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ファッション雑誌の「欧米至上主義」は滑稽

 昨日、メンズファッション誌の「欧米至上主義」がクールビズの現実に即していないことを書いたのだが、今日ももう少し続きを書きたい。

そもそも「ビジネスでは長袖シャツが絶対」という思い込みを夏場も頑なに守ろうとする男性が多かったために、2000年代半ばまで、多くのオフィスの冷房は24度~25度くらいに設定されていた。
バブル期ならもっと低い温度設定もあったであろう。
「長袖シャツは絶対です。(キリッ)」と言いながら、ネクタイを締めてジャケットを着用している男性が涼しさを感じようと思えば、個人差はあるが、25度以下でなければならない。

一方、女性の服装を見てみると、日焼け防止や健康上の問題以外で、夏場に長袖を着用している女性はかなりの少数派である。露出過多の半裸のような服装は問題外として、半袖ブラウス姿の女性が一般的ではないかと思う。
当然、半袖ブラウス1枚しか着用していない女性たちは、冷房設定が25度では寒すぎるわけである。
(個人的には半袖Tシャツで25度の部屋に籠っているのが一番快適であるのだが)

そのため、女性は「冷え防止」対策を採らざるを得なくなり、会社に薄手のカーディガンや膝かけを自前で置くという手段を講じた。

2005年ごろに「温暖化防止のために二酸化炭素排出量を減らしましょう」という声明が発表され、冷房温度の設定は「28度が望ましい」との認識が広がった。
冷房温度を28度にするためには、当然上着は不要だ。首元を開ければさらに涼しいのでネクタイも不要になる。さらにシャツも半袖にすればもっと涼しい。
ということでクールビズスタイルが導入された。

2011年夏は、東日本大震災の影響から、電力供給不安が広がり、節電が叫ばれている。
今度はオフィスどころではなく、通勤電車も冷房が弱められている。
当然、さらに熱のこもらない服装が求められるわけであり、それが「スーパークールビズ」である。
環境省が今年5月に打ち出した「スーパークールビズ」のガイドラインは、アロハシャツや夏場に適さないジーンズの着用など、首を傾げる部分が多かったのだが、例年よりも冷房に頼ることができない社会には必要不可欠な提言だったと言える。

さて、昨日の「メンズクラブ」に戻る。
「ファッション雑誌としてスーパークールビズのドレスコードを作る」という姿勢は高く評価したい。
問題は中身である。
ビームスやシップスなど人気セレクトショップスタッフが「シャツは長袖ですよね~。欧米だとそれが主流ですから」という提言は上記の流れをまったく無視しており、カッコ付けの欧米かぶれの独りよがりにすぎない。

この手の雑誌や欧米かぶれのファッション業界人が、日本の気候を無視して、欧米スタイルの導入を目論んだため、冷房を異様に低く設定しなければならない社会がこれまで続いてきたのではないだろうか。それが、冷房がほとんど使えないこの時期に来ても「シャツは長袖ですよね~。ジャケットも必要ですよね~」とヌケヌケと言い放てる危機感のなさが、ファッション業界人の馬鹿さ加減を際立たせている。

昭和30年代~40年代半ばまでの会社員の夏のスタイルは、半袖開襟シャツだった。
それがいつのころから、夏場に「ネクタイ+上着+長袖シャツ」というバカげたスタイルが定着したのだろうか?

欧米にないファッションは存在価値がないのだろうか?
それならば、現在、日本人女性の間で主流となっているナチュラル系レイヤードスタイルを、ファッション業界人は即座に否定しなくてはならない。なぜなら「森ガール」に代表されるナチュラル系レイヤードスタイルは、欧米には存在せず、中国や韓国にも存在しない。ゴスロリ同様に、ほぼ日本独自のオリジナルスタイルと呼んで差支えない。
レディースファッションの売り上げの大きな部分を占める「森ガール」系レイヤードスタイルを廃止できるアパレル企業など存在しない。否定した瞬間にその企業は倒産するから。
結局、「オウベイガー」とぬかしているファッション業界人だが、そこに確たる信念などなく「売れたらOK」という金勘定しかない。「欧米のメンズビジネススタイルは云々」と自己陶酔的に語っている業界人は、「こんなトリビア知ってる俺って素敵」程度の考えしかないと断言させていただく。

