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幻に終わった「エコファー」への名称変更

最初は奇異に感じていても、慣れてくればそれはそれで良いと思えてくる。
奇異な名称であったり、デザインであったり、というのはそんなものである。

9月から「仮面ライダービルド」が始まったが、今回はあまりデザインに対して反対意見は見られなかった。
しかし、これまで毎年、新ライダーのデザインが発表されると、あまりにも突飛なデザインであるために、反対意見が噴出する。
東映もそれを狙ってわざとそういうデザインにしているのではないかと思う。

番組が始まってしばらくすると、「それはそれなりにイイ」という意見が増え、反対意見はなりをひそめる。
もちろん、頑強なアンチ論者は消えることはないが、主流派ではなくなる。

だいたいの物事はそんなものである。

5年くらい前からフェイクファーに対して「エコファー」という名称が用いられるようになった。
最初はなんだか、落ち着かないなあと思っていたが聞き慣れるとあまり違和感がなくなってきた。
毎年の仮面ライダーと同じである。

ところでこのエコファーという名称は、当方というか、当方が参加したチームの失敗が思い出される。

2010年から3年間、高野口産地を手伝ったことがある。
高野口産地は、フェイクファーの産地である。

通常のフェイクファーは中国製が主で、それは安価だからという理由がある。
これまでの考え方なら、高価なリアルファーに対して、安価な商品を作るために安価なフェイクファーを使う。
高野口のフェイクファーはそういう中国製よりも圧倒的に高額であり、安価な商品作りには適さない。
だからといって、高額品に用いられるかというとそうではない。高額品になるとリアルファーを使用する。

産地側もそれなりに努力はしてきた。
限りなく本物に近い見た目を再現したり、合繊ではなくウールを使用することで本物のような手触りを実現したり、そういう開発を続けてきた。
また、裏に塗るバインダーを工夫することで、固くならないのに毛が抜けにくくもした。

それでもなかなか業界にも消費者にも浸透しにくかった。

それが、動物愛護の風潮もあって、5年くらい前からフェイクファーへの注目が高まった。
そのときから「エコファー」という名称が世界的に用いられるようになった。

高野口産地を手伝ったのは、その直前くらいの時期である。

フェイクファー=安物という図式から脱却するためにどうするかということを会議していて、当方の属したチームのメンバーから「フェイクファーのフェイクという名称にマイナスイメージが強いから名称を変えてみてはどうか?」という提案があった。

「安価な素材はフェイクファー、高野口産地のはそれとは違う〇〇ファー」という打ち出しをしてみてはどうか?

という提案だった。

このメンバーとは現在疎遠になっていて、平素の主義主張にはほとんど当方は賛同できないのだが、ときどきこういう良い提案をすることがある。そこが最大の長所といえる。
このときもその一端を見せた。

そこで、さまざまな名称案が出された。
その中に「エコファー」も含まれていた。

エコファーを含むいくつかの案に集約され、産地側に「どれかを選んでほしい」と言ったところ、産地側は名称変更を却下したのである。
正直、そのとき「事は終わった」と感じた。

産地が却下した理由も理解はできる。

「聞き慣れない名称だから奇異に感じる」
「取引先が戸惑う」
「認知されるまで時間がかかる」

などなどだ。

しかし、外野から見ればその危惧は取るに足りないものだし、何よりもコストゼロでイメージチェンジができてしまう。
デメリットはごくわずかでメリットのほうが大きい。

それから1年後くらいに、欧米ブランドで「エコファー」という言葉が使われ始めた。
初めてそれを見たときに「ほら、見たことか」と思った。

今さら言ったところで時間は巻き戻せない。
決定的瞬間を目の当たりにできたことに満足すべきなのかもしれない。

国内の繊維産地、洋服関係の製造加工業はこれまでのやり方では注文は増えずに製品も売れにくくなっている。
そもそも洋服のブランド自体が従来のやり方では商品が売れにくくなっている。

となると、何かを変えなくては再び売れるようにはならない。
それは製造方法だったり商品のデザインだったり名称だったり何かを変えなくては再び売れるようにはならない。

従来通りのやり方が受け入れられなくなったから売れなくなったのである。
じゃあ、もう一度売れるようになりたければ、「従来通り」を変える必要がある。簡単な理屈である。

