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ジーンズメイトの赤字継続は当然

ジーンズメイトが18年3月期決算の下方修正を発表した。
案の定だ。

これまで、売上高115億5000万円、営業利益3億円、経常利益3億300万円、当期利益4億円と発表してきたが、これを

売上高95億9000万円、営業損失5億5000万円、経常損失5億4000万円、当期損失7億3000万円とした。
見事な赤字継続である。

個人的にいえば、当初の見通しが甘すぎただけのことで、赤字継続には何の驚きもなく、むしろ当然だと感じる。

ジーンズメイトの発表によると

また重点販売商品と位置づけた新しい商品群の販売や新しいマーケティング 手法により新規顧客を獲得することを企図していたものの、計画値には届いておりません。

と売上高減少について述べている。
24時間販売の廃止での減少とも書かれているが、果たして24時間販売の売上高がどれほどあったのかは疑問である。
また、引用した部分については、新PB「メイト」の不発や他のPBの刷新が上手く行かなかったということを示している。

赤字については

今期計画は、商品回転率の向上と値引き率の抑制に取り組むことで売上総利益率を 50.0%(前 期比 5.3 ポイントの改善計画)としておりましたが、上述の通り売上が計画を下回り値下げ・値 引が徐々に増大していったことや、シーズン末の大幅値下げを伴う在庫処分が増加した事などに より、売上総利益率は 46.1%の見通しとなりました。

とのことで、要するに売れ行きが悪くて値引きセールをしたのでその分利益が削られたということである。
まあ、たしかにいくつかのお買い得品はあった。
先日、春に向けてPB「ブルースタンダード」のボートネックボーダー柄カットソーを買ったが、これは以前にも1490円に値下げされていたのが、ほぼ1年ぶりに店頭投入され990円に値下げされていた。持ち越し在庫である。
ただし、綿100%の生地は肉厚で、品質はそれなりに高く、定価は2990円である。
裾にスリットがないのがちょっと疑問な作りだが、それ以外に不満はない。
990円なら割安感がある。

リリースで述べている在庫処分セールとはこういう種類の商品を指している。
また先日、このブログで紹介したローゲージウールニットパーカも7990円が1990円にまで値下げされており、大変なお買い得品だった。

ジーンズメイトがライザップ傘下になって、変わった部分はあまり見えない。
唯一変わったのは、これまでよりも商品の店頭投入量が減ったところくらいしかない。

店頭と、店頭に並ぶ商品を見ていると、以前とはそんなに大きく変わっていない。
店作りも商品も変わらないなら、よほどの上手い販促・プロモーションがない限りは、業績が急回復することはない。
これはアパレルに限らずどの分野においても同じ理屈である。そしてジーンズメイトにはその「よほど上手い販促」は今に至るまで存在していなかったから、結果は火を見るよりも明らかだった。

にもかかわらず、メディア系著名人、経済系著名人などのいわゆるインフルエンサーはもろ手を挙げて「ライザップの手法」とやらを誉めそやした。
で、同じ人たちが今、800SKUという超細分化されたサイズピッチの既製服のZOZOを「完全オーダーメイド」だと誉めそやしているのである。この輩の評価はまったく当てにならない。

そもそもこれまでライザップは手あたり次第にアパレルを買いまくってきた。
そこに何か戦略があったとはとても思えず、瀧定大阪同様に場当たり的に買ったとしか見えない。
なぜなら、買ったアパレル各社に何ら共通項がない上に、買収後もまったく各社が連動する気配もない。
ジーンズメイトは1年にしかならないからまだしもそれ以外だと4~5年になる会社もあるのに、いまだに何も変わっていないし、それらが連動・連携する気配もいまだにない。

ライザップ傘下のアパレル各社を見てみよう。

・エンジェリーベ 2012年4月グループ入り
・馬里邑 2013年9月グループ入り
・アンティローザ 2014年5月グループ入り
・夢展望 2015年3月グループ入り
・三鈴 2016年4月グループ入り
・マルコ 2016年7月グループ入り
・ジーンズメイト2017年2月グループ入り
・堀田丸正2017年6月グループ入り

となっており、雑貨小売り系だと

・イデアインターナショナル 2013年9月グループ入り
・パスポート 2016年5月グループ入り

となっている。

2016年、2017年にグループ入りした各社はあまり変貌していなくても仕方がないと思うが、それ以外の会社はどうだろうか。あまり変貌していないことは問題ではないか。2015年にグループ入りしたネット通販の夢展望もそろそろ変貌が顕在化しないとちょっと今後の芽はないだろう。
また、それらの企業やブランドはまるでいまだに連携していない。
連携・連動できない傘下企業を増やしたところで意味はなく、ライザップは何のためにアパレルを買いあさっているのか理解に苦しむ。
優良企業を買うならまだしも優良でない物件が多く、本当にその目的はわからない。
単にメディア系・経済系インフルエンサーの期待値を上げるためだけとしか思えない。

ジーンズメイトに限らず、健康食品・スポーツジムのライザップがアパレルを買ったシナジー効果は全く現れないままに6年になろうとしている。
考えうるシナジー効果としては、健康食品・スポーツジムのライザップがプロデュース・ディレクションをしたというスタイルで、各ブランドから「単なる従来型衣料品」ではなく、「スタイルを美しく見せるパターン作りやカッティングに工夫を凝らしました」という触れ込みで新商品を投入することである。

ジーンズメイトでいうなら、ユニクロを辞めた人、しかも企画職でもなかった人を起用して、ユニクロと同じテイスト・同じターゲットで、ユニクロより価格の高いカジュアルウェアを作るなんて何の意味もなく、ユニクロに勝てるはずもない。
ユニクロに勝つ必要なんてないが、その商品では、ユニクロではなく、メイトを選んでもらう理由すらない。

それよりもライザップがプロデュースして、本当に美脚に見えるスキニーパンツだとか、細マッチョに見えるTシャツだとかそういう「価値作り」をすべきなのである。
ユニクロと同じ土俵でライザップが戦う必要性なんてまるでなく、むしろ自ら望んで負け戦に飛び込んでいるにすぎない。

しかし、ライザップがそこに向かわないということは、個人的にはライザップにはアパレル再生のノウハウが存在しないと見ている。

皮肉にもライザップとの提携でもっとも効果的な商品を開発したのは、傘下のアパレル・雑貨企業各社ではなく、ライセンス契約したに過ぎないグンゼである。
これなどはその最たる例である。

着るだけでバイタルデータを取得
グンゼ×RIZAPによる最先端衣料「筋電WEAR」が誕生

http://www.gunze.co.jp/corporate/news/2017/09/20170925002.html

これが本来、ライザップに期待されるアパレルブランドとのシナジー効果といえる。
ライセンス契約のグンゼ以外にその方向性を指し示せない限り、ライザップが傘下のアパレル企業を経営再建することは、ほぼ不可能に近いと当方は見ている。

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プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
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繊維・ファッション業界に必要なマーケティングの考え方とは?

USJを再生した森岡毅氏のダイヤモンドオンラインの連載が最終回を迎えた。

USJ再生の森岡毅が語る「マーケティングの知識、経験、予算がない企業がすべきこと」
http://diamond.jp/articles/-/158739

今回は具体的な施策ではなく、原則論を述べておられるが、原則論の方がどんな分野に対しても応用が効く。
中華には兵法書があまたあったが、最高の評価は孫子である。
「孫呉の兵法」と孫子と並んで評される呉子は現代ではそれほど評価されていない。
なぜなら、当時の具体的な施策についての言及が多く、現代には応用できないからだという研究者の意見を読んだことがある。
一方、原則論が多い孫子は現代にも応用できるという評価を受けている。

それでは見てみたい。

本質的にはもっと大事なことがあります。そのポイントをここでお伝えするのですが、大前提として、高いギャラを払ってマーケターを雇ったり、マーケティング部を作ったりすることができないなら、社長自身がマーケターになるしかありません。
 といって、高度なマーケティング技術や知識が必要なのではなく、まずは次の3つについて考えてみてください。

(1)貴社は自分が戦っている市場を理解していますか?
(2)貴社の消費者を理解していますか?
(3)貴社の強みを理解していますか?

まず、ここだが、どうだろうか。
このブログを読んでくださっているのは繊維・衣料品業界の人が多いと思うが、苦戦している企業やブランドはこれができているだろうか?

