カテゴリー: 誰がアパレルを殺すのか

アパレルブランドの「小売店向け展示会」は意味がなくなりつつある

 関西視点で気候のことを話すと、お盆のころに猛暑がやわらいだ。
安心していたら、お盆明けから再び猛暑となった。
26日の土曜の明け方に雷雨があり涼しかったのだが、また昨日から猛暑が復活している。

本当に「猛暑死ね」としか言いようがない。

Yahoo!の週間天気予報によると、猛暑のピークは今日でお終いのようで、この予報が的中してくれることを切実に祈っている。

これまで我慢して毎年夏の猛暑の中を移動してきたが、今年はついにこらえ性がなくなって、必要最小限の移動しかせずに過ごした。

また猛暑のピークが過ぎたらあちこち覗いてみようと思う。

そんなわけで今夏の各社の動きはあまりよくわからない。(笑)
しかし、6月ごろまでの傾向でいうなら、各ブランドの小売店向け展示会というのは、芳しくない受注状況が続いている。

これは大小問わずにそういう傾向がもう数年以上続いているし、単独展示会・自社展示会だけではなく、合同展示会も同じような状況だといえる。

いつも展示会にお邪魔するほか、ときどき雑談に立ち寄る「スー・ヒライ」「スー・スー・スー」の2ブランドをご夫婦で展開している平井達也さんも「小売店1店舗あたりの受注数は例外店を除いて年々減っています」という。
Mサイズ1枚、Lサイズ1枚みたいな受注が多いのだそうだ。

名前は伏せるがもう20年以上続いている中規模カジュアルアパレルも年々、展示会での受注枚数は減っていて、商品のデザイン傾向を変えようが、新ブランドを投入しようがほとんど効果がない。ついにはこらえ切れずに新ブランドをやめてしまった。

これには理由があって、一部の好調店を除いて、小売店は総じて苦戦傾向にある。苦戦傾向にある小売店は過剰在庫を抱えていたり、売上高が激減していたりして仕入れ金額を抑えざるを得ない。

また、「売る」ことに対して自信を喪失していて、「数量を売る自信がない」とか「何が売れるかわからない」という心理状態も作用していると考えられる。

だから、無難な物・実績のある物・ネームバリューのある物(あると思われる物)だけを発注する。
それがさらに同質化を生み、売れ行きを鈍らせるという悪循環スパイラルに陥っている。

なぜなら、それらをほとんどの店が仕入れるのだから、必然的に店同士の品揃えは同質化する。これで同質化しない方がおかしい。

それを少しでも緩和させるために考え出された狡すっからい手段が「別注品」である。
自社・自店だけ正規品と少し異なる色柄やデザインの商品を納品してもらうやり方である。

猫も杓子もラベンハムのキルティングジャケットの別注、リーとチャンピオンのTシャツの別注を販売している理由はこれだ。

しかし、素人から見ると、その別注品の差異なんていうのはかなり微細で、あまり見分けがつかないことも多いし、ロゴマークを少し大きめにプリントしました程度なら、どちらで買っても同じことだとしか思えない。

先日、今ちょっとした話題となっているオールユアーズの人と久しぶりにお会いした。

キャンプファイヤーが主催するクラウドファンディングで、ファッション部門で史上(歴史は短いが)最高額をたたき出した新進アパレル企業である。

「毎日着てしまう」ジャケパン CFで1000万円超受注
https://senken.co.jp/posts/allyours-170828

どうでも良いことだが、この見出しの「CF」というのはクラウドファンディングのCFだろうか?それともキャンプファイヤーのCFだろうか?
もしかして、それに引っ掛けたキャンプファイヤーという名称設定なのだろうか?

それはさておき。
明日が締め切りだが、現時点(8月29日)で1500万円超にまで受注金額が膨れ上がっている。

久しぶりにお会いしたのは、オールユアーズの企画を一手に担当している原康人さんで、素材や製造に詳しいだけでなく、商品企画や販売方法のプランニングまで幅広く能力を発揮できるので、個人的には「業界の若き逸材」だと見ている。

その原さんが、「僕らは近々、小売店向けの展示会を廃止しようと思っているんです」という。
その理由を尋ねると、「実際に展示会を開催しても受注数量はトータルで10枚~20枚程度なんです。Mサイズ1枚だけとかそういう受注はざらにありますから」とのことだ。

