タグ: エドウイン (1ページ / 3ページ)

ロゴTシャツブームで売上高が伸びたブランド

 閑話休題的な意味も込めて、たまには景気の良い話でも。

今夏は往年の懐かしいブランドのロゴTシャツが売れた。
まあ、いわゆるちょっとしたブームだったといえる。

中でも目に付いたのがチャンピオンとリーだ。
チャンピオンのブランドロゴ入りTシャツなんて、中学・高校の部活の練習着のイメージしかない。
リーのロゴ入りTシャツなんてその昔は珍しい物でもなんでもなく、普通にフロムUSAやら三信やらイズミヤの平場に並んでいて、地元の中高生のユニフォームのようなカジュアルウェアだった。

_UL1500_
IMG_1927

(リーの来春夏企画)

だからチャンピオンにしろ、リーにしろロゴ入りTシャツを見かけるたびに地元のちょっとダサめ中学生・高校生と重なって仕方がない。
若い人が着るから「新鮮」に見えるのであって、オッサンが着たなら、まちがいなく「30年前の部活の練習着を保管していたのか?物持ちが良いですね」といわれるだろう。

このブログでも触れたことがあるように、今夏はファッションビル内を歩くとショップはチャンピオンとリーだらけだった。

リーを展開するリー・ジャパンはエドウインの傘下企業である。
で、エドウインの営業マンに質問したところ、リーのロゴTシャツの今夏売上高は驚異的な増え方を見せたという。
ブランドロゴTシャツブームの影響もあり、エドウインロゴ入りTシャツ、アルファインダストリーロゴ入りTシャツも驚異的な増え方だったそうで、その3ブランドのロゴ入りTシャツの売上高は、前年比で何倍増という伸び率だったとのことである。(もちろん、これらのブランドはそれまでトップス売上比率が低かったからという要因もある)

IMG_1918
IMG_1915

(エドウイン、アルファインダストリーの来春夏企画)

完全にブームに乗れたといえる。

しかし、このブームが終わると反動は必ずあるだろう。
ブームが続いているうちにそれぞれのブランドのトップスを強化しなくてはならない。
そうでないとブームの終了とともに売上高は激減するからだ。

それでも暗い話がほとんどの衣料品業界においては、ロゴTシャツブームというのは数少ない明るい話といえるだろう。

それにしても、中高生の部活の練習着が一躍人気ブランドになるというのは、オッサン世代からするとなんだか釈然としない。

エドウインの営業マンによると、エドウインブランドやアルファインダストリーのロゴTシャツが伸びたのは、ロゴブームに加えて2000円前後という比較的買いやすい販売価格のおかげもあったとのことで、たしかに半袖Tシャツが1枚5000円もするなら、ちょっと買う気がなくなる。

よほどのセレブか服マニアかだろう。

一般人が奮発して買える半袖Tシャツの値段というと2000~3000円台で、5000円を越えるとちょっと厳しい。
7000円以上はよほどのマニアかセレブかしか買わない、と筆者は思っている。

エドウインやアルファインダストリーの売れ方がそれを証明しているのではないか。

ちなみに筆者の半袖Tシャツはだいたいが値引きセールで500~1000円になったもので、ユニクロ、無印良品、ライトオンの3ブランドで8割以上を占める。
値引き後1500円以上の半袖Tシャツはもう何年間も買っていない。

となると、以前に筆者がブランドスタート時になんだかんだと手伝った国産Tシャツブランド「ナインオクロック」の価格設定はまあ妥当なところだといえる。

ただ、今夏のロゴTシャツブームに反して、このブランドは無地Tシャツでスタートしたので、そのブームの恩恵は被っていない。

そのナインオクロックが今月クラウドファンディングに挑戦している。
目標100万円ということだが、正直なところ目標設定は50万円にしたほうが良かったのではないかと思った。

http://ishiwari.iwate.jp/pj/IswS2701440

1枚3000円のTシャツなので、コースがいろいろとあるとはいえ、客単価は3000円だと考えたほうが良い。
100万円を達成するには300人以上の支持がなくてはならないので、無名の新規ブランドとしてはちょっとハードルが高い。
逆に無名の新規ブランドでも100万円を達成したブランドはいくつもあるが、それらは商品単価が高かった。
最低でも7000~8000円、平均は1万円を越えていた。
となると、100人の支持で達成できる。

まあ、今から言っても始まらないので、残り日数で達成してもらいたいと思う。

とはいえ、現在54万円以上が集まっている。
ラスト、といってもあと5日ほどしかないが46万円弱を集めてもらいたい。
興味のある方は冷やかしも含めて協力してあげてはどうだろうか。

14705890_1309133272439236_5502757222383752759_n

(筆者の一番好きなナイクロのディスプレイ)

筆者は草葉の陰から見守りたい。





百貨店・専門店向けブランドの優位性がなくなった

 久しぶりに今月買ったお買い得品を晒してみる。

ライトオンで買ったエドウインのジャージーズ。
当然今春物ではない型落ち商品である。
定価9500円が3900円に値下がりしていた。

FullSizeRender1

ジャージのように伸縮性のある素材で作られているジャージデニムには、織物と編み物の二種類が存在する。
本来の「ジャージ」という素材は編み物であり、編み物ゆえに伸縮性がある。
別段ポリウレタン弾性繊維など使わずともウール100%・綿100%のセーターが伸縮することを思い出してもらえれば理解ができるはずである。

編み物の場合は、大概が裏毛と呼ばれる素材を使用している。
一般的にスエットシャツ(別名トレーナー)に使用される素材である。
これをデニム風に染色加工してパンツにしたのが、編み物によるジャージデニムである。

一方、織物でありながら編み物のように伸縮性のある素材を使用した商品もある。
原理としては、ストレッチ繊維を使用し、繊維の密度を低めて織る。
密度が低いと繊維同士に隙間ができるからその分、伸縮性が出る。
それだけでは不十分だからストレッチ素材も織り込む。
これで編み物のような伸縮性が実現できる。

