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しまむらの成長が今後しばらくは停滞しそうな理由

しまむらが2018年2月期連結を発表した。

売上高5651億200万円(前期比0・1%減)、営業利益428億9600万円(同12・1%減)、経常利益439億2000万円(同12・3%減)、当期利益297億1700万円(同9・6%減)と微減収大幅減益に終わった。

大幅減収といっても、ゴミ屑みたいな業績の企業が多いアパレル業界にあってはかなり優良だし、黒字はびくともしていない。
ただ、従来の「しまむらファン」みたいな人らからすると結果が不満だということになる。
多くの記事で指摘され、しまむら自身も認めているように、テレビCMは失敗だった。
効果がない割に、宣伝広告費が10億円ほど増えて利益を圧迫したのはこのテレビCMが大きな原因だろう。

元来、アパレルやアパレルブランドのテレビCMというのは難しい。

ユニクロの場合は、そのシーズンに積んで売るアイテムがいくつか決まっているから、それを流せば良いのでテレビCMは割合に簡単である。
例えば、古くは「フリース」。
淡々とこれだけを流せば事足りる。
エアリズム、ヒートテック、ウルトラライトダウン、すべて同じだ。

ユニクロは、そのシーズンに強力にプッシュしたいアイテムが1つ必ずある。
それをテレビCMで流せば良いから、非常にテレビCMとは親和性の高いブランドといえる。

テレビCMはウェブの記事やウェブサイトのように、文字で読んだり、自分で興味のある部分をクリックして読むなんてことはできない。
映像が30秒から1分間流れるだけで、その間にどれだけ視聴者にわかりやすく、伝えたいことを伝えるかが勝負になる。

ただし、映像は流れ去るものだから、録画でない限り、ウェブのように「ちょっと待って今の聞き取れなかったからもう一度リピートする」なんてことはできない。

だから、ユニクロの売り方はテレビCMに適している。
フリース、エアリズム、ヒートテック、ウルトラライトダウン、暖パン、などなど1アイテムにフォーカスして製作することができるからだ。

一方、しまむらもそうだが通常のアパレルはテレビCMとの親和性は低く、テレビCMは作りにくい。
なぜなら、多品種小ロットな上に、来月も同じ商品を売っているとは限らないからだ。むしろ売っていないことの方が多い。

そうなると、1アイテムにフォーカスしたテレビCMを製作することは難しく、畢竟、ブランドや企業のイメージCMみたいなものにしかならない。

だからアパレルのテレビCMは以前はほとんどなく、企業イメージCMが時折流れるくらいだった。
アパレルがテレビCMに積極的になったのは2009年ごろからで、クロスカンパニー(当時社名)のアースミュージック&エコロジーのテレビCMが大ヒットしたからである。

今までのイメージCMと何ら変わりはなかったが、違っていたのは消費者の環境である。そう、インターネットが完全に普及した。

宮崎あおいさんが、「ヒマラヤほどの~♪」と歌って、最後にブランド名を言うだけのテレビCMで、これだけを見ればなんのこっちゃ意味わからんという話だが、インターネットで検索することでこれがブランド名だということがわかり、大ヒットした。

アパレル業界は常に成功者の後追い体質だからクロスカンパニーがヒットすれば、我も我もとテレビCMを流すようになった。
その後、クロスカンパニーも同じ作りのCMを何度か流しているが、そちらはそこまでヒットしなかった。
同じものを何度も見せられても飽きるだけだから当然の結果といえる。

元来、多品種小ロットで売り切り御免型のしまむらは、1アイテムにフォーカスしたテレビCMを作りにくい事業構造だといえるし、今更、テレビCMを流し始めるという究極の後追いが成功するはずもなかった。
テレビCMの失敗は必然だったといえる。

ところで、金融系の人たちはなぜ、しまむらがさらに成長できると思っているのだろうか?不思議でならない。

しまむらのこれまでのビジネスモデルではこの辺りが成長の限界点だと思えるのだが。

以前にも書いたが店舗数を大幅に増やすには、最早、大都市都心しか立地が残されていない。ここに出店するには高い土地代・家賃が必要となりローコストオペレーションのしまむらでは厳しい上に、店作り・ディスプレイが今のチープ感漂うままでは、競合他社ブランドには勝てない。

また、ビジネスモデルの転換がそうそう上手く行くとも思えない。

2016年秋から発売した「裏地あったかパンツ」は100万本を販売したというが、それはしまむらお得意の「メーカーからの仕入れ」ではなく、自社企画商品だった。
自社企画商品を100万本も作るということは、ユニクロの大量生産・大量販売型のビジネスモデルだといえる。
しまむらはこれまで、不良在庫品などを安く仕入れて、それを販売することで「多品種小ロット売り切れ御免」のビジネスモデルを確立してきた。そしてそれが、面白いとして支持を集めてきた。

この路線を変更するということになる。

さらに、しまむらは自社企画ブランド「CLOSSHI(クロッシー)」を開始しており、近いうちに、商品構成比を40%にまで引き上げることを発表している。
これは取りも直さず、ユニクロ型ビジネスモデルの大幅導入ということになる。

しまむらに限らず、どんな企業やブランドでもビジネスモデルを大幅に転換する際には混乱・低迷・停滞は避けられない。
上手く行けば再上昇するが、上手く行かない場合は逆に凋落してしまう。
どうなるかは経営陣次第・運次第でしかない。上手く行かない可能性もある。

そんなわけで、しまむらは現在、難しい立場に立たされているといえ、再成長軌道に乗るには今後5年間くらいは必要になると見ている。

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5年後ダメになっているアパレルを3つ挙げてみたよ
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しまむらの都心一等地への大量出店は不可能だと思う

経済紙・一般紙においてはユニクロと同じくらい、しまむらに関する記事は奇妙なものが多い。
例えばこれだ。

しまむらが仰天戦略転換、都心出店でユニクロとガチンコ勝負
http://diamond.jp/articles/-/163124

この論調はピンと来ない。
要するに伸び悩んでいるしまむらが都心一等地に出店するだろうという記事だ。

確かにしまむらの新規出店先は最早都心にしか残されていない。
しまむらはアベイルなどの全業態を合わせて国内2000店舗以上ある。
しかし、そのほとんどは地方・郊外のロードサイドに出店されており、都心店は数えるほどしかない。
東京都心でいえばお台場、高田馬場、三軒茶屋しかなく、その3つともが都心一等地とは言い難い場所である。

