カテゴリー: 誰がアパレルを殺すのか (1ページ / 3ページ)

低価格商品に最高峰品質は必要ない 

先日、神戸のレディース靴工場、ロンタムの神農社長と遅めの新年会をした。
実は、1月中に5人くらいで新年会をするはずだったのだが、前日にぎっくり腰を発症されて、欠席になってしまったので、今回はその挽回戦となったわけである。

当方も含めたオッサンの身体は漏れなく傷んでいる。(笑)

神農社長と知り合ったのは、2015年に当方がブログセミナーを開催した際、出席してくださったことがきっかけだった。

それから神農社長はずっとブログを書き続けておられる。

http://blog.livedoor.jp/masamichirontam/

ブログの効果としては、ブログを読んだと言って受注があることがチラホラ出てきたことだという。
何事も継続は力なりである。

とは言っても、工場の現実は厳しく、神農社長によると長田にあるケミカルシューズ工場は全般的に厳しい状況にあるという。

そうそう、ケミカルシューズという言葉だが、当方にはあまり違和感がないが、まれにその言葉を聞いたことがないという人もおられるそうだから、簡単に説明しておくと、本革の靴ではなく、合皮やビニールというような化学的な素材を使って作る靴のことである。
だから、元々は低価格向けとして作られていた。
低価格ということは大量生産・大量販売が前提である。

しかし、中国やアセアンなどでさらなる低価格ケミカルシューズが作られて、日本に輸入されるようになると苦境に転じた。

低価格ではアジア製には勝てない、かといって品質や機能性では高額靴メーカーには勝てない、というサンドイッチ状態に陥ってしまっている。

また、靴業界そのものも苦戦傾向にあるらしく、いわゆる品ぞろえ型「靴専門店」がかなり厳しいそうだ。
神農社長に言われてみると、パッと思いつくのは「ABCマート」やチヨダくらいで、「ダイアナ」「マリング」などの靴専門店は店舗数を減らしているし、店としての明確なイメージが思い浮かばない。
ABCマートだと「スニーカー」というイメージが思い浮かぶが、ダイアナ、マリングあたりになると一応、レディースのパンプスとかハイヒールが思い浮かぶが店舗に行くと、スニーカーはあるしワークブーツもあるし、で何が得意な店なのかがわかりにくい。

それ以外だと、ブランドの直営店やオンリーショップばかりが思い浮かぶ。
例えば、オッサン的発想なら「リーガル」だ。

そうなると、新規取引先の開拓といっても限られるので、必然的にロンタムはアパレルや大手セレクトショップの別注品やOEM生産が増えているという。
これは他の靴工場も同じなのではないだろうか。

そんな状況を打破すべく神農社長は奮戦しておられるが、上記のような理由で、いわゆる新規卸先を開拓するのはかなり難しい状態になっている。

神農社長にヒントを求められたのだが、そんなものを提示できるなら当方はとっくに金持ちになって、スーパー万代で定価で食材を買っている。
具体的なヒントは差し上げたくても差し上げられないからひどく原則的なことをお答えした。

オリジナル製品を作って拡販を図るとして、

1、品質、機能性以外の価値を提供できること
2、工場の背景や歴史をストーリー化すること
3、消費者に「欲しい」「買ってみようかな」と思わせる「価値」を作ること

を挙げた。
あくまでも原則論なので、これをもとにどう組み立てるかは、大手アパレル並みに相手に丸投げしておいた。

神農社長は「真面目」な性質で、「オリジナル製品を作るにしても僕らの商品はまだまだ品質的には最高峰には程遠く・・・」と常に言われ、その職人としての求道精神には本当に敬服しているが、それではなかなか進まない。

こういう職人の求道精神は大切にしたいと思いつつも、ビジネスを進める上ではどこかで割り切る必要があるとも思う。

最高峰の品質を実現した暁には、その商品の販売価格はいくらにするのだろうか?
最高峰の品質だから10万円では、よほどのブランド力やステイタス性がないと誰も買わない。
ましてや新参ブランドでは絶対に買わない。

また、神農社長ご自身でも、婦人のパンプス類の店頭販売価格は13000円くらいが限界だとおっしゃっている。
普通に考えても安いパンプスなら2000円くらいで売られているご時世で、よほどの何かがないと2万円を越えるパンプスは買わない。

そうなると、紳士靴ならまだしも婦人靴で2万円を越える高価格を付けることはちょっと現実的ではない。

どこかの部分で値段相応に品質を割り切る姿勢が必要だろう。
1万円だからこの品質、最高峰品質だから5万円という具合に。

これは以前に、初著書「小さな企業が生き残る」(日経BP)を紹介したセメントプロデュースデザインの金谷勉社長も同じ主張である。
金谷社長の場合は伝統工芸に対して、

最高峰のハイエンドモデルだけではなく、一般人でも手に取りやすい価格の入門編を作るべきだ。その入門編は簡略化した技法で作れば良い

と提言しておられ、まさにそれが必要ではないか。

例えば、オール手塗の漆器があったとして、それが10万円くらいするなら買う人・買いたい人は限られる。
しかし、漆塗りの技法を簡略化して5000円くらいにして発売したらどうだろうか。プロモーションの手法や商品デザインにもよるが、多くの人が買いたい、買ってみても良いとなる。

ロンタムのオリジナル靴もこの割り切り方が必要ではないかと思う。

さらにいえば、機能性や品質とは別の価値提供という部分では、スタートトゥデイのプライベートブランド「ZOZO」を参考にすべきだろう。あのTシャツとジーンズの品質や機能性は値段相応に過ぎないのに、多くの人がそこに「価値」を見出している。
正確に言えば、価値を見出したと錯覚しているだけなのかもしれないが、そう思わせる手法はブランド運営には必要になる。

神農社長の悩みを聞きながら、アパレルブランドも同じ部分で悩んでいるのではないかと思った。

もうすでに、服という単品での品質と機能性、デザイン性では差別化できない状況になっている。
もちろん、そういう部分にフォーカスするマニア客は存在するがそこの人数は多くない。
仲間と数億円程度の売上高が稼げて利益率が確保できれば良いなら、そのマニア層を狙っても良いが、何十億円・何百億円の売上高を目指すならマス層に向けて売るしかない。

しかし、マス層に「品質ガー」「機能性ガー」「デザインガー」ばかり唱えていても仕方がない。
デザインはさておき、もうすでにユニクロや無印良品の商品に品質も機能性も負けているアパレルブランドが多数あるから、その土俵で戦ってもさらに負けるだけのことである。
だったら違う価値を提示するしかない。
その価値を作れたブランドだけが生き残れるだろう。

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物性のみでは低価格品との差別化は不可能になってきた

寒さのピークは1月~2月で、この時期、毎年右耳に霜焼けができる。
なぜか右耳だけで左耳はいつも無傷だ。
年明けまではできていなかったので、安心していたら2月の寒波でまた右耳に霜焼けができてしまった。
昔からできていたわけではなく、3年くらい前からできるようになった。
今回で3年連続3回目の出場ということになる。

原因の一つは駅まで自転車に乗っていることだと思う。
その際、耳当てをすれば良いのだが、めんどくさくてしていない。
ユニクロで190円に値下がりした耳当てを2つ買ったのだが、未使用である。
自転車に乗る際は耳当てをしたとして、下りて歩いているときも耳当てをするのは格好悪い。
で、その着脱がめんどくさいというのが言い訳である。

そこで思い立って、ウールのニット帽を買った。
これなら被ったまま歩いても変ではないだろうから。
あとは髪が伸びてきてペタっと寝るので、禿隠しでもある。
くせ毛なので短いと立たせて禿をごまかすこともできるが、髪が伸びてペタっと寝ると、隠そうとしても隠し切れない禿になってしまう。特に強風の日は禿丸出しだ。
上手く隠し切れない場合はニット帽をかぶるしかない。
嗚呼、悲しき禿。

当然、当方が買うなら値下げ品しかあり得ない。
しかもニット帽は「好みの商品」ではないから、できるだけ安い方が良い。
でも粗悪品は嫌だ。

まあ、はっきり言って単なるわがままなのだが、そういうのが無印良品にあった。

「おでこのチクチクを抑えたワイドリブニットワッチ」である。

元値は1900円だったと記憶しているが(違っていたらごめん)、店頭では500円に値下げされている。
しかも税込み。本体価格は450円くらいということになる。
ネットではなぜか1000円のままなのが謎である。(笑)

本体はウール100%で、切り替え部分が綿100%と表示されてある。

1900円でも安いとは思うが、税込み500円は魅力的な価格だ。
迷わず買った。

店頭では残り少なくなっており、ライトグレーとメランジ調の水色が残っており、迷わずライトグレーにした。
他の店舗だと白も残っていたが、オッサンにはライトグレーが一番マシに見える。
さすがに黒とか紺は売り切れていた。