ディーゼルのジョグジーンズやエドウインのジャージーズは織物である。

これが市場に出回って3年以上が経過したと思うのだが、現在は編み物商材よりも織物商材の方が市場に出回っているように見える。
裏毛素材商材が縮小傾向にある理由はなんだろうか。

個人的には二つあると考えている。

1、織物よりも伸びきってしまいやすい
  いわゆる「膝が出る」状態になってしまいやすい。
  織物と違って洗濯しても元の状態に戻りにくい

2、デニムっぽい洗い加工がしにくい
  ジーンズのようなヒゲ加工や激しい色落ち加工をすると糸が切れてしまいやすい。
  織物は何千本・何万本の糸で生地を構成するので1本が切れたところで大きな穴にはなりにくい。
  編み物は生地を構成する糸の本数が少ないため、糸が切れると大きな穴が開きやすい。
  また、織物に比べてヒゲ加工を施してもヒゲが出にくい。

で、早速穿いてみた。
伸縮性は申し分ない。しかし、ウエストのヒモが邪魔である。
筆者はヒモを結ぶイージーパンツ類の着用感が嫌いだ。だからヒモを引き抜いた。
ベルトループがあるので通常のベルトを締める。

かなりテイパードされた裾に比べると太ももはちょっとゆとりがある。
先日に買った無印良品のスキニージーンズよりはよほどゆとりがある。
今まであまり穿いたことのないシルエットだが、何とかなるだろう。

ちなみにこれは「あべのキューズモール」のライトオンで買ったのだが、近隣にあるジーンズメイトでは半額で売られていた。9500円の半額だから4750円である。
ならライトオンで買った方がお得である。同じ商品は安い方で買うのが人間心理だからだ。

もう一つは、ユニクロのバンドカラーシャツである。
定価2490円が990円に値下がりしていた。

FullSizeRender

昨年くらいからトレンドに浮上した襟なしトップスの一種である。
エクストラファインコットンのブロード素材で、2490円のままでは買わないが、990円なら十分に上質だといえる。
メンズの洋服は変化が少ないが、この「襟なしトップス」というのは久しぶりの大きなトレンド変化といえる。
ただし、2005年までと異なる点は、「襟なし」一色にはならないことだ。
相変わらず通常の襟のシャツも売られているし購買者も少なくない。着用者も多い。
これからもトレンドはこんな風にそれ一色に染まることはないのだろう。

さて、エドウインのジャージーズはさておき、トレンドの襟なしシャツがユニクロでも買えるのである。
定価で2490~2990円、値引き商品だと990~1990円である。
しかも値段の割には品質は悪くない。

トレンド商品が百貨店・専門店ブランドと量販店・低価格ブランドとほぼ同時に発売されるなんていうことは2000年ごろまでなら考えられなかった。
量販店のプライベートブランドだってトレンド商品を並べている。

例えば、久しぶりに立ち寄った西友。
プライベートブランドで、裏毛デニムのジョガーパンツを販売している。
定価3800円がすでに半額の1900円に下げられている。
試着しなかったのでシルエットまではわからないが、洋服に格別にこだわらない人なら西友のこの商品でも十分ではないか。

FullSizeRender2

こうして見ると、これまで「トレンドの早さ」に定評のあった百貨店・専門店向けの中・高級ブランドの優位性がなくなっていることが如実にわかる。
トレンドの早さやデザイン性の良さは、ほぼ拮抗している。
クオリティだって百貨店・専門店向けブランドが下がっているから、そこまで大きな差ではなくなりつつある。

だったら低価格商品でも構わないと考える人が増えても不思議ではない。

百貨店・専門店向けブランドは「トレンドの早さ」や「デザイン性の良さ」に代わる価値を創造する必要がある。それができないなら凋落・縮小はさらに続く。

西友の崩壊―現場からの報告書
荻原 康昭
データハウス
2000-10


西友ストアーの流通支配戦略 (1970年)
高丘 季昭
日本実業出版社
1970



新鮮で割安感のある商品は売れる

 衣類が売れにくいといわれているが、目新しくて値ごろ感のある商品はやはり売れる。
ただ、筆者も含めた多くの人は「テイスト」だとか「風合い」だとかの目新しさについては理解がしづらい。

「このテイストは斬新」なんて雑誌やテレビで言われたところで、それに大枚をはたいて買わねばならない価値を見出しにくい。
「テイスト」やら「トレンド」しか目新しい物を提供できないから衣類、とくにファッション衣料は売れにくいのではないかと思う。そういう「テイスト」やら「トレンド」やらの目新しさこそがファッション衣料の価値だから、仕方がないことなのではあるが。

目新しさでわかりやすいのが「機能性」だと思う。

ユニクロがかつてヒートテックで大ヒットを飛ばしたのは「機能性」と「価格の割安感」だった。

肌着メーカーを取材していると、一昨年の秋冬くらいから、この保温肌着類の売れ行きが目に見えて鈍ってきたという。2015年の秋冬は暖冬傾向も相まってさらに保温肌着類は苦戦した。

メディアが「苦戦」なんて報じるとまるで一枚も売れていないかのように感じてしまうことがあるが、そんなことはない。実際に保温肌着は一定の枚数は売れる。ただし前年を大幅に越えるような状況ではないということである。
例えば、ユニクロの店頭で見ていても秋冬になると必ず毎日何枚かはヒートテックが売れる。
もうたくさん持っているだろうと思うのに、一人で複数枚を買う人もいる。

保温肌着の売上高が伸びなかった代わりに好調だったと言われるのが、保温ズボンであろう。
ユニクロの防風ジーンズやエドウインの保温ジーンズの類である。

先日、カイタックファミリーの展示会にお邪魔した際にも、量販店向けのレディース保温ジーンズ類が好調で、2016秋冬向けも多数のオーダーが入っているそうだ。

東洋経済オンラインに

しまむら、V字回復の理由は「値上げ」にあった
http://toyokeizai.net/articles/-/112480

という記事が掲載されているが、この「値上げ商品」とは3900円の裏地付の保温ズボンだと報じられている。
先日のカイタックファミリーの量販店向け商材もちょうど同じ価格帯である。

