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しまむらのシステムは「EC」ではなく、疑似ECと呼ぶべき

メディアも業界も「トレンド」に流されやすいことが最大の特徴である。
いくつかの「トレンドキーワード」があるが、Eコマース(EC)はその一つである。
これを「ちょっと匂わせる」だけで大きく報道してくれる。

少し前なら「海外進出」だった。

業界新聞に属していた頃、20歳くらい年長の先輩が紙面に対して皮肉交じりにこう言ったことがある。
「トップ記事で掲載されたかったら、海外進出を書けば良い。何千億円の会社の国内の取り組みよりも、零細企業の海外進出のほうが紙面で大きく取り上げられる(笑)」。

まあ、差し詰め今なら「海外進出」が「Eコマース」に置き換わるのだろうか。

さて、ついに、しまむらがECに乗り出したことで、話題となっている。

しまむらがついにECに着手、月15万件超の“客注システム”を応用
https://www.wwdjapan.com/488934

もう多くの方がこのニュースを知っておられることだろう。

通常のECとは異なり宅配は行わない。
パソコンやスマホから商品を注文し、注文された商品は指定した店舗に届く。
お客はその店舗へ受け取りに行く。

簡素にまとめるとこういうシステムである。

メディアはこれを大いに持ち上げる傾向が強いが、はっきり言えばECではない。
記事中にもあるように疑似ECに過ぎない。

しまむらは独自の物流システムを所有していて、これまでも商品の店舗間移動や、商品の店舗配送を行っていた。
今回の疑似ECはこれを応用した使い方である。

消費者にとっての利便性は、ECやパソコンから「指定注文」できて買い逃しが減るところにある。
一方のしまむらにとってのメリットは、売り逃しが減る可能性が高いというところにある。

ただ、個人的にはメディアや評論家がいうほど、絶大な売り上げ効果があるかどうかは疑問を感じる。
なぜなら、しまむらの店舗立地は郊外のロードサイドに集中しているからだ。
しかも単体、もしくは数店舗集合での出店が多い。

これは店舗受け取りという形態には著しく不利である。

しまむらに行くのは、「休日わざわざ」ということが多い。
平日、もしくは勤務日の行き帰りに立ち寄れる場所ではない。

店舗受け取りが絶大な支持を得る要素は

1、都心に多数の店舗がある、ターミナルの駅ビルもしくはその近くにある
2、郊外の食料品併設の大型ショッピングセンターに入店している
3、住宅地の中に店舗がある

くらいしかない。
現在のしまむらの出店立地の多くはこれに当てはまらない。

となると、消費者の取りうる行動は、「来週日曜日にしまむらへ行きたいからそのときに届いているようにネットから客注する」ということになる。

しまむらへの「わざわざ来店」時に店舗に届いているタイミングで商品を頼むことになる。
そうでないなら受け取りに行くのが面倒だからだ。

しまむらが誇る自前の物流システムはあるが、宅配に対応しようとすると、コスト増になるし、おそらく人員も足りないだろう。
そうすると人件費の増大を招くことにもなる。当面は宅配対応は不可能だろう。

この宅配と店舗受け取りに関しての考察については、以下のブログが論理的で秀逸である。

ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2017/09/post-255e.html

IR(広報)によれば、NEXTではオンラインで注文して、都合のよい店舗で受け取るクリック&コレクト比率は注文件数の55%にあたるそうです(イギリス国内)。 一方、ZARAでは66%(グローバル平均)とのことです。

クリック&コレクトとは店舗受け取りのことである。
欧米では日本ほど宅配システムが整備されていないから、店舗受け取りのほうが多いということである。

ヤマト運輸を筆頭にきめ細かい宅配便のサービスをかつ安価で当たり前のように享受している日本において、クリック&コレクトの顧客にとってのメリットに疑問をもつ方が大多数なのが実情です。
英NEXTでクリック&コレクト比率が高い理由は

- 夜12時までに注文すれば翌日12:00以降に商品が指定の店頭で受け取れること
- 宅配の場合3.99ポンド(600-700円)かかる運賃が無料になること
- 国内540店舗という店舗網により生活圏、通勤圏に受け取り易い店舗があること
- 一方、英国にはヤマト運輸のような2時間単位の時間帯で配達指定ができる宅配便がそうそう存在しない

とのことであり、これを踏まえたうえで考えると、しまむらの店舗受け取りというのは日本人にとっては相当にハードルが高いといえる。
逆に、しまむらの低単価商品に対して時間を浪費してわざわざ受け取りに行くほどの価値があるのかどうか疑問を感じる。

言ってみれば、たかが1,000円の商品を受け取るために、時間と交通費を使って出向く人がどれほどいるのだろうか。
当方なら、絶対に何かのついででないと立ち寄らない。

しまむらがECをどこまで進めるのかは不明だが、今の店舗受け取りのみでは、商況を一変させるほどの効果はないと考えるのが適切ではないか。
一部メディアが記事化したように、「百貨店がさらに追い込まれる」なんて要素にはなり得ない。

しまむらの疑似ECは百貨店の商況にほとんど影響を与えず、むしろしまむらの疑似ECがなかったとしても今のままでは百貨店はさらに追い込まれる。
メディアの短絡的な姿勢は今も昔も変わりがない。

NOTEを更新しました⇓
「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

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限界点に達しつつある、しまむらのビジネスモデル

 しまむらの第1四半期決算が2ケタ減益と大幅に悪化し始めた。

その兆候は今年の初めから見えており、既存店売上高が連続して前年割れを起こし始めていた。

しまむらは2016年2月期、2017年2月期で大幅増益して、メディアから持ち上げられたが、2014年2月期・2015年2月期と連続減益しており、当時のメディアの持ち上げ方には疑問を感じていた。