これまで多くのブランドで耳にしていた状況と同じで、廃止することは納得である。

じゃあ、その代わりにどうするのか?と尋ねてみた。

すると「今回、クラウドファンディングでこれだけの受注があると、逆に小売店からかなりまとまった数量の発注がありました。それこそ1店舗で10枚とか20枚はざらです。じゃあ、これからはクラウドファンディング主体で商品を発表すれば効率的ではないかと考えています。クラウドファンディングでバカ売れしたと聞けば、小売店はまとまった枚数を発注してくれますから」という答えが返ってきた。

なるほど理にかなっている。そして「ビビっている」小売店からすればクラウドファンディングで売れれば「実績」が見えるわけだから、安心して仕入れることができるということになる。

展示会での受注精度を上げたり、受注枚数を増やそうと努力しても、多くの小売店がビビッていて、迷走しているのだから、効果を上げることは極めて難しい。
そのメーカー、ブランド側の努力はほとんど無駄に終わるだろう。

それよりも新しい売り方を模索した方が良いのではないか。

クラウドファンディングで実績を見せるというのも一つのやり方だろうし、例えば、ウェブ通販で売りまくるとか直営店舗で売りまくるとか、そういうことも一つの方法ではないかと思う。

展示会にさらに多くの小売店を呼ぶとか、展示会での発注枚数を増やすためにアトラクションを企画するとか、そういう方向の努力は今の状況では実を結ばない可能性が極めて高い。

そういえば、その昔、某GFF(岐阜ファッションフェア)というイベントは、バイヤーを「長良川の鵜飼い+ホテルでの宴会」に招待して効果を出そうとしていたが、徒労に終わっていた。
まあ、効果が出ると考えていたことが不思議でならないのだが。

まるで、「ジーンズが売れないから、生地の重さを0・5オンス上げてみました」とか「トレーナーの着丈を1センチ長くしてみました」みたいな意味のない改変と同じといえる。

従来型の「小売店向け展示会」にこだわり続けるメーカー、アパレルブランドは今後さらに厳しい状況に追い込まれていくと考えられる。

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鎌倉シャツのビジネスモデルが秀逸なポイントを考えてみた
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/na76c612e6d37

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いつだって、可笑しいほど誰もが誰かパクりパクられているのさ♪

 最近、ブランド間での商品の同質化が激しいといわれている。
それはどうして起きるのか。

先日、こんなことがあった。
某靴工場の人と会う用事があった。

雑談をしていると、「某セレクトショップが、某老舗靴ブランドの商品を持ってきて『これと同じのを作ってくれ』と依頼してきた」そうだ。

これだけを聞くと、某セレクトショップはなんと悪辣なのだろうと憤りそうになるが、話には続きがあって、

「でもその老舗ブランドも別の靴を作る際には、そのセレクトショップの別の商品を持ってきて『これと同じのを作ってくれ』と依頼してきた」とのことだから、どっちもどっちである。

こうやって業界はお互いパクリ合っているから、必然的に商品も同質化する。

これは靴のことだが、洋服や雑貨もほぼ同じ構図だ。

お互いがお互いの売れ筋商品を持ってきて「これと同じものを作ってくれ」と依頼するのである。
これで同質化しない方がおかしい。

もともと、ファッション業界はそういうパクリ愛パクリ合いで成り立っており、それで各ブランドが規模を拡大してきたことは事実である。

商標(ブランド名)をわざと類似させることもあり、業界の若手の中にはいまだに「コム・デ・ギャルソン」と「コムサ・デ・モード」の区別がついていない人もいる。

15年くらい前にファッション専門学校を卒業した学生が、就活でファイブフォックスの面接を受けて「ぼく、昔からコム・デ・ギャルソンが大好きだったんです」と言ったことがある。
もちろんその学生は不合格に終わった。

それはさておき。

しかし、オッサン世代として20年くらい前を思い起こせば、各ブランドはお互いにパクリ合いをしていたが、丸パクリすることはほとんどなく、商品にはそれぞれのブランドっぽいアレンジが施されていた。

トレンドの情報源もたいがいがパリコレだとかミラノコレだとかニューヨークコレに限定されるので、どうしても同じような商品になる。
今では、ほとんどどのブランドも見分けのつかないトレンド商品が並んでいるが、20年くらい前はブランドごとにそのトレンド商品のアレンジも違っていた。

うちはフェミニンなテイストだから、少しフリルを付け加えましたとか、うちはカジュアルテイストなのでロゴプリントを施してみました、とかそういう具合にパクリ商品もトレンド商品もブランドごとにアレンジされていたので、「きわめて同質化している」ようには見えなかった。