一方、エドウインで尋ねてみると、7900~9000円くらいの専門店向け保温ジーンズは好調だったが、一部チェーン店向けに企画製造している4900円商品は不調だったという。

IMG_1037

(エドウインの専門店向け保温ジーンズ)

4900円商品が不調だった理由はおそらく、その下をくぐる3900円、2900円ラインの他社製品が充実したためではないかと考えられる。

ジーンズ、カジュアルパンツという商品群で見ると、6900円以上が専門店向け商品とされ、それ以下は量販店向け商品とされている。
量販店には1900円、2900円、3900円、4900円、5900円の価格帯があるが、メインとなるのは1900~3900円で、よほどの「何か」がないと4900円、5900円はあまり量は売れない。
なぜならこのくらいの価格帯になるとSPAブランドや一部専門店でも販売されており、そちらの方がブランドステイタスが高いからだ。

今までエドウインの4900円保温ズボンは、「機能性」という「何か」があったわけが、他社からほぼ同じような機能性のある2900円、3900円商品が登場すると、人は同じような物なら安い方で買うから、そちらに流れたと考えられる。

東洋経済の記事は、しまむらの回復を値上げにあると指摘しているわけだが、それは半分正しく、もう半分は保温ズボンという新ヒット商品を見つけたからではないかと思う。
しまむらほどの規模になると販売数量が劇的に伸びることはよほどの事件がない限りはありえない。数量が変わらない状況で売上高を伸ばそうと考えるなら価格を上げるしかない。
3900円に上げたことが正解だったのではなく、「3900円で保温ズボンという新ヒットアイテムを販売した」ことが正解だったといえる。

ユニクロは今春から再び値下げ傾向になっているが、昨年12月・今年1月の苦戦?(他のアパレルに比べると苦戦ではないと思うが)の原因が値上げだと考えられることから、価格政策を批判する記事が相次いだが、ユニクロがさらに売上高を伸ばそうと考えるなら値上げがもっとも正しい選択肢の一つであることは間違いがない。
それが消費者に受け入れられるかどうかが問題ではあるが、「値上げ=悪」ではない。

それはさておき。

ヒートテックをはじめ、各社の保温肌着を腐るほど持っている消費者は、今後、保温肌着をまとめ買いすることは考えられない。せいぜい2,3枚を毎シーズン買い替えるだけだろう。最早、現在の低価格保温肌着は買い替え需要しか存在しない。
今後、画期的な新機能やら新素材が出てくれば別だが、従来品のアップデート版では爆発的に売れることは考えられない。

そういう消費者がいまだに所有していなかったのが、保温ズボンであろう。
この商品は2016秋冬も売れるだろうし、2017秋冬も売れるのではないか。とくに量販店価格帯の商品は。
量販店価格なら3900円が主戦場となり、4900円で売るためにはあっと驚くような「何か」が必要となる。

しまむら、カイタックファミリーの商品が売れたのは、手持ちが少ない新鮮な商品だった上に、価格帯に割安感があったからだ。

しかも各社の保温ズボンの見た目は向上している。
通常のジーンズ、カジュアルパンツ類とほとんど見分けがつかない。
シルエットも通常のスキニーと変わらず細身を実現できている。

やはり、「新鮮で割安感のある商品」は売れるのである。
ただ、業界人の考える「新鮮さ」と一般消費者が求める「新鮮さ」が乖離しているのが、昨今の状況であり、これが衣料品不振の原因の一つではないかと思う。




エドウインが503をリニューアル

 今回は展示会レポートを。

エドウインが定番ジーンズの「503」を今秋冬からリニューアルする。

FullSizeRender

最大のリニューアル点はデニム生地。
強撚糸で織って、そこに液体アンモニア加工を施すことで、綿100%でありながら緩やかなナチュラルストレッチ性と光沢感、ソフト感が出た。
個人的には、そのソフト感が印象に残っている。
14オンスデニムなので市場に出回っているデニム生地より重く感じる。
手にしたときのソフト感を言葉で表現するのは難しいが、しいていうなら、超ヘビーオンスのレーヨン混デニム生地に近いとでも言えば分かりやすいだろうか。

ターゲット層は30代半ばから上のベーシックを好む層。
あくまでもファッション好みではない層と言った方が伝わり易いのではないか。

以前に発表した「Eスタンダード」もベーシック路線だが、こちらはトレンド層を意識しており、非トレンド層の「503」との棲み分けを図る。

さて、この「液体アンモニア加工」だが、日清紡の技術である。
かつてジーンズ業界で一世を風靡したことがある。

90年代半ばにビンテージジーンズが登場するまで、ジーンズというアイテムは「きれい目」路線を進んでいた。
その理由はさまざま考えられる。

作業着として誕生したジーンズがファッションアイテムとなった。
ファッションアイテムにはなったものの、「ドレス」「フォーマル」ジャンルからは阻害されていた。
90年代前半に筆者自身も経験したことがあるのだが、ヨーロッパではジーンズ穿きでは入店すら拒むレストランがあった。
この扱いは日本でも同様である、というより日本は欧米のやり口をコピーしていたに過ぎない。
90年代後半に盛り上がった?カジュアルフライデーでもジーンズは除外されていた。

オッサン世代は当時を思い返してもらいたい。
ゴルフスラックスやチノパンはOKだったが、多くの会社でジーンズは除外されていたはずだ。

それほどにジーンズは「フォーマル」ではないと位置づけられていた。
出自がワーク、カジュアルのジーンズとしては通常の衣服と同等になるためには、きれい目に進むという方向性は当たり前だったといえる。

生地に光沢感があってソフト感があるという「液体アンモニア加工」が各ナショナルブランドで重宝されたのは当然の成り行きだといえる。
この「ジーンズきれい目化路線」の最終形態が、90年代前半に登場したレーヨン、テンセルのソフトジーンズだったのではないかと個人的には見ている。

しかし、その反動から90年代半ばから粗野でワークテイストに溢れたビンテージジーンズがブームとなる。
そのブームを誰が仕掛けたとか仕掛けられたとかそういうことはここでは除外する。

