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幻に終わった「エコファー」への名称変更

最初は奇異に感じていても、慣れてくればそれはそれで良いと思えてくる。
奇異な名称であったり、デザインであったり、というのはそんなものである。

9月から「仮面ライダービルド」が始まったが、今回はあまりデザインに対して反対意見は見られなかった。
しかし、これまで毎年、新ライダーのデザインが発表されると、あまりにも突飛なデザインであるために、反対意見が噴出する。
東映もそれを狙ってわざとそういうデザインにしているのではないかと思う。

番組が始まってしばらくすると、「それはそれなりにイイ」という意見が増え、反対意見はなりをひそめる。
もちろん、頑強なアンチ論者は消えることはないが、主流派ではなくなる。

だいたいの物事はそんなものである。

5年くらい前からフェイクファーに対して「エコファー」という名称が用いられるようになった。
最初はなんだか、落ち着かないなあと思っていたが聞き慣れるとあまり違和感がなくなってきた。
毎年の仮面ライダーと同じである。

ところでこのエコファーという名称は、当方というか、当方が参加したチームの失敗が思い出される。

2010年から3年間、高野口産地を手伝ったことがある。
高野口産地は、フェイクファーの産地である。

通常のフェイクファーは中国製が主で、それは安価だからという理由がある。
これまでの考え方なら、高価なリアルファーに対して、安価な商品を作るために安価なフェイクファーを使う。
高野口のフェイクファーはそういう中国製よりも圧倒的に高額であり、安価な商品作りには適さない。
だからといって、高額品に用いられるかというとそうではない。高額品になるとリアルファーを使用する。

産地側もそれなりに努力はしてきた。
限りなく本物に近い見た目を再現したり、合繊ではなくウールを使用することで本物のような手触りを実現したり、そういう開発を続けてきた。
また、裏に塗るバインダーを工夫することで、固くならないのに毛が抜けにくくもした。

それでもなかなか業界にも消費者にも浸透しにくかった。

それが、動物愛護の風潮もあって、5年くらい前からフェイクファーへの注目が高まった。
そのときから「エコファー」という名称が世界的に用いられるようになった。

高野口産地を手伝ったのは、その直前くらいの時期である。

フェイクファー=安物という図式から脱却するためにどうするかということを会議していて、当方の属したチームのメンバーから「フェイクファーのフェイクという名称にマイナスイメージが強いから名称を変えてみてはどうか?」という提案があった。

「安価な素材はフェイクファー、高野口産地のはそれとは違う〇〇ファー」という打ち出しをしてみてはどうか?

という提案だった。

このメンバーとは現在疎遠になっていて、平素の主義主張にはほとんど当方は賛同できないのだが、ときどきこういう良い提案をすることがある。そこが最大の長所といえる。
このときもその一端を見せた。

そこで、さまざまな名称案が出された。
その中に「エコファー」も含まれていた。

エコファーを含むいくつかの案に集約され、産地側に「どれかを選んでほしい」と言ったところ、産地側は名称変更を却下したのである。
正直、そのとき「事は終わった」と感じた。

産地が却下した理由も理解はできる。

「聞き慣れない名称だから奇異に感じる」
「取引先が戸惑う」
「認知されるまで時間がかかる」

などなどだ。

しかし、外野から見ればその危惧は取るに足りないものだし、何よりもコストゼロでイメージチェンジができてしまう。
デメリットはごくわずかでメリットのほうが大きい。

それから1年後くらいに、欧米ブランドで「エコファー」という言葉が使われ始めた。
初めてそれを見たときに「ほら、見たことか」と思った。

今さら言ったところで時間は巻き戻せない。
決定的瞬間を目の当たりにできたことに満足すべきなのかもしれない。

国内の繊維産地、洋服関係の製造加工業はこれまでのやり方では注文は増えずに製品も売れにくくなっている。
そもそも洋服のブランド自体が従来のやり方では商品が売れにくくなっている。

となると、何かを変えなくては再び売れるようにはならない。
それは製造方法だったり商品のデザインだったり名称だったり何かを変えなくては再び売れるようにはならない。

従来通りのやり方が受け入れられなくなったから売れなくなったのである。
じゃあ、もう一度売れるようになりたければ、「従来通り」を変える必要がある。簡単な理屈である。

ところが、産地も製造加工業もブランドも「従来通り」を変えることを頑なに拒む。
「従来通り」のままで売れることを願っているように見えるが、それは単なるエゴでしかない。

洋装関連のみならず、和装も他の物作りも、伝統工芸も同じように見える。
「俺たちは変わるのは嫌だが、売れるようになりたい」と願っているように見える。

しかし、そんなことが不可能であることは子供でもわかる。
何一つ変えなくても売れるなら、どうして今売れていないのか。
従来通りが支持されていないから、今売れていないのではないか。

商品や製造工程を変えなくても、販促手法や広報宣伝手法を変えれば売れるようになるかもしれない。
それとて、販促手法や広報宣伝手法は変えているのである。

「俺たちは何一つ変わらないが、売れるようになりたい」というのは何とも傲慢すぎるのではないか。

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「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
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オンワード樫山のちょっとちぐはぐな取り組み「THE T.I.E」

 業界のニュースを読んでいると、ちょこちょこわけのわからないネタにぶつかることがある。
媒体側のまとめ方が下手くそな場合と、ネタを発信した企業やブランドの組み立てが極めておかしな場合との2つがある。

先日、企業やブランド側の組み立てが極めておかしいネタを読んだ。

オンワードがEC専売のシャツブランドを始動 「五大陸」がプロデュース

https://www.wwdjapan.com/476309

なのだが、ちょっと見てみよう。

オンワード樫山が10月20日、シャツに特化したEC専売の新ブランド「THE T.I.E」をローンチする。「世界で一番“ワイシャツ”が揃う店」をテーマに、着まわしのきくベーシックなドレスシャツを約500型用意する。同社ブランドの「五大陸」がプロデュースを担当し、価格は6300円から。ビジネスパーソンをターゲットに、自社ECサイト「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET.)」のみでの販売を予定する。

これを読んだ方々はどういう感想を持たれたのだろうか。

正直、当方はちょっとわけがわからないなあという感想しか持たなかった。

まず、新ブランドをオンワード樫山のスーツブランド「五大陸」がプロデュースするという点。
ブランドをブランドがプロデュースというのはちょっと聞いたことがない。個人やそれに近しい少人数グループが展開しているデザイナーズブランドや小規模ブランドがプロデュースをするというのなら、まだわかりやすいが五大陸のような大手ブランドが新ブランドをプロデュースというのはちょっとピンとこない。

