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ジーンズメイトには新ブランド投入ではなく抜本的な改革が必要

 先日、ジーンズメイトの新自社ブランド「メイト」を売り場で見た。
その感想は「決して悪くない」である。

メンズでいうと、ジーンズ、ボタンダウンシャツ、ジャケットというラインナップで、今後、さらに新型も投入されるのではないかと思う。
素材を触ってみたが、まあ、それなりに悪くはない。

試着してみたわけではないが、マネキンに着せている感じをみると、シルエットやサイズ感も悪くはない。
認知されれば(これが難しいのだが)、それなりに売れるのではないかと思う。

ジーンズは、最近増えているハイストレッチデニム生地が採用されており、かなり伸縮性が高い。
穿いてみれば快適なのだろうとは思う。

ジーンズメイトの新ブランド「メイト」のジーンズ
http://www.jeansmate.co.jp/brand/mate/

しかし、懸念・疑問も山のようにある。

まず、商品のテイストを見ると、男性は30代・40代をターゲットにしていると感じられる。
そうなると、何年か前から発売していた自社ブランド「ブルースタンダード」と重なる。

ブルースタンダードのターゲットは37・5歳だ。
「メイト」と同じである。自社ブランド同士が競合することになる。
売上高が低下しているジーンズメイトにあって、自社ブランド同士が競合して食い合うことは決して良い状況ではない。

また、テイストも似ており、メイトはベーシックなトラッドカジュアルであり、ブルースタンダードも同じである。
売上高が100億円を割り込んだジーンズメイトにあって、同じターゲットで、同じテイストの自社ブランドが2つも必要だろうか。
当方は2つも必要ないと思う。

そのあたりを意識してか、ブルースタンダードはブランドロゴを変え、商品テイストもやや若向きに変わったように感じるが、売上高が縮小し続けているジーンズメイトに2つのメイン自社ブランドが並立する意味があるとは思えない。

どちらか1つを廃止すべきか、まったく異なるテイストに変える必要があるのではないか。

次に、「メイト」を並べる店頭の印象だが、これが従来の店づくりと変わっていない。
内装、什器、他の商品群、ともに従来と変わっていない。

そうするとどうなるかというと、中高生向けの店にオッサン向け商品が並んでいるという状態がまるで解消されていないということになる。

これはブルースタンダードが開始されたときからまったく解消されていないジーンズメイト最大の課題である。
いくら素材が良かろうが、テイストが良かろうが、店舗と商品がミスマッチなら売れるはずもない。

ここを解消せずして、いくら「モノヅクリガー」と叫んでみたところでそんなものは、供給側の自己満足でしかない。
ライザップの手腕もあまり当てにならないのではないかと思う。

また、価格設定も微妙だと感じる。

ジーンズが4990~6990円なのだが、ユニクロよりは高い。
決して高すぎるとは思わないが、すごく価格訴求力があるわけでもない。
わざわざ、ユニクロではなくここで買う意味が感じられない。

もちろん、製造工程や商品の完成度からして、この価格設定が不当だとは思わないし、ジーンズメイト側も相当に努力しているとは思うが、ユニクロの3990円ジーンズではなく、ここで買う意味を感じられないという消費者は相当多いのではないかと思う。

そこを覆す説得力を今度どれだけ高められるかである。
これはかなりハードルが高い。

また、売り場全体で見たときに、いかにも中高生向けというデザインで価格も激安な商品があふれている中で、このテイスト、この価格ではブルースタンダード同様にかなり浮いていて、割高に見えるという逆効果もある。

シンボリックな新商品を開発するよりも、店舗内装・什器の変更、他の仕入れ商品のマーチャンダイジングの変更こそが、ジーンズメイトの急務である。
ここを放置したままで、新商品を開発・投入するというのは、典型的な物作り脳で、これまでのアパレル業界の悪癖そのものである。

今春くらいからジーンズメイトの店頭はかなり商品量が減っている。
以前だと圧迫感があるくらいに商品が陳列されていたが、これがだいぶと間引かれて、逆に店頭はえらくスペースが空いているようにさえ感じられる。

経済誌や業界紙では、第1四半期決算でわずかながら黒字転換したため、ライザップの経営手腕を持ち上げているが、この微細な黒字転換は商品の仕入れ量・製造量を抑え、店頭在庫を圧縮したことによるものでしかない。
逆に営業利益率は前期よりも低下している。

小手先で改善しただけで、根本的問題は何も解決していないとさえいえる。

目新しさが何もない新ブランド「メイト」を投入した程度では戦局は変わらない。
先日、ライザップはグンゼと提携して、着用しているだけでバイタルデータがわかる機能性ウェアを発表した。
例えば、こういう画期的な機能性商品を投入するくらいのインパクトがないと、新商品投入という手段では局面は打破できない。
いっそのこと、グンゼが開発したこの機能性衣料をライザップ傘下のジーンズメイトで販売してみてはどうか。

従来のアパレル的な新ブランド投入よりもよほど、効果が期待できるのではないか。

ジーンズメイトが上昇基調に転じるには、「メイト」投入のみでは厳しく、店作りから含めた抜本的な改革がなされない限りは不可能に近いと言わざるを得ない。

今後の施策を見守りたい。

NOTEを更新しました⇓
「原価率50%」商法はナンセンスでしかない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nf12f449b36a1

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

小型店がライフスタイル提案をする方法

 昨今、大型のライフスタイル提案型のショップが乱立している。
一つのコンセプトに沿ってさまざまなジャンルの商品をそろえて、ライフスタイルを提案するのだが、グランフロント大阪の無印良品のように広大な面積が必要となる。

エストネーションやビオトープなんかもそうだろう。

小型店がライフスタイル提案を行うのは面積の関係上かなり難しい。
実際にアパレル業界には洋服+数型の雑貨を置いて「ライフスタイル提案型です」と自称している中小型店も少なくない。

しかし、感度の鈍い筆者のような消費者からすると、「洋服にリュックを3型・靴2型を置いただけで何がライフスタイル提案型か」と疑問に感じてしまう。

そういう観点において、筆者は中小型店でライフスタイル提案型はかなり難しいと考えていたのだが、この考え方を使うと、小型店でもライフスタイル提案をできるのではないかと思うので紹介したい。

そば打ち体験や陶芸体験はエクスマではない
http://www.ex-ma.com/blog/archives/3842

けっこうな長文である。

メガネ店の例があるのだが、抜粋しつつ引用するので一緒に考えてもらいたい。

抽象化して、本質を考えてみましょう。
あなたの店でメガネを買うと、お客さまはどんないいことがあるか?
どんな悩みを解決するの?
どんな問題を解決するの?
そう考えてみる。

あなたのメガネ屋10店舗の社員、全員で考えてみるとします。
自分の店は、メガネを売っているのではなく、どんなコトを売っているのか?
グループに別れ、みんなでアイデアを出し、まとめていく。

一番に思いつくのは、「目がよく見えるようになる」ということです。
視力矯正です。

目がよく見えるようになると、たくさんのいいことがあります。

大好きな人の顔や姿がよりくっきりと見え、より仕合せになる。
美しい花や風景がより美しく見えるようになり、楽しさが倍増する。
本や映画、ウェブサイトがより鮮明に見え、理解度が増す。
美味しい食事がより美味しそうに見え、実際に美味しく感じられる。
などなど・・・