ここからデニム生地にも一気に反動が押し寄せる。
表面に凹凸感があって固くて色落ちのしやすいデニム生地が好まれるようになる。
液体アンモニア加工とは正反対である。
デニム生地を織る糸も、ストレートで滑らかな糸に代わって、節くれだった不均一なスラブ糸が好まれるようになる。

この流れはほんの2,3年前まで続く。
厳密にいうと今でも続いているといえる。

ただし、2008年にスキニージーンズが登場してから、ストレッチ混デニム生地が標準となった。
その影響もあり、デニム生地は全体的に12オンス前後にまで軽量化したが、デニム生地そのものの表情は相変わらずビンテージ感が好まれていた。
この傾向は今でも残っている。しかし、現在は、それと反対の潮流が勢力を盛り返しつつあり、併存している状態だといえる。

エドウインの503に液体アンモニア加工が大々的に採用されるということは、きれい目なジーンズ、きれい目なデニム生地の需要が大々的に復活したと考えられる。

粗野なデニムときれいなデニム、この両方が現在は並立しており、それぞれにファンがいるといえる。
もしかすると購入者は同じで、その日の気分やコーディネイトによって使い分けているだけなのかもしれない。

実は業界紙記者になったころ、液体アンモニア加工の特徴をレクチャーしてもらったが、それほどの違いがあまりわからなかった。
しかし、今回の展示ではそのソフト感がはっきりとわかった。
当時は経験不足でその差異がわからなかったが、20年近くが経過してようやくその違いが分かるようになったということだろうか。

ジーンズファンからするとエドウインのジーンズはきれいすぎると言われる。
縫製などのクオリティの高さは折り紙つきだが、いわゆる粗野感は微塵もない。
今回の503なんてその典型ではないかと思う。

しかし、個人的にはそれで良いのではないかとも思う。
なぜなら、粗野感のあるジーンズを欲しがっている日本人が一体どれほど存在するのか。
それに粗野感あふれるジーンズを企画製造しているブランドは一体いくつ存在するのか。

ならマスメーカーとしてエドウインはマス層に向けた商品を提供すれば良いのではないかと思う。
粗野感あふれるジーンズが欲しい人は多数存在するその手のブランドの商品をチョイスすれば良いのではないか。

ちなみに、エドウインは単一ブランドでありながら、多くのテイストの商品を企画製造している。
けっこう先端層に向けた提案もあるのだが、ブランド名が同じなので、先端層からは敬遠されることもある。
これはもしかしたら、以前の「ボブソン」が踏んだのと同じ轍なのかもしれない。

非トレンド向けの「503」、トレンド層向けの「Eスタンダード」のほか、地方や都心下町に根強く残る元ヤンキー層に向けたこんなコテコテ商品も作り続けている。

FullSizeRender1

元ヤンキー層のファッションの嗜好にはまったく興味も共感も持てないが、この手の商品が非トレンドアイテムになってから久しく、この手の有力ブランドの存在感がほぼなくなっている。
トゥルーレリジョンはジャパン社を解散しているし、韓国ブランドのレッドペッパーやロリータジーンズもほとんど存在感がない。

オズファーストのクックジーンズが根強い固定ファンを集めているが、東京都心では存在感があまりない。
関西や地方都市限定という印象が強い。

そんな中、エドウインのこの手の商品はそれなりに収益を上げている。
これは残存者メリットといえるだろう。
資金的にゆとりがある大手ならではの戦略ともいえる。

注意深く見ていてもらいたいのだが、日曜日のショッピングセンターにはこれを穿いた元ヤンキー層が多数闊歩していることに気が付くはずである。
都心でもあべのキューズモールでは多数見かける。

そこに市場が残っているから取りに行くというのもまた一つの立派な営業方針といえる。





エドウインに対する懸念と期待

 エドウインの2016年春夏展示会にお邪魔した。

今回の業界新聞的な目玉は、今秋冬からスタートしたEスタンダードの拡充と、ラングラーの高額商品復活だろう。

まず、Eスタンダード。
Eスタンダードは海外輸出も視野に入れた日本製ラインで、価格は8000~16000円くらいというリーズナブルな設定である。
16000円というのは相当に手の込んだ洗い加工を施した物に限られ、通常の加工商品品だと8000~1万円未満である。これなら欧米に輸出しても200ドル未満の販売価格を付けられ価格競争力がある。

写真 37

ここに新型のレギュラーテイパードという形を投入する。
また、ストレッチ性を強化した「ジャージーズ」と中空糸「ミラクルエア」を使った軽量速乾「クール」も投入する。
ちなみにここでいう「ジャージーズ」は以前から展開しているジャージーズとは別で、Eスタンダードのジャージーズラインである。
ちょっとややこしい。

このジャージーズのストレッチデニム生地はすごく伸縮性がある。
以前にカイタックファミリーの「360°ストレッチ」を紹介したことがあるが、それに匹敵する伸縮性である。

しかし、このEスタンダードには懸念がある。
品番数が多すぎるのではないかという懸念だ。
シルエットが細身から太めまで今回のスリムテイパードも含めて合計6型もある。
そこにジャージーズとクール、そして膝丈とクロップド丈。
合計で10品番あり、それぞれの品番に加工による濃淡の色番号がいくつかある。

これはちょっと選択肢が多すぎるのではないかと感じられる。

例えば、スリムテイパードとレギュラーテイパードとレギュラーストレートがある。
それぞれの太さの差異はほんの微細なもので、そこまでの微細な細分化が必要なのかと思うし、反対に消費者からしてもその区別はつきにくいのではないかと思う。

よほど気を付けて販売しないと選択肢の多さがかえってこの商品をスポイルすることになりかねない。
企画としては評価しているので、そうならないことを願うばかりだ。

一方のラングラーである。
10代後半~30代前半の若い消費者にとって、ラングラーは4900~5900円のどちらかというと低価格帯に属するブランドだと認識されているのではないか。