もっとも企業としての売上高自体は増収し続けていたから、強い企業であることは間違いないが、「勝ち組」と持ち上げるのはちょっとやりすぎではないかと思っていた。

しまむらの業績が急減速、「しまラー」惹きつけるネット通販やフリマアプリの脅威
http://www.sbbit.jp/article/cont1/33839

この記事は比較的良く書けていると思う。

2016年2月期の増益に転じた際、長らく量販店やユニクロ、しまむらなど低価格ブランドのカジュアルパンツのOEMを手掛けたことがある友人がこう指摘した。

「今回の増益の起爆剤は、裏地あったかパンツを100万本売ったこと。しかし、これまで売り切れ御免でやってきた企業が、ユニクロと同じ100万本という大量生産・大量販売システムに転換するのはいかがなものか?いずれ反動が来る」

と。

この指摘は早くも的中しつつあるといえるのではないか。

当時のメディアはどこも指摘していなかったが、100万本を売ったということは、100万本を調達したということになり、それはこれまでしまむらが得意としていた仕入れでは実現しにくく、自主企画商品を生産したということになる。
そのビジネスモデルはユニクロと同一のものであり、しまむらとしては異なるシステムを取り込み始めたということになるが、そんなことが簡単にできるはずがないというのが、友人の指摘である。

記事では、しまむらの強みを端的にまとめている。

その基本は「サプライヤーとよい関係を築くこと」。しまむらは「『4つの悪』の追放」という“仕入れの憲法”を打ち出した。4つの悪とは、「返品」「赤黒伝票(伝票の書き換えで見かけの売上を計上する手法)」「(納品後の)追加値引」「(発注した商品を納品させない)未引取」だ。

 しまむらの、全面的にリスクを負い、値下げしても売り切る“仕入れの憲法”を、サプライヤーは「しまむらはフェアな商売をする」と歓迎した。そして売れ残りにならないような、高品質の商品、売れ筋商品、流行遅れになりにくい商品、とっておきの新企画商品を、しまむらに優先的に供給した。店舗の商品の回転が早くなり、在庫が少なくなり、コストは抑えられ、しまむらにも利益になった。

 そうやって、取引先との間で「しまむらファミリー」と呼べそうな関係を構築すると、取引数量が拡大したサプライヤーは「他ならぬしまむらさんのご提案なら、多少の無理はききましょう」と値引き要請にも応じるようになる。そうやって適正な利益を確保しつつ他店より安い価格をつけることができ、それが業容拡大のエンジンになった。

これは事実で、しまむらの取引は綺麗なことで有名だ。
しかし、この「仕入れ」スタイルで運営するには、しまむらは企業規模が大きく成りすぎたといえる。
大手セレクトショップが軒並み「疑似SPA化」したことを見てもそれはわかるだろう。

主力の「ファッションセンターしまむら」だけで1378店舗もある。
これだけ店舗数が増えれば「仕入れ」だけで商品を賄うのは不可能で、実際、あまり報道されないが、しまむらも自主企画商品を製造しているし、OEM/ODM生産も利用している。

店舗数がこれだけ増えれば、スケールメリットがあるから自主生産が増えるのは当然だが、これまでとは異なるビジネスモデルへとすんなり移行できるとは思えない。

また、個人的意見でいえば、しまむらの売り上げ規模、店舗数ともに国内では限界点に達しつつあるのではないかと思う。

売上高は5654億円もある。

いくら、安くて買いやすいとはいえ、国内でこれ以上大幅に売上高を伸ばすことは難しい。

じゃあ、流行りの海外進出はどうか?というと、ユニクロや無印良品とは異なり、しまむらは品揃えの雑多さが魅力で、その雑多さは「日本のローカルチェーンならでは」という部分があり、海外では嗜好が違うのでその魅力は理解されにくいのではないかと思う。

また、都心部に店が少ないこともそろそろ弱点になりつつある。

郊外では店舗数は飽和しつつあるといえるが、1店舗あたりの売上高の低さを考えると家賃の高い都心には出店できにくい。

よしんば都心に出店したとしても現在のしまむらグループの店作りでは、他の低価格ファッションブランドと比べて大きく見劣りしてしまう。
店の見た目については、しまむらグループはかなりダサい。

国内市場ではそろそろ飽和点に達しつつある、しまむらグループは次はどのような取り組みをするのだろうか?

ユニクロのような大量生産・大量販売方式にするのか?それとも店作りや陳列方法を洗練させるのか?はたまた、グローバルSPA方式に切り替えて海外進出するのか?

いずれにせよ、これまでの「しまむら」モデルのままでさらなる企業規模の拡大というのは、かなり難しくなっていることは間違いない。

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ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03


しまむらとヤオコー
小川 孔輔
小学館
2011-01-26



しまむらの転換路線に黄信号?

 このニュースを読んだときに、「ああ、やっぱりな」と感じた。

しまむらの株価が急落 既存店売上高が4カ月連続減
https://www.wwdjapan.com/419687

一昨年、昨年と各メディアに「勝ち組」と持ち上げられたしまむらの失速である。
しまむらの好調は、以前にこのブログでも紹介したように、冬用の保温ズボンを百万枚単位で売り上げたことによるものである。

定価は3900円で、通常のカジュアルパンツと同じくらいスマートでスリムなシルエットなのに防風性が高いというズボンで、各社とも冬用商品では人気が高い。
ユニクロもライトオンも同様の商品を販売している。

しまむらは、この「裏地あったかパンツ」の大ヒットにより久しぶりの増収増益に転じた。

それによって各メディアはしまむらを「勝ち組」と持ち上げたのだが、業界内部からはその時点で、疑問の声が上がった。

というのは、しまむらの基本的なやり方は、メーカー各社の在庫を安く仕入れてそれを安く販売する。
ただし、在庫だから売り切れ御免で、同じ物は二度と入荷されない。
というものである。