最初に、商品の表示を見て、どこに切り替え部分があるのかわからなかった。

画像で見てもらってもわかる通りに、切り替え部分がないように見える。

でも、よく目を凝らして見ると、ほとんどわからないほどに色も編み目も同じにした綿部分が帯状に差し込まれている。
裏面から透かして見るとより分かりやすいだろう。

真ん中の濃くなった部分が綿ニット部分である。
これを額に当たる部分に差し込むことでウール特有のチクチク感を抑えるという設計である。

 

こんなに細かい作業をした商品が1900円でも十分にすごいのだが、500円に値下げできるというのはすさまじいと感じる。
しかも材質はウール100%で、アクリル100%の他の低価格ニット帽に比べると格段に素材の値段も高い。
ウールは値上がりし続けているからだ。

あからさまに綿とウールを切り替えるのは技術的には簡単である。
まったく違う編地をつないで「デザインっぽく」すれば済む。
しかし、違う素材で同じような編地を作って、それをほぼ継ぎ目が見えないほどスムーズにつなぐのはすごい技術だと思う。

従来、衣料品では、低価格品との差を「品質」とか「素材」とか「縫製仕様」などで説明してきた。
素材にしろ縫製にしろ、一概に「〇〇だから高い」とは言えない部分はあるが、ある程度はそれで説明ができた。
ウールにもさまざま等級があるし、合繊にも高額なものもある。
しかし、アクリル100%のニット帽は安物でウール100%はそれよりは高い値段が付けられていても多くの消費者は納得できた。

ところが、このニット帽はどうだ。

ウール100%素材もすごいが、ウールの編地と綿の編地を見わけがつかないほどスムーズにつないでいる。
ウール部分から綿に切り替えるだけならまだしも、もう一度ウールとつないでいる。

ウール・綿・ウール

という具合に編地を2回つないでいるのである。

1900円でも十分に安いが、500円は破格値だ。

品質の高さと値段の安さではちょっと他のブランドは太刀打ちできない。

もう「ウール100%だから」とか「ニット地を切り替えて手が込んでいるから」なんていうだけでは、高値を付ける言い訳にもならない。
これまでなら、「デザイン性が」なんてことも言えたが、無印良品やユニクロの商品のデザイン性も上がっている。上がっているというか、デザイン性は業界的に平準化されてきている。

こうなると、価格競争に巻き込まれたくない衣料品や服飾雑貨は別の「価値づくり」をすることが求められる。
これまで通りの「品質」「素材」「デザイン」だけでの差別化はまったくできなくなっており、そこにフォーカスすればするほど価格競争に巻き込まれるし、場合によってはユニクロや無印良品に「品質」「素材」面で負けてしまう。

現に、大手セレクトショップの中途半端なセーターなんてユニクロや無印良品のセーターに素材面でも品質面でもボロ負けしているではないか。おまけに価格だけは一人前以上に高い。
そういう部分にだけフォーカスしたら、買ってもらえる理由なんてまったくなくなる。
お分かりだろうか?

となると、違う部分での「価値づくり」が必要になる。
日本国内のブランドや企業はこの「価値づくり」が下手くそである。
とくに90年代までは繊維製品に限らず、高機能性を追求すればある程度は売れたから、それが今も染みついているといえる。
衣料品や服飾雑貨だって、良い品質で割安ならある程度は売れた。
小難しいブランディングやらマーケティングやら販売戦略やらはさほど必要なかった。

好き嫌いは別にしてそこが上手いのが欧米ラグジュアリーブランドだろう。
塩化ビニールの鞄を高値でも欲しい商品に感じさせてしまう手法は大いに見習うべきだろう。

こういうことを書くと、「日本の技術は通用しない」という極度の悲観論が出てくるが、そうではなくて追いつかれる部分も追い越される部分もあるということだ。
例えば、ドイツは機械類や自動車が得意だと評価されているが、鉄道の運行はゴミ屑で遅延は当たり前である。
キッチリしているなら鉄道運行もキッチリできそうだが、そうではないらしい。
ここが面白いところだが、どんな国や国民でも得手不得手はあるということで、スーパーマンがそろっているような国はない。

日本だって、ある分野の技術は追いつかれたり追い越されたりすることもあるだろうが、依然としてトップを守っている分野もある。
生地製造でいうなら、生地の風合いの良し悪しなんて追いつかれたり追い越されたりしやすいし、好き嫌いにも左右される。
しかし、不良品率の低さは日本が断トツに高い。国内工場でありながら、カイハラのデニム生地がユニクロに評価されているのは不良品率の低さという部分がある。

自社の優れた部分とそうでない部分を冷静に冷徹に見極めて、それに対処するのがマーケティングの基本である。
何ができて何ができないのか、それを認識する。

知るを知るとなし、知らずを知らずとなす、これ知るなり

「論語」の孔子の言葉である。
自分が知っていることと知らないことを区別して認識することが「知る」ということで、知っていることと知らないことの区別ができていない状態は単なる混乱状態だという意味であり、マーケティングの基本にも通じるものがある。

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繊維・ファッション業界に必要なマーケティングの考え方とは?

USJを再生した森岡毅氏のダイヤモンドオンラインの連載が最終回を迎えた。

USJ再生の森岡毅が語る「マーケティングの知識、経験、予算がない企業がすべきこと」
http://diamond.jp/articles/-/158739

今回は具体的な施策ではなく、原則論を述べておられるが、原則論の方がどんな分野に対しても応用が効く。
中華には兵法書があまたあったが、最高の評価は孫子である。
「孫呉の兵法」と孫子と並んで評される呉子は現代ではそれほど評価されていない。
なぜなら、当時の具体的な施策についての言及が多く、現代には応用できないからだという研究者の意見を読んだことがある。
一方、原則論が多い孫子は現代にも応用できるという評価を受けている。

それでは見てみたい。

本質的にはもっと大事なことがあります。そのポイントをここでお伝えするのですが、大前提として、高いギャラを払ってマーケターを雇ったり、マーケティング部を作ったりすることができないなら、社長自身がマーケターになるしかありません。
 といって、高度なマーケティング技術や知識が必要なのではなく、まずは次の3つについて考えてみてください。

(1)貴社は自分が戦っている市場を理解していますか?
(2)貴社の消費者を理解していますか?
(3)貴社の強みを理解していますか?

まず、ここだが、どうだろうか。
このブログを読んでくださっているのは繊維・衣料品業界の人が多いと思うが、苦戦している企業やブランドはこれができているだろうか?

例えば、(1)については理解を間違えていることがよくあるのではないかと思う。
繊維・衣料品の市場については、よくあるのはこのどちらかではないか。

1、とにかく低価格商品が強い
2、二極化で高い物か安い物しか売れない

1の場合は、価格競争に自ら追随して疲弊する企業やブランドが多いし、2の場合は、価格競争を避ける目的からむやみな高価格化を図る。

当方が見てきた繊維・衣料品業界の企業・ブランドにはこの2つのケースが多かった。

多くの経営者は「今、売れるものは何か」を必死に考え、商品を考えることで頭をいっぱいにしてなんとか経営を成り立たせていますが、もっと大事なのは自社の商品を考える前提となる「市場の構造はどうなっているか?」あるいは「消費者は本質的に何を買っているのか?」を掴むことです。

とのことだが、「今、売れるものは何か」しか考えていない企業・ブランドは繊維・衣料品業界には本当に多い。
ユニクロ商品への追随しか考えていない大手総合スーパーの商品施策はこれしかない。
1900円のフリースが売れれば1900円のフリースを、ヒートテックが売れればホットナンチャラという名前の保温下着を、ウルトラライトダウンが売れれば軽量ダウンを、ジーユーが990円ジーンズを発表すれば980円ジーンズを、という具合に常に半年から1年遅れで追随してきた。
しかし、見た目と価格をまねることに精いっぱいで、肝心の商品クオリティはユニクロよりも低い場合が多く、いくら価格が同じでも「粗悪品」は売れないので、ことごとく失敗に終わっている。

そうはいっても、低価格というのは大きな武器だからそれは活用すべきだが、ユニクロと同じような見た目の商品を発売しても意味がなく、それとは異なる機能、デザイン、品質の商品を発売するべきである。
しかし、衣料品業界は長らく「トレンド」を体現することが「売れること」だったから、それと同じ感覚で「ユニクロ商品」に追随してきたのではないかと思う。

スキニージーンズがトレンドだから細身のジーンズを発売するということと、ユニクロのフリースが売れているからそれを真似ることは、似ているようで大きく違う。
お分かりだろうか?