視力矯正以外にもありますよね。

メガネやサングラスはファッションの一部です。
メガネをかけることでよりおしゃれになるとも言える。
流行のデザイン性の高いメガネや、目立つサングラスをかけることで、よりおしゃれになる。
そうすると、アパレルのブティックと同じように、ファッションを売っているともいえます。

ほかにも、サングラスを買うお客さまは、ドライブするときに太陽光が眩しくないように使う。
釣りをするときに、水面の反射を消すために使う。
自転車に乗るときに、風が目に入らないために使う。
海水浴で紫外線をカットするために使う。
などなど、そうするとアウトドアやスポーツを支援しているとも言えます。

さらに、知的に見えるメガネを買うビジネスパーソンは、仕事ができそうに見える。
しっかりと視力矯正して、本を読むのが苦痛じゃんなくなり、ビジネスの勉強できるようになる。
だとすると、メガネ屋さんはビジネスがうまくいくお手伝いをしているかもしれない。

そんなふうに考えてみるわけです。

そうすると、本来売っているものに気づいていきます。
メガネ屋さんが提供している大切なソリューション(問題解決)「目がよく見えるようになる」という視力矯正で考えてみる。
大好きな人の姿がよりよく見えるようになったり、自然界の美しいものがより美しく見えるようになったり、美味しい料理がより美味しく感じられたり、本や映画がより理解できるようになったりすることは、どういうことを人々に提供しているのでしょう。
それはもしかすると、人々をより「元気」にしているのかもしれない。

元気にする。

そういうキーワードだとすると、「うちのメガネ店は、メガネを通じて、人々を心身ともに元気にする店」ということになる。
そう定義してみるのです。

とある。

そこで、

「元気を提供しているメガネ屋」だとすると、様々なことが変わります。

メガネだけが商品ではなくなるということ。
もちろんメガネがメインの商品です。
これで利益が出るわけです。
でも、店のコンセプトを伝える商品。
売れなくても、置いておくだけでいい商品。
そういうものが増えていくでしょう。

たとえば、元気になる本。
「この小説を読むと落ち込んでいても、すぐに元気になります」というPOPが貼ってある。
実際、小説でも自己啓発の本でも、読むだけで元気になる本ってありますよね。
そういうのを選んで売る。

映画のDVDとかも考えられるかもしれない。
元気になり、観た瞬間からやる気がわいてくるような映画。
ほかにも元気になる音楽のCD。
元気になるグッズ。
たとえばサプリメントとか食品とか、栄養ドリンクとかね。

売らなくても店の中に「店長がおすすめする元気になる本コーナー」などを作って、お客さまとコミュニケーションすることもできるかもしれません。
もちろん無料で貸し出すわけです。
そのうち「お客さまが読んで元気になった本、元気になれそうな、もう読まなくなった本をもってきてください」とかできるよになったら、すごい関係性ができてきますよね。

接客も元気になる接客は何かって考えて、変わっていくでしょう。
感じのいい笑顔でお迎えするのは当たり前になってきます。
電話の応対もそうです。
電話に出るときには「はい!いつも元気な〜メガネ店です」っていう電話のまくら言葉を使います。
店の内装やディスプレイも元気になる色使いや、メッセージ、ワクワクする店舗になる。

当然、社長や店長のブログでは、そういう発信をする。
元気になるブログです。
本の紹介、映画の紹介、飲食店の紹介、などなど「元気になる」をキーワードにさまざまな事象を紹介できます。
社長のTwitterでは、古今東西の「元気になる名言」をツイートするのはいうまでもありません。
「大丈夫!心配事の98%は取り越し苦労だから」とかね。(笑)

そうなっていくと、おもしろい店ができますよね。

とある。

この考え方を応用すると、小型店でもライフスタイル提案型になることは可能だろう。
「メガネを通じて元気にする」というコンセプトで切ると、「元気になる」ようなサプリメントや食品、本、CD、雑貨、洋服などを置くことができる。

通常よくある「ライフスタイル提案型ショップ」だと、なんだか付け焼刃的な品ぞろえが多いが、「元気にする」というコンセプトを切り口にするとメガネ以外の商品の品ぞろえもスムーズにできる。
人気ブランドに頼る必要もないし、セレクトショップがこぞってやっている「別注商品」に頼る必要もない。
セレクトショップがやたらと「別注」に頼るのは、コンセプトの切り口がなくて、人気ブランドを扱いたいけれども希少品もほしいという矛盾した考えがその原点にある。

要するにセレクトショップ各社は「スペック」での差別化に凝り固まっているのである。

いわゆる「差別化アリジゴク」に落ちているともいえる。

そして、

あなたの店でメガネを買うと、お客さまはどんないいことがあるか?
どんな悩みを解決するの?
どんな問題を解決するの?

という部分がマーケティングの基本的な考え方である。
誰のどんな悩みを解決するのか?というのがマーケティング的思考である。

アパレル業界でこれを実行している企業・ブランドはかなり少ない。
多くの企業・ブランドは自己満足を消費者に押し付けている。

「俺がカッコイイと思う物をそろえました」とか
「俺のテイストが分からないやつはダサい」とか
「西海岸のトレンドを直輸入」だとか
「パリの伝統的な洋服」だとか

これらはすべて自分たちの好みを提案しているだけであって西海岸のトレンドを直輸入することで、誰のどんな悩みが解決するのだろうか?

これをキチンと答えられる企業・ブランドはかなり少ないだろう。

単に「西海岸のトレンドを直輸入しました」というブランドに興味を持つ人はそれほど多くないだろう。
西海岸はそれほど身近な存在ではないからだ。
多くの消費者にとって「ふーん」と言えばお終いである。

その結果、売れずにブランドは撤退する。
担当者や窓口企業は「西海岸のトレンドを分からない消費者はだめだ」とか「西海岸のトレンドは消費者に受け入れられなかった」とか言う具合に愚痴ったり、反省したりするわけだが、「誰のどんな悩みを解決するのか?」という根本が抜け落ちていたことに気が付かないままに次のブランドを手掛ける。

極言すればこれが今までから現在まで続くアパレル業界の構図である。

だから「価格競争」「トレンド競争」「スペック競争」「製造地競争」「別注競争」に陥るのである。
そうそう「伝統の技法競争」というのもある。

筆者は別にエクスマとは何の利害関係もないし、カネをもらっているわけでもないが、この考え方を持たずして、これからの時代、新ブランド開発も新商品開発もほとんど成功しないだろう。

上に書かれている考え方を呑みこんで応用できれば、小型店・小規模ブランドでもライフスタイル提案は可能だろうし、価格競争・トレンド競争に巻き込まれることもない。

一度、熟考してもらいたい。


 




「ジーンズ業界」は残らないが「ジーンズ製造加工業界」は今後も残る

 先日、このブログでジーンズナショナルブランドの凋落の原因について書いたところ、有限会社TCDさんがその補足ブログを書いてくださったのでご紹介したい。

http://ameblo.jp/tcd-co-ltd/entry-12081206018.html

『ファション業界に取り込まれたジーンズというアイテム』
http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/4494893.html

まさに仰る通りな内容でした。
その中で
「どうすればジーンズブランドは凋落しなかったのか?」
と、空想され、その答えを
「製造ノウハウをきっちりと握りしめていればよかった。」
のではないかとされ

その現実的方策として
縫製工場、洗い加工場を自社で運営し
協力工場のLINEを隙間なく埋め
商社に他業種からの受注の必要を感じさせないほどの
数量を依頼し続ける。
という、およそ不可能な方策しかなかったのではないか?
と、仮定。
よって、ナショナルジーンズブランドの凋落は
不可避であった!と結論づけておられます。

