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アパレルブランドの広告が失敗する理由

アパレルブランドにとって広告は必要不可欠なもので、ブランド側はもう何十年も出稿し続けているわけだから、本来はすごく広告に詳しいはずである。
しかし、業界紙、編集プロダクションで勤務した経験上でいうと、そういうブランドはほんの一握りしかない。

多くのブランドは、惰性とお付き合いと「何となく」で出稿している。
そしてそれらは広告代理店にお任せである。

例外的な少数を除くと、アパレルブランドの広告担当者のお仕事というのは広告代理店と親しくすることが8割くらいを占めている。
各ブランドにはそれぞれお抱えに近いような代理店が存在する。
1社の場合もあれば、それが複数の場合もある。
要はそれら「お抱え」と親しく付き合って、リサーチからプランからすべてお抱えに丸投げし、出てきたものに対して判断を下すだけであり、その判断自体も担当者の好き嫌いやその上司の好き嫌い程度しか基準がない。
広告担当者か上司(社長である場合も多い)が「これ、ええやん」といえば、それで終わりなのである。
その「ええやん」の基準は好き嫌いだ。

だからアパレルブランドの広告は成功しにくい。

いくつか失敗例を提示する。
当方が広告に携わったのは雑誌媒体なのでそれがメインになる。

以前、某中堅ジーンズメーカーに雑誌「Begin」の広告を相談されたことがある。
このジーンズメーカーに限らず、アパレルブランドの勘違いは、そこそこ人気のあるファッション雑誌に1度広告を掲載すれば、売上が即座に増える・回復すると思っている点である。

で、相談をされたのでこれまた、ファッション雑誌広告に強い某中堅代理店を紹介した。

ジーンズメーカーの予算は年間1000万円、代理店はこの予算で、Beginの年4回掲載を獲得してきたと記憶している。
単なる純広告(綺麗なイメージ写真とブランド名だけの広告)ではなく、タイアップ記事広告だったので、1回あたり200万円以上した。
通常、雑誌では純広告よりもタイアップ記事広告の方が高額になる。

これで決まるかと思った矢先に、メーカーが「以前から懇意にしている地域密着の小規模代理店から出稿したいと言い出した。
これは本来は厳禁な行為である。
なぜなら、その料金プランはその中堅代理店が掛け合って実現したもので、お抱え代理店が作ったプランではない。
お抱え代理店が本来すべきことは、己らも掛け合って独自のお得感のある料金プランを作成することである。

しかし、お抱え代理店の甘えとそれを許したメーカーの不見識が相まって、結局はそのプランをお抱え代理店からやることになった。

こうなると、次からはその中堅代理店はメーカーには協力しなくなる。当たり前だ。先に不義理をしたのはメーカー側である。

結果からいうとこの広告はさほど効果がなかった。
年4回というのは無名ブランドにとっては掲載回数が少なすぎるし、Beginという雑誌がそれほどの「大部数」を抱えているわけでもないからだ。モノに対する記事や写真での見せ方に定評のある雑誌ではあるが、読者数はそれほど多くないし、読者層とブランドの相性も考慮しなくてはならない。
これはBeginに限らずどのファッション雑誌でも同じだ。
読者数の多寡も重要だし、読者層との相性がさらに重要となり、どんなに大部数のある雑誌でも読者層との相性が悪ければ、まったく反応はない。
ブランドの広告担当者はそこをよく考え、リサーチを自身でし、判断しなくてはならないが、それができている広告担当者は知っている範囲でいえば見たことがない。

結局はこのタイアップを1年か2年でメーカーはやめてしまった。効果もさることながら1000万円の広告費が捻出できなくなったからだ。できなくなったというのは表向きの理由でもしかすると、もったいないと感じたのかもしれない。

これはもっとも非効率的なカネの使い方である。
無名のブランドが年4回ちょろっと広告を掲載したところですぐさま認知度が上がるわけでもない。
もっと回数を多く、長期間にわたって掲載しないと実はファッション雑誌広告には意味がない。
年6回以上で、3年~5年間の広告掲載は必要だろうと思う。

1年や2年でやめてしまえば、その広告費は無駄になる。
このメーカーでいえば、2000万円をドブに捨てたようなものである。
これで従業員を雇うとか、従業員のボーナスを増やすとか、従業員と豪勢な食事を楽しむとか、に使った方がずっと社内の士気が上がる。

こういう失敗をするブランドは本当に珍しくない。アパレルブランドのありふれた日常風景である。

じゃあ、中小代理店を使わずに大手代理店を使えば成功するんじゃないかと考えるのが、アパレルブランドの浅はかさである。

また別のジーンズメーカーが20年くらい前まで10年間、電通を使っていた。
このメーカーはかつて「大手」と呼ばれており、ピーク時の年商は130億円くらいあった。

結果的にいえば、このメーカーの売上高は現在はピーク時の6分の1以下にまで低下している。
完全なる「ドブ金」だったといえる。

年間予算は毎年5000万円~1億円だったと聞いている。

これだけ多額の予算を払えばさぞかし効果があると、アパレル業界では考えるが、結果はまったく逆だ。
それがこのメーカーの凋落が証拠といえる。

アパレル業界からすれば広告宣伝費5000万~1億円というのは多額だが、電通からすれば鼻くそである。
だから電通はこの程度の予算では身を入れて仕事をしない。

例えば、当方とは比べ物にならないほど著名人で広告業界ともかかわりの深い永江一石さんもご自身のブログでこう述べられている。

東京都の豊洲市場における、スーパーお馬鹿なインフルエンサーマーケティングが草ボウボウ
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=37864

電通で5000万というのは鼻くそですので、わたしの推測ではPR会社に丸投げしたものと思います。

とのことで、年間5000万円程度の予算では電通にとっては「どうでも良い」依頼なのである。

文中で述べられている事例は、大手広告代理店ならやらかしそうなウェブマーケティングでの失敗例といえる。
アパレルも行政も理解していないのは、広告代理店には各社それぞれ得意分野と不得意分野があるということで、電通でいうならファッション雑誌やらウェブは苦手で、芸能人のブッキングやビッグイベントやテレビCMは得意なのである。
分野によって代理店を使い分けるのが得策で、大手に少ない金額で丸投げするのが最愚策といえる。

かつての大手ジーンズメーカーも東京都もその最愚策を採用している。
5000万円はまさしく「ドブ金」だ。

かつての大手ジーンズメーカーなんて総額10億円以上を使って、売上高を6分の1以下にまで低下させたのだから愚の骨頂としか言いようがない。

まあ、付け加えておくと、今現在も電通とか博報堂を何十年間も使い続けているのに、中高年以外の層にはまったく知名度が上がらない大手
肌着メーカーというのもある。知名度が上がらないどころか、知名度は下がっているのではないかと思う。
これも現在進行形の「ドブ金」の一つの代表事例といえる。

アパレル業界が広告で成功したいのなら、

1、広告というのは多額のカネが必要と強く認識する(節約のために年1回の掲載なんて効果なし)
2、広告代理店にはそれぞれ得手不得手があり、それを見極めて事案ごとに代理店を使い分ける
3、大手に少額のカネで頼めば、必ず手抜きされる

これを徹底的に頭に叩き込まないと、ドブ金事例はさらに積み上がることは間違いない。

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プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
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新規顧客獲得の手法を誤ることが多いファッション業界

11月に発表されて以来、一部の有名人以外には、ゾゾスーツが手元に届いたという話は聞かない。
もう1月も下旬に差し掛かろうとしているが、一向に配送がアナウンスされる気配もない。

当方はゾゾで一度も買ったことがなく、これからもよほどの安売りでもしない限り買う気がない。
さらにいえば体型データを提供する気もないのでゾゾスーツを申し込んでいない。

しかし、これだけ音無しの構えを続けられると、どうでも良くなってきていて、あの狂騒曲ともいうべき過剰反応は何だったんだろうと笑えて来る。
実際には存在しない物に対していい年をしたオッサンやオバハンが泣いたり喚いたりしていたんだから、お笑い種だ。