ドリルを作ったり売ったりする前に、消費者が本当に欲しいのはドリルではなく「穴」であることを明確に理解しておかなくてはならない。howを考える前に、whoやwhatを突き詰めて考えて明確にするということ。

繊維・衣料品業界は「ドリル」に目を奪われてしまう企業やブランドがあまりにも多い。
穴を開けることが必要なら、ドリルでなくても千枚通しでもピンバイスでも構わない。だから千枚通しを発売しても構わないのに、みんなで一斉に「ドリル」を発売する。手段のためのドリルがいつの間にか目的に代わり、ドリルのデザインやら機能性を極限まで追求し、そして売れずに在庫の山を築く。これがここ20年間の繊維・衣料品業界の姿といえる。

その上で

戦略とは「選ぶこと」です。つまり、「何をやって、何をやらないのか」を決めるのです。

「変えてはいけないもの」「変えてもいいもの」の見極め方

マーケティングにおいて大事なのは「本当に消費者が買っているものは何か?」を突き詰めることです。私は「what」と表現をしますが、消費者が買っている本質的な「what」を考えることが重要なのです。

 もともとUSJは「映画のテーマパーク」という面にこだわって運営してきました。それがUSJであり、それを変えてはいけないと、誰もが思い込んでいたのです。
 しかし、お客様がテーマパークに求めている、本質的なwhatとは何か。そんな問いに真正面から向き合ったとき、違った景色が見えてきます。
 人がテーマパークに求めているのは、忙しく、ストレスフルな日常から離れ、エキサイティングな体験をすることです。つまり、ドキドキ、ワクワクを求めてやって来るのです。それは昔も今も変わりませんし、「変えてはいけない部分」です。
 しかし一方で、ドキドキ感やワクワク感を満たす方法論は必ずしも“映画”でなくても、アニメでも、ゲームでもいいわけです。そこに行き着いたとき、USJにとって「変えてはいけないもの」と「変えてもいいもの」が見えてきました。

とのことで、USJが本来はユニバーサルスタジオと何の関係もない少年ジャンプの漫画「ワンピース」とのコラボをした理由もここにあったと推察される。

とはいうものの、「変えるものと変えないものの見極め」というのは本当に難しく、一歩間違えると大失敗を招く可能性がある。
このフレーズを聞いたときに、真っ先に思い出されるのが、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋・前社長である。

2016年に断続的にインタビュー取材する機会に恵まれたが、その際に盛んに登場したのがこのフレーズだった。
凋落する百貨店を再生するために変えるものと変えないものの見極めが重要だということで、大西・前社長は「ファッションの伊勢丹」が変えないものの1つだという認識だったが、それは果たして正しかったのかという疑問は今でも個人的には感じている。
新宿本店はその通りだと思うが、他の地方店はどうだろうか。
地方はそういう「最先端ファッション」「高級ファッション」を強く求めているだろうか?

当方がファッションに疎く、高級ファッションなんて買えない貧民だから余計にそう思うのかもしれないが、そういうものを求める層は本当に少ないのではないかと思う。

低価格な粗悪品は論外として、そこそこの値段でそこそこに見えるファッションという需要がマス層の需要ではないかと思う。
じゃあ、「最先端ファッションの伊勢丹」というイメージの固定化は三越や他の地方店にとってはそれほど必要ではないのではないか。
逆にそのイメージが強くあったから、ブランドラインナップがショボかったJR大阪三越伊勢丹は失敗してしまったと個人的には見ている。

今回の森岡毅氏のマーケティング原則論は、他の繊維・衣料品企業も大いに参考になるのではないか。
「目的」ではなく「手段」にばかりこだわり、手段を目的化してしまっている企業やブランドがあまりにも多すぎる。それが繊維業界の苦戦の一因といえる。

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プライベートブランド「ゾゾ」のすごさは商品ではなく、そのプロモーション手法にある

プライベートブランド「ゾゾ」が発表され、各報道を見ると、矛盾した言説・受け答えが溢れており、読めば読むほど整合性がなくなる。
長らく交流している方から、ゾゾ商品のサイトが完成していると教えていただき、直接自分の目で確認することにした。

http://zozo.jp/pb/

基本的に、ゾゾという商品はフルオーダーではなく、パターンオーダーだということがわかる。
ゾゾスーツでの採寸によって、サイズを合わせるという「仕掛け」によって、「一からその人に合うサイズの服を作る」と思っている人が多いように感じる。
とくに、衣料品業界外のイシキタカイ系ジャーナリストや経済紙関係者にはその嫌いが多い。

採寸によって、一から型紙を起こすというのは、「フルオーダー」でこれは何十万円もする。
何せ、ゼロから形を作り上げるのである。

一方、近年、3万円前後で「オーダースーツ」が売られるようになっているが、これはフルオーダーではなく、パターンオーダーないしイージーオーダーと呼ばれる手法で、厳密にいうとパターンオーダーとイージーオーダーは別らしいが、ここではほぼ同じとして取り扱わせてもらう。

あらかじめ決まったパターン(型紙)があり、採寸したデータをもとにそれを微修正するのがパターンオーダーである。

A6サイズのスーツがあったとして、採寸したデータをもとに、袖を短くしたりウエストを広げたりと微修正する。
襟の形やボタンの種類を選べるようなオプションを付けることができるが、それもゼロから作り上げるわけではない。

これによって、製造期間は短縮できるし、製造コストも抑えることができる。
だから3万円前後でオーダースーツが作れるというわけだ。

受注して即日~2週間で納品できると謳っているゾゾは取りも直さずパターンオーダー商品だといえる。
また「即日納品」が可能だということは、あらかじめ標準商品を何枚か作りおいていて、その標準商品に適応した体格の人から受注があれば、それを即座に送り出すということになり、これなどはパターンオーダーですらなく、単なる既製服販売と同じということになる。
既製Tシャツ1200円というのは、果たして「破格値の安さ」といえるだろうか?

標準商品で満足できない人には、採寸データをもとにした「微修正」が加えられる。
裾丈の長さ、袖の長さ、袖幅などなどを微修正する。

これはジーンズでも同じである。

型紙の微修正なんていうのは、現在ではパソコンのCADCAMを使って行う。
袖丈や袖幅を変更した際に最適なように全体を自動的に微修正してくれる。

ジーンズで限りなく、ウエストのデカい人(150センチくらい)がいて、それ用にウエストを広げた場合、グレーディングと呼ばれる各部の比率変更が必要となる。これを今ではパソコンソフトでできる。
ウエスト150センチに広げた場合、それに比例して各部を広げると、ジーンズの裾幅なんてめちゃくちゃに広くなって袴みたいなジーンズになってしまう。
それではさすがにおかしいので、裾幅はあまり広げずにウエストだけを広げる。
これがグレーディングという作業で、標準とされるS~Lサイズだって同じグレーディングが行われている。

例えば、アダストリアのレイジブルーの商品で見てみよう。

http://www.dot-st.com/rageblue/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=780048

このズボンのサイズは

Sサイズ ウエスト74センチ・もも周り62センチ・裾幅31センチ

となっている。また、

Lサイズ ウエスト89センチ・もも周り64センチ・裾幅34センチ

となっている。

見比べてみてどうだろうか?
ウエストは15センチ拡大しているのに、もも周りは2センチしか違わない。
裾幅も3センチしか大きくなっていない。

これはウエストに比例して各部を広げていないという証明で、このサイズ比率の変更がグレーディングであり、これは既製服でも普通に用いられている。

ゾゾのオーダーとはパターンオーダーと採寸によるグレーディングを合わせた手法で、「完全オーダーメイド」ではなく、イシキタカイ系が夢想するような「フルオーダー」でもないということである。

商品そのものについてはどうだろうか。
Tシャツとジーンズの画像と説明文を見た限りでは、はっきり言って「普通」である。
恐ろしくかっこいいわけでもないし、恐ろしくダサいわけでもない。
あくまでも「普通」であり、それ以上でもそれ以下でもない。

素材も普通だが、ちょっと奇妙なこともある。

メンズのTシャツの使用素材は40番手双糸なのに対して、レディースのTシャツは20番手単糸なのである。(ウェブサイトにそう書いてある)

ちょっとでも生地や糸の知識がある人にはその可笑しさが伝わると思うのだが、そうではない人のために蛇足ながら説明をする。

この二つの生地は一見するとほぼ同じに見えるだろう。
生地の厚さも同じだ。

しかし、どちらが高品質な素材かというとメンズである。

20番、40番とは糸の太さを表す「番手」であり、数字が大きい方が糸は細くなる。
40番より20番の方が糸が太い。

ところが、糸というのは1本だけで生地を織ったり編んだりせずに、2本を撚り合わせて使うこともある。
1本の糸で織ったり編んだりすると「単糸使い」といい、2本撚り合わせた糸で生地を構築すると「双糸使い」となる。
当然、糸を2本使っているので、材料費は「双糸使い」の方が高くなる。

じゃあどうしてそんなめんどくさい「双糸使い」なんていう生地があるのかというと、単糸使いの生地は総じて、洗濯をすると斜行しやすくなるからだ。とくにTシャツやカットソーの単糸生地は斜行しやすい。これを防ぐために「双糸使い」という生地がある。