ところが、各ブランドがデザイナーや企画担当者を「コスト」とみなしてリストラを進めた結果、そういう「アレンジ」を施せる人が社内にいなくなった。
代わりに登用された若手の仕事は、他社の売れ筋の丸パクるだけだし、外注デザイナーに頼めば、その外注デザイナーは何社もの企画を受けているから、必然的にそのブランド間での商品デザインは似てしまう。

丸パクリ感がにわかに強まったのは、インターネットとデジタルカメラが普及し始めた2000年ごろからだと記憶している。

すでに2002年ごろ、児島の某洗い加工場へ取材に伺ったところ、そこの社長が「東京のナントカってブランドの企画のおねえちゃんが、『こんなふうに加工してください』ってデジカメの写真をメール添付して送ってきよった」と言って、その画像を見せてくれたことがある。

メールに添付されていたのは、当時人気だったジーンズカジュアルブランドの商品写真だった。

このころからすでにこういう「お手軽商品企画」は横行していたのである。

今現在の風潮はその延長線上にあるだけのことだ。

そして、今、低価格ブランドが、手段は別として商品の企画力・デザイン力を高めている。丸パクリ合いばかりしている既存アパレル各社がそれに対抗できるとは到底思えない。

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三越伊勢丹とカルチュアコンビニエンスクラブの提携は何が目的だったのか?
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ファクトリエが国内工場を立て直せない最大の理由
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愛し愛されて生きるのさ
小沢健二
EMIミュージック・ジャパン
1994-07-20


LIFE
小沢健二
EMIミュージック・ジャパン
1994-08-31


愛し愛されて生きるのさ
transit general office inc.
2014-03-19




洋服が売れないのは店頭よりも本社側に問題がある

 自分は、販売員経験が3年ほどある。
といっても、その3年はイズミヤの子会社での量販店内テナントの販売員&店長だった。
いわゆる、著名なブランド店でも大手セレクトショップでもない。

低価格~中価格に属するブランドを取り扱っていた店なので、著名ブランド店や大手セレクトショップのような厳しいノルマは店にも人にも課せられなかった。もちろん、店の売り上げ予算はあったが、達成しないと厳しいペナルティが課せられるわけでもない。そういう意味では良心的な企業だったといえる。

その後は、バッタ屋での助っ人販売が3年位前から断続的に続いているくらいである。

しかし、実際に店頭に立ってみると、商品が売れない要因は、店や販売員だけではどうしようもないことがある。
ことがあると書いたが、販売員側からすると商品が売れない要因の大半以上は、本部・本社にあると感じる。

1、商品が店の顧客層にマッチしていない。デザイン、価格ともに
2、本社の販促・告知・広報がお粗末で来店客が増えない
3、商品の補充追加が不十分、まるでダメ

この3点は店頭ではどうしようもないが、売れる売れないはこの3点に大きく左右される。

ゴミ屑みたいなデザイン・品質で価格が割高で、しかも無名ブランドの商品なんて普通に並べていても売れるはずもない。
本社スタッフは「それを売るのがプロ」とか「できる営業マンは石ころでも売る」とかそういうアホな精神論をぶち上げることがあるが、そんなもんで売れるのなら、今頃日本の景気は20年間も低迷せずにとっくに回復している。

経費の使い過ぎで破綻したワイキューブの安田佳生・元社長もその著書の中で、「石ころを私だと思って買ってください」と売りつけるような営業マンはダメだと書いている。
そんな売り方で通用する営業マン・販売員なんてほとんどいない。

大半の普通の健全な消費者は、いくら販売員の口が上手かろうと、販売員がイケメン&美女であろうと、自分にとってメリットのない「石ころ」は買わない。

店頭からすると、もっと売れる商品を仕入れるor作れよ、と言いたくなるし、もっと売りやすい値段にしろよとも思う。

またいくら販売員が有能でも店に客が来ないとどうしようもない。
店に客を誘導するのは本社の広報・告知・販促であり、それができないなら、その本社は無能集団である。

そして、補充追加の問題も店ではどうしようもない。

オーナーが経営する個店なら話は別だが、チェーン店の多くは本社が補充追加を管理している。
いくら売れ筋でもサイズ切れ・色柄切れを起こせば売れなくなる。
その補充追加をそつなくこなすのは本社の仕事であり、それができない本社は無能集団である。