そんなコントはさておき。

ゾゾスーツが無料で配布されるというやり方は、オッサンである当方からすると2000年頃のYahoo!BBのやり方を連想した。
恐らく、同じ連想をしたオッサン世代の人も多いのではないかと思う。

当時のYahoo!BBはモデムは店頭で無料配布していた。
Yahoo!BBとプロバイダー契約をするとモデムが無料でもらえるのである。
ただし、プロバイダー契約料は発生するから何から何までタダというわけにはいかない。

現在、Yahoo!BBとプロバイダー契約をしている人はあまり見かけないが、あの当時はこれによって一気に契約者が増えた。
また、これによってブロードバンドを使用する人も増えたといえる。

無料で配ることによって一気に使用者を増やして業界標準を狙うというやり方で、気を付けて見ていると、同じやり方を採る企業やブランドはほかにも多くある。

これは一種のCPA (Cost per Acquisition) といえる。

ゾゾスーツもこのCPA (Cost per Acquisition) であり、ヨドバシカメラドットコムの100円の商品でも送料無料というのも同じである。

そして、これを上手く活用できる企業やブランドがある反面、失敗に終わる企業やブランドもある。
衣料品・ファッション業界は失敗に終わる企業が多いように感じる。

さて、CPAについては河合拓さんのブログで解説されているのでご紹介する。

https://ameblo.jp/takukawai/entry-12340008298.html



CPAという考え方があります。分子は広告宣伝費の総額、分母はその広告によって購買した(新規の)顧客数となります。

CPAというと、一般論しか書かれていない教科書には「広告によって」としか書かれていませんから、ダメコンサルは「SNSだ」とか「インフルエンサーだ」など、適当なことをいっていますが、しかし、そんなものでCPA効率が上がるはずありません。CPAの本来の意味は「顧客をデータベースの中に放り込むこと」です。その目的のためなら別に広告でなくともよいのです。ぜひCPAをググってみてください。どれをみても「広告」としか書かれていません。全くおかしな話です。

 

しかし、本来的な意味合いを追いかければ、「出血大サービス」に見える施策も、実は、ネットビジネスの場合、顧客をストックしているCPAであるという見方も可能です。環境が変わっても本質は変わらないからです。

ネットビジネスは、勝利の方程式がまだまだ一般化されておらず、こうした技を駆使した企業が、気づかない企業に大きな差を付けているのかもしれません。広告公害の中で目立つ方法は、ビジネスそのものをあたかも広告のように使うこと、なのです。

とのことであり、通常のビジネス書籍にはCPAとは広告によってと書いてあるから、多くの日本企業は馬鹿正直に広告によって新規顧客を獲得しようとするが、別に広告でなくても良いのである。
ゾゾスーツの無料配布だろうがモデムの無料配布だろうがなんでも良いので、投資によって新規顧客を獲得できれば良く、ゾゾやYahoo!などのネットビジネス、EC業者にとっては新規顧客(見込みも含む)の個人情報が手に入ればそれで目的は完了する。

別にゾゾやYahoo!に限らず、ネットでは「アンケートに答えてくれたら〇〇ポイントプレゼント」とか「アンケートに答えてくれたら豪華賞品をプレゼント」なんていうのが掃いて捨てるほどあるが、あれは全部CPAの一環で、新規の個人情報が入手できれば良いのである。
アンケートに答える人は自分の個人情報と引き換えに〇〇ポイントをゲットしているだけのことで、たかが1ポイントや5ポイントを獲得するために個人情報を開示しているといえる。

この原理を理解していないヘボコンサルやヘボ業者が、いまだに「SEO対策をー」とか寝言を言っているし、その解決方法として「SNSガー」とか「インフルエンサーがー」と言って人心を惑わせている。

SNSもインフルエンサーも告知する「手段(たかが手段でしかない)」でしかないのに、最近では取り違えてSNSで発信することやインフルエンサーを活用することが「目的」と化している人も多く見受ける。

そして、このCPAを正しく理解できていなかった過去の例を挙げるとすると、ジーンズメイトとモーブッサンだろう。
ジーンズメイトは2009年とか2010年頃に、新店オープンした際に「リーバイスジーンズを先着〇名に無料配布」したことがあった。
3900円に値下がりした商品ではなく、1万円前後の定価品である。

これはCPAを曲解した行為といえ、結果は現在のジーンズメイトを見てもわかるように失敗に終わっている。

まず最大の間違いは、自社製品ではなく、リーバイスという他社製品を配布した点にある。
自社製品を配布するなら、「この商品が欲しいからジーンズメイトに次も行こう」ということになるが、「リーバイス」という大手ブランドの商品なのでそれが欲しければ、ジーンズメイトだけに行く必要はなく、ライトオンでもリーバイスストアでもマックハウスでも構わないということになる。
この根本的な問題が当時のジーンズメイトの経営者にはまるで見えていなかったといえる。

この当時もそこを指摘したがジーンズ業界村の住人たちはジーンズメイトを弁護していたが、そんなレベルだからジーンズ業界村は衰退したといえる。

高級宝飾ブランドのモーブッサンも銀座店オープンの時に超小粒のダイヤ(記憶によると5000円相当)を配布した。これも2009年とか2010年だったような記憶があり、すさまじい行列ができてワイドショーでも取り上げられていた。

結果的にはこれも失敗だったのではないか。

本来は自店の永続的顧客と成りうる高所得者層を掘り起こしたかったのだと思うが、結果的には大量の貧民層を掘り起こしただけになってしまった。
高所得者層はそもそも無料配布なんていうものには並ばない。

おまけにもらえるのはダイヤの粒だけで、これをアクセサリーにしようとするとどこかで台座(指輪、イヤリング、ピアスなどの)に取り付けてもらわないならない。
もちろんモーブッサンでも取り付けてもらえるが、取り付けには「取り付け料金」が発生し、そしてそれはそんなに安い金額ではない。
モーブッサンの狙いはここにもあったのだろうが、行列を作った貧民層はそこには金を払いたがらない。
だからモーブッサンは二重に失敗している。

どういう投資をすれば、自社の望む新規顧客を獲得できるのかを企業は考える必要があり、意味のない無料配布をしてもそれはCPAにはならない。このことを冷静に考えるべきだろう。
そして、SNSもインフルエンサーも新規顧客を獲得するための「手段」に過ぎず、発信することやインフルエンサーを活用することを「目的」だと勘違いしてはならないということである。勘違いをすればヘボコンサルの食い物にされるだけだ。

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繊維・アパレル業界のマーケティングはまったく「価値創造」できていない

なんだかんだで繊維業界に20年以上もいると、それなりに多くの企業や経営陣を外野から見てきた。
2000年以降、頭角をあらわしてきた新興企業は別として、旧型アパレルの多くは苦戦を続けている。

とくに老舗と呼ばれるアパレルメーカー、ブランドの鈍重さには驚かされる。

ブランディングとかマーケティングという作業が必要なことはわかっているが、実際にはまったく取り組めていない。
広報宣伝活動といえば、80年代から変わらないファッション雑誌への広告出稿に終始している。
ウェブでの活動が重要なことはわかっているが、80年代・90年代の雑誌広告と同じだと考えており、やみくもに投稿を増やしたり、業者に丸投げすればフォロワーやエンゲージメントが増えると思っている。
はっきりいってこんな企業、ブランドばかりである。

もう読まれた方も多いと思うが、ダイヤモンドオンラインにUSJを再建した森岡毅氏のマーケティングについての記事があるのでご紹介したい。
マーケティングとは何かということがわかりやすく書かれてあるので、まだ読んでいない方には一読を勧める。

USJ再建の森岡毅が語る、マーケティング下手な企業に足りない3つの視点
http://diamond.jp/articles/-/156025

大阪のUSJは鳴り物入りでオープンしたが低迷していた。
それを浮上させ、ある意味で東京ディズニーランドよりも人気の高い施設へと変貌させた森岡毅氏のインタビューである。