筆者のようなオッサン世代だとラングラーというのはリーバイスやリーと並ぶナショナルブランドだったという認識だが、それもあくまでも過去形である。

このラングラーで1万円前後の商品を復活させる。
こちらも日本製だ。

写真 17
写真 27

ラングラーブランドの日本における変遷をまとめると、かつてはラングラージャパンとして独立した企業だった。
それがVFジャパンへと名称変更し、その1年後にあっけなく解散してしまった。
99年とか2000年ごろのことだったと記憶している。
そして、エドウインの子会社であるリージャパンがラングラーブランドを管理することになって今に至る。

20年ほど前のことだが、筆者は当時のラングラーが好きで4本くらい所有していた。
13MWZという品番である。
ラングラージャパンの製品だった。

来春夏のラングラーの1万円前後の商品は、日本製で非常に手の込んだ洗い加工が施されている。
通常ならもう少し高額な価格設定になるが、エドウインでは「価格戦略商品」と位置付けている。
自社縫製工場ならではといえるだろう。

往年のラングラー好きとしてはぜひとも復活してもらいたい。

ところで、ラングラーの中にはもっと価格戦略商品がある。
日本製で5700円くらいのカラーパンツ類である。
これこそ自社縫製工場を所有するエドウインならではといえるのではないか。

写真77

(税抜5700円の日本製カラーパンツ)

「国内工場の維持」という命題になると、高額化という解答を導き出す企業やブランドが多い。
工賃を上昇させるためにはこれは正解の一つである。
しかし、個人的には日本製ブランドの方向性が「高額化一辺倒」になることに疑問を感じている。
高額化以外のモデルケースも必要ではないかと思う。

着物ほどではないにしろ、「日本製だからン万円」「日本製だからン十万円」という価格の商品ばかりになると、よほどのコアなマニア層しか日本製品を欲しがらなくなる。
それこそ着物のように「別世界」の商品という意識を持ってしまう。

そしてそのコアなマニア層だけで、すべてのブランドの経営が成り立つわけではない。
また富裕層を取り込むためには欧米のラグジュアリーブランドとの競合に晒される。
ステイタス性で比べてみても、宣伝販促の巧みさから見ても、国内ブランドではなかなか太刀打ちできない。
結果的に、日本製ブランドも少数の勝ち組と大多数の負け組に分かれるだろう。

だったら、特別な富裕層とマニア以外でも手の出しやすい価格帯の日本製品も必要ではないか。
その成功事例の一つは鎌倉シャツだろう。

エドウインのEスタンダード、ラングラーの価格戦略商品はそれに近い。

奇しくも価格破壊者として認識されているユニクロのジーンズがついに4990円まで値上がりした。
エドウインの日本製品との価格差が縮まっている。

90年代後半~2010年ごろまでのような圧倒的な価格差ではなくなっている。
長い年月を経て、再びジーンズは5000~8000円くらいの価格帯に集束されつつある。

エドウインには自家工場の利点を最大限に生かした「買いやすい価格帯の日本製品」という分野をぜひとも確立してもらいたい。




中価格帯の国産品がもっと必要なのではないか?

 先日、と言っても3月末のことになるがエドウインの今秋冬展示会にお邪魔した。
そのことは以前にも書いたが、そのときに書いていなかったのが新ラインの「Eスタンダード」である。

エドウインのほとんどの商品は生地から縫製、洗い加工まで国産なのだが、それに加えて海外輸出を視野に入れた新ラインである。
価格はちょっと幅が広くて、8000~12000円くらいである。
クラッシュ・リメイク加工商品のみが15000円~16000円となっている。

写真22
写真11

メイン商品群は8000~12000円だが、8000円、8500円、9000円、10000円という価格が多く、11000円、12000円はどちらかというと少数派である。
ざっと型数だけを見ると、全社が6・5割くらい、後者が3・5割くらいだろうか。

これなら海外輸出をしても現地価格120~200ドルの間で販売できる。
一般的に日本製ジーンズは評価が高くて比較的高額でも売れるといわれているが、それでも限度はある。
ある程度の数量を販売したいのなら200ドルが限度だろう。

ラグジュアリーブランドにはもっと高額なジーンズも売られているが、欧米でラグジュアリーブランドを買うのは一部の富裕層に限られている。
日本のように低所得層が背伸びをしてバカ高いラグジュアリーブランドを購入することはない。
だから、ラグジュアリーブランドの高額ジーンズは極めて少数派に向けた商品だと考える方が適切であろう。

かつて旧ドゥニームが3万円弱する国産ジーンズをイギリスに輸出したところ、現地価格が5万~7万円になってしまい、あまり売れずに撤退したことを書いたことがあるが、いくら品質が良かろうとたかがジーンズに5万円とか7万円を支払う消費者数というのは限られているということである。

そういう意味では、いわゆる「中価格帯」を企画製造している国内ナショナルブランドが海外輸出に本腰を入れたというのは、朗報といえる。
もちろん、ここには新たに親会社となった伊藤忠商事の思惑も多分に含まれていると考えられるが。

まれに「ラグジュアリーブランドのジーンズはもっと高くても売れているのだから、国内のマニアックブランドの商品も同等の価格で売れるのではないか?」と主張する人がいるが、これはとんでもない勘違いである。
ラグジュアリーブランドと国内マニアックブランドではブランドステイタスが圧倒的に異なる。

例えば10万円のジーンズを買いたいと思ったときに、多くの人はラグジュアリーブランドを思い浮かべる。
それだけブランドステイタスが高いからだ。ラグジュアリーブランドはそのブランドステイタスを獲得するために莫大な広報・告知・販促予算を毎年計上している。
ほとんど告知活動もしていないようなマニアックブランドがなぜ同じ結果を得られると考えるのだろう?

