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低価格ジーンズとの価格差がなくなりつつある

 あらゆる商品、サービスには低価格代替品が登場するし、競合も登場する。
これをいくら非難してもみても仕方がないし、無駄である。
完全になくそうとするなら社会主義経済に移行するほかないだろう。
もっとも地上において完全なる社会主義経済を達成できた国家は歴史上ないのだけれど。

国内のナショナルブランドのジーンズが凋落したのは、間違いなく代替品が多く登場したからである。
ジーンズの場合は低価格と高価格両方に代替品が数多く登場し、もしかすると市場規模全体は増えたかもしれないが、需要はバラけた。

低価格の代表はユニクロやしまむら、ウィゴー、ローリーズファームなどだろう。
高価格はエヴィスやドゥニームなどのビンテージ系、それから欧米のインポートジーンズなどだろう。

20年前なら6900~8900円くらいに価格帯に固まっていたナショナルブランドジーンズの上と下の価格帯に数多くの代替品が登場した。そして需要がバラけた。

それらの代替品の製造を可能にしたのが、OEM・ODM業者の増加である。

彼らが増加したために、本格的なジーンズをどんなブランドでも作り易くなった。
極端に言えば資金さえ出せばど素人でもオリジナルジーンズを作ることが可能だ。

低価格代替品の最右翼と評しても良いユニクロだが、目に見えて販売価格が上昇してきた。
これは原材料費の高騰、中国を含むアジア地区の人件費の上昇、円安基調の3つが原因である。

筆者は基本的に低価格店の店頭を見るのが好きであり、ほぼ日課であるといっても言い過ぎではない。

ユニクロの今秋冬物を見ると、たしかに値上がりしていることを痛感する。
ジーンズは税抜4990円である。
無地のラムウールセーターは税抜2490円である。

ジーンズは今春夏までと比べて1000円の上昇、ラムウールセーターは500円の上昇であり、他のアイテムも軒並み値上がりしている。

ウールカシミヤチェスターコート(チェスターフィールドコートのこと)は14900円(税抜)である。
ちなみに店舗によっては色とサイズにバラつきがあるが、昨年秋のチェスターコートは値下げされたままの7990円で販売されているから、色が気に入ってサイズさえ合えばこちらを買う方がお得である。

ジーンズに絞って考えてみる。

ユニクロのジーンズが4990円にまで値上がりしてしまった。
外的要因から仕方がないこととはいえ、正直に言えば割高感を感じる。

一方、残ったナショナルブランドのエドウインやリーバイスの廃盤品はだいたい5,900円くらいに値下げされてライトオンやジーンズメイトで販売されている。
またエドウインには5900円という商品もある。一部店舗にしか置かれていないが。

こうなると、価格差は1000円ほどであり、ユニクロのジーンズに以前ほどは割安感を感じられなくなっている。
それにユニクロジーンズにそこまでのブランド力があるかと言われると疑問を感じる。
またエドウインの廃盤品なら日本製である。

これ以外にも気になることがある。

これまでユニクロのジーンズの多くには「カイハラ」のタグが付けられていた。
全部ではないにしろ、国内のデニム生地工場の最大手カイハラから多くのデニム生地を仕入れていた。

今秋物のジーンズを店頭でいろいろ見てみたが、「カイハラ」タグが付いているものは見つけられなかった。

値上がりした上に「カイハラ」タグまでなくなっているのだから割高感はさらに増してしまう。
タグがないということはカイハラ製のデニム生地が減ったということだろう。
一説には中国製デニム生地の使用が増えているという噂も耳にする。

それはさておき。

低価格代替品とナショナルブランドの中価格帯との価格差がなくなってきたというのは面白い現象ではないかと思う。

また一時的に話題となった1000円以下の激安ジーンズもいつの間にか沈静化してしまっている。
量販店の店頭には商品は残っているが、話題になることもない。
これに注目している消費者は現在ほとんどいないだろう。

となると、ジーンズの市場価格は再び中価格帯周辺に集合するということになる。

そしてジーンズにもストレッチをはじめとする機能性が求められ始めている。
ストレッチ、吸水速乾、保温、防風、撥水、軽量などなどだ。

市場価格の底値が上がってきたということは、上手くやればナショナルブランドが逆襲することも可能なのではないか。
この10年ぐらいでジーンズナショナルブランドは激減してしまったが、残存者メリットはあるのではないか。