まず

私はよく、マーケティングとは「価値を創造する仕事」と説明しています。市場における価値を創造すること「全般」がマーケティングの役割なのです。
我々マーケターは、価値を「ブランド」とも定義しますが、要するに、消費者の頭の中で知覚される「価値」、つまり「ブランド」を作る仕事はすべてマーケティングの領域です。

とのことで、アパレル各社が思っているような「リサーチ」ではないということである。
旧型アパレルでも大手になるとマーケティングナンチャラ室とかマーケティングナンタラ部みたいな部署があるが、やっていることは単なる市場・他店リサーチに過ぎない場合がほとんどである。

マーケティングが「価値を創造する仕事」とすると、「どうやって価値を創造していくのか」という疑問が当然生まれるでしょう。マーケターが「何を考え、どこを見ているのか」という部分です。
ここで重要になってくるのが次の3つの視点です。

(1) 市場構造を解き明かす
(2) 消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる
(3)(1)と(2)を実行できる組織をつくる

(1)の「市場構造を解き明かす」とは、簡単に言えば、移ろいやすい消費者のニーズがどのような状況、構造になっているのかを把握することです。一般に「消費者のニーズは変わりやすい」と言われますが、本質的な「人間の欲」はそれほど変わらないと私は思っています。
ただ、それを「満たす方法」が変わるのです。

とのことで、とくにこの3点を理解していない企業、ブランドは繊維・アパレル業界には数多くある。
市場構造を解き明かす気もなく、天候やら景気動向のせいにして終わってしまう。
各社の月次売上高速報そのものではないか。

また、「消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる」ことをまるで考えていない。
考えていないというと語弊がある。考えてはいるのだ。
しかしその考えた理由というのは「価格が安いから(値下げすれば売れるだろう)」とか「機能性・スペックが優れているから(7つの機能性だとか過剰なフィクションに彩られた匠の神話だとか)」というようなものばかりで、表層的なものにすぎない。
挙句の果てが「タレント頼み」である。

優れたコンテンツがあってそれを紹介するために人気タレントを起用するならわかるが、コンテンツがないくせに人気タレントを起用すればすぐさま爆発的に売れると考えているのだが、それが大きな間違いである。
キムタクに着させたらどんな商品でも売れるなんていうのは2005年までで終わっている。

そして

そして、ここからがさらに大事な話ですが、「(1)と(2)の戦略を正しく実行できる組織」を作っていかなければなりません。
どんなに精緻に市場構造を解き明かし、プレファレンスを高める戦略を構築しても、それを実行できなければ何の意味もありません。私はよく「戦略人事」という表現を使いますが、目的を達成するための人事改革、組織改革を成し得なければ、本当の価値は生まれません。

とあるが、人事というのは本当に重要である。

そこで重要となってくるのが、CMO(最高マーケティング責任者)の役割です。CMO(あるいは、それに準ずる役割の人)が、マーケティングの意味や幅をきちんと理解し、その責務をきっちりと果たす。その一方で、経営者も同様の認識を持ち、CMOに相応の権限を与える。

ここが大事なポイントです。
私がUSJで働いている際、非常に幸運だったのは、社長であったグレン・ガンペルが、これまで述べた三つの領域において「私がリードできる十分なスペース」を与えてくれたことです。それだけの権限と自由を与えてくれたからこそ、私は自分の責務を果たし、結果を出すことができたのです。

もちろんグレンとは、激しい議論を何度もしましたし、ここでは紹介できないような激しい表現での言い合いもしょっちゅうしました。また、彼がマーケティングを深く理解していたかと言えば、決してそんなことはありません。
彼は強烈な存在ではありましたが、一方で、優秀な多くの人間がそうであるように「自分が足りていないもの」をきちんと理解し、必要な人材を登用し、権限と自由を与えるだけの極めて高い知性を持ち合わせていました。だから、彼はいくら激しい議論をしても、最終的に「私がこうしたい」ということについては、さんざん激しい議論の末に、私の自由にやらせてくれました。

とのことで多少なりとも宮仕えをしたことがある身としては非常に重要だと感じる。
部下や担当者に任せることができない経営者は本当に数多い。むしろそちらの方が9割がたを占めるだろう。
そして多くの企業や組織は、経営者よりも劣る人材が集められており、いつぞや、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがおっしゃられたように「経営者より優れた部下は組織には居られなくなる」というのが常態となっている。

逆に言えば、自分より優れた部下を集めて使える経営者はそれだけ稀有な存在だといえる。

根本的な視点がないのに、小手先のウェブ告知やSNSの投稿やインフルエンサー起用なんて百万回やったってなんの成果も生まない。
このことをわかっていない企業とわかっている企業の格差がより開いてきており、わかっていない企業が繊維・アパレル業界では9割くらいあって苦戦を続けているというのが実態といえる。

この森岡氏の記事は連載のようなので今後が楽しみである。

*ここからは趣味の話なのでめんどくさい人はスルーしてほしい。

森岡氏は三国志のトップに例えておられるが、ここの部分の見方ははっきりいって疑問である。
孔明、関羽、張飛という優れた部下を集めた劉備は、その点だけは曹操に勝っていると言っておられるが、三国志演義に毒されすぎである。
魏・呉・蜀の三国でもっとも人材の層が薄く、国力が劣っていたのが蜀である。
劉備が建国した蜀は、孔明と関羽・張飛・趙雲・馬超・黄忠・魏延以外に優れた人材はほとんどおらず、彼らの死後、人材は払底してしまう。

また、建国前の劉備軍団にも優れた人材は少なく、社長(劉備)のずぼらな人的魅力と、凄腕部長(関羽、張飛、趙雲)の個人プレーに支えられた完全な体育会系零細企業で、さらにいえば文官はほとんどいない。
孔明登場前に劉備軍の参謀となったのが徐庶だが、孔明を推薦したのち、曹操陣営に移籍するが、移籍後はめだった活躍をしていない。少なくとも史書に記されるほどの活躍はできていない。
それはなぜかというと、曹操陣営には荀彧、司馬懿、程昱、賈挧、荀攸などの優れた参謀が数多くいたからである。
むしろ優れた人材を多数使いこなした曹操の方がトップとして力量が優れていたといえる。

劉備軍は孔明以外に龐統、馬良しかおらず、法正が加入してきたものの3人とも早逝したため、本来、行政官向きの孔明が政戦の要とならざるを得なかった。この激務が孔明の寿命を縮めたともいわれている。

また史書でいうと三国のうち、蜀の記録がもっとも少なく、文官をあまり重視していなかったともいわれている。

物語は歴史に親しむきっかけとなるが、あまりにもその物語がポピュラーすぎるとかえって史実を見誤らせることになる。これは何も三国志演義に限ったことではないのだけれど。

以上、蛇足である。

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ファッション業界にはびこる「過剰なフィクション」と「嘘の神話」

衣料品をわかりにくくしている原因の一つに、業界の内外にはびこる「過剰なフィクション」がある。

モノ余り状態の現在において、商品を売るには「ストーリー作り」「物語性」が必要であることは言うまでもないが、あまりにも過剰にフィクション性が取り入れられた場合、かえって消費者を惑わせてしまう。

衣料品に関してはこれは今に始まったことではなく、かなり昔から連綿と続いているのだが。

80歳縫製士が最後の挑戦、クラウドファンディングで”究極のシャツ”発売
https://www.fashionsnap.com/article/2018-01-12/teruko-original-shirt/

奈良の縫製工場がシャツでクラウドファンディングに挑戦しており、これはこれでがんばってもらいたいのだが、業界人から一斉に突っ込みが入ったのは、動画で「一生着られるシャツ」という発言の部分にだった。

もちろん、動画の編集工程でカットされた言葉があるのかもしれないが、この動画ではシャツというアイテムの性質自体をミスリードさせる。

断言すると、一生着られるシャツなんていうのは存在しない。
リペア(補修、修理)を加えれば着られるシャツはある。しかし、リペアなしで一生着続けられるシャツなんていうものはこの世には存在しない。今のところ。