プロデュースというからには、個人や少数グループにさせるべきで、大手ブランドのプロデュースというのは単なる言葉遊びではないかと思う。

それなら、もっとわかりやすく、五大陸の派生ブランドとか兄弟ブランドとかという位置づけにした方がよかったのではないか。

それに、そもそも「五大陸プロデュース」が注目を集めるかというと、そこも疑問だ。はっきり言って、メンズスーツブランドの中では極めて知名度が低く、存在感がない。きっと10代・20代の消費者ならブランド名も知らないだろう。

以前に、小島健輔さんが「五大陸の知名度が低下している」という内容のブログを書かれていたが、まさしくその通りで、47歳たる当方だってスーツを買うときに五大陸は選択肢に入れていない。というより、平素暮らすうえで、五大陸のブランド名なんて思い出すこともない。まだレナウンと合併させられたダーバンの方が知名度が高いし存在感もあるのではないかと思う。

つぎに疑問なのが、新ブランドのブランド名だ。
シャツ専門のブランドなのに、なぜブランド名が「THE T.I.E」なのか?これではまるでネクタイブランドではないか。ネクタイをメインにしながらシャツも売るというならわかるが、このブランドはシャツブランドであり、ネクタイも扱うのかもしれないが、それはあくまで従属的だ。メインはシャツなのだから、もっとシャツとわかるブランド名にすべきではないか。

このあたりの組み立てははっきり言って、わけがわからないし、消費者だって理解しづらいだろう。

このことに疑問を先んじて呈していた記事がある。

https://note.mu/fukaji/n/nff7709a31acd?creator_urlname=fukaji

概ねその疑問には賛同である。

ただ、価格のことはちょっとだけ異論もある。

ツープライスとは競合するつもりがないのだと思う。ツープライスのシャツは2900円と3900円で、さすがにそこは競合とはしていないのだろうと思う。ただ、6300円という価格設定はどうなのかなあという点は同感である。

5000円の鎌倉シャツがあり、1300円高いというのは果たしてどうなのか、なかなか消費者には選んでもらえないのではないかと思う。
一部過剰に報道されているきらいがあるとはいえ、鎌倉シャツは5000円というリーズナブル価格だけでなく、自社縫製工場もあり、物作りの背景もしっかりと伝えられており、多くの消費者にも認知されている。その部分が付加価値となっている。

果たして、そういう付加価値をオンワード樫山が作れるのだろうか?というところが極めて疑問でしかない。
1300円高いということは、鎌倉シャツを越える付加価値を作る必要があるということで、それが容易く実現できるとは思えない。
かなり難しい作業になるが、オンワード樫山はそのことを理解していないのではないか。

オンワードお得意の百貨店を含む商業施設内への出店なら偶然通りがかったお客に見つけられて認知してもらえる可能性があるが、今回はECのみでの販売となる。
EC市場の成長率を見て、続々と参入しているが、ポっと出のブランドなんてネットで検索してくれる人はほとんどいない。ネットショップが何百万店とある中でどうしてわざわざ知名度も注目度もない新ブランドが検索してもらえると思うのだろうか。不思議でならない。

そのことを考慮しての「五大陸プロデュース」なのかもしれないが、残念ながら五大陸もそんなに注目されていないから、ネットで検索されることは極めて稀だろう。この1年で五大陸をネットで検索した人ってどれだけいますか?

となると、そこにたどり着く人はかなり少ないということになる。

ECはどれだけ人をネットで集められるかがカギとなるが、オンワードという名前でも五大陸という名前でもそれだけではほとんど効果がないことを知るべきである。
他方、ユニクロやジーユー、ZOZOTOWNなどはますますネットでの集客に力を入れて新たな機能を持たせている。EC草創期なら「単に開きましたよ。昔の大手ブランドですよ」というやり方でも良いが、すでに成熟期に差し掛かっていて、ネットでの戦略は極めて高度化している。その中に新規参入するということは、先行する大手と同等以上の大規模戦略が不可欠で、それがなければネットの海に埋没してしまうだけである。

おそらくはそれなりの対策は考えているのだろうとは思うが、これまでの大手アパレルの常識は一切通用しない世界だということを再認識して取り組まねば、確実に失敗に終わってしまう。

再度、組み立てから見直すことをお勧めしたい。

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TGC・神戸コレの「販促効果」と「地域産業振興」を考えてみる

 畏友の剱英雄さんが、東京ガールズコレクション(TGC)の地域産業振興と情報発信について書いておられる。

発信力は消費に?
http://blog.goo.ne.jp/souhaits225/e/b021cbf519d2c36ada95734217cb8bcf


これは東洋経済オンラインの記事を下敷きに書かれており、たしかに東京ガールズコレクションという興行イベントは大成功しているといえる。
興行イベントという点では成功したとしかいえない。

その一方で、ブランドの販促や地方創生、地域産業振興についてはどうか?というと、これは正直なところ疑問しかない。

まず、ブランドへの販促効果という観点から見てみると、TGCに出品すれば必ず売れるとは限らない。これは事実である。
長年出品し続けているブランドもあるから、効果があるブランドもあるが、その一方で効果のないブランドもある。

例えば、2009年~2010年に出品したライトオンである。
ライトオンはこの時期、減収し続けていた。
ライトオンが増収に転じたのは2015年度からなので、販促効果はなかったということになる。

また、某セレクトショップチェーンの役員は、もともとTGCが自社ブランドへの販促になるとは考えていなかったが、当時のTGCを運営していたエフワンメディアがうるさいから、一度だけ付き合って出品したと話している。

TGCと組んだ、この形態の元祖といえる神戸コレクションも同じだと見ている。

今年9月の神戸コレクションにもビッキー、ディアプリンセスが出品している。
ビッキーは以前、傘下ブランドのクイーンズコートを出品していたこともある。
ビッキー、ディアプリンセスの2ブランドは長年出品し続けている。

売上高は神戸エレガンスブランドが過ぎてから下降しているが、出品し続けているということは、単に売上高だけではない何らかの効果があると上層部は考えているのだろう。
しかし、売上高だけで見ると、販促効果があるとはいえないのではないか。

これは私見だが、TGCと神戸コレの販促効果はその反響がある顧客層が限定されていて、そこに親和性の高いブランドは何らかの効果があるものの、ライトオンのようにまったく親和性のないブランドはほとんど効果がないと見るのがもっとも適切なのではないかと思う。

今後は、やみくもにターゲット層との親和性も考えずに「出品する」というブランドは減るだろう。
だからというわけでもないが、神戸コレクションの出品ブランドのラインナップは随分と固定化されてきたように見える。