そういう意味でメンズTシャツ素材の方が圧倒的にレディースよりも高品質である。

またなぜ生地の厚さが同じかというと、細い40番手の糸も2本撚り合わせると、太さは倍になる。当たり前だ。
40番手2本で、20番手単糸と同じ太さの糸になるため、それぞれを使って編んだ生地は厚さは同じになる。

だから、見た目はメンズもレディースも同じ生地に見えるが、中身は別物だ。

通常、レディースの方の生地クオリティをメンズより落とすことは考えにくく、これは恐らく、同じ生地が手配できなかったための代替措置ではないかと思う。
それでも当方なら20番単糸生地をメンズに使うが、あえてそれをレディースに持ってきたスタートトゥデイは本当に生地に興味がないんだと思う。

プライベートブランド「ゾゾ」の商品自体は限りなく「普通」で、レディースのTシャツ生地のクオリティはあまり高くない。
ジーンズも普通だし、デニム生地も綿99%・ポリウレタン1%の12・75オンスデニム生地なので、ありふれている。

ゾゾの「物」自体は大したことがない。現段階では。

ゾゾのすごいところはその「仕掛け」「販促の手法」にある。
アパレル業界が見習うべきはこの部分である。

まず、採寸できるゾゾスーツの開発に投資するという「仕掛け」。

そして、そのスーツを無料配布するという手法。
それで期待感を煽り、商品の発表ということになるが、期待感で煽られている人が多数いるため(特に経済系インフルエンサーやメディアなど)、メディアに大量に記事掲載される。

従来からあるパターンオーダーと場合によっては既製服販売に過ぎないものが、最新鋭テクノロジーで作られた服かのように報道される。

商品自体はあくまでも「普通」だし、その供給システムも従来型パターンオーダーの域を何一つ出ていないのに、最新テクノロジー服という「イメージ」だけが醸成され続けていく。

この「イメージ戦略」は正直なところ、海外ラグジュアリーブランドにも匹敵するといえる。
単なる塩化ビニールの鞄をさも「良い物」というイメージを与えているルイ・ヴィトンと同じ手法といえる。

そういう意味では、この「仕掛け」「販促手法」「見せ方」は見事だというほかない。

そもそも、今の衣料品でだれもが驚くような画期的な商品なんてものは出現しない。
もしかしたら、未来においては1ミリ秒で蒸着できるようなコンバットスーツが開発されるかもしれないが、そういうものでない限りは、驚くほど画期的な服なんてものは出現しない。

そういうものが現れるとしたら、ハイテクノロジーを詰め込んだウェアラブルだったり、ハイテク機能を満載した機能素材で作られた服くらいしかない。

洋服という商品においては「物自体」での差別化や革新は生まれにくくなっており、「普通の物」と「従来型パターンオーダー」という手垢にまみれた供給システムを再編集して見せなおしたというスタートトゥデイの手腕はすさまじいものがある。
国内のアパレル業界に足りないのはこの部分であり、そこは大いに見習うべきである。

ただし、個人的にはこの商品を買おうとは思わない。
ユニクロで1990円に値下がりしたジーンズを無料で裾上げしてもらった方がコスパが高い。

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我が国のアパレル市場はさらに寡占化が進む

現代ビジネスにニトリの社長の2018年経済予測記事が掲載された。

ニトリ会長が2018年の日本経済を大予測!「今年はズバリ…」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54073

ニトリの似鳥社長の経済予測はよく的中するのだそうだ。

日米の株価は今より下がる、インバウンド需要は息切れする可能性がある、などちょっと悲観的な予測が並んでいる。
個人的にいえば、インバウンド需要なんていつまであるのかわからないという見方には賛同だ。
現に一度2015年末には落ち込んでいる。
中国や東南アジア諸国の海外旅行ブームだっていつまで続くかわからない。かつて日本だって海外旅行ブームがあった。
そんなあやふやな需要にすがっている百貨店は本当にこれから厳しくなると思う。

似鳥社長のこの記事の中でもっとも賛同したのがこの部分である。

一言で言えば、いまアメリカで起きているのは『寡占化』です。強い企業は業界の垣根を越えてよその業界も侵食しながら、さらなる巨大企業へと膨れていく。
勝ち残れるのはそのトップだけで、ほかは市場からの退場を余儀なくされる。業界が丸ごと消えてしまうところも出てくる



これはアメリカの流通がAmazonとウォルマートの2強に寡占化されていることを指してのことだが、これに近い状態には我が国でもそうなるだろうし、すでにその兆候は表れていると感じる。

我が国の衣料品業界でいうと、Amazonの脅威もあるが、ユニクロとジーユーを擁するファーストリテイリングの寡占化はさらに進むと感じる。逆に、しまむらは厳しいのではないかと思う。
しまむらの苦戦については、ようやく他の記事でも触れられるようになったが、ビジネスモデルの転換による過渡期という部分と、それによってユニクロと同じ土俵で戦うことになったことが挙げられる。

これまで、しまむらはPBを含みながらも多品種小ロットの売り切れごめん体制で好評を博してきた。
しかし、しまむらが増益に転じるきっかけとなった保温ズボンは100万枚の売れ行きがあった。

100万枚の保温ズボンを仕入れで賄えるはずがなく、これは自主企画商品であり、それを100万本という大量生産・大量販売を行ったということである。
それまでの「しまむらモデル」からの転換で、ユニクロと同じスタイルだということになる。
自社のモデルの転換はなかなか上手くはいかない。場合によっては定着せずに撤退する可能性も高い。
ライトオンが「仕入れ型」と「SPA型」を何年かずつ交互にやってみて、やっぱりだめだと言って行きつ戻りつしているのがその好例である。

そして100万枚の低価格保温ズボンはユニクロとまったく同じ土俵での勝負ということになり、このスタイルを継続することではユニクロに一日の長があり、しまむらはそれをどのように考えているのだろうか。

これはいち早く、OEMを手掛ける当方の友人が指摘していたことでようやくメディアにも同様の指摘が掲載されるようになった。

先日、久しぶりに天王寺界隈で店舗巡りをしてみた。
当方が利用する店は天王寺にほぼ集結していて便利なのである。

店舗巡りの感想はまた別途まとめてみるが、例えば、ジーンズメイトは鳴り物入りでデビューした新PB「メイト」の冬物商品が大幅値下げされている。
今回はあくまでも、趣味のメンズ商品を見ての感想として読んでもらいたい。

店頭の積み上がり具合からすると投入量が多すぎたのだと思う。
これは取りも直さず、MD(マーチャンダイジング)の失敗だから担当者は、マサ佐藤氏に教えを乞うてもらいたい。

メイトのメンズは、30代~40代向けのトラッドベースのアメカジと当方には見える。
この市場はユニクロのメンズとほぼバッティングするし、商品のテイストもほぼ同じである。
価格はユニクロの方が安い。商品の品質はユニクロの方が高い。
商品のデザインは好き嫌いベースで判断すると悪くはないが、ベーシックなので決め手に欠け、これもユニクロとバッティングする。

商品のことだけでいうなら、ユニクロの圧勝といえる。
なぜなら、テイストやベーシックさが同じで、価格が安くて品質が良いのなら、ほとんどの人がメイトよりもユニクロを選ぶ。
メイトを選ぶのは、よほど「ユニ被り」を気にする人くらいだろう。

どうしてユニクロがメイトよりも高品質低価格が実現できるのかというと、根本的には資本力の差である。
今や資本力の差は圧倒的だ。
だから、仕組みやシステムも作れる。

同じ土俵で勝負するならユニクロ以上の商品を作らないと勝ち目はない。
そしてそれは今のジーンズメイトの資本力では不可能である。
ジーンズメイトに限らず、並みのアパレル企業の資本力では不可能である。

そうなると、商品は今のままだとしても、勝負する切り口を変える必要がある。
というか、切り口を変えなくては生き残れない。

もっとウェブを強化するとか(販売だけじゃなく)、もっとイメージを高めるとか、もっと面白い販促企画を連発するとか、もっと単品に特化するとか、そういう切り口を変える必要がある。

すべてユニクロと同じ土俵でやったって勝ち目はない。

例えば、靴下のタビオの店はどうか。
最近、冬用のウール混靴下が半額になっているので何足か買った。
定価は900~1500円くらいだが日本製だ。これが半額になっている。

先日は1000円の半額品と900円の半額品を1足ずつ買った。合計は950円だ。

赤が1000円の半額、茶色が900円の半額

また後日、別の店舗で900円の半額品と600円の半額品を1足ずつ買った。合計は750円だ。

ブルーが900円の半額に、ネイビーが600円の半額に

先に買った方は何度か履いているが具合は良い。
それなりの満足感はある。

靴下はファッションアイテムとは言いながらも消耗品の側面も強い。

試し履きしてみて良ければ、定価で何足も買うのはつらいが、セールなら2,3足は買える。
当方はどのブランドにとってもセール客でしかあり得ないから、参考にはならないかもしれないが、ユニクロで3足1000円の靴下もあるが、それとは異なるウール混日本製靴下が、ユニクロよりは高いが手ごろな値段で手に入るなら買ってみたくなる。

