品企画をできるとはあまり思えない。
なぜなら、スタイリストの能力というのは、市場に提案された商品を組み合わせて再編集する能力だからだ。
今現在、市場にない物を構想したり形にしたりする能力とはまったく別種の能力である。

もちろん例外的なスタイリストもおられるだろうが、多くのスタイリストに商品デザインや商品企画能力が備わっているとは考えにくい。
商品企画ができたとしてもそれは、おそらく「いつかどこかで見たことのある商品の焼き直し」であろう。

となると、それはどこかのブランドの後追い企画でしかないということになる。

商品、売り場の同質化について危機感が出始めている現在の状況下において、スタイリストの起用がそれを打破する切り札にはなりえない。おそらく今後はスタイリスト起用ブランドというのは減っていくのではないかと考えている。

さて、閉店内容も見てみよう。

上期は百貨店流通で66店、駅ビル・ファッションビル流通で55店、ショッピングセンター流通で41店、その他19店の計181店を閉めた。下期はショッピングセンター流通の店舗の退店が増加する見通しだ。

とのことである。

ワールドの撤退店舗はショッピングセンターが中心になるということである。

そして、実は、業界内では「某大手GMSにワールドが切られた」という噂があったのだが、これはかなり信ぴょう性が高い噂なのではないだろうか。

それにしても、これまで有効とされていた手法が突如としてその効力を失う。
消費者の変化というのは実に恐ろしいと改めて思う。





アパレルには商品力の向上が不可欠

 もうご存知の方も多いと思うが、ワールドが40歳以上の本社社員500人のリストラを発表した。
9月末でこの500人は退職することになる。

ワールドが500人の早期退職実施 本社社員の4分の1削減
http://www.wwdjapan.com/business/2015/06/27/00017041.html

である。

1975年生まれが今年40歳だが、10月~12月が誕生日の人は今回のリストラ対象ではなかったということになるのだろうか?

まあ、どんな事柄にも線引きは必要だし、その線引きが必ずしも万全でないことは多い。
わずか誕生日が1日違いで残れなかったという人もいるに違いない。
その人はショックを受けているのだろうか?それとも新しいことにチャレンジできる機会だととらえているのだろうか?

以前のブログで本社社員は最低200人はリストラされると書いたが、発表は500人だった。
店舗は最大500店の閉鎖だが、一斉閉鎖ではなく順次閉鎖だから解雇も順次ということになるだろう。
店舗スタッフは1500人くらいの解雇になるのではないかと個人的には推測している。
合計で2000人である。

さて、その原因だが、様々あると思う。
しかし、筆者が個人的にワールドで一番の原因だと思うのは、商品開発力がなくなったことである。
97年に業界紙に入社し、定期的に展示会や新規店舗オープンを取材した。
新聞記事ではワールドの苦戦は2008年夏のリーマンショック以降だと書かれてあるが、商品開発力はそのころにはとっくになくなっていた。
ワールドの商品開発力は2008年までに終わっていたというのが個人的な意見である。

2005年の上場廃止の理由の一つとして「短期的な利益にとらわれずブランドを開発・育成するため」だったと記憶しているが、この10年間で開発・育成に成功したブランドはほとんどない。
100歩譲ってあるとするなら、評価がまだ定められないオペークくらいだろうか。

90年代後半のワールドの各ブランドの商品開発力は大手総合アパレルの中で群を抜いていた。
オゾックを皮切りにインディヴィ、ボイコット、タケオキクチ、アンタイトルなど、同業他社の中でも頭抜けた企画力があった。
また商品の品質も高かった。

98年か99年ごろだったと記憶しているが、何を思ったか筆者はタケオキクチの冬物ジャケットを購入している。
圧縮フェルトの切りっぱなし、フロントがジッパーとマジックテープのジャケットである。
この下にセーターを着込めばコートなしで過ごせる。
このジャケット、今でも冬には着用している。

写真11

(大枚をはたいて(笑)買ったタケオキクチのジャケット)

定価が40000円くらいでそれを4割引きの24000円くらいで買ったと記憶しているが、今の格安商品から見れば考えられないような高額品である。
「あのとき、俺はカネ持ってたんだな~(笑)」と今から思うと笑えてくる。

しかし、このジャケットは買って本当に良かったと思っている。
何せ15年以上着続けているのだから十分に元は取っている。

また高品質というだけでなく、シルエットも細身なので変わらず今も着続けられている。

こういう高品質でデザイン的にも優れていて、それでいてコート要らずという機能性まで付加した商品を98年ごろのワールドは作っていたということである。

今のワールドはどうか?