それほど安易にブランドステイタスが獲得できるなら誰も苦労はしない。

以前、中価格帯の国産ジーンズを海外輸出できないかと考えたことがある。
ある先輩に相談したところ、この企画が動き始めた。
デニム生地はクロキさんが協力してくれることになった。
ところが昨年末にこの先輩が急逝されてしまい、この企画は終わった。
非常に残念だったが、その分、エドウインの「Eスタンダード」に期待したいと思う。

ところで、この「Eスタンダード」のメンズはスキニー、スリムテイパード、レギュラーストレート、ルーズストレート、ワイドストレートの5シルエットがあるが、個人的には5シルエットも必要だろうかと疑問に感じている。
とくにルーズストレートとワイドストレートはどちらか片方に絞った方が良いのではないかと思う。
あまり選択肢を増やしすぎても逆に消費者には違いがわからずに選びにくい結果になる。
それはこれまで国内ナショナルブランド各社が経験してきたとおりではないか。

昨今、「日本製」の大々的キャンペーンが行われているが、いくら日本製と言えども超高価格品を購入できる消費者数はそれほど多くない。
日本製品を再度広く普及させようと考えるなら、低価格はコスト的に無理なので、中価格帯を目指すしかないと個人的に考えている。
超高価格品・高価格品を広く普及させるというプランは無理がある。
はっきり言えば「無い袖は振れない」のである。

ワイシャツなら鎌倉シャツの4900円、ジーンズならエドウインの8000~9500円というところが「中価格帯」といえるだろう。

このあたりの商品を作って、売り方を工夫して「今よりも」普及させることが現実的だろう。
もちろん、もう少し工夫して「児島ジーンズ」のように5900・6900円あたりを国産で企画製造しても良いだろう。

ブランドステイタスのないアパレルや製造工場が「国産」という看板だけで超高価格品・高価格品を企画製造したところで到底売れない。なぜならブランドステイタスがないからだ。ブランドステイタスは一朝一夕に築けるものではない。
ならば、比較的買いやすい中価格帯を企画製造する方が現実的ではないだろうか。
とはいえ、そこでも売り方・見せ方・伝え方に工夫は必要だ。

単に「国産品」という看板だけでは売れない。
それは衣料品に限らずどの分野の製品も同じである。
作って店頭に並べるだけで売れた時代はとっくの昔に過ぎ去っているし、そんな時代はもう二度と戻ってはこない。
その前提に立ってビジネスを組み立てるべきであろう。

国産品としてのコストパフォーマンスに優れるエドウイン

 先日、エドウインの今秋冬展示会にお邪魔した。

エドウインのコストパフォーマンスを改めて認識した。

今春夏は「来るぞ、来るぞ」と言われ続けてきたデニムがやっとトレンドとなった。
この「デニムトレンド」はかれこれ3シーズンくらい言われ続けてきたことであり、正直「やっと来たのか」という感覚である。
ジーンズをわざと破るクラッシュ加工や、そのクラッシュ加工をもう一度補修するリペア加工が今春夏は人気である。
どちらも似たようなものだが、単に破っただけのクラッシュ加工だと、その破れ目から肌が見える。
一方のリペア加工は穴を当て布でふさいだり、破れ目を再縫製したりするので、肌が見えない。

エドウインの営業マンによると、今春夏、女性はクラッシュ加工、男性はリペア加工を好む傾向が強いという。

クラッシュ加工の商品は穴が開いているので、夏場に着用すると涼しい。
筆者も少し破れたジーンズを、かつて持っていたことがある。
生地がそこそこ分厚かったにもかかわらず、穴から熱が放出されるので、夏場でも割合に涼しい。
反対に冬はだめだ。穴から熱がどんどん逃げていくので、モモヒキを穿かないと着用は難しい。

リペア加工なら穴がふさがっているので冬でも着用できる。
反対に夏は通常のジーンズと同様に暑い。

こんな特性がある。

今年の正月に、両ひざに大きく穴が開いたジーンズを着用している若い男性を見かけた。
モモヒキを穿いておらず、両ひざが丸見えだった。
かなり寒いだろうと他人事ながら心配してしまった。

そのクラッシュ、リペア加工だが、エドウインでも好調で出荷ベースでは完売だという。
追加オーダーがあったのでこれから増産に取り掛かる。

10何年前にもクラッシュ・リペア加工ブームがあった。
クラッシュ加工もリペア加工も加工賃が高い。
破れるまで擦って、破れた穴をわざわざふさぐのだから、通常の洗い加工の何倍も加工賃がかかる。
以前のブームのときに聞いたことがあるのだが、加工賃が5000円もした商品もあった。

だからクラッシュ、リペア加工商品は店頭販売価格も高くなる。
加工賃が上乗せされているからだ。
店頭販売価格2万円とか3万円の商品も珍しくない。

それをエドウインは縫製、洗い加工とも国産で12000~13000円で発売している。
売れないはずがない。
圧倒的なコストパフォーマンスといえる。

写真 1

以前のクラッシュ、リペア加工ブーム時には一つの弊害が生まれた。
それは何かというと、洗い加工がジーンズの出来を左右するというような風潮が生まれてしまった。
各工程に貴賤はない。それぞれの工程は必要不可欠である。
どれか一つの工程がジーンズの出来を大きく左右するというようなことは本来ありえない。
今回のブームでかつての風潮が復活しないことを願うのみである。

話を戻す。

あまり出回っていないが、国産で5900円商品もある。

写真 2

一部の中・低価格チェーン店向けの商品だが、国産で5900円は圧倒的といえる。

エドウインは縫製、洗い加工で自社工場を所有している。
(洗い加工に関しては国内最大手の洗い加工場、豊和とも長年契約している)

このあたりのコストパフォーマンスは自社工場ならではといえる。
国産でこの価格帯で商品を製造できるのはエドウインだけではないか。

好き嫌いは別としてジーンズの販売数量でもっとも多いのは、ユニクロである。

エドウインの経営危機問題の際には、エドウインが直営店化すればユニクロに迫るジーンズ販売数量が見込めるのではないかと主張する人もおられた。(あくまでもジーンズに関してのみ)

その主張には大いに賛同するが、これから大規模に直営店出店をするのは資金的にもなかなか難しいだろう。
また卸売業のエドウインに小売店運営のノウハウが蓄積するまでにはかなりの時間がかかるだろう。