高度経済成長時のファッション雑誌の役割は、服飾文化の浅い日本社会に欧米のトレンドやモードを紹介することだったと推測している。
レディースファッション雑誌は、欧米追随だけではなく、国内マーケットに即した独自のスタイルをいつのころからか提案するようになった。
一方、メンズファッション雑誌はどうだろうか。
ストリートやモードなどの雑誌はあるが、欧米トラッド保守雑誌もレディースに比べれば異様に数多く残っている。
服飾文化的に考えれば、欧米の基本知識を伝えることは間違いではない。しかし、気候風土が違い、さらに「節電」という要素が加わっている今年の夏に「欧米主義墨守」では雑誌の存在意義がない。

「欧米ではこうだけど、日本の気候を考えたらこういうスタイルが良いのではないか」という姿勢が必要ではなないだろうか。
それができなければ、欧米保守ファッション雑誌と自己陶酔的アパレル業界人のファンタジー要素満載の提言など誰も聞き入れないだろう。

ファッション業界の「欧米至上主義」は現実感が乏しすぎる

 日本でメンズファッションが隅々まで浸透しないのは、メンズファッション雑誌のせいではないかと思うことがある。
メンズファッション雑誌もいくつかの系統があるが、レディースに比べて市場が小さいせいか雑誌の数自体が少ない。

ストリート系雑誌は、ストリートファッションが廃れたこともあり、全盛期をとっくの昔に過ぎてしまった。
やはり「メンズノンノ」あたりは変わらぬ強さがある。あまり好きではないけれど。
一方、年配向けの雑誌といえば「LEON」「メンズEX」「メンズクラブ」「SAFARI」「オーシャンズ」あたりになるのだろうか。

6月25日に発売された「メンズクラブ」ではスーパークールビズのドレスコードを雑誌として提案している。
他のファッション雑誌ではあまり見かけない企画なので、この企画を組んだこと自体は非常に高く評価できると思う。
中身を読んでみると、これまで通りの「欧米ファッション墨守」の主張が繰り返されているだけであり、まったく実状と乖離しており評価できない。
何十年来と変わらぬ年配向けファッション雑誌の「欧米ファッション墨守」主義が、あまりに現実にそぐわないため、逆に年配男性をファッションから離れさせているのではないかと思う。

この号の58ページにセレクトショップスタッフ4人による座談会がある。
出席者はビームス、エストネーション、トゥモローランド、シップスの各店スタッフ。
例えば「半袖シャツはリゾートシャツであり、欧米ではビジネスにおいては長袖シャツが絶対だ」という主張がある。
これなどはアホらしくて話にならない。
これまでのように室温24度くらいにエアコンが効かせられるのであれば、長袖シャツは寒さ対策にも必要だろう。ところが現在の室温設定は28度であり、外の気温が34度にもなれば室内温度は30度にも達する。
こんな室温で「欧米のビジネスシーンは長袖が絶対ですから。(キリッ)」とか言いながら、汗だくになっているオッサンが事務所にいたら、うっとおしいを通り越して滑稽でしかない。

ちなみに、今日、7月14日のパリとロンドンの最高予想気温はそれぞれ
パリ20度
ロンドン21度

である。
クーラーなしでも「ビジネスでは長袖ですから。(キリッ)」と言える気温である。
逆に「長袖を着ないと肌寒いですから(キリッ)」というところだ。

関西圏は気温34度、湿度70%以上で、高温注意報が発令される見通しであるが、
それでも「欧米ファッション墨守」しなければならないのだろうか?
もしわけないが、まったく墨守する気にもなれない。

「欧米墨守主義」のメンズファッション関係者に聞きたい。
日本の気候はパリやロンドンと同じですか?

こんな主張ばかりしているから、年配男性は、アホらしくてファッション雑誌を読まないし、
ファッション業界の提案から顔をそむけるばかりになる。
減量中のボクサーではないので、わざわざ汗の量を増やす服装など、だれも自主的にはしたくないのである。

ファッション関係者の「欧米至上主義」が日本人男性のファッション化を著しく阻害していることを自覚した方が良い。

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