例えば、(1)については理解を間違えていることがよくあるのではないかと思う。
繊維・衣料品の市場については、よくあるのはこのどちらかではないか。

1、とにかく低価格商品が強い
2、二極化で高い物か安い物しか売れない

1の場合は、価格競争に自ら追随して疲弊する企業やブランドが多いし、2の場合は、価格競争を避ける目的からむやみな高価格化を図る。

当方が見てきた繊維・衣料品業界の企業・ブランドにはこの2つのケースが多かった。

多くの経営者は「今、売れるものは何か」を必死に考え、商品を考えることで頭をいっぱいにしてなんとか経営を成り立たせていますが、もっと大事なのは自社の商品を考える前提となる「市場の構造はどうなっているか?」あるいは「消費者は本質的に何を買っているのか?」を掴むことです。

とのことだが、「今、売れるものは何か」しか考えていない企業・ブランドは繊維・衣料品業界には本当に多い。
ユニクロ商品への追随しか考えていない大手総合スーパーの商品施策はこれしかない。
1900円のフリースが売れれば1900円のフリースを、ヒートテックが売れればホットナンチャラという名前の保温下着を、ウルトラライトダウンが売れれば軽量ダウンを、ジーユーが990円ジーンズを発表すれば980円ジーンズを、という具合に常に半年から1年遅れで追随してきた。
しかし、見た目と価格をまねることに精いっぱいで、肝心の商品クオリティはユニクロよりも低い場合が多く、いくら価格が同じでも「粗悪品」は売れないので、ことごとく失敗に終わっている。

そうはいっても、低価格というのは大きな武器だからそれは活用すべきだが、ユニクロと同じような見た目の商品を発売しても意味がなく、それとは異なる機能、デザイン、品質の商品を発売するべきである。
しかし、衣料品業界は長らく「トレンド」を体現することが「売れること」だったから、それと同じ感覚で「ユニクロ商品」に追随してきたのではないかと思う。

スキニージーンズがトレンドだから細身のジーンズを発売するということと、ユニクロのフリースが売れているからそれを真似ることは、似ているようで大きく違う。
お分かりだろうか?

ドリルを作ったり売ったりする前に、消費者が本当に欲しいのはドリルではなく「穴」であることを明確に理解しておかなくてはならない。howを考える前に、whoやwhatを突き詰めて考えて明確にするということ。

繊維・衣料品業界は「ドリル」に目を奪われてしまう企業やブランドがあまりにも多い。
穴を開けることが必要なら、ドリルでなくても千枚通しでもピンバイスでも構わない。だから千枚通しを発売しても構わないのに、みんなで一斉に「ドリル」を発売する。手段のためのドリルがいつの間にか目的に代わり、ドリルのデザインやら機能性を極限まで追求し、そして売れずに在庫の山を築く。これがここ20年間の繊維・衣料品業界の姿といえる。

その上で

戦略とは「選ぶこと」です。つまり、「何をやって、何をやらないのか」を決めるのです。

「変えてはいけないもの」「変えてもいいもの」の見極め方

マーケティングにおいて大事なのは「本当に消費者が買っているものは何か?」を突き詰めることです。私は「what」と表現をしますが、消費者が買っている本質的な「what」を考えることが重要なのです。

 もともとUSJは「映画のテーマパーク」という面にこだわって運営してきました。それがUSJであり、それを変えてはいけないと、誰もが思い込んでいたのです。
 しかし、お客様がテーマパークに求めている、本質的なwhatとは何か。そんな問いに真正面から向き合ったとき、違った景色が見えてきます。
 人がテーマパークに求めているのは、忙しく、ストレスフルな日常から離れ、エキサイティングな体験をすることです。つまり、ドキドキ、ワクワクを求めてやって来るのです。それは昔も今も変わりませんし、「変えてはいけない部分」です。
 しかし一方で、ドキドキ感やワクワク感を満たす方法論は必ずしも“映画”でなくても、アニメでも、ゲームでもいいわけです。そこに行き着いたとき、USJにとって「変えてはいけないもの」と「変えてもいいもの」が見えてきました。

とのことで、USJが本来はユニバーサルスタジオと何の関係もない少年ジャンプの漫画「ワンピース」とのコラボをした理由もここにあったと推察される。

とはいうものの、「変えるものと変えないものの見極め」というのは本当に難しく、一歩間違えると大失敗を招く可能性がある。
このフレーズを聞いたときに、真っ先に思い出されるのが、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋・前社長である。

2016年に断続的にインタビュー取材する機会に恵まれたが、その際に盛んに登場したのがこのフレーズだった。
凋落する百貨店を再生するために変えるものと変えないものの見極めが重要だということで、大西・前社長は「ファッションの伊勢丹」が変えないものの1つだという認識だったが、それは果たして正しかったのかという疑問は今でも個人的には感じている。
新宿本店はその通りだと思うが、他の地方店はどうだろうか。
地方はそういう「最先端ファッション」「高級ファッション」を強く求めているだろうか?

当方がファッションに疎く、高級ファッションなんて買えない貧民だから余計にそう思うのかもしれないが、そういうものを求める層は本当に少ないのではないかと思う。

低価格な粗悪品は論外として、そこそこの値段でそこそこに見えるファッションという需要がマス層の需要ではないかと思う。
じゃあ、「最先端ファッションの伊勢丹」というイメージの固定化は三越や他の地方店にとってはそれほど必要ではないのではないか。
逆にそのイメージが強くあったから、ブランドラインナップがショボかったJR大阪三越伊勢丹は失敗してしまったと個人的には見ている。

今回の森岡毅氏のマーケティング原則論は、他の繊維・衣料品企業も大いに参考になるのではないか。
「目的」ではなく「手段」にばかりこだわり、手段を目的化してしまっている企業やブランドがあまりにも多すぎる。それが繊維業界の苦戦の一因といえる。

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プライベートブランド「ゾゾ」のすごさは商品ではなく、そのプロモーション手法にある

プライベートブランド「ゾゾ」が発表され、各報道を見ると、矛盾した言説・受け答えが溢れており、読めば読むほど整合性がなくなる。
長らく交流している方から、ゾゾ商品のサイトが完成していると教えていただき、直接自分の目で確認することにした。

http://zozo.jp/pb/

基本的に、ゾゾという商品はフルオーダーではなく、パターンオーダーだということがわかる。
ゾゾスーツでの採寸によって、サイズを合わせるという「仕掛け」によって、「一からその人に合うサイズの服を作る」と思っている人が多いように感じる。
とくに、衣料品業界外のイシキタカイ系ジャーナリストや経済紙関係者にはその嫌いが多い。

採寸によって、一から型紙を起こすというのは、「フルオーダー」でこれは何十万円もする。
何せ、ゼロから形を作り上げるのである。

一方、近年、3万円前後で「オーダースーツ」が売られるようになっているが、これはフルオーダーではなく、パターンオーダーないしイージーオーダーと呼ばれる手法で、厳密にいうとパターンオーダーとイージーオーダーは別らしいが、ここではほぼ同じとして取り扱わせてもらう。

あらかじめ決まったパターン(型紙)があり、採寸したデータをもとにそれを微修正するのがパターンオーダーである。

A6サイズのスーツがあったとして、採寸したデータをもとに、袖を短くしたりウエストを広げたりと微修正する。
襟の形やボタンの種類を選べるようなオプションを付けることができるが、それもゼロから作り上げるわけではない。

これによって、製造期間は短縮できるし、製造コストも抑えることができる。
だから3万円前後でオーダースーツが作れるというわけだ。

受注して即日~2週間で納品できると謳っているゾゾは取りも直さずパターンオーダー商品だといえる。
また「即日納品」が可能だということは、あらかじめ標準商品を何枚か作りおいていて、その標準商品に適応した体格の人から受注があれば、それを即座に送り出すということになり、これなどはパターンオーダーですらなく、単なる既製服販売と同じということになる。
既製Tシャツ1200円というのは、果たして「破格値の安さ」といえるだろうか?