地方郊外に2000店舗もあれば新規出店先を求めるとするなら、もう東京都心一等地や横浜、名古屋、大阪、札幌、福岡などの大都市都心しか残されていない。

だから、今後、都心出店はありえるだろうが、この記事の論調は正直まったく賛同できない。

しまむらが都心に出店できなかった理由は過去にほかの記事でいくつも述べられているのに、それをまるで参考にしておらず、記者の思い込みを書き連ねているとしか思えない。

都心でユニクロとガチンコ、いかにもマスコミが好きそうな書き口ではないか。(笑)
笑わせてくれる。

はっきり言って、ガチンコしても都心では勝負にならないだろう。

1店舗あたりの売上高がユニクロとしまむらでは全く違う。
経済紙の人たちはなぜ、1店舗あたりの平均売上高を比べることをしないのか疑問で仕方がない。

ユニクロから見ると、8000億円で800店舗だから、1店舗当たりの平均売上高は10億円ということになる。
しまむらは全体で2000店舗で5650億円の売上高だから1店舗あたりの平均売上高は2・5億円ほどということになる。

そもそも、しまむらの方がユニクロよりも店舗数が2倍以上多いのに、売上高はユニクロよりも2500億円も少ないのである。
それは取りも直さず、しまむらの1店舗あたりの売上高がユニクロよりも大幅に少ないということを表している。

そのしまむらがいきなり都心に出てきたからと言って、売上高が何倍にも増えるだろうか。
ちょっと考えられない。

ユニクロは地方店でもかなり売上高が高い。聞いている話だと、大阪南部のイオン内(要するに郊外)にテナント出店している店舗でさえ、毎日500万円くらいの売上高がある。チラシを撒いた日には800万円にまで増えるという。
1日500万円で計算しても1か月で1億5000万円となり、年間だと18億円となる。しまむらの郊外店の売上高とは大違いだ。

しかも、しまむらはあのチープ感満載の店作りである。

郊外ロードサイドの路面店だからあれでもそれなりに見ることができるが、整備された店作りの店舗がひしめき合う都心一等地で、あの店作りをされれば大幅に見劣りする。
現に三軒茶屋の店だって周辺の他社店舗に比べれば格段に見劣りする。

それでは売れるものも売れない。
「物が良ければ売れる」とか「知名度の高さだけで売れる」と考えるのはお馬鹿さんしかいない。
そんなもんだけで売れるならエドウインのジーンズはもっと売れてるだろうし、リーバイスのジーンズももっと売れている。

商品の良さや知名度と同等に店作りも必要なのである。

しまむらは売上高の低さをカバーするために、家賃・土地代が安い地方のロードサイドへ出店を続けてきた。
またローコストオペレーションを徹底し、正社員ではなくパート・アルバイト主体の従業員配置としている。(人件費の削減のため)
家賃・土地代の高い都心に出店するためには売上高を劇的に増やすほかない。
しかしあのチープな店作りとこれまでのローコストオペレーションではそれは不可能だろう。

仮にユニクロ並みに集客できたとすれば、それを捌くにはユニクロ都心店並みの人員が必要であり、人件費の増大は避けられない。

また都心だと最低賃金も田舎よりは高いからその部分でも人件費は増える。

さらに、最近は自社企画商品も増えたとはいえ、仕入れ品が今でも相当な割合で残っている。
しまむらの仕入れ原価率はそれほど低くないから、今の薄利体質のままでは、家賃や人件費が高い都心店を維持するのは難しいといえる。

しまむらの現在の収益構造と社内体制では都心一等地に大量出店するということはかなり難しいと考えられる。

そして、しまむらのネット通販についても勝手な想像のもとに書いている。

しまむらがネット通販の開始を発表したがそのときは、個別の自宅に配送するのではなく、しまむらの店に運びこみ、注文者に店まで取りに来てもらうという仕組みである。
これはネット通販というよりは、ネットを使ったお取り寄せサービスといえる。

逆にいうと、なぜ、この段階に及んでもしまむらは従来型のネット通販に参入しないのか?という疑問が湧く。

以前にここで紹介したようにネット通販が盛んな米国に出店したイギリスの低価格ブランド、プライマークが苦戦をしているという報道がある。
理由はネット通販に対応していないことが挙げられている。

しかし、プライマーク側としては「薄利低価格商品をなので、宅配まで手掛けると利益が削られて立ち行かない」と主張していたが、しまむらが宅配ネット通販に参入しない理由は、これと同じなのではないかと見ている。

となると、この記事のように手放しで「ネット通販に参入する」なんてことはちょっと想像できない。

たしかに、地方・郊外を埋め尽くしたしまむらの残された新規市場は都心一等地とネット通販しかない。
だからといって既存のしまむらのビジネスモデルではどちらも対応しにくい。対応できるならもうとっくにやっているのではないか。
ネット通販はここ10年くらいのトレンドだから置いておくとしても、都心一等地への大量出店なんていうのは、ユニクロの例を引くまでもなく、何十年前から存在する拡大の手法である。

それがありながら2018年の今まで手付かずだったということは、しまむらにはそれができない理由があると考えるのが適切だろう。

当方はその理由の一つとして、しまむらの薄利多売のビジネスモデルでは、都心一等地でのコストをペイできないからだと見ている。
もちろん、ほかの理由もあるだろう。

もし、都心一等地への大量出店と宅配ネット通販に参入するなら、新たなビジネスモデルの構築が不可欠になる。
口で言うのは簡単だが、既存の体制を捨てて新たなビジネスモデルを構築するなんて博打みたいなものだから、失敗する可能性もかなり高い。そのリスクをわざわざ冒すことをするだろうか。常人なら決断しにくい。
当方がしまむらの経営者なら間違いなく躊躇する。

メディアが軽々にいうような「しまむらの都心一等地大量出店、宅配ネット通販参入」というのは、現段階では騎乗位 机上の空論、ファンタジーに過ぎないといえるだろう。

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「知名度主義」の人材起用がアパレル業界を低迷させている
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しまむら関連の本はこんなの。

寡占化が進む国内アパレル市場での勝ちパターンとは?

一昨日くらいからやたらとリツイートされたツイートがある。

理由は判明した。
かねてより親交してもらっている短パン社長こと奥ノ谷圭祐さんが、自分のブログにそのツイートを貼り付けてくれたからだ。

ご存知のようにツイッターは140字という制限があるので、こういう書き方しかできないのだが、個人的には極めて当たり前のことを改めて書いただけであり、逆に多くの人が何をそんなに驚いているのかと不思議でならない。

もちろん、異業種の人からすると「初めて知った」という事柄かもしれないのでそれは理解できるが、理解できないのは、衣料品業界にいる人までが「初めて知った」みたいな反応をすることである。

自分が仕事をしている業界の大勢をどうして知らないのか?知らないままで何年間も仕事ができる業界って逆に緩くてパラダイスじゃね?