メイトもこの路線を狙ったのだろうが、ちょっと伝わりにくい。
タビオの場合は、明確にユニクロにはない「色・柄」と「ウール混素材」がある。

そして靴下という1アイテムに絞り込んでいるからわかりやすい。まあ、売っている方は大変だろうけど。

トータルアイテムで、単に「日本製ガー」「高感度ガー」「カジュアル感覚の~」なんて言っていても消費者にはピンとこない。
それこそ、初期の鎌倉シャツがシャツに特化したくらいのことは必要ではないか。

そうしないと、ますます寡占化が進む大資本ユニクロには勝てるはずもなく、消費者からしても存在する意味合いが見いだせない。
ランチェスターの法則に照らしても、小資本の採るべき戦略は「一点突破主義」のはずだ。
何かの切り口で「尖った」部分がない小資本は大資本には勝てない。これは鉄則だ。

並みのアパレル企業からすると「当社の商品の高感度ガー」とか「当社のこだわり~」とかそういうのが「尖った」部分だと思っているのだろうけど、それはまったくの思い違いで幻覚に過ぎない。

靴下なんてユニクロや無印で3足990円で売っているのに、なぜタビオが小なりといえども複数の店舗を運営して生き残れているのか、苦戦するアパレルは研究する必要があるのではないか。
今のままなら、ユニクロとジーユーによるアパレルの寡占化はさらに進む。

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メディアの「何でもユニクロ病」「何でもゾゾ病」はミスリードを引き起こすだけ

仕事らしい仕事にもなっていないのに、一応、衣料品関連の記事は目につく限り読むようにしている。

繊維・アパレル業界はそれはそれなりに混迷し続けているが、記事を読んでいるとメディア側も相当に混迷している。
というか、メディア側は少なくとも20年前から混迷していて、ステレオタイプの紋切り型の報道が多い。

今のメディア側のトレンドでいうと、「なんでもユニクロ」「なんでもゾゾ」である。
業績好調な新興アパレルがあれば「第二のユニクロ」、衣料品のネット通販関連なら「第二のゾゾ」とか「ゾゾと比べて云々」である。

少し前まではストライプインターナショナル(旧社名クロスカンパニー)も成長途中はずいぶんと「第二のユニクロ」とか「ユニクロを追撃」なんて報道があったが、ストライプインターナショナルのどこが第二のユニクロなのか当方にはさっぱりわからない。

メンズ服をほとんど手掛けないストライプと、メンズ服の売上構成比が大きいユニクロは土台がブランドスタンスが異なる。
どこぞの経済記事で、「ユニクロはなんとメンズ売上高が4割を占める」というのを見たが、昔から知っている人たちからすると「何を今更」だし、逆に「メンズ売上高が4割まで低下したのか」と驚かされる。

ユニクロは元々メンズ服の方が強かった。
2005年ごろでさえメンズ服の売上高が6割強あったとも聞いている。

低価格・高機能性・高品質というユニクロのキーワードは、レディースよりもメンズの方が響きやすい。
ユニクロというブランドは極めて男性的な思考で構築されていると思う。
だから、当方はユニクロが好きなのかもしれない。

感性だとか共感だとかカワイイだとか雰囲気だとかそういう女性的な判断基準のブランドは当方の好むところではないからだ。

手の届く範囲の価格でそれなりの見え方をする洋服を提供するというところは共通しているかもしれないが、それなら、コックスもパレモもキャラジャも第二のユニクロといえる。
低価格でそれなりの見え方をする洋服を提供しているSPA型企業は全部「第二のユニクロ」ということになる。

第二のユニクロ、どんだけあんねん?!

20年前後、記者会見に出席してきた経験からすると、業界紙や業界雑誌ではなく、朝日・読売・産経・毎日などの「大手一般紙」(部数が激減しているのでそろそろ大手でもなくなりそうだが)の記者は、会見の場で見ている限りにおいては、繊維・ファッション業界に詳しくない人が多く、質問が的外れなことが多い。

これも以前に書いたが、グランフロント大阪のオープン会見に出席したときのことだ。

記者会見場では質疑応答の際、記者は所属会社と名前を述べてから質問する。

読売新聞経済部の若い記者が質問をしたのだが、その質問内容に驚かされた。

「グランフロント大阪にはアウトレットモールに入店しているブランドが多数入店していますが、グランフロント大阪の競合相手はアウトレットモールでしょうか?」

という質問で、傍から聞いていて失笑を禁じ得なかった。
これに冷静に丁寧に回答されたグランフロント大阪側の人は流石に大人だと感心した。
当方なら、アホらしすぎて質問を却下しただろうから。

この記者は正規店とアウトレット店の関係すら知らないのである。
デスクによる手直しがあるとはいえ、こういう記者が記事を書いている。

だから、一般紙のファッション記事がおかしいのは仕方がないとして、業界紙・業界雑誌・経済誌・経済紙と呼ばれる媒体が、一般紙よろしく「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」という報道姿勢はいかがなものか。

このブログの改装でもお世話になり、ウェブ関連の仕事でもお世話になっているスタイルピックスの深地雅也社長がこんな記事を書いている。

メディアはわかりにくい指標を使わないでください
https://note.mu/fukaji/n/n3eacc37e63a0

これは先ごろWWDのウェブに掲載された

ユークス ネッタポルテの2017年通期決算 売上高2800億円で「ゾゾ」に拮抗か
https://www.wwdjapan.com/536735

という記事に対しての意見である。

ユークスネッタポルテというのはリシュモン傘下(そこからの売却が先日発表されたが)で、ラグジュアリーブランドECの最大手企業である。当然、国内企業ではない。

一般にECには直販型とモール型があり、さまざまなブランドをテナントとして入店させているゾゾはモール型である。
早い話がファッションビルといえ、それぞれのテナントから出店料やら手数料やらを徴収していて、それがゾゾの「売上高」である。
テナントの売上高合計は「取扱高」として表される。
当然のことながら、仮に「取扱高」が1兆円を越えようと、それはゾゾ自体の売上高にはならない。おわかりだろうか。
1兆円の何%かがゾゾの売上高ということになる。

一方、ユークスネッタポルテは今のところ直販型である。
そうすると売上高は直接的な売上高であり、取扱高ではない。

しかも取り扱いブランドがまったく異なる。
方や欧米ラグジュアリーブランド、方や国内ファッションブランド(一部に量販ブランドも含む)。
当然、顧客層も客単価も販売価格も異なる。

これでどうして「ゾゾに拮抗」などという見出しを付けるのかまったく理解できない。

顧客層やらなんやらは置いておいたとしても「取扱高」と「売上高」を並べて「拮抗した」と報道することに何の意味があるのか、いや、ない。(反語的表現)

これこそ、グランフロント大阪とアウトレットモールを並べて論じようとした読売新聞経済部記者と同じレベルといえる。

ゾゾはもしかしたらユークスネッタポルテもベンチマーク対象としているかもしれないが、おそらくユークスネッタポルテはゾゾを歯牙にもかけていないだろう。ラグジュアリーからするとジーンズメイトやタカキューまで入店しているゾゾはまったくの競合相手ではないからだ。

これを知ってて混同させたならWWDの編集方針はおかしいし、知らなくて混同してしまったのなら業界メディアとも思えない。

メディアの「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」病は本当に根深く、百害あって一利なしでしかない。

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日本の消費者は取捨選択する。取捨選択できないのはメディア業界人とファッション業界人だ

衣料品ビジネスにおける考え方はある程度賛同することが多い株式会社せーのの石川涼氏だが、政治や経済における思想は左寄りだと感じられるのでまったく評価しない。

先日、「#FR2」ブランドについてのインタビュー記事もなるほどと思わされるところも多かったが、結末の

「日本人はほとんど自分で取捨選択ができていない。誰かが評価していたり、世界で評価されて初めて”自分も欲しい”という状況になっている。だから世界にウケれば、日本人も買う」。

https://www.fashionsnap.com/article/ishikawaryo-fr2/

という箇所には疑問しか感じなかった。
衣料品ブランドだけでいえば、世界で評価されていて鳴り物入りで上陸したものの、撤退する外資ブランドが数多くあり、業績が低迷している外資ブランドも数多くあるからだ。日本の消費者はそれなりに取捨選択しているといえる。

取捨選択できていないのは、日本のメディア業界人とファッション業界人であり、その選択のできなさは一般消費者よりはるかに劣る。

外国物なら何でもありがたがっているのはその2つの業界人だけのことに過ぎない。

先日、こんな本をたまたま見つけた。

産経新聞社から発行された「ファストファッション戦争」で、巻末の発行日を見ると平成21年12月24日になっている。
今は平成30年だが年始ということを考えると、丸8年前に発行された本で、2009年末までの当時の最新情報をもとに考察されているのだが、この考察は外れまくっている。

