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ネット売上高の増加も実店舗売上高の減少をカバーできなかったユナイテッドアローズの5月度売上概況

 ユナイテッドアローズの5月度売り上げ概況が公表されたが厳しい結果だったといえる。

全社売上高は対前期比4・2%減に終わった。
これだけなら「単に苦戦傾向だったのだな」という話だが、全社売上高の中に含まれているネット通販全店合計売上高は対前期比32・5%増と大幅に増えている。

ネット通販が32・5%も伸びているのに、全店売上高は4・2%減に終わっているということは実店舗売上高がどれだけ低かったのかということになる。

ちなみにアウトレット売上高も対前期比12・7%増となっているから、いかに正規実店舗の売上高が低かったかがわかる。

ネット通販が32・5%増、アウトレットが12・7%と伸びているにもかかわらず、全店売上高は4・2%減なのだから、2つのことが浮かび上がる。

1、正規実店舗の苦戦
2、ネット通販、アウトレットの売上高の小ささ

である。

また5月度は小売全店客数も対前期比3・2%減だから、相当に厳しかったといえる。

4月度も傾向は同じで、ネット通販合計が23・9%増にもかかわらず、全店売上高は1・3%減に終わっている。

ユナイテッドアローズの2017年3月期単体の決算では、ネット通販売上高は202億円、アウトレット売上高は170億円となっている。

このときもネット通販売上高は対前期比で39億円伸びているのに対して、小売(実店舗売上高)は3億1700万円縮小している。アウトレットは3億2900万円増えている。

アウトレットの増加を実店舗売上高の減少で相殺して、ネット通販だけが増えているということになる。

昨今、トレンドに流されやすいアパレル業界の経営方針は、「ネット通販強化」「ネット販売比率向上」を金科玉条のように振りかざして、全員で右へならえを繰り広げているが、これの実現は比較的容易である。

アパレル製品のネット通販売上高は各社とも元が低いので、売上高を伸ばすことは比較的たやすい。
例えば、1000万円の売上高を1500万円に伸ばすことは比較的たやすいが、500億円の売上高を600億円に伸ばすことはかなり難しい。

アパレルブランドの中でもっともネット通販売上高が大きいのがユニクロで、400億円超ある。
当たり前だが他のアパレルブランドのネット通販売上高はこれよりも小さい。

金額自体が小さいものを伸ばすのは比較的簡単だから、各ブランドのネット売上高はしばらくの間は伸び続けるのは当たり前の話である。

また、そうなると自然とネット通販比率は上がるし、ユナイテッドアローズに限らず実店舗売上高は下がるだろうから、ネット通販比率はさらに上昇することになる。

帳簿上の目標はすぐに達成できるだろうが、内実は各社・各ブランドともボロボロになってしまっているという事例は今後珍しいことではなくなるのではないかと思われる。

アメリカではすでに商業施設も含めた大閉店ラッシュが訪れているが、この要因の一つはネット通販の増加と反比例した実店舗売上高の激減だといわれている。

昨年前半ごろまでわが国で「オムニチャネルがー」と叫んでいたオムニチャネラーたちは、おそらくこういう事態を想定していなかったのではないかと勝手に推察している。

実店舗売上高は現状維持ないしは微減で、ネット売上高の大幅増加で、ブランド全体は微増ないし激増という未来図を「口だけオムニチャネラー」たちは思い描いていたのではないか?

しかし、いくら目新しい売り場・売り先が増えても、大衆の可処分所得が増えなければ、どこかほかの売り場での買い物を減らすだけのことである。
これは我が国だけのことではなく、アメリカ人も同じ傾向だったといえる。

ネット通販が増えた分、実店舗での買い物を減らしたというのがアメリカ社会の現在だし、ユナイテッドアローズの4月度・5月度売り上げ概況を見ているとそれと同じ状況であることがわかる。

今後、各社・各ブランドのネット通販売上高は増え続けるだろうが、それに反比例して実店舗売上高は減り続けるだろう。

アメリカと同じくらいの規模で起きるのかどうかはわからないが、商業施設も含めての大閉店ラッシュは近い将来起きると考えられる。
ワールドやイトキン、TSIなどの閉店ラッシュ、地方小型百貨店の閉店ラッシュを見ていると、もうすでに起こり始めているのではないかとも思う。