経営陣のマーケット分析の結果もあってかやたらと低価格志向が目立つ。
しかし、単に価格を安くしただけでユニクロに近づくことができるのだろうか?ユニクロの商品品質は高い。
H&Mのトレンド性に対抗できるのだろうか?
そしてなおかつ価格でその2ブランドと同等にまでなっているのだろうか?

価格がそれらより高く、品質がユニクロより低く、トレンド性がH&Mよりも低いなら、そんなブランド群に勝ち目はあるのだろうか?
そこにそれ以外の切り口のエンターテイメント性やステイタス性があればまだ勝負はできるが、それらもあるとは思えない。

商品開発力の低下の原因は、POSとQRへの過剰な信頼と、コスト削減を目的に安易なOEM&ODMを多用したことだろう。
そしてこれは何もワールドだけの問題ではなく、今、経営危機に瀕している大手総合アパレル各社に共通した問題でもある。
大量閉店しているTSIホールディングス、とくにその中でもサンエーインターナショナルの各ブランドなんて同じ原因で商品開発力を低下させている。

アパレルにとって金融的な取り組みやシステム構築は重要だが、それと同等に商品力も重要である。
商品が悪ければ業績は回復しない。
利益を改善することはできるが、少なくとも売上高を伸ばすことはできない。

いくらリストラをしたところで残存店舗の売上高を回復させるためには商品力の向上が不可欠である。

そして今の大手総合アパレル各社にその商品力は著しく欠如しているように見える。
商品力を向上させない限りは、永遠にリストラをし続けて経費を削減するほかはない。

さて、ワールドを始め、その他大手総合アパレルの商品力はこれから向上できるのだろうか?
筆者はちょっと否定的に見ているが。

知り合いの知り合いとか、知り合いとか、ワールドの関係者からこんなうわさを聞くことがある。
ワールドの寺井秀蔵会長は今回のリストラが一段落したら3年後ぐらいには社長に復帰するのではないかと。
まあ、これはちょっとありえないだろう。
あくまでもうわさにすぎないと思う。

優れた経営者のお一人だからそんなバカな真似はされないと確信している。

2万%ない(笑)と思うが、もし社長に復帰されることがあるならその時は心底軽蔑する。
まず、2005年での上場廃止の株主への責任を取っていないこと、
次に今回の大量解雇の責任を取っていないこと、
以上、2点の責任があるためだ。

まあ、そんな事態は起きないだろうけど。

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ワールドと良品計画の記事を読み比べる

 先日、ワールドが10~15ブランドの廃止と400~500店舗の閉鎖を打ち出した。
現段階でブランド名は公表されていないが、おいおいと公表されることになるだろう。

当然、正社員の解雇が生じる。
どれくらいの解雇が生じるのかだが、大雑把に計算してみる。

どのブランドのどの店舗が閉鎖になるのかわからないから、大型店から小型店まであると考える。
小型店なら社員2人にパートとアルバイト合わせて3人か4人くらいのスタッフで回っているのではないか。
大型店なら社員は5人から10人くらいだろうか。パートとアルバイトも10人強は最低でも在籍しているだろう。

パートとアルバイトに関してはここでは度外視する。

各店舗を平均して3人の正社員が配置されているとすると、400店舗の閉鎖で1200人が、500店舗の閉鎖で1500人が不要となる。
そのうち何人かは他店舗への配属となるだろうが少なくとも最低でも1000人は解雇されるのではないかと考えられる。

また各ブランドには本部スタッフが存在する。
ブランド長とか事業部長とか企画、営業担当者である。
ブランドの大小によってもスタッフ数は違う。
小さいブランドなら数人、大きなブランドなら10人以上は配置されている。
平均すると各ブランドの本部スタッフは5人くらいだろうか。

