カテゴリー: 誰がアパレルを殺すのか (1ページ / 7ページ)

安くて良い商品があればそちらが売れるのは当たり前 服もその一つにすぎない

先日、ある有名なコンサルタント氏と飲みながら雑談をした。
コンサルタント氏は7月から大阪での仕事が増えたそうで、そこからお会いする回数が増えた。

で、まあ、いろいろと雑談をするといっても、趣味も生活レベルも当方とは異なるので、必然的に話題は衣料品業界のことになってしまう。

衣料品業界についての見方は比較的一致する。

で、同じ50代前後という世代だから昔からの衣料品業界の記憶もある程度合致していて、有益な意見交換ができるので、こちらとしてはいつも楽しい時間を過ごさせてもらっている。

で、やっぱり現況の衣料品業界においては、国内とアジア圏ではユニクロ、世界的にはZARAの2ブランドが勝ち組となっているという見方も一致するところである。

低価格なユニクロと、比較的低価格なZARAをはじめとする低価格衣料品が国内外で支持されている理由は、やはり「低価格衣料品がマシになったから」というところに帰結する。
もちろん、可処分所得の伸び悩みとか所得の減少傾向とかそういう背景はあるにせよ、20年前・30年前に比べると、低価格衣料品ブランドはかなりマシになっている。
品質的にもそうだし、見た目(デザイン、シルエット、色柄)もマシになっている。

20年前のジャスコやイズミヤで売っていた1900円のTシャツはひどくダサかった。
美濃屋のコンバースTシャツは比較的マシだったが、それ以外は見た目のおかしなTシャツが多かった。
だから、20年前の当方の世代は、ある意味で「仕方なしに」高いブランドで高いTシャツを買っていた。

スーツしかり、ジーンズしかり、セーターしかり、である。

しかし、ユニクロやZARAに象徴されるような低価格ブランドがマシになり、それに引きずられるように、小マシな低価格ブランドが増えれば、「そちらで買った方がいいや」と思う消費者が多数出現してしまうことは自然な流れだといえる。

衣料品業界関係者やファッション好きはこれを差して「あんな安物は邪道だ」とか「消費者の感性が退化している」とかいうが、それは自分達が「ファッション好き」「衣料品好き」だからである。

こだわりのない人からすると、衣料品はユニクロやジーユー、ZARAで十分なのである。

そして、他分野を見渡すと、どの分野でも同じことが世界的に起きている。

コンサルタント氏は、衣料品と自動車がお好きで、使用するブランドにはこだわっておられる。
スーツはイタリアブランドだし、自動車はドイツ車である。それでもTシャツはユニクロで買っておられるのだから、ユニクロのコスパの高さがうかがい知れるのだが。

そんなコンサルタント氏でも家具やインテリアにはあまりこだわりがないのでニトリで十分なのだという。

しかし、インテリア関係者や家具業界人からすると「ニトリなんて」という声があるが、家具に対してこだわりのない人からすると安くて見た目も品質もそれほど悪くないニトリの家具で十分なのである。
当方なんて、もう10年以上家具なんて買ったことがないが、もし今後買いなおすことがあるなら迷わずニトリにする。
安いが少し感度を求める人はIKEAがお好きなようだが、買って帰って組み立てるのがめんどくさい。小さな棚くらいなら組み立てるが、大きな家具になるとそんなめんどくさいことはしたくない。
だったら最初から組み立ててくれてて安いニトリの方が良い。

またコンサルタント氏は眼鏡にはこだわりがなくJINSを愛用しておられる。
当方も眼鏡にはこだわりがなく、JINSでもZOFFでもオンデーズでも構わない。
当方はJINSの眼鏡をすでに3本所有している。

レンズ込みで5900円くらいから買えて、しかもフレームのデザインは多彩だ。
よほど困った症状の人を除いて通常の近視程度ならJINS、ZOFF、オンデーズあたりで十分だ。

だが、眼鏡の愛好家は違うだろう。
999.9だ、金子眼鏡店だ、アランミクリだ、という高額のブランドを押すだろう。

もちろん、違いは相応にあるとはいえ、JINSあたりの眼鏡を見て「見るからに安かろう悪かろうな商品だ」と思う人はいない。
なら、眼鏡に格別のこだわりのある「趣味人」を除いてはそれで十分だという人が増えることはまったく当たり前である。

自動車だって腕時計だって飲食店だって同じだ。

それぞれの分野で、それを趣味や職業にしている人はこだわりがあるだろうが、それ以外の人はそれほどこだわりがない。
昔は安物=粗悪品だったが、今では、安物は必ずしも粗悪品ではなくなっている。
品質スペックは安物でもそれなりに高い。
あとは見た目の良さとか使い勝手の良さとかが注目点になるが、それもそれなりに良くなっているから、趣味や職業ではない人からするとそれで十分だということになる。

そしてそういう人が、世界的に「マス」なのである。

スイス製の高級腕時計は数多くあるが、機能スペックはそれほど高くない物が多い。
反対に日本のシチズンやセイコー、カシオのデジタル時計の方が機能スペックは高い上に、価格は安い。
腕時計にこだわりがない当方からすると、なぜ、わざわざ性能的に劣っているスイス製の腕時計を高値で買う必要があるのかわからない。

1万円くらいのシチズンやセイコーやカシオで十分じゃないかと思う。
これで見た目のデザインが変てこなら買わないが、今はデザインだってそれなりにマシだから、だったら腕時計ファンじゃない人からするとそっちでイイやということになる。

当方が使っている2本の腕時計は両方ともカシオの太陽電池デジタル10気圧防水で、Amazonで3500円、4500円で買った。
2本合わせても8000円である。

Amazonで4500円で買ったカシオの太陽電池腕時計

 

 

自動車だってこだわる人はドイツ車だ、イタリア車だ、と言っているが、こだわらない人からすると、スズキとかダイハツの今のグレードアップされた軽自動車で十分だろう。性能スペックは決して低くないし、見た目だって昔の軽自動車に比べるとはるかにマシになっている。
当方はそうだ。

飲食店だって、こだわればキリがないが、こだわりのない当方は鳥貴族とかサイゼリヤで十分である。

結局、衣料品も同じことで、こだわっているのは「趣味」だからであり、そういう趣味人はマスではない。どの分野でも同じだ。

洋服にこだわっている「趣味人」だって、生活スタイルすべてにこだわっているという人はかなり少ないだろう。
興味のない分野はいわゆる「大衆向けブランド」で満足しているのではないか。
それに全分野にこだわろうと思えば、恐ろしいほどに金がかかるから、平均収入の少ないアパレル業界人では物理的に全分野にこだわることは不可能である。少なくとも当方の収入では不可能だ。

自動車や飲食にこだわらない人がいるように、衣料品に格別のこだわりのない人が少なからずいるのは何の不思議もないし、衣料品もそういうさまざまな商品の一つに過ぎないということである。

それを理解できない業界人が多いからいまだに「品質スペックガー」とか「おしゃれガー」と叫んでみても大衆に見向きもされないのではないか。

とはいえ、性能スペックが劣っていながらも「趣味人」に選ばれる高級ブランドというのはどの分野にもある。
自動車しかり腕時計しかり洋服しかり家電しかりである。

そういう方向を目指さないとユニクロとZARA以外のブランドは生き残れないのではないかと思う。

とはいえ、そういう「ブランド化」がどんなブランドでも成功できるわけではないし、そんなものが多数存在できるほど、世界の市場の容量は大きくない。(欧米中国を含めてもだ)

それができた少数のブランドだけが、価格競争やスペック競争に巻き込まれずに生き残ることができるだろう。

そして、衣料品業界人やファッション好きが主張するところの「こだわり」とは、所詮は「趣味人の蘊蓄や造詣」に過ぎないということを自覚しないと、マス層の嗜好性とはますます乖離するだけのことである。

当方は、外野で眺めているだけである。

久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
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カシオの優れもの太陽電池腕時計タフソーラーをどうぞ~