ネット通販売上高が増えてみんなハッピー.。゚+.(・∀・)゚+.゚

なんて、そんなおいしい話は日本にもアメリカにも存在していない。

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


高感度高価格帯セレクトショップの成長には限界がある

 企業規模にかかわらず、売上高は客単価×買い上げ客数からしか生み出されない。

売上高を拡大しようと思えば、客単価か買い上げ客数か、その両方かを上げなくてはならない。

高価格帯は必然的に客単価も買い上げ客数も上昇限界点は比較的すぐに来るし、低価格帯は客単価アップはあまり望めないものの、買い上げ客数はかなり増やすことができる。

ユナイテッドアローズの今回の決算発表は、高価格帯衣料品の限界点というものが露呈したのではないかと感じられた。

今後の成長エンジンとして、UAは中価格帯のグリーンレーベルリラクシングと低価格帯のコーエンを拡大させるという方針を打ち出している。

UAの新中期ビジョン GLR、コーエンを拡大
https://senken.co.jp/posts/united-arrows-new-medium-term-vision

ちなみに2017年3月期連結は売上高1455億3500万円(前年同期比3.3%増)、営業利益91億6500万円(17.2%減)、経常利益94億2000万円(15.7%減)、当期利益51億9100万円(20.1%減)の増収大幅減益に終わっている。

そこでUAが次なる成長戦略として打ち出したのが、高価格帯の本体はあきらめて、グリーレーベルリラクシングとコーエンの拡大だったというわけで、WWDではもっと露骨に「中・低価格業態に軸足移す」という見出しを付けている。

このUAの判断はある意味で正しいといえる。
高価格帯衣料品の拡大には限界点が絶対にある。
富裕層の人口には限りがあるし、貧しい人は憧れても収入的に買うことが難しい。
貧しい人の中にも「万代で65円に値下がりした6枚切りの食パンを買って節約してでも毎年5万円の洋服を1枚は買う」というような人もいるが、そんな人はごく少数しかいない。到底1000億円企業の成長エンジンになるはずもない。客単価面からも人口面からも。

IMG_2849

(万代で買った65円に値下げされた6枚切り食パン)

となると、買いやすい価格帯のブランドを拡大するしか成長は望めない。

低価格ブランドなら客単価の上昇は望めなくても、買い上げ客数の大幅増加は見込める。まあ、中価格帯も高価格帯に比べれば買い上げ客数の増加は実現しやすいだろう。

高価格帯を主力としながら、売上高1000億円規模を越えれば、そこが限界で、高価格帯のままさらなる成長を望むなら、それはグローバル展開しかない。
要するに国内の人間は食い散らかしたから、全世界の人間を食うということであり、これを顕著にやっているのが欧米のラグジュアリーブランドだといえる。

あんな馬鹿高い商品は欧米では富裕層しか絶対に買わないから、国内市場ではすぐに限界点に達する。成長し続けようと考えるなら、他国の富裕層をすべて取り込むしかない。

欧米ラグジュアリーブランドには及ばないもののUAの価格帯でもほぼ同じことがいえる。

ファッション業界には売り上げ規模とか市場規模とかに無頓着なオサレさんもたくさんおられて、「他の高価格帯セレクトショップは成長できているではないか」という主張が聞こえてきたりするのだが、それは売上高が20億円とか50億円程度だから「まだ伸び代がある」というだけのことで、そのセレクトショップも1000億円を越えるならUAと同じ状況に陥ることになる。

8000億円もの売上高をユニクロが稼ぐことができたのは低価格帯だからであり、ユニクロがUAのような商品しか扱っていなかったならそこまで買い上げ客数を増やすことは不可能だった。

繊研プラスには2019年と2020年の業績予想グラフが掲載されているが、微増収微増益である。
売上高1500~1600億円くらいの推移である。2000億円にははるかに及ばない。
これは本当に冷静に推測したと感じる。

UAという高価格セレクトショップの伸び代はこのくらいしかないと思う。

しかし、個人的にはグリーンレーベルリラクシングとコーエンの成長性については疑問を感じる。

まず、グリーンレーベルリラクシングだが、価格帯が中途半端で低価格店と並ぶと見劣りする。
筆者愛用の「あべのキューズモール」の2階にグリーンレーベルリラクシングが入店したのだが、他の施設内店舗と比べるとやっぱり「高い」と感じる。