10ブランドの廃止で50人、15ブランドの廃止で75人が解雇される。
それ以外にも本社スタッフは存在する。経理とか総務とかもっとこまごました部門にもスタッフがいる。
おそらくそのあたりにも早期退職勧告がなされるだろうから、本社スタッフの解雇は最低でも200人は越えるのではないかと推測される。

店頭と本部を合わせても最低でも1200人くらいは解雇となり、もっと多くなる可能性も決して低くはない。

現に、あちこちからワールドで大リストラが開始されたとの声が聞こえてくる。

そんな中、東洋経済オンラインにワールドの分析記事が掲載された。

ワールドが大量閉店、「再生請負人」に高い壁
アパレル名門、栄光の軌跡と失速後の展望
http://toyokeizai.net/articles/-/72479

ワールドは2015年3月期から非上場にもかかわらずIFRS基準に変更した。
財務に疎い筆者にはその意味がわからなかった。
業界紙関連のメディアでこの変更の意味を解説している記事は知る限りではなかった。

この記事によると

2015年3月期(IFRS基準に変更)は、52億円にまで沈んだ(左図)。IFRS移行がなければ、のれん償却の約40億円分が、さらに利益を押し下げていたことになる。

とあるから、筆者にはこれは、のれん償却代を計上しないための移行だったと読める。

そして、この記事では、かつて2005年にMBOで上場を廃止したことにも触れている。

ワールドは2005年、MBO(経営陣による買収)で上場を廃止した際、優先株発行などにより資金を調達。買い入れ消却を進めるも、3月末時点でまだ8120万株が残っている。1株当たり配当金は2019年3月期まで8円だが、2020年3月期以降は18円にハネ上がる。

とある。

この有利子負債が莫大でなかなか減らすことができない。
一時期は1200億円もあったがその後はずっと800億円代後半から900億円代をウロウロしている。
ワールドの経営を苦しめている原因の一つであり、今から考えるとこの上場廃止は失敗だったといえる。
まあ、結果論だが。

そういえば、その上場廃止の理由として会見では「短期での株主利益に左右されずに長期的視野でブランドを開発育成するため」というような意味の発言で説明していたが、この10年間で開発育成された有力・有望ブランドが一体いくつあるだろうか?
筆者が知る限りではゼロに近い。

さて、先の東洋経済オンラインの記事でも指摘されている通り、ワールドの問題は財務面もさることながら、売上高不振にある。
ファッション的に見るなら商品力がなくなったと筆者は個人的に感じている。
売れる商品が作れなくなっている。
もう少し丁寧にいえば「定価で」売れる商品が作れなくなっている。

最終的に投げ売りをすればある程度の数量を売ることができる。
しかし、投げ売りをすることで利益率は悪化する。
現にワールドはあちこちのファッションビルや百貨店で夏冬のバーゲン時以外に値引き販売の催事を開催している。その催事だとだいたい7割引きである。
まあ、催事が年中あるのはワールドに限らず大手アパレルはどこも共通しているのだが。

定価で売れる商品が作れなくなっているのは様々な原因があろう。
原因の一つには、POSとQRへの過信があったのではないかと以前に書いたことがある。

これとほぼ同じ時期にダイヤモンドオンラインに掲載された無印良品の松井忠三名誉顧問のインタビューは対照的だ。

良品計画もかつては赤字に苦しんだが、立て直しに成功した。
その際の社長が松井氏である。

http://diamond.jp/articles/-/72884

僕は社長就任早々、まずはリストラから入らなければならなかった。フランスの店舗を閉めて人員整理もしたし、売価で100億円分くらいの不良在庫を処分しました。燃やして処分したものもあります。かなり荒療治、外科手術的なことをしました。

そこで大変だったのは、リストラはしなければいけなかったが、復活するかどうかは全く見えなかったこと。やることをやっても本当にうまく行くんだろうか、と悩みました。でも、それを信じてやるしかなかったですね。ただ、そんな心境でもわかっていたのは、リストラで企業が復活することはない、ということです。