標準商品で満足できない人には、採寸データをもとにした「微修正」が加えられる。
裾丈の長さ、袖の長さ、袖幅などなどを微修正する。

これはジーンズでも同じである。

型紙の微修正なんていうのは、現在ではパソコンのCADCAMを使って行う。
袖丈や袖幅を変更した際に最適なように全体を自動的に微修正してくれる。

ジーンズで限りなく、ウエストのデカい人(150センチくらい)がいて、それ用にウエストを広げた場合、グレーディングと呼ばれる各部の比率変更が必要となる。これを今ではパソコンソフトでできる。
ウエスト150センチに広げた場合、それに比例して各部を広げると、ジーンズの裾幅なんてめちゃくちゃに広くなって袴みたいなジーンズになってしまう。
それではさすがにおかしいので、裾幅はあまり広げずにウエストだけを広げる。
これがグレーディングという作業で、標準とされるS~Lサイズだって同じグレーディングが行われている。

例えば、アダストリアのレイジブルーの商品で見てみよう。

http://www.dot-st.com/rageblue/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=780048

このズボンのサイズは

Sサイズ ウエスト74センチ・もも周り62センチ・裾幅31センチ

となっている。また、

Lサイズ ウエスト89センチ・もも周り64センチ・裾幅34センチ

となっている。

見比べてみてどうだろうか?
ウエストは15センチ拡大しているのに、もも周りは2センチしか違わない。
裾幅も3センチしか大きくなっていない。

これはウエストに比例して各部を広げていないという証明で、このサイズ比率の変更がグレーディングであり、これは既製服でも普通に用いられている。

ゾゾのオーダーとはパターンオーダーと採寸によるグレーディングを合わせた手法で、「完全オーダーメイド」ではなく、イシキタカイ系が夢想するような「フルオーダー」でもないということである。

商品そのものについてはどうだろうか。
Tシャツとジーンズの画像と説明文を見た限りでは、はっきり言って「普通」である。
恐ろしくかっこいいわけでもないし、恐ろしくダサいわけでもない。
あくまでも「普通」であり、それ以上でもそれ以下でもない。

素材も普通だが、ちょっと奇妙なこともある。

メンズのTシャツの使用素材は40番手双糸なのに対して、レディースのTシャツは20番手単糸なのである。(ウェブサイトにそう書いてある)

ちょっとでも生地や糸の知識がある人にはその可笑しさが伝わると思うのだが、そうではない人のために蛇足ながら説明をする。

この二つの生地は一見するとほぼ同じに見えるだろう。
生地の厚さも同じだ。

しかし、どちらが高品質な素材かというとメンズである。

20番、40番とは糸の太さを表す「番手」であり、数字が大きい方が糸は細くなる。
40番より20番の方が糸が太い。

ところが、糸というのは1本だけで生地を織ったり編んだりせずに、2本を撚り合わせて使うこともある。
1本の糸で織ったり編んだりすると「単糸使い」といい、2本撚り合わせた糸で生地を構築すると「双糸使い」となる。
当然、糸を2本使っているので、材料費は「双糸使い」の方が高くなる。

じゃあどうしてそんなめんどくさい「双糸使い」なんていう生地があるのかというと、単糸使いの生地は総じて、洗濯をすると斜行しやすくなるからだ。とくにTシャツやカットソーの単糸生地は斜行しやすい。これを防ぐために「双糸使い」という生地がある。

そういう意味でメンズTシャツ素材の方が圧倒的にレディースよりも高品質である。

またなぜ生地の厚さが同じかというと、細い40番手の糸も2本撚り合わせると、太さは倍になる。当たり前だ。
40番手2本で、20番手単糸と同じ太さの糸になるため、それぞれを使って編んだ生地は厚さは同じになる。

だから、見た目はメンズもレディースも同じ生地に見えるが、中身は別物だ。

通常、レディースの方の生地クオリティをメンズより落とすことは考えにくく、これは恐らく、同じ生地が手配できなかったための代替措置ではないかと思う。
それでも当方なら20番単糸生地をメンズに使うが、あえてそれをレディースに持ってきたスタートトゥデイは本当に生地に興味がないんだと思う。

プライベートブランド「ゾゾ」の商品自体は限りなく「普通」で、レディースのTシャツ生地のクオリティはあまり高くない。
ジーンズも普通だし、デニム生地も綿99%・ポリウレタン1%の12・75オンスデニム生地なので、ありふれている。

ゾゾの「物」自体は大したことがない。現段階では。

ゾゾのすごいところはその「仕掛け」「販促の手法」にある。
アパレル業界が見習うべきはこの部分である。

まず、採寸できるゾゾスーツの開発に投資するという「仕掛け」。

そして、そのスーツを無料配布するという手法。
それで期待感を煽り、商品の発表ということになるが、期待感で煽られている人が多数いるため(特に経済系インフルエンサーやメディアなど)、メディアに大量に記事掲載される。

従来からあるパターンオーダーと場合によっては既製服販売に過ぎないものが、最新鋭テクノロジーで作られた服かのように報道される。

商品自体はあくまでも「普通」だし、その供給システムも従来型パターンオーダーの域を何一つ出ていないのに、最新テクノロジー服という「イメージ」だけが醸成され続けていく。

この「イメージ戦略」は正直なところ、海外ラグジュアリーブランドにも匹敵するといえる。
単なる塩化ビニールの鞄をさも「良い物」というイメージを与えているルイ・ヴィトンと同じ手法といえる。

そういう意味では、この「仕掛け」「販促手法」「見せ方」は見事だというほかない。

そもそも、今の衣料品でだれもが驚くような画期的な商品なんてものは出現しない。
もしかしたら、未来においては1ミリ秒で蒸着できるようなコンバットスーツが開発されるかもしれないが、そういうものでない限りは、驚くほど画期的な服なんてものは出現しない。

そういうものが現れるとしたら、ハイテクノロジーを詰め込んだウェアラブルだったり、ハイテク機能を満載した機能素材で作られた服くらいしかない。

洋服という商品においては「物自体」での差別化や革新は生まれにくくなっており、「普通の物」と「従来型パターンオーダー」という手垢にまみれた供給システムを再編集して見せなおしたというスタートトゥデイの手腕はすさまじいものがある。
国内のアパレル業界に足りないのはこの部分であり、そこは大いに見習うべきである。

ただし、個人的にはこの商品を買おうとは思わない。
ユニクロで1990円に値下がりしたジーンズを無料で裾上げしてもらった方がコスパが高い。

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我が国のアパレル市場はさらに寡占化が進む

現代ビジネスにニトリの社長の2018年経済予測記事が掲載された。

ニトリ会長が2018年の日本経済を大予測!「今年はズバリ…」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54073

ニトリの似鳥社長の経済予測はよく的中するのだそうだ。

日米の株価は今より下がる、インバウンド需要は息切れする可能性がある、などちょっと悲観的な予測が並んでいる。
個人的にいえば、インバウンド需要なんていつまであるのかわからないという見方には賛同だ。
現に一度2015年末には落ち込んでいる。
中国や東南アジア諸国の海外旅行ブームだっていつまで続くかわからない。かつて日本だって海外旅行ブームがあった。
そんなあやふやな需要にすがっている百貨店は本当にこれから厳しくなると思う。

似鳥社長のこの記事の中でもっとも賛同したのがこの部分である。

一言で言えば、いまアメリカで起きているのは『寡占化』です。強い企業は業界の垣根を越えてよその業界も侵食しながら、さらなる巨大企業へと膨れていく。
勝ち残れるのはそのトップだけで、ほかは市場からの退場を余儀なくされる。業界が丸ごと消えてしまうところも出てくる



これはアメリカの流通がAmazonとウォルマートの2強に寡占化されていることを指してのことだが、これに近い状態には我が国でもそうなるだろうし、すでにその兆候は表れていると感じる。

我が国の衣料品業界でいうと、Amazonの脅威もあるが、ユニクロとジーユーを擁するファーストリテイリングの寡占化はさらに進むと感じる。逆に、しまむらは厳しいのではないかと思う。
しまむらの苦戦については、ようやく他の記事でも触れられるようになったが、ビジネスモデルの転換による過渡期という部分と、それによってユニクロと同じ土俵で戦うことになったことが挙げられる。

これまで、しまむらはPBを含みながらも多品種小ロットの売り切れごめん体制で好評を博してきた。
しかし、しまむらが増益に転じるきっかけとなった保温ズボンは100万枚の売れ行きがあった。

100万枚の保温ズボンを仕入れで賄えるはずがなく、これは自主企画商品であり、それを100万本という大量生産・大量販売を行ったということである。
それまでの「しまむらモデル」からの転換で、ユニクロと同じスタイルだということになる。
自社のモデルの転換はなかなか上手くはいかない。場合によっては定着せずに撤退する可能性も高い。
ライトオンが「仕入れ型」と「SPA型」を何年かずつ交互にやってみて、やっぱりだめだと言って行きつ戻りつしているのがその好例である。

そして100万枚の低価格保温ズボンはユニクロとまったく同じ土俵での勝負ということになり、このスタイルを継続することではユニクロに一日の長があり、しまむらはそれをどのように考えているのだろうか。

これはいち早く、OEMを手掛ける当方の友人が指摘していたことでようやくメディアにも同様の指摘が掲載されるようになった。

先日、久しぶりに天王寺界隈で店舗巡りをしてみた。
当方が利用する店は天王寺にほぼ集結していて便利なのである。

店舗巡りの感想はまた別途まとめてみるが、例えば、ジーンズメイトは鳴り物入りでデビューした新PB「メイト」の冬物商品が大幅値下げされている。
今回はあくまでも、趣味のメンズ商品を見ての感想として読んでもらいたい。