ほぼ正解です。
ただ、内部の人間として、少し掘り下げますと・・・。
最大の原因は
*人材の流出
です。

『日本ハーフ』さんや『大石貿易』さんのように
早い段階で姿を消した
優秀な企画者がいたジーンズブランドの人材を
同業種のメーカーがすくい取りきれず
それどころか
エドウィン、リーバイス、ビッグジョン、ボブソンも
だらだらと人材を流出し続けました。

ジーンズは
縫い糸から、各種付属、縫い自体、洗い加工、そして生地
すべてが特殊です。
なので、工場もさることながら
メーカーのMDやデザイナーがノウハウと人脈を
包括して握っています。
一般のブランドが、いきなり工場に話を持って行っても
たいした商品はできません。

また以前より指摘をしてきましたが
ジーンズNBは、基本的には “金持ち” でした。
金が有るうちに、有効な 『M&A』 をすべきだったと考えています。

まぁ、そういった意味でも
全ては
“人材” です。

加工のプロとか
ニッチなデザインができるヤツとか
生産管理に秀でた人とか
概して、その特殊性の高さゆえに
スペシャリストのみを優遇し
ゼネラリストの能力のあるものを冷遇する気風が
業界全体に蔓延していました。

経営者、役員の先見性の無さと
村意識と傲慢さが
業界全体の低迷を招いたことは明確です。

そして多くの人材がクモの子を散らす如く
野に放たれました。
その帰結が現在です。

ただ、このような状況は
日本で特有なものではありません
世界的な流れです。

とある。

この補足に感謝したい。

結局、無数のOB・OGが野に放たれ、それぞれがOEM・ODM請負会社を設立し、ジーンズブランド以外のブランドからの注文を受けるようになった。

製造工程のノウハウやら人脈やらを彼らは握っているわけだから、彼らを通すと、どんなブランドでも正当な報酬さえ払えばジーンズナショナルブランドと同等の商品を作ることができる。

それが現在の状況である。

で、先日も書いたようにこの流れを押しとどめることは不可能だったのではないかと思う。
TCDさんが書いておられるように、日本特有のものではなく世界的な流れでもある。

また早期退職した人を各社がサルベージしても結局は人材過多となってしまい、言葉は悪いが飼い殺しみたいな状態に置かれる人も多数出現しただろう。
一方、人材を囲い込むと言っても、定年退職した人までを囲い込むことは不可能である。
定年退職した後に、自営でOEM・ODM請負会社を立ち上げる人も中にはいただろうから、遅かれ早かれ人材とノウハウは流出したと考える方が正解だろう。

ただし、人材とノウハウの流出スピードは相当遅くなっただろうが。

大石貿易は古くに創業された会社で、日本ハーフは当時、新興メーカーだった。
このほかにもタカヤ商事、サンダイヤ、ラングラージャパン、帝人ワオ、ブルーウェイなどからも人材は多数流出している。

ワーキングユニフォームだとか白衣だとか特殊用途衣料は別として、ファッション用途の衣料品は「村」を保ち続けることはほぼ不可能だろう。

これはワイシャツもそうだろう。

正式にはドレスシャツというが、年配の人はワイシャツとかカッターシャツと呼ぶ。
かつて大手シャツ専業アパレルというのが何社かあった。
ちょうどジーンズナショナルブランドのような感じだ。

トミヤアパレル、カネタ、信和シャツ、松屋シャツ、CHOYA、すべて経営破綻した。
トミヤアパレルは業務を再開しているが、往年の勢いはない。

業界新聞記者として入社した97年当時にあった大手シャツ専業アパレルで無傷で残っているのは、先日、CHOYAから事業譲渡を受けた山喜、それからフレックスジャパンとナイガイシャツ、SPA化した東京シャツ、中堅のスキャッティオーク、くらいである。

結局、ドレスシャツもファッションアイテムに取り込まれたから、シャツ業界という「村」を維持することは難しかったということだろう。

もうかつての「ジーンズ業界」は残っていないし、これから復活することもないだろう。
しかし、「ジーンズ製造加工業界」は依然として残る。そこがなくなったら多くのファッションブランドがジーンズを企画製造することができなくなるからだ。

すでに2000年前半でさえ、岡山・福山界隈の産地企業は「ジーンズナショナルブランドからの受注が減った分をレディースアパレルやSPAブランド、セレクトショップからの受注を増やしてカバーしている」と話していたくらいだ。
2015年現在だと、むしろそちらの方が主要取引先になっているのではないか。

「ジーンズ製造加業界」はすでにファッション業界と直結してしまっているから、今後、もし「新しいジーンズ業界の枠組み」を作りたいのなら、レディースアパレル、メンズアパレル、SPAブランド、セレクトショップなどの参加を促さないと意味をなさないだろう。

もっとも「新しいジーンズ業界の枠組み」なんてものを改めて構築する意味があるとは到底思えないし、そんなものを構築したい人なんていないと思うのだが。




小規模店は既存顧客を最重要視すべき

 事業規模の設定が必要。
ある大先輩はそうおっしゃっていた。
これはまさしくその通りだろう。

50億円とか100億円の売上高を目指すのと、2億円とか3億円程度の売上高を目指すのとではやり方が大きく異なる。
借り入れが必要なのはどちらも同じだが、50億円とか100億円を目指すなら単なる借り入れだけではなく、ファンドを引き込むことが必要になる。
銀行からの出向社員の受け入れだって必要になるだろう。

かつてドゥニームというジーンズブランドを展開しておられた林 芳亨さんが、ドゥニームブランドを売却した直後でリゾルトを開始する直前にお目にかかったことがあるが、その際、「これからは少人数(おそらく数人)くらいで数億円程度の商売をやりたい」と言っておられたが、そういう選択肢もある。

さて、先日、あるデザイナーズブランドに相談を受けた。
そのブランドの現状はこうである。

専門店への卸売りが主体で年商は1億円台半ばから2億円くらい。
ショールーム兼直営店を1店舗持っている。
自社でオンライン通販をしていない。
数人規模で運営している。

業界の現状としては大手セレクトショップ以外の専門店は一部を除いては苦戦傾向にある。
それゆえ小規模専門店への卸売りを主体とするブランドは良くて現状維持、縮小傾向が当然といえる。

しかし、やりようによっては2000万円くらいは売上高を伸ばすことができるのではないかと思う。
例によって机上の空論で考えてみるのでご了承いただきたい。

まず、オンライン通販機能を自社ウェブサイトに付ける。
すぐさま売上高が急増することはないが、すでにやり方とか内容は別としてブログやSNSでの自己発信をある程度しているから、いくらか売上高は増えるのではないかと考えられる。

卸売り先からバッティングを懸念する声が上がるかもしれないが、卸売りしかしていないブランドでも自社サイトでの通販を手掛けているブランドはたくさんあるから、説得するのはそんなに難しいことではないのではないか。

筆者は個人的に小規模店舗の売上高を伸ばすには「エクスマ」の考え方を導入するのが良いと考えている。
もちろん大手企業にも使える要素はあるが、小規模店舗への導入の方がやり易いと感じる。

そこを基にして考える。

このブランドは、毎シーズンのカタログを送る顧客が100人いるという。
新規顧客を取り込むことは大事だが、この規模のブランドなら既存顧客を手厚くする方が容易に売上高が伸びるのではないかと思う。

