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「トレンド任せ」と「別注商法」は限界に達している

 大手セレクトショップや著名SPAブランドのショップを覗くと、全般的にシーズンごとにすべての商品が入れ替わっていることがわかる。
昨今はベーシックなアイテムでさえ、シーズンごとに作り変えてしまっている。
ベーシックとはどういうことかというと、白やグレー無地のTシャツだったり、無地のオックスフォードボタンダウンシャツだったり、レギュラーストレートのジーンズだったりというアイテムである。

一昔前ならこれらの商品は「定番」として長期間販売されていたし、作り変えるとしても数年に一度マイナーチェンジする程度にとどまっていた。

ジーンズショップだと必ず、リーバイスの501が置かれていた。
トラッド系のお店だとブルックスブラザーズのオックスフォードボタンダウンシャツやラコステの無地ポロシャツは必ず置かれていた。
「定番」を置かずにガラっと商材全てを変えることが果たして売上高につながっているのだろうか?
つながっていないのではないか。
つながっているなら今頃アパレル業界は増収増益の会社であふれかえっているだろう。

ところが現実はそうではない。
減収減益は当たり前、前年維持でも「すごくがんばっている」と評価される状況である。

商品をすべて作り変えると、理論上、買い替え需要が見込まれる。
しかし、その仮説通りに消費者は行動してくれていない。

またオーナー、店長、バイヤー、に考える力、物を見極める力が失われているのではないか。
何を「定番」にしたら良いのかわからない。
「定番」と新商品の構成比率がどれくらいが適正なのか考えられない。

そういうことなのではないかと感じられる。

欧米の名だたるラグジュアリーブランドほとんどにデニム生地を納品しているクロキを取材したことがある。
クロキによると「ラグジュアリーブランドは新商品も投入するが、定番品も継続している。ある品番のデニム生地なんて数年以上に渡って使われ続けており、それを使った品番もほとんど変化しておらず、したとしてもマイナーチェンジにとどめている。ラグジュアリーブランドの定番と新商品の構成比率は考え抜かれている」という。

定番なくして何がブランドなのだろうか。
何がセレクトショップなのだろうか。

店頭を見ていると、定番作りにもっとも熱心なのがユニクロに見える。
なるほど今年の店頭にも昨年物が並んでいたり、定期的にマイナーチェンジは繰り返されたりしている。
けれども、無地のオックスフォードボタンダウンシャツも無地のスエットシャツ(トレーナー)も年間を通じて置かれている。
冬場なら無地ラムウールセーターは必ずある。

たしかにユニクロはシーズン物の投入にも積極的だし、時々、企画意図がわからない突飛な新商品の投入もある。

しかし、定番は必ず作り続けている。

ユニクロをバカにするファッション業界人は多いが、彼らがバカにするユニクロの方が、欧米の有名ブランドに近い姿勢を採っているのではないか。
定番と新商品の構成比率を考えられるだけの能力があるのではないか。

「ユニクロみたいな大資本だからできるんだよ」という言い訳が聴こえてきそうだが、そんなことはない。
小資本だってやろうと思えばやれる。
その実例は苦楽園のセレクトショップ「パーマネントエイジ」だろう。

http://www.permanent-age.co.jp/

ここは1店舗しかない個人オーナーの店だが、定番商品をオリジナルで企画し続けている。
無地カットソーは定番品で、ほとんど変わらない。変わったとしてもマイナーチェンジのみである。

IMG_3794

(パーマネントエイジの定番カットソー)

1店舗だけなら、当然、ロットがまとまらない。
だからここは、自社オンラインショップのほか、卸売りもするし、百貨店内の催事にも定期的に出店する。

また、何年間か売り続ける計画があるから、ある程度のロットとしてまとまり、オリジナルの定番品を作ることができる。

セレクトだろうがSPAだろうが何店舗かのチェーン店なら個店のパーマネントエイジより資本力は大きいはずだ。
個店にできてチェーン店にできないはずがない。要は考える力とやりきる覚悟があるかないかだろう。

ファッション業界人の「定番忌避」は商品だけのことではない。
素材面にも及んでいる。

カイハラやクロキといったデニム生地メーカーはブルーデニムでも何百種類という色を持っている。
そんな多数の色があるのに、別注色なるものが必要だろうか?
ユニクロやエドウインのように年間何十万本も製造するならともかく、1シーズンにせいぜい100本ほどしか製造できないようなブランドに別注色が必要だろうか。到底必要とは思えない。
何百色もあるブルーから選べば良いのではないか。顧客もそれだけの数のブルーは見分けられないし、何よりもブランド担当者自身が見分けられないだろう。