今度は、地方創生や地域産業振興という点については、剱さんのブログの通りではないかと思う。

TGC、神戸コレクションの地方興行があるが、もちろん経済効果はゼロではない。
何千人かの人間が来るので、交通機関や飲食店、コンビニなどにはそれなりの売上高が期間中はある。
また、その土地のファッションビルなどの売上高も期間中は少し増えるかもしれない。

が、地域のアパレルメーカーやアパレルブランド、デザイナーズブランドが潤うかというとそれはちょっと難しい。

なぜなら、現在の国内のアパレル企業、ブランドの8割がたは東京本社・東京本部だからだ。
残りは京阪神、名古屋・岐阜、岡山・広島、九州あたりにパラパラと点在しているに過ぎない。

TGCや神戸コレの地方興行に登場するブランドのほとんどは、当然、東京本社ブランドばかりである。
まずもって九州に拠点を置くブランドは登場しない。

名古屋・岐阜、岡山・広島のブランドも登場しない。

パラっと京阪神のブランドが登場するくらいである。

地方自治体が町おこし、地域おこしで「ファッション」を選ぶことがあるが、何故それを選ぶのかが理解できない。

今挙げた地域以外にアパレル企業、ファッション企業が拠点を持つ地方はない。
もっと極端にいえば、東京以外ないに等しい状況である。

じゃあ、そこでいくら「ファッション産業を振興する」といったって、東京のブランドを誘致するのが関の山であり、それは果たして「地域産業振興」といえるのだろうか?

TGC、神戸コレの地方興行ももちろん同様で、東京ブランドを呼んで、東京のモデルを使うことが地域産業振興・地方創生になるのだろうか?

当方には東京の産業振興にしか見えないのだが。

東京で開催する本物のTGC、この手のイベントの元祖として神戸で開催する神戸コレクションは、客入りが見込める限りは続けるべき興行イベントだと思うが、これらの地方興行は何の効果があるのだろうか。

また、TGC、神戸コレクションを模倣した地方イベントもいくつかある。

これとても、出品ブランドは東京ブランドで、ランウェイを歩くのは東京タレントなので、一体これを地方でやる意味があるのか疑問である。

文化祭的にやるのは構わないと思うが、地方創生や地域産業振興を掲げるのは無理があるのではないかと思う。

TGC、神戸コレと同様の興行イベントを地方で開催し、それを地方創生や地域産業振興につなげるのであれば、地方が地元でアパレル企業やアパレルブランドを育成しなくてはならない。

しかし、それは至難の業だろう。

もともと京阪神には多くの大手アパレル、大手ブランドの拠点があった。
それがこの20年間で激減し、ほとんどが東京に移った。これを今さら、逆回転させることは不可能であり、京阪神にも他地方にも小規模零細ブランドは現存するものの、出品料がン百万円と噂されるTGCや神戸コレの地方興行に出品させることは財務的に不可能である。

またTGC、神戸コレの顧客層は広告代理店でいうところのF1層で、しかも好むテイストも限定されており、ナチュラル系・カジュアル系・トラッド系などが多い地方の小規模零細ブランドはまったく親和性がなく、ライトオンのように販促効果がゼロになる可能性が極めて高い。

それが業界の現状であり、この構図は今後も変わらないだろう。

東京開催のTGC、神戸開催の神戸コレクションは興行イベントとしては否定すべき要素がないが、販促効果は限定的で、地方興行については地域産業振興にはほとんど効果がないと考えるのがもっとも妥当ではないか。

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鎌倉シャツのビジネスモデルが秀逸なポイントを考えてみた
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オールユアーズのクラウドファンディング第3弾商品とその売り方について

 先日、新進気鋭のカジュアルアパレル、オールユアーズの原康人さんにお会いしたのは、新商品の内容を尋ねるためだった。

オールユアーズはこれまで機能性素材を使用しながらも、よくある「産地とのコラボ」や「製造加工業とのコラボ」を打ち出してこなかったが、昨日から発売になった新商品は、産地とのコラボを打ち出している。

そして、オールユアーズとしては今後は様々な産地とのコラボを手掛けたいとのことで、希望する産地は連絡してみてはどうか?

今回は「身にまとう毛布」というキャッチフレーズで、いわゆる「毛布」の技術を利用した生地をカーディガン、パーカ、ダッフルコートの3型に仕上げている。

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そして、その「毛布」の技術を応用した生地を加工しているのが、毛布産地として有名?な大阪府の泉大津である。

ほんの少しでも産地をかじったことのある人なら泉大津がタオル、毛織、毛布、ニットなどの産地であることは知っているが、産地なんて無縁のファッション畑の人ならそんなことは全然知らないだろう。

泉大津に限らず、日本の各産地というのは、産地の中の人が思っているよりも知名度が低い。
それを読み違えると、ビジネスに多大な支障をきたすので、できるだけ客観的に自身を判断してもらいたい。

さて、今回の生地は、いわゆるニット(編地)で、製造地は和歌山だ。
表が綿、裏にウールが出るようになったプレーティング編みである。
プレーティング編みとは何ぞやというと、表と裏で別の素材が出てくる編地である。
今回なら表は綿で裏はウールである。

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(上が表、下が裏面)

ファッションブロガーMB氏がグローバルワークの吸水速乾Tシャツを絶賛していたことがあるが、あれもプレーティング編みで、表地は綿で裏面はポリエステルだった。

プレーティング編みというのはそういう技術である。

この和歌山産地で編んだ生地を、泉大津の藤井若宮製絨で起毛加工を施し、毛布状に仕上げている。
藤井若宮製絨は染色・整理加工などを手掛ける泉大津の老舗業者で、かつて一度2006年ごろに民事再生法を申請したが、今でも存続できているのは何よりといえる。

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さて、この毛布生地を使ったトップス3型がキャンプファイヤーのクラウドファンディングに出品されている。

https://camp-fire.jp/projects/view/42749

9月4日に出品されたばかりなのに、目標金額100万円をたった1日でほとんど到達している。
9月5日の朝時点ですでに86万1000円を集めているから驚きである。

オールユアーズは連続24か月クラウドファンディングというプロジェクトを仕掛けており、今回の毛布は第3弾となる。
第1弾、第2弾ともに目標金額を達成したが、とくに第2弾は集めた金額がとてつもなく大きかった。