店頭の積み上がり具合からすると投入量が多すぎたのだと思う。
これは取りも直さず、MD(マーチャンダイジング)の失敗だから担当者は、マサ佐藤氏に教えを乞うてもらいたい。

メイトのメンズは、30代~40代向けのトラッドベースのアメカジと当方には見える。
この市場はユニクロのメンズとほぼバッティングするし、商品のテイストもほぼ同じである。
価格はユニクロの方が安い。商品の品質はユニクロの方が高い。
商品のデザインは好き嫌いベースで判断すると悪くはないが、ベーシックなので決め手に欠け、これもユニクロとバッティングする。

商品のことだけでいうなら、ユニクロの圧勝といえる。
なぜなら、テイストやベーシックさが同じで、価格が安くて品質が良いのなら、ほとんどの人がメイトよりもユニクロを選ぶ。
メイトを選ぶのは、よほど「ユニ被り」を気にする人くらいだろう。

どうしてユニクロがメイトよりも高品質低価格が実現できるのかというと、根本的には資本力の差である。
今や資本力の差は圧倒的だ。
だから、仕組みやシステムも作れる。

同じ土俵で勝負するならユニクロ以上の商品を作らないと勝ち目はない。
そしてそれは今のジーンズメイトの資本力では不可能である。
ジーンズメイトに限らず、並みのアパレル企業の資本力では不可能である。

そうなると、商品は今のままだとしても、勝負する切り口を変える必要がある。
というか、切り口を変えなくては生き残れない。

もっとウェブを強化するとか(販売だけじゃなく)、もっとイメージを高めるとか、もっと面白い販促企画を連発するとか、もっと単品に特化するとか、そういう切り口を変える必要がある。

すべてユニクロと同じ土俵でやったって勝ち目はない。

例えば、靴下のタビオの店はどうか。
最近、冬用のウール混靴下が半額になっているので何足か買った。
定価は900~1500円くらいだが日本製だ。これが半額になっている。

先日は1000円の半額品と900円の半額品を1足ずつ買った。合計は950円だ。

赤が1000円の半額、茶色が900円の半額

また後日、別の店舗で900円の半額品と600円の半額品を1足ずつ買った。合計は750円だ。

ブルーが900円の半額に、ネイビーが600円の半額に

先に買った方は何度か履いているが具合は良い。
それなりの満足感はある。

靴下はファッションアイテムとは言いながらも消耗品の側面も強い。

試し履きしてみて良ければ、定価で何足も買うのはつらいが、セールなら2,3足は買える。
当方はどのブランドにとってもセール客でしかあり得ないから、参考にはならないかもしれないが、ユニクロで3足1000円の靴下もあるが、それとは異なるウール混日本製靴下が、ユニクロよりは高いが手ごろな値段で手に入るなら買ってみたくなる。

メイトもこの路線を狙ったのだろうが、ちょっと伝わりにくい。
タビオの場合は、明確にユニクロにはない「色・柄」と「ウール混素材」がある。

そして靴下という1アイテムに絞り込んでいるからわかりやすい。まあ、売っている方は大変だろうけど。

トータルアイテムで、単に「日本製ガー」「高感度ガー」「カジュアル感覚の~」なんて言っていても消費者にはピンとこない。
それこそ、初期の鎌倉シャツがシャツに特化したくらいのことは必要ではないか。

そうしないと、ますます寡占化が進む大資本ユニクロには勝てるはずもなく、消費者からしても存在する意味合いが見いだせない。
ランチェスターの法則に照らしても、小資本の採るべき戦略は「一点突破主義」のはずだ。
何かの切り口で「尖った」部分がない小資本は大資本には勝てない。これは鉄則だ。

並みのアパレル企業からすると「当社の商品の高感度ガー」とか「当社のこだわり~」とかそういうのが「尖った」部分だと思っているのだろうけど、それはまったくの思い違いで幻覚に過ぎない。

靴下なんてユニクロや無印で3足990円で売っているのに、なぜタビオが小なりといえども複数の店舗を運営して生き残れているのか、苦戦するアパレルは研究する必要があるのではないか。
今のままなら、ユニクロとジーユーによるアパレルの寡占化はさらに進む。

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グローバルブランドが各国で等しく支持されるわけではない

ZARAやH&M、GAPなどのグローバルSPAブランドのことになると「その良さがわからない。世界基準なのにそれがわからない」というような反応を見ることがある。

はっきり言って当方にもわからない。(笑)
正確にいうなら、わからない商品が何割か常に含まれている。

当方は別にグローバル志向でもないし、グローバルでありたいとも思っていない。

実際のところ、グローバルに展開しているブランドだからグローバルにまんべんなく受け入れられているわけではない。
例えば、デマンドワークスの齋藤さんが以前に書かれていたことがあるが、ZARAはアメリカに進出して20年になるが、それほど店舗数は増えなかった。最近では増加に転じたという報道があったが、そうなるまでに20年以上を必要とした。

一方で、H&Mはアメリカでは好調に広がった。

同じグローバルブランドがアメリカに進出してもこれほどの差が出る。
もちろん、各ブランドのビジネスモデルの組み立て方の違いもあるだろうが、それほどに各国・各地域で人間の嗜好性には差があるということである。

日本人がZARAやH&M、GAPの商品でその良さがわからないと思うのは何の不思議でもない。

低価格ブランドではないが、スペインのデシグアルというブランドがある。
日本ではどう見ても売れてない。
デザインの色柄が激しすぎるからだ。チェック柄の上に刺繍とプリントをさらに施すような過剰な柄付けを行い、そしてその色彩は常に派手である。こんな盛り盛りの服を好む日本人はかなり少ない。

あべのHOOPの2階のグリーンレーベルリラクシングの跡地にオープンしたが、すぐさま閉店になった。
客が入っているのを見たことがないほど閑散としていたから当然だろう。
ちなみにそのスペースはいまだにテナント入店がなく、空き家になったままである。

デシグアルと多少のかかわりがあるという日本人から聞いたことがあるが、本国は日本での不振が信じられないと言っているらしい。
本社の言い分としては「スペインでこれほど好調なのになぜ日本で売れないのか」というものらしいのだが、色柄のセンスが日本人に合っていないからであり、それを早く認識した方が良いのではないかと思う。

世界各国で変わらず支持されるようなブランドなんて存在しない。
ユニクロはアジアでは強いが、欧米ではイマイチだし、オールドネイビーは米国では売れたが日本からは撤退した。
そんなもんである。

先日、こんな記事も掲載された。

欧州発ファストファッション、米国で伸びない訳
ネット通販しないプライマーク、一部店舗は縮小へ

http://jp.wsj.com/articles/SB11636997194453903320304583596910111609112?mod=searchresults&page=5&pos=17

ところが近年、米国の数都市を含む欧州外に展開していくなかで、実店舗のみで販売する戦略にひび割れが生じ始めてきた。米国進出から2年、同社は米国内の8店舗中の3店舗で規模縮小を図っている。販売実績が予想を下回ったからだ。

とのことで、ヨーロッパでは人気が高く、日本未上陸のプライマークだがアメリカ進出は苦戦している。
日本人は一括りに「欧米」というが、ヨーロッパ市場とアメリカ市場は異なる。ヨーロッパでも国ごとにその市場は異なる。
ヨーロッパで人気だからアメリカでも人気になるとは必ずしも限らず、古くはZARAがそれに当てはまったし、プライマークもその一つだといえる。

だから日本人が「グローバルブランドの良さがわからない」というのも至極当然だし、日本でグローバルブランドが売れないのも別段恥ずかしいことでも日本の後進性の現れでも何でもない。売れなくても全く不思議ではない。

さて、ここではプライマークの不振の理由として、オムニチャネルをやっていないことが挙げられている。
記事ではオムニチャネルをシームレスショッピングと表現している。

店舗とネットの垣根をなくし、消費者がストレスを感じることなく買い物ができる環境を提供する「シームレスショッピング」というビジネスモデルをプライマークが受け入れていないことで、「その戦略に大きな穴が開いている」とオーストラリアのマッコーリー・グループのアナリスト、アンドレアス・インダースト氏は指摘する。

とのことで、これに対して

だがプライマークではそうせざるを得ない、とABFのベーソンCFOは反論する。
「われわれのプライスポイントでは宅配のためのコストを賄いきれない」が、売上高成長が見込めれば低価格には十分な価値があると同CFOは主張する。「販売数量はわずかではなく大幅に伸びるからだ」

と反論しているが、これを読んだときに気付かされたのは、低価格すぎるとネット通販の宅配コストが賄えないということだった。
当方は生来、不明な性質なのでこれに今まで気が付かなかったのだが、そういわれればそうだ。