リストラしなければならないほど赤字になったのは、商品が売れなかったからです。そのときの良品計画は、「無印良品」というブランド誕生から20年経って、ブランドも育った結果、大企業病にかかっていて、モノを作る力が弱くなって売れなくなっていた。衣料品が売れなくなっているのを「衣料品部長のせいだ」という理由にしてしまう体質になっていた。企業体質が悪くなるとモノを作る力が弱くなります。お客さんの一歩先を行くような商品は作れなくなっていたんです。

とある。
当たり前だがいくら仕組みをいじっても売れる商品が作れなくてはアパレル企業は衰退する。
やっかいなことにこの逆でも衰退する。
売れる商品を作っても仕組みができていなければアパレル企業は衰退する。

また、こうも続ける。

社内に経験と勘を重視し、社員たちが上司や先輩の背中だけを見て育つ「経験至上主義」がはびこっていたんです。

僕が営業本部長になったとき、「どうしてこの店の売り上げが悪いんだ?」と聞くと、「本部長、それは仕方ないんです、人災だから」と。人災というのはつまり、店長が悪い、と。「人が悪い」ではそこで思考がストップしてしまう。有能な店長が辞めてしまえば、その店はゼロになってしまう、ということ。これでは企業は成長しません。

これは良品計画に限らずアパレル企業やセレクトショップがよく陥る病気である。
個人の感覚に大きく依存しており、特定のカリスマとか名人と呼ばれる人がいなくなるとたちどころに商品の出来が悪くなる。
いくら上場してようが売上高が1000億円を越えていようが、これでは近所の個人商店の八百屋と変わらない。

あと、こんなこともおっしゃっている。

反対勢力に対して、何度も説得を繰り返したり、妥協点を探ったり、反論を押さえ込んだりするトップもいると思います。ただ、「反対すると飛ばされてしまう」というような空気を作ると組織はなめらかにならないんですね。

と。

アパレルやセレクトショップは大企業でも一人のカリスマや名人が引っ張る個人商店みたいなところがある。
往々にしてカリスマとか名人は独善的で独裁者である。だからこそ成功するともいえるが、後々に必ず独裁の弊害が表層化する。それで倒産した企業は少なくない。

二つの記事を読み比べると企業経営の参考になるのではないか。

そういえば、業界では定期的にワールドの再上場のうわさが流れる。
まあ、うわさに過ぎないのだろうけど、もし本当に再上場するなら、現在の寺井秀蔵会長はすっぱりと引責辞任すべきである。
なぜなら上場廃止の際の社長であり、株主に対しての責任がある。
責任を取らずして再上場をするのはモラルに反する。

まあ、あくまでもうわさに過ぎないとは思うのだが。(笑)




同質化して埋没しているならブランドの統廃合は当然

 ワールドが大規模なブランドの廃止と店舗の閉鎖を発表した。
平成27年度中に全約3千店のうち400~500店を閉鎖し、全約100ブランドの1割強にあたる10~15の不採算ブランドを廃止するというもので、これほど大規模なブランドの廃止はワールドとしては初めてのことになる。

個人的にはこの方針には賛成である。

ワールドは元々ブランド数が多いアパレルだったが、近年はさらにブランド数が増えている。
増えすぎといっても言い過ぎではない。
現に15ブランドを廃止したところで85も残る。

85ブランドという数だけ見ればまだ多すぎるくらいである。

店舗数を減らすことに関しては雇用の問題が生じるのでどうなるのかが気になるが、基本的に不採算店なら撤退すべきであることは言うまでもない。

近年、ワールドの各ブランドを店頭で見ていて気になったのはその同質化であり、没個性だった。

筆者が業界紙記者になった18年前を思い返してみる。

コルディアというミセス向けの基幹ブランドがあった。
ヤング層に向けたブランドではオゾックが絶大な人気を集めていた。
オゾックの上の年代に向けたインディヴィが立ち上がった。

当然のことながら、コルディアとオゾックとインディヴィの見え方は大きく違った。

とくにオゾックはデザイナーの田山淳朗氏のプロデュースによるブランドということで、ターゲットを同じくする他社ブランドとは圧倒的に違って見えた。

インディヴィもブランド草創期はなかなか個性的な商品が多かった。

ところが今はどうだろうか。
オゾックもインディヴィもいわゆる「トガった」ところがなくなり、ワールド内の他ブランドとの差がなくなってしまった。
ブランドも成熟してくるといつまでもトガってはいられないからある程度丸まってしまうのは仕方がない。
しかし、往年のオゾックを知っている者としては残念な気持ちになる。

そして、社内の他ブランドとの同質化もさることながら、他社ブランドとも同質化してしまい、埋没してしまっている。

今、100あるブランドの中で存在感を放っているブランドがどれだけあるだろうか?