8月末までに2か月間で集めた金額はなんと1800万円強で、クラウドファンディング史上ファッション分野での集めた金額の最大額となっている。

https://camp-fire.jp/projects/view/34653

今回の第3弾の金額の集まり具合も前回の勢いをそのまま引き継いでいるといえる。

第2弾と比べると話題になることが少なかった第1弾の「色落ちしないブラックパンツ」だが、それでも目標金額は優に達成している。

この調子が続くなら、12商品すべてで目標金額を達成することができそうだ。

原さんとの雑談は少し前のブログに一部を利用した。

アパレルブランドの「小売店向け展示会」は意味がなくなりつつある
http://minamimitsuhiro.info/archives/4827762.html

である。

ここで言われているように、小売店向け展示会を開催しても、販売不振でビビっている小売店はほとんどオーダーを出さない。
ならば、展示会を廃止して新商品はクラウドファンディングで発表してしまえということで、クラウドファンディングで売れていれば、ビビっている小売店も安心してオーダーしてくるからである。

何とも情けない話ではあるが。

さて、オールユアーズの商品が売れている要因は何かというと、それは「わかりやすさ」である。

クラウドファンディングに登場した商品を例に出そう。

第1弾は「色落ちしないブラックパンツ」
第2弾は「着心地が良くてイージーケアなセットアップ」

である。

種明かしをすると、二つの商品で使用されている生地はまったく同じである。
組成はポリエステル100%。

この純ポリエステルの生地には、様々な機能がある。
まず、吸水速乾、そして軽量、ストレッチ性である。
この吸水速乾機能だけをフィーチャーして「ファストパス」という商品群をオールユアーズはすでに発売している。

ファストパスのキャッチフレーズは「真冬でも部屋干し3時間で乾燥する」であり、その他の軽量やらストレッチ性は一切謳っていない。

軽量はポリエステル本来の機能性で、実はそんなに特筆すべき機能ではない。
ポリエステルは基本的に軽いのである。
またストレッチ性は、現在では着心地のためにはマストな機能で特別なことはない。

それでもこれを謳おうと思えば謳えるが、あえて「吸水速乾」一つに絞った。

今度は、「色落ちしないブラックパンツ」を見てみよう。
素材は全くファストパスと同じだ。だから吸水速乾性も軽量性もストレッチ性もある。

しかし、それは全く謳わない。

そのとき謳っているのは「色落ちしない」ということだけである。
綿主体のブラックパンツは、かならず色落ちする。
デニムみたいに白っぽく色落ちするのではなく、綿主体のカツラギやサテン素材は、赤褐色に色落ちする。ブラックのはずが少しチョコレートっぽい茶色になる。
こうなったら、そのズボンは寿命だといえる。

ところが、ポリエステルはこの商品に使われている素材に限らず、基本的にほとんど色落ちしない。

だから、それのみを謳っている。
実は何の特別な機能でもなく、ポリエステルが本来持っている機能にすぎない。

よくある産地ブランドやファクトリーブランド、モノづくり神話系ブランドだと、

「ドコソコで栽培された綿花を紡いで作ったナンタラという糸を使い、〇〇産地で織りあげた(編んだ)〇〇という生地に、××という染色を施し、さらに▽▽という加工も施して〇〇な風合いに仕上げました」

とか

「この商品には、吸水速乾だけでなく、消臭、防汚、撥水、ストレッチ性、軽量性、防シワ、UVカットなど様々な機能性がてんこ盛りです」

とか

そういう打ち出しが多い。
多いというか99%のブランドがこれだ。

しかし、そんなものは実は消費者にはほとんど響いていない。
響いていたら産地ブランドやファクトリーブランド、モノづくり神話系ブランドはもっと売れているだろう。

「ナンタラ織りシャツ」とか「ナンタラ編みニット」がもっと売れているはずだ。

形態安定で爆発的に売れたワイシャツはその後、機能性を毎年1つずつ付加していき、最終的には7つくらいの機能性(防臭、防汚、UVカット、ビタミンC、マイナスイオンなど)を持っていたが、今、店頭に並んでいるワイシャツの多くは形態安定のみがほとんどで、あってもそこに防臭か防汚が付けられているだけで、機能性をてんこ盛りにしてもそんなものは何のセールスポイントにもならないことが証明されている。

製造工程の詳細すぎる説明も、てんこ盛りの機能性も販促には実際のところほとんど必要なくて、わかりやすい切り口が1つだけあれば良いのである。

もし、他のアパレルがオールユアーズに見習う部分があるとするなら、そこである。

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業界の常識は、マス層には知られていないと考えて発信すべき

 先日、ウェブを眺めていたら、しまむらの「洗える浴衣」が話題になっていた。
そもそも浴衣は洗濯ができる衣類なので一体何を言っているのかと思ってしまう。

しまむらの“洗濯機で洗える”浴衣、業界では当たり前の事をアピールポイントにしたのがエライ!
https://togetter.com/li/1126096

興味のある人は読んでみてもらいたい。

和服に詳しい人、和服を愛用している人なら浴衣が洗濯できることは常識である。
和服に詳しくない筆者でもその程度のことは知っている。

特殊な生地で作られている一部の例外を除いて、基本的に浴衣は綿布で作られてる。
綿布は洗濯が可能である。
故に浴衣は洗濯できる。

多少なりとも生地のことを知っていれば、簡単に導き出せる結論である。

しまむら以外の浴衣も洗濯できる。

浴衣は洗濯できるというこんな常識的なこともマス層は知らないということになり、それをわざわざ、さもすごいことかのようにアピールしたしまむらはやはり慧眼だったというべきだろう。

また、先日、こんなニュースも報道された。

10年前に買ったスニーカー「未使用なのに底が剥がれた」転倒あいつぐ 消費者庁
http://sp.hazardlab.jp/know/topics/detail/2/0/20915.html

これも何を言っているのかと思う。
10年間も放置されていたスニーカーなんて底が加水分解を起こしてボロボロになるに決まっている。
スニーカーの底が永久不変の物だと考えている方がアホである。

これだって、ファッションに興味のある人や靴に少し知識のある人にとっては常識中の常識だ。

記事中には

インターネット調査では、消費者の56.5%がこの事実を「知らなかった」と答えている。

との一文があるが、半数以上の人間はスニーカーの底が加水分解を起こすことを知らないということになる。

ABCマートの店頭で今日、靴を買って帰った客の半分以上は加水分解を知らないということになる。

この驚愕の事実を知っていれば、販売員の接客も変わるのではないかと思う。

浴衣にせよ、加水分解にせよ、愛好家にとっては「常識中の常識」でも、マス層は知らないということで、逆にいえば、マス層に売りたければ「当たり前」のことでもアピールして説明する必要があるということになる。

以前にも、スラックスという単語を知らない人もいるということを書いた。
下半身に着用する衣服をボトムというが、その中でズボンがある。
ズボン、最近ではパンツとも呼ぶ。また英語を元にした呼び名はトラウザーである。