ネット通販での宅配が盛んな米国と、宅配の少ないヨーロッパではやはりそこに対する嗜好が異なるということだろう。

そして、これを読んだときに、しまむらが宅配ネット通販に参入しない(できない)理由の一つも同じなのではないかと思った。
ユニクロと並んで勝ち組低価格ブランドと称されるしまむらだが、ネット受注からの店舗受け取りは新たに発表したものの、宅配には依然として参入していない。

しまむらは2000店舗あることが強みのように言われるが、2000店舗もあってユニクロよりも売上高が低いということは、1店舗あたりの売上高は相当に低いということになる。
大雑把にいうと、しまむらグループは約2000店舗で5600億円の売上高があるから、1店舗あたりの平均売上高は年間で2・8億円ということになる。もちろん平均なのでもっと売ってる店もあればもっと売ってない店もある。
一方、ユニクロは約800店舗で8000億円なので1店舗あたり10億円ということになり、しまむらグループの1店舗あたりの売上高は低い。
おまけに従業員はほとんどがアルバイト、パートでローコストオペレーションに徹している。
だからプライマークと同じ理由で宅配は賄いきれないのではないか。

それに比べると同じようなプライスラインで宅配まで行っているジーユーはすさまじいということになる。
もちろん、ファーストリテイリングという超巨大企業の資金力があったればこそなのだが。

ネット通販に対する考え・仕組みもさまざまだし、国ごと・地方ごとにも人間の嗜好性は異なる。
グローバルブランドだからどの国でも等しく売れるなんていうのは単なる幻想・幻覚に過ぎない。

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数量ベースで国産衣料品の生産比率を大幅に上昇させることは不可能

以前も書いたことがあるが、巷間に流布する「国内衣料の生産比率は3%」というのは一面で正しいが、一面では正しくない。
なぜならその「3%」は数量ベースだからだ。

金額ベースだとまだ26%くらいある。

ファクトリエやらトウキョウベースに代表される「国産派?」はこの「3%」に乗っかって、それを販促の旗印にしている。
さらにはカネなしのエシカル活動家もそれに乗っかっており「3%」が蔓延している。

3%というのはいわゆる縫製工程に関する数量ベースであり、生地作りやら染色加工などは含まれていない。

「3%しかないから保護しましょう」くらいまではまだ主張としてわからないではないが、3%という数字が独り歩きするのはあまり意味がないと当方は考えている。

「3%という数字をもっと増やそう」というような主張を見ると、これは不可能だといえる。
本当に国産縫製品を増やしたいのであれば、「金額ベースの26%をもっと高めましょう」と主張するべきである。

なぜ3%をさらに増やすことが不可能なのか。
順を追って見てみよう。

現在、国内に流通する衣料品は40億点弱といわれている。
正確には38億点ほどである。

衣料品の流通点数は20年間で2倍に増えたといわれていて、3%というのはこれに対しての3%なのである。
商品点数が増えた理由は、ユニクロやジーユーなどに代表される低価格SPAブランドの成長、ZARAやH&MなどのグローバルSPAの進出などが挙げられる。

その代わりに国内の衣料品小売市場は9兆円台にまで縮小しているので、低価格ブランドが成長したため、単価が下がって枚数が増えたということがわかる。

この状況で国産衣料品の点数を大幅に増やすことは不可能である。

なぜなら、工賃問題は置いておいて、単純に生産キャパだけを見ても、国内の縫製工場は最新鋭のアセアン工場やインド工場、中国工場に比べて著しく小さい。
その小さい工場群でユニクロやジーユーなどビッグブランドの商品生産をどれだけ請け負えるのか。
ユニクロやジーユーなどが縫製工場を海外に移したのは何も工賃だけの問題ではない。(もちろん工賃問題は大きかったが)
生産キャパが格段に国内工場は小さく、それがいくら寄り集まったところで、ユニクロの年間何十万枚という生産は請け負えない。
逆にユニクロを請け負えたとすると、他のブランドの生産を請け負えなくなる。

そして、数量ベースでの比率を上げるということは、ユニクロ的な大ロットブランドの生産を国内工場が請け負う必要があるということである。

90年代や2000年ごろの状況でも請け負えなくなっていたのに、そこから時が流れて、倒産・廃業が相次いで縫製工場の数はさらに減っているのに、ユニクロやジーユーの生産を請け負えるキャパが国内に残っているはずがない。
お分かりだろうか?

数量ベースで数字を上昇させようとすると、国内の縫製工場数自体を増やして、ビッグブランドの生産を請け負えるようにする必要があるということである。
そして、今から新たに縫製工場を多数国内に建設しようというような企業がどこにあるのだろうか。
多額の費用がかかることは言うまでもない。

工賃問題を置いておいたとしてもこういう難問がある。

カネなしエシカル活動家にこれを解決するすべがあるとは全く思わない。
そんなに資金力があるんだったら、彼らはもっと裕福な暮らしをしているはずだ。

また工賃問題を置いておいても、多くのブランドが国内縫製工場を使わずに最新鋭の海外大型工場を使うにはそれなりの理由がある。
海外工場の方が便利なことが多いからだ。

その中の1つを例示する。

例えばシャツの縫製工場があったとして、シャツ本体を縫製する工程とボタンホールを開けて周りをかがる工程はまったく別である。
国内工場だと多くの場合、縫製工場は本体の縫製をするのみで、ボタンホールはボタンホール専用工場を使わねばならない。

多くの国内工場の場合は、この2つはまったく別の経営者(早い話が他人)なので、ブランド側としては両方を手配し、両方に指示を飛ばす必要がある。さらにいえば、縫製終了後ボタンホール工場に送付することまでブランド側がやらねばならない。

一方、中国などの大規模工場だと同じ敷地内に工場が併設されている。もちろん経営者も同じだ。
そして工場には商社やOEM屋的役割を果たしてくれる窓口担当者がいて、この担当者に指示をしておけば、ボタンホールまで工場側が一貫で請け負ってくれる。

さて、あなたがブランド運営者だとしてどちらの工場を使いたいだろうか?

くどいようだが工賃の問題を置いておいてもこれほどの機能性の違いがある。

国内の工場は縫製に限らず、小規模工場による分業体制で、アジアの最新鋭大規模工場は縫製に限らず一貫体制なので、使い勝手としてはアジアの最新鋭工場の方が便利ということになる。

生地だって織布と染色加工と整理加工とサイジングはすべて国内は分業しているが、アジア工場は一貫である場合が多い。

生産キャパの小ささという問題に加えて、分業体制をまとめるという問題がある。

国内生産比率を伸ばせというなら、それは実現不可能な数量ベースの3%を基準にするのではなく、金額ベースの26%を増やすことを考えた方がまだ現実的といえる。
金額ベースなら、やみくもに価格を引き上げることはナンセンスとしても、ある程度高めの価格帯の商品に注力し、それの売れ行きが増えれば自動的に増える。金額ベースが増えればそれは「儲かっている」ということに直結しやすいから、国内縫製工場は増えないまでも減少にはブレーキをかけることが可能ではないか。

3%という数字はセンセーショナルで販促のネタとしては使いやすいが、実際の解決方法を模索した場合、実現不可能な論点だと言わざるを得ない。そういう言葉遊びや宗教的なスローガンをぶち上げたところで、百害あって一利なしだろう。

金額ベースを高めることを模索する活動に切り替えるのが、本当に国内縫製工場を「保護」することになるのではないか。

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日本の消費者は取捨選択する。取捨選択できないのはメディア業界人とファッション業界人だ

衣料品ビジネスにおける考え方はある程度賛同することが多い株式会社せーのの石川涼氏だが、政治や経済における思想は左寄りだと感じられるのでまったく評価しない。

先日、「#FR2」ブランドについてのインタビュー記事もなるほどと思わされるところも多かったが、結末の

「日本人はほとんど自分で取捨選択ができていない。誰かが評価していたり、世界で評価されて初めて”自分も欲しい”という状況になっている。だから世界にウケれば、日本人も買う」。

https://www.fashionsnap.com/article/ishikawaryo-fr2/

という箇所には疑問しか感じなかった。
衣料品ブランドだけでいえば、世界で評価されていて鳴り物入りで上陸したものの、撤退する外資ブランドが数多くあり、業績が低迷している外資ブランドも数多くあるからだ。日本の消費者はそれなりに取捨選択しているといえる。