あべのHOOPにあったころにはそれなりににぎわっていたように見えるが、キューズモールに移転してからはあまり店内に人がいるのを見たことがない。

同じ2階にグローバルワークやアズールやZARAがあり、「高い」と感じられてしまう。
夏冬のセール時期は特にだ。

グローバルワークやアズール、ZARAの値下げ率、値引き率は大きく、GLRは小さい。

となると、GLRの出店場所は都心ファッションビルに限定される。
都心ファッションビルだけでそこまで劇的に拡大は難しいだろう。

次にコーエンである。

コーエンは価格的には買い上げ客数を増やしやすいが、商品内容は以前よりは向上したとはいえ、他の低価格ブランドと比べるとイマイチ特色がない。
それに低価格ゾーンはユニクロ、ジーユー、H&M、しまむら、ウィゴーなど強豪がひしめいており、顧客対象人口は多いものの、シェアを拡大することはかなり難しい。

また人材面からもUAというオサレ企業には難しいのではないかと思う。

GLRはまだしもコーエンにそこまで「高感度人材」は必要ない。
しかしUAという高感度セレクトショップに入社した人間はほぼもれなく「高感度志向」か「高感度気取り」であり、そこに人材と市場のミスマッチを感じる。
低価格市場専用の人材を多数導入しないと現状の「高感度志向」「高感度気取り」の人材だけでは難しいのではないか。

これはあくまでも個人的主観に過ぎないが、株式公開は高感度高価格帯セレクトショップという業態には不向きではないかと思っている。株式公開をすると株主からは持続的な成長を求める。これは当たり前なのだが、高感度高価格帯セレクトショップという業態では本来、対応し続けられない。

UAはなかなか厳しい舵取りが続くのではないかと思う。

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UAの信念 ―すべてはお客様のために
ユナイテッドアローズ
日経事業出版センター
2014-10-21


「原価率を引き下げながら商品力強化」ってどうやるつもり?

 記事掲載時から業界人の間で話題となっているのがユナイテッドアローズである。

ユナイテッドアローズの連結決算は2期連続での営業・経常減益である。
ユニクロの減益が随分とマスコミでは話題だが(PV数稼ぎという側面もあるだろう)、減益続きの深刻さでいうならユナイテッドアローズの方が上ではないかと思う。
結局のところユナイテッドアローズではPV数が稼げないからこぞってユニクロを書くということだろう。

それはさておき。

なぜ今回の決算が話題なのかというと、繊研プラスの記事にこんな謎の一文が書かれているからである。

http://www.senken.co.jp/news/management/united-arrow160511/

ユナイテッドアローズは、収益性の向上に改めて取り組む。商品力強化に加え、原価率引き下げを引き続き徹底する。

とある。
話題となっているのが「商品力強化に加え、原価率引き下げを引き続き徹底する」という部分である。

原価率を引き下げるということは使用素材や縫製仕様をグレードダウンさせるということである。
使用素材や縫製仕様をそのままにするなら工賃を引き下げるしか手はない。

どちらにせよ原価率引き下げというのは商品にとってはマイナス面しかない。

ファストファッションは工員を泣かせているという論調があるが、国内の大手セレクトショップも工員を十分に泣かせており、ユナイテッドアローズではないが某SPA系セレクトショップは岩手県のTシャツ縫製工場に1枚あたり200円の縫製工賃を提示したといわれている。
ちなみにイトーヨーカドーの提示した工賃も200円であり、大手スーパーと同じ縫製工賃を提示したということになる。
それでいて生産数量は多くとも5分の1から10分の1程度しかないから、国内の大手セレクトショップやSPAブランドだって十分に工員を泣かせている。
同じ工賃なら生産数量の多い大手スーパーの方がまだ良心的といえる。

ここまで極端ではないだろうが、こういう提示をユナイテッドアローズもやりますよということだろうか。

この一文がなぜ話題になるのかというと、原価率の引き下げとは商品クオリティを低下させる要素しかない。
それでいて他方で「商品力強化」を掲げている。

商品力強化が意味することは通常以下のような事柄になる。

1、売れ筋商品を見出す(あるいは企画する)精度を高める
2、商品の品質(物性、デザイン性の両面で)を高める

1、の場合なら原価率を下げつつ、売れ筋商品を見出す・企画する精度を高めることは両立可能である。
しかし、2、の場合ならその両立は不可能である。

原価率を下げることはすなわち商品の物性面での品質も低下させることになるからだ。

ユナイテッドアローズ側が1と2のどちらを想定してこの言葉を発したのかはわからない。
また繊研新聞側がどちらを想定してこの文言を書いたのかもわからない。
繊研新聞の記者はこの文言を書いていて引っかからなかったのだろうか。
ユナイテッドアローズ側はこの発言をするときに「あれ?」と思わなかったのだろうか。