逆にユニクロはこれからさらに価格帯を上げるのだろうか。

低価格が欲しい人をジーユーに振り分けているという指摘もあるが、その通りだとは思いつつも、ジーユーは若い層をターゲットにしているため、シルエットがユニクロより細めである。

あれがピッタリ合う中高年男性は少ないだろう。

となると、これまでユニクロの主要顧客だった低価格好きな中高年男性を取り込めるブランドがグループ内に存在しないということになる。

ジーユーのサイズ幅を広げるのか、それとも別の低価格ラインを作るのか、はたまた値下げした昨年商品を重点的に買わせることにするのか、他人事ながら興味は尽きない。

もしかしたら店内にもう少し分かり易く見た目にも美しい形でアウトレットコーナー(在庫処分コーナー)を作るのも手かもしれない。



日本ジーンズ物語
杉山 慎策
吉備人出版
2009-02-27


国産デニム生地を伝統工芸品にしないために

 今日はWWDの日本製デニム生地に関する記事が割合に面白かったのでご紹介したい。

http://www.wwdjapan.com/focus/column/denim/2014-11-17/2493

ここではこれまでの国産デニム生地生産大手だったカイハラ、日清紡、クラボウの現状と、最近のデニム生地の潮流が書かれているが、何となく尻切れトンボで終わっている感がもあるため、私見を加えてまとめてみたい。

まず、カイハラの現状である。
押しも押されぬ現在の国産デニム生地工場最大手である。

年間3600万mの生産能力を持つカイハラは、日本製のデニム生地では圧倒的なシェアを占めていると見られている。貝原良治・代表取締役会長は「日本の雇用は当然守るという前提」というものの、海外では年産1億mを超えるなど有力デニム生地メーカーが巨大化しており、海外進出は国際競争を勝ち抜くためにも避けては通れない道とも言える。

とのことであり、これは以前にもこのブログで書いたことがあるように、国内最大手といえども海外の大手とは生産数量が格段に落ちる。
それは抱える織機の数が少ないためである。
海外大手に追いつくためには織機の数を増やさねばならないが、それを国内でやるのかアジアでやるのかとなった場合に、カイハラはアジアでやると決めたということになる。
また、噂にしかすぎないが、某大手ブランドが東南アジアに大規模工場を作る計画があり、それへの生地供給を見込んでいるのではないかという指摘もある。

次は日清紡とクラボウだ。

紡績大手の日清紡は11年、繊維事業の構造改革に伴い、国内でのデニム生産を縮小し、大半をインドネシアに移管した。同社の撤退前の生産能力は日本で年産600万メートルで、3番手。昨年4月には長く日本のデニム生地開発を牽引してきた紡績大手のクラボウが香港の自社工場を売却し、香港の有力デニム生地メーカーの合弁会社にデニム生地の生産および販売を移管。同社がコントロールするデニム生地の生産能力は1.5倍の年2500万〜2600万mに増加したものの、実質的に自社生産からは撤退した。

とのことである。

さて、この記事は最近のストレッチデニム需要の高まりについてこんな事例を挙げている。

東レインターナショナルが躍進している理由は、大きなトレンドの変化にある。つい数年前までは重くてゴワゴワしていたデニムが正統派と見られていたが、デニムらしいユーズド感のあるルックスはそのままに、快適性や着やすさが求められているのだ。素材もコットンにレーヨンやポリエステル、スパンデックスなど化学繊維をミックスし、柔らかさとストレッチ性が不可欠になっている。

とのことであり、今後は東レインター以外の合繊メーカーにも商機があるかもしれないとして文章を結んでいる。

この指摘は正しい。

ただ、今でも正統派デニムは重くて凹凸感のあるビンテージタイプのデニム生地だと考えられている。
少なくともデニム・ジーンズ村の大多数の住人の間では。

しかし、2008年にスキニージーンズが流行したときから、消費者はストレッチデニムを求め続けており、その潮流に対してデニム・ジーンズ村の多くの住人は「邪道だ」と言い続けたが、結局のところ消費者需要を覆せなかったというだけのことである。

もちろん、旧来の凹凸感のあるビンテージタイプのデニム生地は今後も一定数の需要はあり続けるし、その製造技法も維持され続ける必要はあると個人的には考えている。

しかし、一度、ストレッチ素材のラクさに慣れてしまうと、それが標準となってしまう。
また夏冬の気温に対応した吸水速乾のライトオンスデニムや、防風・発熱デニムなどは今後も季節の必需品として一定の売れ行きを維持し続けるだろう。
また、肉厚軽量デニムの需要も増えるかもしれないし、昨今では「色落ちしにくい」デニム生地の需要も高まっている。