まず、長年着続ければ袖口と襟が擦り切れる。
以前にお会いしたことのある積水ハウスのベテラン営業マン(推定40代)はシャツの袖口が擦り切れていた。
それが気になって仕方がなく、何を話したか覚えていないが、袖口が擦り切れたシャツだけは鮮明に覚えている。

またこのシャツのように白シャツは着用を繰り返せば、皮脂がこびりついて必ず黄ばむ。
また襟の内側には「汚れの首輪」が確実に刻み込まれる。
どんなにウタマロ石鹸で丹念にこすっていても、何十年かの間には確実に汚れの首輪は刻み込まれる。

これらを解決しないかぎりは一生着られるシャツなんていう商品にはなり得ない。

衣服の傷みは着用回数と洗濯の回数に反比例するから、年に1度くらいしか着用しないというならもしかしたら一生着られるかもしれないが、デイリーユースで月に何回か着用するのであれば、確実に20年は持たない。

おまけにいえば、「縫製士」なる職業も実在するのかどうかすら怪しい。
40年前とか50年前には存在していたのかもしれないが、少なくとも20年前からこの称号を持つ人には会ったことはないし、見聞きしたこともない。もし、「縫製士」に関してご存知の方が居られたらご教授いただきたい。

この過剰に盛られたストーリー性と「縫製士」なる実在未確認職業がなんとも気色悪い。

最近は「10年持つ服」だとか「100年持つ服」なんていうキャッチフレーズが横行しているが、はっきりいえば、ユニクロの商品は10年持つ。10年持つ服が欲しければユニクロで買えば解決する。

当方のタンスには10年前に買ったユニクロの服が何枚もある。
いずれ画像付きで紹介しよう。

先ほども書いたように、衣服の耐久性は、着用回数と洗濯回数に反比例するから、デイリーユースでも10年持つユニクロの服を極限まで着用回数と洗濯回数を減らせば30年くらいは優に持つだろう。
それだけのことで、そこに過剰なフィクションを差し込むことが気色悪くてならない。

衣料品だけでなく、原料や製造工程にもわけのわからない過剰なフィクションがあふれている。

例えば、

https://ameblo.jp/takukawai/entry-12344165904.html



彼らは「イタリアの素材と日本の素材の大きな違いはエージングにある。イタリアは生産した生地を数年寝かし風合いをだして出荷するが、日本は生産したら直ぐに出荷する。だから、ワインと一緒で滑らかさが違うのだ」という説明でした。

実は、これは大嘘で、日本に二次情報や推測で、このような「嘘」や「神話」がまかり通っています。

とのことで、この「生地のエージング」は素材メーカーや商社、生地問屋などで当方も何度か耳にした。
完全なる嘘っぱちである。

また、ユニクロと契約したことで一挙に注目を集めた完全無縫製のニット製造機、ホールガーメントも過剰なフィクションで彩られている。

一体成型でセーターが編めることが特徴のホールガーメントだが、これの最大の利点は

1、プログラミングが正しくでき、機械の操作を正しくできれば、驚くほどの少人数でセーターが量産できること
2、リンキングが不要であること
3、ホールガーメントでしか実現できないデザインがあること

この3点である。

にもかかわらず「一体成型でフィット感が良い」とか「着心地に優れる」などと言ったまやかしの言説が売り場にもメーカーにもあふれている。

以前、ジーンズメイトで1000円に値下がりしたホールガーメントセーターを購入して何年間か着続けた経験でいえば、そんなものは一切ないと断言できる。
着心地も普通のセーターと変わらないし、そもそもセーターは編み方にもよるが、3センチ~5センチは伸び縮みするので、そこまで厳密な採寸は必要ない。
さらにいえばどうして一体成型だからフィット感が高まるという理屈になるのかも理解できない。それなら丸編みのTシャツのボディはフィット感が良いのだろうか。

セーターは首とか袖や裾部分のリブとかそういうところを本体に取り付ける。
布帛だと普通に「縫製」するのだが、セーターの場合はリンキングという処理を行う。
パーツと本体を目立たないようにつなぐのである。
そしてリンキングにはリンキング専門の工場がある。

リンキング工場はリンキングしかできないため、セーター工場と異なりオリジナル商品は作りにくい。
そのため自立化もできず倒産廃業が相次いでいる。

ホールガーメントはそのリンキングが不要になる技術であり、だからこそ、ホールガーメントが注目を集めているともいえる。
着心地云々ではなく製造側のメリットがあってのことである。

じゃあ、なぜそれを説明しないのかと書いたところ、老年のパタンナーから「そんな後ろ向きのことが言えるか!」と反発を受けたが、だからといって、まったく別のしかも間違ったメリットをでっち上げて良いとはこれっぽっちも思わない。
一体、この人は何を言っているのだろうか。

だったら、人員の削減やら生産効率の上昇やらそこを強調すべきであり、ありもしない着心地やらフィット感をでっち上げることは消費者にとっても業界にとっても何のメリットもない。むしろ害悪だ。

そしてこういう間違った評判が定着し、それゆえに衣料品はわかりにくくなる。
今までからそれを繰り返してきた。
衣料品業界はこういう「過剰なフィクション」にいつまで頼るつもりだろうか。そして過去の「過剰なフィクション」が衣料品をわかりにくいものにし、それが衣料品不振の原因の一つになっているにもかかわらずだ。

ナントカは死ななきゃ治らないといわれるが、まさに衣料品業界は一度完全にクラッシュしてみないとわからないのだろう。

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「原価率明示ビジネス」の薄っぺらさ

不振を極める国内アパレル業界では、今、2つの手法が持て囃されているが両方ともに甚だ疑問を感じる。

1つは「原価率明示」、もう1つが「EC礼賛」である。

販路の1つとしてEC、ネット通販を整備することは必要だが、EC比率が高ければ高いほど優秀だという評価はまるで意味がない。
これはメディアにも責任があり、そういう表層的な指標でしか、判断ができないからだ。

もう1つの「原価率」だが、原価率明示ブランドが持て囃されているが、メディアに掲載される「原価率」なる言葉はひどく不完全である。
おそらくは「製造原価率」を指していると思われるのだが、単に「原価率」とだけ表記されている場合は、誤解を招くことにもなる。

なぜなら、単に「原価」「原価率」と表記された場合はそれは「仕入れ原価」「仕入れ原価率」のことも含むからだ。

計数管理の授業の初歩だが、「売上高=原価+粗利益高」と分解することができる。
これはビジネスを行う人ならだれでも知っているだろう。

そして、小売店の場合、「原価」とは「仕入れ原価」を指す。

だから単に原価率とだけ表記されている場合は、仕入れ原価率を指しても間違いではない。むしろ、小売業者なら原価率とは仕入れ原価率の方が適切だということになる。

計数管理の授業では、小売店の仕入れ値は店頭販売価格の6割が標準だと教えられる。
10000円の商品なら仕入れ値の標準は6000円になるということになり、業界では「6掛け」という用語で表される。
もっとも、この標準は現在ではほとんど消滅しており、仕入れ値は店頭販売価格の40~55%くらいに低下している。

しかし、商品によっては6掛けを維持できているものもあるし、買い取りではなく委託販売なら6掛けよりも大きい掛け率の場合もある。

教科書では標準とされる6掛けで仕入れていた場合、この店の原価率は60%となり、「原価率50%」と表記されるTOKYOBASEやファクトリエなどの商品よりも原価率は高くなる。
「原価率50%だから高品質」というのなら、この店の「原価率60%」商品はもっと高品質だということになる。
お分かりだろうか?