一方、裏地あったかパンツは100万枚を売り上げたわけだから、従来のやり方と異なる方法で商品調達がなされたと見るべきである。
いくら在庫がダブついている衣料品業界とはいえ、同じ商品ばかり100万枚も積み残しているメーカーなんてそうそうにあるわけがない。

100万枚の商品を調達し、販売したというやり方はユニクロ方式に近いものがあったのではないかと考えられるし、販売の思想はユニクロと同じだといえる。

少量(とは言っても、1万枚や2万枚程度は調達している)の売り切り御免方式から、100万枚単位でのユニクロ方式への転換。業界から疑問の声が上がったのはこの部分に対してである。

売り上げ規模の小さい企業なら方向転換は容易だが、5000億円を超えるような大企業になった場合、根底からやり方を変えることはなかなか難しく、莫大な労力と資金が必要になる。

そこまでのものを費やしてユニクロ方式に転換することが果たして、しまむらにとって良いことなのか?というのが業界からの疑問の声だった。

そして、今回のしまむらの失速傾向は、方法の転換にやはり無理があり、歪みが生じているのではないかと考えられる。

しかし、失速傾向とはいえ、まだ5月であり春夏物が不調だっただけで秋冬シーズンは好調に転じるかもしれない。
今後の推移を見守らないことには、失速だと決めつけることは難しい。

それにしても、やはりというべきか、衣料品という商品において、春夏物はヒット商品を作ることが難しいということが図らずもまた証明されたのではないかとも思う。

ユニクロの秋冬偏重は以前から指摘されてきたが、秋冬偏重はユニクロに限ったことではなく、衣料品ブランドは一部を除いてほとんどが秋冬偏重である。

なぜなら、秋冬商品は春夏商品に比べて、コートやジャケット類は単価が高く、売上高を増やしやすい。
さらに、気温的にも重ね着ができることから消費者の購買枚数も春夏に比べて増えやすい。

春夏、特に夏場は高気温であるため、重ね着がしにくい。
男性ならTシャツ1枚、ポロシャツ1枚に軽量ズボンというような服装が主流で極めて着用枚数が少なくなる。
女性でも似たような傾向である。

となると、まとめ買いやコーディネイト購買は少なくなり、売上高は稼ぎにくくなる。

また秋冬、とくに冬物は機能性が実感されやすいが、春夏物はどんなに機能性を高めても、暑さは軽減できない。筆者などは「どっちにしろ暑くて汗は止まらないから、夏物は機能性商品を着る必要はない」とまで思い始めている。

そうなると、吸水速乾だろうが、防臭だろうが、大々的にヒットを飛ばすことは難しい。

以前にジーユーがガウチョパンツを100万枚売ったように、春夏商品こそ、トレンド性がなければヒットしにくいともいえる。
ジーユーでガウチョが売れた理由は機能性ではなく、トレンド性と低価格である。

しまむらの「大量調達・大量販売」というユニクロ方式へのビジネスモデルの転換が正解だったかどうかがわかるのはこれからといえる。

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ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03





ブランド頼みの小規模専門店は確実に消える

 その昔、といっても10年ぐらい前までは「このブランドを並べていたら確実に売れる」という鉄板ブランドがあった。今もいくつかはそういうブランドは残っているが、かなり少なくなった。
多くの小売店はそういうブランドに今も頼ろうとしている。
たしかに衣料品不振だし、トレンドはあまり変わらないから売る側として何かに縋りたくなる気持ちもわかる。

しかし、そういう「鉄板ブランド」は今後ますます減るだろう。
とくに小規模な小売店はそういうブランド頼みの姿勢では市場から完全に淘汰されてしまうのではないか。

先日、心斎橋筋商店街をブラっとしているときに、ふと「スピンズ」の店の前を通った。
スピンズはヤング向けの低価格カジュアルSPAで、全国に20店舗強を展開している。
テイストとターゲット、中心価格帯はウィゴーと近い。
一説にはウィゴーと激しい競争を繰り広げているといわれているが、企業規模でいえばウィゴーの方がはるかに大きい。ウィゴーは売上高200億円を突破している。

それはさておき。

これまでスピンズの店頭で「有名ブランド」を押していることはあまりなかったが、今春はこれまでと異なる打ち出しに着手したようだ。
店頭で「ナイキ」「ニューバランス」「ラルフローレン」などを大々的に打ち出していたのである。

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これには驚いた。
なぜなら、昨年くらいから「しまむらでラルフローレンのリュックが販売されている」と話題になったからだ。

出会えたら超ラッキー!?しまむらの一部店舗でラルフローレンの商品を販売中
http://spotlight-media.jp/article/142264526251662714

人気ブランド「ラルフローレン」のアイテムはこれまで、並行輸入もある程度厳しく取り締まられ、百貨店や専門店以外の低価格店で見ることはあまりなかった。
90年代後半まではけっこう某ジーンズチェーン店で3900円で売られていたりしたが、コピー商品だったことが露見したりして、その当時は大きな話題となった。
某報道特集番組でも取り上げられたほどである。

それ以降は低価格店での扱いはあまり見かけなかったが、それが変わりつつあるということだろうか。

しかし、低価格店でも「ラルフローレン」を扱い始めたということは、大規模な直営店やオンリーショップはまだしも、小規模な専門店では売れにくくなるということである。

「ラルフローレン」に限らず、ブランド頼みの小規模専門店はますます苦戦することになるだろう。

かつて一世を風靡した「エヴィスジーンズ」も昨年夏からライトオンでの取り扱いを始めている。
価格は12000~13000円くらいなので本体よりも少し割安感がある。
オランダのブランド「Gスター」だって今ではライトオンで販売されている。