業界人が話題とするのはそういう理由である。
どのようにそれを両立させるのか。もし両立させる妙手があるなら、各社がそれを取り入れたいからだ。
過去何十年間も実現できなかった業界の理想形である。
繊維・アパレル業界に限らずすべての工業製品が理想とする究極の形態ともいえる。

原価率を下げることが会社を救うのか?
http://www.apalog.com/fashion_soroban/archive/38

「商品力強化に加え、原価率の引き下げを徹底する。」という文言です。私の自身の過去の経験から考えると、正直「こんなことは可能なのか?」と思いますし、これを実現できたら、そのノウハウだけで飯食えるなとも思います。

工業製品に携わるすべての人が共有できる意見がこれだろう。

この文言をもっとも悪意的に解釈するなら、「使用素材と縫製仕様を極限までグレードダウンさせて、工賃を叩けるだけ叩く、そして業界全体から売れ筋となりそうな商品を素早く見つけ出してそれをできるだけ早くコピー生産して店頭に並べます」ということになる。

おそらくそういう意図での発言ではないだろうと善意に解釈するのだが、深層はわからない。
もしかしたら何の気なしにとりあえず改善点を並べてみましたというだけのことかもしれない。
もしそうなら、おそらく改善はできないだろう。矛盾する二つの要素を両方ともに解消することはできないからだ。
それに対する方策をいまだにユナイテッドアローズ側は思いついていないということになる。

要約すると「打つ手なし」ともいえる。

筆者はユナイテッドアローズとなんの利害関係もないので、矛盾する二つの要素をどのように解決するのか、観察を楽しみたいと思う。




洋服の買い上げ客数を増やすことが難しい時代

 昨年11月、12月とユニクロの既存店売上高が減少した。
これをもって盛んに「ユニクロ失速」という記事がメディアに掲載されたが、今年1月はセールが好調で既存店売上高が伸びた。すると、その手の記事はほとんど掲載されなくなった。
まあ、メディアなんていつも現金なものである。

個人的にいえば、ユニクロの前年実績は好調だったからそれを越えるというのはかなり高いハードルだと思うし、国内市場でいうと飽和点に達しつつあるのではないかと考えられるから、成長曲線が鈍化もしくは少しくらい下落しても不思議ではない。

そういえば飛ぶ鳥を落とす勢いだったソフトバンクだが携帯電話の加入者が前年実績を割り込んでいる。
いつまでも無限成長し続ける企業はないということである。

一方、ライトオンは11月、12月と好調だったからユニクロ失速の一例として挙げられることが増えた。
しかし、結論からいうとライトオンはそれまで前年実績を下回り続けており、前年実績のハードルは非常に低かった。

これを非常に上手く見つけた記事を発見した。
良記事なのでぜひとも参考にしていただきたい。

別の視点から数字を見る
http://www.apalog.com/fashion_soroban/archive/20

この記事は2011年秋冬、2012年春夏を基準として、それに対しての既存店売上高、既存店客数、既存店客単価の推移を再構成しているところが秀逸である。

これをまとめなおすのはけっこう骨が折れる。
かなりの労作といえる。
自分でもやれば良いのだが、こんなにめんどくさいことはちょっとやる気になれない。
本当に素晴らしい資料だと思う。

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この表から見ればわかるように、「失速」と喧伝されているユニクロだが、2011年から比べると2015秋冬は8%増の売上高である。
また、2012年以降はすべて基準年実績を上回っている。

ただし客数は2015年秋冬は初めて減少している。
反対に客単価は2015春夏、2015秋冬とそれぞれ上昇している。
値上げが顕著に反映されていると考えられる。

一方、メディアで持ち上げられ過ぎの嫌いがあるライトオンだが、2013秋冬から一貫して既存店売上高が減少し続けている。

記事内でも指摘されているように2015秋冬の「好調」は単に2011年当時水準まで回復しただけということがわかる。

客単価は2012年から一貫して上昇傾向だが、客数は落ち続けている。
好調と言われた2015年秋冬も客数は減ったままである。

ついでにユナイテッドアローズである。
ユナイテッドアローズは2012年以降、一貫して既存店売上高は伸び続けているが、客数は2014年から減少し続けている。
客単価は2014年、2015年と続けて高い伸び率を示している。
これは相当に値上げがあったと考えるべきだろう。