言葉というのは中途半端に使用するとこれほどに意味が異なってしまう。

まあ、これは言葉遊びの範疇ともいえるが、正確な用語を使用しないと、まるで違う意味にも受け取れるようになる。
だからメディアは気を引き締めてもらいたいと思う。

さて、言葉遊び以外でも「製造原価率」の高さは、決して高品質にはならない。
もちろん粗悪品ではないが、メディアや世間が絶賛するような高品質ではない。

アパレル商品の原価率が高いことは品質の良さとは無関係
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12337459154.html

業界には著名なコンサルタントが幾人かいるが、この河合拓氏はもっとも理論的で、賛同できる主張が多い。
短いブログだが、主要な部分を抜粋する。

サンマやキュウリと違って、アパレル商品は「生地」や「ボタン」などの付属で構成され、さらに、複雑な商品となると「プリント」や「刺繍」など後加工も入ります。これらの部材をアセンブリして商品が完成する、しかも、それらの部材は世界中の産地で生産され、アセンブリ工場に供給されるのです。加えて、繊維製品は95%が輸入品で、日本に輸入する際は輸入関税が10-15%程度かかります。この関税を避けるため、生産時期をずらしたり途上国の部材をつかって特恵関税という減税枠をつかって税率を下げる技術もある。加えて言うなら、生産国から日本に輸入する際、船便とAIRで単品あたり100-200円も輸送費が変わるのです。

また、国によって人件費が違い、産地によっても同じ商品でも労働工賃(CMTといいます)は変わる。では、人件費の安いところにいけばよいのかといえば、そうでなく、バングラデッシュやミャンマーなどは、生産ロットが莫大に多く、日本のアパレルが生産委託をすれば、産地の工場固定費によって単品コストは逆にあがるのです。日本と人件費が変わらないといわれる中国沿岸部で生産したほうが、供給スピードが速くなり的中率があがって、相対原価が下がるということもある。スーパーの仕入とは全く違うのです。

とある。そしてここからが「肝」の部分だが、

アメリカのアパレルが、日本の商社を使う理由が理解できないので、昨年販売した商品と同じ商品をつくってみろといって商社に渡しました。なんと、その商社は、そのアメリカのアパレルが調達している1/3の値段で製品をつくってみせたのです。よく調べてみると、そのアメリカのアパレルはアジアにバイイングオフィスという調達機能をつかってはいますが、香港に拠点をもっていて、香港から多段階に階層化されたミドルマンによる流通の高コスト化によって、例えばイタリアの生地をチャイナの問屋経由で買ったり、という具合に「下手な」調達をしていたわけです。

とある。

要するに、素材・副資材の調達、生産工場の選択によって、日本の商社は同じ商品をアメリカのアパレルの3分の1の値段で製造することができたという話である。
商品はまったく同じでも生産の組み立て方では値段が3倍になるということになる。
昨今流行りの「原価率明示ビジネス」の原則でいうなら、アメリカのアパレルの方が高品質ということになってしまうが、その判断基準は間違っているということの証明だといえる。

なぜなら、同じ商品を日本の商社は3分の1の値段で作れるが、商品の質には差がない。

ちなみにここで言われている「多段階に階層化された流通の高コスト」というのは、実はラグジュアリーブランドにも当てはまる部分があり、某ラグジュアリーブランドが使っているデニム生地は、日本の工場で1メートル700円くらいで生産されている定番デニム生地なのだが、これが「多段階の階層化された流通」によって、このラグジュアリーブランドは1メートル7000円くらいの価格で買っているといわれている。

仮に、全てのアパレルが商社に発注して、完成品だけの仕入と販売をしたらどうなるか。確かに、このケースにおいては、調達の技術はイコールですから、「原価率の高さ」は「品質の良さ」を表すでしょう。しかし、商社は効率を重視しますから、結局商品間の差別性はなくなり、消費者から見た購買の決定要因は価格のみ、ということになり価格競争に陥ります。

こうした事実から、プロから見て、ものづくりのノウハウがないアパレル企業の「原価率の高さ」は、「品質の良さ」でなく「調達の下手さ」と同義語です。アセンブリ商品であるアパレル商品を「原価率」だけで語るのは無意味であるということです。

この結論が昨今流行りの「原価率明示ビジネス」の薄っぺらさを表している。

 

 

 

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ニュースリリースを流すだけでは不十分な広報活動

ニュースリリースとパブリックリレーションズは似ているがまったく異なる。

先日、あるメーカーの会議でちょっと驚いた。
いわゆるPR業者がパブリックリレーションズの提案をしていた。
平たくいえば、企業の持っている美点を深堀りしてニュース化するという作業の提案である。

今、オッサンの涙腺を毎週日曜日に崩壊させているドラマ「陸王」を例にとってみよう。

創業100何年の足袋メーカー「こはぜ屋」は売り上げ不振に苦しんでいる。
さて、ここが採るべき広報戦略としえては、いろいろなことが考えられる。

1、創業100何年の歴史を語る
2、足袋の縫製現場をレポートする
3、ほんの1センチほどのヒビ割れも検品で見逃さない「こはぜ屋」品質
4、ランニングシューズ「陸王」の完成秘話

などなどということになる。

これを読み物的な記事化してもらい、メディアに掲載してもらうことがパブリックリレーションズである。
そのためにはメディアに対して「案内状」を送付して、記事化したいという興味を持ってもらう。

案内状にはメディアが興味を持ってくれそうな事実を紹介する。
掲載するもしないもメディアの自由だから、こちらの意図が当たるときもあれば外れるときもある。

確実に掲載したいなら、広告掲載料を支払おう。

PR業者はこういうことを提案したのだが、メーカーは大手のはずなのに、こういう知識がなかったのか、「当社からも逐一、プレスリリースをメディアに発信しています」と答えた。

はっきり言ってこの会話はまったくかみ合っていないのだ。

プレスリリースもいわゆる案内状だが、事実をお知らせするくらいの内容であり、パブリックリレーションズよりも情緒への訴えかけは弱い。
もちろんやらないよりはやった方がずっと良いのだが、プレスリリースを長年送付し続けてそれでも効果がないから、それとは別のプロモーションをする必要がある。
だから提案しているのに、「プレスリリースを逐一発信しています」では答えにはなっていない。

こういう齟齬が実はアパレル業界では珍しくない。

今、業界で注目されている企業やブランド、好調とされている企業やブランドの多くはこういうことに長けている。
反対の企業やブランドはいくら売り上げ規模が大きかろうが、いくら名門だろうが、この手のことにはまるで疎い。
ど素人同然といえる。

つい最近でもっとも成功したパブリックリレーションズの一つはトランクホテルだろう。

トランクホテルの新規オープンに際して、藤原ヒロシ氏にインタビューするという企画だが、藤原ヒロシ氏の返答がトランクホテル側の売りを全否定していて、まったく話がかみ合っていなくて思わず笑ってしまう内容だ。

それがバズフィードに転載され、そこから文字通りウェブ上でバズった。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000025317.html

原文は上で、笑えるバズフィードはこちらだ。

https://www.buzzfeed.com/jp/narumi/sugoi-taidan?utm_term=.ekavkggY3V#.rn9WoggQXV

ニュース化・読み物化するというのはその原文のような記事にすることである。
プレスリリースを送付して「はい、おしまい」というものではない。

最近ちっとも名前を聞かないなあというブランドやアパレル企業はこの作業がまるでできていない場合が多い。
そして、若年層への知名度が極端に低下しきってしまう。
このブログでも何度か書いたことがあるベネトンやらワールドやらファイブフォックスやらはその典型例といえる。

このトランクホテルの記事化に立ち会った業者に手短ではあるが話を聞く機会がたまたまあった。

その業者によると藤原ヒロシ氏のかみ合っていない返答は、台本で用意されたものではなく、氏の天然だという。

「横で聞いてて冷や冷やしましたよ」というのがその業者の回顧である。

で、記事化するとまったくかみ合っていないから先ほどの原文のようなとぼけた記事にならざるを得ない。

その業者はトランクホテル側に「どうします?この記事のままで大丈夫ですか?」と尋ねたところ、意外にもホテル側から「これでいきましょう」という答えが返ってきたらしい。

そのときは「これはかなり分の悪い賭けだ」と感じたそうだが、それが逆にウケて、バズフィードに転載された。
そのおかげで、レセプションパーティーは予定を大幅に越える人数が来客したというし、しばらくの間、メディアから取材の申し込みがひっきりなしだったともいう。

まさに「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。
絵に描いたようなハイリスクハイリターンとなった。