たった8年間でこうまで予言を外すのは、浜矩子か藤巻健史並みといえる。

このページにも書かれているように05年頃から続々とグローバルファストファッションブランドが日本に本格上陸してきた。

書かれている通りに引用する。

05年アメリカンアパレル
06年トップショップ
08年H&M
09年フォーエバー21とキットソン

そして、この本では「大本命」として09年12月に銀座店をオープンした「アバクロ」を挙げている。

09年12月のアバクロ銀座店のオープン時にはそれこそ「取捨選択できない」メディア業界人のアホみたいな提灯記事が多数の媒体に掲載されていた。
「大ヒット間違いなし」だとか「国内市場を席捲するだろう」とか美辞麗句のオンパレードで、もちろんこの本もその一つといえる。

しかし、結果はどうか?
アバクロは銀座店以外は福岡店以外に出店できず、国内市場ではまったく存在感がなく、あまりの不振ぶりに何度も日本撤退のうわさが流れている。
アメリカで流行っているから(当時)、日本でも絶対に流行ると太鼓判を押したのはメディア業界人とファッション業界人だけであり、消費者は一度か二度行ってみて、行かなくなったのである。
メディア業界人・ファッション業界人と一般消費者のどちらが「取捨選択」できているだろうか。一目瞭然ではないか。

おまけにアバクロは米国本国でも不振を極めている。

ちなみにこの本に挙げられているブランドがどうなったかというと、H&Mとフォーエバー21以外はすべて日本から撤退した。
アメリカンアパレルとキットソンは米国本国ですらブランドが消滅している。

そして、フォーエバー21も日本では店舗数を拡大できず存在感をなくしており、今後撤退することも十分にありえる。

ある程度堅調なのはここで挙がっている中ではH&Mだけである。
そのH&Mも小島健輔さんによると売上高の伸び率が鈍化しており陰りがみられるという。
この陰りはそれこそ「取捨選択できない」ファッション業界人がほめたたえるZARAも同じで、小島さんによると伸び率は鈍化しているという。

結局、「世界で売れている」と言っても、ローカライズができていない・ローカライズが下手くそなブランドは、日本の消費者によって「取捨選択」されてしまうのである。
ローカライズができない・下手くそなブランドの代表はアバクロだろう。

グローバルブランドのZARAとGAPはどうしてこのページに登場しないのかというと、この2ブランドが日本に上陸したのはもっと前だからだ。

GAPは90年代後半に上陸しており、上陸後20年が経過しており、それなりのファンを獲得した。
しかし、「アメリカで売れている」という触れ込みだったオールドネイビーは不振でわずか数年で撤退している。
GAP自体も日本ではあまり好調ではなく、買い上げ客数が半減しているという噂もあり、GAPの代名詞にもなっていた「投げ売り値引き」をやめると宣言しているが、これは失敗に終わるのではないかと見ている。

オールドネイビーなんて日本人が「取捨選択」した見本ではないか。

ZARAの上陸も2000年頃のことである。
東京のどこに1号店をオープンさせたのかはしらないが、関西だと今は亡き心斎橋ビブレに3フロアぶち抜きで入店していた。
マイカル破綻後で先行きが不透明だった心斎橋ビブレに入店してきたときにはそれなりに話題となったが、あまり売れ行きは芳しくなかった。なぜかというと、しょっちゅう投げ売りセールをやっていたからだ。
当時のZARAは今のような「コレクションブランドのコピー」ではなく、イタリアモード系のブランドで、とくにメンズはイタリアンモードっぽいシンプルなスーツやドレスシャツが並んでいて、それが毎シーズン、大量に売れ残っており、シャツは1枚1000円くらいに値下げされていた。
当然、安物好きな当方としてはその1000円シャツを何枚か買っていた。

黒無地・紫無地・ワインレッド無地などのカラーシャツであり、一歩間違えるとVシネマのチンピラになるような商品だった。

このころのZARAは独資ではなく、先ごろ三井物産による買収が発表されたビギとの合弁だった。
いつ、ビギとの合弁を解消したのかはちょっとわからない。ご存知の方が居られたらお教えいただきたい。

2005年以降に鳴り物入りで上陸してきたグローバルブランドを見ても、そのほとんどが日本から撤退しており、もちろんトップショップのように運営会社の不手際というケースもあるが、「世界で売れているから日本でも売れる」という構図にはならず、日本の消費者は確実に「取捨選択」しているといえる。「世界で売れたらなんでも日本で売れる」と言い放つ石川涼氏こそ「取捨選択できていない」のではないかとさえ思う。

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新規顧客獲得の手法を誤ることが多いファッション業界

11月に発表されて以来、一部の有名人以外には、ゾゾスーツが手元に届いたという話は聞かない。
もう1月も下旬に差し掛かろうとしているが、一向に配送がアナウンスされる気配もない。

当方はゾゾで一度も買ったことがなく、これからもよほどの安売りでもしない限り買う気がない。
さらにいえば体型データを提供する気もないのでゾゾスーツを申し込んでいない。

しかし、これだけ音無しの構えを続けられると、どうでも良くなってきていて、あの狂騒曲ともいうべき過剰反応は何だったんだろうと笑えて来る。
実際には存在しない物に対していい年をしたオッサンやオバハンが泣いたり喚いたりしていたんだから、お笑い種だ。

そんなコントはさておき。

ゾゾスーツが無料で配布されるというやり方は、オッサンである当方からすると2000年頃のYahoo!BBのやり方を連想した。
恐らく、同じ連想をしたオッサン世代の人も多いのではないかと思う。

当時のYahoo!BBはモデムは店頭で無料配布していた。
Yahoo!BBとプロバイダー契約をするとモデムが無料でもらえるのである。
ただし、プロバイダー契約料は発生するから何から何までタダというわけにはいかない。

現在、Yahoo!BBとプロバイダー契約をしている人はあまり見かけないが、あの当時はこれによって一気に契約者が増えた。
また、これによってブロードバンドを使用する人も増えたといえる。

無料で配ることによって一気に使用者を増やして業界標準を狙うというやり方で、気を付けて見ていると、同じやり方を採る企業やブランドはほかにも多くある。

これは一種のCPA (Cost per Acquisition) といえる。

ゾゾスーツもこのCPA (Cost per Acquisition) であり、ヨドバシカメラドットコムの100円の商品でも送料無料というのも同じである。

そして、これを上手く活用できる企業やブランドがある反面、失敗に終わる企業やブランドもある。
衣料品・ファッション業界は失敗に終わる企業が多いように感じる。

さて、CPAについては河合拓さんのブログで解説されているのでご紹介する。

https://ameblo.jp/takukawai/entry-12340008298.html



CPAという考え方があります。分子は広告宣伝費の総額、分母はその広告によって購買した(新規の)顧客数となります。

CPAというと、一般論しか書かれていない教科書には「広告によって」としか書かれていませんから、ダメコンサルは「SNSだ」とか「インフルエンサーだ」など、適当なことをいっていますが、しかし、そんなものでCPA効率が上がるはずありません。CPAの本来の意味は「顧客をデータベースの中に放り込むこと」です。その目的のためなら別に広告でなくともよいのです。ぜひCPAをググってみてください。どれをみても「広告」としか書かれていません。全くおかしな話です。

 

しかし、本来的な意味合いを追いかければ、「出血大サービス」に見える施策も、実は、ネットビジネスの場合、顧客をストックしているCPAであるという見方も可能です。環境が変わっても本質は変わらないからです。

ネットビジネスは、勝利の方程式がまだまだ一般化されておらず、こうした技を駆使した企業が、気づかない企業に大きな差を付けているのかもしれません。広告公害の中で目立つ方法は、ビジネスそのものをあたかも広告のように使うこと、なのです。

とのことであり、通常のビジネス書籍にはCPAとは広告によってと書いてあるから、多くの日本企業は馬鹿正直に広告によって新規顧客を獲得しようとするが、別に広告でなくても良いのである。
ゾゾスーツの無料配布だろうがモデムの無料配布だろうがなんでも良いので、投資によって新規顧客を獲得できれば良く、ゾゾやYahoo!などのネットビジネス、EC業者にとっては新規顧客(見込みも含む)の個人情報が手に入ればそれで目的は完了する。

別にゾゾやYahoo!に限らず、ネットでは「アンケートに答えてくれたら〇〇ポイントプレゼント」とか「アンケートに答えてくれたら豪華賞品をプレゼント」なんていうのが掃いて捨てるほどあるが、あれは全部CPAの一環で、新規の個人情報が入手できれば良いのである。
アンケートに答える人は自分の個人情報と引き換えに〇〇ポイントをゲットしているだけのことで、たかが1ポイントや5ポイントを獲得するために個人情報を開示しているといえる。

この原理を理解していないヘボコンサルやヘボ業者が、いまだに「SEO対策をー」とか寝言を言っているし、その解決方法として「SNSガー」とか「インフルエンサーがー」と言って人心を惑わせている。