なんて思ってしまう。
ちょっと冷静に考えてみたいのだが、ユニクロとジーユーのこの2ブランドだけで、国内売上高は1兆円強になる。

ツイートは文字制限があるので省略しているが、しまむらには「しまむら」以外に「アベイル」などのいくつかの違う屋号の業態がある。
それを全部合わせたしまむら全社の売上高が5400億円になるということである。

正しくは、ユニクロとジーユーの2ブランドとしまむら1社の国内売上高を合計すると1兆5400億円強になり、国内のアパレル小売市場規模が9兆円強なのでその6分の1を占めるということになる。

いずれにしてもとてつもない売上高規模だが、ここを踏まえて考えないと、単純なモノづくり論とかありきたりの販売論では話にならないということが言いたかった。

かつてワールドやらオンワード樫山やらの業績が堅調なころはそれぞれ3000億円くらいの売上高があった。
2005年ごろまではバブル崩壊不況と言われながらも、今から考えるとまだファッションに活気があった。
以前にも書いたが、レーヨンジーンズブームもビンテージジーンズブームもエアマックス95ブームもバーバリーブルーレーベルのアムラーブームも全部90年代のことである。

ファッション分野に毎年大ヒット商品が生まれていた90年代の豊かさ

国内のアパレル小売市場規模も10兆円を越えていた。

仮に10兆円だったとして、ワールドとオンワード樫山の売上高合計は6000億円ほどしかなく、市場規模の6%程度の占有率しかなかった。
90年代に働いていた者の回顧としては、それでも「大手の寡占化はすさまじいな」と感じていた。
70年代や80年代のように(伝聞しただけ)マンションメーカーが巨大企業へ成長するなんてことは、この当時でもほとんどなくなっていた。

それが今はどうだろうか。この当時とは比べ物にならないほどの寡占化が進んでいる。
ファーストリテイリングの2ブランド(ユニクロとジーユー)としまむらの2社で国内市場の17%ほどを占めている。
今後さらに⓵2社の売上高が伸びるか、⓶国内市場規模が下がるか、このどちらかになると考えられるので国内占有率はさらに高まり、近い将来20%を占めることになるだろう。

こういう状況にありながら、古株業界人からはいまだにユニクロ否定論やしまむら否定論が聞こえてくる。
何も年配業界人からだけではない。販売枚数が極小で採算ベースにすら乗っていない若手からも聞こえてくる。
そういう若手は単に年齢が若いだけで思考が業界老人と同じである。

何を言っているのかと思う。

マスは大手2社に任せて、少人数にしっかり売るという考え方のブランドやアパレルは成長すると思う。
売り上げ規模が成長しないまでも収益は確保できるだろう。

「マスが間違っている」と声高に吠える弱小ブランドは思考自体が化石化しているので遠からず市場から退場することになるだろう。

弱小ブランドが無くなっても困る人はわずかしかいないが、この2社が無くなれば困る人は何十万人もいる。

ところで逆説的だが、衣料品というのは価格の高低に関係なく必需品でありながら嗜好品の側面があり、ユニクロだけ・ジーユーだけ・しまむらだけでは多くの人は満足できない。
たまには違うブランドや違うデザインの服も着てみたくなる。

そういう意味ではこの2社だけが残っても日本国民は困るのである。

だから、その他のアパレルやブランドにも活路はある。
その活路は論者によってそれぞれ違うと思うが、個人的に思いつくのは、トータルアイテムでは勝ち目がないから、何か1つか2つだけの得意アイテムに集中することで存在感が発揮できるのではないかと考える。

その好例は、鎌倉シャツであり、モンクレールだろう。

それぞれビジネスシャツやダウンジャケットに特化している。
鎌倉シャツは5000円くらいの価格でまあ大衆的だが、モンクレールは10万円を越える価格でハイブランド化している。
モノづくりがしっかりしていることが前提だが、それ以外のプロモーションや売り方などに工夫を凝らしたことで一般消費者に広く認知させることができた。

ほかにも特化すれば存在感を発揮できる分野やブランドはあるのではないかと思う。
問題はそれらを「モノづくり」「商品デザイン」のみの観点でやろうとするから売れないのではないか。

もちろん、モノづくりや商品デザインは重要だが、それだけでは購買意欲を掻き立てることはできない。
よくあるのが、商品のスペックや製造方法のみをクローズアップしすぎて、大衆からソッポを向かれてしまうことだ。
産地ブランドや製造業ブランドにはこうした例が掃いて捨てるほどある。

そのあたりを再度検証しなおしてみてはどうか。

それにしても、正しい数値データを持たずに商売ができているアパレル業界の緩さを改めて知ることができた。
正しい対策をとるには正しい数値を把握することが必要不可欠だ。それを欠いているのだから、業界全体が不振になったことは何の不思議もない。

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知名度だけに胡坐をかいたタレントブランドは売れない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n4a8a67be3a89
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しまむらのシステムは「EC」ではなく、疑似ECと呼ぶべき

メディアも業界も「トレンド」に流されやすいことが最大の特徴である。
いくつかの「トレンドキーワード」があるが、Eコマース(EC)はその一つである。
これを「ちょっと匂わせる」だけで大きく報道してくれる。

少し前なら「海外進出」だった。

業界新聞に属していた頃、20歳くらい年長の先輩が紙面に対して皮肉交じりにこう言ったことがある。
「トップ記事で掲載されたかったら、海外進出を書けば良い。何千億円の会社の国内の取り組みよりも、零細企業の海外進出のほうが紙面で大きく取り上げられる(笑)」。

まあ、差し詰め今なら「海外進出」が「Eコマース」に置き換わるのだろうか。

さて、ついに、しまむらがECに乗り出したことで、話題となっている。

しまむらがついにECに着手、月15万件超の“客注システム”を応用
https://www.wwdjapan.com/488934

もう多くの方がこのニュースを知っておられることだろう。

通常のECとは異なり宅配は行わない。
パソコンやスマホから商品を注文し、注文された商品は指定した店舗に届く。
お客はその店舗へ受け取りに行く。

簡素にまとめるとこういうシステムである。

メディアはこれを大いに持ち上げる傾向が強いが、はっきり言えばECではない。
記事中にもあるように疑似ECに過ぎない。

しまむらは独自の物流システムを所有していて、これまでも商品の店舗間移動や、商品の店舗配送を行っていた。
今回の疑似ECはこれを応用した使い方である。

消費者にとっての利便性は、ECやパソコンから「指定注文」できて買い逃しが減るところにある。
一方のしまむらにとってのメリットは、売り逃しが減る可能性が高いというところにある。

