タグ: オンワード樫山

オンワードのメンズへの施策はわかりにくい

物事が進みすぎると、かえって古典的なことが目新しいと感じるようになるらしい。

洋服の歴史は、オーダーメイドがもともとのスタイルで、第二次大戦前後に既製服が誕生した。
現在、洋服とは店で売っているものという認識だが、その昔の衣料品雑誌には、型紙が付録としてついていた。
今の若い人たちはそれを知らないから「オーダーメイドが新しい」なんて思ってしまうようで、ちょっと笑えて来る。
ちょうど、テレビ番組が生放送オンリーから録画編集されるようになり、一回転して生放送に新鮮さが感じられるようなものである。

そういえば、何年か前のキムタクのドラマで最終回のラストシーンを生放送するという企画があったが、これなんて、テレビ放送草創期のやり方で、当時のテレビドラマは舞台と同じですべて生放送されていた。

それが逆に新鮮に映るのだから何ともおかしなものである。

オンワード、オーダーメイドスーツの新ブランド「KASHIYAMA the Smart Tailor」の展開を開始
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP459482_V01C17A0000000/

このニュースを解説している授業を見学させてもらったが、学生たちがオーダースーツを「新しいビジネス」として認識していることに驚いた。

実態は新興だった既製服ビジネスが行き詰まりを見せて、原点回帰しているに過ぎないのだが、人間の認識なんていつの時代もそんなものでしかない。

ところで、このニュースを拝読して、やっぱりオンワードの施策は何かズレているなあと感じた。
とくにメンズ関係はオンワードがその分野に弱いということもあるのか、ズレて迷走しているように見える。

先日、この話題を取り上げた。

オンワード樫山のちょっとちぐはぐな取り組み「THE T.I.E」

オンワード樫山が10月20日、シャツに特化したEC専売の新ブランド「THE T.I.E」をローンチする。

とのことだが、シャツブランドのブランド名がなぜ「THE T.I.E」なのか?
ネクタイブランドならわかる。ネクタイをメインにしながらシャツも売るよというスタイルならわかる。
しかし、シャツに特化していて「THE T.I.E」というブランド名を付けた意図はまったく理解できない。
たとえて言うなら、ハンバーグ専門店「オムレツハウス」をオープンするようなものではないか。

今回の取り組みもオンワード以外の会社なら、ふーん、で済むのだが、疑問を感じるのは、オンワードは実は今年秋冬からオーダースーツの新ブランドを立ち上げているのである。

オンワード、オーダースーツの新ブランド 若者向け
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO17335350V00C17A6TJ2000/

オンワード樫山 紳士向けイージーオーダースーツの新ブランドを2017年秋冬シーズンから立ち上げる。「モーダムジュール」というブランド名で、30代前後の若者をターゲットとする。税別5万円台からを想定しており、オーダーながら手ごろな価格に抑えた。全国の百貨店などで販売

とある。

発表されたのが今年6月で、立ち上がりは今秋である。
立ち上がったばかりのこの「モーダムジュール」とは別にまた、オーダースーツブランドを立ち上げる意味がどれほどあるのだろうか?
やるならば、この「モーダムジュール」を拡販するか、ブランド名をリンクさせてやったほうがはるかにわかりやすいのではないか。
なんだか社内の仕事を増やすための仕事にしか見えないのは当方がひねくれているからだろうか。

それにもっといえば、オンワードには知名度がいまいち低いもの、昔から展開しているスーツブランド「五大陸」もある。
こちらはこちらで放置されっぱなしなのだが、もっと連携するほうが良いのではないか。

よく、「行政は縦割りだ」と業界の人は批判するが、この社内体制は行政に負けず劣らずの「縦割り」ではないのか。

年代層を分けて、モーダムジュールを立ち上げたのは、まあ良しとして、それなら今回立ち上げるブランドを五大陸と紐づけるほうが良いのではないかと思う。

今回のブランドは、全国13店舗で展開する「Sebiro&co.,」をリニューアルしてブランド名も変えるという取り組みなのだが、それならなおさら「五大陸」と関連付けたほうが良いのではないかと思う。
もしくは、知名度があまり高くない「五大陸」のブランド名を変更して新ブランドと関連付けるか。

かつて大手アパレル各社が売り場欲しさに似たようなテイストの新ブランドを次々と立ち上げてブランド名ばかりをやたらと増やしてきたが、その悪癖はいまだに続いているようである。
しかもメンズが弱いオンワードだからなおさら、その「昔の手法」に頼ろうとするのだろうか。

旧大手アパレル各社の直近の取り組みを見ていると、ちょっとやそっとでは回復できないと思うし、消費者に与えるインパクトも弱くしかもわかりにくい。
はっきり言ってオンワードのメンズに対する施策は傍から見ていてわかりにくい。

久しぶりにNOTEを更新しました⇓
国産ジーンズ第1号ブランドは「キャントン」か「ビッグジョン」か?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n619df72be1bb

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

オンワード樫山のちょっとちぐはぐな取り組み「THE T.I.E」

 業界のニュースを読んでいると、ちょこちょこわけのわからないネタにぶつかることがある。
媒体側のまとめ方が下手くそな場合と、ネタを発信した企業やブランドの組み立てが極めておかしな場合との2つがある。