キャリアアップの道筋が見えにくいアパレル企業が多すぎる

ある組合の方によると、アパレル企業には最近人が集まりにくいという。
そりゃそうだろうな。
今の世の中でわざわざアパレル関連企業に就職したい学生なんてそんなに多くないと思う。

また、入社したとしてもすぐさま退職するということも多いそうだ。

一方、当方がたまに講義をするファッション専門学校生はそれはそれなりに就活にいそしんでいるものの、内定がなかなか出ない学生がいたりする。そんなに人が集まらないといわれているのに、内定が出ないこともあるのかとちょっと驚いたりしてしまう。

アパレル関連企業が人気がない理由として、

1、斜陽産業だと思われている(実際斜陽産業だが)
2、一部の会社を除いて、入社後のキャリアアップが思い描きにくい

というこの2つがあると見ている。

当方は、25年ほど前に衣料品販売店に入社してしまったのだが、この衣料品販売店もキャリアアップの道筋は極めて不透明だった。

販売員から店長になり、店長からエリアマネージャーになり、そこからさらに上という具合になるのだが、一体どういう業績を上げれば、エリアマネージャーになれるのかが皆目わからなかった。(すごくなりたかったわけではないが)

また、当時のエリアマネージャーはどういうことをやってその地位に上ったのかもまったくわからなかった。

幸い?店長には何年か勤めていればなれるので、そこは何の疑問も抱かなかったが、そこから上に行く道筋は見えなかった。

そんなわけで当方も退職してしまったわけだが、アパレル企業に人が集まらない理由はここにあるのではないかと思う。

そんな一方で、入社してもすぐにやめるという悩みもアパレル企業にはある。
これも組合の方から伺ったのだが、せっかく入社してきてもガッツのない若い人が多いという嘆きも企業側にはあるという。

たしかに最近の若い人は、昔みたいにガツガツ・ギラギラしている人はそんなに多くないように感じる。
それが物足りないとオッサン世代・ジジイ世代の上役からは見えてしまうようだ。

さらにいえば、企業の採用活動も昔に比べるとスマートになっている。
また、大学側も学生に就活のノウハウ、マニュアルを叩き込む。
優秀な学生になればなるほどノウハウ、マニュアルの飲み込みは早い。
だから、非常にスマートな態度の学生が出来上がる。
学生のマニュアル化を叩いたって意味がない。どの企業だってアホ丸出しの学生よりも少しは賢そうな学生を採用したいだろう。それが人情というものである。当方だってアホ丸出しの学生は採用しない。

学生がスマートだから採用活動もスマートなのか、採用活動がスマートになったから学生もスマートになったのかどちらが先なのかはわからない。

当方の就職活動当時でも、一発芸をやって入社したなんて人も何人もいる。

某大手商社の人は、喫茶店で、高校野球のピッチャーの牽制球のマネをやって採用を勝ち取ったはずだ。

今時、そんな一発芸で採用を決める大手企業はないだろうと思う。

とはいえ、そういう就職活動で入社した猛者たちはわけのわからんバイタリティがあった。良くも悪くも。
アパレル企業の今の上役の一部はそういう猛者を懐かしく思い、欲しがっているようだ。

だから一部からは「今風のスマートな採用活動をやめて、勢いのある若い人を取れ!」なんて声も出ているといわれている。

超大手アパレル企業でそんな採用活動は難しいだろうが、業界を支えている中小のアパレル企業ならなんとでもできるのではないかとも思う。

社会が成熟化し、複雑化、高度化してくると、勢いだけの型破りな「サラリーマン金太郎」みたいな学生は少なくなるし、そういう学生を企業は採用しなくなる。

ただ、その一方で、アパレル企業側はバイタリティのある若手社員を求める気持ちもどこかにはある。

所詮、それはない物ねだりでしかないのだが、それもまた人情といえる。

しかし、なんだかんだでいろいろなファッション専門学校を見ていると、凄まじく程度の低い学生にも出くわすことがある。
程度の低さにもさまざまな低さがあるのだが、仕事をしないとか仕事にならないような学生はさておき、猛烈に勢いだけはあるような学生なんかは活力が欲しい中小アパレルは一度採用してみてはどうか?

いろいろと教えるのは苦労するだろうし、飲み込みも悪いかもしれないが、もしかしたら何年かしたら成長するかもしれない。

いずれにせよ、アパレル業界の人材確保はますます難しくなっているにもかかわらず、就活で四苦八苦するファッション専門学校生もそれほど珍しくないのだから、需給のミスマッチはなかなかいびつな形になっているといえる。

あすから、お盆休みなのでブログはお休みします。
また16日から再開の予定です。
皆様楽しいお盆生活を。

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すべての段階を網羅しにくいのが繊維・衣料品業界

一口に衣料品業界と言っても、店頭販売員、デザイナー、パタンナー、生地問屋、生地工場、染色加工場、紡績、合繊メーカーなどさまざまな職業に別れている。

そして、各段階の人の多くは他段階のことをまるで知らない。
同じ業界に属しているのに、各人が持っている知識はまるで別物なのである。

これが衣料品業界、繊維業界の構造改革が一向に進まない理由の一つでもある。

例えば、先日ちょっと驚いたのだが、某大手衣料品ブランドのEC担当責任者が「ホールガーメント」を知らなかった。
この担当責任者はインポートアパレルで長年勤務し、そして大手衣料品ブランドに転職して今はEC責任者になっているのだが、それほどの人でも「ホールガーメント」についてはまったく知識を持ち合わせていない。

ZOZOで取沙汰されてからようやく「ホールガーメント」の名前だけを知ったという具合だ。

また、別の事例だと、これもたびたび登場する深地プリンス氏だが、ダウンジャケット類の生産リードタイムの長さを知らなかった。
Tシャツやカジュアルシャツなんかは特殊な生地を求めない限り、要はベーシック生地で良いのであれば、縫製工場のスペースさえあいていればすぐに期中生産できる。

ありもののベーシック生地を使えば恐らく3週間程度で店頭に納品することができる。

しかし、ダウンジャケット類の場合はそんなに簡単に期中生産はできない。
まず、何よりも原料の羽毛を押さえることが大変で、これはほとんど1年くらい前から押さえておく必要がある。

Tシャツやカジュアルシャツがありもののベーシック生地を使えば、クイックに生産できる理由は、それらの生地を生地問屋や商社が備蓄しているからである。
レザーも皮革問屋があるから、ベーシックなものでよければすぐに手配できる場合が多い。

しかし、業界には羽毛問屋は存在しない。

Tシャツ用の天竺生地が欲しければ、ミナミとかヤギとか瀧定名古屋とかそのあたりの生地問屋に行けば、ベーシックな生地なら備蓄から選ぶことができる。選んだらあとは縫製するだけということになる。

しかし、羽毛を専門に備蓄しているような羽毛問屋は国内業界には存在しない。

だから、期中で思い立ったとしても、2か月後にダウンジャケットを店頭投入することは物理的に不可能なのである。
まともに国内で作っているブランドは、ほぼ1年前から生産数量を固め、業者に頼んでその数量に見合うだけの羽毛を確保するのである。

ちなみに、ここ数年で国内ダウンジャケット工場として知名度をアップさせた滋賀のナンガダウンは、自社である程度、羽毛を備蓄しているそうである。

とはいえ、早めに欲しい数量を言っておかないと、ナンガダウンでも対応はできない。

カジュアルブランドでデザイナーをしている知り合いは、ほぼ1年前からダウンジャケット類の企画に取り掛かる。
店頭投入半年前の春ごろにはほとんど商品の製造の目途がついているという状態である。

深地プリンス氏も衣料品業界に携わって10数年が経過しているが、ダウンジャケット類のこういう製造サイクルを知らなかった。

とはいえ、20年以上この業界にいる当方だって、パターン(型紙)のことはさっぱりわからない。
またメンズスーツの細かいことや芯地のことなんていうのはさっぱりわからない。