個人的な感想でいうと、値上げしたから客数が減ったのかもしれず、反対に客数減を値上げで補ったともいえるだろう。
ユナイテッドアローズの値上げ路線はこれ以上進むとさらなる客数定価を招くので危険ではないだろうか。
ユナイテッドアローズが街の個店なら「お好きにどうぞ」というところだが、仮にも上場しているので、そういう奇策は株主の反発を招く。
客数は落とさず売上高も伸ばし続けるというかなりきわどいミッションをこなし続けなければならない。

この記事でも触れられているのだが、客数を伸ばすというのは本当に困難なことになりつつあるといえる。
決算で発表される客数とは「買い上げ客数」のことだから、入店客数ではない。
「洋服を買ってもらう」ことがかなり困難なことになりつつあるということである。

洋服を買わない理由はいろいろとある。
以前にも書いたことがある。

トレンドがあまり変わらない、洋服があまり傷まない、次々と新しい服を着ることに興味がない、可処分所得が減った、などなど。

メディアではよく、現在を指して「ファッションは冬の時代」というが、冬というのは待っていれば春が来る。
しかし、現在もこれからも「待っている」だけではファッションに春は来ない。むしろ今が常態ではないか。
だから冬の時代ではない。

そこを踏まえて考える必要がある。




洋服に興味を持つ消費者は確実に減っている?

久しぶりに各社の月次売り上げ報告を見てみる。

体感的に関西では今年の6月は例年になく涼しかったと感じている。
関西の夏は異様に暑くて湿度が高くて不快である。
おそらく夏の不快さは日本一だろう。

梅雨どきには、例年だとサウナのような日が続く。
湿度90%・気温30度強というような日だ。
日中だけならまだしも夜になっても不快さが続く。
本当に6月~9月下旬までの関西の気候は耐え難い。

ところが、今年の6月はそういう日がほとんどなかった。
日中暑いこともあったが、日が暮れると気温と湿度が下がった。
暑さがニガテな筆者からすると大変ありがたい気候だが、夏物衣料の売れ行きはどうかと思っていたら、案の定影響があったようだ。

それは各社の月次売り上げ報告を見てそう感じた。

今回のトピックスはユニクロの既存店売上&客数の大幅減だろう。

ユニクロの6月既存店実績は
売上高が前年比11・7%減
客数が同14・6%減
客単価が同3・4%増

だった。

その他いくつかを見てみる。

ハニーズの6月既存店実績は
売上高が前年比8・9%減
客数が同7・8%減
客単価が同1・2%減

だった。

マックハウスの6月既存店実績は
売上高が前年比12・8%減
客数が同14・1%減
客単価が同2・2%増

だった。

このうち、ハニーズの業績は昨年10月以降とほぼ変わらない水準なのであまり気に掛けるほどのことはないと判断できる。

問題はユニクロの突然の大幅減と、3月~5月まで回復基調にあったマックハウスの大幅減であろう。

両者とも低気温を理由に挙げている。

とくにユニクロの昨年9月からの月次実績は、3月を除いてすべて既存店売上高が前年を上回っている。
唯一落ちた3月ですら前年比3%減にとどまっているのに対して、6月は考えられないほど大幅に落としている。

昨今の消費動向は体感気温にどんどん忠実になってきているといわれている。
暑ければ涼しい商品を、寒ければ暖かい商品を買う。
いわば季節外れであっても体感気温を重視する人の方が増えたような印象がある。

その昔、春先にやけに寒い日があった。
今なら「ダウンジャケットを引っ張り出しました」とか「しまってあったウールのコートをもう一度出しました」なんてコメントがSNS上に並ぶ。
寒ければ季節外れだろうとダウンジャケットなり冬物のコートを着るのが当たり前である。

しかし、当時まだ存命だった母には「いくら寒くてもこの時期にそんな冬物を着るのはおかしい」と指摘され、「このオバハン、何を言うてんねん」と毒づきながらも、結局、春物の重ね着で寒さを乗り切ったことがある。

もう20年ほど前のことだろうか。

どうも母親世代の人の若いころは、季節感先取りで洋服を着るのが普通だったようだ。
春になって再度冬物を着るのはおかしい、秋口にまだ夏服でうろうろするのもおかしい、そういう感覚である。
これは着物の季節感がその根底にあったのではないかと勝手に推測している。