ひいては無能集団を作り上げた経営者にすべての責任がある。
人材採用、人材教育すべての面においてだ。

さらに補足すると、チェーン店の場合、価格の上げ下げも本部指示でなされる。
これが的を外している場合が多い。

下げなくても売れる商品を下げる指示が来たり、下げなくては売れない商品なのに下げる指示が来ないとか、そんなことは日常茶飯事だ。

何故これを書いているかというと、アーバンリサーチが発表した「接客不要ショッパー」について、販売員側から痛烈な反論が出ているからだ。
そのショッパーを持っていると、接客されない。
だから接客されるのが苦手な人も店に来てください。ということである。

企業やブランドのお偉いさん。そろそろ何でも「販売員」に原因なすりつけるのやめませんか?
http://topseller.style/archives/3480

アーバンリサーチがとった「接客しないで袋」が根本的な解決策にならない理由わかりますか?
http://ryoheiyotsumoto.com/urshopper/

あと、単に「見に来ただけ」の客がわざわざショッパーを持つというのは、客側にも抵抗があるのではないかとも思う。だって買う気がないのだから。
買う気もないのにわざわざ接客を避けるためだけにショッパーを持ちたいか?という疑問もある。

今回の一件は、販売員側からすると腹の立つ言いぐさといえる。
販売員だってやりたくてしつこく声掛けをするわけではない。

著名ブランド、大手セレクトショップの多くは強烈なノルマを販売員と店に課している。
それを実現するためには過剰な声掛けをせざるを得ない。

現に、どう見ても買う気がなくて調べるためだけに店に来たお客にも「どうして声をかけないのか」と指導するブランドは数多い。

アーバンリサーチの本社がそういう指導をしていたのかどうかはしらないが、そういう指導をしていたブランドがアーバンリサーチに追随するようなことがあれば、それこそ「本社はアホの集まりか」である。

売れない時代の打開策として接客不要を持ち出すのであれば、今後、どの店もユニクロ方式で客に呼び止められるまで接客をしないようにすればよい。
いっそのこと、店頭に端末を置いて、そこから購入してもらうようにすればよいのではないか。

ちなみに、個人的にはユニクロ方式が好きだ。
ユニクロ、無印良品、ジーユー、ジーンズメイトなどはこちらから話しかけるまで放置してくれている。
話しかけるということはかなりの高確率で買う気持ちができているから、販売員側としても効率的である。

本社スタッフ&経営者が売れない原因のほとんどを販売員側に押し付ける傾向が強い。
それは販売員を経験した業界人なら誰しもが感じていることだろう。

それほどに責任を押し付けられながら、本社スタッフに比べて給料は安く休日は少ない。おまけに立ち仕事で体にもキツい。
だから販売員になりたいという人が減っているのであり、最早アルバイトやパートですら集まりにくくなっている。
もっと時給が高くて美味しい仕事はほかにいくらでも転がり始めているから、アルバイトやパートは全部そちらに吸い取られている。
本当に業界の自業自得としか言いようがない。

旧態依然としたアパレル、セレクトショップ、ブランドは今後ますます淘汰されて市場から退場させられることは間違いない。

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



ミーハーでトレンドに流されやすいアパレル経営者

 日経BP社から、5月29日に発売される「誰がアパレルを殺すのか」を贈呈され読み終えた。

これは昨年秋に日経ビジネス誌で特集された「買いたい服がない」を下敷きにして、詳細にまとめ直した本である。

国内アパレルの不振(米国でもアパレルは不振だが)の原因を過去から遡って追っているのは納得である。
その他の検証や新ビジネスモデルの例示で微妙に疑問を感じるところはあるが、全体的に見れば、100点満点で90点くらいの内容といえる。

IMG_2919

一読して損はない。

今後、何度かにわけて散発的に感想を書きたいと思う。

第1章ではアパレル業界の不振ぶりとその様々な病巣が語られており、業界をよく知る人は「あるある」と肯きながら読んでしまうだろう。

その1章のなかで、「経営もトレンドに流されやすい」とまとめられている。
これはまったくその通りで、アパレル企業各社の経営者は本当にミーハーで「トレンド」に流されやすい。
ひとくくりに年代で分けるのはどうかと思うが、若手経営者よりも古株の経営者の方が流される傾向が強いように感じる。

90年代半ばならSPA(製造小売り)化
90年代後半から2000年にかけては低価格競争
2000年代半ばはラグジュアリー化
2000年代後半ならライフスタイルブランド競争
2015年ごろからはネット通販、ウェブ通販

というのがざっとした業界の「トレンド」である。

ああ、そうそう、なんだかよく分からない「日本製ブーム」なんていうのもあった。

アパレル企業の古株経営者は本当にそのときどきのトレンドに流されやすい。
猫と杓子しかいないのではないかと思う。いっそのこと猫経営者にでもしたほうが人気が出て物販も好調になるのではないかとすら思う。