以前にも書いたように、生地だって織物に詳しい人は、編み物(ニット類)のことはわからないし、編み物の人は織物のことにあまり詳しくない。

これほどに衣料品業界というのは、すべてを網羅することは難しく、実質は不可能ではないかと思う。

大手総合商社というのは縁のない人からすると何をやっているところなのかさっぱりわからない。当方だってあまりよくわかっていない。
一方、商社育ちの人は商社の業務内容と機能はよく知っているが、アパレル店の店頭作業のことはあまり知識がない。

最近、ネット通販で注目されているファッションテック系の人々は、製造や実店舗のオペレーションの知識がまるっきり欠けている場合がほとんどで、ZOZOの社長以下全員がパターンオーダーとフルオーダーの区別がつかないのはその典型だろう。
また、同じ型番のTシャツなのにメンズに40双糸天竺を使い、レディースに20単糸天竺を使うのも知識のなさが露わになっているといえる。

よく、ZOZOがイノベーションを起こしているという衣料品業界人やファッションテック系の人間がいるが、ZOZOが起こしているイノベーションは今のところは「ウェブを使った売り方」にだけイノベーションを起こしているに過ぎない。
製造段階や加工段階には何のイノベーションも起こしていない。

これはZOZOに限ったことではなく、ネット通販系が起こすイノベーションは現時点ではすべて「売り方のイノベーション」に過ぎない。

紡績・合繊メーカーから店頭までをすべて標準的に網羅している人がいるとするなら、その人は超人的で、そういう人がそれこそウェブを使って業界全体を俯瞰したシステムを構築してもらいたいと思う。

そういう超人が今後現れるのかどうか。そういう超人が現れない限りは、いつまでも小手先の売り方や小手先の作り方でイノベーションごっこを繰り返すだけで終わってしまうのが関の山だろう。

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猛暑ですがナンガダウンをどうぞ~

洋服の製造を完全受注生産にしても廃棄問題・売れ残り問題はなくならない

洋服の廃棄が話題になっているが、なぜか「焼却」という言葉が頻繁につかわれているが、洋服が生地だけで作られているなら焼却も可能だろうが、付属や副資材が使われているから焼却は無理で、産業廃棄物として処理される。
もしかして「償却」という言葉を聞いて「焼却」と変換されてしまったのだろうか。

それ以外に、日本には何十年も前から「バッタ屋」という職種があり、さまざまなブランドの在庫品を安く仕入れてきて安く売る。
当方が手伝っているラック・ドゥもその一つだし、大手メディアでときどき取り上げられるショーイチもその一つだ。
ジーンズメイトも創業当時はジーンズ関連のバッタ屋だったといわれている。
それ以外にもそういう業者は数えきれないほど存在する。
実際、当方は、違うバッタ屋何軒かで何度か買い物をしたことがある。

http://doluck.jp/

 

本当にさまざまなブランドの不良在庫品がバッタ市場には流れてくる。
アーバンリサーチ、タケオキクチ、ユナイテッドアローズという錚々たるブランドの不良在庫品もバッタ屋の店頭で見たことがあるし、世間的には安売りで知られ、最後の一枚まで売り切ると思われているしまむらの在庫品もバッタ屋の店頭で見たことがある。
しまむらの値札は1500円だったが、バッタ屋はそれを590円に値下げして販売して無事完売していた。
中には大手セレクトショップや有名ブランドのサンプル品もバッタ屋に流れてくる。

産廃として処分するのと、バッタ屋に安値で払い下げるという2通りの処分方法があるのだが、どちらにもメリットとデメリットが存在する。

産廃として処理されるのメリットは、安売り市場に出回らないのでブランド価値が維持できる。
デメリットは、産廃処理費用がかかるということと、近年注目されているサスティナビリティとエシカルに反するというところである。
ちなみに個人的には過剰なサスティナビリティも過剰なエシカルもあまり好きではない。

バッタ屋に払い下げたときのデメリットは、産廃だと金を払わないといけないのに、バッタ屋だと少額とはいえ金をもらえる点にある。
デメリットは、ブランド価値が大きく毀損する点である。

そういえば、今年7月上旬に、天満のバッタ屋でアースミュージック&エコロジーのサンダルが399円で売られていて、その3週間後くらいに訪れた際、299円に値引きされていた。今でも何足か残ってて売られているはずだ。

 

どちらの処分方法を選ぶのかは、経営者判断にならざるを得ない。
ブランド価値を維持するのか、目先の少額な現金を取るのか、である。

売れ残り品の処分をしなくて済むようにするなら、過剰供給はやめねばならない。
その一つの方法としてオーダーメードのような受注生産が注目されている。

じゃあ、それで解決でめでたしめでたしとはならない。

洋服を作るための生地、裏地、芯地、ボタン、ファスナー、織りネームなどは常に大量生産され続けている。

そしてそれらをメーカーや問屋が大量に備蓄しているのである。

例えば、タレントが思い付きでブランドを開始するときに、どうしてすぐに商品が作れるのかというと、洋服を作るためのそれら材料がメーカーや問屋にたっぷり備蓄されているからである。

小規模ブランドや小規模デザイナーズブランドがいとも簡単に直近で商品を作ることができるのは、それらの材料がメーカーや問屋にたっぷり備蓄されているからである。

そして需要が少なくなれば、備蓄されていて動きの悪い商材は廃棄されるかこれまた材料のバッタ屋に二束三文で売り飛ばされることになる。

エドウインの本社がある西日暮里には1メートル100円くらいの安い生地を売っている店が何軒もあるが、あれらはそういう材料のバッタ屋なのである。

洋服製造の部分だけをオーダーメードや受注生産に切り替えたところで廃棄ないし安売りはなくならず、材料段階でそれが行われるだけのことであり、さらにいえば、いつでも生地が織れる・編めるように、糸も大量に備蓄されているし、糸の元となる原料も大量に備蓄されている。

これが事実であり、そこまでを解決するとなるとどれほどの費用やシステムの構築が必要になるのか想像もできない。

じゃあ、どうして、そういう生産しかできないのかというと、各段階で採算ベースに乗る「経済ロット」というものがあるからだ。

その一端はこのブログに詳しい。編み生地の場合がわかりやすく説明されている。

ロットと在庫とわたし

http://www.ulcloworks.net/posts/4611965

しかし、生地商社さんは各色のバランスを生産コストを一律にしてストックしておく必要があるため一色辺りの経済ロットで生産して在庫を持つことになる。

染色の経済ロットは染色工場によって様々だが、概ね6反/色というのがある程度の規模の工場が提示している経済ロットである。
なのでこれ以下の数量に関しては加工賃にチャージアップなどの経費が加算されるので基本的にはこの経済ロットに応じて加工していることが多い。

一つの生地品番あたり、染色ロットが満たせても、色数が少なければ編みの経済ロットをクリアすることができない可能性がある。
無地編みの場合、生機(染色前の生地)の経済ロットは生地組織によるが基本的には「糸ひと立て分」が提示されるケースが多い。
「糸ひと立て分」とは、編み機のフィーダーと呼ばれる糸を送り込む糸口の数に合わせて糸を買うロットのことを意味するので生地によるのだが、わかりやすくするために例として今回は一般的な量産型の30インチ28ゲージという編機を利用した天竺という生地を編む場合で話を進めていく。

30インチ28ゲージ天竺の機械のフィーダーは高速機なら国内はほとんどが90口である。
つまり「糸ひと立て分」は糸90本分ということになる。
糸は分割といって小割して使うこともできるが、このひと立て分という意味の中に分割してという言葉は付かない。
糸は綿糸の場合1本1.875kgが中心で、糸ひと立て分は90口x1.875kg=168.75kg(30/1天竺40m巻き1反がだいたい11kgくらいなので15反とちょっと)が編みの経済ロットという認識になる。