小規模な専門店が「うちはGスター扱ってるんですよ」なんて自慢気に口にしたところで、同じ物はライトオンでだって買えてしまうのである。

そういえば、素材ブランド「ハリスツイード」だってしまむらで買えてしまう。
しまむらが「ハリスツイード」と正式契約したため、あのラベルの付いた商品がしまむらにも並んでいる。

【2015年も】しまむら×ハリス・ツイードがコラボで話題沸騰継続中ッ!
http://matome.naver.jp/odai/2141483259539713401

もちろん、素材感とかデザインとか細かい点は異なるが、一般消費者からすると同じ「ハリスツイード」の商品である。
現に「しまむらなら2000円で買えるのにお宅の仕入れているハリスツイードはなぜこんなに高いの?」と言われた雑貨関係者もいる。

これからは「ハリスツイードです」というだけでは高値で売れなくなるということである。
なぜなら、しまむらでも売っているから。

これを指して「ブランド側が堕落した」とは思わない。
ブランド側もビジネスを展開しており、とくに欧米ブランドは利潤追求と拡大再生産に貪欲だ。
日本ブランドの方がそのあたりはお人よしではないかと思う。

今まで通りのルートで販売し続けても売上高の伸びは知れている。
もう十分に知名度のあるブランドならなおさら伸びしろは少ない。
もう知れ渡った結果が今の売上高なのだから、欲しい人はすでに買っているし、今買っていない人はそのブランドを欲しいと思っていない人である。

じゃあ売上高を拡大するためにはどうすれば良いか。
手っ取り早いのは、これまで販売していなかったルートで販売することである。
それは低価格ゾーンである。
低価格ゾーンには大資本の大手チェーンが多い。大手チェーンだから1社と取り組むだけで莫大な店舗数で展開することが可能になる。

ちまちました5店舗や7店舗の専門店とはわけが違う。
一気に何十店・何百店での展開が可能だ。
その分売上高は増えやすい。

ブランド側がそう考えるのは至極当然だろう。
とくに海外ブランドがそう考えたとしても何の不思議もない。

逆に低価格ゾーンの大手チェーン店からすると、自店のステイタス性を上げるためにも有名ブランドとの取り組みは大歓迎である。
かくして両者の利害は一致する。

今後もこういうコラボ、取り組みはますます増えるだろう。

今、ブランド頼みの小規模専門店はますます追い詰められる。
「うちは〇〇ブランドがあるんですよ」なんていうのがセールストークでもなんでもなくなるのはそう遠いことではあるまい。

その自慢の〇〇ブランドが低価格チェーン店とコラボしたり、低価格チェーン店での取り扱いを早晩開始するだろうからだ。

じゃあどうするのか。
小規模専門店は何を消費者に提供するのか。
もうその答えを見つけて実践しておられる小規模専門店もあるが、展示会などで様子を見ているとそういう先はまだまだ少数派だ。

ブランド頼みの小規模専門店の方が多数派だと感じる。
その多数派は5年後、10年後には存続できていないだろう。

小規模専門店にとってもブランド頼みの手法から脱却する最後のチャンスではないかと思う。





新鮮で割安感のある商品は売れる

 衣類が売れにくいといわれているが、目新しくて値ごろ感のある商品はやはり売れる。
ただ、筆者も含めた多くの人は「テイスト」だとか「風合い」だとかの目新しさについては理解がしづらい。

「このテイストは斬新」なんて雑誌やテレビで言われたところで、それに大枚をはたいて買わねばならない価値を見出しにくい。
「テイスト」やら「トレンド」しか目新しい物を提供できないから衣類、とくにファッション衣料は売れにくいのではないかと思う。そういう「テイスト」やら「トレンド」やらの目新しさこそがファッション衣料の価値だから、仕方がないことなのではあるが。

目新しさでわかりやすいのが「機能性」だと思う。

ユニクロがかつてヒートテックで大ヒットを飛ばしたのは「機能性」と「価格の割安感」だった。

肌着メーカーを取材していると、一昨年の秋冬くらいから、この保温肌着類の売れ行きが目に見えて鈍ってきたという。2015年の秋冬は暖冬傾向も相まってさらに保温肌着類は苦戦した。

メディアが「苦戦」なんて報じるとまるで一枚も売れていないかのように感じてしまうことがあるが、そんなことはない。実際に保温肌着は一定の枚数は売れる。ただし前年を大幅に越えるような状況ではないということである。
例えば、ユニクロの店頭で見ていても秋冬になると必ず毎日何枚かはヒートテックが売れる。
もうたくさん持っているだろうと思うのに、一人で複数枚を買う人もいる。

保温肌着の売上高が伸びなかった代わりに好調だったと言われるのが、保温ズボンであろう。
ユニクロの防風ジーンズやエドウインの保温ジーンズの類である。

先日、カイタックファミリーの展示会にお邪魔した際にも、量販店向けのレディース保温ジーンズ類が好調で、2016秋冬向けも多数のオーダーが入っているそうだ。

東洋経済オンラインに

しまむら、V字回復の理由は「値上げ」にあった
http://toyokeizai.net/articles/-/112480

という記事が掲載されているが、この「値上げ商品」とは3900円の裏地付の保温ズボンだと報じられている。
先日のカイタックファミリーの量販店向け商材もちょうど同じ価格帯である。

一方、エドウインで尋ねてみると、7900~9000円くらいの専門店向け保温ジーンズは好調だったが、一部チェーン店向けに企画製造している4900円商品は不調だったという。

IMG_1037

(エドウインの専門店向け保温ジーンズ)