ただ、個人的にはメディアや評論家がいうほど、絶大な売り上げ効果があるかどうかは疑問を感じる。
なぜなら、しまむらの店舗立地は郊外のロードサイドに集中しているからだ。
しかも単体、もしくは数店舗集合での出店が多い。

これは店舗受け取りという形態には著しく不利である。

しまむらに行くのは、「休日わざわざ」ということが多い。
平日、もしくは勤務日の行き帰りに立ち寄れる場所ではない。

店舗受け取りが絶大な支持を得る要素は

1、都心に多数の店舗がある、ターミナルの駅ビルもしくはその近くにある
2、郊外の食料品併設の大型ショッピングセンターに入店している
3、住宅地の中に店舗がある

くらいしかない。
現在のしまむらの出店立地の多くはこれに当てはまらない。

となると、消費者の取りうる行動は、「来週日曜日にしまむらへ行きたいからそのときに届いているようにネットから客注する」ということになる。

しまむらへの「わざわざ来店」時に店舗に届いているタイミングで商品を頼むことになる。
そうでないなら受け取りに行くのが面倒だからだ。

しまむらが誇る自前の物流システムはあるが、宅配に対応しようとすると、コスト増になるし、おそらく人員も足りないだろう。
そうすると人件費の増大を招くことにもなる。当面は宅配対応は不可能だろう。

この宅配と店舗受け取りに関しての考察については、以下のブログが論理的で秀逸である。

ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2017/09/post-255e.html

IR(広報)によれば、NEXTではオンラインで注文して、都合のよい店舗で受け取るクリック&コレクト比率は注文件数の55%にあたるそうです(イギリス国内)。 一方、ZARAでは66%(グローバル平均)とのことです。

クリック&コレクトとは店舗受け取りのことである。
欧米では日本ほど宅配システムが整備されていないから、店舗受け取りのほうが多いということである。

ヤマト運輸を筆頭にきめ細かい宅配便のサービスをかつ安価で当たり前のように享受している日本において、クリック&コレクトの顧客にとってのメリットに疑問をもつ方が大多数なのが実情です。
英NEXTでクリック&コレクト比率が高い理由は

- 夜12時までに注文すれば翌日12:00以降に商品が指定の店頭で受け取れること
- 宅配の場合3.99ポンド(600-700円)かかる運賃が無料になること
- 国内540店舗という店舗網により生活圏、通勤圏に受け取り易い店舗があること
- 一方、英国にはヤマト運輸のような2時間単位の時間帯で配達指定ができる宅配便がそうそう存在しない

とのことであり、これを踏まえたうえで考えると、しまむらの店舗受け取りというのは日本人にとっては相当にハードルが高いといえる。
逆に、しまむらの低単価商品に対して時間を浪費してわざわざ受け取りに行くほどの価値があるのかどうか疑問を感じる。

言ってみれば、たかが1,000円の商品を受け取るために、時間と交通費を使って出向く人がどれほどいるのだろうか。
当方なら、絶対に何かのついででないと立ち寄らない。

しまむらがECをどこまで進めるのかは不明だが、今の店舗受け取りのみでは、商況を一変させるほどの効果はないと考えるのが適切ではないか。
一部メディアが記事化したように、「百貨店がさらに追い込まれる」なんて要素にはなり得ない。

しまむらの疑似ECは百貨店の商況にほとんど影響を与えず、むしろしまむらの疑似ECがなかったとしても今のままでは百貨店はさらに追い込まれる。
メディアの短絡的な姿勢は今も昔も変わりがない。

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「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

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限界点に達しつつある、しまむらのビジネスモデル

 しまむらの第1四半期決算が2ケタ減益と大幅に悪化し始めた。

その兆候は今年の初めから見えており、既存店売上高が連続して前年割れを起こし始めていた。

しまむらは2016年2月期、2017年2月期で大幅増益して、メディアから持ち上げられたが、2014年2月期・2015年2月期と連続減益しており、当時のメディアの持ち上げ方には疑問を感じていた。

もっとも企業としての売上高自体は増収し続けていたから、強い企業であることは間違いないが、「勝ち組」と持ち上げるのはちょっとやりすぎではないかと思っていた。

しまむらの業績が急減速、「しまラー」惹きつけるネット通販やフリマアプリの脅威
http://www.sbbit.jp/article/cont1/33839

この記事は比較的良く書けていると思う。

2016年2月期の増益に転じた際、長らく量販店やユニクロ、しまむらなど低価格ブランドのカジュアルパンツのOEMを手掛けたことがある友人がこう指摘した。

「今回の増益の起爆剤は、裏地あったかパンツを100万本売ったこと。しかし、これまで売り切れ御免でやってきた企業が、ユニクロと同じ100万本という大量生産・大量販売システムに転換するのはいかがなものか?いずれ反動が来る」

と。

この指摘は早くも的中しつつあるといえるのではないか。

当時のメディアはどこも指摘していなかったが、100万本を売ったということは、100万本を調達したということになり、それはこれまでしまむらが得意としていた仕入れでは実現しにくく、自主企画商品を生産したということになる。
そのビジネスモデルはユニクロと同一のものであり、しまむらとしては異なるシステムを取り込み始めたということになるが、そんなことが簡単にできるはずがないというのが、友人の指摘である。

記事では、しまむらの強みを端的にまとめている。

その基本は「サプライヤーとよい関係を築くこと」。しまむらは「『4つの悪』の追放」という“仕入れの憲法”を打ち出した。4つの悪とは、「返品」「赤黒伝票(伝票の書き換えで見かけの売上を計上する手法)」「(納品後の)追加値引」「(発注した商品を納品させない)未引取」だ。

 しまむらの、全面的にリスクを負い、値下げしても売り切る“仕入れの憲法”を、サプライヤーは「しまむらはフェアな商売をする」と歓迎した。そして売れ残りにならないような、高品質の商品、売れ筋商品、流行遅れになりにくい商品、とっておきの新企画商品を、しまむらに優先的に供給した。店舗の商品の回転が早くなり、在庫が少なくなり、コストは抑えられ、しまむらにも利益になった。

 そうやって、取引先との間で「しまむらファミリー」と呼べそうな関係を構築すると、取引数量が拡大したサプライヤーは「他ならぬしまむらさんのご提案なら、多少の無理はききましょう」と値引き要請にも応じるようになる。そうやって適正な利益を確保しつつ他店より安い価格をつけることができ、それが業容拡大のエンジンになった。

