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卸売りブランドが陥りやすい魔のスパイラル

先日、「〇〇ブランド(仮名)って最近名前を聞かないね」という話題になったところ、相当に経営難に陥っているそうだ。

いわゆるカジュアルブランドなのだが、そういえばこの5年間くらい名前をほとんど聞かなくなった。
以前は、1店当たりへの納品枚数は少ないものの、多数の高感度専門店に卸売りしていた。

業界紙やファッション雑誌にもそれなりに掲載していたし、実は当方も18年ぐらい前には取材に伺ったこともある。

すごく画期的なことは何もなかったが、それでも上手くやれば個性派小規模ブランドとしての存立は可能だったとその時は思った。

では何が問題だったのだろうか。

商品企画やデザインもさることながら、営業の仕組みに問題があったようだ。
しかし、これはこのブランド特有の問題ではない。
卸売りブランドに共通する問題なので、いつ何時、あなた方の卸売りブランドも同じような機能不全に陥るかもしれないのである。

一般的に、ベンチャー的に立ち上げた卸売りブランドは、少人数で運営されている。
3~4人で経営者も営業マンとして各小売店と商談を行い、自社の商品が卸売りできるように交渉する。

拡販することが会社の成長に直接的につながるからだ。
その他の2~3人のメンバーも立場的には単なる従業員ではなく、役員だったり、経営者の同志だったりという状況だから、ほぼ経営者と同一の目線で拡販に努める。
そこには「ヤラされ感」とか「ノルマに追われる感」はあまりない。

良い意味で士気が高いという場合がほとんどだ。

そうこうしているうちに会社の業績が拡大してくる。
取引先も増え始めるとスタート時のメンバーだけでは人手が足りなくなる。

そこで営業担当者を求人募集する。

何人かが採用されて戦列に加わるが、これは第1次メンバーとは異なり、純粋なる従業員となる。
士気が高くないとは言わないが、立ち上げメンバーに比べると幾分かは従業員気質が強い。
これは仕方がない。
当方だって同じ立場なら、立ち上げメンバーほどにはその会社に入れ込まない。

世界の経済は資本主義だから、日本も同様で、会社は利益追求と拡大再生産が求められる。

営業担当者としては前年実績を上回ることが求められ、やがてはノルマに追われることになる。
ノルマ追求が全くなければ逆にだれてしまうが、かといって過度にノルマ追求をしすぎると、社員の士気は下がる。

やがてノルマに追われる営業マンたちは、「卸売りできれば何でもいい」という境地にたどり着く。

アパレル業界の取り引き形態としては、

1、完全買い取り
2、委託販売という名の消化仕入れ

の2つが大きく分けてある。

卸売り先を増やそうと思うなら、完全買い取りよりも委託販売や消化仕入れの方が手っ取り早い。

なぜなら、完全買い取りだとその商品を店側が買い取らねばならない。
売れ残ってもそれは店の自己責任だ。
だから店側としてはリスクが高い。

一方、委託販売や消化仕入れは、売れた分の料金だけをメーカー側に支払って、残った商品はメーカーに返品できる。
従って店側が負うリスクは低くなる。

だから、ノルマに追われる営業マンは委託や消化仕入れで卸売り先の軒数を増やす。

これによって見かけの取引高は大幅に増える。
しかし、ここに落とし穴がある。

現場の営業マンからすれば経営者や幹部ではないので、自分に与えられたノルマがクリアできれば良いと考える。
期初に店に大量納品すればノルマがクリアできる。
期末に大量返品があろうが、消化分の代金が少々回収できなかろうが、そんなことは知ったことではない。
ノルマをクリアできなければ経営者や幹部からドヤされる。

かくして、期末の大量返品や代金の未回収が増えた結果、卸売りメーカーは経営の危機に瀕するのである。

そして、この噂に上らなくなったカジュアルブランドも同様の経緯で経営難に喘いでいるといわれる。

これは何もこのブランドに限ったことではない。
卸売り主体のブランドならどこにでも起こり得ることである。

そして過去にもこれが原因で経営難に陥ったり、経営破綻したブランドは掃いて捨てるほどある。

いわゆる大手ジーンズメーカーもその中に入る。
大手ジーンズメーカーはライトオンだとかマックハウスだとかの大型チェーン店に大量納品していた。
定番品を除いて、シーズン商品はシーズンごとにメーカーが入れ替えていた。
夏なら麻混や吸水速乾パンツ、冬ならコーデュロイや保温パンツである。

当然、完売する商品もあれば売れ残る商品もある。

売れ残った商品はジーンズメーカーが引き取り、代わりに次シーズンの商品を納品する。

売れ残ったコーデュロイパンツを引き取って、代わりに麻混パンツを納品するという仕組みだ。
これがなぜ可能なのかというと、完全買い取りではなく、委託販売という契約だからだ。

このため、各ジーンズメーカーは期初に大量に売り上げが作れるものの、期末には大量の返品に苦しめられることになる。

2005年以降にジーンズメーカー各社が苦戦に転じたのはこの手法が限界に来ていたという理由もある。
返品された在庫が蓄積しすぎて減損処理を行うととてつもない損失を計上することとなり、経営と資金繰りを圧迫する。