一口に「デニムの別注色」と言うが、ロープ染色するには最低でも5000メートルのロットが必要になる。
5000メートルでも少ないくらいだ。
1反=50メートルだから100反のオリジナル生地を作る覚悟があるなら別注色をオーダーすればいいが、それが無いなら安易に別注色などと口にするのはやめた方が良い。
知識の無さがバレるだけである。

逆にクロキの定番デニム生地を欧米ラグジュアリーブランドは使用しているのである。

どちらが理にかなった姿勢かは言うまでもない。
「別注」という言葉に頼らないと売れないブランド、売れない店がそれだけ増えたということだろう。
「別注」という言葉を使ってすら売れなくなってきているのだから、そろそろ「別注」商法も限界に達しているということだろう。

話を戻すと、定番を作れない・売れないままでは、結局そのブランドの顔はいつまで経ってもできないわけで、毎シーズン、ガラっと商品が変わるのは目先は大きく変化するが、そのブランドやショップの本質は見えにくい。
トレンドの風任せの浮動票だけを当てにした商売は、これ以上伸びる要素は少ない。
ブランド、ショップともに「定番」を作るだけの企画力、物を見極める力を養うべきではないか。

機能性がプラスアルファの要素になる

 世界的デニム生地メーカー、クロキのブログで、15オンスストレッチデニムが完成したと報告されている。

15オンスのストレッチデニム
http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11850435184.html

今まで、ストレッチデニムは、レディース向けの素材でしたので、メンズ向けのストレッチデニムの企画開発などはやっていませんでした。
また、ここ最近は、ソフトでライトなストレッチデニムが主流でしたので、余計にヘビーウェイトなストレッチファブリックは、無用でした。

メンズ向けの、がっちりしたストレッチデニムも要るじゃん!
ハードな製品加工しても大丈夫な生地が要るじゃん!
実際、今までは、ソフトでライトな素材を追求してきたので、膝抜けや加工でのダメージも多発してきたのは事実です。
そこで、15オンスのがっちりしたデニムが出来たのです。

12~15オンスで数種類あるので、ご希望のウェイトを選んでください!

とのことである。

無印良品でもユニクロでもメンズにストレッチデニムが採用されている。
でも生地は薄い。
厚くても12オンス程度だろう。もっと薄いストレッチデニム生地もある。

ここで書かれているように14オンスのストレッチデニム生地は現状の市場にはない。
レディース基準の生地をメンズも採用しているというのが実態である。

筆者は国内のデニム生地メーカーはそういう機能性生地を強化すべきではないかと考えている。

クロキが紹介している厚手ストレッチデニムというのはその一つであると思う。

個人的に思いつくままに羅列してみる。

1、厚さは14オンスのままでめちゃくちゃ軽量なデニム
2、セルビッジ付きのストレッチデニム
3、色落ちしにくいデニム

デニム生地ならこのあたりの機能が求められているのではないか。

色落ちしにくいデニムというのはすでに何社かの生地メーカーが過去に完成させていると耳にする。
また、今秋冬商品としてエドウイン、リーが採用している。
すでに市場にはあるが、生地メーカーはもう少しこの生地をアピールしても良いのではないかと思う。

写真

(色落ちしにくいデニムを使ったエドウインの「キープブルー」)

また昨今はホワイトジーンズの人気が高い。
キザったらしい輩が春夏にイキがって穿くというイメージが強かったホワイトジーンズ(←偏見)だが、メンズ・レディースともに年間定番化しつつある。

そうなると、こちらにも機能性を打ち出した生地が欲しくなる。

1、汚れにくい白
2、下着が透けにくい白

の2点の機能が求められるのではないか。

実は両方とも過去に生地メーカーからもブランドからも発表されている。
防汚加工で汚れにくくなった生地というのは昔からある。
下着が透けませんよというホワイトジーンズは、ラングラージャパン時代の「ラングラー」から発売されていた。

色落ちしにくいデニムも含めて「昔からあるじゃん!」ということになるが、筆者の体感ではほとんど知られていないと感じる。
マーケティング的には「知られていないのは存在しないのも同じ」である。