ところが、綿糸は90本という綺麗な数字で買うことができない。
1ケースという単位で買い取る必要があり、1ケースは12本入りの22.5kgが糸を買う際の最小ロットになる。
90本揃えなければならないので90口÷12本=7.5ケース。そして糸は半端ケースで買えないため切り上げ8ケースという量の糸を買うことになる。
8ケース×22.5kg/ケース÷11kg/反=16反と余り糸4kgが編みの経済ロットになる。

これと、先程の染色ロットの最小公倍数がいわゆる経済ロットということになる。
色数はストック生地を販売していく上で2色展開などではあまりにも寂しいので、4-6色が少なくとも容易されている。
そして一色6反以上×色数でアソートを組んで編みの経済ロットと染色ロットの最小公倍数を探していくのである。
例として単純に全部の色が6反の加工をするとした場合、染め6反と編み16反の最小公倍数は48反編んで8色染めるのが答えになる。

アパレルメーカーさんに別注の生地提案をして一色6反染めて編みで48反という注文をもらうのは簡単ではない。
なのでニッター編工場は生地問屋めがけて営業をかけたほうが工場稼働をまもりやすい。

しかしこうした経済ロットをクリアして積み込まれた在庫をキレイに売り捌くのは非常に難しい。必ず売れ残りの在庫が出る。
こうしたものがバッタ屋などに破格で流通していくことになる。生地の世界でもこのようなことはザラである。

ちょっと長いが読んでいただければ、生地作りの数量問題の一端が理解できる。

編みの場合は、重さ(㎏)が基本となっているが、織りの場合は、長さ(メートル)が基本となる。
これは生地の場合だが、ほかの付属や副資材、織りネームなども同様の理屈で「経済ロット」が求められる。

廃棄問題に心を痛めるのは個人の自由だが、ここの部分を変えない限りは廃棄問題はなくならない。
そしてそれを変えるには膨大な費用と膨大な手間がかかる。綺麗事のスローガンを念仏のように唱えるだけでは何も変わらないし、変えられない。

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バッタ屋の小説があったよ~

低価格ブランドが売れているのは「価格」だけが評価されているのではない

インターネット、とりわけブログも含めたSNSが普及したことによっていろんな人が意見を発信することができるようになった。
デメリットもあるがメリットも大きく、当方もいろいろとデメリットを感じることもあったが、何とか生きていられるのもSNSの普及によるところが大きい。

で、様々なファッション業界人(あえて衣料品業界とはいわない)の発信を見ていると、「ズレ」てるなあと感じることが多い。

その多くはやっぱり自分たちの飯のタネに直結する「商品価格」のことである。
中には被害妄想ではないのかと思う人も少なからず見かけられて辟易させられる。

よくある論調として

「ユニクロなどの低価格ブランドが持て囃されているが、高い服を着ることで精神がウンタラカンタラ」(うざっ)

というものである。

もちろん、バブル崩壊以降の可処分所得の低下・伸び悩みによって、バブル期以前のような高価格な洋服が売れにくくなった。

バブル崩壊直後の93年とか94年には、このケチな当方でさえ、10万円のスーツが6万円に値引きされたのを買っていたのである。
その理由は、何度も書いているが、低価格店にそういうデザインのスーツがなかったからである。

もちろん当時は今より平均的な可処分所得は多かった。
しかし、似たように見える商品があったら間違いなくそちらで買っていた人は多かっただろう。

何度も書くが、93年当時に黒い無地のスーツは、DCブランド系の店にしか売ってなかったのである。
ロードサイドの青山、はるやまには黒無地スーツは略礼服しかなかった。

DCブランドならセールで6万円だが、もし、青山やはるやまに売っていたら定価でも3万~4万円くらいだっただろうし、バーゲンになればそこからさらに2割か3割は安くなっただろう。

だから、もし、当時、黒い無地のスーツが青山やはるやまにあればそちらで買うという人が多かっただろう。

ない物は買えないから、高いDCブランド系で買うしかない。
それだけのことだ。

これはスーツに限らず、Tシャツしかりジーンズしかりドレスしかりである。

元嫁は93年当時、今は亡きビバユーというサンエーインターナショナルのブランドの服を高値で買っていた。
生地はいわゆるスーツっぽいウールまたはウール混で、モスグリーンのロングベストだった。
モスグリーンというだけですでにイズミヤやジャスコには売ってなかったのだが、襟(ラペル)の形状が変わっていて、雲形定規で切り抜いたような丸いグニャグニャした形状をしていた。

グリーンでグニャグニャした形の襟のついたベストなので、当方は「昆布ベスト」と呼んでいた。

昆布ベストのイメージ画
自分で書いたので下手くそご容赦

 

そんな変な襟の形をしたベストはイズミヤにもジャスコにも売っていなかったから、それが欲しければ、高値でビバユーで買うしかなかった。
それだけのことだ。

上の論調のようなファッション業界人は、当方より若い人が多いが、20年前の売り場を見ていない、もしくは記憶が薄いからそういうことをいうのだろうが、ユニクロなり無印良品なりジーユーなり、その他低価格ブランドが売れているのは「価格」だけでは決してない。
百貨店納入ブランドが売れないのは、消費者の意識が低いからでは決してない。

今、黒い無地のスーツといった場合、素材や縫製の品質の良し悪しを除くと、どこでも買える。
ユニクロの「感動ジャケット」+「感動パンツ」だって黒無地のセットがあって、定価で1万円くらいで買える。

25年前なら、低価格品は色や柄は同じでも形がおかしかったり、素材の表面感が違ったりしたが、今の低価格ブランドはそこもそれほど差はない。

だったら、服マニアや服オタクみたいな人以外はそちらで買うのが当然だろう。
6万円と1万円じゃ、見た目にほとんど差がなければ1万円の商品をマスは買う。

黒い無地のスーツに限らず、セーターしかりジーンズしかりである。
昔のイズミヤやジャスコの平場に並んでいた低価格ジーンズはクソダサかった。2010年ごろまでのユニクロのジーンズもクソダサかった。
それが細かい差異はあるにせよ、今ではほとんど見た目がジーンズブランドと変わらなくなっている。
それでいて値段は最低でも2倍はちがうのだから、安い方がマスに売れるのは当たり前である。

被害妄想丸出しの自称ファッションクラスタあたりは、消費者心理や世の中の風潮を責める前に、低価格ブランドと見た目の区別がつかない物しか作れなくなった百貨店アパレルを責めるべきである。

そして「価格」問題以前に、低価格品の見た目が良くなったことを飲み込まないと、売れる商品なんて永遠に作れない。
もう「日本製だから」とか「職人がナンタラ」とかそんなありきたりな文言だけでは高い衣料品なんて売れない。

昨日も取り上げたが、ブルーモンスタークロージングのジーンズは、カイハラのデニム生地を使って3000円台とか4000円台で発売している。

高い服が売りたいなら、「昆布ベスト」みたいに明らかに「見た目から違う服」を作り、それの値打ちを響くように伝える必要がある。
先日取り上げた6000円のデザインタンクトップが良い例である。

上手く見せて伝えることができれば、たかがタンクトップに6000円払う人が少なくとも毎月100人は存在する。
年間にすればのべ1200人が買うことになる。

下手をすると、半場不振にチビって安全パイばかりの百貨店ブランドよりも、ユニクロのデザイナーコラボの方がよほどデザイン性の高い服になっている。おまけに価格は安い。
左右で切り替えられたボーダー柄Tシャツなんていう「デザイン物」はユニクロにしかなかったりする。(今夏のアンダーソンコラボ)

990円に値下がりしたときに買ったユニクロアンダーソンのボーダー柄Tシャツ 今は500円に値下がりしている

商品を「価格」だけで切り取って、上から目線のピントの外れた啓蒙活動を行っているから、ファッション業界人は一般人から理解されないのである。
そういうピントの外れた啓蒙活動がカルト的な小規模集団になることはあってもカルトは所詮カルトでマスにはなれない。