各メーカーはアウトレットストアを林立させることで乗り切ろうとしたが、それにも限界があり、逆に最近ではジーンズメーカーのアウトレットストアは以前ほどには見かけなくなってしまっている。

これを回避するには、経営陣と幹部のきめ細かで緻密な管理が必要となる上に、アメとムチのバランスが重要となる。
アメだけだと従業員は舐めてしまうし、ムチばかりだと萎縮してしまう。
なかなかに難しい。

ジーンズメーカーや、先のカジュアルブランドに限らず、同じ窮地に陥っている卸売りブランドは珍しくない。
事業主もこうした危険性を理解しているとはいえ、この魔のスパイラルを克服できるブランドがほとんどないのも実情である。

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工場と直接やるなら毎月確実に発注する必要がある ~商社やOEM/ODM会社が必要とされる理由~

ブランドでもセレクトショップ、百貨店でも同じだが、縫製工場を直接使っての物作りは非常に難しい。
非常に難しいから商社やOEM/ODM会社が仲立ちしている。

近年は、商社やOEM/ODM会社悪玉論が盛んだが、一部のブランドやセレクトショップを除いては、縫製工場と直接やり取りすると失敗する場合がほとんどである。
だから、商社やOEM会社に頼らざるを得ない。

国内だろうが海外だろうが、縫製工場というのは、家族操業でない限りは、コンスタントに仕事がなければ運営が立ちいかなくなる。
父母と息子2人くらいの家族操業なら、どこぞの産地の工場のように

「今月は仕事がないから工場を休んで農作業でもしよう」

というふうにできる。

しかし、パートやアルバイトも含めた従業員がいるなら、そんなわけにはいかない。

パート、アルバイト、社員に

「今月は仕事がないからお休み」

なんていうわけにはいかない。

毎月、最低限の仕事を割り振る必要がある。

これは、ショップ店員の立場に置き換えて考えれば、工場のことがわからない人でも理解できるだろう。

店長やオーナーからいきなり

「今月は売上高が見込めないから店を休む。だから君も今月は全部休み。代わりに給料は払わない」

と言われたらどうだろうか?
従業員の立場なら、よほど貯金を持っている人以外は困ってしまうだろう。
工員とてそれは同じである。

だから、縫製工場は毎月最小限度の仕事がなくては立ちいかなくなってしまうのである。
縫製工場に限らず、生地工場、染色加工場、整理加工場すべて同じだ。

ところが、ブランドやセレクトショップ、百貨店は毎月工場に発注することは難しい。
例えていうなら、3月投入向けの商品は必要だが、6月投入用の商品は要らない、という感じである。
店頭投入商品が必要な月と不要な月がある。

当然、縫製工場へ発注する月と発注しない月が出てしまう。
工場はそれでは困る。

毎月、例えば100枚ずつでもオーダーしてもらう必要がある。

1月は1000枚の発注があったが、4月はゼロなんてことでは工場経営は成り立たない。
しかし、各ブランドや各セレクトショップ単体ではこういうバラつきは確実にある。

じゃあどうすれば良いのかということになるが、ここで商社やOEM/ODM会社の存在が浮かび上がってくる。

これらの企業は、よほどの大型ブランドでない限りは、単体のお抱えということはない。
これら企業も毎月業務を回さねばならないから、どこかのブランド単体とかセレクトショップ単体のみの生産を受注しているわけではない。
複数のブランドの生産を受注することで自社の業務を回している。

そして抱えるブランドが多ければ多いほど、ブランドごとに生産時期のバラつきがあるから、縫製工場に毎月最低水準の受注を回すことが可能になる。

1月はAブランドの生産
2月はBブランドの生産
3月、4月はAブランドとBブランド
5月はCブランドの少量生産

という具合にである。

そして工場側は、AブランドやBブランドに対してではなく、毎月仕事を落としてくれる商社やOEM/ODM会社に恩義を感じて多少の無理を聞くのである。(多少どころではない無理を押し付けられることもあるが)

このことを理解しないブランドやセレクトショップが「中抜き論」に踊らされて、直接縫製工場と取引しようとして失敗するのである。

欲しいときに欲しいだけの量を発注したい

ほぼSPA化したブランドや大手セレクトショップの本音はこれであるし、ワールドがかつて業界を風靡したクイックレスポンス(QR)対応もこれである。
しかし、そんな都合の良いことは世の中では通らない。

あんたらの都合だけで世界が回っているのではない。
世間でいくら著名なブランドだかファッソニスタだかインフルエンザインフルエンサーだか知らないが、都合の良いときだけ発注があるブランドよりも、少量でも毎月確実に仕事をくれる先を工場は大事にする。

それが名の知れないブランドや弱小ブランドでもだ。
それが工場の心意気ともいえる。

毎月、確実に仕事を出せないなら縫製工場と直接やることなんて考えずに、これまで通りに商社やOEM/ODM会社を通す方が工場サイドにとっても迷惑にならない。

何円かの手数料惜しさに軽薄な「中抜き論」を振りかざすべきではない。
ここが理解できずに生産に失敗するブランドやセレクトショップが多くある。

ここまで書くと、縫製工場側が単なる弱者、被害者だと思われるかもしれないが、縫製工場は純粋な弱者、被害者ではない。
もちろん、工場全部がそうだとは言わないが、商道徳にもとる工場もある。
それは国内工場も同じである。