ここまでの冒険は保守的なアパレルでは難しいだろうが、しかし、これに近いような活動をしなくてはならないということは、認識すべきである。業界新聞やらファッション雑誌に「何となく」プレスリリースを送りっぱなしで何とかなる時代では最早ない。

ニュースをいかに作るか、いかにニュース化を促すか、そういう取り組みが広報として必要とされている。
自社でできないならそういう業者と組めば良い。

20年前・30年前の広報・販促手法をそのまま踏襲していては現状は絶対に打破できない。
そもそもその手法が有効なら、企業やブランドは今のような体たらくには落ちていないだろう。
その手法が通用しなくなったから企業やブランドは不振を極めていたり極端に知名度が下がっていたりしているのである。

その現状を変えたいなら、失敗に終わった過去の手法は捨て去るべきで、失敗に終わった手法を後生大事に守ったところで、成功に転じることは絶対にない。成功に転じられるならとっくの昔に状況は好転している。
その現実を直視する必要がある。

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「何となく」流行りだからウェブをやっている企業が多すぎるアパレル業界

繊維・アパレル業界のプロモーションは大きく変わっているが、旧態依然としたままの企業は多い。
この業界は東京一極集中が顕著だがその東京でも今の時流に合わせたプロモーションができている企業、ブランドはほんの一握りで、地方企業になると99%はいまだ旧態依然とした昭和の手法に終始していると言っても言い過ぎではない。

ウェブを使ったプロモーション、広報が不可欠との認知は広まっているが、その手法について理解できている企業はほとんどいないし、古株の業界コンサルも理解が著しく低い。
業界の大手ウェブメディア・大手ウェブサイトですら理解度が著しく低く、先端を走る企業との差は隔絶するばかりである。
某大手ウェブメディアは2年前から指摘されているにもかかわらず、いまだにサイトをスマホ対応させておらず、スマホではPC用の画面が縮小されて表示される。WWDのウェブはPCとスマホ両方に対応できており、何もしない無策のままなら、ウェブでの地位は早々にWWDに取って代わられることは間違いない。かつてのベンチャーとは思えないほどのフットワークの重さである。

ドメイン名を一新してしまうこともダメだ。
いくら過去の蓄積があろうと、ドメイン名が一新されてしまえば、そのサイトの記事の蓄積、読者の確保、過去記事からの流入はまた一から
やり直すことになってしまう。過去の蓄積が多ければ多いほど、ドメイン名の一新は逆効果に働く。先ごろそんなサイトを見かけた。

それはさておき。

業界のウェブ企業がこんな体たらくだから、ウェブを専門としない業界企業がどれほど旧態依然なのかは推して知るべしである。

ウェブによるプロモーション、広報の基本をうまく説明している記事がある。
基本的にニュースピックスが特集するアパレル業界記事はピントが外れたものが多く失笑を禁じ得ないが、これは秀逸だといえる。

世界ブランドが受け入れた日本人クリエイターの思考とは。ナカヤマン。×川添隆が語るデジタル戦略の本質
https://www.fastgrow.jp/articles/nakayaman-kawazoe

ナカヤマン氏は記事中にもあるように2014年にGUのウェブプロモーションを手掛けたばかりでなく、コーチやグッチのウェブプロモーションまで手掛けているという実績がある。

インタビュアーの川添隆氏の以下の質問が繊維業界の現状をまとめている。

しかし、代理店が用意したリストに従いインスタグラマーとタレントをキャスティングするのみという印象です。リアルクローズ、ラグジュアリー関係なく、どのイベントにも同じ子たちが招待されていますよね。
しかも、明確なインプレッションが計測できず、売り上げへの貢献度も分からない。計測できないからインフルエンサーとブランドの相性すら判断できない。ナカヤマン。さんが講演でよく話されているコンテンツがないまま、露出=チャネルだけにお金を垂れ流しているブランドが多い。

これである。
ブランドの基本姿勢やコンセプト、ターゲットが明確でなく、ただ「何となく話題だからインフルエンサーを呼んでいる」というブランドや企業が多い。
これらのブランドや企業の人は自分の頭で物を考えないのかと不思議でならないのだが、何の制約もなく、「イイと思う絵を描いてください」と言われたとしたら、「自分のイイと思う」ことを描く。それはブランドや企業の中の人だって同じ行動をするだろう。
ある人はガンダムを描くかもしれないし、ある人は猫を描くかもしれない。犬を描く人、風景を描く人、さまざまだろう。

で、それらを一堂に集めて「これがわが社の主張です」なんていわれても見ている人は何が言いたいのかさっぱりわからない。
「インフルエンサーを集めただけ」というのはこういう状態を自ら作り上げていることと同じである。認識してもらいたい。

ナカヤマン氏はこれまでの時代を振り返って

「何となく」が、ある程度の効果をもたらしていた時代だったのでしょう。特定のメディアが元気な時代は、そのメディアを「何となく」試していても何らかの効果は出ますよね。

と総括しておられるが、まさにこの通りで、これまでは「何となく雑誌広告」「何となく新聞広告」という安易な手法だけで売れる時代が続いてきた。
そのため、仲介を果たす広告代理店も安易な提案しかできないメッセンジャーボーイに近いようなオッサンであふれかえることになった。
ファッション雑誌広告に強いといわれている中堅の某広告代理店の営業マンなんて「子供のお使い」レベルのメッセンジャーおじさんばかりである。

そして、この「何となくクリスタル」という思考停止のままで、ウェブに取り組む企業・ブランドがあまりにも多すぎる。
たまに古株のアパレル企業の販促会議に参加することがあるが、その「何となく」的思考には落胆させられるばかりである。

また実店舗不振から極端に上っ面だけのウェブ信仰に走る企業も多い。

この記事中では丸井の取り組みが紹介されているが、

たとえば、丸井は在庫を持たない体験ストアを増やしています。そこではアイテムサンプルを試着し、気に入った商品はその場でタブレットを通じてECサイトで購入し自宅に配送する取り組みをやっています。
この取り組みについて、メディアも含めて外部は体験ストアそのものに価値を見出しているようなんですが、実際は数年間にわたって開発し、体験したくなる「ラクチンきれいシューズ」がないと成立しない取組みです。

と指摘されている。
上っ面のウェブ信仰企業は、「ウェブだけあれば大丈夫」という罠にはまりやすいが、実際は物販企業なので「確かな商材」がないと話にならない。
商材作りにのみ異様な執念を燃やす「モノヅクリガー」でも物は売れないが、商材がなければウェブだけあっても物は売れない。その両輪がそろう必要があるのだが、その両輪を確実に取り組めるブランドや企業は業界にあまりにも少ない。

ちょっと長めの記事で、ウェブ特有のカタカナ語も多いが、両者ともにロジカルに話を展開しているので、ウェブのプロモーションについて考えるのには格好の教科書になる。ぜひ一読をお勧めしたい。

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新手の販促手法として原価率明示をするブランドが増加

原価率明示ブランドが大流行だが、果たして業界人以外にそれに興味を持つ人がどれだけいるのかと疑問を感じる。
また、この分野での先行ブランド「エバーレーン」と後続ブランドにおいては大きな差があり、後続ブランドの透明性は到底エバーレーンには遠く及んでいない。後続ブランド各社の原価率明示は、今のところ、単なる販促手段に過ぎない。

もっとも、原価率明示ブランドが登場した背景は理解できる。
高級ブランドというのは、買い慣れていない庶民からするとその価格設定が不明瞭に感じられる。
宝石や貴金属だとほぼ不変的な価値があるので、何十万円とか何百万円という価格になることに対して庶民でも理解できる。
腕時計も似たような部分がある。

しかし、衣料品にはそういう不変の価値はないし、生地は時間がたてばたつほど確実に劣化する。
だから当方も含めた庶民からすると、「なぜあんなに高いのか?」ということが理解しづらい商品だといえる。

国内では衣料品不況によって、元来は「確かな品質」と信じられていた百貨店向けブランドだが、製造原価率を大きく落とししていた。
使用素材のクオリティを引き下げ、製造工賃も叩く、その割に製造枚数は少ない。
こんな状況が普通になっており、ある百貨店向けブランドではすでに原価率は20%未満となっているといわれている。