それにしてももう一回、どこかのブランドで「昆布ベスト」発売しないかな。(笑)

久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276

 

 

【告知】多数の要望があり、8月24日のマサ佐藤(佐藤正臣)氏とのトークショーを昼間から夜の飲み会へと変更しました。(笑)
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雲形定規をどうぞ~

今、ビバユーはバッグしかやってないね~

フルオーダーとイージーオーダーとパターンオーダーの違いを改めてまとめてみた

もう様々な方が書いておられるので、繰り返しとなるが、パターンオーダーとイージーオーダーとフルオーダーはまったく別物である。

ちょっとググれば山ほどその違いについて述べておられるブログがあるが、それでもこのブログしか読んでいないという珍しい人も何人かはおられるだろうから、くどいとは思うが改めてまとめてみる。

1、パターンオーダー

あらかじめ決められたパターンをサイズに合わせて微修正するやり方。
各部を採寸後、「ゲージ服」と呼ばれる基準服を着てその差異を修正する。

スーツだと、このパターンオーダーの場合は、ゲージ服をどういう形にするのかが、けっこう大きなウェイトを占めているのではないかと思う。なぜなら、そのゲージ服のパターンを修正するわけだから、それがどういうシルエットなのか、どういうパターン(型紙)なのかで仕上がりの形が変わる。

比較的低価格でできる。平均価格は2万~4万円。

2、イージーオーダー

これはパターンオーダーよりも高額になるが、フルオーダーよりは安い。
各部を採寸後、自分と似た体型の人のパターンを修正するというもの。

基準が決められているイージーオーダーよりも自分の体型に合いやすい。

3、フルオーダー

これは各部を採寸後、その数値を基に、一から型紙を作るというオーダー。
すごく高額になって最低でも20万~30万円はする。

パターンを一から起こすのがどれほどの技術が要るのかは、洋服業界の人でもあまり理解していないが、かなり高等な技術を要する。

通りいっぺんの型紙なら少し勉強すれば引けるらしいが、シルエットの美しさと動きやすさを兼ね備えたパターンを引くには相当の知識と技能が必要となる。
また何をどう重視するのかでパターンは変わってくる(らしい)。

動きやすさを重視するのかシルエットの美しさを重視するのか、シワがよりにくいのを重視するのかでそれぞれパターンが異なる。

まあ、門外漢が知っているのはこの辺りまでである。

だから、パターンオーダーとイージーオーダーとフルオーダーは厳密に使い分けられるべきなのだが、業界の人もこの違いを知らない人が結構いるし、最近注目が高いファッションテック系の人間はほとんど理解していない。
その代表例がZOZOだろう。

販促のテクニックとしては、「盛る」ということがある。
ソフトバンクなんかもよく「盛って」いた。
しかし、個人的には、パターンオーダーをフルオーダーと「盛る」ことは詐欺に近いと思っている。

例えば、ZOZOがPBとして発売したTシャツとジーンズだが、発表当初は「フルオーダー」と発言していたが、今、ウェブサイトに行くと「パターンオーダーです」と書かれてある。
そもそもTシャツとジーンズにフルオーダーなんて必要ないと思っていたが、案の定「盛って」いたのである。ジーンズはそもそも製造関係者によると初回800SKUを製造したそうなので、既製品かパターンオーダー以外は考えられないというのが事実である。

業界外の人から見たら「どっちでもええやん」ということになるだろうが、こういう間違いがさらに消費者を混乱させる。

続いて発売されたオックスフォードシャツもしっかりと「パターンオーダー」と書かれてある。
当たり前だ。フルオーダーのシャツが3,900円程度で発売できるはずがない。

そして、ZOZOのオーダースーツも価格的に見てパターンオーダーだと思う。

まあ、それは置いておいて、オーダースーツと同時に発売されたドレスシャツは「カスタムオーダー」だと書いてある。

カスタムオーダーとはなんぞや?

カスタムオーダーでググってみると明確な定義はない。

しかし、カスタムオーダーとはけっこう幅広く使える言葉で、ワイシャツの襟の形やカフスの形を変えるのもカスタムオーダーだし、ユニクロが個別注文でTシャツやポロシャツにワッペンを縫い付けたり、刺繍を入れたりするのもカスタムオーダーである。
ジーンズの裾を自分の脚の長さに合わせて短く裾上げするのもカスタムオーダーといえる。

通常の既製スーツのズボンは裾上げをするのがほとんどだが、これだってカスタムオーダーといえる。

まあ、要するに既製品でもなんでも、自分流に手直しすることだと思っていて間違いないのではないかと思う。

ところがZOZOのサイトにはこう書いてある。

【カスタムオーダーとは】
お客様の体型に合わせ1点1点ゼロから作り上げる完全オーダーメイド製品です。

ゼロから作り上げるのはフルオーダーで、カスタムオーダーではない。
じゃあこのワイシャツはパターンから作っているのだろうか?たかが2900円の商品なのに。

この言い回しはまた「盛り」気味だし、消費者を混乱させるだけではないかと思う。

消火器を売りつける業者が「消防署の方から来ました」と言うのに似ている。
決して「消防署から来ました」とは言っていないのである。

多少の「盛り」は販促のテクニックとしてはありだが、あまりにも「盛りすぎる」のは詐欺ではないかと思う。

そして「盛りすぎ」が横行した結果引き起こされるのは、間違った知識が世間に広まってしまうことである。

よく、生地関係で話題になるのが、

デニムとダンガリーとシャンブレーの違いである。
デニムとダンガリーは経糸と緯糸が入れ替わっているだけだから見た目には区別ができにくい。

一方、ダンガリーとシャンブレーは綾織りと平織りの違いはあるが、どちらもブルーのシャツ生地用途が多いのでごっちゃに使っている業界人も多い。

業界人がごっちゃにするくらいだから、消費者もごっちゃにする。
そうなると今度は製造側は困惑する。
「あのダンガリーでシャツを作りたい」なんて言われたとき、その「ダンガリー」はダンガリーを指しておらずにシャンブレーを指していることは珍しくない。

このままでは、ファッションはいっそう混沌としてむずかしくなる
https://t.co/hlXgymQ62k

このブログはまさにそれを憂いている。

都合の悪いことに、テック側がリリースしたものは拡散されやすく、どちらでもよくないことが間違った方で広まってしまう風潮です。(ZOZO PBの謳ったフルオーダーがパターンオーダーだった件は記憶に新しいですね。大手通販サイトには、アイテム名称の誤認表記が溢れています)

このままでは、ファッションに関する情報が正誤入り乱れてカオスと化し、いざファッションを知りたい、関わりたいを興味を持ちかけた人が、この混沌ぶりに入口で頓挫してしまうのではないかと気がかりです。アイテム名から間違っていたら、検索すらかけられません。

私は、これ以上ファッションを複雑にしたくありません。

フルオーダーとパターンオーダーを意図的に混同することは、衣料品をさらに混乱させ、複雑化させているだけといえる。
ZOZOはもう少し控えめに盛ってみてはどうか。今の「盛り方」はあまりにも見苦しい。

 

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金曜日に紹介したらAmazonでけっこう売れているECの本をどうぞ

限界点が露呈したトウキョウベースのビジネスモデル

やはりというか、当然というか、「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」を展開するトウキョウベースの業績が崩れた。
もちろん、早晩崩れると思っていたし、同社が発表しているような成長戦略は到底不可能だと思っていた。

2018年2月期の第一四半期決算は

売上高が29億3000万円(前期比0・6%増)
営業利益が3億2500万円(同28・2%減)

と微増収大幅減益に終わった。
さらに、微増収といっても、「出店増加にもかかわらず、売上高が横ばいだった」(WWD)ことから、既存店は前年割れだと考えられる。
このため、連休前の7月13日のトウキョウベースの株価はストップ安となり、連休明けの7月17日の株価は600円台にまで落ち込んでいる。