ところが、産地も製造加工業もブランドも「従来通り」を変えることを頑なに拒む。
「従来通り」のままで売れることを願っているように見えるが、それは単なるエゴでしかない。

洋装関連のみならず、和装も他の物作りも、伝統工芸も同じように見える。
「俺たちは変わるのは嫌だが、売れるようになりたい」と願っているように見える。

しかし、そんなことが不可能であることは子供でもわかる。
何一つ変えなくても売れるなら、どうして今売れていないのか。
従来通りが支持されていないから、今売れていないのではないか。

商品や製造工程を変えなくても、販促手法や広報宣伝手法を変えれば売れるようになるかもしれない。
それとて、販促手法や広報宣伝手法は変えているのである。

「俺たちは何一つ変わらないが、売れるようになりたい」というのは何とも傲慢すぎるのではないか。

NOTEを更新しました⇓
「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

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高野口産地は「エコファー」ブームに便乗してしまえ

 最近欧米からのインポートブランドの展示会で、フェイクファーを使っているアイテムをよく目にする。

一つには原皮の価格が上がっているのかもしれないし、そのほかには欧米で動物愛護の機運が高まっているからかもしれない。もしくはその両方なのだろうか。

リアルファー使いを見かけることが少なくなってきたように感じる。

もっともファッショナブルな分野は苦手な筆者なので、インポートブランドと言ってもそれほど高級・ハイセンスなブランドの展示会にお呼ばれすることは少ない。
もう少しデイリーユースなカジュアルブランドが多いのだが、価格帯で言えば、それでもユニクロを遥かに超える価格帯である。
フェイクファーのブルゾンでだいたい2万円~5万円というブランドが多い。

マルシェ交流会 005

マルシェ交流会 006

マルシェ交流会 007

(フェイクファー、否「エコファー」使いブルゾンあれこれ)

そういう状況で、筆者は「これは高野口産地のチャーーーンスやんか」とほくそ笑んでいる。
うむ。展示会に気味が悪いオッサンが紛れ込んでいるようだ。

ご存知の方も多いが、和歌山県の高野山のふもとにある産地を「高野口産地」という。
毛足の長い織物・編物を得意としており、総称して「カットパイル」という。
カットパイルの一つにフェイクファーが含まれている。

国内産地のご多聞にもれず、高野口産地のフェイクファーは価格が高い。
ロットにもよるだろうが、1メートルで最低でも1500円はする。
しかし、面白い物が数多くある。

見た目が本物そっくりに再現されているフェイクファーや、ウール100%やアルパカなどの獣毛を使っているフェイクファー、逆にリアルファーではありえないようなビビッドなカラーリングのフェイクファー、先日このブログでもお伝えした発熱素材を使った機能性フェイクファーなど多彩である。

昨今、欧米では動物愛護運動の高まりから、高級ブランドがわざとフェイクファーを使用する例が増えつつある。
「フェイク」ではニセモノ臭いので、そういう場合は「エコファー」と名乗っていることが多い。

筆者が高野口産地に提案したいのは「この機運に便乗してしまえっ!」である。

筆者が見る限り、欧米ブランドで使用されているフェイクファーは手触り・見た目ともにチープ感を克服できていない印象がある。生地の値段は欧米ブランドが使用している方が安いのだろうが、高野口産地の素材の方が手触り・見た目ともに圧勝しているケースが多い。

高野口産地にネックがあるなら「価格が高い」ところだろうか。

その高価格をある程度吸収できるような高級ブランドに売り込めばどうかと思う。
しかし、往々にして高級ブランドも価格にシビアだったりするので、生半可なことでは突破できないのかもしれない。

しかし、筆者はこの機運を利用しないのはもったいないと思うのだ。
まさに「モッタイナイ」の思想である。

で、こういうことは待っていてもブームは起きないし、生地の買い付けも生まれない。
自らが動いて仕掛ける必要がある。

ついでにいうと、ファーを使ったアイテムは毎年一定量は流通するが、ファーブームというのは何年かに一度しか来ない。今を逃すと、ブームは何年後に来るかわからない。
便乗しない手はない。

高野口産地の皆さんには迅速に、そして苛烈に激烈に仕掛けてもらいたいと願う次第である。

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