スーツのズボンのような形をしたものをスラックスと呼ぶが、ファッションが好きな人なら、スラックスとはどんなものかをたちどころにイメージできる。
しかし、スラックスとは何かがわからない人もマス層には存在するということで、そういう人にいくら「スラックスが大安売り」なんて連呼しても意味がないということである。
なにせ、スラックスの意味がわからないのだから。

こう考えると、和服、靴のみならず、洋服についてもマス層は相当に知識がないと思って、接客に当たるべきだろう。

業界人、愛好家、ファンの間では初歩の初歩であるようなことさえ、マス層の多くは知らないということで、マス層に売りたければ、初歩の初歩のことを詳細に説明する必要があるということになる。

さて、普段身に付ける洋服でさえ、こうなのだから、繊維製品の製造加工業についてのことはどれほど初歩の初歩までを説明しなくてはならないかが想像できるのではないか。

現在、ウェブが普及し、製造加工業者の自己発信も簡単にできるようになった。
ウェブを使って自己の情報発信を行う製造加工業者も増えた。

しかし、その多くは業界人、愛好家しかわからないような書き方をしており、マス層には伝わっていない。

「うちはド素人のマス層なんぞに発信する必要はない」と思っているなら今のままでも良いが、そうではなく、広くド素人にも知ってもらいたいと思っているなら、業界にとって初歩の初歩のことまで詳細に説明する必要性がある。

あまり、基本的なことを書きすぎると、「同業者に笑われる」と言って嫌悪感を示す製造加工業者がいる。
だが、取引先は同業者なのか?自社の客は同業者なのか?
冷静に考えてみて欲しい。

同業者にいくら褒められても売れなければ意味はない。そんなカネにもならない称賛なんぞ無用の長物だ。
逆に同業者にいくらバカにされようが、自社の製品なりサービスなりが売れればそれが正解だ。

しまむらの浴衣、スニーカーの加水分解の記事を見ても、業界の常識は世間の非常識だということがわかる。

マス層に広く発信したい製造加工業者はもう一度発信の内容を見直してみる必要がある。

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「吸水速乾」を「部屋干し速乾」と言い換えると新しい需要が生まれた

 そろそろ暑くなってきた。嫌な季節が始まった。
筆者は暑さが苦手である。できれば夏がない方が良い。
そうはいっても夏はやってくるから、我慢するしかない。

暑くなると、各社はこぞって「吸水速乾機能」を持った洋服を発売するが、個人的にはあまりこの機能が夏に必要だとは思っていない。

というのは、以前にも書いたが、吸水速乾機能を持った肌着を着用するとたしかに汗は吸うが、逆に吸い過ぎて肌着の上に着たシャツが汗でびしょ濡れになってしまうからだ。
吸水速乾肌着を着るなら、上に着るシャツもジャケットもすべて吸水速乾製品でそろえないと意味が無い。

しかし、吸水速乾機能は重宝であることは間違いない。
洗濯をすると乾くのが早い。

ありふれた機能に対して、別の角度からの見方を与えると、それは新しい商品になり、新しい需要が生まれる。
ありふれた吸水速乾機能でも、「洗濯をしたら早く乾きます」という売り方なら新しい需要が生まれる。

こういう売り方が上手いと思うのは、「ディーパーズウェア」ブランドを展開するオールユアーズである。

それについて、ウェブメディアのインディペンドに先日寄稿した。

「必要」に気づき、「形(かたち)」にする “ALL YOURS”
https://independ.tokyo/?p=3091

ブランド立ち上げ時から親しくさせてもらっているが、このブランドはそういう「売り方」が上手い。
このブランドのヒット商品に速乾の「ファストパス」というラインがある。

キャッチコピーは

「真冬に部屋干ししても3時間で乾きます」

というものである。

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(ファストパスのツナギ)

真冬の部屋干しにそれほどの需要があるのかと疑問を感じたが、都心で独り暮らしをする人や、二人暮らしの共働き夫婦などは、洗濯物は部屋干しすることが多いから、ありがたい機能ということになる。

祖父母や大きくなった子供と同居していれば、洗濯を外に干しても雨が降ったり日が暮れりすれば、誰かが取り入れてくれる。
しかし、一人暮らしや共働き夫婦はそうはいかないから、必然的ににわか雨なんかを警戒するなら部屋干しすることが増える。

真夏だと室温も高いから部屋干しでも5時間くらいすれば洗濯物は乾くが、真冬はそうはいかない。
たまに自分も冬の雨の日に部屋干しするが、なかなか乾かない。

そういうときに、この機能は便利だからヒット商品になっているという。

じゃあ、わざわざ洗濯用に新素材を開発したのかというとそうではない。
実は、これは既存の吸水速乾素材なのである。

「吸水速乾素材ですよ」というと夏場しか売れないが、「部屋干し用の速乾素材ですよ」というと一年中売れる。

現在のアパレル業界に欠けているのはこの「視点の転換」「売り方の工夫」だろう。

多くのブランドは固定概念に凝り固まっているから、視点の転換なんてできずにいる。
「売り方の工夫」ということになると、規模やシステムを無視してユニクロに価格追随するか、伝わらない広告をファッション雑誌に掲載するか、どこぞのブランドみたいに低価格な日本製を打ち出すか、くらいしかない。

あとは、マニア・ニッチ層に向けた「物作りの取り組み」を過度にクローズアップするかである。

そしてそのどれもが効果が出ていない。

この4つの手法はありきたりになっており、ちょっとやそっとでは消費者の注意を喚起できない。
それはやっているブランド側が痛感しているだろう。
痛感していないとしたらそれはブランドの構成員と経営者の認識力が著しく低いというしかない。

国内のアパレルブランドの場合、粗悪品は除いて、低価格品とはいえそれなりの品質になってしまっているのだから、ミクロな縫製仕様を過度にアピールしてもよほどのマニア以外には響かない。

ありきたりな既存の「吸水速乾素材」を、新たな切り口で「部屋干し専用素材」にするような発想力、売り方を身に付ける必要があるのではないか。

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製造加工業者は「物作り」と同じ熱量を「販促」にも費やせ

 下請け受注の減少から、自社オリジナル製品の開発を始めた製造加工業者は少なくない。
今では産地企業のブランドも珍しくない。

しかし、その多くはなかなかうまく離陸しない。

その理由は大雑把にいって2つある。

1、商品自体のデザインが良くない
2、商品は良いが売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くない