これは事実で、しまむらの取引は綺麗なことで有名だ。
しかし、この「仕入れ」スタイルで運営するには、しまむらは企業規模が大きく成りすぎたといえる。
大手セレクトショップが軒並み「疑似SPA化」したことを見てもそれはわかるだろう。

主力の「ファッションセンターしまむら」だけで1378店舗もある。
これだけ店舗数が増えれば「仕入れ」だけで商品を賄うのは不可能で、実際、あまり報道されないが、しまむらも自主企画商品を製造しているし、OEM/ODM生産も利用している。

店舗数がこれだけ増えれば、スケールメリットがあるから自主生産が増えるのは当然だが、これまでとは異なるビジネスモデルへとすんなり移行できるとは思えない。

また、個人的意見でいえば、しまむらの売り上げ規模、店舗数ともに国内では限界点に達しつつあるのではないかと思う。

売上高は5654億円もある。

いくら、安くて買いやすいとはいえ、国内でこれ以上大幅に売上高を伸ばすことは難しい。

じゃあ、流行りの海外進出はどうか?というと、ユニクロや無印良品とは異なり、しまむらは品揃えの雑多さが魅力で、その雑多さは「日本のローカルチェーンならでは」という部分があり、海外では嗜好が違うのでその魅力は理解されにくいのではないかと思う。

また、都心部に店が少ないこともそろそろ弱点になりつつある。

郊外では店舗数は飽和しつつあるといえるが、1店舗あたりの売上高の低さを考えると家賃の高い都心には出店できにくい。

よしんば都心に出店したとしても現在のしまむらグループの店作りでは、他の低価格ファッションブランドと比べて大きく見劣りしてしまう。
店の見た目については、しまむらグループはかなりダサい。

国内市場ではそろそろ飽和点に達しつつある、しまむらグループは次はどのような取り組みをするのだろうか?

ユニクロのような大量生産・大量販売方式にするのか?それとも店作りや陳列方法を洗練させるのか?はたまた、グローバルSPA方式に切り替えて海外進出するのか?

いずれにせよ、これまでの「しまむら」モデルのままでさらなる企業規模の拡大というのは、かなり難しくなっていることは間違いない。

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ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03


しまむらとヤオコー
小川 孔輔
小学館
2011-01-26



しまむらの転換路線に黄信号?

 このニュースを読んだときに、「ああ、やっぱりな」と感じた。

しまむらの株価が急落 既存店売上高が4カ月連続減
https://www.wwdjapan.com/419687

一昨年、昨年と各メディアに「勝ち組」と持ち上げられたしまむらの失速である。
しまむらの好調は、以前にこのブログでも紹介したように、冬用の保温ズボンを百万枚単位で売り上げたことによるものである。

定価は3900円で、通常のカジュアルパンツと同じくらいスマートでスリムなシルエットなのに防風性が高いというズボンで、各社とも冬用商品では人気が高い。
ユニクロもライトオンも同様の商品を販売している。

しまむらは、この「裏地あったかパンツ」の大ヒットにより久しぶりの増収増益に転じた。

それによって各メディアはしまむらを「勝ち組」と持ち上げたのだが、業界内部からはその時点で、疑問の声が上がった。

というのは、しまむらの基本的なやり方は、メーカー各社の在庫を安く仕入れてそれを安く販売する。
ただし、在庫だから売り切れ御免で、同じ物は二度と入荷されない。
というものである。

一方、裏地あったかパンツは100万枚を売り上げたわけだから、従来のやり方と異なる方法で商品調達がなされたと見るべきである。
いくら在庫がダブついている衣料品業界とはいえ、同じ商品ばかり100万枚も積み残しているメーカーなんてそうそうにあるわけがない。

100万枚の商品を調達し、販売したというやり方はユニクロ方式に近いものがあったのではないかと考えられるし、販売の思想はユニクロと同じだといえる。

少量(とは言っても、1万枚や2万枚程度は調達している)の売り切り御免方式から、100万枚単位でのユニクロ方式への転換。業界から疑問の声が上がったのはこの部分に対してである。

売り上げ規模の小さい企業なら方向転換は容易だが、5000億円を超えるような大企業になった場合、根底からやり方を変えることはなかなか難しく、莫大な労力と資金が必要になる。

そこまでのものを費やしてユニクロ方式に転換することが果たして、しまむらにとって良いことなのか?というのが業界からの疑問の声だった。

そして、今回のしまむらの失速傾向は、方法の転換にやはり無理があり、歪みが生じているのではないかと考えられる。

しかし、失速傾向とはいえ、まだ5月であり春夏物が不調だっただけで秋冬シーズンは好調に転じるかもしれない。
今後の推移を見守らないことには、失速だと決めつけることは難しい。

それにしても、やはりというべきか、衣料品という商品において、春夏物はヒット商品を作ることが難しいということが図らずもまた証明されたのではないかとも思う。

ユニクロの秋冬偏重は以前から指摘されてきたが、秋冬偏重はユニクロに限ったことではなく、衣料品ブランドは一部を除いてほとんどが秋冬偏重である。

なぜなら、秋冬商品は春夏商品に比べて、コートやジャケット類は単価が高く、売上高を増やしやすい。
さらに、気温的にも重ね着ができることから消費者の購買枚数も春夏に比べて増えやすい。

春夏、特に夏場は高気温であるため、重ね着がしにくい。
男性ならTシャツ1枚、ポロシャツ1枚に軽量ズボンというような服装が主流で極めて着用枚数が少なくなる。
女性でも似たような傾向である。

となると、まとめ買いやコーディネイト購買は少なくなり、売上高は稼ぎにくくなる。

また秋冬、とくに冬物は機能性が実感されやすいが、春夏物はどんなに機能性を高めても、暑さは軽減できない。筆者などは「どっちにしろ暑くて汗は止まらないから、夏物は機能性商品を着る必要はない」とまで思い始めている。

そうなると、吸水速乾だろうが、防臭だろうが、大々的にヒットを飛ばすことは難しい。

以前にジーユーがガウチョパンツを100万枚売ったように、春夏商品こそ、トレンド性がなければヒットしにくいともいえる。
ジーユーでガウチョが売れた理由は機能性ではなく、トレンド性と低価格である。

しまむらの「大量調達・大量販売」というユニクロ方式へのビジネスモデルの転換が正解だったかどうかがわかるのはこれからといえる。

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ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03





ブランド頼みの小規模専門店は確実に消える

 その昔、といっても10年ぐらい前までは「このブランドを並べていたら確実に売れる」という鉄板ブランドがあった。今もいくつかはそういうブランドは残っているが、かなり少なくなった。
多くの小売店はそういうブランドに今も頼ろうとしている。
たしかに衣料品不振だし、トレンドはあまり変わらないから売る側として何かに縋りたくなる気持ちもわかる。