こうした機能がなくとも、単純に「デニムに見えないデニム生地」の需要すら高まっている。

先日、クロキで多くの欧米ブランドに好評だったという生地を見せていただいた。
ストレッチ混であることは言うまでもないが、一見するとデニムには見えず、濃紺のカツラギのように見える。
平均的なデニム生地は、インディゴ染めの経糸3本に白い緯糸1本の割合で織られている。
表地は経糸と経糸の間からところどころに緯糸の白が見えている。
これによってデニム生地を、のっぺりとした単なる紺色の生地に見えさせないキモの部分である。

欧米ブランドに好評だったデニム生地はこのところどころに見える白い部分を極力見えないようにしたため、カツラギ素材のように見えるというわけだ。

これが現在の欧米ブランドが考える最先端トレンドということになっており、デニムに見えないデニム、ドレスアイテムと組み合わせても溶け込むデニムが注目されているといえる。

トレンドなんて常に揺り戻しのあるものなので、今のトレンドがいつまでも続くわけではないし、何年か後にはビンテージタイプのデニム生地が最先端トレンドに躍り出ていることも十分に考えられるが、それでも機能性デニム生地の需要はなくなることはなく、残り続けるだろう。

と、なると、次なるトレンドはビンテージ感と機能性の融合ではないだろうか。

例えば、スーパーストレッチ性のあるセルビッジデニムとか、色落ちしにくいセルビッジデニムだとか、そういう素材が求められるのではないかと考えている。

従来からの技法は伝承する必要はあるが、同時に固定概念は捨て去らないとファッションの潮流からは取り残される可能性が高い。そうなると日本製デニム生地は伝統工芸品と同じような位置づけになってしまうのではないか。

一貫生産できるのは国内に2社だけ

 レディースブランド、メンズカジュアルブランド、SPAブランド、セレクトショップなどが広くジーンズを扱う時代になって久しい。
これらのブランドの企画担当者は「うちは国内のデニム生地工場と直接取り引きしています」と胸を張ることが多いが、よく尋ねてみるとそれは生地工場などではなく、単なる生地商社や振り屋、ブローカーであることが多い。
「おいおい、あそこはいつからデニム生地工場になったんや?織機なんか1台ももってないけど」と心の中で突っ込むこともしばしばある。
ブランド側の事実誤認なのか、生地商社や振り屋の口から出まかせなのかはわからないが、事実関係を歪めるであろう「ハッタリ営業トーク」は勘弁してもらいたいものである。

デニム生地を作る工程は大きく分けて

紡績(綿花から綿糸を作る)→ロープ染色(糸を染色する)→織布→整理加工

と4工程がある。
4工程の中にもそれぞれこまごました工程があるのだがそこは省略させていただく。

この4工程をすべて自社工場内で一貫生産できるのは、国内ではカイハラだけである。
紡績を除く3工程をすべて自社工場内で一貫生産できるのは、国内ではクロキだけである。

この2社以外に一貫生産できる工場は国内に存在しない。

その他にも有名な織布工場はあるが、そのほとんどは織布のみ、もしくは織布と整理加工を行っている。
織布工場の名誉のためにいうと、各国内産地は分業制が当たり前であり、デニム生地の三備産地だけが特別なわけではない。だから紡績や染色、整理加工などの工程を他社に依頼することは当然なのであり、カイハラとクロキが特殊な立ち位置だともいえる。

そういう状況が理解できていれば、ディスプレイ程度にしか織機を抱えていない生地商社や、まるっきり生産設備のない振り屋が「デニム生地工場」を名乗れるはずもない。

さて、前振りはこれくらいにして、上に述べた状況がクロキブログでも語られているのでご紹介したい。

http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11633881412.html

服飾業界の方、デニム工場の全行程を見学をされた事はありますか?

ジーンズおよびカジュアル衣料関係の方でも少ないと思います。

可能性としたら、織布工場くらいは、見た事があるかもしれませんが,,

紡績からの一貫工場は、日本に1社しかございません。

広島県のカイハラさんです。

染色からの一貫工場は、弊社(クロキ)だけになります。

東京や岡山の生地ブローカーさんや、生地コンバーターさんから

生地を買っている方、デニムが出来るまでの工程を全部見学したいんやけど..