だから改めて大々的に打ち出すと効果がある。

国内デニム生地メーカーは、これまで王道を追求してきた。
今もその歩みは止まることなく進んでいるが、いわゆる「王道」の生地ばかりで良いのかという疑問がある。
王道を否定するわけではないが、プラスアルファの要素が必要ではないかと感じる。

筆者は王道のデニム生地のみでは「ジーンズ」「カジュアルパンツ」というアイテムが停滞すると考えている。

そういう意味からもデニム生地の新たな切り口に期待したい。

一貫生産できるのは国内に2社だけ

 レディースブランド、メンズカジュアルブランド、SPAブランド、セレクトショップなどが広くジーンズを扱う時代になって久しい。
これらのブランドの企画担当者は「うちは国内のデニム生地工場と直接取り引きしています」と胸を張ることが多いが、よく尋ねてみるとそれは生地工場などではなく、単なる生地商社や振り屋、ブローカーであることが多い。
「おいおい、あそこはいつからデニム生地工場になったんや?織機なんか1台ももってないけど」と心の中で突っ込むこともしばしばある。
ブランド側の事実誤認なのか、生地商社や振り屋の口から出まかせなのかはわからないが、事実関係を歪めるであろう「ハッタリ営業トーク」は勘弁してもらいたいものである。

デニム生地を作る工程は大きく分けて

紡績(綿花から綿糸を作る)→ロープ染色(糸を染色する)→織布→整理加工

と4工程がある。
4工程の中にもそれぞれこまごました工程があるのだがそこは省略させていただく。

この4工程をすべて自社工場内で一貫生産できるのは、国内ではカイハラだけである。
紡績を除く3工程をすべて自社工場内で一貫生産できるのは、国内ではクロキだけである。

この2社以外に一貫生産できる工場は国内に存在しない。

その他にも有名な織布工場はあるが、そのほとんどは織布のみ、もしくは織布と整理加工を行っている。
織布工場の名誉のためにいうと、各国内産地は分業制が当たり前であり、デニム生地の三備産地だけが特別なわけではない。だから紡績や染色、整理加工などの工程を他社に依頼することは当然なのであり、カイハラとクロキが特殊な立ち位置だともいえる。

そういう状況が理解できていれば、ディスプレイ程度にしか織機を抱えていない生地商社や、まるっきり生産設備のない振り屋が「デニム生地工場」を名乗れるはずもない。

さて、前振りはこれくらいにして、上に述べた状況がクロキブログでも語られているのでご紹介したい。

http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11633881412.html

服飾業界の方、デニム工場の全行程を見学をされた事はありますか?

ジーンズおよびカジュアル衣料関係の方でも少ないと思います。

可能性としたら、織布工場くらいは、見た事があるかもしれませんが,,

紡績からの一貫工場は、日本に1社しかございません。

広島県のカイハラさんです。

染色からの一貫工場は、弊社(クロキ)だけになります。

東京や岡山の生地ブローカーさんや、生地コンバーターさんから

生地を買っている方、デニムが出来るまでの工程を全部見学したいんやけど..

て彼らに言ってみてください。

答えに窮するか?

上記2社へ案内するか?

の2択になります。

平素より、お付き合いの少ない、商売実績の少ないその手の会社から

工場見学の時だけ、見せてください!って言われる事があります。

え~~~、おたく、うちで生地買ってましたっけ?普段、生地を買っている

会社へ連れて行ったらどうなの?って、いじわるを言うんですが、

彼らは必死ですわ!ボロが出るからなあ!一切、お付き合いのない

会社でも、工場見学だけ言ってくる場合もありますよ!

だって、見せる事が出来るのは、2社しかないですもん!

また、セルビッチデニムをほとんど、自社の工場で織っていない

デニムメーカーもあります。織っていないのではなく、織れないんです。

重衣料用(太番手用)の織機がないんやから..無理やわなあ!

でも、セルビッチデニムで有名な会社なんよな~~

おかしいわなあ!

お客さんにしてみれば、

自分の発注している生地を織っている所は見たいでしょう!

自社で織ってないから!

見せれないんよ!

オカシイ!って早く気付きゃあ良いけど..