取捨選択できていないのは、日本のメディア業界人とファッション業界人であり、その選択のできなさは一般消費者よりはるかに劣る。

外国物なら何でもありがたがっているのはその2つの業界人だけのことに過ぎない。

先日、こんな本をたまたま見つけた。

産経新聞社から発行された「ファストファッション戦争」で、巻末の発行日を見ると平成21年12月24日になっている。
今は平成30年だが年始ということを考えると、丸8年前に発行された本で、2009年末までの当時の最新情報をもとに考察されているのだが、この考察は外れまくっている。

たった8年間でこうまで予言を外すのは、浜矩子か藤巻健史並みといえる。

このページにも書かれているように05年頃から続々とグローバルファストファッションブランドが日本に本格上陸してきた。

書かれている通りに引用する。

05年アメリカンアパレル
06年トップショップ
08年H&M
09年フォーエバー21とキットソン

そして、この本では「大本命」として09年12月に銀座店をオープンした「アバクロ」を挙げている。

09年12月のアバクロ銀座店のオープン時にはそれこそ「取捨選択できない」メディア業界人のアホみたいな提灯記事が多数の媒体に掲載されていた。
「大ヒット間違いなし」だとか「国内市場を席捲するだろう」とか美辞麗句のオンパレードで、もちろんこの本もその一つといえる。

しかし、結果はどうか?
アバクロは銀座店以外は福岡店以外に出店できず、国内市場ではまったく存在感がなく、あまりの不振ぶりに何度も日本撤退のうわさが流れている。
アメリカで流行っているから(当時)、日本でも絶対に流行ると太鼓判を押したのはメディア業界人とファッション業界人だけであり、消費者は一度か二度行ってみて、行かなくなったのである。
メディア業界人・ファッション業界人と一般消費者のどちらが「取捨選択」できているだろうか。一目瞭然ではないか。

おまけにアバクロは米国本国でも不振を極めている。

ちなみにこの本に挙げられているブランドがどうなったかというと、H&Mとフォーエバー21以外はすべて日本から撤退した。
アメリカンアパレルとキットソンは米国本国ですらブランドが消滅している。

そして、フォーエバー21も日本では店舗数を拡大できず存在感をなくしており、今後撤退することも十分にありえる。

ある程度堅調なのはここで挙がっている中ではH&Mだけである。
そのH&Mも小島健輔さんによると売上高の伸び率が鈍化しており陰りがみられるという。
この陰りはそれこそ「取捨選択できない」ファッション業界人がほめたたえるZARAも同じで、小島さんによると伸び率は鈍化しているという。

結局、「世界で売れている」と言っても、ローカライズができていない・ローカライズが下手くそなブランドは、日本の消費者によって「取捨選択」されてしまうのである。
ローカライズができない・下手くそなブランドの代表はアバクロだろう。

グローバルブランドのZARAとGAPはどうしてこのページに登場しないのかというと、この2ブランドが日本に上陸したのはもっと前だからだ。

GAPは90年代後半に上陸しており、上陸後20年が経過しており、それなりのファンを獲得した。
しかし、「アメリカで売れている」という触れ込みだったオールドネイビーは不振でわずか数年で撤退している。
GAP自体も日本ではあまり好調ではなく、買い上げ客数が半減しているという噂もあり、GAPの代名詞にもなっていた「投げ売り値引き」をやめると宣言しているが、これは失敗に終わるのではないかと見ている。

オールドネイビーなんて日本人が「取捨選択」した見本ではないか。

ZARAの上陸も2000年頃のことである。
東京のどこに1号店をオープンさせたのかはしらないが、関西だと今は亡き心斎橋ビブレに3フロアぶち抜きで入店していた。
マイカル破綻後で先行きが不透明だった心斎橋ビブレに入店してきたときにはそれなりに話題となったが、あまり売れ行きは芳しくなかった。なぜかというと、しょっちゅう投げ売りセールをやっていたからだ。
当時のZARAは今のような「コレクションブランドのコピー」ではなく、イタリアモード系のブランドで、とくにメンズはイタリアンモードっぽいシンプルなスーツやドレスシャツが並んでいて、それが毎シーズン、大量に売れ残っており、シャツは1枚1000円くらいに値下げされていた。
当然、安物好きな当方としてはその1000円シャツを何枚か買っていた。

黒無地・紫無地・ワインレッド無地などのカラーシャツであり、一歩間違えるとVシネマのチンピラになるような商品だった。

このころのZARAは独資ではなく、先ごろ三井物産による買収が発表されたビギとの合弁だった。
いつ、ビギとの合弁を解消したのかはちょっとわからない。ご存知の方が居られたらお教えいただきたい。

2005年以降に鳴り物入りで上陸してきたグローバルブランドを見ても、そのほとんどが日本から撤退しており、もちろんトップショップのように運営会社の不手際というケースもあるが、「世界で売れているから日本でも売れる」という構図にはならず、日本の消費者は確実に「取捨選択」しているといえる。「世界で売れたらなんでも日本で売れる」と言い放つ石川涼氏こそ「取捨選択できていない」のではないかとさえ思う。

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GAPは大幅値下げをやめる前に、高すぎる定価設定を見直すべき

国内外の市場にはさまざまなブランドがひしめきあっているが、迷走していると感じるのがGAPである。
廉価版のオールドネイビーがすでに日本から撤退したが、GAP本体もけっして好調とはいえなさそうで、一説には客数が半減しているともいわれる。

バナナリパブリックも日本では店舗数を減らすと発表があった。

米国本国でもGAPは苦戦しているといわれるが、廉価版のオールドネイビーは好調なのだそうだ。
日本では「衣料品のデフレがー」といわれるが、低価格品が好まれるのは日本だけでなく、米国でも同じで、GAPは不振だがオールドネイビーは好調、アバクロは不振だがホリスターは好調といわれ、米国でも低価格ブランドが好まれることがわかる。

人間だれだって似たような商品なら安い方で買いたい。
それだけのことで、日本人が格段に安物好きで欧米人が金払いが良いわけではない。

日本国内のGAPもそろそろ危険水位に達しつつあるようで、先日、GAPの代名詞ともいうべき「大幅値下げ」をやめるという新方針記事が掲載された。

大規模セール「回数を減らす」 ギャップジャパン社長
https://www.asahi.com/articles/ASL1D5SFWL1DULFA01V.html



米カジュアル衣料大手ギャップの日本法人ギャップジャパンは12日、主力ブランド「GAP」の価格戦略の見直しを進めていることを明らかにした。大幅に値下げするセールの回数を減らし、定価に近い価格での販売を増やす。スティーブン・セア社長がインタビューで答えた。

とのことであり、具体的には

16年11月にギャップジャパン社長に就任したセア氏は「低価格による販売促進に頼り、商品の魅力を伝えていなかった」として、夏冬の定期セールを除き値下げの回数削減を進めていることを明らかにした。その代わり会員向けサービスを充実。これまでの常時5%割引に加え、昨年4月から月初の1週間を1割引きにするなど、顧客のつなぎとめを図っている。

ということだが、この試みは恐らく失敗に終わるだろう。
99%成功しないと思う。

まず、オールドネイビーとGAPは日本国内では住み分けができていなかった。
バナリパはテイストが違うので存在理由がある。
しかし、オールドネイビーとGAPはブランドのテイストがアメカジで同じなのである。
バナリパはもっとトラッド寄り・ビジカジ寄りだ。

本来なら、オールドネイビーはテイストが同じGAPの廉価版として日本市場でも効力を発揮するはずだった。
あくまでも本来なら。

しかし、日本におけるGAPとは定価設定は高めだが実質的な販売価格はユニクロと同等かそれ未満の超安売りブランドなのである。
実際に当方も相当GAPの投げ売り品を買った。

580円に値下げされた裏毛スエットパーカとか300円~600円に値下げされたウールニットのマフラーだとか、1600円に値下げされたデニムシャツだとか2900円に値下げされたコーンデニムのジーンズだとか枚挙にいとまがない。

ここまで投げ売られているのに、それの廉価版ブランドなんて必要だろうか?