トウキョウベースの2018年2月期決算の売上高は127億8000万円で、客単価3万円前後の高い洋服を売る商売は、このあたりが成長の限界点だと常々思ってきた。
恐らく150億円か200億円くらいまでは中長期的には成長が可能だろうが、1000億円という売り上げ目標は何十年かかるのだろうかと思うし、今の「高価格帯商品」だけではたどり着くことは絶対に不可能である。

売上高1000億円に到達したユナイテッドアローズが売上高を大幅に伸ばすことができたのは、中価格帯のグリーンレーベルリラクシングを開発したからだ。店舗数もグリーンレーベルリラクシングが圧倒的に多い。
昔の「高価格セレクトショップだったころのユナイテッドアローズ」のファンからは少し馬鹿にしたような目で見られているグリーンレーベルリラクシングだが、お高い本体ラインを買うことに抵抗感のある人からは支持を集めている。
また、スタート当初はクソダサい商品が多かった低価格ブランド「コーエン」だがこちらもそれなりに支持を集めていて、企画内容も向上している。

洋服業界の人やそれを取材するマスコミはいつも考え違いをするのだが、

低価格=利益は薄いが、買う人の人数は多く数量がさばける
高価格=利益は厚いが、買う人の人数は少ない

という絶対的な条件をいつも忘却し、「高価格帯で買う人も多い」というブランドが出現できると考えてしまう。

トウキョウベースの売上高1000億円構想なんてその典型だろう。
トウキョウベースの店頭に並んでいる高価格な洋服が1000億円も売れることは到底あり得ない。

トウキョウベースのスタイルはよくて200億円くらいが限界点だろう。

それに価格帯以外でもトウキョウベースのビジネスモデルには疑問を感じるところが多々ある。

5月に行われた2018年2月期決算発表では、EC(いわゆるインターネット通販)の不振に言及されているが、トウキョウベースのECはZOZOTOWNへの依存度が病的なほどに高い。
依存比率は86%もあり、自社ECはたったの14%しかなく、ほとんどないに等しい。

そのECが崩れた理由は「ZOZOTOWNの低価格化と合わなかったから」とトウキョウベース側が発表している。
にもかかわらず、5月の株主総会では「ZOZOTOWNとの連携を強化する」とも発表しており、価格帯が合わない販路とさらに連携を強化するという意味がまるでわからない。
というより自社ECの比率を上げるノウハウがないから他力本願でZOZOTOWNに任せるという意味にしか聞こえない。

5月の株主総会をレポートしてくれているありがたいブログがある。

この方は株主なので期待しておられる書き口だが、その期待は極めて残念なものとなるのではないかと当方は見ている。

その一部をご紹介したい。

2、当面のターゲットを売上高1000億と宣言したが、期間は10年程度と考えている(現在127億)

と売上高1000億円目標の到達時期をかなり後倒しにしている。
まあ、これは賢明な判断だろう。ただし、今のブランドラインナップのままで1000億円を到達できることは永遠にないと当方は見ているが。

また、トウキョウベースの営業・販売姿勢でもマスに売ることは難しい。

トウキョウベースの各店は店長やスタッフによっても差があるが、強引な売り付けが多いことで有名である。(もちろん例外店員もいる)
それが批判されるとトウキョウベースの谷正人社長は決まって「99%に嫌われても1%に好かれればいい」と説明するが、99%に嫌われるようなブランドがマスに売れるはずもない。1%の顧客を捕まえたいなら、そういうニッチでスモールなビジネスを展開すべきで、拡大志向とブランド構築の方向性がちぐはぐで、当方から見ると、学生ノリのまま100億円まで拡大できてしまったようにしか見えない。

また、ここのブランドは、3つか4つあるが、どれも似ており見分けがつかない。
これはアダストリアやストライプも同様の弱点があるのだが、ブランド同士が似ており、イメージの違いが思い描けない。
ユナイテッドアローズなら細かいブランドは置いておいても、本体とグリーンレーベルリラクシングとコーエンの違いくらいはイメージが思い描ける。
屋号だけ変えて似たようなブランドをいくら増やしても、そのテイスト好きな客しか集まらず、支持は広がらない。
だからトウキョウベースはこれ以上売上高を伸ばすことは難しいだろう。

さらにいえば、盛んに掲げてきた「原価率50%」とか「原価率60%」というのは本当なのだろうかといぶかしく思う。

例えば、オンライン通販専用のソーシャルウェアというブランドをここは盛っているが、ZOZOTOWNで10%オフセールを開催している。
原価率60%を公言していながら、10%も値引きできるのはどうしてだろうか。
これが自社サイトなら残り30%粗利益が残るってことになるが、ZOZOTOWNの場合は売上手数料が引かれる。
後発でZOZOTOWNに参加したブランドは35%引かれると言われているが、トウキョウベースの手数料はもう少し安いようだ。

前述の株主総会レポートでは

当社のZOZO取引を決算書から推定するとかなりいい条件で取引していると思われるが、どうか?

有価証券報告書に販売手数料の金額が記載されており、それがすべてZOZOへの支払いだと仮定すると、ZOZO売上高(売上高×EC率×ZOZO率)に対する手数料率17.8%と試算されます。あくまで推定ですが・・・

とのやり取りが記されており、17・8%だとしたら、ほとんど粗利益はなくなる。
17・8%未満としても粗利益は極めて薄くなる。

そして粗利益には「経費」が含まれているから、経費を除けばほとんど利益は残らないことになる。

そんな設定で本当にやっていけるのか極めて疑問しかない。

何にせよ、ノリと勢いだけで127億円まで到達したトウキョウベースだが、そろそろ正念場に差し掛かっている。
これまでのようなノリと勢いだけでは、今後の成長戦略を描くことは難しい。冷静な分析と緻密な施策が必要になるが、現時点で外野から眺めていると、トウキョウベースという会社にそれがあるとも思えないし、今後それらを備えていくとも思えない。

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マスに売りたいなら「玄人向け」商品にこだわるべきではない

何のジャンルでも上級愛好者やマニアの提言は、ファンの裾野を広げることにはあまり役に立たない。

ヒノヤの人気チノパン ジッパーフライに改良し売れる

https://senken.co.jp/posts/hinoya-burgus-plus-180627

オリジナルブランド「バーガスプラス」で09年から販売する「401」。顧客や販売員の声を元に、股間部分をボタンフライからジッパーフライにした。4月末に販売を始め、「前年同期に販売した旧型の販売本数を上回っている」という。

リピーターの多い商品だが、玄人好みのボタンフライから、万人受けするジッパーフライに変更したことで「客の裾野が広がった」と見る。

とある。

当方はボタンフライのズボンは絶対に買わない。
なぜならめんどくさいからだ。

15年くらい前に「たまには定価で買ってみようか」と思って、リーバイスの502を買った。
大雑把に言って、502は501のジッパーフライ版だ。
とくに15年前はそういう位置づけだった。

ちなみにこのジーンズはまだ所有している。
ストレッチが入っていないのでめったに穿かないが。

実は501を買おうかともその時思ったのだが、ボタンフライなので買うのをやめて502に決めたという経緯がある。

しかし、ジーンズファン、上級愛好者には501支持者が多くいる。
その中のコアなメンバーに言わせると、ジッパーフライよりもボタンフライの方が良いのだという。

当方は何が良いのかさっぱりわからない。

今回のヒノヤの記事でもわかるようにファンを増やしたいなら、より簡単な商品を作って裾野を広げることがもっとも効率的である。

ところが、ジーンズ然り着物然り、そういう入門編の商品を作ることを拒否する傾向が強い。
だからいくら声高に叫ぼうとファンは一向に増えないのである。

パソコンでもデジタルカメラでもそうだが、初心者にいきなり上級者向けの超高級機体を買わせるだろうか?
当方が初心者なら絶対に買わない。

「最初から本物に触れるべきだ」という意見もあり、それはそれで理解できなくはないが、多くの初心者は最初から高額な「本物」を買うことに躊躇する。
当然だ。買ったところで使いこなせるかどうかわからない。
そんなあやふやな物に大金を支払いたい人なんてほとんどいない。