とのことである。

製造工場からこういう発信はありがたい。
製造工場の多くは発信が足りず、紛い物の生地商社や振り屋、ブローカーの多くは発信だけが上手い。
その結果、実態とは異なった「評判」が業界の内外を問わずに独り歩きすることとなる。上に引用したクロキブログによると、舌先三寸で世渡りをしている「セルビッチデニムで有名な織布工場」が存在するらしいが(笑)。はてどこだろうな~?(笑)

とにかく、国内生産のデニム生地について、カイハラとクロキ以外の社名を挙げて「当社は国内で一貫生産しています」とか「○○社で一貫生産した国内デニム」などと語る企業があればそれは詐欺行為である。

「言うた者勝ち」の世界

 以前、紹介したクロキのデニムブログで綿花のことが触れられている。

マテリアルが大事! 綿の種類
http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11542314557.html

文章が短いのは個性の範疇だが、ずいぶんと説明が分かりやすくなっている。

以下に引用する。

綿(COTTON)って言っても、様々な国で栽培されていますし、様々な種類もあります。

詐欺師のような紡績の親父が、「綿花を買い付けに190か国以上の国を回った!」ってアホなコメントを全国紙にした事がありましたが、栽培するには限界点(乾燥地だったり、温度だったり)がある訳ですから、それはあり得ません。

代表的な産地は、中国、インド、アメリカ、パキスタン、ブラジル、オーストラリア、ウズベキスタン..になります。生産数量もこの順番と思って貰って差し支えないです。

とのことである。

さて、文中に「綿花の買い付けに190カ国を回った」と豪語していたオッサンの話が紹介されているが、普通に考えると世界には200国弱しかない。(ムツゴロウさんの動物王国などは除く)

我が国の外務省のHPを見てみる。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/world.html

世界の国は195カ国とある。日本が承認していない国もあるだろうから、多くても200国程度だろう。
そして国連加盟国数は193カ国とある。

190カ国以上で綿花を買い付けたということは、ほとんど世界中の国々で綿花が商業用途として栽培されているということになる。
しかし、綿花生産量の国別にまとめた物をみると、デニムブログで挙げられている7カ国で85%の生産量が占められている。

http://nocs.myvnc.com/study/geo/cotton.htm

その他の国々はすべて合計しても15%の生産量にしかならない。
その他の国々にはペルーも含まれる。
ペルーは1960年ごろまでは綿花栽培が盛んであったが、その後の農地改革をきっかけとして綿花の生産量が激減し、現在では輸出するどころか、国内需要を輸入で賄っているとのことである。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Latin/Radar/Peru/201205.html

となると、綿花生産大国7カ国以外の国々では綿花が栽培されているとしてもまったく商業用途にはならず、自国の需要にすら対応できていないことになる。

我が日本国でも綿花栽培はゼロではない。
東日本大震災での被災地で綿花を育てて、津波被害の土地の塩分を吸収させるプロジェクトがあるし、兵庫県の西脇産地だって綿花栽培プロジェクトを継続している。
しかし、それらの綿花の生産量はとてもじゃないが商業用途として使えるほどではない。
あくまでも個人的な趣味で使用できる程度である。

そのような状況下で世界190カ国以上で綿花を買い付けることが可能だろうか?
そして世界190カ国を回る必要があるのだろうか?

筆者はどちらもNOだと考える。

さて、繊維・ファッション業界ではこういう「ハッタリ」が良くも悪くも横行している。
マスコミもそれを喜んで報道する。おそらく分かりやすく記事にしやすからなのだと思う。

それにしても「世界190カ国以上で綿花買い付け」というのは、常識で考えればマユツバ物だと気が付きそうなものだが、某全国紙の記者は世界の国数すら知らなかったのだろうか。

まず始めるという姿勢が重要

 以前から、生地メーカーの情報発信の有力ツールの1つにブログがあると書いてきた。
しかし、多くのメーカーのおじさま方は「何を書いたら良いのかわからんからやらない」と仰る。

それについては、「まず書くことに慣れるのが重要なので昼ごはんのことでも、映画のことでも何でも良いですよ」と説明してきた。その代わりに毎日書きましょうとも。

4月からデニム生地メーカー、クロキの方がブログを始められた。
これは初心者の方々にも参考になる事例ではないかと思う。

KUROKI デニムブログ
http://ameblo.jp/yan17bo14/

毎日どころか毎日数本書いておられるので、5月はすでに102本も記事がたまっている。
このペースで行くなら年内に1000本達成も不可能ではないかもしれない。

1000本も記事がたまれば検索でも圧倒的に上位に来ることができる。

仕事のこと以外にも出張で訪れた外国の都市のことや、どうでも良いちょっとしたことなども書いておられる。
そうでなければ毎日数本もアップすることはできないので、それで良いと思う。