て彼らに言ってみてください。

答えに窮するか?

上記2社へ案内するか?

の2択になります。

平素より、お付き合いの少ない、商売実績の少ないその手の会社から

工場見学の時だけ、見せてください!って言われる事があります。

え~~~、おたく、うちで生地買ってましたっけ?普段、生地を買っている

会社へ連れて行ったらどうなの?って、いじわるを言うんですが、

彼らは必死ですわ!ボロが出るからなあ!一切、お付き合いのない

会社でも、工場見学だけ言ってくる場合もありますよ!

だって、見せる事が出来るのは、2社しかないですもん!

また、セルビッチデニムをほとんど、自社の工場で織っていない

デニムメーカーもあります。織っていないのではなく、織れないんです。

重衣料用(太番手用)の織機がないんやから..無理やわなあ!

でも、セルビッチデニムで有名な会社なんよな~~

おかしいわなあ!

お客さんにしてみれば、

自分の発注している生地を織っている所は見たいでしょう!

自社で織ってないから!

見せれないんよ!

オカシイ!って早く気付きゃあ良いけど..

とのことである。

製造工場からこういう発信はありがたい。
製造工場の多くは発信が足りず、紛い物の生地商社や振り屋、ブローカーの多くは発信だけが上手い。
その結果、実態とは異なった「評判」が業界の内外を問わずに独り歩きすることとなる。上に引用したクロキブログによると、舌先三寸で世渡りをしている「セルビッチデニムで有名な織布工場」が存在するらしいが(笑)。はてどこだろうな~?(笑)

とにかく、国内生産のデニム生地について、カイハラとクロキ以外の社名を挙げて「当社は国内で一貫生産しています」とか「○○社で一貫生産した国内デニム」などと語る企業があればそれは詐欺行為である。

今改めてカイハラを見直したい

 先日、2回目の和歌山県高野口産地のヒアリングが終わった。今回は4軒回った。
残りはあと4軒である。

さて、その中の雑談で「今年もまた勉強会を開かないといけない。講師は誰が良いだろう」という話題となった。
高野口産地の各企業が聴講する勉強会には、毎回、同じ生地メーカーや染色工場などの製造業で成功しつつある方々をお招きしている。

その講師選定の条件に耳を澄ましていると「もっと高額高付加価値の素材開発を得意とする生地メーカーが良いのではないか。今後さらに高付加価値素材を開発せねばならない」との声。

これには率直に疑問を感じた。
ここで言う「高付加価値素材」というものはどういう定義だろうか。
おそらく、「ものすごく変わった織り組織または編み組織を持った、表面変化に富んだ素材」なのではないかと思う。もしくは「ものすごく機能性に優れた生地、超強力吸水速乾とか発熱生地とか、冷却生地など」ではないかと思う。

国内の生地メーカーの言う「高付加価値素材」とはこの2つに尽きる場合が多い。

しかし、ものすごく変わった組織の生地を毎シーズン開発するのは並大抵のことでは無理である。かなりの高頻度で生み出しても3シーズンに一回とか、3年に一回とかの割合になる。

また超強力な機能性を持った素材を「高付加価値」とは言わない。それは「高機能性素材」である。

そうした会話を耳にしながら、ふと、デニム生地の最大手メーカー、カイハラを思い出した。
広島県福山市に本社を構え、広島県内に自社工場を抱えている。
現在はデニムブームが終わって工場稼働率が落ちているとはいえ、いまだに年間売上高は100億円を越える。
海外生産ゼロの完全国内生産でありながら、欧米ブランドにもデニム生地を輸出している。

さらに言えば、デニムという生地はこだわりや蘊蓄の宝庫ではあるものの、まったく目新しい織り組織を持った生地などは存在しない。見た目にはあまり変わり映えのしない定番素材である。
その何の変哲もない定番素材を人件費の高い国内工場だけで生産しながら、欧米ブランドとも広く取り引きを行っている。

国内生産のみでこれほど大規模な売り上げを維持し、海外にも輸出できている産地企業は類を見ない。

変にこねくり回した織り組織・編み組織のファイバーアートみたいなヘンテコリンな生地を開発する企業よりも、デニムという定番素材を国内で製造しながら、海外でも高い知名度を得ているカイハラこそ講師にふさわしいのではないかと思う。