ジーンズや着物も同じだ。

新規ファンを獲得して、使用人口を増やしたいのなら、不便なボタンフライより便利なジッパーフライを店頭投入した方がはるかに理にかなっている。
ブタンフライを発売したければマニア向け商品として発売すれば良いだけのことだ。

ところが、コアなジーンズマニアはその「マニア向け」商品を「本物」だとして、初心者やライトユーザーにも押し付ける傾向が強い。
マニアの気持ちはわからなくもないが、それではかえってジーンズが敬遠されるだけのことになる。

着物も同様だ。

昨日、上下セパレートの着物「レ・モン」のことをこのブログで紹介した。
値段も比較的安く(安物のスーツ程度)、着るのも簡単だから初心者向けとしては良いのではないかと思ったからだ。

しかし、着物上級者からは批判的な意見もあった。

うーん。レ・モンが想定しているターゲットは上級者じゃないのにな。(多分)

そういう上級者の意見がさらに着物離れを助長しているのではないかと思う。
上級者が「あんなものは着ない」と思うのは当然だが、それをわざわざ言う必要はあるのかと思う。

何の分野においても上級者やマニアは自分たちの愛好する「本物」を広めたいと考えているが、それは土台が無理な話である。

裾野を広げてマス化させたいなら、初心者が手に取りやすいように、簡単な廉価版を開発するべきである。
ヒノヤのチノパンが好調なことがそれを証明している。

いくら本物の風合いとか言ったって、一日に何度もトイレに行くたびに不便感を味わうボタンフライよりも手軽なジッパーフライの方が万人受けすることは誰が考えてもわかる。

マニアがいくら「ボタンフライも慣れたら楽だよ」と言ったって、その慣れるまでの時間を我慢することを想像すると、初心者は萎えてしまう。
着物も同じで、上級者が「慣れたら着付けも楽」と言ったところで、そこに至るまでどれほどの時間が必要になるのかと想像すると、当方のような着物を着ない層からすると億劫になってしまって、棺桶に入るまで着物を着ないという考えになってしまう。
現実的なことでいえば、着物を着ないことでの不利益が何一つない。だったらそんなめんどくさい服は着る必要がないということになる。

伝統工芸品も同じではないかと思う。
いくら「本物」か知らないが、そんな超高額品をライトユーザーが容易く買うはずがない。
それよりも買いやすい価格帯の商品を開発した方がユーザーは増えやすい。

マス化させたいと願うなら、どのジャンルもライトユーザーが手を出しやすい商品を作るべきで、「本物」はコアなファンに向けて作れば良いだけのことだ。
それこそ「本物」はハイエンドモデルと位置付けて初心者が憧れるような見せ方をすれば、初心者もいずれは上級者になって「本物」を購入することになる。

本来、ハイエンドモデルと位置付けられる「本物」をマス化させようとするから広まらないのである。
着物もジーンズも伝統工芸品も。

その部分を間違えている分野がマスに支持されることは永遠にあり得ない。

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ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
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リーバイス502

「センス」と「感覚」だけでのブランド運営はすぐに行き詰まる

先日、雑貨ショップASOKO南堀江店が5月20日に閉店した。

入店していたビルの耐震補強工事が閉店の理由だそうだ。
ただ、もしすごく売れ行きが好調なら、工事終了後に再開するだろうから、それがないということは再開するほどの旨味がなかったのではないかと思う。

オープン当時のASOKO南堀江店の外観

オープン当時のASOKO南堀江店の内装

先日、アメリカ村を通ったら、雑貨ショップ「フライングタイガー」アメリカ村店を久しぶりに見た。
オープン当初は連日スゴイ客入りだったが、今はそんなことはない。
まあ、普通の店である。

ASOKO南堀江店も同様だ。オープン当時は連日の賑わいでテレビや新聞、雑誌の報道合戦だったが、ここ2年くらいは当方はその存在すら忘れていたほどだ。

フライングタイガーがあちこちに店ができた。大阪でいうなら、あべのキューズモールにもある。
買い物するのは楽になったが希少性はなくなり、話題性もなくなった。

オープン→ブーム加熱→沈静化

という流れは、フライングタイガー、ASOKOともにその歩みはほぼ同一である。

報道によるブームのなんと一時的なものか。

各地方の大河ドラマ商法もこれと似たような印象がある。

さて、フライングタイガーも、オープン当初のASOKOも品ぞろえ、商品の陳列法・ディスプレイともに「センス」があり、「良い感覚」だと思った。もちろん、商品の一つ一つをつぶさに見れば「なんじゃこれ?」という商品もあったが、ブランドやショップというのは、トータルで見ての整合性がとれていることの方が重要だと思うので、当初の在り方はありなのだと思う。

この2ブランドの特徴は、ある程度「低価格」であるということ。
中には低価格でない商品も一部にはあるが、全体的には低価格なので、基本的には「薄利多売」となる。
そのため、「センス」や「感覚」「雰囲気」もさることながら、商品の発注、補充、追加などのシステム構築が重要になる。
単価の安い商品を大量に販売しなくてはならなくなるため、その商品の供給、補充・追加、そしてそれを備蓄して店頭に運ぶ物流システムの構築が何よりも重要になる。

物流に関してはド素人なので詳細はまるでわからないが、従業員や店舗運営担当者が商品を手運びしているのでは到底間に合わないことぐらいはわかる。
1店舗だけで営業するならそれも可能だろうが、両ブランドともに多店舗化を目的としていたので、それでは到底追いつかなくなる。
さらにいえば、低価格店なので多店舗化しなければ収益はまるで高まらないので、多店舗化は目標であり、義務だった。

ところが、フライングタイガー1号店であるアメリカ村オープン時の混乱はこの物流システムがまるでなかったことが原因の一つであり、連日の過熱報道で客が多数押し寄せ品切れ状態となって何か月か休店していた。

オープン当時のフライングタイガーアメリカ村店の外観

ASOKOも同様である。
ASOKOは現在は雑貨店スリーコインズを運営するパルグループの傘下だが、当初は遊心クリエイションが自社で開発した業態だった。しかし、遊心クリエイションは2016年1月に会社解散してしまい、その後、ASOKOはパルグループに引き取られて今に至る。

当時の遊心クリエイションのメンバーに聞いたところ、オープン当初のASOKOは南堀江と原宿の2店舗体制で、物流会社とは契約しておらず、商品の供給、追加補充はすべて社員が人力(手運び)で運び、在庫の棚卸も社員が行っていたという。そのためすさまじい労力が必要だったとのことだった。

ASOKOが多店舗化を目標として公言していたにもかかわらず、まったく店舗数が増えなかった理由はここにもあった。
物流を自社で賄ったままで店舗数を50店舗だの100店舗だのまで増やすことは物理的に不可能で、それをやればそれこそ過労死する社員が続出したのではないかと思う。

フライングタイガーの当初も同様だ。
システムを構築せずにアメリカ村店をオープンさせた結果、商品供給が追い付かずに何か月も休店する事態となった。

売り方にはさまざまある。
低価格店、中価格店、高価格店。

それぞれ、損益分岐点に達する販売数量があり、それを継続的に越え続けないと事業やブランドは継続できない。

とくに薄利多売、大量生産・大量販売を基本とする低価格店はそれを支えるシステム構築が不可欠である。
だからASOKOはパルに、フライングタイガーはサザビーリーグの傘下となった現在の方がはるかに商品供給がスムーズである。
なぜなら、パルもサザビーリーグもそれなりに大手なので物流システムは小規模企業だった遊心クリエイションやゼブラジャパンよりははるかにしっかりとしているからだ。