携帯電話通信会社の大手3社はすさまじい「乗り換えキャンペーン」を何年間も続けている。
携帯電話に限らず、大手企業はどれだけ利用者を増やすかということが重要だからそれも当然といえる。

しかし、番号持ち運び制度ができてからは、携帯電話通信会社を2年ごとに変える方が経済的だということになってしまった。
電話番号は変わらない。しかし、新規契約者はキャッシュバックがあったり携帯電話機主代がタダ同然になったりする。長年継続使用している人よりも料金的にお得である。

実際に筆者の知り合いには2年ごとに番号を変えずに携帯電話通信会社を変える人がいる。
これがもっとも経済的である。

新規客に厚くて既存顧客に薄いとそういうことになってしまう。

これもエクスマで使われる例だが、ホットペッパーや食べログなんかで、「初回限定〇〇%割引」とか「初回限定半額」みたいなクーポンが付けられることがある。
それを掲載することで通常よりは客数はある程度増えるだろうが、実際のところクーポン客が固定客になる可能性はあまり高くない。

そういう人(筆者も含め)は「〇〇%割引」とか「半額」が好きな人が大部分で、クーポン店を行脚している。
「安い」で集まる人は「安売り」が好きな人で、筆者も含めてそういう人は定価では物やサービスを買わない。
筆者はユニクロを定価では絶対に買わない。

大手だとそういうお客も必要だ。
セール品を買って行ってもらえるお客も重要である。そうでないとセール品が売れ残っていしまうが、小規模店や小規模ブランドならそういう「安いもの好き」のお客はそれほど多く取り込む必要はない。
定価かそれに近い価格で買ってもらえるお客を増やす方が重要である。

では例えば毎シーズンカタログを送付している100人の固定客にもう少し頻繁に手紙を送ってみてはどうだろうか?

例えば、

「夏と冬のバーゲンセール開始時」
「ノベルティが付属するキャンペーン開始時」
「はがきを送った固定客のみ10%割引のシークレットセール開始時」

などの案内である。

あとはイベントを作っても良い。

「お茶会」だとか「試着会」だとか、そういうイベントである。

おそらく来店頻度は何割か上がる。
来店頻度が増えれば、買い上げ数も何%か増えるだろう。

手紙はなるべく手書きが良いが、100人すべてに全文面を手書きにしていたらすぐに腱鞘炎になる。
手紙の本文は自筆で書いたものをスキャンしてハガキの裏面に印刷すれば良い。
ただし、文末の一言は全員に手書きで入れる。

そして徐々に送付先を増やす。
これはとりもなおさず顧客名簿に掲載する名前を増やすという作業である。

こうしたコミュニケーションを増やすことで固定客100人を200人に増やすことは不可能ではないだろう。
1万人の固定客を2万人に増やすことよりは難しいことではない。

固定客が200人になれば直営店の売上高は倍増前後になる。

このブランドが仮に

Tシャツ類5000~6000円
セーター類1万5000~2万5000円
ジャケット3万円台
コート類4万~6万円

くらいの商品価格だとする。

100人の固定客が年間に5万円~10万円を買ってくれたら、それだけで500万~1000万円の売上高になる。
そして固定客数が200人に増えれば計算上は1000~2000万円の売上高が見込めることになる。

ブログとSNSをこまめに更新しての呼び込みと、手紙(ハガキと封書のどちらでも構わない)のこまめな送付を継続することでそれは可能になるのではないか。

SNSだけで毎回、200枚~600枚近くの洋服を販売する短パン社長がいるが、彼の使っている手法はまさしくそれである。
彼の場合は、オンラインサイトも直営店もない。
しかしこのブランドは直営店があるのだからそこはアドバンテージともいえる。
より具体的に顧客を呼び込みやすい。

筆者の推測だが短パン社長には500人内外の固定客がいると考えている。

昨年から数えて10型強を発売しているが、この500人が毎回1万5000円の洋服を1枚買ったとする。
1万5000円×10型×500人=7500万円の年商ということになる。

商品によっては買い上げ人数が500人より少ない場合もあるから実際の年商はもう少し減るが、もし3000万円でも年商が増えれば、数人で展開しているブランドには大きなプラスになる。

そういえば、先日、大先達は「最近、あんまり業界では名前が登場しないが『パパス』というブランドは根強いファンがいて一定需要を支えている」とおっしゃったことがある。

実際のところパパスの顧客数がどれくらいかはわからないが、新規顧客数はあまり多くはないだろう。
ある日突然「今まで興味なかったけど急に『パパス』が魅力的に見えてきた」という人がそんなに存在するとは思えない。

やはり一定数の根強い固定客が売り上げを支えていると見るべきだろう。

大手ブランドが激烈な新規顧客争奪戦を繰り広げるのはやむを得ないが、小規模ブランドや小規模店舗は固定客作りに注力すべきだろう。
「既存顧客を死ぬほど大事にしなさい」というエクスマの方式を取り入れやすいのは小規模ブランド・小規模店舗だろう。

固定客作り=コミュニケーション=企業スタッフや企業オーナーの顔や考え方を見せる

という図式になるのではないか。
「余所行き」のコメントに終始した発信をしても仕方がない。

ブログやSNSの発信も手紙の送付もローコストで済む。
ただし手間はかかる。
そのひと手間を惜しんでいては、小規模ブランド・小規模店はたやすく大手に弾かれてしまうだろう。

めんどくさい部分は多々あるが、こういう地道なファン作りしか今後、小規模ブランド・小規模店が生き残る道はないのではないか。
品揃えの豊富さでもリーズナブルさでも大手の方が圧倒的に優位なのだから。




襟なしブームとMA-1の因果関係は?

 米軍のフライトジャケットであるMA-1の人気が今秋冬はマス化しそうである。

2~3年前からMA-1の人気は回復していたが、どちらかというとトレンド先端層とそれに追随するフォロワー層がメインで、マス層ではなかったと考えている。

これがマス層に広がった理由の一つとして、「襟なし」ブームが起きたおかげではないか。
ファッションの流行というのは往々にして複合的である場合が多い。
実際のところ、MA-1人気が先行していたから「襟なし」ブームになったのか、「襟なし」ブームが起きたからMA-1人気がマス化したのかは筆者にはわからない。
このあたりはファッションに詳しい人に解説していただきたい。

MA-1というと、バブル期に大学生を中心に大人気だった防寒アウターである。
筆者も少しブームに遅れて95~97年くらいの間に1着買った。
当時、本物を買うことなんて思いもよらなかったが、アルファインダストリーの製品は欲しかった。
定価で買うと、当時9800円とか12000円くらいしていたと記憶しているのだが、ある日、地元にあるイズミヤに寄ったところ、イズミヤのカジュアル平場で3900円くらい(記憶があいまい)に値下がりしているシルバーグレーのを見つけたので、何の迷いもなしに買ったことがある。
本当はオリーブグリーンが欲しかったのだが、値段の誘惑には勝てない。

そこから数年愛用したのだが、細身トレンドには乖離し始めてきたので捨てた。
当時のMA-1は身幅と袖幅が広くて、丈が短くリブで絞られている。
まあ、これが本来のシルエットなのだが、タイトシルエットがトレンドになると、ミリタリーマニアでもない限り着用するのはちょっとはばかられる。

そのあたりから、MA-1を着用しているのは真冬の現場作業員くらいに限られてきた。

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(着ると誰でもマッチョ体型に見える往年のMA-1)