それへのアンチテーゼとして「原価率明示ブランド」が登場したのは、当然といえば当然だろう。

製造原価以外の配送料などまで事細かに明示しているエバーレーンの登場が、原価率明示ブランドビジネスに拍車をかけたといえる。

だが、冷静に考える必要があるのは、後続ブランド各社はエバーレーンほど事細かにコストを明示しているわけではない。

例えば

ファッションEC大手のマガシークがPB開始
https://www.wwdjapan.com/521679

ファッションEC大手のマガシークは15日から、プライベートブランド「ネセサリーアンドサフィシェント(NECESSARY AND SUFFICIENT)」の販売を開始した。繊維商社のモリリンと提携し12アイテムからスタート。吸水速乾性やイージーケアなどの機能性とともに、サイトでは簡単な原価も明示し、透明性も打ち出す。

とあるが、「簡単な原価を明示」するだけでは到底透明性なんて打ち出すことはできない。

また、

原価や工場を公開、”10年着続けられる服”を作る日本発アパレル「10YC」デビュー
https://www.fashionsnap.com/news/2017-12-11/10yc-debut/

“10年着続けられる服”をキーワードに、持続可能性・透明性・ストーリー性をコンセプトに掲げる新アパレルブランド「テンワイシー(10YC)」がデビューした。

とあるが、これはかなり「鵺的」なブランドだと感じる。
透明性以外に、「10年着続けられる服」「持続可能性(サスティナビリティ)」という2つの流行りのキーワードを埋め込んでいる。

個人的にはユニクロと無印良品の良いところをパクッてミックスした中国ブランド「メイソウ」を彷彿とさせる。
ベトナムにはこの「メイソウ」のパクりの「ムムソウ」というブランドがあるらしく、パクリが拡散・変化していく様が面白い。
もっともユニクロも初期には、ジョルダーノやGAPをパクっていたし、ユニーククロージングという店名自体もパクっていたからお互い様といえばお互い様だろう。

ここにTOKYOBASEやらファクトリエやらを加えた原価率明示の各ブランドの目的は良いとして、製造原価率の高低は生産数量にも大きく左右されることを認識しておく必要がある。

基本的にミニマムロットに達しない場合、生地代も縫製工賃も染色工賃もアップチャージされる。
逆にミニマムロットを越えれば越えるほどすべては安くなる。

だから、某東京コレクション出品デザイナーのように1型サイズ込みで20枚程度しか製造できない場合、生地代・染色工賃・縫製工賃は割高になる。
だから利益を確保しようとすると店頭販売価格が12万円とかになってしまう。

同じ価格帯のグローバルラグジュアリーブランドと比べると生産数量が格段に少ないので、それらよりも製品のクオリティはずっと低くなる。

一方、ユニクロは平均原価率が40%前後だといわれている。
もっともアイテムごとに原価率が異なるので、原価率の高いアイテムもあれば低いアイテムもある。
値引きを見ていれば、だいたいどのアイテムの原価が高くてどのアイテムの原価が安いのかは薄っすらとはわかる。
二束三文で投げ売りされているアイテムはよほど売れ行きが悪いのか、原価が極端に低いかだと考えられる。
500円とか390円で投げ売られるTシャツ類なんかは原価率は低いのだろうと考えられるし、あんまり売れていないにもかかわらずあまり大幅に値引きされないアイテムは原価が高いのだと考えられる。

それらの平均で40%だということは、アイテムによっては40%超のものもあるということだ。

しかも各アイテムの生産数量は最低でも10万枚を越える。

となると、その生産数量で平均原価率40%というのはすさまじいクオリティだということになり、たかだか1000枚程度しか作れないブランドの原価率50%とは比べ物にならないということになる。

原価率明示ビジネスというのは論理の塊なので、論理的に突き詰めるとこのようになりがちなので、格段に透明性が高く先行しているエバーレーン以外の「なんちゃって透明性」ブランドは苦戦を強いられることになるのではないかと思う。

しかし、洋服やブランドの価値というのは、原価率やら品質の高さだけではない。
それ以外の部分の評価も重要だから、それをいかに高めて訴求するかというのがブランド活動ということになる。

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セメントの金谷さんが本を出したので宣伝しておきまーす。

マス層の好む売り場とは?業界人だからこそハマる罠

繊維・アパレル関係の会社に行くと、老年に差し掛かった経営陣までがそれなりに自分が着用する衣服に気を使っている。
今風かどうかとか、色柄のセンスが良いとか悪いとかは置いておいて、とりあえずそれなりに興味を持っているとわかる。

長年、それで飯を食ってきたのだから、めちゃくちゃ好きではないにしろ、最低限度の興味は持って当然である。

しかし、マスの消費者も自分たちと同じくらいに衣料品に興味があると思っていると、大きな間違いを犯す。
近年のファッション不振の原因の一つにはそんなミスマッチもあるのではないかと思える。

マス層は間違いなく、業界人よりも衣料品やファッションには興味も知識もない。
以前、このブログでそごう西武のPBが失敗に終わったのは、カール・ラガーフェルドという超有名デザイナーの起用が原因ではないかと書いたが、ツイッター上では、「そもそもカール・ラガーフェルドが何者なのか知らない」という声もあり、それがマスの意見なのかと感心した。

業界の端くれにでもつながっていれば、業界で「おしゃれ」だとみなされる売り場やブランドを名前くらいは知ることになる。
苦戦が続いているとはいえ、百貨店でいえば、伊勢丹新宿本店への憧れはあるだろうし、買うことはないにしろ、パリコレブランドの名前くらいは知っている。

そういうものを好む消費者は確実に存在する。
そうでなければ、伊勢丹新宿本店は2500億円もの売上高は稼げない。

だが、それはピラミッドでいえば上のほうのほんの一握りに過ぎず、マス層はそういうものは知らないし、知っていたとしてもさほど興味がない。

業界のおじさんたちは、いまだに「伊勢丹新宿本店に並べてもらえればブランドのステイタス性が上がるのではないか」と考えており、そこで棚を一つ確保することに血道をあげている。

整理して考えなくてはならないのは、ハイエンドとかラグジュアリーとか最先端を嗜好する人たちは少数派だが存在して、その人たちは伊勢丹新宿本店で買いたいだろうしパリコレブランドが欲しいだろう。

けれども、マス向けの商品を供給している企業やブランドが目指すべき売り場は伊勢丹新宿本店ではないのではないかと最近強く思うようになった。

マス向けの商品は手軽な価格帯で発売することが必須だし、実際にされている。
アネロのリュックが大ブレイクしたが、あれが1万円とか2万円を越える価格帯ならあそこまで売れなかっただろう。
3000円~4000円くらいだから、マス層が気軽に試し買いできた。

アネロが「ブランドステイタスを高めるために伊勢丹新宿本店に並べてほしい」なんて言っていたら、どうなっていただろうか。
おそらく売れなかっただろうし、ブランドステイタスもさほど上がらなかっただろう。

アネロ的スタンスでありながら、伊勢丹新宿本店に並べられることを目標にしているマス向けブランドは、世間が想像するよりも多くあり、自分を見失っているとしか言いようがない。

では、今、マス層に響く売り場とはどこなのだろうか。

先日、サマンサタバサのブランドが、セブンイレブンで期間限定販売するというニュースがあった。

12月15日からセブン-イレブンに「アンド シュエット」のバッグが並ぶ!
https://www.wwdjapan.com/520498

マス向け商品を供給してきたサマンサタバサはさすがに理解していると感じる。

サマンサタバサジャパンリミテッド(SAMANTHA THAVASA JAPAN LIMITED)のバッグブランド「アンド シュエット(& CHOUETTE)」は、12月15~25日の期間“アンド シュエット ミニバッグ”を東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、群馬県、長野県、山梨県のセブン-イレブンで販売する(一部取り扱いのない店舗、また発売日が異なる店舗もある)。
セブン-イレブンとの初コラボアイテムで、「アンド シュエット」の店舗やECサイトでは販売しない。価格は3800円。