この2つある。

1が起きる背景には、デザインという「形のない物」に金を払いたくないという製造加工業者特有のメンタリティが働くことがある。
デザイナーへの支払いをケチるあまりに、社内や身内の素人にデザインさせてしまうことがある。
それが成功する場合もあるが、多くの場合は素人は素人であり、売り物のレベルには達していない。

物そのものが良くないのだから、売れなくて当然である。

問題は2の場合だ。
物そのものはそこそこの出来であるのに、売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くないため、期待したほど売れないという状況だ。
最近は、製造加工業のオリジナル企画も向上しているので、こちらの場合の方が多くなっている印象がある。

例えば、ラグジュアリーブランド「〇〇」と同じ素材を使って、それよりも形状も工夫したという商品がある。
しかし、ラグジュアリーブランド「〇〇」ほどは当然売れない。
なぜなら、売り方・見せ方・伝え方・パッケージのレベルが全く異なるからだ。

先日、ある業者から新ブランドについての相談を受けた。
その際、一人の同席者がおられた。

商品自体の出来は及第点を越えていた。
だから「物」だけで勝負できるなら、そこそこの売れ行きが十分に期待できる。

そこで、同席者がこう指摘した。

ハイクラスブランドとの競合を目指すなら、例えばお買い上げいただいたときの「箱」と「ショッパー」は必要ですし、値札や下げ札のデザインにも工夫を凝らす必要があります。ハイクラスブランドはそれらも含めて顧客から支持されているのです。

この指摘は納得である。
同席者は12歳くらい年下と若いが、最先端ブランドで展示会やブランディング、ウェブ、印刷物などのディレクションを行っておられ、その指摘はさすがというほかない。

若くて、いわゆる「クリエイションガー」とだけ無責任に叫んでいるような輩とは一線を画している。

日本人には「ボロは着てても心は錦」を美徳とする部分がある。
小銭にシビアな関西人や地方民はとくにそれをよしとする。

パッケージや見せ方、伝え方などは些末な問題で、「物」そのものの品質やらデザインが良ければ、それでいいじゃないかと考える人は日本人には多い。

「ボロいけど安くて美味い飲食店」が支持されるのもそういう理由がある。

これは一面、たしかにそうなのだが、食品にせよ、ファッション用品にせよ「物」そのものの良し悪しだけで判断できる消費者というのは実際はそれほど多くない。
やっぱり、店構えや箱、ショッパー、ディスプレイ、販売員の態度、ステイタス性などにその判断は大きく左右される。

話は少しそれるが、昨今の店頭の同質化問題の一因は、プロであるバイヤーやマーチャンダイザーまでもが、「物」ではなく、店構えやディスプレイ、ステイタス性で商品を判断してしまっている点にあり、プロの素人化が進んでいるともいえる。

「外装ばかり立派で中身は大したことない」という批判は間違ってはいないが、逆にいえば、「大したこともない商品を高値で売ってそれで消費者を納得させられる」というのは大した手腕だともいえる。
それは単に、小手先のキャッチコピーを付けたり、きれいな外国人モデルを使った広告を出稿するだけでは到底なしえないことである。

しかし、商品自体の出来が良いなら、見せ方・売り方・伝え方・パッケージを工夫すれば売れる可能性が格段に高まる。それをやらないことは非常にもったいない。

しかも昨今は低価格ブランドでも商品自体のデザインやクオリティは水準点に達している。
一昔前のように「安かろう悪かろう」という商品は分野を問わず、かなり減っており、「安かろうそこそこ良かろう」が標準といえる。

そうなると、「物」自体の優劣はそれほどなくなってくるから、見せ方・売り方・パッケージなどの工夫が勝負を左右することになる。

時々、お会いするセメントプロデュースデザインの金谷勉社長から、以前こんな話を聞いた。
大阪の石鹸メーカーをブランディングした際、それまで普通の長方形の石鹸を作っていた地味なメーカーだったが、これを五角形に形状を変更し、パッケージをリニューアルしたところ、かなり売り上げが増え百貨店などからもオファーがあったという。
石鹸の成分そのものは変わっていないにもかかわらずである。

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http://cocoon-soap.com/index.html

製造加工業者はどうしても「作ること」を重視し、それの工夫と改良に邁進する特性があるが、それと同等の熱量を見せ方・売り方・伝え方・パッケージ作りに振り分ける必要がある。
「ボロは着てても心は錦」ではなく、心が錦なら着飾るべきなのである。




陳腐化した「日本製」というキーワード

 販促ワードとしての「日本製」は陳腐化したと感じる。

ワールドはTHE SHOP TKで「新潟ニット」「長崎シャツ」などを打ち出している。
価格は5500円くらいとなっている。

新潟は五泉というニットの産地があるが、新潟全体がニットの産地ではないから、ニットに詳しい人からすると何とも微妙なネーミングといえる。

新潟ニット

高野口のフェイクファーを和歌山フェイクファーと呼び直すような感じである。

しかし、まあ、わからないではない。

長崎シャツはちょっとわからない。
長崎ちゃんぽんの方がはるかに有名だろう。

長崎シャツ

九州にはシャツの縫製工場が多いから、その背景もあって長崎の工場に決めたのだろうと推測される。
しかし、ウェブサイトに書かれた文言はちょっとわかりにくい。

「220年の歴史、
播州織で仕立てた
長崎シャツ」

と書かれてあり、産地に詳しくない人からすると「播州なのか長崎なのかよくわからない」と感じるのではないか。
それならもっとシンプルに播州織シャツにでもしたほうがわかりやすいのではないか。

さらにサイトには、こうも書かれてある。

そのこだわりを込めた生地は海を渡り、
長崎の工場へと届けられ、
服へと生まれ変わる。

ちょっと大げさすぎないだろうか。
通常、日本語で「海を渡り」といった場合は、海外へ行くことを指す。
日本の四方が海だからだ。

たしかに、播州と長崎の間には海はある。
瀬戸内海と関門海峡だ。
しかし「海を渡る」というにはちょっと狭すぎないか。
せめて日本海くらいは渡ってもらいたい、と思うのは筆者がひねくれているからではないだろう。

まあ、それはさておき。

この業態はおもにショッピングセンターとファッションビルへのテナント出店である。
価格帯は低価格から中価格帯。
ユニクロとほぼ同等か、それに1000円~2000円プラスしたのが中心価格帯になる。

そういう価格帯のブランドまでが「日本製」を打ち出しているのである。
なぜ打ち出すかというとそれが付加価値を高めたり、消費者を動かしてくれるのではないか、とブランド側が考えるからだ。