着物は、季節感を先取りして色柄素材を選ぶ。
桜の時期に桜の柄の着物を着るのではなく、その少し前に桜の柄を着る。
そういう着方である。

昔の人は着物の着用感がある程度体に染みついていたのではないだろうか。
きっと祖母世代の人はもっと染みついていただろう。

これらの低価格ブランドは、もちろんファッション的要素もあるが、実用衣料的要素が高い。
それ故に気温の上下に左右される可能性が高いのではないかと推測する。

一方、世間的には低価格ブランドよりはファッション性が高いと言われるユナイテッドアローズの6月度実績を見てみたい。

ユナイテッドアローズの6月実績は
小売既存店売上高が前年比0・2%増
小売既存店客数が同6・5%減
小売既存店客単価が同7・2%増

となっている。
ちょっと客単価を上げすぎのような気もするのだが、それほどの落ち込みではない。

この数字だけを見ると、ファッション性を求める消費者は気温の上下動にそれほど左右されず、実用衣料を求める消費者は気温の上下動に大きく左右されるように見える。

ただし、客数はこの4社とも減らしており、15%近く減らしているユニクロとマックハウスは危機的な落ち込みだが、ハニーズとユナイテッドアローズだって7~8%も落としているので楽観視できる状況ではない。
ユナイテッドアローズは大幅な客単価増で乗り切ったといえるからだ。

ファッション性があると言われている店も実用衣料的な店もそろって客数が大きく減っているのだから、洋服そのものに興味を持つ消費者が減っていると考えた方が良いのではないか。

可処分所得が減っているということもあるだろうが、たとえばユニクロなら今は夏服の投げ売りを始めている。
メンズの半袖Tシャツなら500~990円である。まれに390円なんていう商品もある。
この水準の価格の商品ならいくら可処分所得が減ろうが、1,2枚は変えるはずである。
そのユニクロですら大幅に客数を減らしているから洋服に興味を持つ消費者そのものが減少しているのではないかと思える。

これが、年商規模数千万円とか数億円程度のブランドなら、少数の洋服ファンをがっちりとつかめば乗り切れるが、数百億円以上の規模になるこの5社からすると、そんなやり方では拡大再生産どころか現状維持もおぼつかなくなる。

洋服を販売するビジネスは難しい局面にあり、打開策はそう簡単には見つからないのではないか、そんな風に思えてくる。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20


 

ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)
横田 増生
文藝春秋
2013-12-04



やっと報じられたユナイテッドアローズの失速

 先日、東洋経済オンラインにユナイテッドアローズ不調の記事が掲載された。

昨年秋からユナイテッドアローズは月次実績発表で大きく客数を減らしていた。
15%前後の減少が続いていた。
明らかになにか変調をきたしていたのだが、それを報じる媒体はほとんどなかった。

いわゆる、業界のスター企業なので自主規制が働いたのかと思うほどだった。(笑)

ユナイテッドアローズ、まさかの失速のワケ

“セレクトショップの雄”はどこで誤ったのか
http://toyokeizai.net/articles/-/71000

5月8日に発表した2014年度の連結業績は、営業利益が前期比16.8%減の113億円。期初時点では最高益を見込んでいたが、一転して、6年ぶりの減益に落ち込んだ。高額宝飾ブランド品の「クロムハーツ」は好調に推移したが、主力のセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」が不振だった。

とある。
まあ、大幅減益だが、黒字を維持しているのでそこまでの危機ではないと感じるが、成長が踊り場に乗り上げたという印象を受ける。

価格的にも中級以上を扱い、商品も万人向けではない主力業態のユナイテッドアローズが無限成長を続けるということは最初から考えにくく、どこかで踊り場に足を踏み入れることは自然な流れといえる。
成長し続けるには客数を維持したままで単価を上げ続けるほかはない。

しかし、そんな高価格品になってしまうとユナイテッドアローズのブランドポジションからは外れてしまう。
筆者が見るところ、ユナイテッドアローズはラグジュアリーブランドではないし、そこに並んでもいない。
やはりラグジュアリーブランドよりは何格か下である。
そういうポジションのブランドがむやみに商品価格を上げ続けても現状の顧客の大部分は追随しないしできないだろうと推測する。