で、3年くらい前からジワジワと先端層に支持され始めたのだが、そのときからMA-1はトレンドに合うように細身にリファインされていた。

ただ、「襟なし」のアウターは着こなしが難しい。(と思っている)
だから、筆者自身は着ることにためらいを感じている。
まあ、だれも筆者にMA-1を再度着てほしいなんて思っていないだろうが。

ただ、今春夏は「襟なし」のバンドカラーシャツが注目を集めた。
ユニクロやウィゴー、ライトオンでも売られていたのだからそれなりにマス化していたのだろう。
今秋物はその流れを汲んで、「襟なし」のカジュアルジャケットや丸首のカーディガンなどがメンズでも売られている。
先日、覗いたライトオンでは、早くも襟なしの綿カジュアルブルゾンが2900円にまで値下げされていた。

筆者のオッサン的感性でいうなら、バンドカラーシャツや襟なしのブルゾンを多く見るようになって、やっとMA-1にも興味が湧いてきたというところであるが、本来のMA-1をオッサンが着るのは危険だと思う。

オッサン世代で流行に便乗してMA-1を着ようと思っている人はおられるだろうか?
おられるとしたら、当時のを引っ張り出すのは相当に危ない。

細身にリファインされた現在の商品を着るべきである。

着るだけでマッチョ体型に見えるから顔のデカい人が着ると本当に不恰好である。
顔のバカデカい筆者は絶対に避けて通らねばならないアウターだといえる。

顔が小さくて体格が華奢な人でないと、当時のMA-1は似合わない。
華奢な体格の若い女性がダボっと着ているのが一番似合うのではないか。

リファインされた細身のMA-1は今秋冬は様々なブランドから発売されている。
本格派ならナイロン素材なのだろうけど、そこらへんのオッサンが飛行機やら戦闘機を操縦するわけではないからポリエステル素材でも綿素材でも素材はなんでもかまわない。
防寒アウターとして寒くなければそれで良い。

こんなイメージの商品を着ると良いのではないかと思う。

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今後、MA-1タイプのブルゾンも防寒アウターの一種として市場には定着するのではないか。

それにしてもビッグトレンドというのは、何段階かにわけてジワジワと浸透するものだと改めて思った。
先端層が飛びつき、フォロワー層が追随する。何シーズンか遅れてマス化する。
ビッグにならないトレンドは先端層かフォロワー層だけで終わってマス化しない。

先端層が言う「トレンド」と、マス層が思う「トレンド」が多くの場合食い違っているのはそのためだ。
マス化しないトレンドなんて一般大衆には知られていないし、いわば存在しないのも同じである。




エドウインに対する懸念と期待

 エドウインの2016年春夏展示会にお邪魔した。

今回の業界新聞的な目玉は、今秋冬からスタートしたEスタンダードの拡充と、ラングラーの高額商品復活だろう。

まず、Eスタンダード。
Eスタンダードは海外輸出も視野に入れた日本製ラインで、価格は8000~16000円くらいというリーズナブルな設定である。
16000円というのは相当に手の込んだ洗い加工を施した物に限られ、通常の加工商品品だと8000~1万円未満である。これなら欧米に輸出しても200ドル未満の販売価格を付けられ価格競争力がある。

写真 37

ここに新型のレギュラーテイパードという形を投入する。
また、ストレッチ性を強化した「ジャージーズ」と中空糸「ミラクルエア」を使った軽量速乾「クール」も投入する。
ちなみにここでいう「ジャージーズ」は以前から展開しているジャージーズとは別で、Eスタンダードのジャージーズラインである。
ちょっとややこしい。

このジャージーズのストレッチデニム生地はすごく伸縮性がある。
以前にカイタックファミリーの「360°ストレッチ」を紹介したことがあるが、それに匹敵する伸縮性である。

しかし、このEスタンダードには懸念がある。
品番数が多すぎるのではないかという懸念だ。
シルエットが細身から太めまで今回のスリムテイパードも含めて合計6型もある。
そこにジャージーズとクール、そして膝丈とクロップド丈。
合計で10品番あり、それぞれの品番に加工による濃淡の色番号がいくつかある。

これはちょっと選択肢が多すぎるのではないかと感じられる。

例えば、スリムテイパードとレギュラーテイパードとレギュラーストレートがある。
それぞれの太さの差異はほんの微細なもので、そこまでの微細な細分化が必要なのかと思うし、反対に消費者からしてもその区別はつきにくいのではないかと思う。

よほど気を付けて販売しないと選択肢の多さがかえってこの商品をスポイルすることになりかねない。
企画としては評価しているので、そうならないことを願うばかりだ。

一方のラングラーである。
10代後半~30代前半の若い消費者にとって、ラングラーは4900~5900円のどちらかというと低価格帯に属するブランドだと認識されているのではないか。

筆者のようなオッサン世代だとラングラーというのはリーバイスやリーと並ぶナショナルブランドだったという認識だが、それもあくまでも過去形である。

このラングラーで1万円前後の商品を復活させる。
こちらも日本製だ。

写真 17
写真 27

ラングラーブランドの日本における変遷をまとめると、かつてはラングラージャパンとして独立した企業だった。
それがVFジャパンへと名称変更し、その1年後にあっけなく解散してしまった。
99年とか2000年ごろのことだったと記憶している。
そして、エドウインの子会社であるリージャパンがラングラーブランドを管理することになって今に至る。

20年ほど前のことだが、筆者は当時のラングラーが好きで4本くらい所有していた。
13MWZという品番である。
ラングラージャパンの製品だった。

来春夏のラングラーの1万円前後の商品は、日本製で非常に手の込んだ洗い加工が施されている。
通常ならもう少し高額な価格設定になるが、エドウインでは「価格戦略商品」と位置付けている。
自社縫製工場ならではといえるだろう。

往年のラングラー好きとしてはぜひとも復活してもらいたい。

ところで、ラングラーの中にはもっと価格戦略商品がある。
日本製で5700円くらいのカラーパンツ類である。
これこそ自社縫製工場を所有するエドウインならではといえるのではないか。

写真77

(税抜5700円の日本製カラーパンツ)

「国内工場の維持」という命題になると、高額化という解答を導き出す企業やブランドが多い。
工賃を上昇させるためにはこれは正解の一つである。
しかし、個人的には日本製ブランドの方向性が「高額化一辺倒」になることに疑問を感じている。
高額化以外のモデルケースも必要ではないかと思う。

着物ほどではないにしろ、「日本製だからン万円」「日本製だからン十万円」という価格の商品ばかりになると、よほどのコアなマニア層しか日本製品を欲しがらなくなる。
それこそ着物のように「別世界」の商品という意識を持ってしまう。

そしてそのコアなマニア層だけで、すべてのブランドの経営が成り立つわけではない。
また富裕層を取り込むためには欧米のラグジュアリーブランドとの競合に晒される。
ステイタス性で比べてみても、宣伝販促の巧みさから見ても、国内ブランドではなかなか太刀打ちできない。
結果的に、日本製ブランドも少数の勝ち組と大多数の負け組に分かれるだろう。