しかし、そういう価格帯のブランドまでが「日本製」を使うということは、「日本製」という言葉が如何に陳腐化してしまったかということの証明でもある。

だが、これは百歩譲ってもまだ日本製をそれなりに重要視しているといえるが、コムサイズムの打ち出しは最早、日本製を重要視しているとはいえない。

「コムサイズム」、日本の伝統技を海外工場でも
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14922660U7A400C1TI5000/

アパレル大手のファイブフォックス(東京・渋谷)はショッピングセンター向けブランド「コムサイズム」で、国内の伝統技を取り入れた商品群を発売した。職人の技術や伝統的なデザインなどを海外の協力工場に指導し、大量生産して値ごろ感を出す。

とのことだが、言葉もない。

それは単なる無償での海外への技術供与ではないか。
海外工場へ技術を流出させているだけのことではないか。

また、「職人の技術や伝統的なデザイン」というが、製造地は海外工場なわけで、そこに何の付加価値があるのだろうか。
これに付加価値があると考えた人がいるということなのだが、その思考回路はまったく理解ができない。

そもそも、数あるコムサシリーズの中で、コムサイズムは大型スーパー向けに開発された低価格ラインだった。
90年代後半に一大ブームを巻き起こしたユニクロへの対抗策だともっぱら噂になった。

たしかに当初はユニクロとほぼ同価格で、デザイン性はイズムの方が高かったからバーゲン時にはけっこうな人気があった。

けれどもそこから10年、15年が経過すると、価格もユニクロよりも高くなったし、見た目のデザイン以外での打ち出しがそれほどなく、機能性や有名デザイナーとのコラボなどを仕掛けるユニクロとはずいぶんと差ができてしまった。
感じ方は人それぞれだが、筆者個人は現在の商業施設でコムサイズムの存在感をほとんど感じない。
それほどに存在感がなくなってしまった。

だから、起爆剤に「日本製」が使いたかったのだろうと推測する。
しかし、本当の日本製(国内で生産した物)を扱うと店頭販売価格がさらに上がる。
そこで、それを海外工場で作らせることで店頭販売価格を抑えようとしたのだろう。

冷静に考えてもらいたいのだが、コムサには「コムサ・デ・モード」「コムサ・コレクション」などの高価格ラインがある。その両ラインでも「日本製」は扱われている。

そうなると、そちらとのすみわけが難しくなる。

さらにいうと、イズムの海外製の日本製は矛盾に陥ってしまう。

イズムの低価格を「日本の職人技」だとすると、本体の「日本製」の高価格は何なのか?ということになる。

一方、イズムの低価格はあくまでも海外製だとすると、じゃあ、それは単なる海外製でほかの海外製品と同一なんですね、ということになる。

違わないか?

こういう事例を見るにつけても、「日本製」ブームは終了したと感じる。

イズムのような低価格ブランドまでが、製造地は別として「日本製」「日本の職人技」を販促のキーワードにするということが、「日本製」ということに価値がなくなりつつあるということになる。

オッサンまでがスキニーパンツを穿くようになったら、スキニーパンツはトレンドアイテムではなくなってしまったというのと同じである。

物作りを標榜するブランドは、今後、日本製プラスアルファ、職人技プラスアルファの打ち出しが求められることになったということである。

そのプラスアルファを真剣に考えないと、陳腐化した「日本製」では消費者には響かなくなっている。





業界では「当たり前」のことでも世間では知られていない

 卸売り型の衣料品メーカーは、小売店を招いて展示会を開催する。
小売り店はここで仕入れる商品を発注する。

展示会開催サイクルとしては、従来だと半年前であり、2017年秋冬商品なら、まさに今が開催時期である。
2月から4月末ごろまでが秋冬向け展示会の開催時期で、数多くのブランドがこの時期に開催する。

だから9月から11月ごろは来春夏向け商品の展示会が開催され、古くは春秋の年2回での開催が標準だった。

しかし、90年代後半ごろから店頭での売れ行き状況にクイックに対応する目的から、店頭投入の2カ月前、3か月前に展示会を開催するメーカーが増えた。
この場合は、だいたい年間に3回から5回展示会を開催する。

衣料品業界の人間からすると、投入2カ月前の展示会なんて製造のリードタイムが短すぎて、大丈夫なのかとちょっと心配になるが、衣料品業界外の人からすると「店頭の売れ行き状況の変化は早いのに、そんなに時間をかけて大丈夫なの?」という感想になる。実際に、自分もそう言われたことがある。

衣料品業界に限ったことではないが、業界の「当たり前」が広く世間には知られておらず、それがさらにビジネス環境を難しくしているという側面がある。

まともに衣料品を企画提案して、製造するとなると、受注数をまとめてから2カ月くらいで店頭納入するというのはかなりギリギリの作業になる。
製造枚数にもよるが、生地からオリジナルで作るとなると、さらに日程はギリギリになってしまう。

会社や製造物、製造数量によっても異なるが、ざっくりとした目安でいうと、オリジナルの生地を必要分だけ製造するのに最低でも1カ月弱はかかる。そこから生地を裁断して縫製するのに、また最低でも1カ月弱はかかる。こういうことが周知されていれば、2カ月前の展示会開催ということはかなりギリギリだということが理解できる。
大手生地問屋が抱えている生地を使用するなら、生地を作る時間だけは省ける。

先日、西陣織の業者がツイッター上で炎上したが、その後、状況が知られるとともに騒ぎは沈静化した。
ご存知の方も多いと思うが、業者が技術伝承を目的に弟子を募集したのだが、

「西陣織を習いたい、将来的に仕事にしたい方を募集します。ただし最初の半年は給与的なものも出ませんし、その後の仕事を保証はできません。ただ、この西陣織の職人が減りゆくなか、将来的に技術を覚えておきたい方に無料で教授いたします」

と書いてしまって、ブラック企業だという批判が続出した。

しかし、この業者の書き込みは内情を知っている人間からすると、そういう意図がなかったと読み取れるし、実際に業者も後付けだが「習い事をする感覚で入門してもらいたい」とそういう説明をしている。

現在、西陣織に限らず、技術者は老齢化している。国内の洋服縫製工場も同じで最年少工員は60代という工場だって珍しくない。
技術を伝えるためには後継者を募集しなくてはならないのだが、なかなか集まらない。

賃金が低いからだ。

低価格衣料が注目されている洋服関係の賃金が低いことは多くの人は体感的に理解できるが、何十万円もする着物関係の職人が低賃金だということは多くの人はあまり理解できていなかったのではないか。

「半年給与なし。仕事保証なし」  京都・西陣織職人の「弟子募集」はブラックと言えるのか
http://www.j-cast.com/2017/03/18293227.html?p=all

