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洋服の製造を完全受注生産にしても廃棄問題・売れ残り問題はなくならない

洋服の廃棄が話題になっているが、なぜか「焼却」という言葉が頻繁につかわれているが、洋服が生地だけで作られているなら焼却も可能だろうが、付属や副資材が使われているから焼却は無理で、産業廃棄物として処理される。
もしかして「償却」という言葉を聞いて「焼却」と変換されてしまったのだろうか。

それ以外に、日本には何十年も前から「バッタ屋」という職種があり、さまざまなブランドの在庫品を安く仕入れてきて安く売る。
当方が手伝っているラック・ドゥもその一つだし、大手メディアでときどき取り上げられるショーイチもその一つだ。
ジーンズメイトも創業当時はジーンズ関連のバッタ屋だったといわれている。
それ以外にもそういう業者は数えきれないほど存在する。
実際、当方は、違うバッタ屋何軒かで何度か買い物をしたことがある。

http://doluck.jp/

 

本当にさまざまなブランドの不良在庫品がバッタ市場には流れてくる。
アーバンリサーチ、タケオキクチ、ユナイテッドアローズという錚々たるブランドの不良在庫品もバッタ屋の店頭で見たことがあるし、世間的には安売りで知られ、最後の一枚まで売り切ると思われているしまむらの在庫品もバッタ屋の店頭で見たことがある。
しまむらの値札は1500円だったが、バッタ屋はそれを590円に値下げして販売して無事完売していた。
中には大手セレクトショップや有名ブランドのサンプル品もバッタ屋に流れてくる。

産廃として処分するのと、バッタ屋に安値で払い下げるという2通りの処分方法があるのだが、どちらにもメリットとデメリットが存在する。

産廃として処理されるのメリットは、安売り市場に出回らないのでブランド価値が維持できる。
デメリットは、産廃処理費用がかかるということと、近年注目されているサスティナビリティとエシカルに反するというところである。
ちなみに個人的には過剰なサスティナビリティも過剰なエシカルもあまり好きではない。

バッタ屋に払い下げたときのデメリットは、産廃だと金を払わないといけないのに、バッタ屋だと少額とはいえ金をもらえる点にある。
デメリットは、ブランド価値が大きく毀損する点である。

そういえば、今年7月上旬に、天満のバッタ屋でアースミュージック&エコロジーのサンダルが399円で売られていて、その3週間後くらいに訪れた際、299円に値引きされていた。今でも何足か残ってて売られているはずだ。

 

どちらの処分方法を選ぶのかは、経営者判断にならざるを得ない。
ブランド価値を維持するのか、目先の少額な現金を取るのか、である。

売れ残り品の処分をしなくて済むようにするなら、過剰供給はやめねばならない。
その一つの方法としてオーダーメードのような受注生産が注目されている。

じゃあ、それで解決でめでたしめでたしとはならない。

洋服を作るための生地、裏地、芯地、ボタン、ファスナー、織りネームなどは常に大量生産され続けている。

そしてそれらをメーカーや問屋が大量に備蓄しているのである。

例えば、タレントが思い付きでブランドを開始するときに、どうしてすぐに商品が作れるのかというと、洋服を作るためのそれら材料がメーカーや問屋にたっぷり備蓄されているからである。

小規模ブランドや小規模デザイナーズブランドがいとも簡単に直近で商品を作ることができるのは、それらの材料がメーカーや問屋にたっぷり備蓄されているからである。

そして需要が少なくなれば、備蓄されていて動きの悪い商材は廃棄されるかこれまた材料のバッタ屋に二束三文で売り飛ばされることになる。

エドウインの本社がある西日暮里には1メートル100円くらいの安い生地を売っている店が何軒もあるが、あれらはそういう材料のバッタ屋なのである。

洋服製造の部分だけをオーダーメードや受注生産に切り替えたところで廃棄ないし安売りはなくならず、材料段階でそれが行われるだけのことであり、さらにいえば、いつでも生地が織れる・編めるように、糸も大量に備蓄されているし、糸の元となる原料も大量に備蓄されている。

これが事実であり、そこまでを解決するとなるとどれほどの費用やシステムの構築が必要になるのか想像もできない。

じゃあ、どうして、そういう生産しかできないのかというと、各段階で採算ベースに乗る「経済ロット」というものがあるからだ。

その一端はこのブログに詳しい。編み生地の場合がわかりやすく説明されている。

ロットと在庫とわたし

http://www.ulcloworks.net/posts/4611965

しかし、生地商社さんは各色のバランスを生産コストを一律にしてストックしておく必要があるため一色辺りの経済ロットで生産して在庫を持つことになる。

染色の経済ロットは染色工場によって様々だが、概ね6反/色というのがある程度の規模の工場が提示している経済ロットである。
なのでこれ以下の数量に関しては加工賃にチャージアップなどの経費が加算されるので基本的にはこの経済ロットに応じて加工していることが多い。