すでに10年ほど前に、カイハラは経済紙や経済番組でも採り上げられており、今となっては目新しさはない。しかし国内生地メーカーにとっては、まだまだ学ぶべき点が多いのではないだろうか。
高い人件費の日本工場で製造するカイハラデニムが、安い人件費の中国デニム生地メーカー黒牡丹や、パキスタン、トルコのデニム生地メーカーといかに戦い、ある程度の勝利を収めたのかは、今改めて参考になる事例ではないだろうか。

というわけで、講師にはカイハラの貝原良治会長を推薦しておいた。
何分、発言に影響力がない筆者なので採用されるかどうかはわからないが。

カイハラ製デニムを強くアピールするユニクロ

 ユニクロの3990円ジーンズ。そのデニム生地のほとんどを広島県福山市のカイハラが製造していることは有名である。ユニクロ側も盛んに「カイハラ製デニム」をアピールしている。

日本の産地企業として、有数の規模を誇るカイハラだが、ユニクロ側のPRも他の産地企業と比べて突出している。ユニクロのダウンジャケットのナイロン素材は北陸産地での生産があるはずなのだが、あまりPRされていない。それだけカイハラとユニクロの関係が良好だということだろう。

先日のメルマガでは、カイハラの工場風景がついに紹介されていた。
小さい写真なので見にくいかもしれないが、見ていただきたい。

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これはある意味で、産地企業のもっとも理想的なPRだと思う。

1、有力ブランドとの連携がわかりやすい
2、工場設備が掲載されていることで、物作りのイメージが伝わりやすい

という効果が挙げられる。

筆者もときどき、産地企業のPR方法について尋ねられることがあるのだが、
ブランド側に了解を取ってからの話しではあるが、取り組み先のブランド名を自社HPで挙げることと、
工場設備の写真の掲載をお薦めしているのだが、現状はなかなか受け入れてもらえない。

今回のカイハラの件は、産地関係者にもよく見ていただきたい。

さて、提言に産地が二の足を踏む理由は

1、ブランド側から叱られるのではないか
2、工場設備なんか見せても仕方がない
3、最新設備でないから恥ずかしい

という3つくらいに集約される。

1については、ブランド側に了解を求め、拒否したブランドは掲載しないということで解決できる。了解してくれたブランドだけを掲載すれば済むことである。

2については明らかに産地企業が自社を卑下している。

3についてだが、今回のカイハラはなるほど最新設備だが、最新設備が必ずしも効果的とは限らない。最新設備が見たければ中国の工場で十分なのである。反対に、最新設備を備えた中国と対抗するためには、最新設備ではあまり意味がない。
それよりも、旧型設備で作っていることをアピールする方が、中国工場と差別化がしやすい。

ここの部分は是が非でも産地側の意識を変えてもらわなくてはならない。

今回の事例は、ぜひ産地の方々にも参考にしていただきたい。

ジーンズ比率の高いショップほど苦戦傾向

 ユニクロの12月度売上高の落ち込みがきっとすごい話題になるだろうと思う。

ユニクロの12月度は
既存店売上高が前年比15・5%減
既存店客数が同10・0%減
既存店客単価が同6・1%減

となった。

マックハウスの12月度は
既存店売上高が前年比13・7%減
既存店客数が同12・9%減
既存店客単価が同0・9%減

ポイントの12月度は
既存店売上高が前年比1・5%減
既存店客数が同6・1%減
既存店客単価が同4・8%増

ハニーズの12月度は
既存店売上高が前年比2・6%減
既存店客数が同9・9%減
既存店客単価が同8・2%増


各社に共通するコメントは「暖冬のため防寒類(マックハウスはダウンジャケットと名指ししている)の動きが鈍かった」ということである。
たしかに、12月24日の寒波襲来まではかなり暖かく、ダウンジャケットの着用機会はほとんどなかった。

また、毎朝の全国天気予報を見ていて、東京の方が、名古屋・大阪よりも気温の高い日が多かったことも12月の特徴として挙げられるかもしれない。(元来は東京のほうが、大阪よりも寒い)

ポイント、例えばレイジブルーとハレのメンズ2業態を見ると、ダウンジャケット類がない。あるのは「中綿入り」ジャケット類である。おそらくコスト削減の目的もあったのだろうが、2009年秋冬には展開していたダウン類をすっぱりやめている。ハニーズも同様にダウンはあまり注力しなかったのだろう、ダウンに注力していないショップが売上高を微減でキープしている。