4900円商品が不調だった理由はおそらく、その下をくぐる3900円、2900円ラインの他社製品が充実したためではないかと考えられる。

ジーンズ、カジュアルパンツという商品群で見ると、6900円以上が専門店向け商品とされ、それ以下は量販店向け商品とされている。
量販店には1900円、2900円、3900円、4900円、5900円の価格帯があるが、メインとなるのは1900~3900円で、よほどの「何か」がないと4900円、5900円はあまり量は売れない。
なぜならこのくらいの価格帯になるとSPAブランドや一部専門店でも販売されており、そちらの方がブランドステイタスが高いからだ。

今までエドウインの4900円保温ズボンは、「機能性」という「何か」があったわけが、他社からほぼ同じような機能性のある2900円、3900円商品が登場すると、人は同じような物なら安い方で買うから、そちらに流れたと考えられる。

東洋経済の記事は、しまむらの回復を値上げにあると指摘しているわけだが、それは半分正しく、もう半分は保温ズボンという新ヒット商品を見つけたからではないかと思う。
しまむらほどの規模になると販売数量が劇的に伸びることはよほどの事件がない限りはありえない。数量が変わらない状況で売上高を伸ばそうと考えるなら価格を上げるしかない。
3900円に上げたことが正解だったのではなく、「3900円で保温ズボンという新ヒットアイテムを販売した」ことが正解だったといえる。

ユニクロは今春から再び値下げ傾向になっているが、昨年12月・今年1月の苦戦?(他のアパレルに比べると苦戦ではないと思うが)の原因が値上げだと考えられることから、価格政策を批判する記事が相次いだが、ユニクロがさらに売上高を伸ばそうと考えるなら値上げがもっとも正しい選択肢の一つであることは間違いがない。
それが消費者に受け入れられるかどうかが問題ではあるが、「値上げ=悪」ではない。

それはさておき。

ヒートテックをはじめ、各社の保温肌着を腐るほど持っている消費者は、今後、保温肌着をまとめ買いすることは考えられない。せいぜい2,3枚を毎シーズン買い替えるだけだろう。最早、現在の低価格保温肌着は買い替え需要しか存在しない。
今後、画期的な新機能やら新素材が出てくれば別だが、従来品のアップデート版では爆発的に売れることは考えられない。

そういう消費者がいまだに所有していなかったのが、保温ズボンであろう。
この商品は2016秋冬も売れるだろうし、2017秋冬も売れるのではないか。とくに量販店価格帯の商品は。
量販店価格なら3900円が主戦場となり、4900円で売るためにはあっと驚くような「何か」が必要となる。

しまむら、カイタックファミリーの商品が売れたのは、手持ちが少ない新鮮な商品だった上に、価格帯に割安感があったからだ。

しかも各社の保温ズボンの見た目は向上している。
通常のジーンズ、カジュアルパンツ類とほとんど見分けがつかない。
シルエットも通常のスキニーと変わらず細身を実現できている。

やはり、「新鮮で割安感のある商品」は売れるのである。
ただ、業界人の考える「新鮮さ」と一般消費者が求める「新鮮さ」が乖離しているのが、昨今の状況であり、これが衣料品不振の原因の一つではないかと思う。




しまむらの今後の方向性は?

 しまむらの減益が濃厚となってきた。
もし減益になるとすると、2期連続の減益ということになるため、各紙で報道されている。

ちょうど、先日もそれらの報道についてどう考えるか?とフェイスブック友達がトピックスを挙げておられたばかりである。

外野から眺めていると、売上高5000億円強、減益とはいえ営業利益400億円強のしまむらは依然としてアパレル業界では超優良企業であるし、今後も優位性はそう簡単には揺らがないだろう。
しかし、停滞局面に突入したことも間違いないと見ている。

今回はそれを踏まえて、考えてみたい。

先ごろ東洋経済オンラインに掲載された分析が的確であると考えている。

ユニクロとしまむら、なぜ明暗が分かれたか

国内アパレルの「優等生」が陥った停滞局面
http://toyokeizai.net/articles/-/63229

まあ、タイトルからするとかなり暗めな印象を受けるが、メディア側はキャッチなタイトルを付けるのが通常である。たぶん、この記事の筆者が付けたものではないのだろうと想像している。

どうしても業界最大手ユニクロと比較されてしまう。
ちなみにユニクロが業界1位、しまむらが業界2位である。

個人的な話で恐縮だが、しまむらで物を買ったことがない。
実は店舗に行く頻度もかなり低い。
理由は簡単で、ロードサイドに路面店出店するしまむら、アベイルへ行くのは、ペーパードライバーである筆者には難行苦行なのである。
最近ではボツボツと都心店もでき始めているが、大阪に限って言えば、天王寺・難波・心斎橋・梅田のターミナルにはしまむらは影も形もない。
東京都内でもターミナルの駅周辺には出店していない。

反対にユニクロはロードサイド路面店もあるが、都心ターミナル店も多い。

立地だけで見ると、しまむらは都心ターミナル顧客をまったくと言って良いほど取り込めていない。
まあ、しまむら側からすると取り込む必要がないと考えているのかもしれないが。

またロードサイドでもイオンモールに代表される大型ショッピングセンターにユニクロは入店しているが、しまむらは入店していない。
そういう意味では地方ロードサイド顧客の取りこぼしも増えたのではないか。

大型ショッピングセンターの功罪について今回は論じる気がない。
すべての商材がそろうので大型ショッピングセンターを利用するという地方在住者は数多くいる。
ユニクロはその中にあって、ついで買いの対象となるが、しまむらはなりにくい。
ショッピングセンターへの行き道・帰り道にあれば別だが、それ以外なら「わざわざ」立ち寄らねばならない。
「わざわざ」立ち寄るというのは心理的ハードルがなかなかに高い。