この記事では、今回の不振の原因を

営業減益の最大の要因は、価格戦略の失敗だ。円安による輸入コスト増を吸収するため、2014年の秋冬商品でシャツやカットソーなど定番品を一律値上げしたことが裏目に出て、10月以降に客数が急減。これを受け、アウトレット店や催事セールを増やし、10~20%の値引き販売によって在庫処分や廃棄処分に踏み切ったため、粗利率が悪化した。

と指摘する。

そして、

同社の商品値上げは、昨秋が初めてではない。2013年の秋冬商品で一部商品の値上げを実施。続いて、2014年の春夏商品も一部値上げした。いずれの値上げも、対象を高価格帯の商品や新規投入した商品などに絞っており、客数が大きく落ち込むような深刻な影響は生じなかった。

だが、2014年の秋冬商品では値上げ対象を“定番品”まで一気に広げたため、顧客から「値段が高い」との声が相次ぎ、店舗から足が遠のいていったとみられる。主力業態の2014年10月の客数は、前年同月比14%減とダウン。翌月以降も、今年3月まで2ケタ減の厳しい状況が続いた。

10月以前は、客数が減っても客単価が上がることで、既存店売上高は一定の水準を維持してきた。だが10月以降は、客数の落ち込みが大きく、客単価の上昇でカバーしきれなくなった。

同社の顧客はファッションに敏感なコアファンが多く、特に高額商品には底堅い動きがある。そうした商品は質やデザインを認めたファンがいるため、値上げの影響をそれほど受けなかったとみられる。ただ、今回は値上げ対象をほぼ全品に広げたことで、購入頻度がそれほど高くない一般顧客が去ったようだ。

と続ける。

これが不振のすべての原因ではないだろうが、一因ではあるだろう。
ユナイテッドアローズを含む日本のセレクトショップの多くが、そこそこの高額品を扱いつつ、一般消費者でも手の届く程度の価格品を扱っている。
例えば、グラフィック入りの半袖Tシャツが2900円とか3900円であるし、オリジナルのジーンズも6000~8000円くらいである。

ユニクロよりは少し高いが、一般人でも手の出せる範囲の価格帯だ。
この記事がいうところの一般顧客というのはこういう商品を購入していた層のことだろう。
ユニクロやその他の低価格SPAよりはセレクトショップの方がブランドステイタスは高い。
だから、ユニクロ価格+アルファで買える中価格帯の商品を購入したがる層は相当数いただろう。

こういう商品が値上がりしたなら、そういう消費者の多くは去ってしまうだろう。

昨今では消費は二極化だとされ、低価格品か高価格品という極端な価格方針を唱えるところもあるが、低所得者と高額所得者、中所得者が同じ店舗で買い物をする日本という社会において、やはり中価格帯品は必要ではないか。
低所得者と高額所得者では買い物をする店舗が完全に異なる欧米社会と同列に考えることはできない。

日本だと低所得者でもお金を貯めて(まれに借金して)高額なラグジュアリーブランドを買うことがあるが、欧米ではそんなことはない。低所得者がわざわざラグジュアリーブランドは買わない。
また日本では高額所得者でもGMSや低価格SPAでも購入をする。

少し横道にそれるが、そういう状況を考えると、日本製ブランドをやたらとハイエンド化するという昨今の風潮には疑問を感じる。
現にそれでユナイテッドアローズは失速したではないか。
鎌倉シャツが支持を集めたのは品質もさることながら、4900円という価格帯だったからではないか。

最後に打開策として

商品投入の頻度も見直す。従来の6シーズンから、最大8シーズン(梅春、春、初夏、盛夏、晩夏、初秋、秋、冬)に細分化して、一段と店頭での商品鮮度を高める。季節の移り変わりに応じた、売れ筋商品のきめ細かい投入で、売価をできるだけ維持するのが狙いだ。

とある。
これについては以前、小島健輔さんも言及したように、そこまで細かいシーズン分類が必要なのかと感じる。
これほど細分化してしまうと、シーズンごとの生産数量は減少せざるを得ない。
短い期間で売り切ってしまわねばならないのだから、当然、1型あたりの生産数量は減少する。
そうなると製造原価は上がる。価格を維持しようとするなら製造原価を叩くしかなくなる。
それこそ、工場はあり得ないほどの低工賃で製造することになってしまう。
工場を泣かせているのは何もファストファッションばかりではない。

そういえば記事中に

「ユニクロは工業品、ユナイテッドアローズはファッション」

という一節があるが、こういう見方はそろそろやめてはどうか。
ユナイテッドアローズに限らず、各社ともに「我々はファッション」というが、その「ファッション」がユニクロには歯が立たないではないか。しまむらにだって遠く及ばない。
だったら極端な言い方かもしれないが、その「ファッション」は工業製品以下と見ることもできるのではないか。

個人的にはユニクロとしまむらの二強時代はまだまだ続くのではないかと見ているのだが。




7月、8月の消費はどれほど冷え込むのか?