しかし、そういう「鉄板ブランド」は今後ますます減るだろう。
とくに小規模な小売店はそういうブランド頼みの姿勢では市場から完全に淘汰されてしまうのではないか。

先日、心斎橋筋商店街をブラっとしているときに、ふと「スピンズ」の店の前を通った。
スピンズはヤング向けの低価格カジュアルSPAで、全国に20店舗強を展開している。
テイストとターゲット、中心価格帯はウィゴーと近い。
一説にはウィゴーと激しい競争を繰り広げているといわれているが、企業規模でいえばウィゴーの方がはるかに大きい。ウィゴーは売上高200億円を突破している。

それはさておき。

これまでスピンズの店頭で「有名ブランド」を押していることはあまりなかったが、今春はこれまでと異なる打ち出しに着手したようだ。
店頭で「ナイキ」「ニューバランス」「ラルフローレン」などを大々的に打ち出していたのである。

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これには驚いた。
なぜなら、昨年くらいから「しまむらでラルフローレンのリュックが販売されている」と話題になったからだ。

出会えたら超ラッキー!?しまむらの一部店舗でラルフローレンの商品を販売中
http://spotlight-media.jp/article/142264526251662714

人気ブランド「ラルフローレン」のアイテムはこれまで、並行輸入もある程度厳しく取り締まられ、百貨店や専門店以外の低価格店で見ることはあまりなかった。
90年代後半まではけっこう某ジーンズチェーン店で3900円で売られていたりしたが、コピー商品だったことが露見したりして、その当時は大きな話題となった。
某報道特集番組でも取り上げられたほどである。

それ以降は低価格店での扱いはあまり見かけなかったが、それが変わりつつあるということだろうか。

しかし、低価格店でも「ラルフローレン」を扱い始めたということは、大規模な直営店やオンリーショップはまだしも、小規模な専門店では売れにくくなるということである。

「ラルフローレン」に限らず、ブランド頼みの小規模専門店はますます苦戦することになるだろう。

かつて一世を風靡した「エヴィスジーンズ」も昨年夏からライトオンでの取り扱いを始めている。
価格は12000~13000円くらいなので本体よりも少し割安感がある。
オランダのブランド「Gスター」だって今ではライトオンで販売されている。

小規模な専門店が「うちはGスター扱ってるんですよ」なんて自慢気に口にしたところで、同じ物はライトオンでだって買えてしまうのである。

そういえば、素材ブランド「ハリスツイード」だってしまむらで買えてしまう。
しまむらが「ハリスツイード」と正式契約したため、あのラベルの付いた商品がしまむらにも並んでいる。

【2015年も】しまむら×ハリス・ツイードがコラボで話題沸騰継続中ッ!
http://matome.naver.jp/odai/2141483259539713401

もちろん、素材感とかデザインとか細かい点は異なるが、一般消費者からすると同じ「ハリスツイード」の商品である。
現に「しまむらなら2000円で買えるのにお宅の仕入れているハリスツイードはなぜこんなに高いの?」と言われた雑貨関係者もいる。

これからは「ハリスツイードです」というだけでは高値で売れなくなるということである。
なぜなら、しまむらでも売っているから。

これを指して「ブランド側が堕落した」とは思わない。
ブランド側もビジネスを展開しており、とくに欧米ブランドは利潤追求と拡大再生産に貪欲だ。
日本ブランドの方がそのあたりはお人よしではないかと思う。

今まで通りのルートで販売し続けても売上高の伸びは知れている。
もう十分に知名度のあるブランドならなおさら伸びしろは少ない。
もう知れ渡った結果が今の売上高なのだから、欲しい人はすでに買っているし、今買っていない人はそのブランドを欲しいと思っていない人である。

じゃあ売上高を拡大するためにはどうすれば良いか。
手っ取り早いのは、これまで販売していなかったルートで販売することである。
それは低価格ゾーンである。
低価格ゾーンには大資本の大手チェーンが多い。大手チェーンだから1社と取り組むだけで莫大な店舗数で展開することが可能になる。

ちまちました5店舗や7店舗の専門店とはわけが違う。
一気に何十店・何百店での展開が可能だ。
その分売上高は増えやすい。

ブランド側がそう考えるのは至極当然だろう。
とくに海外ブランドがそう考えたとしても何の不思議もない。

逆に低価格ゾーンの大手チェーン店からすると、自店のステイタス性を上げるためにも有名ブランドとの取り組みは大歓迎である。
かくして両者の利害は一致する。

今後もこういうコラボ、取り組みはますます増えるだろう。

今、ブランド頼みの小規模専門店はますます追い詰められる。
「うちは〇〇ブランドがあるんですよ」なんていうのがセールストークでもなんでもなくなるのはそう遠いことではあるまい。

その自慢の〇〇ブランドが低価格チェーン店とコラボしたり、低価格チェーン店での取り扱いを早晩開始するだろうからだ。

じゃあどうするのか。
小規模専門店は何を消費者に提供するのか。
もうその答えを見つけて実践しておられる小規模専門店もあるが、展示会などで様子を見ているとそういう先はまだまだ少数派だ。

ブランド頼みの小規模専門店の方が多数派だと感じる。
その多数派は5年後、10年後には存続できていないだろう。

小規模専門店にとってもブランド頼みの手法から脱却する最後のチャンスではないかと思う。





新鮮で割安感のある商品は売れる

 衣類が売れにくいといわれているが、目新しくて値ごろ感のある商品はやはり売れる。
ただ、筆者も含めた多くの人は「テイスト」だとか「風合い」だとかの目新しさについては理解がしづらい。

「このテイストは斬新」なんて雑誌やテレビで言われたところで、それに大枚をはたいて買わねばならない価値を見出しにくい。
「テイスト」やら「トレンド」しか目新しい物を提供できないから衣類、とくにファッション衣料は売れにくいのではないかと思う。そういう「テイスト」やら「トレンド」やらの目新しさこそがファッション衣料の価値だから、仕方がないことなのではあるが。

目新しさでわかりやすいのが「機能性」だと思う。

ユニクロがかつてヒートテックで大ヒットを飛ばしたのは「機能性」と「価格の割安感」だった。

肌着メーカーを取材していると、一昨年の秋冬くらいから、この保温肌着類の売れ行きが目に見えて鈍ってきたという。2015年の秋冬は暖冬傾向も相まってさらに保温肌着類は苦戦した。