一つの生地品番あたり、染色ロットが満たせても、色数が少なければ編みの経済ロットをクリアすることができない可能性がある。
無地編みの場合、生機(染色前の生地)の経済ロットは生地組織によるが基本的には「糸ひと立て分」が提示されるケースが多い。
「糸ひと立て分」とは、編み機のフィーダーと呼ばれる糸を送り込む糸口の数に合わせて糸を買うロットのことを意味するので生地によるのだが、わかりやすくするために例として今回は一般的な量産型の30インチ28ゲージという編機を利用した天竺という生地を編む場合で話を進めていく。

30インチ28ゲージ天竺の機械のフィーダーは高速機なら国内はほとんどが90口である。
つまり「糸ひと立て分」は糸90本分ということになる。
糸は分割といって小割して使うこともできるが、このひと立て分という意味の中に分割してという言葉は付かない。
糸は綿糸の場合1本1.875kgが中心で、糸ひと立て分は90口x1.875kg=168.75kg(30/1天竺40m巻き1反がだいたい11kgくらいなので15反とちょっと)が編みの経済ロットという認識になる。

ところが、綿糸は90本という綺麗な数字で買うことができない。
1ケースという単位で買い取る必要があり、1ケースは12本入りの22.5kgが糸を買う際の最小ロットになる。
90本揃えなければならないので90口÷12本=7.5ケース。そして糸は半端ケースで買えないため切り上げ8ケースという量の糸を買うことになる。
8ケース×22.5kg/ケース÷11kg/反=16反と余り糸4kgが編みの経済ロットになる。

これと、先程の染色ロットの最小公倍数がいわゆる経済ロットということになる。
色数はストック生地を販売していく上で2色展開などではあまりにも寂しいので、4-6色が少なくとも容易されている。
そして一色6反以上×色数でアソートを組んで編みの経済ロットと染色ロットの最小公倍数を探していくのである。
例として単純に全部の色が6反の加工をするとした場合、染め6反と編み16反の最小公倍数は48反編んで8色染めるのが答えになる。

アパレルメーカーさんに別注の生地提案をして一色6反染めて編みで48反という注文をもらうのは簡単ではない。
なのでニッター編工場は生地問屋めがけて営業をかけたほうが工場稼働をまもりやすい。

しかしこうした経済ロットをクリアして積み込まれた在庫をキレイに売り捌くのは非常に難しい。必ず売れ残りの在庫が出る。
こうしたものがバッタ屋などに破格で流通していくことになる。生地の世界でもこのようなことはザラである。

ちょっと長いが読んでいただければ、生地作りの数量問題の一端が理解できる。

編みの場合は、重さ(㎏)が基本となっているが、織りの場合は、長さ(メートル)が基本となる。
これは生地の場合だが、ほかの付属や副資材、織りネームなども同様の理屈で「経済ロット」が求められる。

廃棄問題に心を痛めるのは個人の自由だが、ここの部分を変えない限りは廃棄問題はなくならない。
そしてそれを変えるには膨大な費用と膨大な手間がかかる。綺麗事のスローガンを念仏のように唱えるだけでは何も変わらないし、変えられない。

久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276

 

【告知】多数の要望があり、8月24日のマサ佐藤(佐藤正臣)氏とのトークショーを昼間から夜の飲み会へと変更しました。(笑)
ぜひともご参加を。詳細は以下のURLで。
お申込みお待ちしています。
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バッタ屋の小説があったよ~

バッタ屋について

 各社の不良在庫を格安で引き取ってきて、安く売る店を俗に「バッタ屋」と呼ぶ。
丁寧にいえば在庫処分屋といえるが、業界ではバッタ屋と呼ばれる。

子供のころから周りでは、ブランドのコピー商品などを「バッタもん(物)」と呼んでいたが、バッタ屋と語源は同じあろうと考えられる。

ところでここでいうバッタとはなんだろう?
昆虫だろうか?

バッタ屋の語源についてググってみると、日本俗語辞書には

バッタ屋とは古道具商の間で「投げ売り」を意味する隠語『ばった』をする店、つまり商品を格安で販売する店のことを意味する。後にバッタ屋は倒産寸前の店舗から商品を買い叩き、安値で販売するなど、正規ルート以外で商品を仕入れ、安売りする店のことを指しても使われるようになる。

http://zokugo-dict.com/26ha/battaya.htm

とある。

このほかにもいくつかの語源が考えられており、昆虫のバッタのようにあちこち移動するからではないかとも考えられているようだが、古道具商の隠語の方が適切なのではないかと個人的には思う。