完成形態は容易にイメージできるが、そこに至る道のりが果てしなく険しい。

あまり知られていないかもしれないが、直営店への挑戦はこれまでも何度もあり、そのたびに失敗して撤退を繰り返してきた。
かつて某役員が主導したものの、見込みの甘さと計画の杜撰さから、すぐさま撤退した原宿店なんていうのもあった。

このコストパフォーマンスを生かした直営店というものを新生エドウインとして実現してもらいたいと思うが、それにはかなり時間が必要となるだろう。

それよりもこのコストパフォーマンスと、自家工場を抱えての物作りの姿勢を広く消費者に浸透させる方が先だろう。すでに物作りをアピールするプロジェクトが始動しているからそちらに大いに期待したい。

オススメはエドウインの「キープブルー」

 今春からユニクロからストレッチセルビッジジーンズが発売された。
タイトストレートやテイパードスリムなどの細身シルエットが主流となっている状況ではストレッチ素材は必要不可欠である。
綿100%デニム生地で作られた細身ジーンズを我慢して穿き続けられるのはよほどのマニア層に限られている。
そんなマニア層を標準とした商品をマスブランドが開発する必要もない。

ジーンズ専業ブランドでは以前からストレッチのセルビッジデニム生地は使用されていたが、あまりアピールされてこなかった。
そのため一般消費者にはほとんど知られていない。

今春に向けて大々的にそれをわざわざPRしたユニクロの広報戦略はやはり優れていると認めざるを得ない。

で、売り場に行って現物を見てみたが、予想よりも生地が薄い。
ユニクロのサイトでメンズ商品の解説を見ると、「滑らかな肌触りにしました」というようなことが書いてある。
滑らかな肌触りにするということは表面の凹凸感を抑える、使用した糸の番手を細くする、などというような手法で製造された生地だといえる。

細番手の糸で織ったり、表面の凹凸感を抑えたりするのならなぜわざわざセルビッジデニム生地に仕上げるのか意味がよくわからない。

セルビッジデニム生地というのは希少性もさることながら、良い色落ちをするのではないかという方に力点が置かれている。
だいたい希少性のある素材でユニクロの莫大な生産数量を賄えるはずがない。
希少性に焦点を当てた時点で、矛盾が生じる。

個人的にはこのストレッチセルビッジデニムの評価はあまり高くない。

個人的には、エドウインが昨年秋から発売した「キープブルー」で使用しているストレッチセルビッジデニムに軍配を上げたい。

昨年晩夏に、エドウインから「キープブルー」のサンプル品をいただいた。
色落ちしにくいという新商品群で、スリムストレートとテイパードがあったが、テイパードの方である。
ワンウォッシュで色落ちしにくく、しかもストレッチ混の厚みのあるセルビッジデニム生地だ。
着用してしばらくの間は「ちょっと硬いな」という感じだったが、3か月後くらいからはかなり体に馴染んできた。

写真 11
写真

(赤耳の部分)

現在、着用後ほぼ半年くらいが経過しているが、触れ込み通りにほとんど色落ちしていない。
とくに座るときに摩擦が起きて色落ちしやすい後ろポケットにもほとんどアタリが出ていない。

写真 22

ジーンズの醍醐味の一つに色落ちがあるが、他方でワンウォッシュの濃紺を長く保ちたいという要望も少なからずある。
濃紺のジーンズの愛用者も多い。
個人的には濃紺ジーンズの方が好きであるから、こういう商品はありがたい。

生地製造、縫製、洗い加工(水洗いくらいしかされていないけど)ともに国産である。
純国産品でありながら税別で9500円に価格を抑えている。

ユニクロジーンズの2・5倍の価格だが、他のブランドが1万2000~3000円台であることを考えると、コストパフォーマンスに優れている。
アパレル業界人でもジーンズにあまり詳しくない人は、ユニクロの次の価格帯は1万2000~3000円だと思っている人も少なくない。
3990円の次が1万2000円ではちょっと抵抗感があると感じている人がいる。(事実ではないのだが)

9500円ならそういう抵抗感もずいぶんと軽減されるのではないか。

PRはユニクロに比べて劣るが、こういう商品を企画・製造できるところがエドウインの強みだと感じる。

さて、それが世間にもっと上手く伝わると良いのだが。

自家工場を所有していることを消費者にアピールしよう

 昨今、日本製が注目を集めており、アパレルブランドが国内自家工場を持っていることが今までとは反対に付加価値になりつつあるように感じる。

国内自家工場で工員を確保することの難しさについては今回は置いておく。
純粋に販促的価値について考えてみたい。

アパレルブランドは国内に数あれど、自社縫製工場を所有しているブランドは少ない。
いずれも協力工場、下請け工場へ縫製を発注している。
最近では、OEM、ODM、商社の製品化部門の発達によって、デザイン、パターンづくりまで外注に丸投げできるようになった。
極端に言えば、資金さえ持っていれば誰でもブランドが作れる時代になった。

そうした中で、何十年前から自家縫製工場を維持し続けているアパレルブランドというのは打ち出しようによってはものすごい付加価値になる。

まず、社会貢献という点でアピールが可能である。
何十年間も一定の人数を雇用し続けているのだから、これは社会貢献である。
しかもそれが廃れ行く繊維製造業なのだから、なおさらであろう。

次に物作りの背景が見えやすいということだ。
OEM、ODM、商社の製品部門に丸投げしているブランドが物作りについて語るケースが増えた(こういうブランドは機を見るに敏であり、すぐさま対応してしまう)が、ちょっと物作りを知っている人間が見れば、嘘八百ならぬ嘘五百ぐらいを書き連ねているとわかってしまう程度の文言でアピールしており、そのメッキは剥がれやすい。
しかし、自家工場を所有していれば、そこから語られる言葉は本物である。

これだけ〇〇産、〇〇製が注目されている環境下でいうと、自家縫製工場(一部、洗い加工場も)を所有しているジーンズメーカーはそれが大変な付加価値であることに気が付くべきだろう。
筆者から見ると、上層部はまだその価値に気付いていないように見える。