これを利用して「わざわざ」立地に出店する個性派小規模店も多いが、しまむらはそういう個性派店舗ではない。
利便性の高い低価格衣料品の販売店である。

近年は「しまらー」を使ってファッション化を進めていたが、「わざわざ」立ち寄るほどの個性派店舗では到底ない。また、「しまらー」も数年くらい前からめっきり影を潜めている。

一方、ユニクロはなんやかんやと言われながらもファッション性を高めている。
相変わらずチラシのデザインだけはあか抜けないが、売れているならそれが正しいのである。
売れないデザインは何の意味もない。

店舗のディスプレイもユニクロはそれなりに洗練されてきているが、しまむらは依然として雑多なままである。
天神橋筋商店街の在庫投げ売り店と近い印象を受ける。

このあたりでブランドイメージの明暗が分かれているのではないか。

また商品面でいうと、同じ商品を大量生産するユニクロと、仕入れ品をメインに多品種少量を販売するしまむらでは、ファッション顧客の目線で見るとしまむらの方が使い勝手が良い。
何しろ「被る」ということがほとんどないからだ。
ちなみにしまむらも一部自主企画商品はある。実際にそれらを企画製造しているが、すべてではない。

一方のユニクロは同じ商品を大量生産しているため、被りまくりである。
毎年、冬になったら毎日どれほど多くのウルトラライトダウン着用者を見かけることか。
最早、色違いの国民服みたいになっている。

しかし、その多品種少量販売がしまむらの「商品の顔」を見えにくくしている側面があるのではないか。
ユニクロは即座に「顔」となる商品が思い浮かぶ。ウルトラライトダウンしかり、フリースしかり、ジーンズしかり、である。その顔は少々大きすぎるのではないかと思うほどだ。

しまむらは「顔」が希薄であるという印象を受ける。希薄なので「あれが欲しいからしまむらへ行こう」という動機になりにくいのではないか。

逆にH&MやZARAのようなトレンド対応形態になればそれが売りになるが、そこまでの洗練度がない。
そういう意味では立ち位置が中途半端だと感じる。

しまむらの土台はちょっとやそっとのことでは揺らがないだろうが、今後どうするのか興味は尽きない。
もっとも現状維持というのも立派な方策である。
このままのやり方を貫いて5000億円台を維持する、それ以上の成長は求めないというのも選択肢の一つである。

ただ、5000億円台からさらに上を目指すというのなら、今のままのやり方では難しいのではないか。

それは外野がとやかく言うことではなく、しまむらの経営陣が決めることである。

素材や縫製や製法だけでは売れない

 先日、こんなまとめブログがあって、興味深く読んだ。

どんな女の子も一瞬でダサくなる方法見つけたwwww
http://beelzeboulxxx.com/archives/23237433.html

もともとは、パロディや悪ふざけで作ったコラージュなのだろうが、意外にも「ブランド」というものの本質を突いてしまっている。
もとより、筆者はこの手の悪ふざけは大好きなので単純に面白おかしいのだが、どんなにカッコイイタレントのポートレイトでも特定のブランド名を入れるだけで、不思議と低価格品に見えてしまう。

もっとも例に出されているのが、しまむらで、あとユニクロ、PIKO、BADBOY、ライトオンなどと続いている。
ユニクロと比べて、幅広いファッションアイテムがそろうのがしまむらだ。
だからこんな服もしまむらには売っているのではないかと思わせてしまう説得力がある。

一例を挙げると、これが

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こうなる。

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いかにもそれっぽい。
しまむらのポスターにありそうだ。

デザイン物にユニクロのロゴを付けても合成感丸出しで違和感がある。もっとシンプルベーシックなテイストなら説得力が出るだろう。

反対に、そこらへんのオニイちゃんに「エルメス」や「バーバリー」のロゴを付けてもなかなか馴染まない。
写真をモノクロにするなどの工夫が必要なようである。

で、結局、「ブランド」というものは本来そういうものなのではないだろうか。
同じ材質・同じ縫製・同じデザインのTシャツだが、しまむらで売っているから1900円で、バーバリーだから5900円。買う側も「バーバリーだからそれくらいして当然」と受け取っている。
「バーバリーと同じ素材・同じ縫製・同じデザインだからうちも5900円で販売します」としまむらが主張してもなかなか消費者には受け入れてもらえない。

材質や縫製が直ちに店頭価格に反映されるなら、だれも「ルイ・ヴィトン」の塩化ビニールのバッグなど10万円も出して買わなくなる。

そこには、素材や縫製、製法を越えた「信頼感」がある。
それを作ることこそが、安易に使われ過ぎて手あかにまみれまくった言葉ではあるが「ブランディング」という作業だろう。

製造業社の多くはここが理解しづらい。

例えば、ラグジュアリーブランド「●●」の生地を製造している日本の企業があったとしよう。
で、この日本の企業はこれまでの下請け体質から脱却しようと、自社の生地を使って製品を作る。
その新製品の価格を決める際に、「●●ブランドは10万円で販売しているから、同じ生地を使って同じ製法で製造している当社の製品も同じ10万円にしよう」ということがよくある。

他の機械、金属、化学などの業界は分からないが、こと繊維業界に関していえば、こういう主張をする製造業社はけっこう多い。この15年間何社も見てきた。そしてそういう主張をしたブランドは消え去っている。

いくら、「●●」ブランドと同じ材質製法でも、無名の製造業社ブランドが消費者に同じ価値で受け入れられることはまずない。そうするためには何年間ものイメージ作り、販売活動、販促活動が必要となる。

もちろん、筆者個人は物作りをイイカゲンにして、「販促でチョチョっとタレント使ってPRしたら売れるんや」などとうそぶくブランドはまったく好きではない。そういうブランドは往々にして長続きしない。スタート当初は売れても安物のメッキは数年で剥げ落ちる。