しかもテイストはほとんど同じである。
もちろん異なるデザインの商品もあるが、全体的な見え方としては同じテイストであり、下手をするとオールドネイビーの方がGAPの投げ売り品より高いのである。だからオールドネイビーは売れなかった。売れなくて当たり前であり、この状況で「売れる」と考えていた方がおかしい。

国内市場ではGAPの投げ売り品があればオールドネイビーは不要だった。

ちょうどユニクロの廉価版に過ぎなかったころのジーユーがまったく売れなかったのと同じだといえる。
ユニクロと似たような商品ならユニクロの投げ売り品を買えば良いのである。
ユニクロだってTシャツ500円とかセーター990円にまで値下げされる。しかも使用素材や縫製はジーユーより格段に上だ。
だったらチープな作りのジーユー商品を定価で買うよりも、高品質なユニクロの投げ売り品を買った方が良いに決まっている。

GAPが日本に上陸して20年くらいになるが、一貫してGAPは高めの定価設定を見せながら、ユニクロを時に下回るほどの投げ売りを行い続けてきた。
今更、大幅値下げをやめたところで20年間の蓄積されたイメージは容易に覆らない。
イメージを覆すには、同じく20年間とはいわないまでも相当長い時間が必要になる。果たして目先の利益追求が激しいアメリカ企業が根気よく、長期間にわたる取り組みを続けられるだろうか。
極めて疑問である。

それにこのジャパン社の社長の施策はGAPの根本的な問題を直視していない。
GAPの問題は大幅な投げ売りにもあるが、それ以上に日本市場において定価設定が高すぎるのである。
だから定価では売れない。

もちろん、ビジネスの基本はいかに高値で売るかということだから、売れる手法を持っているならいくらでも高値に設定すれば良いのである。
しかし、その手法を持っていない、少なくともこの20年間一度も効果的に発揮できていないのであれば、高すぎる定価設定を見直すべきだろう。

消費者にとっては高値で買う魅力がない商品なのだから、値引きをせずに売ろうとするなら、定価設定を下げるのがもっとも賢明である。

今までの売り方・売り場づくり・商品作りを継続したままで、大幅値下げをやめるとどうなるだろうか。
おそらく在庫過多になり、さらに収益性は悪化するだろう。

売り方・売り場づくり・商品作りを変えないままで、いくら価格政策をいじったところで意味はない。
そんなものは、値段を3割下げたら売れると思っているシップスジェットブルーと同じ愚策にすぎない。

さらにいえば、定価設定が高すぎるままで常時5%オフとか月初の1週間を1割引きにしたところで焼け石に水だ。
12000円の商品が、10800円になったからといってどれほど多くの人が「お買い得だ」なんて思うだろう。

今回の施策によってGAPはさらに在庫過多となり、混迷を極めることになるのではないか。

苦闘する米ファッションブランド、9社は「瀕死」の状況か
https://forbesjapan.com/articles/detail/19365

この記事でも触れられているように米国本国ではGAPは瀕死9ブランドのうちの1つに挙げられている。
それほどにGAPは日米ともに危険水域に達しつつあり、日本では今回の価格政策は失敗してしまい、ジャパン社の終わりの始まりになるのではないかと見ている。
GOOD LUCK!(キュウレンジャー風に)

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繊維・アパレル業界のマーケティングはまったく「価値創造」できていない

なんだかんだで繊維業界に20年以上もいると、それなりに多くの企業や経営陣を外野から見てきた。
2000年以降、頭角をあらわしてきた新興企業は別として、旧型アパレルの多くは苦戦を続けている。

とくに老舗と呼ばれるアパレルメーカー、ブランドの鈍重さには驚かされる。

ブランディングとかマーケティングという作業が必要なことはわかっているが、実際にはまったく取り組めていない。
広報宣伝活動といえば、80年代から変わらないファッション雑誌への広告出稿に終始している。
ウェブでの活動が重要なことはわかっているが、80年代・90年代の雑誌広告と同じだと考えており、やみくもに投稿を増やしたり、業者に丸投げすればフォロワーやエンゲージメントが増えると思っている。
はっきりいってこんな企業、ブランドばかりである。

もう読まれた方も多いと思うが、ダイヤモンドオンラインにUSJを再建した森岡毅氏のマーケティングについての記事があるのでご紹介したい。
マーケティングとは何かということがわかりやすく書かれてあるので、まだ読んでいない方には一読を勧める。

USJ再建の森岡毅が語る、マーケティング下手な企業に足りない3つの視点
http://diamond.jp/articles/-/156025

大阪のUSJは鳴り物入りでオープンしたが低迷していた。
それを浮上させ、ある意味で東京ディズニーランドよりも人気の高い施設へと変貌させた森岡毅氏のインタビューである。

まず

私はよく、マーケティングとは「価値を創造する仕事」と説明しています。市場における価値を創造すること「全般」がマーケティングの役割なのです。
我々マーケターは、価値を「ブランド」とも定義しますが、要するに、消費者の頭の中で知覚される「価値」、つまり「ブランド」を作る仕事はすべてマーケティングの領域です。

とのことで、アパレル各社が思っているような「リサーチ」ではないということである。
旧型アパレルでも大手になるとマーケティングナンチャラ室とかマーケティングナンタラ部みたいな部署があるが、やっていることは単なる市場・他店リサーチに過ぎない場合がほとんどである。

マーケティングが「価値を創造する仕事」とすると、「どうやって価値を創造していくのか」という疑問が当然生まれるでしょう。マーケターが「何を考え、どこを見ているのか」という部分です。
ここで重要になってくるのが次の3つの視点です。

(1) 市場構造を解き明かす
(2) 消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる
(3)(1)と(2)を実行できる組織をつくる

(1)の「市場構造を解き明かす」とは、簡単に言えば、移ろいやすい消費者のニーズがどのような状況、構造になっているのかを把握することです。一般に「消費者のニーズは変わりやすい」と言われますが、本質的な「人間の欲」はそれほど変わらないと私は思っています。
ただ、それを「満たす方法」が変わるのです。

とのことで、とくにこの3点を理解していない企業、ブランドは繊維・アパレル業界には数多くある。
市場構造を解き明かす気もなく、天候やら景気動向のせいにして終わってしまう。
各社の月次売上高速報そのものではないか。

また、「消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる」ことをまるで考えていない。
考えていないというと語弊がある。考えてはいるのだ。
しかしその考えた理由というのは「価格が安いから(値下げすれば売れるだろう)」とか「機能性・スペックが優れているから(7つの機能性だとか過剰なフィクションに彩られた匠の神話だとか)」というようなものばかりで、表層的なものにすぎない。
挙句の果てが「タレント頼み」である。

優れたコンテンツがあってそれを紹介するために人気タレントを起用するならわかるが、コンテンツがないくせに人気タレントを起用すればすぐさま爆発的に売れると考えているのだが、それが大きな間違いである。
キムタクに着させたらどんな商品でも売れるなんていうのは2005年までで終わっている。

そして

そして、ここからがさらに大事な話ですが、「(1)と(2)の戦略を正しく実行できる組織」を作っていかなければなりません。
どんなに精緻に市場構造を解き明かし、プレファレンスを高める戦略を構築しても、それを実行できなければ何の意味もありません。私はよく「戦略人事」という表現を使いますが、目的を達成するための人事改革、組織改革を成し得なければ、本当の価値は生まれません。

とあるが、人事というのは本当に重要である。

そこで重要となってくるのが、CMO(最高マーケティング責任者)の役割です。CMO(あるいは、それに準ずる役割の人)が、マーケティングの意味や幅をきちんと理解し、その責務をきっちりと果たす。その一方で、経営者も同様の認識を持ち、CMOに相応の権限を与える。

ここが大事なポイントです。
私がUSJで働いている際、非常に幸運だったのは、社長であったグレン・ガンペルが、これまで述べた三つの領域において「私がリードできる十分なスペース」を与えてくれたことです。それだけの権限と自由を与えてくれたからこそ、私は自分の責務を果たし、結果を出すことができたのです。

もちろんグレンとは、激しい議論を何度もしましたし、ここでは紹介できないような激しい表現での言い合いもしょっちゅうしました。また、彼がマーケティングを深く理解していたかと言えば、決してそんなことはありません。
彼は強烈な存在ではありましたが、一方で、優秀な多くの人間がそうであるように「自分が足りていないもの」をきちんと理解し、必要な人材を登用し、権限と自由を与えるだけの極めて高い知性を持ち合わせていました。だから、彼はいくら激しい議論をしても、最終的に「私がこうしたい」ということについては、さんざん激しい議論の末に、私の自由にやらせてくれました。

とのことで多少なりとも宮仕えをしたことがある身としては非常に重要だと感じる。
部下や担当者に任せることができない経営者は本当に数多い。むしろそちらの方が9割がたを占めるだろう。
そして多くの企業や組織は、経営者よりも劣る人材が集められており、いつぞや、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがおっしゃられたように「経営者より優れた部下は組織には居られなくなる」というのが常態となっている。

逆に言えば、自分より優れた部下を集めて使える経営者はそれだけ稀有な存在だといえる。

根本的な視点がないのに、小手先のウェブ告知やSNSの投稿やインフルエンサー起用なんて百万回やったってなんの成果も生まない。
このことをわかっていない企業とわかっている企業の格差がより開いてきており、わかっていない企業が繊維・アパレル業界では9割くらいあって苦戦を続けているというのが実態といえる。