SNSもインフルエンサーも告知する「手段(たかが手段でしかない)」でしかないのに、最近では取り違えてSNSで発信することやインフルエンサーを活用することが「目的」と化している人も多く見受ける。

そして、このCPAを正しく理解できていなかった過去の例を挙げるとすると、ジーンズメイトとモーブッサンだろう。
ジーンズメイトは2009年とか2010年頃に、新店オープンした際に「リーバイスジーンズを先着〇名に無料配布」したことがあった。
3900円に値下がりした商品ではなく、1万円前後の定価品である。

これはCPAを曲解した行為といえ、結果は現在のジーンズメイトを見てもわかるように失敗に終わっている。

まず最大の間違いは、自社製品ではなく、リーバイスという他社製品を配布した点にある。
自社製品を配布するなら、「この商品が欲しいからジーンズメイトに次も行こう」ということになるが、「リーバイス」という大手ブランドの商品なのでそれが欲しければ、ジーンズメイトだけに行く必要はなく、ライトオンでもリーバイスストアでもマックハウスでも構わないということになる。
この根本的な問題が当時のジーンズメイトの経営者にはまるで見えていなかったといえる。

この当時もそこを指摘したがジーンズ業界村の住人たちはジーンズメイトを弁護していたが、そんなレベルだからジーンズ業界村は衰退したといえる。

高級宝飾ブランドのモーブッサンも銀座店オープンの時に超小粒のダイヤ(記憶によると5000円相当)を配布した。これも2009年とか2010年だったような記憶があり、すさまじい行列ができてワイドショーでも取り上げられていた。

結果的にはこれも失敗だったのではないか。

本来は自店の永続的顧客と成りうる高所得者層を掘り起こしたかったのだと思うが、結果的には大量の貧民層を掘り起こしただけになってしまった。
高所得者層はそもそも無料配布なんていうものには並ばない。

おまけにもらえるのはダイヤの粒だけで、これをアクセサリーにしようとするとどこかで台座(指輪、イヤリング、ピアスなどの)に取り付けてもらわないならない。
もちろんモーブッサンでも取り付けてもらえるが、取り付けには「取り付け料金」が発生し、そしてそれはそんなに安い金額ではない。
モーブッサンの狙いはここにもあったのだろうが、行列を作った貧民層はそこには金を払いたがらない。
だからモーブッサンは二重に失敗している。

どういう投資をすれば、自社の望む新規顧客を獲得できるのかを企業は考える必要があり、意味のない無料配布をしてもそれはCPAにはならない。このことを冷静に考えるべきだろう。
そして、SNSもインフルエンサーも新規顧客を獲得するための「手段」に過ぎず、発信することやインフルエンサーを活用することを「目的」だと勘違いしてはならないということである。勘違いをすればヘボコンサルの食い物にされるだけだ。

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繊維・アパレル業界のマーケティングはまったく「価値創造」できていない

なんだかんだで繊維業界に20年以上もいると、それなりに多くの企業や経営陣を外野から見てきた。
2000年以降、頭角をあらわしてきた新興企業は別として、旧型アパレルの多くは苦戦を続けている。

とくに老舗と呼ばれるアパレルメーカー、ブランドの鈍重さには驚かされる。

ブランディングとかマーケティングという作業が必要なことはわかっているが、実際にはまったく取り組めていない。
広報宣伝活動といえば、80年代から変わらないファッション雑誌への広告出稿に終始している。
ウェブでの活動が重要なことはわかっているが、80年代・90年代の雑誌広告と同じだと考えており、やみくもに投稿を増やしたり、業者に丸投げすればフォロワーやエンゲージメントが増えると思っている。
はっきりいってこんな企業、ブランドばかりである。

もう読まれた方も多いと思うが、ダイヤモンドオンラインにUSJを再建した森岡毅氏のマーケティングについての記事があるのでご紹介したい。
マーケティングとは何かということがわかりやすく書かれてあるので、まだ読んでいない方には一読を勧める。

USJ再建の森岡毅が語る、マーケティング下手な企業に足りない3つの視点
http://diamond.jp/articles/-/156025

大阪のUSJは鳴り物入りでオープンしたが低迷していた。
それを浮上させ、ある意味で東京ディズニーランドよりも人気の高い施設へと変貌させた森岡毅氏のインタビューである。

まず

私はよく、マーケティングとは「価値を創造する仕事」と説明しています。市場における価値を創造すること「全般」がマーケティングの役割なのです。
我々マーケターは、価値を「ブランド」とも定義しますが、要するに、消費者の頭の中で知覚される「価値」、つまり「ブランド」を作る仕事はすべてマーケティングの領域です。

とのことで、アパレル各社が思っているような「リサーチ」ではないということである。
旧型アパレルでも大手になるとマーケティングナンチャラ室とかマーケティングナンタラ部みたいな部署があるが、やっていることは単なる市場・他店リサーチに過ぎない場合がほとんどである。

マーケティングが「価値を創造する仕事」とすると、「どうやって価値を創造していくのか」という疑問が当然生まれるでしょう。マーケターが「何を考え、どこを見ているのか」という部分です。
ここで重要になってくるのが次の3つの視点です。

(1) 市場構造を解き明かす
(2) 消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる
(3)(1)と(2)を実行できる組織をつくる

(1)の「市場構造を解き明かす」とは、簡単に言えば、移ろいやすい消費者のニーズがどのような状況、構造になっているのかを把握することです。一般に「消費者のニーズは変わりやすい」と言われますが、本質的な「人間の欲」はそれほど変わらないと私は思っています。
ただ、それを「満たす方法」が変わるのです。

とのことで、とくにこの3点を理解していない企業、ブランドは繊維・アパレル業界には数多くある。
市場構造を解き明かす気もなく、天候やら景気動向のせいにして終わってしまう。
各社の月次売上高速報そのものではないか。

また、「消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる」ことをまるで考えていない。
考えていないというと語弊がある。考えてはいるのだ。
しかしその考えた理由というのは「価格が安いから(値下げすれば売れるだろう)」とか「機能性・スペックが優れているから(7つの機能性だとか過剰なフィクションに彩られた匠の神話だとか)」というようなものばかりで、表層的なものにすぎない。
挙句の果てが「タレント頼み」である。

優れたコンテンツがあってそれを紹介するために人気タレントを起用するならわかるが、コンテンツがないくせに人気タレントを起用すればすぐさま爆発的に売れると考えているのだが、それが大きな間違いである。
キムタクに着させたらどんな商品でも売れるなんていうのは2005年までで終わっている。

そして

そして、ここからがさらに大事な話ですが、「(1)と(2)の戦略を正しく実行できる組織」を作っていかなければなりません。
どんなに精緻に市場構造を解き明かし、プレファレンスを高める戦略を構築しても、それを実行できなければ何の意味もありません。私はよく「戦略人事」という表現を使いますが、目的を達成するための人事改革、組織改革を成し得なければ、本当の価値は生まれません。

とあるが、人事というのは本当に重要である。

そこで重要となってくるのが、CMO(最高マーケティング責任者)の役割です。CMO(あるいは、それに準ずる役割の人)が、マーケティングの意味や幅をきちんと理解し、その責務をきっちりと果たす。その一方で、経営者も同様の認識を持ち、CMOに相応の権限を与える。

ここが大事なポイントです。
私がUSJで働いている際、非常に幸運だったのは、社長であったグレン・ガンペルが、これまで述べた三つの領域において「私がリードできる十分なスペース」を与えてくれたことです。それだけの権限と自由を与えてくれたからこそ、私は自分の責務を果たし、結果を出すことができたのです。

もちろんグレンとは、激しい議論を何度もしましたし、ここでは紹介できないような激しい表現での言い合いもしょっちゅうしました。また、彼がマーケティングを深く理解していたかと言えば、決してそんなことはありません。
彼は強烈な存在ではありましたが、一方で、優秀な多くの人間がそうであるように「自分が足りていないもの」をきちんと理解し、必要な人材を登用し、権限と自由を与えるだけの極めて高い知性を持ち合わせていました。だから、彼はいくら激しい議論をしても、最終的に「私がこうしたい」ということについては、さんざん激しい議論の末に、私の自由にやらせてくれました。

とのことで多少なりとも宮仕えをしたことがある身としては非常に重要だと感じる。
部下や担当者に任せることができない経営者は本当に数多い。むしろそちらの方が9割がたを占めるだろう。
そして多くの企業や組織は、経営者よりも劣る人材が集められており、いつぞや、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがおっしゃられたように「経営者より優れた部下は組織には居られなくなる」というのが常態となっている。

逆に言えば、自分より優れた部下を集めて使える経営者はそれだけ稀有な存在だといえる。

根本的な視点がないのに、小手先のウェブ告知やSNSの投稿やインフルエンサー起用なんて百万回やったってなんの成果も生まない。
このことをわかっていない企業とわかっている企業の格差がより開いてきており、わかっていない企業が繊維・アパレル業界では9割くらいあって苦戦を続けているというのが実態といえる。