メディアが「苦戦」なんて報じるとまるで一枚も売れていないかのように感じてしまうことがあるが、そんなことはない。実際に保温肌着は一定の枚数は売れる。ただし前年を大幅に越えるような状況ではないということである。
例えば、ユニクロの店頭で見ていても秋冬になると必ず毎日何枚かはヒートテックが売れる。
もうたくさん持っているだろうと思うのに、一人で複数枚を買う人もいる。

保温肌着の売上高が伸びなかった代わりに好調だったと言われるのが、保温ズボンであろう。
ユニクロの防風ジーンズやエドウインの保温ジーンズの類である。

先日、カイタックファミリーの展示会にお邪魔した際にも、量販店向けのレディース保温ジーンズ類が好調で、2016秋冬向けも多数のオーダーが入っているそうだ。

東洋経済オンラインに

しまむら、V字回復の理由は「値上げ」にあった
http://toyokeizai.net/articles/-/112480

という記事が掲載されているが、この「値上げ商品」とは3900円の裏地付の保温ズボンだと報じられている。
先日のカイタックファミリーの量販店向け商材もちょうど同じ価格帯である。

一方、エドウインで尋ねてみると、7900~9000円くらいの専門店向け保温ジーンズは好調だったが、一部チェーン店向けに企画製造している4900円商品は不調だったという。

IMG_1037

(エドウインの専門店向け保温ジーンズ)

4900円商品が不調だった理由はおそらく、その下をくぐる3900円、2900円ラインの他社製品が充実したためではないかと考えられる。

ジーンズ、カジュアルパンツという商品群で見ると、6900円以上が専門店向け商品とされ、それ以下は量販店向け商品とされている。
量販店には1900円、2900円、3900円、4900円、5900円の価格帯があるが、メインとなるのは1900~3900円で、よほどの「何か」がないと4900円、5900円はあまり量は売れない。
なぜならこのくらいの価格帯になるとSPAブランドや一部専門店でも販売されており、そちらの方がブランドステイタスが高いからだ。

今までエドウインの4900円保温ズボンは、「機能性」という「何か」があったわけが、他社からほぼ同じような機能性のある2900円、3900円商品が登場すると、人は同じような物なら安い方で買うから、そちらに流れたと考えられる。

東洋経済の記事は、しまむらの回復を値上げにあると指摘しているわけだが、それは半分正しく、もう半分は保温ズボンという新ヒット商品を見つけたからではないかと思う。
しまむらほどの規模になると販売数量が劇的に伸びることはよほどの事件がない限りはありえない。数量が変わらない状況で売上高を伸ばそうと考えるなら価格を上げるしかない。
3900円に上げたことが正解だったのではなく、「3900円で保温ズボンという新ヒットアイテムを販売した」ことが正解だったといえる。

ユニクロは今春から再び値下げ傾向になっているが、昨年12月・今年1月の苦戦?(他のアパレルに比べると苦戦ではないと思うが)の原因が値上げだと考えられることから、価格政策を批判する記事が相次いだが、ユニクロがさらに売上高を伸ばそうと考えるなら値上げがもっとも正しい選択肢の一つであることは間違いがない。
それが消費者に受け入れられるかどうかが問題ではあるが、「値上げ=悪」ではない。

それはさておき。

ヒートテックをはじめ、各社の保温肌着を腐るほど持っている消費者は、今後、保温肌着をまとめ買いすることは考えられない。せいぜい2,3枚を毎シーズン買い替えるだけだろう。最早、現在の低価格保温肌着は買い替え需要しか存在しない。
今後、画期的な新機能やら新素材が出てくれば別だが、従来品のアップデート版では爆発的に売れることは考えられない。

そういう消費者がいまだに所有していなかったのが、保温ズボンであろう。
この商品は2016秋冬も売れるだろうし、2017秋冬も売れるのではないか。とくに量販店価格帯の商品は。
量販店価格なら3900円が主戦場となり、4900円で売るためにはあっと驚くような「何か」が必要となる。

しまむら、カイタックファミリーの商品が売れたのは、手持ちが少ない新鮮な商品だった上に、価格帯に割安感があったからだ。

しかも各社の保温ズボンの見た目は向上している。
通常のジーンズ、カジュアルパンツ類とほとんど見分けがつかない。
シルエットも通常のスキニーと変わらず細身を実現できている。

やはり、「新鮮で割安感のある商品」は売れるのである。
ただ、業界人の考える「新鮮さ」と一般消費者が求める「新鮮さ」が乖離しているのが、昨今の状況であり、これが衣料品不振の原因の一つではないかと思う。




しまむらの今後の方向性は?

 しまむらの減益が濃厚となってきた。
もし減益になるとすると、2期連続の減益ということになるため、各紙で報道されている。

ちょうど、先日もそれらの報道についてどう考えるか?とフェイスブック友達がトピックスを挙げておられたばかりである。

外野から眺めていると、売上高5000億円強、減益とはいえ営業利益400億円強のしまむらは依然としてアパレル業界では超優良企業であるし、今後も優位性はそう簡単には揺らがないだろう。
しかし、停滞局面に突入したことも間違いないと見ている。

今回はそれを踏まえて、考えてみたい。

先ごろ東洋経済オンラインに掲載された分析が的確であると考えている。

ユニクロとしまむら、なぜ明暗が分かれたか

国内アパレルの「優等生」が陥った停滞局面
http://toyokeizai.net/articles/-/63229

まあ、タイトルからするとかなり暗めな印象を受けるが、メディア側はキャッチなタイトルを付けるのが通常である。たぶん、この記事の筆者が付けたものではないのだろうと想像している。

どうしても業界最大手ユニクロと比較されてしまう。
ちなみにユニクロが業界1位、しまむらが業界2位である。

個人的な話で恐縮だが、しまむらで物を買ったことがない。
実は店舗に行く頻度もかなり低い。
理由は簡単で、ロードサイドに路面店出店するしまむら、アベイルへ行くのは、ペーパードライバーである筆者には難行苦行なのである。
最近ではボツボツと都心店もでき始めているが、大阪に限って言えば、天王寺・難波・心斎橋・梅田のターミナルにはしまむらは影も形もない。
東京都内でもターミナルの駅周辺には出店していない。

反対にユニクロはロードサイド路面店もあるが、都心ターミナル店も多い。

立地だけで見ると、しまむらは都心ターミナル顧客をまったくと言って良いほど取り込めていない。
まあ、しまむら側からすると取り込む必要がないと考えているのかもしれないが。

またロードサイドでもイオンモールに代表される大型ショッピングセンターにユニクロは入店しているが、しまむらは入店していない。
そういう意味では地方ロードサイド顧客の取りこぼしも増えたのではないか。