何の変哲もない雑貨を安く売るのではなく、ある程度「ファッション」的に売るから「センスや感覚が重要」と言われがちだが、この手の低価格店を運営するには、物流も含めたシステムや仕組みの構築が重要になる。
もちろん、走りながら構築するというやり方もありで、システムや仕組みの構築なんて凄まじく莫大な投資が必要だから、小規模企業では一度には支払えない。走りながら投資して構築するというやり方しかない。

しかし、そういうシステムや仕組みの構築が「まったく頭になかった」というのはお話にならない。
旧運営会社の2社は「まったく頭になかった」とまでは言わないが、そこを重視していなかったということはできるのではないかと思う。

「センス」「感覚」も重要だが、それと同様にシステムや仕組みの構築も重要なのである。

嗜好の成熟化や情報量の増大によって、以前のように「かっこいい物を並べれば、それで売れる」という時代ではなくなっているから、もしかすると、中価格、高価格ブランドの売り方もそういうシステムや仕組みの構築が重要なのではないかと思う。

各社、各創業者によって目指すべき企業規模やブランド規模は異なる。
一概に大規模化することが良いとは思わないが、それでもブランドや企業を永続的に続けるにはそういう物流を含めたシステム構築が不可欠だろうし、単に「センス」「感覚」「イケてる」と言っているだけでは永続的な収益は上がらない。

国内の小規模ブランドがいつまでも損益分岐点に達しないのは、価格政策や販売政策もさることながら、「センス」「感覚」のみに頼りすぎているからではないかと思う。「センス」「感覚」のみのブランドは価格帯にかかわらず事業拡大はできない。まあ、事業拡大を目指していないブランドはそんなことを考える必要はないが。

「センス」「感覚」だけで走っていた遊心クリエイション時代のASOKOがまったく店舗数が増えず、結局は破綻したことはそれを象徴しているといえる。

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そんなASOKOの商品をどうぞ。

「大量生産・大量販売から脱却する」という意味不明なルミネの主張

ルミネという商業施設のコメントはどうしていつも屁理屈臭が漂うのだろう。
これこそ企業の風土というやつかもしれない。

ルミネの夏のセール日が決定 昨年と同時期の7月末から
https://www.wwdjapan.com/635519

今年の冬セールは他の施設とほぼ同時の1月4日から開催したが、夏セールは他の施設から遅れて7月27日からするそうだ。
で、遅らせる理由だが

広報担当者は「しっかりとプロパーで販売し、適正な時期にセールをするという方針を取っている。これまでと変わらず、大量生産、大量販売から脱却し、素材やデザインにこだわった商品の価値を丁寧に伝えて販売していく」としている。

と書かれており、はっきり言って意味不明だ。
ルミネは真面目のこんなことを考えているのだろうか。だとしたら上層部は相当アレな人がそろっている。

そもそもルミネというファッションビルに入店しているテナントブランドのほとんどは「大量生産・大量販売」である。

例えばルミネ新宿を見てみようか。

1階にはユナイテッドアローズとトゥモローランドという「ほぼSPA」化した大手セレクトショップである。すでにこの2店でも相当に大量生産・大量販売だ。大量生産・大量販売という仕組みがなければこの2店はここまで大手になっていない。

2階にはガリャルダガランテ、デミルクスビームス、ドゥージィエムクラス、マークジェコブス
3階はイエナ、ピーチジョン、グレースコンチネンタル、ルシェルブルー
4階はユナイテッドトウキョウ、スピック&スパン、ブラックバイマウジー

などというふうになっており、目玉テナントはすべて大量生産・大量販売である。
そうではないと完全に言い切れるのは4階の大塚呉服店くらいだろう。その大塚呉服店とて、仕入れている着物のうち何割かは大量生産品が含まれている。

現代の大手アパレルブランドで大量生産・大量販売でないところはない。

「素材やデザインにこだわった」と陳腐化した言葉を並べているが、ルミネ内の店以外でも同じ商品が並んでおり、ルミネ内の店で買う必要性はまるでない。

以前に、バーゲンセールを後倒しし始めた際に持ち出したルミネの屁理屈は「産地の保護」だった。
しかし、上記のテナントにどれほど国内生産品が並んでいるのか。上記のテナントが扱っている商品はほぼアジア工場で生産されている。
生地や染色加工の段階にまでさかのぼれば、国内品比率が増えるが、縫製段階で限っていえば、当時ですら97%(数量ベース)は海外製造品だ。「産地の保護」で掲げている「産地」というのはどこを指しているのか?アジアの縫製工場のことか?
まったく笑わせてくれる。

ルミネの「理由」を聞いて前回も今回も納得する人がいるのだろうか。
いるとしたらその人たちの頭の中身は相当におめでたい仕様になっている。

で、これらのルミネの目玉テナントの各ブランドのウェブサイトに行くと、すでにウェブ上では一部セールが5月から始まっている。
ZOZOTOWNも5月にすでに大々的なセールを行っているし、割引きクーポンの乱発は日常茶飯事だ。

ウェブだけではない。実店舗でも今年は夏のセール開始が早い。
ショッピングセンター内や都心路面店では5月半ばから「店内一部セール」「最大〇〇%オフ」というデカイ看板が掲げられているし、ストライプインターナショナルとそれに触発されたブランドが毎日「タイムセール」を繰り返している。

言ってしまえば、消費者は常に割引品を買うことができる状況にあり、ネット通販の進展によってそれはさらに周知されている。
突き詰めればネット通販の最大の集客手法は「安売り」だからネット通販が盛んになればなるほど、各サイト間の競争は激化して安売りは進む。ZOZOTOWNの5月の大セールや割引クーポンの乱発はそれを証明している。

2008年ごろまでのインターネットがそれほど普及していない時代なら、ネットと実店舗は違うという理屈でも押し通せたかもしれないが、これほど多くの人が日常的にインターネットを使用している状況下ではその理屈は最早通用しない。
それにルミネのネット通販、アイルミネも早期に割引セールを行っている。自社のサイトがやっていることを実店舗で否定する意味がわからない。こういうのをダブルスタンダードというのである。

加えて、常に店内に「値下げセールコーナー」を持つユニクロ、ジーユー、GAP、ストライプインターナショナルの各ブランド、アダストリアの各ブランド、などのSPAブランドが浸透している。
消費者からすると、店内に見切り品コーナーがあることは最早常態と化している。

このような状況下で、90年代の遺物のような夏と冬の年二回の大幅値下げセールに固執する意味があるのだろうか。
当方はまったくないと思う。ルミネで値下げされていないブランドだってそのブランドのウェブサイトでは値下げされているのだから、そちらで買えば良いだけのことである。

こうなると、いくら、大手流通が「セール後倒し」を叫んだってもとには戻らない。
ネット通販とSPAブランドがすべて壊滅しないと実現できないので、事実上実現不可能ということである。

となると、ここでやらねばならないことはノスタルジー丸出しでの「セール後倒し」模索よりも、SPA方式での売れ行き不振商品の自動的段階的値下げである。それとともに、ZARA式の「売り切れ御免」方式を組み合わせるマーチャンダイジングの模索であろう。

ZARA式を取り入れることで「値下げまで待てない」という心理を消費者が持てば、セール品は減る。
それでも売れ行き不振商品が出るならそれは、企画と販売が下手くそなせいだから、諦めて値下げすればいい。
後生大事に定価で抱えていても最終的に投げ売るよりも早い段階で、30%オフくらいで枚数を減らした方が利益率が高いはずだ。
また、廃棄するにも廃棄料としてカネがかかるから、不振だと気が付いた段階で少し値下げする方が適切な処置だといえる。

定価で買うのは嫌だが、30%オフでこのデザインなら買っても悪くはないと考える消費者は多い。

まとめると、

・SPA方式の自動的かつ段階的値下げ
・ZARA方式の「売り切れ御免」の商品手配の確立と、商品企画の精度向上

セール後倒し派はつまらない日程操作よりも、この2つに注力すべきだろう。

それにしてもルミネの主張はいつもまったく共感も支持もできない。

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ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
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