ただ、惜しむらくは、とくに業務に関することである。
生地製造のプロが書かれているが故に、説明もプロ向きである。

ちょっと下記のエントリーを題材に見てみよう。
http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11540218856.html

分繊行程後のシート状になったものを全部まとめて、糊付け(サイジング行程)をします。

総本数4,000本の織物があったら、8本ロープで染めた場合は、この糸巻には、

500本の糸がシート状になっている事になります。

糊付け後、全部を一緒にして巻き上げていきます。

これを織機に掛けて、ヨコ糸をいれたら織物になります。

とのことであるが、どうだろうか?
生地メーカーの方はすごくよくわかると思うが、それ以外の業種の方にはちょっと分かりづらいのではないだろうか?
工程の機械の写真も貼り付けられているので、それは非常に貴重な資料なのだが、おそらくデザイナーや小売店関係者なんかにはこの記述ではさっぱり伝わらない可能性が高い。

総本数4000本の総本数とは何か?
8本ロープとは何か?

などをもう少し詳しく説明された方が伝わりやすいのではないかと思う。

しかし、「書くことがあらへん~」と言っていつまでもブログを始めない産地のおじさま方が多い中で、いきなり毎日数本ずつアップするというこの取り組みは大したものだと認めざるを得ない。

あれこれ考えるよりもクロキのブログのように「とりあえずやる」という姿勢も物事には重要だと改めて認識させられる。

守株待兎 ~待ちぼうけ~ を笑えない

 15年くらい前、インディーズデザイナーブームという小さなムーブメントがあった。
結局、大した花も咲かせずに終わってしまったのだが、そのころデビューした何人かのデザイナーさんとの付き合いがまだある。

デビュー当時、国内産地の生地メーカーに「生地を売ってください」と交渉しに行くと、「10反以下では売れない」「5反以下では売れない」と断られたそうだ。97年とか98年とかの頃である。
だいたい1反=50メートルの長さなので、10反というと500メートルである。
生地メーカーによっても違うのだが、「10反以下とか5反以下では売りたくない」と答える生地メーカーは多かった。

これは無理もないことで、かつて「ガチャマン(ガッチャマンではない)」と呼ばれた黄金時代、生地なんていうものは何万メートルでも売れた。その記憶があるため、「そんな500メートルとか、250メートル販売みたいチンケな商売はやってられない」というのが90年代後半の生地メーカーの偽らざる本音だろう。

その後、バブルもはじけたし、衣料品販売は不振だし、安価な海外生地が流入するし、で国内産地の生地販売量はみるみる縮小していった。
こうなると、国内産地の生地メーカーも小規模販売せざるを得ない。

昨今の各若手デザイナーがやたらと国内生地を使用できるようになったのもその恩恵だろうか。

しかし、国内でもいまだに「5反以下では販売できない」とのたまう産地企業もある。

小ロット販売を嫌う理由は、整経と呼ばれる作業に時間がかかるためだ。
早くても丸一日くらいはかかるし、長ければ数日かかる。

整経とはなんぞやというと、

整経は、必要な本数の経糸を、長さを揃えてビームに巻き付ける工程です。

ストライプ柄やチェック柄など、経糸に色の違う複数の糸を使う場合は、デザインどおりに経糸を配列する(「柄組み」をする)必要があります。

とある。
http://www.norikaiya.net/koutei-2-2-warping.html

これは自動化できない作業で、すべて手動で行われる。そのため時間がかかるというわけである。

だから5メートルだけ織ってくれなどといわれると「勘弁してくださいよ」ということになる。

しかし、在庫で積んでいる生地ならば5反だろうが3反だろうが販売すれば良いのである。1反での販売だって構わない。「何を寝ぼけたことをおっしゃっているんですか」と思う。

「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」「プラダ」「グッチ」など数多くの欧米ラグジュアリ―ブランドへデニム生地を販売する岡山県井原市の世界的デニム生地メーカー、クロキは「在庫生地なら1反からでも販売する」という。生地料金が高くなっても構わないなら「1反以下でも販売する」という。

現在、自社売上高の半分が欧米向け輸出となっているクロキがこの小ロット対応である。

「商況が厳しい」「生地が売れない」という国内産地企業が多数ある。
そういうところに限って「うちは5反以下は売らない」などとおっしゃる比率が高い印象がある。

だからこそ御社の商況は厳しいのではないですかね?

後、何十年待ち続けても国内にかつての大量生産時代は戻って来ない。それだけは確実に言える。

©Style Picks Co., Ltd.