とのことだ。

今、マス層に響く売り場は、伊勢丹新宿本店とかパリのセレクトショップとかではなく、コンビニ、ドラッグストア、百均、ニトリ、ロフト、東急ハンズあたりではないかと思う。
その事例の一つがファミマで展開する無印良品だろう。

無印良品の商品は、高すぎることはないが決して最安値ではない。
業界人からするとファミマに商品が並ぶことは、ブランド価値が毀損すると考えがちだが、実際はそうではなさそうだ。
マス層からすると、「通常商品より少し高いからブランド価値がある」と考えるようだ。

これはドラッグストアに並ぶ「ボタニスト」というコスメブランドも同じで、通常の商品よりも数百円高い。
「少し高い商品なんて安さが売りのドラッグストアで売れるのか?」と思うのだが、ドラッグストアを利用するマス層からすれば「少し高いからブランド価値がある」と考えるようで、ボタニストはドラッグ店内では「ブランド」として見られ始めている。

今回のサマンサタバサの「アンド シュエット」というバッグブランドもこうした流れを敏感に察知したことで、セブンイレブンとのコラボを始めたのではないかと思う。

マス層をターゲットとし、庶民向け価格を設定しているブランドが伊勢丹新宿本店に代表されるような高価格ハイファッション向け売り場をむやみやたらに志向することは、一昔前の感覚であり、今の状況ではかえってファンも獲得できないし、ブランドステイタスも向上しないのではないかと感じる。

ファミマと取り組む無印良品や、セブンイレブンと取り組むサマンサタバサの姿勢が、今の消費者ニーズに則した動きではないかと思う。
わけもわからず伊勢丹新宿本店を目指すマス向けブランドは販売戦略を一考してみてはどうか。

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無名ブランドはウェブサイトを開設しただけでは売れない

何度も書いているように、よほど強固な信念がない限りは、現在において企業もブランドもウェブサイトは必要不可欠である。
どんな不細工なサイトでもないよりはあった方が良い。
それが第1歩だが、2000年ごろのインターネット草創期ならいざ知らず、ウェブサイトを使って集客や物販を行うとすると、それ相応の工夫が必要となる。

しかし、繊維業界・アパレル業界はこの分野に極めて弱いから、多くの企業やブランドは「とりあえずウェブサイトを開設しましょう」という段階である。

一方で、すでにウェブサイト自体は有象無象がひしめき合っているし、通販サイトは乱立している。

何度も書いているようにYahoo!ショッピングだけで40万店くらいは出店しているし、店舗数が減少している楽天でも4万店の出店がある。
この2つだけで重複出店も含めて44万店もあり、よほどの工夫を凝らさないとその中に埋没してしまうことは間違いない。

ベタな例えをすると、脱サラして居酒屋を開店したとして、競合が44万店あれば、よほどの「何か」がないと消費者からは選ばれない。
無名の居酒屋が繁華街にオープンして、そこに初日からわざわざ来てくれる客がどれほど存在するか。
すでに常連になっている店に行くだろうし、常連になっている店がなければ有名店に行く。
無名の居酒屋が選ばれる理由は何一つない。

無名の企業が今、新規にウェブサイトを開設するということは、こういうことである。

これを忘れて、ウェブサイトを開設すれば即座に多くの人が流入すると思っている残念な人が繊維業界には多い。
それだけアレだとさぞかし人生は楽しいのだろうなと思う。

さて、このブログを9月下旬にワードプレスでリニューアルしてくれたのはスタイルピックスという会社なのだが、そのおかげもあってスタイルピックスとウェブサイトの仕事で絡むことが増えた。

http://style-picks.com/

トップページには同社の短髪の看板娘の動画が貼ってある。

で、ウェブサイト開設、ウェブサイトの運用というのを見ていると、「どのように呼び込むか」が重要だと改めて痛感させられる。

企業やブランドがウェブサイトを開設する理由はつまるところは、

物(サービス)を売りたい(平たくいうと金儲けがしたい)

であるが、そのためには

1、ファンを増やす必要がある
2、定期的にサイトを見に来てもらえる内容をアップし続ける

ことが必須になる。

そのためには、単に品物(サービス)だけを並べているだけでは、よほどの超有名ブランドでもない限り不可能であり、そのために各社はブログを更新し、動画やコーディネイト画像をアップしている。
いわゆるコンテンツを強化している。

価格優位性があるといわれているユニクロとジーユーでさえ、単純な商品の陳列だけを行っているのではない。
コーディネイト画像の更新やら、ちょっとキモいタッチの松浦弥太郎氏のコラム連載やら、タレントが語り掛けてくれる動画コンシェルジュだとかそういうことをやっている。
価格優位性があり圧倒的知名度がある、ユニクロとジーユーがこれほどの工夫を凝らして売っているのに、無名のブランドが何の工夫も凝らさずにどうして売れると思えるのだろうか?その考えがわからない。

それに気が付いて、ブログをアップするブランドや企業も増えたが、個人的に「それでは効果が上がらない」と感じる事例は多数ある。
もちろん、ブログはやらないよりはやった方が良いことは前提であることは言うまでもない。

例えば、大手ではないジーンズブランドがあったとして、ブログにアップできる内容は様々ある。

ジーンズというアイテムの説明だけでも何回も書けるだろう。
それ以外にも、

ジーンズ業界について
デニム生地いついて
縫製について
洗い加工について
ジーンズファッションについて

などが考え付く。

これは他のジャンルのブランドでも同じだろう。
「ジーンズ」「デニム」をそれぞれのジャンルの商品や素材に置き換えれば良い。

いわば、これらはマクロな話。

自社のブランドや活動というミクロなことも不可欠で、問題はそれの書き口ではないかと思う。

「今朝も〇〇工場さんと打ち合わせで岡山に出張です。がんばります」程度な文字数なら、はっきり言って「ツイッターに書いていろよ」と思う。
また、自社の商品のセール情報しか書いていないならそれは折込チラシと同じで、ほとんどの場合が流される。

仮にも独自ブランドを名乗っているなら、商品の工夫した点や生産背景との取り組みがあるだろうから、それをキチンと書く必要があるのではないか。

1、商品デザインについて
2、使用した素材について
3、パターンなどで工夫した点について
4、製造を請け負ってくれている各工場について
5、個人的な考えについて

などである。

これらがないのであれば、エドウインかリーバイスの代理店でもやっていればいい。
おわかりいただけるだろうか?

もちろん、人間は綺麗ごとだけでは生きていない。むしろ綺麗ごとの方が少ない。
人間の生きている理由のほとんどは汚くて利己的な理由ばかりだと思っている。

「とりあえず手っ取り早く儲かりそうだからブランドをやってみた」とか、「理由はあまりなくて何となくブランドを始めてみた」とか、見聞きした範囲でいえばそういうことが数多くある。

まあ、それはそれで書けば良いだろうし、それでも業務としてやっていくうちに、独自に工夫を凝らしている部分が自然発生しているだろうから、それを書くべきである。

この辺りを整理してコンテンツを作れているブランド、作る気があるブランドは極めて少ないと感じる。
逆に批判はあっても、現在のウェブでの勝ち組ブランドはこの辺りを実行しているといえる。

あと、ウェブサイト開設・運用には確実にカネは要る。
最低限のカネは絶対的に必要である。
ときどき、いまだに「10万円くらいでサイトを作ってほしい」とか「3万円でサイトを作ってほしい」とかいうとぼけた人が繊維業界には山のようにいるが、100万円とか1000万円とかバカ高い金額は必要ないが、世間相場を知らないと話にもならない。

機械類なら何百万でもポンと支払う製造加工業者、酒を飲ませる店になら何十万円でも気軽に支払うアパレルメーカー経営者、自分の飲み食いになら毎日惜しげもなく散財する個人事業主などに限って、ウェブサイト製作に3万円とか5万円とかのあり得ない価格を提示するので呆れ果てることが多い。結局はそういうレベルの業界なのである。

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三越伊勢丹HDが「ケイタマルヤマ」を手放す理由とは?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n06274a064cba

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