だったら、特別な富裕層とマニア以外でも手の出しやすい価格帯の日本製品も必要ではないか。
その成功事例の一つは鎌倉シャツだろう。

エドウインのEスタンダード、ラングラーの価格戦略商品はそれに近い。

奇しくも価格破壊者として認識されているユニクロのジーンズがついに4990円まで値上がりした。
エドウインの日本製品との価格差が縮まっている。

90年代後半~2010年ごろまでのような圧倒的な価格差ではなくなっている。
長い年月を経て、再びジーンズは5000~8000円くらいの価格帯に集束されつつある。

エドウインには自家工場の利点を最大限に生かした「買いやすい価格帯の日本製品」という分野をぜひとも確立してもらいたい。




小売の輪

 北村禎宏さんの昨日のブログは読みごたえがあった。

ワールドの課題、そして今後1
http://www.apalog.com/kitamura/archive/616

ワールドの課題、そして今後2
http://www.apalog.com/kitamura/archive/617

かつて内部におられた人ならではの内容である。

長文なので内容はここでは紹介しない。

この中で「小売の輪」という理論を取り上げておられる。
引用する。

「小売の輪」をご存じだろうか。低コスト、低サービスの新規参入が、既存業者の売上げを奪って成長する。同じ手法で競争する複数プレーヤーが登場し、品揃えやサービスを巡る競争が激化し、高コスト体質になる。やがて、新たに低価格を実現した新規参入プレーヤーが市場を奪い、輪のように小売業の革新が進む。マルカム・P・マクネアが提唱した小売り業態発展を説明する理論だ。

 商店街、百貨店、GMS、SCのような業態にも小売の輪のような輪廻は遅いかかる。あらゆる業態がネットに凌駕されつつある。また、SPAの四半世紀の歴史にユニクロの台頭、GAP、ZARAの黒船第一陣、H&M、フォーエバー21などの第二陣の襲来。ODMを通じてこぞってやっちまった、安かろう似たろう競争。これにも小売の輪をあてはめると様々な示唆がある。

とある。

ワールドに限らず、オンワード樫山、イトキン、ファイブフォックス、三陽商会、TSIホールディングス、現在苦境に陥っている大手総合アパレル各社ももれなくこの「小売の輪」で苦しめられたといえる。

ユニクロの台頭に始まる低価格化。これに対抗するために各社は血眼になって低価格化を推進する。
大手総合アパレルではないが、フランドルだってこれをやって失敗したといえる。イネド・オムに2900円のフリースジャケットが必要だったのかということである。

総合アパレル各社の低価格化は結果的には実に中途半端な低価格化だった。
ユニクロほど安くなく、ユニクロほどの高品質でもなく、無印良品ほどの世界観もなかった。
いわゆる、これまでのブランドの名声を利用しただけの粗悪な廉価版といえるものが多かった。

で、さらに外資グローバルSPAが進出してきたことで、北村氏のいう「ODMを通じてこぞってやっちまった、安かろう似たろう競争」のなれの果てが現在の状況である。

衣料品業界には、ユニクロ悪玉論が根強い。
しかし、「小売の輪」理論に照らし合わせると、低価格の代替品が現れるのはどの業界にも共通した事象であり、衣料品だけがそれを免れたはずもない。

ユニクロが台頭する以前には、イトーヨーカドーやジャスコ(現イオン)、ダイエー、マイカルなどのGMSが低価格衣料品を発売していたし、洋服の青山やアオキなどのロードサイド紳士服チェーンも低価格を武器に成長をしてきた。

他業種で見ると、パソコンもテレビも自動車も携帯電話もDVDデッキも、すべて「小売の輪」で低価格の代替品が登場して爆発的に普及している。

現在ネット通販という業態に希望が寄せられている。
しかし、ネット通販だってすでに低価格品で溢れている。
先日、スナイデルの模倣で逮捕された業者が扱っていた商品の販売価格は1000~1900円で、スナイデルの定価の10分の1程度である。
先日倒産したブルーウェイのジージャンが3600円にまで値引きされてネットで売られているのも見つけたことがある。

そもそも先行企業の夢展望が成長したのは「低価格」を武器にしていた。

すでにネット通販も「小売の輪」によって低価格競争の渦中にあるといえるのではないか。

またGMSも今、「小売の輪」によって苦しめられている。
業界1位のイオンは大幅減収を余儀なくされ、業界2位と3位のイトーヨーカドーとユニーは40~50店の大量閉店を発表している。

衣料品でいえばユニクロをはじめとする低価格SPAに奪われ、日用雑貨・消耗品はダイソーをはじめとする100円均一ショップに奪われた。

「小売りの輪」理論で、個人経営の小規模商店を閉店に追い込んだGMSだったがその輪廻からは逃れることができなかったともいえる。

一方、「小売の輪」に関してはこんな解説もある。

http://www.jmrlsi.co.jp/knowledge/yougo/my04/my0416.html

もちろん、小売の輪の理論にあてはまらない例外もあります。参入する時に必ず低価格でなければならないということではありません。例えば、かつて小売の新業態として登場したコンビニエンスストアは、定価販売、高マージンで参入を果たしています。これは利便性という提供価値が受け入れられた結果と考えられます。
 こうしてみると、小売業態革新は、小売の輪の理論で唱えられている「低コスト・低マージン・低価格を実現する革新的業者の登場により実現する」というだけでなく、「業態が提供する価値の革新性や適合性」という視点も必要であるといえます。

とある。

「ユニクロの低価格に追いつけ追い越せ(結果的には追い越せなかったが)」とやったのが大手をはじめとするアパレル業界の大多数だったが、そうではないという売り方を見せたのが、鎌倉シャツだっただろうし、今年9月に上場したステュディオスだったし、今、すごく一部だけで人気がある短パン社長だったのではないだろうか。
鎌倉シャツの商品は値ごろ感はあるが激安ではない。ステュディオスの扱う日本製品は決して安くはない。筆者の生活レベルでいうなら恐ろしいくらいに高額品である。
短パン社長が展開する「Keisuke Okunoya」ブランドも高額に分類される。(筆者比)

これらは低価格を武器にしたわけでなく、「業態が提供する価値の革新性や適合性」が評価されたと考えるべきだろう。

低価格衣料品に対してやみくもに「けしからん」とか、「ユニクロは悪だ」とか「ユニクロが業界を破壊した」とかいう人は業界内には多い。
しかし、そういう人たちが展開するブランドやショップが今後、売れるようになるとは到底思えない。
なぜなら視点のピントがズレているからだ。

低価格による代替品が登場するのは、衣料品に限らず当たり前のことで、むしろ日本では衣料品の低価格代替品が爆発的に広がるのが遅すぎたくらいである。

視点のピントがズレたままでユニクロを攻撃したところで、効果的な一撃を与えられるはずもない。

それよりはどのように独自化するか、独自化した結果この価格になることをどのように納得させるかに注力すべきだろう。
情緒的ではなく、もう少しロジカルに考えるべきではないか。

無意識に買わせる心理戦略
サイモン・スキャメル=カッツ
イースト・プレス
2014-03-16



製造加工業者のブランド開発が成功しない理由

 産地の製造加工企業が自社オリジナルの製品ブランドを立ち上げる事例が増えているが、実際のところ、ある程度軌道に乗ったブランドは少数で、大多数は失敗している。
それはなぜか。様々な要因があるが、ブランドの組み立て方という点において、産地ブランドが失敗する理由を考えてみる。

自社で製造している生地や、自社の染色・加工技術を生かして、それで製品を作るというのが産地ブランドの特色である。

製品ブランドを組み立てる際には2つの考え方がある。

1、自分(もしくは自分たち)が好む物、自分たちが使用したい物を作る
2、自分たちの好みは関係なく、自社の特色と市場規模を照らし合わせてそこに合致した製品を作る。

という2つである。

どちらが良くてどちらが悪いということはない。
どちらも正しく、ブランドの組み立て方が異なるということだけである。

産地企業のブランドが上手く行かない理由の一つに、この2つを経営者や幹部がごっちゃにしてしまうことにある。

どういうことかというと、たとえば、ハンカチ生地を製造していた阿江ハンカチーフが薄地生地を作る技術を応用してゴスロリ向けの日傘ブランド「ルミエーブル」を立ち上げて軌道に乗せた。