しかし、いくら物作りが良くても、販促活動や販売活動、イメージ作りなしで高額品が売れるとも到底思えない。

なぜなら、消費者は材質や縫製や製法だけに高いお金を払うのではないからだ。

今回のこういう面白スレは製作者の意図しないところでブランドビジネスの本質を突いていたといえる。
下請けから脱却するために自社製品化を目指す製造業社にはぜひ、御一考いただきたい事例である。

生活必需品とファッション衣料の差

 先日、こんな記事を読んだ。

高所得者層ほどユニクロ好きが多い理由
http://president.jp/articles/-/8231

ユニクロの利用率は各層を問わず、他のファストファッションブランドに比べ、50%前後と圧倒的に利用率が高い。意外にも、1000万円以上の所得があるマル金男性層でもユニクロが利用度はダントツに高い。2010年には55%にも迫る勢いだ。マル金はユニクロが好きなのか。

との疑問から記事が始まる。

比較対象はしまむらとH&M。

記事中のグラフでは、1000万円以上の所得がある男性はしまむらの利用率は低調、H&Mの利用率は急上昇している。
しかし、ここは注意が必要である。
横軸が2006年~2012年までの年数の目盛、縦軸は各層の利用率の目盛である。
横軸は3ブランドとも共通なので流し見してもかまわない。
問題は縦軸である。
ユニクロは10%ごとの目盛であるのに対して、しまむらとH&Mは1%ごとの目盛である。
ユニクロの最大利用率の値は60%であるが、しまむらの最大利用率は8%、H&Mの最大利用率は6%である。
ケタが1ケタちがう。

H&Mのグラフが急上昇しているといっても、3%だったものが6%になったにすぎない。
成長率でいうなら倍増ということになるが、利用率6%ではほとんど利用されていないに等しい。

無題

(プレジデントオンラインで掲載されていた3ブランドの利用率グラフ)

ユニクロはすでに2006年に30数%の利用率があり、2010年には利用率60%に近づく。
2011年は40%に下がるが、2012年は少し増えて50%になっている。
そしてこれは何もお金持ちだけのことではない。全層に渡ってのユニクロの利用率はしまむらとH&Mよりも10倍大きいのである。

男性の利用率だけを見るならユニクロとしまむら、H&Mを比較すること自体がナンセンスだということになる。

それにしてもどうしてユニクロの男性利用率はこれほど高いのか。
その疑問に対して元メンズクラブ編集長の林信朗氏はこう答えておられる。

「要するに、ユニクロはファッションではないんですよ」

「ユニクロは基礎生活材なんです。つまり、ヒートテックやウルトラライトダウンのような防寒着であったり、下着であったりするわけです。特に高所得者層はそれらを人に見せたり自分で味わったりする『ファッション』とは捉えていないと思うんです」

とのことであり、生活必需品であるから男性の全層に渡って利用率が高いというわけである。
さすがは慧眼である。

ユニクロは現在でも生活必需品としての要素が色濃いブランドだと感じる。
ファッションを切り口としたブランドではない。と言い切ってしまおうか。

昨年のクリスマス前、午後2時から5時頃まで「あべのマーケットプレイス キューズモール」を一通り見て回った。
ここにはユニクロ以外にライトオン、グローバルワーク、チャオパニックティピー、ウィゴーなど低価格ブランドがそろっているので比較対象しやすくてよく利用する。

そのとき、ユニクロは何か安売りの目玉商品があったのか、平日午後だというのにレジにはずっと20人ほどの行列ができている。その行列を見ていると、明らかに年金受給者と見受けられるお年寄りがかなりの割合で含まれていた。

一方、ライトオン、グローバルワーク、チャオパニックティピー、ウィゴーを見ると、お年寄りはほとんど入店すらしていない。最年長者でも40代であろう。

ユニクロはお年寄りの支持率が他の低価格ブランドに比べて断トツに高いのではないかと感じる。
近隣のロードサイドのユニクロにも相当数お年寄りが来店している。
それだけ知名度が高いのだと思うが、他の要素としては、先ほど林氏が述べておられるように「生活必需品」としての性質が色濃いからだと思う。

今回、比較対象されたしまむらやH&Mは「安いファッション」と捉えられている。

「しまむらやH&Mは今瞬間的に流行のファッションを安く買う、という感覚ですよね。だからしまむらは特に低所得者層に受ける。彼らはしまむらをファッションとして捉えていると思います。でもH&Mはどうでしょう。高所得者層がそこへ行くのは娘や妻といった家族での買い物もかなり含まれているような気がしますね」

林氏は文中でこう述べられている。
そして、ライトオン、グローバルワーク、チャオパニックティピー、ウィゴーなども同様に「ファッション」として捉えられていると感じる。生活必需品と捉えている人はあまりいないだろう。

生活必需品とファッション衣料品ではおのずとその利用客数は異なる。
「寒くなったから保温肌着を買おう」「出張先で急に靴下が破れたので代わりを安く買おう」「突然雨が降り出したので安い傘を買おう」「夕方から突然冷え込んできたので、急きょニットや防寒アウターを買う」
などというのが生活必需品ブランドの利用法である。
そして、高所得者はまさにユニクロをそのように利用している人が多い。

今の衣料品業界の齟齬は、アパレル各社がユニクロを「ファッション」だと捉えていることも原因の一つではないのか。
だから百貨店向けアパレルが「ユニクロで売れたアレと同じ素材を売ってほしい」とか「ユニクロで売れたアレと同じデザインで売りたい」などという馬鹿な要望が出てくるのではないのか。

土台、百貨店向けアパレルとユニクロでは店頭価格も違うし、利用客数も利用客層も異なる。
そこに向けてユニクロと同じ商品を売ったところで、ユニクロと同じ枚数が売れるはずはない。