これはきちんと取材をした良記事だがこの中で、

「いま、西陣織の職人の平均年齢は75歳程度です。こうした熟練の職人は、もう年金を貰っていますよね。そこで起きたのが、年金の支給額を踏まえた上で『工賃』が決まるといった現象なんです」

   佐々木さんによれば、こうした動きによって西陣織全体の工賃の相場が大きく下がることになった。その結果、「西陣織だけでは家族を支えていくことができない」と判断した40~50代の職人が、次々と転職するという動きが出た。

とある。

今の主力となる職人は75歳前後であり、彼らは年金を支給されている。
その年金額があって、そこに少しだけ工賃をプラスオンするという仕組みになっている。

何十万円・何百万円の商品を製造しているのに工賃は安いのである。
おそらく工賃は1カ月トータルで数万円程度なのではないかと個人的には推測している。

それが基準になるので、若い世代の職人に支払われる工賃も激安になる。
支払う側からすると「超ベテラン(75歳)の職人がこの工賃なのに、どうして年数の浅い君らにこれ以上を支払わなくてはならないのか」という理屈が成り立っているということになる。

そういう状況だということは業界に近しい人間なら知っているが、広く世間一般には知られていない。

だから、反射的に「ブラックだ」という批判が出てしまったのではないか。
知らない人間からすると何十万円もの商品を作っているのだから、それなりに高い工賃をもらっていると想像できてしまう。

ちなみに何十万円もする着物なのに工賃が異様に安くなってしまったのは、着物の売れ行きが不振になったことに加えて、着物業界の取引が何段階もの多重構造のままであることが理由として挙げられる。
洋服のようなSPA業態はなかなか着物は難しいだろうが、多重構造を少しシンプルにするだけで、販売価格を下げられるか、職人の工賃を上げられるか、ができるようになる。

今回、このブログで何が言いたかったのかというと、業界で「当たり前と思われていることも広く知らしめる必要があるのではないかということである。

そうすれば今回のような炎上は起きなかっただろうし、洋服ブランドが2カ月前に展示会を開催して「遅い」と批判されることもない。

各社、各業界とも情報発信に力を入れ始めているが、そういう基本的な「当たり前」のことも発信すべきではないかと思う。

基本がコモンセンスとして共有されていないから、各社の発信が伝わりにくいのではないかと思う。
業界や自分たちが「当たり前」と思っていることが、実はあまり知られていないと事例だということは、想像以上にあるのではないか。
それをコモンセンス化できれば商況が好転する部分も出てくるのではないかと思う。和装洋装に限らず。

日本の工芸を元気にする!
中川 政七
東洋経済新報社
2017-02-24


経営とデザインの幸せな関係
中川 淳
日経BP社
2016-11-03


「〇〇%オフ」価格という表記では、安さが伝わらない可能性がある

 よくFランク大学の学生が、分数や小数の計算ができないといわれる。
百分率も理解できていないともいわれる。

ファッション専門学校で何年間か定期的に講義しているが、計数管理では百分率の計算は必須だが、毎年、それを根本から理解していない生徒が何人かいる。

「粗利率は何%ですか?」とか「前年対比何%の増減がありますか?」というのは、ファッション業界の業務では日常的に必要になる。いや、ファッション業界に限らず、現代社会においてどの業界でも必要不可欠な基本作業である。

ところが、先日、ある人と話していたところ、「社会人や主婦層にも百分率を理解しない人はけっこういるみたいですよ」と言われ衝撃を受けた。

この人はショッピングセンター内にテナント出店しているブランド店舗の管理をしていたことがある。
その時の経験談を話してくれたのだが、パートを募集したところ応募してきた主婦がいたそうで、この人はその店の常連顧客でもあったという。

だから、パートとして勤務が決まった時にはそれなりに面識があったというわけだが、その時に「定価から〇〇%引きといわれても実はそれが最終的に何円になるのかあんまり理解していないんです」と言われて衝撃を受けたそうだ。

しかし、たしかにそういう人はいると体験的に感じる。

以前から何度か、バッタ屋での店頭販売を手伝っていたことを書いているが、そのときにも少なからぬ大阪のおばちゃんから「値札からさらに〇〇%引きって結局何円になるの?」と尋ねらることが日常茶飯事だったからだ。

「500円からレジでさらに30%引き」だと350円になるのだが、ずっと「どうしてこんな簡単な計算を暗算しないのか?めんどくさいのか?」と訝しく感じていたのだが、もしかすると百分率の計算を理解していない人がかなりの割合で含まれていたのではないかと思い始めた。

となると、各社が店頭で声を張り上げている「セール価格からさらにレジにて〇〇%引きになります」という呼び込みはあまり効果がないということになる。
群がっている人たちの何割かはそれが何円になるのかわからずにただ、「雰囲気だけで」群がっているということになる。

店内にPOPをいくら「さらに〇〇%オフ」と貼り付けても実際のところ、意味を理解していない人が何割か確実に存在するということだ。

実際に、そのパートの女性も「〇〇%オフで何円になるかはわからないけど、安くなりそうな雰囲気なので購買意欲が刺激される」と話していたという。

ではセール時の表現は何がもっとも効果的に伝わるのだろうか?

「〇〇%オフ」という表現は、こちら側が想像しているよりも具体的には伝わっていない可能性が高い。
もっと具体的にセールの効果を伝えられて理解されやすい文言は何だろうか?

おそらく、「半額」というのはもっともわかりやすいのだろう。
また「〇〇円引き」というのもわかりやすいだろう。
それ以外だと「1000円均一」とか「500円均一」みたいな表現もわかりやすいのではないだろうか。

でも実際のセールでは一律「半額」にすることも難しいし、1000円均一・500円均一にすることも難しい。
一番実践しやすいのは「〇〇円引き」ということになるだろうか。
そういう意味では〇〇%引きと表示せず、790円、990円、1290円と値段を書き換えるユニクロ方式が一番理解されやすいといえるのではないか。
ユニクロはこの部分でもマス層に最適な表示をしているといえるのではないか。

最終セールで投げ売り価格を提示してもワゴンに洋服が山盛りに残っていることがある。

通常、業界人は「商品に魅力がなかったから」というように理解するが、もしかすると表示方法に問題があり、安さが伝わっていなかったという可能性もある。

伝わっていないのは存在しないのも同然だ。

いくら「値札から80%オフのさらにレジにて30%オフ」と書いてみても、それが伝わらなかったら値引きしていないのも同然なのである。

表示の方法を工夫すると、ひょっとするとセールでの消化率はもっと高まるのではないかとも思う。


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