この森岡氏の記事は連載のようなので今後が楽しみである。

*ここからは趣味の話なのでめんどくさい人はスルーしてほしい。

森岡氏は三国志のトップに例えておられるが、ここの部分の見方ははっきりいって疑問である。
孔明、関羽、張飛という優れた部下を集めた劉備は、その点だけは曹操に勝っていると言っておられるが、三国志演義に毒されすぎである。
魏・呉・蜀の三国でもっとも人材の層が薄く、国力が劣っていたのが蜀である。
劉備が建国した蜀は、孔明と関羽・張飛・趙雲・馬超・黄忠・魏延以外に優れた人材はほとんどおらず、彼らの死後、人材は払底してしまう。

また、建国前の劉備軍団にも優れた人材は少なく、社長(劉備)のずぼらな人的魅力と、凄腕部長(関羽、張飛、趙雲)の個人プレーに支えられた完全な体育会系零細企業で、さらにいえば文官はほとんどいない。
孔明登場前に劉備軍の参謀となったのが徐庶だが、孔明を推薦したのち、曹操陣営に移籍するが、移籍後はめだった活躍をしていない。少なくとも史書に記されるほどの活躍はできていない。
それはなぜかというと、曹操陣営には荀彧、司馬懿、程昱、賈挧、荀攸などの優れた参謀が数多くいたからである。
むしろ優れた人材を多数使いこなした曹操の方がトップとして力量が優れていたといえる。

劉備軍は孔明以外に龐統、馬良しかおらず、法正が加入してきたものの3人とも早逝したため、本来、行政官向きの孔明が政戦の要とならざるを得なかった。この激務が孔明の寿命を縮めたともいわれている。

また史書でいうと三国のうち、蜀の記録がもっとも少なく、文官をあまり重視していなかったともいわれている。

物語は歴史に親しむきっかけとなるが、あまりにもその物語がポピュラーすぎるとかえって史実を見誤らせることになる。これは何も三国志演義に限ったことではないのだけれど。

以上、蛇足である。

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ファッション業界にはびこる「過剰なフィクション」と「嘘の神話」

衣料品をわかりにくくしている原因の一つに、業界の内外にはびこる「過剰なフィクション」がある。

モノ余り状態の現在において、商品を売るには「ストーリー作り」「物語性」が必要であることは言うまでもないが、あまりにも過剰にフィクション性が取り入れられた場合、かえって消費者を惑わせてしまう。

衣料品に関してはこれは今に始まったことではなく、かなり昔から連綿と続いているのだが。

80歳縫製士が最後の挑戦、クラウドファンディングで”究極のシャツ”発売
https://www.fashionsnap.com/article/2018-01-12/teruko-original-shirt/

奈良の縫製工場がシャツでクラウドファンディングに挑戦しており、これはこれでがんばってもらいたいのだが、業界人から一斉に突っ込みが入ったのは、動画で「一生着られるシャツ」という発言の部分にだった。

もちろん、動画の編集工程でカットされた言葉があるのかもしれないが、この動画ではシャツというアイテムの性質自体をミスリードさせる。

断言すると、一生着られるシャツなんていうのは存在しない。
リペア(補修、修理)を加えれば着られるシャツはある。しかし、リペアなしで一生着続けられるシャツなんていうものはこの世には存在しない。今のところ。

まず、長年着続ければ袖口と襟が擦り切れる。
以前にお会いしたことのある積水ハウスのベテラン営業マン(推定40代)はシャツの袖口が擦り切れていた。
それが気になって仕方がなく、何を話したか覚えていないが、袖口が擦り切れたシャツだけは鮮明に覚えている。

またこのシャツのように白シャツは着用を繰り返せば、皮脂がこびりついて必ず黄ばむ。
また襟の内側には「汚れの首輪」が確実に刻み込まれる。
どんなにウタマロ石鹸で丹念にこすっていても、何十年かの間には確実に汚れの首輪は刻み込まれる。

これらを解決しないかぎりは一生着られるシャツなんていう商品にはなり得ない。

衣服の傷みは着用回数と洗濯の回数に反比例するから、年に1度くらいしか着用しないというならもしかしたら一生着られるかもしれないが、デイリーユースで月に何回か着用するのであれば、確実に20年は持たない。

おまけにいえば、「縫製士」なる職業も実在するのかどうかすら怪しい。
40年前とか50年前には存在していたのかもしれないが、少なくとも20年前からこの称号を持つ人には会ったことはないし、見聞きしたこともない。もし、「縫製士」に関してご存知の方が居られたらご教授いただきたい。

この過剰に盛られたストーリー性と「縫製士」なる実在未確認職業がなんとも気色悪い。

最近は「10年持つ服」だとか「100年持つ服」なんていうキャッチフレーズが横行しているが、はっきりいえば、ユニクロの商品は10年持つ。10年持つ服が欲しければユニクロで買えば解決する。

当方のタンスには10年前に買ったユニクロの服が何枚もある。
いずれ画像付きで紹介しよう。

先ほども書いたように、衣服の耐久性は、着用回数と洗濯回数に反比例するから、デイリーユースでも10年持つユニクロの服を極限まで着用回数と洗濯回数を減らせば30年くらいは優に持つだろう。
それだけのことで、そこに過剰なフィクションを差し込むことが気色悪くてならない。

衣料品だけでなく、原料や製造工程にもわけのわからない過剰なフィクションがあふれている。

例えば、

https://ameblo.jp/takukawai/entry-12344165904.html



彼らは「イタリアの素材と日本の素材の大きな違いはエージングにある。イタリアは生産した生地を数年寝かし風合いをだして出荷するが、日本は生産したら直ぐに出荷する。だから、ワインと一緒で滑らかさが違うのだ」という説明でした。

実は、これは大嘘で、日本に二次情報や推測で、このような「嘘」や「神話」がまかり通っています。

とのことで、この「生地のエージング」は素材メーカーや商社、生地問屋などで当方も何度か耳にした。
完全なる嘘っぱちである。

また、ユニクロと契約したことで一挙に注目を集めた完全無縫製のニット製造機、ホールガーメントも過剰なフィクションで彩られている。

一体成型でセーターが編めることが特徴のホールガーメントだが、これの最大の利点は

1、プログラミングが正しくでき、機械の操作を正しくできれば、驚くほどの少人数でセーターが量産できること
2、リンキングが不要であること
3、ホールガーメントでしか実現できないデザインがあること

この3点である。

にもかかわらず「一体成型でフィット感が良い」とか「着心地に優れる」などと言ったまやかしの言説が売り場にもメーカーにもあふれている。

以前、ジーンズメイトで1000円に値下がりしたホールガーメントセーターを購入して何年間か着続けた経験でいえば、そんなものは一切ないと断言できる。
着心地も普通のセーターと変わらないし、そもそもセーターは編み方にもよるが、3センチ~5センチは伸び縮みするので、そこまで厳密な採寸は必要ない。
さらにいえばどうして一体成型だからフィット感が高まるという理屈になるのかも理解できない。それなら丸編みのTシャツのボディはフィット感が良いのだろうか。

セーターは首とか袖や裾部分のリブとかそういうところを本体に取り付ける。
布帛だと普通に「縫製」するのだが、セーターの場合はリンキングという処理を行う。
パーツと本体を目立たないようにつなぐのである。
そしてリンキングにはリンキング専門の工場がある。

リンキング工場はリンキングしかできないため、セーター工場と異なりオリジナル商品は作りにくい。
そのため自立化もできず倒産廃業が相次いでいる。

ホールガーメントはそのリンキングが不要になる技術であり、だからこそ、ホールガーメントが注目を集めているともいえる。
着心地云々ではなく製造側のメリットがあってのことである。

じゃあ、なぜそれを説明しないのかと書いたところ、老年のパタンナーから「そんな後ろ向きのことが言えるか!」と反発を受けたが、だからといって、まったく別のしかも間違ったメリットをでっち上げて良いとはこれっぽっちも思わない。
一体、この人は何を言っているのだろうか。

だったら、人員の削減やら生産効率の上昇やらそこを強調すべきであり、ありもしない着心地やらフィット感をでっち上げることは消費者にとっても業界にとっても何のメリットもない。むしろ害悪だ。

そしてこういう間違った評判が定着し、それゆえに衣料品はわかりにくくなる。
今までからそれを繰り返してきた。
衣料品業界はこういう「過剰なフィクション」にいつまで頼るつもりだろうか。そして過去の「過剰なフィクション」が衣料品をわかりにくいものにし、それが衣料品不振の原因の一つになっているにもかかわらずだ。

ナントカは死ななきゃ治らないといわれるが、まさに衣料品業界は一度完全にクラッシュしてみないとわからないのだろう。

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