同質化して埋没しているならブランドの存在価値はない。
類似ブランド同士は統合してしまえば良いのである。

ワールドは2005年にMBOによって上場を廃止している。
これにはさまざまな理由や目的があったといわれているが、金融面に疎い筆者にはちょっとよくわからない部分が多い。
ただ、気になるのは「非上場にすることで短期的な利益にとらわれない施策を打つため」というような意味合いの発言が会見でなされたことだ。

会見での発言なので建前という部分が多分に含まれていることは承知している。
しかし、まことに理にかなった説明でもある。

それから10年が経過した。

外野から見ている立場からすると、短期的な利益にとらわれない施策が実現しただろうかと疑問に感じる。
新規ブランドはいくつも立ち上がった。
業界に存在感を発揮するようなブランドにそれらが育っただろうか。

筆者にはそうは見えない。
反対に各ブランドの存在感は小さくなったし、いわゆるトガった部分は減った。

金融的な理由はさておき、現状を顧みるとブランド施策としては上場廃止する必要はなかったのではないか。

閑話休題

先日、某経済誌の依頼でいくつかの商業施設を取材した。
面白いことに各商業施設とも「ブランド同士の同質化、商業施設同士の同質化が問題だ」と指摘しているのである。
先ほどワールドを例にとったが、ワールド以外の大手アパレルのブランドもすべからく同質化している。そしてそれらをテナント誘致する商業施設も必然的にすべからく同質化している。
それがわかっていて止められないというのが現在のアパレル、ファッション業界の現状である。

OEM/ODMの業界インフラが極度に整いすぎていることもその同質化の拍車をかけている。

もともとファッショントレンド自体は、ソースが同じだから同質化せざるを得ない。
ブーツカットのジーンズが流行れば猫も杓子もブーツカットを発売する。
これは昔からそうである。

しかし、かつてならそこにブランドならではのディテールとかアレンジが加えられた。

現在、OEM/ODMへ丸投げするブランドは珍しくない。
資金さえ出せばだれでもオリジナルブランドを作ることができる。
しかし、請け負う側はいくつものブランドを扱っているから、必然的にそのブランド同士は似てしまう。
何せ企画デザインしている人が同じなのである。
中には生産ロットがまとまらないから複数のブランドが相乗りしてタグと織りネームだけを変えるという場合もある。
これで同質化しない方がおかしいだろう。

先日、某デザイナーが「20年ほど前までは同じトレンドソースに対してどうアレンジするかがブランドとしての誇りでした。OEM/ODMの業界インフラが整備されたことでその誇りもなくなりました」と過去を振り返ったことがある。

ここを解決しない限りは、ワールドに限らず今後もブランドの統廃合はさらに進むだろう、というか進めるべきである。同質化しているくせにブランド数があまりにも増えすぎたのが今のアパレル業界である。




クイックレスポンスシステムは時代に合わなくなってきた?

 繊研プラスによると「マウジー」が復調しているそうだ。

バロック「マウジー」復調
http://www.senken.co.jp/news/baroque-moussy/

その理由の一つとして

QRやODM(相手先ブランドによる設計・生産)による商品調達を大幅に減らし、ブランドのアイデンティティーであるデニムを素材から開発することで、ブランドの顔を明確にした。

とのことで、90年代後半から2000年代前半にもてはやされたQR(クイックレスポンス)という商品供給システムは完全に時流に合わないシステムとなりつつあるのではないだろうか。