百貨店向けアパレルがユニクロと同じくらいの枚数を販売したければ、店頭価格を下げて「実用衣料品」の性質をもっと色濃く打ち出す必要があるが、はたしてそんな物を消費者が望んでいるか、と言われると極めて疑問である。

SPAブランドの不当返品は恥をさらしているのと同じ

 昨日に続いてつらつらと考えてみた。

ナショナルブランドは返品交換ができる。
現在はどうだかしらないが、これは長年の商習慣であった。

例えば、ジーンズのボブソンやラングラーなどのナショナルブランドの場合、「A」という商品の売れ行きが悪ければ、ジーンズショップはこれを「B」という商品に入れ替えてもらうことが可能だった。

引き取られた「A」は値引きされて他店に振られるか、自社のファミリーセールで叩き売られるか、2000年代以降ならアウトレットモールで叩き売られるかのいずれかで処分される。
全部の処分は無理でも、大半以上はこの3つのルートで処分が可能である。

しかし、ショップオリジナルのブランドをOEM/ODMしている事務所に、返品した場合、3つのルートはいずれも使用することができない。
下手をするとOEM/ODM事務所は返品された商品を抱えて倒産・廃業するしかない。

昨今、専門店も自社オリジナル商品を販売している。
自社オリジナル商品のみを販売する業態を特別にSPAと呼んでいる。
SPAブランドがその下請けであるOEM/ODM業者に返品することは、本来あってはならないことである。
商道徳からしてもそうだし、売れ行きが悪くて製造業社に返品するということは、SPAブランドの販売方針がしっかりしていないことを社会的に知らせるものである。

考えてみてもらいたいが、SPAブランドの場合、何をどれだけの数量製造するかということはブランド側に100%裁量がある。
OEM業者が「この商品は、売れそうなので1万枚製造しなさい」と指示することはない。
SPAブランド側が製造数量を決めて、製造業社に発注するのである。

その商品が売れ行きが悪ければ、SPAブランド側の企画内容が悪いということであり、数量予測が不確かであるということである。SPAブランド側の企画担当者、MDの精度が悪いことにほかならない。

そして、自社で企画した商品を製造業社に返品するということは、恥の上塗りである。

SPAブランドの中で悪質な返品をしないのは、ユニクロ、しまむらくらいだと言われている。

この点だけでもユニクロ、しまむらは他社に抜きんでている。
両社の後追い企画が巷に溢れているが、できれば商品だけでなく、悪質な返品をしないという姿勢も後追いしてほしいものである。

欠品することがファッション

 「欠品したことで売り上げが伸び悩んだ」

どこかで聞いたフレーズである。
単純に「欠品」というが、トレンドアイテムなのかベーシックアイテムなのかではだいぶと状況が異なると思う。
肌着や靴下、定番ジーンズ、定番ボタンダウンシャツのようなベーシック品はなるべく欠品させない方が良いと思うが、トレンドアイテムはむしろ欠品しても良いのではないか。

欠品しても良いというのは語弊があるが、在庫が売り切れた場合、短い期間で無理をしてリピートをするよりも素材を変えたり、色柄を変えて別品番を投入した方が良いと思う。
場合によってはデザインを一新しても良い。

そういう意味では、欠品にこだわるユニクロより、新しい商品を次々と投入する、しまむらの方がファッション的なスタンスにあると言える。
店頭のディスプレイがひどかろうが、什器が安物臭かろうが、店作りがチープ感に溢れていようが、しまむらの方がファッション店に近いのではないだろうか。

2006年に発行された月泉博さん著の「ユニクロVSしまむら」から引用してみる。

しまむらのMD政策で特筆すべきは、「リピート(追加仕入れ)不要。売り切れ御免」という独自の考え方だろう。
同社は期中の商品追加補充はいっさい行わない(自動発注による定番商品補充などは別)。
小商圏では機会損失の防止より、売り場の鮮度維持、変化訴求が優先されるべきとの考え方に基づく。藤原に言わせれば「変化こそファッション。だから機会ロスなんて発想がそもそもおかしい。逆に品切れすることこそ正しい」ということになる。

とのことである。

この売りきれ御免という発想はZARAやH&Mと非常に近く、しまむらは日本版のファストファッションを実現できる可能性がある。さらに言えば、ZARAやH&Mよりも商品の品質は高い。

欠品させないというユニクロの考え方は量販店や大手チェーン店と非常に近いと感じる。
肌着や靴下などの実用衣料ではそれで良いと思うが、アウター類やカジュアル衣料には適さない。
一時期、話題となった「ユニばれ」「ユニ被り」という現象が出てきてしまう。
あまりにも大量の同一商品を販売してしまうと、同じ柄のシャツを着た人が周りにたくさんいる、同じウルトラライトダウン着用者に一日に何人も遭遇する、という「ユニ被り」現象が起きる。

また、うまくミックスコーディネートしても「そのシャツはユニクロですね?」と見破られてしまう「ユニばれ」現象も起きる。

ZARAやH&M、しまむらが重宝される理由は「被らない」「バレない」ことにもある。

100億円前後の小売店が「欠品しない」をモットーにしているのなら構わないが、6000億円の小売店が「欠品しない」を心がけるということは、勢い定番商品が増えるということになる。
一説には、ユニクロのレディースボトムスは、現在23型にまで絞り込まれているという。
わずか23型である。その代わりに1型あたりの生産枚数は軽く20万枚を越える。

そうすると、単純に同じ色・同じ形のボトムスを穿いた女性が20万人以上量産されるということになる。
これではますます「ユニ被り」現象は促進されてしまう。

ユニクロは、あえて一部の品番については「売り切れ御免」方式を導入するべきだと思う。

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