この森岡氏の記事は連載のようなので今後が楽しみである。

*ここからは趣味の話なのでめんどくさい人はスルーしてほしい。

森岡氏は三国志のトップに例えておられるが、ここの部分の見方ははっきりいって疑問である。
孔明、関羽、張飛という優れた部下を集めた劉備は、その点だけは曹操に勝っていると言っておられるが、三国志演義に毒されすぎである。
魏・呉・蜀の三国でもっとも人材の層が薄く、国力が劣っていたのが蜀である。
劉備が建国した蜀は、孔明と関羽・張飛・趙雲・馬超・黄忠・魏延以外に優れた人材はほとんどおらず、彼らの死後、人材は払底してしまう。

また、建国前の劉備軍団にも優れた人材は少なく、社長(劉備)のずぼらな人的魅力と、凄腕部長(関羽、張飛、趙雲)の個人プレーに支えられた完全な体育会系零細企業で、さらにいえば文官はほとんどいない。
孔明登場前に劉備軍の参謀となったのが徐庶だが、孔明を推薦したのち、曹操陣営に移籍するが、移籍後はめだった活躍をしていない。少なくとも史書に記されるほどの活躍はできていない。
それはなぜかというと、曹操陣営には荀彧、司馬懿、程昱、賈挧、荀攸などの優れた参謀が数多くいたからである。
むしろ優れた人材を多数使いこなした曹操の方がトップとして力量が優れていたといえる。

劉備軍は孔明以外に龐統、馬良しかおらず、法正が加入してきたものの3人とも早逝したため、本来、行政官向きの孔明が政戦の要とならざるを得なかった。この激務が孔明の寿命を縮めたともいわれている。

また史書でいうと三国のうち、蜀の記録がもっとも少なく、文官をあまり重視していなかったともいわれている。

物語は歴史に親しむきっかけとなるが、あまりにもその物語がポピュラーすぎるとかえって史実を見誤らせることになる。これは何も三国志演義に限ったことではないのだけれど。

以上、蛇足である。

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ファッション業界にはびこる「過剰なフィクション」と「嘘の神話」

衣料品をわかりにくくしている原因の一つに、業界の内外にはびこる「過剰なフィクション」がある。

モノ余り状態の現在において、商品を売るには「ストーリー作り」「物語性」が必要であることは言うまでもないが、あまりにも過剰にフィクション性が取り入れられた場合、かえって消費者を惑わせてしまう。

衣料品に関してはこれは今に始まったことではなく、かなり昔から連綿と続いているのだが。

80歳縫製士が最後の挑戦、クラウドファンディングで”究極のシャツ”発売
https://www.fashionsnap.com/article/2018-01-12/teruko-original-shirt/

奈良の縫製工場がシャツでクラウドファンディングに挑戦しており、これはこれでがんばってもらいたいのだが、業界人から一斉に突っ込みが入ったのは、動画で「一生着られるシャツ」という発言の部分にだった。

もちろん、動画の編集工程でカットされた言葉があるのかもしれないが、この動画ではシャツというアイテムの性質自体をミスリードさせる。

断言すると、一生着られるシャツなんていうのは存在しない。
リペア(補修、修理)を加えれば着られるシャツはある。しかし、リペアなしで一生着続けられるシャツなんていうものはこの世には存在しない。今のところ。

まず、長年着続ければ袖口と襟が擦り切れる。
以前にお会いしたことのある積水ハウスのベテラン営業マン(推定40代)はシャツの袖口が擦り切れていた。
それが気になって仕方がなく、何を話したか覚えていないが、袖口が擦り切れたシャツだけは鮮明に覚えている。

またこのシャツのように白シャツは着用を繰り返せば、皮脂がこびりついて必ず黄ばむ。
また襟の内側には「汚れの首輪」が確実に刻み込まれる。
どんなにウタマロ石鹸で丹念にこすっていても、何十年かの間には確実に汚れの首輪は刻み込まれる。

これらを解決しないかぎりは一生着られるシャツなんていう商品にはなり得ない。

衣服の傷みは着用回数と洗濯の回数に反比例するから、年に1度くらいしか着用しないというならもしかしたら一生着られるかもしれないが、デイリーユースで月に何回か着用するのであれば、確実に20年は持たない。

おまけにいえば、「縫製士」なる職業も実在するのかどうかすら怪しい。
40年前とか50年前には存在していたのかもしれないが、少なくとも20年前からこの称号を持つ人には会ったことはないし、見聞きしたこともない。もし、「縫製士」に関してご存知の方が居られたらご教授いただきたい。

この過剰に盛られたストーリー性と「縫製士」なる実在未確認職業がなんとも気色悪い。

最近は「10年持つ服」だとか「100年持つ服」なんていうキャッチフレーズが横行しているが、はっきりいえば、ユニクロの商品は10年持つ。10年持つ服が欲しければユニクロで買えば解決する。

当方のタンスには10年前に買ったユニクロの服が何枚もある。
いずれ画像付きで紹介しよう。

先ほども書いたように、衣服の耐久性は、着用回数と洗濯回数に反比例するから、デイリーユースでも10年持つユニクロの服を極限まで着用回数と洗濯回数を減らせば30年くらいは優に持つだろう。
それだけのことで、そこに過剰なフィクションを差し込むことが気色悪くてならない。

衣料品だけでなく、原料や製造工程にもわけのわからない過剰なフィクションがあふれている。

例えば、

https://ameblo.jp/takukawai/entry-12344165904.html



彼らは「イタリアの素材と日本の素材の大きな違いはエージングにある。イタリアは生産した生地を数年寝かし風合いをだして出荷するが、日本は生産したら直ぐに出荷する。だから、ワインと一緒で滑らかさが違うのだ」という説明でした。

実は、これは大嘘で、日本に二次情報や推測で、このような「嘘」や「神話」がまかり通っています。

とのことで、この「生地のエージング」は素材メーカーや商社、生地問屋などで当方も何度か耳にした。
完全なる嘘っぱちである。

また、ユニクロと契約したことで一挙に注目を集めた完全無縫製のニット製造機、ホールガーメントも過剰なフィクションで彩られている。

一体成型でセーターが編めることが特徴のホールガーメントだが、これの最大の利点は

1、プログラミングが正しくでき、機械の操作を正しくできれば、驚くほどの少人数でセーターが量産できること
2、リンキングが不要であること
3、ホールガーメントでしか実現できないデザインがあること

この3点である。

にもかかわらず「一体成型でフィット感が良い」とか「着心地に優れる」などと言ったまやかしの言説が売り場にもメーカーにもあふれている。

以前、ジーンズメイトで1000円に値下がりしたホールガーメントセーターを購入して何年間か着続けた経験でいえば、そんなものは一切ないと断言できる。
着心地も普通のセーターと変わらないし、そもそもセーターは編み方にもよるが、3センチ~5センチは伸び縮みするので、そこまで厳密な採寸は必要ない。
さらにいえばどうして一体成型だからフィット感が高まるという理屈になるのかも理解できない。それなら丸編みのTシャツのボディはフィット感が良いのだろうか。

セーターは首とか袖や裾部分のリブとかそういうところを本体に取り付ける。
布帛だと普通に「縫製」するのだが、セーターの場合はリンキングという処理を行う。
パーツと本体を目立たないようにつなぐのである。
そしてリンキングにはリンキング専門の工場がある。

リンキング工場はリンキングしかできないため、セーター工場と異なりオリジナル商品は作りにくい。
そのため自立化もできず倒産廃業が相次いでいる。

ホールガーメントはそのリンキングが不要になる技術であり、だからこそ、ホールガーメントが注目を集めているともいえる。
着心地云々ではなく製造側のメリットがあってのことである。

じゃあ、なぜそれを説明しないのかと書いたところ、老年のパタンナーから「そんな後ろ向きのことが言えるか!」と反発を受けたが、だからといって、まったく別のしかも間違ったメリットをでっち上げて良いとはこれっぽっちも思わない。
一体、この人は何を言っているのだろうか。

だったら、人員の削減やら生産効率の上昇やらそこを強調すべきであり、ありもしない着心地やらフィット感をでっち上げることは消費者にとっても業界にとっても何のメリットもない。むしろ害悪だ。

そしてこういう間違った評判が定着し、それゆえに衣料品はわかりにくくなる。
今までからそれを繰り返してきた。
衣料品業界はこういう「過剰なフィクション」にいつまで頼るつもりだろうか。そして過去の「過剰なフィクション」が衣料品をわかりにくいものにし、それが衣料品不振の原因の一つになっているにもかかわらずだ。

ナントカは死ななきゃ治らないといわれるが、まさに衣料品業界は一度完全にクラッシュしてみないとわからないのだろう。

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