大型ショッピングセンターの功罪について今回は論じる気がない。
すべての商材がそろうので大型ショッピングセンターを利用するという地方在住者は数多くいる。
ユニクロはその中にあって、ついで買いの対象となるが、しまむらはなりにくい。
ショッピングセンターへの行き道・帰り道にあれば別だが、それ以外なら「わざわざ」立ち寄らねばならない。
「わざわざ」立ち寄るというのは心理的ハードルがなかなかに高い。

これを利用して「わざわざ」立地に出店する個性派小規模店も多いが、しまむらはそういう個性派店舗ではない。
利便性の高い低価格衣料品の販売店である。

近年は「しまらー」を使ってファッション化を進めていたが、「わざわざ」立ち寄るほどの個性派店舗では到底ない。また、「しまらー」も数年くらい前からめっきり影を潜めている。

一方、ユニクロはなんやかんやと言われながらもファッション性を高めている。
相変わらずチラシのデザインだけはあか抜けないが、売れているならそれが正しいのである。
売れないデザインは何の意味もない。

店舗のディスプレイもユニクロはそれなりに洗練されてきているが、しまむらは依然として雑多なままである。
天神橋筋商店街の在庫投げ売り店と近い印象を受ける。

このあたりでブランドイメージの明暗が分かれているのではないか。

また商品面でいうと、同じ商品を大量生産するユニクロと、仕入れ品をメインに多品種少量を販売するしまむらでは、ファッション顧客の目線で見るとしまむらの方が使い勝手が良い。
何しろ「被る」ということがほとんどないからだ。
ちなみにしまむらも一部自主企画商品はある。実際にそれらを企画製造しているが、すべてではない。

一方のユニクロは同じ商品を大量生産しているため、被りまくりである。
毎年、冬になったら毎日どれほど多くのウルトラライトダウン着用者を見かけることか。
最早、色違いの国民服みたいになっている。

しかし、その多品種少量販売がしまむらの「商品の顔」を見えにくくしている側面があるのではないか。
ユニクロは即座に「顔」となる商品が思い浮かぶ。ウルトラライトダウンしかり、フリースしかり、ジーンズしかり、である。その顔は少々大きすぎるのではないかと思うほどだ。

しまむらは「顔」が希薄であるという印象を受ける。希薄なので「あれが欲しいからしまむらへ行こう」という動機になりにくいのではないか。

逆にH&MやZARAのようなトレンド対応形態になればそれが売りになるが、そこまでの洗練度がない。
そういう意味では立ち位置が中途半端だと感じる。

しまむらの土台はちょっとやそっとのことでは揺らがないだろうが、今後どうするのか興味は尽きない。
もっとも現状維持というのも立派な方策である。
このままのやり方を貫いて5000億円台を維持する、それ以上の成長は求めないというのも選択肢の一つである。

ただ、5000億円台からさらに上を目指すというのなら、今のままのやり方では難しいのではないか。

それは外野がとやかく言うことではなく、しまむらの経営陣が決めることである。

素材や縫製や製法だけでは売れない

 先日、こんなまとめブログがあって、興味深く読んだ。

どんな女の子も一瞬でダサくなる方法見つけたwwww
http://beelzeboulxxx.com/archives/23237433.html

もともとは、パロディや悪ふざけで作ったコラージュなのだろうが、意外にも「ブランド」というものの本質を突いてしまっている。
もとより、筆者はこの手の悪ふざけは大好きなので単純に面白おかしいのだが、どんなにカッコイイタレントのポートレイトでも特定のブランド名を入れるだけで、不思議と低価格品に見えてしまう。

もっとも例に出されているのが、しまむらで、あとユニクロ、PIKO、BADBOY、ライトオンなどと続いている。
ユニクロと比べて、幅広いファッションアイテムがそろうのがしまむらだ。
だからこんな服もしまむらには売っているのではないかと思わせてしまう説得力がある。

一例を挙げると、これが

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こうなる。

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いかにもそれっぽい。
しまむらのポスターにありそうだ。

デザイン物にユニクロのロゴを付けても合成感丸出しで違和感がある。もっとシンプルベーシックなテイストなら説得力が出るだろう。

反対に、そこらへんのオニイちゃんに「エルメス」や「バーバリー」のロゴを付けてもなかなか馴染まない。
写真をモノクロにするなどの工夫が必要なようである。

で、結局、「ブランド」というものは本来そういうものなのではないだろうか。
同じ材質・同じ縫製・同じデザインのTシャツだが、しまむらで売っているから1900円で、バーバリーだから5900円。買う側も「バーバリーだからそれくらいして当然」と受け取っている。
「バーバリーと同じ素材・同じ縫製・同じデザインだからうちも5900円で販売します」としまむらが主張してもなかなか消費者には受け入れてもらえない。

材質や縫製が直ちに店頭価格に反映されるなら、だれも「ルイ・ヴィトン」の塩化ビニールのバッグなど10万円も出して買わなくなる。

そこには、素材や縫製、製法を越えた「信頼感」がある。
それを作ることこそが、安易に使われ過ぎて手あかにまみれまくった言葉ではあるが「ブランディング」という作業だろう。

製造業社の多くはここが理解しづらい。

例えば、ラグジュアリーブランド「●●」の生地を製造している日本の企業があったとしよう。
で、この日本の企業はこれまでの下請け体質から脱却しようと、自社の生地を使って製品を作る。
その新製品の価格を決める際に、「●●ブランドは10万円で販売しているから、同じ生地を使って同じ製法で製造している当社の製品も同じ10万円にしよう」ということがよくある。

他の機械、金属、化学などの業界は分からないが、こと繊維業界に関していえば、こういう主張をする製造業社はけっこう多い。この15年間何社も見てきた。そしてそういう主張をしたブランドは消え去っている。

いくら、「●●」ブランドと同じ材質製法でも、無名の製造業社ブランドが消費者に同じ価値で受け入れられることはまずない。そうするためには何年間ものイメージ作り、販売活動、販促活動が必要となる。

もちろん、筆者個人は物作りをイイカゲンにして、「販促でチョチョっとタレント使ってPRしたら売れるんや」などとうそぶくブランドはまったく好きではない。そういうブランドは往々にして長続きしない。スタート当初は売れても安物のメッキは数年で剥げ落ちる。

しかし、いくら物作りが良くても、販促活動や販売活動、イメージ作りなしで高額品が売れるとも到底思えない。

なぜなら、消費者は材質や縫製や製法だけに高いお金を払うのではないからだ。

今回のこういう面白スレは製作者の意図しないところでブランドビジネスの本質を突いていたといえる。
下請けから脱却するために自社製品化を目指す製造業社にはぜひ、御一考いただきたい事例である。

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