ここは、自分たちの持っている技術と、どこに市場性があるかを念入りにリサーチしてブランドを組み立てた。
社長は男性である。おそらくゴスロリの趣味はない。

市場性があると見込んだ分野に向けてそれに合わせた商品を投入している。
だから成功したといえる。

もし、社長が自分の好みを中途半端に導入していたらおそらく失敗していただろう。
ゴスロリ向けの日傘ブランドなのに社長が「ワシはこういう傘が欲しいから、これも1型製造しよう」などと言って、英国トラッド調のデザインの傘を1型だけ挿し込んだとする。
こうなるとブランドのテイスト自体がブレる。何のブランドなのかがわからなくなってしまう。
テイストがブレたようなブランドは消費者から欲しがられない。

実際に筆者も産地企業の製品作りの会議に参加したことがあるが、レディース向けのエレガンスなアウターを製作すると決定しているのに、年配の男性社長が「ワシはこんなデザイン嫌いだから変更したい」みたいなことを平気で言う。
コンセプトとターゲットに応じた製品デザインを考えねばならないのに、おっさんの好みなんてクソの役にも立たない物を持ちこんでどうするのか。
しかも女性向け商品であるから、おっさんの好みなんて関係ない。どうでも良いのである。

こういうことを平気でやってしまう。
まあ、産地企業に限らず、いわゆるメーカーと呼ばれる企業でさえこういうことがまかり通る場合がある。

それならば最初から「自分たちが使用したい物」というコンセプトでブランド開発をすべきだったのである。

この区別ができない経営者や幹部がそろっているなら、その企業の製品ブランド開発はかなり失敗する確率が高いだろう。

短パン社長として有名な奥ノ谷圭祐社長が企画製造する「Keisuke Okunoya」というメンズカジュアルブランドがある。
SNSでしか注文を受け付けないという無店舗販売ブランドである。

このブランドは、短パン社長が完全に自分の好みしか反映していない。
そういうブランドの組み立て方もある。

自分の好きな商品だけを企画製造したいなら、最初からそうすべきだし、市場性を考えてブランドを組み立てたのなら己らの好みなんて極力排除すべきで、仕事と趣味はきっちりと線引きをするのが常識的な態度である。
そのどちらも徹底できないんだったら、製品ブランド開発なんて止めてしまえば良い。
その方が周りも振り回されなくて幸せだ。

この次に多い失敗理由が「日本製しかアピールポイントがない」という点である。

日本製=高付加価値ではない。
日本製ブランドなんてすでに掃いて捨てるほどある。
日本製というだけではすでに消費者から選ばれるポイントではなくなっている。
日本製+プラスアルファの切り口が必要なのである。

先日、某合同展を主宰する人と雑談をした。
合同展以外に、製造加工業者の開発した日本製ブランドを集めて催事販売するという取り組みも行っている。
その催事販売だが、しばらく前に休止したという。

その理由が、全業者を集めて会議をしたところ、日本製というだけの打ち出ししかないということになり、そこに限界を感じて休止することになったそうだ。

その彼によると、日本国内ではもう日本製というだけではブランドは売れていない。そこにプラスアルファの要素があるブランドが売れている。日本製というだけである程度の価値を見てくれるのは、アセアン地区くらいだろう。それもあと何年もは続かないとのことである。

おそらくアセアン諸国でも「日本製」ということを価値だと感じてくれるのは長くても5年くらいだろう。
それ以降は、今の国内と同じでプラスアルファの要素が求められることになる。

今、ブランド開発に取り組んでいる国内の製造加工業者は、上で述べた点についてもう一度よく考えてみてもらいたい。

当てはまっているならぜひ修正して、ブランド開発に成功してもらいたい。




ファッション業界に取り込まれたジーンズというアイテム

 昨日発売されたカルチャー雑誌「20世紀」のジーンズ特集号に2ページ寄稿した。
ほぼ巻末に掲載されており、内容はジーンズ市場の変遷についてである。

写真77

なぜ、ナショナルブランドと呼ばれたジーンズブランドが一部を除いて凋落したのかについてである。

一つには、有力な卸売り先であるジーンズチェーン店が苦戦になったからである。
主要販路の業績が悪くなればそこに卸しているメーカーの業績も連動する。
三信衣料から始まり、フロムUSAやロードランナー、カジュアルハウス306などの大手が相次いで倒産した。
残った全国チェーン店のライトオン、マックハウス、ジーンズメイトもそろってピーク時よりも売上高を落としている。

もう一つは、ユニクロをはじめとするSPAブランドやワールドやオンワード樫山などそれまでジーンズとは縁のなかったブランドがこぞって自主企画ジーンズを発売したことで、需要が分散化したためである。
これらの自主企画ジーンズの製造を支えたのが、ジーンズブランドのOBたちが続々と立ち上げたOEM・ODM企業である。

2000年ごろに今は亡き、サンエーインターナショナルのメンズブランド「abx」でオリジナルジーンズを買った。
バーゲンで2900円くらいまで値下がりしていたので買ったと記憶している。
当時はストレッチデニム生地はまだ一般的ではなかったから綿100%で、ちょっと細身のシルエットだった。
値段にひかれて買ったわけだが、買ってから後悔した。
なぜなら穿いてみると形が良くなかったからである。おまけに生地もなんだか安物くさい。
その手触りや表面感から類推すると、空紡糸を使った廉価デニム生地だったのではないかと思う。

形が悪かったのは、おそらくジーンズ専用のパターンではなく、通常のスリムパンツのパターンを使用したからではないかと思う。ジーンズブランドのジーンズとはいくら細身とはいえ、著しく形が異なっていた。

今でもときどきあるのだが、通常のパンツのパターンでジーンズを作ってしまうと何とも言えない可笑しな物が出来上がる。
通常のパンツのパターンを引けるからといって、それをジーンズに流用するとちょっと変な形のズボンが出来上がる。

まったくの推測でしかないが、abxのこのジーンズはジーンズの企画製造に長けたOEM・ODM企業を通さずに製造したのではないだろうか。

OEM・ODM企業を通してジーンズを作るという手法が一般的になった現在は、ジーンズブランドとそん色のないジーンズをどんなブランドでも企画製造できるようになった。

かくしてジーンズは様々なブランドに広がったというわけである。

ここからは仮定の話である。

じゃあどうすればジーンズブランドは凋落しなかったのかを空想してみた。
製造ノウハウをきっちりと握りしめていればよかったのではないか。

そうなった場合、各ジーンズブランドが縫製工場、洗い加工場を自社で経営して100%自社工場だけで生産を行うか、協力工場の生産ラインを自社の商品で埋め尽くしてしまうかのどちらかしかない。
協力工場のラインを埋め尽くしてしまうことで他社の商品を受注できなくさせるわけである。

しかし、どちらも現実的に実行することは不可能である。

とくに協力工場のラインを埋め尽くすことは不可能だ。

となると、いずれ製造ラインに一般アパレルが参入してくるのは目に見えている。

結局、遅かれ早かれ、現在と同じ状況下に置かれることになったのではないだろうか。

各ジーンズナショナルブランドが過去の施策を多少変えていたとしても結果はそれほど現在と変わらなかったのではないか。

久しぶりに「ファインボーイズ」の10月号を買ってみた。
真ん中あたりにデニム特集があった。
いろいろなブランドのジーンズが掲載されているが、ナショナルブランドで掲載されているのは「リー」「リーバイス」だけである。
それ以外のジーンズブランドは「ジースターロゥ」「ディーゼル」「APC」「ヌーディージーンズ」くらいだ。

