今日の午後にはユニクロの1月売上速報が発表され、また「ユニクロ失速」の文字が一般紙に踊るのではないかと思う。

先日、ダイヤモンドオンラインに
「ファストファッションが失速!大手復調でアパレル市場に転換点」という記事が掲載された。

http://diamond.jp/articles/-/10942

ダイヤモンドには、その2週間ほど前にも似たような記事が掲載されていたのだが、どちらも分析の論点がズレているのが特徴である。

今回の記事を見てよう。

まずこの記事はユニクロとオンワードホールディングスの前年売上高増減比を比較しているところに問題がある。
ユニクロは2010年後半から数カ月連続での前年割れが続いているが、その前の年(2009年)は毎月20~30%増を記録していた。言ってみれば、2008年当時の水準に戻ったと言える。さらにその2008年は2007年よりも売上高を伸ばしている。「不振」と言いながらもそれほど重傷ではない。

一方、ダイヤモンドが推奨するオンワードホールディングスだが、
記事のグラフを見ていただければわかるように、ずっと前年割れであり、2010年後半に6%増になったと言っても、その前年の20~30%減の6%増である。折れ線グラフを見てもらえればわかるのだが、前年割れが止まったという状況に過ぎない。これで「復調」というのはおかしいのではないか。正確に表現するなら「下げ止まり」である。そして「百貨店に客が戻ってきた」という発言があるが、これも甘いと言わざるを得ない。
例えば、新宿伊勢丹や梅田阪急など単独店舗である水準を維持している百貨店はあるが、百貨店全体では82年当時の売り上げまで低下しているのである。
特定店舗に客は戻ってきたかもしれないが、百貨店というチャネルには客は戻っていない。

ユニクロの失敗として「UJ」の失敗が挙げられている。これはその通り。商品ラインが3ライン(1990円、2990円、3990円)あり、消費者が混乱したのも事実だ。実際には3つのラインとも値段差以上の区別はつけにくかったからだ。しかし、これもあるが、実際の「UJ」の失敗は、ジーンズがトレンドアイテムではないのに、拡充したことにある。結果論だが2010年春は「UJ」ではなく「UC(ユニクロチノパン)」を拡充すべきだった。

何よりもダイヤモンドの2つの記事が問題なのは
ユニクロをファストファッションと位置付けていることであり、これは完全に事実誤認である。
ファストファッションとは何か?を記事中に定義してあるので、引用すると
ファストファッション(流行のファッションを低価格で大量に短いサイクルで販売する業態)ブームである。
とある。

ユニクロは流行を意識していたが、短いサイクルでは販売しない。ユニクロの商品サイクルは恐ろしく長い。例えばヒートテックだが、店頭に並んだのは2010年7月半ばである。そして2011年1月末日現在まで販売が続いている。また2011年夏物の半袖ドライポロシャツがすでに2011年1月には店頭に並んでいる。半袖ドライポロシャツが実際に動き始めるのは5月の連休以降であるから、4ヶ月間は店頭で寝ていることになる。
また商品開発はもっと以前から行われており、企画は1年以上前からスタートする。これの一体どこが「短いサイクルで販売する業態」なのだろうか?

そしてさらに事実誤認を言えば、高付加価値を訴求する大手アパレルとあるのだが、大手アパレルの商品はダイヤモンドが期待するほど高品質ではない。ユニクロの方がずっと高品質な商品が少なくない。ユニクロの定番である無地のラムウールセーター(1990円)・ラムウールカーディガン(2990円)の品質を越えるラムウールセーターを製造している大手アパレルとやらが一体何社あるのだろうか。

ただ、ユニクロの急成長が止まったのも事実である。
それでもユニクロ単体で6000億円を越える売上高があり、営業利益が400億円ある。これほどの好成績のアパレルはない。
ユニクロの急成長が止まった要因は、国内市場の飽和点に達したことと、消費者がユニクロに対して「飽きた」ことにあると考えている。

もはや消費者はユニクロの商品をかなり持っており、同じブランドの商品をさらに所有したくない気持ちになっている。だから売り上げ水準が2008年当時に戻ったのだろう。けれども、今後ユニクロの売上高が半減するかというとそれはないだろう。肌着・靴下・無地定番商品(例えば先ほどのラムウールセーター)などへの一定需要は減らない。
むしろ「似たような物・同じような物なら安い方で買う」という消費者心理が働く。
ダイヤモンド推奨の大手アパレルとやらで良く分からない利益を積み上げられた高額な無地ラムウールセーターを買うより、ユニクロの1990円の方が品質が良くて見た目も変わらないなら、世の中の大半の人間がユニクロを買う。

経済誌・一般紙としては「ユニクロ失速」を書けばトピックスになるのだろうが、世界で通用する可能性がある国内企業の芽を摘むことがはたしてマスコミの仕事なのだろうか?と疑問を呈しておきたい