最近、小島健輔さんがブログで何度かバッタ屋を採り上げておられ、洋服不振で在庫が増えているであろうアパレル各社やSPA各社はバッタ屋を活用してはどうかという提言されている。

面白い構想だし、バッタ屋をいくつか組織化できれば大いにチャンスもあると思うし、廃棄量も減らせるだろう。

しかし、難点が多々あって、実現するには相当に苦労することになる。

まず、バッタ屋を運営する社長やオーナーの多くはアパレル業界出身者ではなく、店作りからファッション感度から何から何までアパレル業界関係者とは見方や考え方が異なる。
正規のアパレル業界関係者の発想とは相いれない部分が多い。

また、ウェブに対する取り組みがほとんど皆無で、ウェブによる恩恵や効力をまるっきり信じていない。
ウェブに対して積極的にシステマティックに取り組んでいるのは、年商10億円を越えた大阪のショーイチくらいだろう。
バッタ屋のほとんどは公式ウェブサイトすら持っておらず、連絡手段は電話かファックスかEメール(携帯電話の)くらいしかない。

正規のアパレル業界も大概がアナログだが、バッタ屋はそれを何倍にも強めたアナログ感である。

あと、全国にどれくらいのバッタ屋が存在するのかもわからない。
正規のアパレル業界のように組合や業界団体はない。
まったくのゲリラで、ふと思いついたド素人が明日から開業することも珍しくない。(成功するかどうかは別)

このような状況なので、正規のアパレル業界関係者やIT業界関係者が彼らをまとめ上げて組織化するのは難度が高く、よほどの手腕と僥倖がなければ成功は難しいと考えられる。

大阪でいうと、バッタ屋が集積しているのは、天神橋筋商店街だろう。
また、本町と心斎橋の間の地域にもバッタ屋は多く集積している。

千林商店街にも多くあると聞く。

じゃあ、実際のバッタ屋というのはどんな感じなのかというと、こんな感じだ。

洒落たPOPなんて存在せず、すべての店が手書きPOPで対応している。
いわゆる、「オシャレな手書きPOP」ではなく、原始的な手書きPOPである。

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商品に関していえば、激安品が多いことは言うまでもないが、先日、自分市場最安値の商品を発見した。
59円で販売されているスカートである。

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靴が1000円なんていうのは当たり前で、500円でもそれほどは驚かない。

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取り扱い商品は各店で見ていると様々で、けっこう有名なブランドの不良在庫品もある。
あと最近不振を極める大手通販各社の不良在庫は各店で出回っている。

また、アパレル各社のサンプル品もある。

洋服の価格はだいたい300~1000円くらいで、2000円を越える商品はほとんどなく、あってもそれはスーツやフォーマル、コート、テイラードジャケット類くらいである。

種々雑多に仕入れられているが、(段ボール箱何箱で何万円という仕入れ方だから)よく探せばたまに掘り出し物が見つかるのがバッタ屋の楽しさでもある。

しかし、最近は、正規店の最終処分値もバッタ屋には負けていないことが増えた。

例えばユニクロとジーユーである。
ともに最終値下げ価格が390円~790円になる。

今年の2月にはジーユーで390円に値下がりしたニットキャップを買ったし、昨年夏は790円に値下がりしたスリッポンを買った。

ユニクロでも今年の2月に790円まで値下がりしたスタンドカラー無地ネルシャツを買ったし、今日から4月27日まで590円に期間限定値下がりする7分袖Tシャツを買おうかどうしようか迷っているところだ。

また、大手総合スーパー(GMS)でも投げ売り品に出くわす。
個人的に愛用するのは西友だが、昨年、4枚1000円のボクサーブリーフを買ったし、先日、10足1000円の靴下も買った。

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このように正規店でも不良在庫の投げ売りは珍しくなくなっており、わざわざバッタ屋に出向かずとも選び方さえ間違えなければかなりの商品を最安値で買うことが可能である。

とくに凄まじいなと感じるのが、ユニクロUの値下げで、今春に発売されたスーピマコットンクルーネックセーターが990円にまで値下がりしている。
ユニクロ×ルメールの時からそうだが、クリストフ・ルメールという有名デザイナーが手掛けた商品が最終的には790円とか990円にまで値下げされるのだから、「名前だけで売ってる」既存のアパレルブランドはたまったものではないだろうと感じる。(自分は最安値のユニクロUを集中的に買うが)

対して「ユニクロガー」と文句を言っていても何も変わらない。
それとは異なる価値観を確立させ、広く伝えることができなければ既存のアパレルブランドは、ユニクロ、ジーユーはおろか、バッタ屋にさえ客を削り取られることになる。
もしかして、難度の高い「バッタ屋の組織化」にチャレンジして成功する者が今後登場するかもしれない。
後の世代には想像を絶するような異才、天才が出現する可能性がある。

まさに「後生畏るべし」である。



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