そういえば、昨日はワールドの2015年3月期中間連結決算発表だったが、赤字幅を拡大している。

http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201411/0007500962.shtml

アパレル大手のワールド(神戸市中央区、非上場)が13日発表した2014年9月中間連結決算は、純損失が前年同期の23億6600万円から32億3600万円に拡大した。消費税増税やバーゲン時期の分散化などで売上高が減少したことが影響した。中間決算での最終赤字は3年連続。

 売上高は前年同期比3・1%減の1437億900万円。増税前の駆け込み需要による反動減に加え、台風による天候不順などで苦戦した。増税の影響は「アンタイトル」など高価格帯ブランドで大きかったという。

 営業損益は2億500万円の黒字から22億2700万円の赤字に転落し、中間決算で2年ぶりの営業赤字となった。経常損失も11億4500万円から29億9800万円に拡大した。

ワールドといえば、90年代後半に業界に先駆けてQRシステムを確立しており、それで好調を維持してきた。
2000年代半ばまでは。

今回の各社報道によると、反省点として「商品企画」が挙がっているが、10数年間熱心に導入し継続してきたQRが却って商品企画の能力を下げたのではないかと感じられる。

売れた物をすぐに供給するというQRシステムは販売側にとっては機会ロスが減るので夢のシステムだといえる。また在庫を抱えるリスクも極端に軽減される。
何しろ、ほとんど在庫を抱えず売れた物を売れただけすぐに供給されるわけだから。

POSレジデータを読み解けば先週に何が売れたのかがすぐにわかる。
そして、売れた商品を発注すればすぐに補充される。

ざっとこんな仕組みである。
理論上は夢のシステムといえる。

しかし、大きな欠点がある。
POSレジデータを基にするため、売れたという実績のある商品ばかりが追加補充されることになる。
売れた商品でランキングトップの枚数を誇るアイテムは大概が「ド」が付くほどベーシックなアイテムである。

例えば黒無地のVネックTシャツとか、白無地のクルーネックTシャツとかだ。

POSレジデータを素直に読めば読むほど、追加補充される商品は、「ド」ベーシックな商品ばかりとなり、何の変哲もないベーシックアイテム店のようになってしまう。
そんな店舗は無印良品だけで十分であろう。
実際、筆者の見る限りにおいてワールドの各ブランドの店頭も何度かそういう「ド」ベーシック店となっていたように映った時期がある。

また売れた商品がドンドン補充されるので店頭の新鮮さはなくなるし、個々のアイテムに対しても「今買わなければなくなる」という危機感を持たれなくなる。
どうせ、少し待てばまた補充されるのだ。バーゲンまで待ったって残っているだろう。

次に商品企画の独自性が限りなくなくなることである。

理想論から言えば、自社の企画スタッフが考え抜いて商品企画を定め、それをQRすることが理想である。
しかし、QRに頼り切ったブランドの商品企画は往々にして他社の売れ筋のパクリに陥ることが多い。
さらにそこでOEM/ODMに頼ると、OEM/ODM企業は複数のブランドの企画を請け負っており、勢い請負先の商品企画すべてがある程度似たり寄ったりになってしまう。
企画の大元がパクリなうえに、OEM/ODMでさらに似たり寄ったりの仕上がりになるため、ブランド間の同質化は避けられなくなる。
これで同質化しない方がおかしいといえる。

QRとODMの多用でマウジーが一時期低迷したことは無理からぬといえる。

ワールドの苦戦の要因は様々あろうが、今回反省点として挙がった「商品企画の悪さ」については強固に確立されたQR体制もその一因だったといえるのではないかと筆者個人は見ている。

蛇足ながら、ワールドの決算報道において「のれん代の償却」が義務付けられたことから、これを除いた場合を試算している記事があるが、それはあまり意味がないといえるだろう。
なぜなら、「のれん代の償却」はワールドのみに課せられたハンディではない。全社共通である。
償却しつつ黒字決算の企業も存在するわけだから、それは特殊要因でもなんでもない。

ブランドも時代によって変遷する。
システムも当然時代の変化に沿って変遷する。
QRを過剰に重視し、その上でOEM/ODMを多用するというシステムはそろそろ時代に適合しなくなってきたのではないかと思えてならない。

ツラツラとそんなことを考えてみた。

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