そのほかは「ビューティー&ユース」「アーバンリサーチ」「ビームス」「Rニューボールド」などのセレクトショップかメンズブランドのジーンズである。

こう見ると、それまで閉ざされた特殊アイテムだったジーンズは完全にファッションアイテムとして拡散してしまったといえる。

そして「ファッション」としての扱いが長けたそれらのブランドに、「ファッション」としての扱いが下手だったジーンズナショナルブランドが競り負けるのは当然の帰結だったといえるのかもしれない。

20世紀 No.0002
クレタパブリッシング
2015-09-28


日本ジーンズ物語
杉山 慎策
吉備人出版
2009-02-27


ウェブ通販をやっただけでは売上高は伸びない

 「これからはウェブ販売だ」「これからはオムニチャネルだ」という掛け声をよく耳にする。

実際にウェブ通販の売上高総合計は伸びているから、これに異論はない。
ますますウェブ通販という業態自体は伸びるだろう。

しかし、コンサルタントやアドバイザーが言うのはまだしも、ナンタラ組合のエライさんとかナンタラ協議会のエライさんとかが言うのを聞いていると、どうも「ウェブ通販をやればすべての問題は自動的に解決し、あまり労せずして売上高が伸びる」という風に認識しているように思えてくる。
まあ、筆者特有の邪推かもしれないのだが。(笑)

そのエライさんたちがウェブに堪能だということは聞いたことがないし、そもそもそのエライさんたちはウェブ通販で買い物をしたことがあるのかどうかもあやしいところである。

一昔前に「SPA化すればすべての問題が解決する」と言ってた風潮とあまり変わっていないのではないか。

すでにウェブ通販には大手から小規模・零細まで無数の業者がひしめいている。
実際に筆者にも独立して、一人で各メーカーからの在庫を引き取ってきてウェブで販売している知人がいる。
その彼が展開しているウェブショップだが「当社も含めて新規参入組が楽天で上位に表示されるのは至難の業。上位に表示されないと集客できないし、当然、売上高にもつながらない」という状況である。

超有名ブランドならさしたる販促がなくてもある程度の集客はできるかもしれない(売上高につながるかどうかは別)が、それこそナンタラ組合とかナンタラ協議会みたいな消費者にとってマイナーな集団が思いつきで立ち上げたような通販サイトには、莫大な販促費を使わない限りなかなか集客できない。

それにそこそこ名の通ったウェブ通販業者だって苦戦している。
例えば夢展望。

2013年9月期連結は増収増益だが、
2014年9月期連結は、売上高が65億3900万円(前期比3・3%減)、営業損失7億5100万円、経常損失7億9000万円、当期損失9億800万円の減収赤字転落だった。

2015年から決算月を3月に変更したので、2015年3月期連結は半年間の変則決算だったが、業績は回復していない。

売上高26億9800万円
営業損失5億3600万円
経常損失5億9400万円
当期損失7億400万円

となっており、単純に2倍すると前年よりも減収・赤字幅ともに拡大している。

ちなみに2016年3月期連結の第1四半期は

売上高10億1900万円
営業損失1100万円
経常損失1500万円
当期損失1700万円

となっており、まだ回復傾向にあるとはいえない。

売上高は対前年同期比で約5億5000万円の減収である。

ウェブ通販の先駆けとして知られた企業ですらこの苦戦傾向である。

何の知名度もない新規参入者が無策に飛び込めばどれほど悲惨な状況に陥るかは火を見るより明らかではないか。
すでにウェブ通販はレッドオーシャンであり、決してブルーオーシャンではない。

コンサルタントやアドバイザーがウェブ通販参入を煽るのは自分たちのビジネスを拡大するためである。
集客がキモであることは彼らがもっとも熟知しているはずなので、煽るだけ煽って、具体策を提示することで彼らのビジネスにつなげるという作戦だろう。

しかし、わけもわからずその尻馬に乗っているように見える年配層の業界のエライさんたちは、逆に業界をミスリードするのではないか。
おそらく彼らは集客の困難さなど考えもしていないだろう。

先日、このブログにメールをくれた縫製業者と思しき人がいる。
その人によると、かつて自社でブランドを立ち上げ、楽天に出店したのだそうだ。
だが、売上高がまったく稼げないので1年ほどで撤退したという。

ご本人にはお気の毒だったが、無名の新規参入者なら当然の結果ともいえる。

それほどにウェブ通販での集客は難しい。
集客だけで考えるならリアル店舗を繁華街に出店する方が楽なのではないか。
もちろん、コスト面は度外視しての話である。

例えばJR大阪駅の改札付近の出店すれば、毎日何十万人という人が通る。
その中の少なくとも何百人かは店内を覗いてくれるだろう。買うかどうかは別にして。
ウェブ通販で無名の新規参入者が開店直後から毎日何百人の来訪者を安定的に集めることは限りなく困難である。
わざわざ消費者がその無名の通販サイトに来る理由がないからだ。

またウェブ通販だと集客をしても、間違ったターゲット層だと売上高はゼロである。

以前も紹介したBストアだが、ここは立ち上げて2,3年ほどのウェブ通販専業のカットソーブランドである。

http://b-webstore.jp/

主宰の山口悠太さんによると、初年度はかなりふんだんに広告費を使って集客したが、売上高はほぼゼロに近かったという。
集客したターゲット層と販売していた商品がマッチしなかったからだ。
ピーク時には1日に1000人近く来訪者があったが、売上高はほぼゼロだったというから、リアル店舗の販売よりもシビアである。

リアル店舗での販売なら、話好きのおばちゃんやおっちゃんが、「ねえちゃんが愛想良かったから、とりあえず500円の値下げ品でも買うわ」ということがたまにあるが、ウェブ通販だとそういう人情はゼロである。
欲しい物は買うが要らないものは要らない。それがより顕著となる。

ウェブ通販にはこういう厳しい側面がある。

だから各社は集客に必死になり、販促費を使うのである。
一時期問題となった有名タレントのステルスマーケティング(ステマ)はそういう背景があるからだ。

放っておくとサイトに集客ができない。
それなら多数のファンを抱えるタレントにブログやSNSで紹介してもらえれば、何千人・何万人のタレントのファンはとりあえず来店だけはしてくれるだろうし、タレントが「お気に入りです」とか「使ってめっちゃ良かった」と書けば、そのうちの何割かは購入してくれる。

だから何十万円・何百万円という費用を支払ってでも有名タレントにステマを依頼するのである。

大手がそれほどの投資をしてやっと集客しているのに、無名のポッと出のブランドが何の対策もなしに集客できるほどウェブ通販は甘い世界ではない。

これからは「ウェブ通販だ」「オムニチャネルだ」というのは間違いない。
問題はどうやって集客するかである。集客のできないウェブ通販サイトなんてゴミ屑同然である。

コンサルタントやアドバイザー諸氏はスローガンのぶち上げはもう十分だろうから、そろそろ如何に集客するかを語るべきだろうし、エライさんはウェブ通販をやったからといってすぐさま売上高が伸びるなんて妄想はそろそろ捨て去るべきだ。




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