例えば、国内最大手のエドウインであるが、東北の青森・秋田に自家縫製工場を13所有している。ほかに洗い加工場が2、検品工場が1である。
これだけの大工場群を何十年も維持し続けているジーンズメーカーはエドウインだけである。
これは消費者に向けてもっとアピールすべきである。
しかも工場建設は昭和50年代から始めているから、現在で30数年維持し続けていることになる。
工員は今のところ全員地元の日本人だそうだ。

これは大変な実績である。

しかし、どうも上層部にはこれが消費者に対するアピールポイントになりうるという考えが薄いように感じられる。
もったいないことだ。

有名タレントや有名モデルと契約するよりもこちらの方がよほどニュースバリューがある。

同じくカイタックインターナショナルも国内に大型工場を保有している。
こちらの場所は岡山県総社市近辺である。

カイタックインターナショナルというと量販店向けジーンズと欧米からのインポートジーンズというイメージがあるが、れっきとした国内工場も所有している。

この工場がフル稼働すると月産3万本の生産能力があるといわれており、エドウインに次いで国内2位の生産規模がある。

残念ながらこの事実はあまり知られていない。
お恥ずかしいことだが、筆者が知ったのもつい最近のことである。

これも大いに価値ある情報だと言えるのだが、どうもこれをアピールする気配は残念ながら見受けられない。
もったいないことである。

現在、それなりの規模の自社縫製工場を所有しているジーンズメーカーはこの2社以外だと、ジョンブル、ドミンゴ、ブルーウェイ、タカヤ商事、ベティスミスくらいになってしまっている。往時からすると激減している。

なぜ、彼らが自社の物作りを打ち出さないかというと、やはりどこかに「工場をアピールすることが格好悪い」と考えている節があるからだ。

以前、某ブランドの若手がポツリとこんなことをつぶやいた。

「今まで、工場とか物作りとかを過度にアピールすることは格好悪い、ダサいと考えてきましたが、今はそうではないんですね」と。

これはおそらく全社に共通した感覚ではないだろうか。
その元となるのは90年代半ばのビンテージジーンズブームである。
虚実取り混ぜて物作りを大いにアピールした彼らだが、1社として自家工場は所有していない。
かろうじて例外と言えるのは、洗い加工場の晃立の子会社になっているステュディオ・ダ・ルチザンくらいだろうか。
何せ、親会社が洗い加工場なのだから縫製はともかく、洗い加工に関してはグループ内で賄えるからだ。

ジーンズメーカー各社はそういうブームに乗ったビンテージブランドとは一線を画したいとの思いがどこかにあったようだ。

しかし、ブームが過ぎ去ってもう15年近くが経過している。
そろそろ社会に蔓延するムードは変わりつつある。
変わりつつあるというよりもはっきりと変わっているのではないかと個人的には感じられる。

そろそろエドウイン、カイタックインターナショナルを含む全社に自社の大いなる価値に気付いてもらいたいと願っているのだが。

改めて自社の顧客層を見直してみよう

 9月12日、エドウインが自社のレディース向けレギンスパンツブランド「ラディーバ」の初直営店をグランフロント大阪南館4階にオープンした。
来月には東京駅店をオープンさせるとともに、来年5月までに残り5店舗をオープンさせて計7店舗体制となる計画である。

その内容はこちらにまとめてみた。

エドウインが「ラディーバ」の直営店を初出店。来年5月までに7店舗開設を計画
http://a-mp.jp/article.php?id=2188

で、その際、興味深いことを聴いた。
ラディーバのレングスは1種類である。
身長にもよるが女性の平均身長で9分丈になるように作られているそうだ。

IMG_2731

(9分丈のラディーバ)

で、その9分丈のレギンスパンツの動きが今夏も良かったそうだ。

今春夏は売り場でひざ下丈のパンツをメンズ、レディースともにほとんど見かけなかった。
レディースのトレンドはスカートであり、ひざ上何センチというショートパンツである。
9分丈とか、ここでは登場しない7分丈とかいうパンツはあまり見かけなかった。

これは各ブランドがトレンドに沿った物作りをしているためである。

しかし、生足を極度に露出したくないという女性消費者も実は相当数存在する。
そのため、タイツorストッキングとショートパンツの重ね穿きをするという女性も多かったのではないだろうか。
この写真のような着こなしをけっこういたるところで見たような気がする。

D643079_m

で、そういう女性は9分丈とか7分丈のパンツがあれば、それを購入していたのではないか。
何せ2枚穿くよりも1枚だけの方が涼しい。

エドウインの商況を聴いていて、つくづくとトレンドと実需のバランスは難しいなと感じた。

洋服は多かれ少なかれトレンドが求められる。
トレンド無視のデザインではなかなか売れにくい。

一方で洋服には実用衣料の側面がある。

量販店やユニクロ、スーツチェーン店などの洋服は実用衣料の性格が色濃い。

どの層に向けて売るかによってトレンド性と実用性のバランスが変わる。

量販店やユニクロ、スーツチェーン店などはトレンド性が2~3の割合、実用性が8~7の割合くらいのバランスではないだろうか。

一方、中級価格帯のファッションブランドならトレンド性が4~6、実用性が6~4の割合ではないか。
さらに高級なファッション性の高いブランドならトレンド性が8くらい、実用性は2くらいではないかと思う。

当たり前の話だが、自社ブランドの顧客層はだいたいどのあたりかということを見極めなくてはならない。
ラディーバの場合は、5500~6000円という価格帯でもあることから、トレンド性と実用性は半々くらいが適正ではないかと思う。

逆にひざ上丈ショートパンツとスカートに特化して上手く商品がさばけなかったブランドは自社の顧客層を見誤っていたというべきだろう。

筆者も含めて洋服業界の人はトレンドに注目しがちだが、自社のブランドがハイセンスなトレンドブランドであり、そういう顧客層であるならそれは正しい施策だが、そんなブランドは一握りである。
ほぼ実用品としてしか期待されていないブランドまでが闇雲にトレンド性を過度に追求するのは、自社の顧客層を見ていないということになる。

言うは易し行うは難しだが、少し意識するだけでも商況に反映されるのではないかと思う。

1 / 3ページ

©Style Picks Co., Ltd.