先日、企業やブランド側の組み立てが極めておかしいネタを読んだ。

オンワードがEC専売のシャツブランドを始動 「五大陸」がプロデュース

https://www.wwdjapan.com/476309

なのだが、ちょっと見てみよう。

オンワード樫山が10月20日、シャツに特化したEC専売の新ブランド「THE T.I.E」をローンチする。「世界で一番“ワイシャツ”が揃う店」をテーマに、着まわしのきくベーシックなドレスシャツを約500型用意する。同社ブランドの「五大陸」がプロデュースを担当し、価格は6300円から。ビジネスパーソンをターゲットに、自社ECサイト「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET.)」のみでの販売を予定する。

これを読んだ方々はどういう感想を持たれたのだろうか。

正直、当方はちょっとわけがわからないなあという感想しか持たなかった。

まず、新ブランドをオンワード樫山のスーツブランド「五大陸」がプロデュースするという点。
ブランドをブランドがプロデュースというのはちょっと聞いたことがない。個人やそれに近しい少人数グループが展開しているデザイナーズブランドや小規模ブランドがプロデュースをするというのなら、まだわかりやすいが五大陸のような大手ブランドが新ブランドをプロデュースというのはちょっとピンとこない。

プロデュースというからには、個人や少数グループにさせるべきで、大手ブランドのプロデュースというのは単なる言葉遊びではないかと思う。

それなら、もっとわかりやすく、五大陸の派生ブランドとか兄弟ブランドとかという位置づけにした方がよかったのではないか。

それに、そもそも「五大陸プロデュース」が注目を集めるかというと、そこも疑問だ。はっきり言って、メンズスーツブランドの中では極めて知名度が低く、存在感がない。きっと10代・20代の消費者ならブランド名も知らないだろう。

以前に、小島健輔さんが「五大陸の知名度が低下している」という内容のブログを書かれていたが、まさしくその通りで、47歳たる当方だってスーツを買うときに五大陸は選択肢に入れていない。というより、平素暮らすうえで、五大陸のブランド名なんて思い出すこともない。まだレナウンと合併させられたダーバンの方が知名度が高いし存在感もあるのではないかと思う。

つぎに疑問なのが、新ブランドのブランド名だ。
シャツ専門のブランドなのに、なぜブランド名が「THE T.I.E」なのか?これではまるでネクタイブランドではないか。ネクタイをメインにしながらシャツも売るというならわかるが、このブランドはシャツブランドであり、ネクタイも扱うのかもしれないが、それはあくまで従属的だ。メインはシャツなのだから、もっとシャツとわかるブランド名にすべきではないか。

このあたりの組み立てははっきり言って、わけがわからないし、消費者だって理解しづらいだろう。

このことに疑問を先んじて呈していた記事がある。

https://note.mu/fukaji/n/nff7709a31acd?creator_urlname=fukaji

概ねその疑問には賛同である。

ただ、価格のことはちょっとだけ異論もある。

ツープライスとは競合するつもりがないのだと思う。ツープライスのシャツは2900円と3900円で、さすがにそこは競合とはしていないのだろうと思う。ただ、6300円という価格設定はどうなのかなあという点は同感である。

5000円の鎌倉シャツがあり、1300円高いというのは果たしてどうなのか、なかなか消費者には選んでもらえないのではないかと思う。
一部過剰に報道されているきらいがあるとはいえ、鎌倉シャツは5000円というリーズナブル価格だけでなく、自社縫製工場もあり、物作りの背景もしっかりと伝えられており、多くの消費者にも認知されている。その部分が付加価値となっている。

果たして、そういう付加価値をオンワード樫山が作れるのだろうか?というところが極めて疑問でしかない。
1300円高いということは、鎌倉シャツを越える付加価値を作る必要があるということで、それが容易く実現できるとは思えない。
かなり難しい作業になるが、オンワード樫山はそのことを理解していないのではないか。

オンワードお得意の百貨店を含む商業施設内への出店なら偶然通りがかったお客に見つけられて認知してもらえる可能性があるが、今回はECのみでの販売となる。
EC市場の成長率を見て、続々と参入しているが、ポっと出のブランドなんてネットで検索してくれる人はほとんどいない。ネットショップが何百万店とある中でどうしてわざわざ知名度も注目度もない新ブランドが検索してもらえると思うのだろうか。不思議でならない。

そのことを考慮しての「五大陸プロデュース」なのかもしれないが、残念ながら五大陸もそんなに注目されていないから、ネットで検索されることは極めて稀だろう。この1年で五大陸をネットで検索した人ってどれだけいますか?

となると、そこにたどり着く人はかなり少ないということになる。

ECはどれだけ人をネットで集められるかがカギとなるが、オンワードという名前でも五大陸という名前でもそれだけではほとんど効果がないことを知るべきである。
他方、ユニクロやジーユー、ZOZOTOWNなどはますますネットでの集客に力を入れて新たな機能を持たせている。EC草創期なら「単に開きましたよ。昔の大手ブランドですよ」というやり方でも良いが、すでに成熟期に差し掛かっていて、ネットでの戦略は極めて高度化している。その中に新規参入するということは、先行する大手と同等以上の大規模戦略が不可欠で、それがなければネットの海に埋没してしまうだけである。

おそらくはそれなりの対策は考えているのだろうとは思うが、これまでの大手アパレルの常識は一切通用しない世界だということを再認識して取り組まねば、確実に失敗に終わってしまう。

再度、組み立てから見直すことをお勧めしたい。

NOTEを更新しました⇓
「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。

バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。

で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。

ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



©Style Picks Co., Ltd.