また、別の角度から見たいと思う。

ユニクロ、マックハウス、あとライトオン、ジーンズメイトも入れて、ジーンズの構成比率の高い企業が売上高を大きく落としており、ポイント、ハニーズ、しまむらなどジーンズの構成比率が低い企業は、売上高を前年並み程度に維持している。
ライトオン、マックハウス、ジーンズメイトは言わずと知れたジーンズカジュアルショップで、店内の壁面は「リーバイス」「エドウィン」のジーンズで埋め尽くされている。
しかし、2007年にジーンズブームが終了してからは、ジーンズの売れ行きは低迷している。2010年の売れ筋ボトムはチノパンであり、ワークパンツであり、レギンスであった。
ジーンズショップはその動きには、多少対応したけれども、ほとんど対応できていない。

ユニクロもあまりにジーンズ比率が高すぎる。UJの失敗後にも関わらず2009年秋には、カイハラ製デニムの3990円と、5990円以上のメイドインジャパンジーンズを大々的に「また」打ち出している。

売上高の分母の大きさが違うが、ユニクロの売上高減の要因の一つに、ジーンズの比率が高すぎることがあるのではないだろうか。

週刊プレイボーイのユニクロジーンズ記事に異議あり

 今週発売した週刊プレイボーイ(集英社)に「ユニクロ9990円ジーンズを解剖する」という記事が掲載された。
プレイボーイの記事は政治も経済もあまり信用していないのだが、ファッションの記事も同じだ。今回の記事は大筋ではその通りなのだが、細部や業界分析は首をかしげたくなる個所が多かった。

まず、ユニクロ9990円ジーンズを全店に入荷しているかのような書き方があった。これは間違いで、9990円ジーンズは大型店にしか入荷していない。大阪の例で言えば、新今宮のフェスティバルゲート店やなんばシティ店には入荷しておらず、グローバル旗艦店の心斎橋店にしか入荷していない。「+J」とほぼ同様の扱いである。ちなみにもっと言えば、ユニクロが何シーズンも前から先行販売している5990円ジーンズ、7990円ジーンズも同様に大型店のみの展開である。

記事中に「この冬は9990円を穿いた人が町中に溢れるかもしれない」とあるが、大型店のみの入荷では全国に溢れようがない。「+J」を着た人が全国に溢れていないのと同じ理屈だ。

この記事にはエドウイン、リーバイスを持ち上げたい意思があるのか、「市場売上金額でエドウインやリーバイスを筆頭とした7000円以上のジーンズが65%を占めており、ユニクロはそこを狙って9990円ジーンズを発売したにちがいない」とある。
しかし、エドウインもリーバイスも、とくに決算発表しているリーバイ・ストラウス・ジャパン社は顕著に売り上げが見えるのだが、売り上げ規模を減らしており「筆頭とする」とは言えない状況に陥っている。
しかもユニクロは何年も前からメイドインジャパンジーンズ5990円・7990円を発売している。今さら9990円で騒ぎ立てることがあるのか疑問だ。

さらに9990円の洗い加工について触れられており、
「完全な量産使用で、シワやシミなどもどれもほぼ同じ位置にあり、市場に多く着用者が増えるとユニバレの危険性がある」というが、それならエドウインやリーバイスのジーンズも同じである。
彼らとて1つの品番を何十万本も生産する。洗い加工のシワやシミの位置も厳格に決められており、ほぼどれもが同じ位置になるように指導が徹底されている。何もユニクロ9990円ジーンズに限ったことではない。

洗い加工が手作業によるため、少しずつ位置や濃度が異なるというのは、もっと生産本数の少ないブランド、もしくはオーダーメイドに近いブランドにしか当てはまらない。

さらにいえば「ユニクロの高額ジーンズにはカイハラ製のデニムが使われており」とあるのだが、今秋のユニクロジーンズは3990円にもジャパンファブリック、カイハラ製と謳われており、3990円もカイハラ製デニムである。

プレイボーイ編集部はこれらの事実を知らずに記事を組み立てたのではないのか?まったく事実誤認も良いところである。しかもこのライターはあまり衣料品業界に詳しくないようにも見える。

一つだけ参考になるなら、9990円ジーンズを物理的に解剖した結果、
股の部分の縫い方が簡略化されているそうである。この部分の分析は評価したい。ただ、「股の部分から裂ける可能性がある」という指摘には疑問だ。股が裂けるほど穿きこむには普通の生活スタイルでは相当な年数が必要であり、裂けてしまったらそれは寿命なのではないだろうか。

とにかくいつもプレイボーイの記事には疑問が多い。

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