本文中でも業界関係者の言葉として

「なにかがヒットしていると聞けば、それに飛びつかずにはいられない。洋服だけでなく、経営もトレンドに流されやすい」

が挙げられており、本当にその通りである。

これは恐らく、かつての70年代・80年代・90年代前半のアパレル活況期のビジネスモデルが「ヒット商品の後追い」「先行企業のキャッチアップ」「海外ブランドからのグッドチョイス・グッドコピー」だったからで、70年代・80年代・90年代前半に現場を担当していた人が今、経営者に昇っている。
このため若いころに染みついた体質を変えられないのだと思う。

そもそも彼らは若いころからファッションが好きで、彼らの若いころのファッション好きというと「単なるミーハー」であまり理論的でないというタイプの人が多かった。
三つ子の魂百までという言葉があるように若いころからの性格というのはそう簡単には変わらない。
昨今の逆切れ暴走老人に見られるように、若いころと比べて老化による劣化も起こりうる。

「三つ子の魂百まで」タイプと「老化劣化した」タイプが多く、ミーハーで深く考えないことに拍車がかかっているといえる。

本書ではこの部分の例として昨年末に発表された三陽商会の新経営計画を引き合いに出している。

新社長の岩田功氏が発表した内容で、本書が指摘するまでもなく、新機軸のまったくない方針計画だったといえる。

「ネット通販の強化」
「ショッピングセンターや駅ビルにも販路を広げる」

など、漠然とした方針にとどまっており、方針だけを見ると陳腐すぎて劇的なV字回復はまず見込めない。

もちろん岩田新社長にも三陽商会にもいろいろなしがらみやら事情があったのだと推察するが、出てきた方針だけを見ると、「ふーん」という感じしかない。

三陽商会に限らず、苦戦に陥った旧大手アパレル各社はそろいもそろって「ネット通販の強化」を打ち出しているが、本当に「三つ子の魂百まで」だなと失笑を禁じ得ない。

以前にもこのブログで紹介したように、ネット通販市場は15兆円にまで拡大しており、それだけを見ると売上高の拡大が期待できそうな気がする。
しかし、実態はあくまでも「気がする」だけなのである。

永江一石さんが指摘するように、ネット通販の売り場の数は10年間で数十倍から数百倍にまで拡大している。

例えば、不振といわれる楽天市場でさえ4万店の出店がある。
Yahoo!ショッピングは40万店、ファッションではナンバーワンのZOZOTOWNも1000店以上の出店がある。
そしてAmazonも出店数が増えている。

良く知られた総合通販サイトでさえ、これだけの出店数がある。
さらには今では零細業者ですら、自社のウェブサイトに通販ページを併設している。
これを含めるとネットでの売り場の数は数百倍に増えたことになる。

普通に通販サイトを開設したところで埋没してしまうことは間違いない。

現在の主流だと、ブログやインスタグラム、ツイッター、フェイスブックなどのSNSから通販サイトに誘導するが、三陽商会も含めて旧大手アパレル各社はSNSに極端に弱い。若年層に企業名・ブランド名がほとんど知られていないのはそのためでもある。

SPAブームはファイブフォックスの「コムサ・デ・モード」の躍進がきっかけだった。
ワールドの寺井秀蔵・前社長は嬉々として毎年の決算発表で「SPA比率を今期これだけ高めました」と報告していたことが今では懐かしい。(笑)

低価格ブームはユニクロがきっかけ。
生産数量や生産システムの違いなどまったく気にもしないで、表示価格の低さだけをむやみに競って、その結果、各社とも大爆死した。本当に「考える」ということが苦手な人たちである。

ラグジュアリーブームは2005年ごろの景気回復がきっかけで、2008年のリーマンショックで簡単に死滅した。

洋服が売れなくなったので、雑貨が売れるライフスタイル提案型に注目したが、「単に雑貨を置いただけの店」をライフスタイル提案型ショップだと勘違いしたブランドが続出した。

これの派生形になるが、ロンハーマンのヒットを見て、西海岸型ショップも増えた。
早い話、ロンハーマンの低価格パクリ版である。

その結果、とりあえずサーフボードが飾ってあって看板を外したら区別ができない店が増えた。

そして今が競合の多さも考えずに市場規模の拡大だけで「ネット通販強化」である。

おそらく大半以上の企業が結果を出せずに終わるだろう。

経営陣から変えないと旧型アパレル企業の回復はありえないだろう。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


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