 ユニクロの6月度売上速報が発表された。

既存店売上高は前年比3・9%増
既存店客数は同0・4%増
既存店客単価は同3・5%増

だった。

比較的堅調に推移した理由として、

「下旬から気温が上昇したことにより、夏物衣料とスーパークールビズ関連商品の販売が好調だったことから、前年を上回った」ことが挙げられている。

さて、昨日のマックハウス、ポイント、ハニーズの商況を重ねて見ると、
メンズが比較的強い店舗が実績を更新していると言える。
これはスーパークールビズ需要があったためだろう。

価格帯は異なるが、参考までにユナイテッドアローズの6月度売上速報を見ると

既存店売上高が前年比11・6%増
既存店客数は同12・0%増
既存店客単価は同0・3%減

となり、絶対額がわからないものの、前年対比では大きく実績を伸ばしている。
ユナイテッドアローズもメンズが強いブランドとして知られており、
スーパークールビズ需要があったと考えるべきだろう。

しかし、一方では「6月16日からという異常に早いセール突入があったにも関わらず、各社ともにこの程度の売れ行きでは7月、8月がどれほど冷え込むのか、想像するだけでも恐ろしい」という声もある。
たしかに6月16日から先行の商業施設でセールが始まり、6月24日・25日の両日で第2グループのセールが始まった。また最終グループは7月1日からセールが始まっており、これでほぼすべての商業施設のセールが出そろったことになる。

この「五月雨式」に始まるセールは、集客にあまり効果がなく、
6月16日に先行グループのセールが始まったものの、やはり、比較購入のため他の施設のセール待ちをした消費者も多く、爆発力はほとんどなかった。ほとんどの商業施設が足並みそろえてセールを開始する冬のセールとの集客の差は歴然である。

7月、8月と後2ヶ月間もセールが続くことになり、7月中旬以降は相当に洋服の消費が停滞することが予想される。
また、昨日も書いたように、スーパークールビズ商戦に乗り遅れたブランドも多数あるが、7月以降の商品構成を変更することは不可能であるため、それらはこのまま、売り逃しや機会損失をすると考えられる。
通常であれば、スーパークールビズ需要は来年もある程度は期待できるのだが、来年は今年以上に価格競争が始まっていると考えられる。今夏、スーパークールビズ対応に踏み切れなかったブランドの支払った代償はかなり大きいと言えるだろう。

物作りは素人であり続けるユナイテッドアローズ

 先日、ユナイテッドアローズの生産地誤表記が大々的に報じられた。朝日新聞のURLを貼り付けておく。

http://www.asahi.com/national/update/0304/TKY201103040497.html

記事によると、

販売したシャツやバッグなど38商品・4683点(1816万円相当)の原産国表示を誤ったと発表した。中国製バッグをイタリア製とした例もあり、消費者庁は近く、景品表示法に基づき改善を命じる行政処分を出す方針だ。

とのことである。
それにしても4683点もの商品が誤表記とはちょっと多すぎる。

ユナイテッドアローズは、以前から誤表記が多く、07年にも「カシミヤ0%」のストールを「カシミヤ70%」と表記したり、輸入スラックスブランドの原産国を「トルコ」ではなく「イタリア」と表示して大々的に報じられている。実はユナイテッドアローズのHPを見ればすぐにわかるのだが、これら以外にも数々の誤表記がほぼ毎月発覚している。

http://www.united-arrows.co.jp/info/index.html

これだけ誤表記が毎月続いてなぜ改善されないのかが不思議でたまらない。

おそらく、企画担当者が商社やOEM/ODMメーカーに商品作りを丸投げしているのだと考えられる。丸投げしているから業者が付けた製造表記をそのまま信用するしかないのだろう。自分たちで製造業者や工場と直接折衝すれば再発は防げる問題である。

ユナイテッドアローズの商品の選択センスや販売力はずば抜けているが、企画・製造・生産は素人集団のままである。どんな業種でも長年続けていれば少しずつ進歩するものであるが、ちっとも進歩しないということは、物作りに関しては少しもまじめに取り組んでいないということだろう。

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