毎月少量でも発注していたOEM会社を裏切って、目先の3000枚の飛び込みオーダーに飛びつく国内縫製工場だって珍しくない。
お得意様のOEM会社の発注を後回しにして納期遅れを起こさせてしまう。
OEM会社は当然、その次からその工場はあまり使わなくなる。
目先の3000枚のオーダーを納品してしまえば、翌々月からの仕事に工場が困ってしまうというわけだが、そんなものは自業自得でしかない。

この場合、目先の3000枚のオーダーの工賃が高ければまだ納得できる部分が無きにしも非ずだが、ブランドや大手セレクトショップが高い工賃なんて支払うはずもなく、「枚数が多いから(3000枚程度なのにwww)」という理由で通常よりも1枚当たりの工賃を安く叩いてくるのが常道である。

縫製工場にとっては、美味しいのは「数量」だけでしかない。

しかし、翌々月以降のこと、それまでの付き合いも考慮せず、それに飛びついてしまう縫製工場があるのも事実なのである。

単純な「中抜き論」提唱者も、ブランドやセレクトショップ側も、そして目先に飛びつく工場も、各段階がそれぞれ勘違いしているのがこの繊維・アパレル・ファッション業界といえる。
別に商社やOEM/ODM会社は「完全なる悪玉」などではない。必要性があったから生まれた機能である。
ここを正しく認識しないと、工場側はもとよりブランドやセレクトショップ側もいつまで経ってもまともな物作りなどできない。

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EC売上高においてZOZO比率の高い企業と低い企業 ~ZOZOに依存している企業と離脱可能な企業~

アパレル業界は猫も杓子もネット通販という感じになっており、その中でもアパレル製品に関してのみ影響力が強いとされるのがスタートトゥデイの運営するECモール「ZOZOTOWN」である。

水面下では有力ブランドがゾゾ離れを画策しているといわれるが、果たしてそういう有力ブランドのECにおけるゾゾ比率はどの程度なのか。
それをまとめてくれたお役立ちNOTEがある。

「業界の美肌プリンス」の異名を欲しいままにする深地雅也さんがまとめてくれているので紹介する。

大手アパレルのEC売上におけるZOZO比率をまとめてみた
https://note.mu/fukaji/n/n4888917d9f0c

ユナイテッドアローズ、パルグループ、ベイクルーズ、アダストリアホールディングス、オンワード樫山、トウキョウベースの6社のゾゾ比率をまとめている。

本文記事を読んでもらえればわかるが、決算書類に書かれてあることをもとにしてゾゾ比率を算出している。
算出というほどのことではなく、各社はゾゾ比率がどれくらいかを自社で発表している。

まず、ユナイテッドアローズ。

ユナイテッドアローズのZOZO売上構成比は全体の57%。232億円の57%ですから正確な売上は132億円。2017年と比較すると、EC全体が202億円でZOZO売上構成比が60%で121億円。まとめたものが下記になります。

   2017年3月期 2018年3月期
EC全体    202億円   232億円
ZOZO売上   121億円   132億円
自社EC売上  40億円    54億円
ZOZO比率    60%     57%

となっている。

また

ユナイテッドアローズのECはスタートトゥデイがフルフィルメントを担当していますから、自社ECが伸びてもスタートトゥデイに恩恵があります。

とのことで、ユナイテッドアローズはゾゾへの依存度が少し高すぎるといえる。

続いてパルグループである。

パルは先日、公開されてましたのですぐわかります。

EC全体   110億2100万円
ZOZO売上 71億8300万円
自社売上   19億8700万円
ZOZO比率    65%

となっており、自社運営のサイト「パルクローゼット」の売上高は微々たるものだということがわかる。
ここもゾゾ依存度が高すぎる。

3番目はベイクルーズ。

2017年末の記事ではその当時の数字が、

EC全体   275億円
ZOZO売上 107億円 ※ZOZO比率39%から逆算
自社売上   137億円
ZOZO比率    39%

とのことで、ここはゾゾ比率を下げることに成功している。

アダストリアもゾゾ比率は比較的低い。

EC全体    333億円
自社売上   172億円
ZOZO比率  48%以下

アダストリアは自社ECサイトのドットエスティがあり、こちらはなかなか健闘している。
ドットエスティは4000円以上で送料が無料となるため、何万円買おうが送料200円が必要なZOZOTOWNで買うよりもお得だから、アダストリアの商品をネットで買う際には必ずドットエスティで買っている。
ここもゾゾ比率は今後さらに下がると見ている。

オンワード樫山もゾゾ比率は低い。

EC全体    203億円
自社     152億円 ※自社比率75%から逆算
ZOZO比率   25%以下

オンワード樫山の主力ブランドは23区にしろ組曲にしろ、40代以上が主力客層となっており、30代前半がメイン顧客のZOZOTOWNとは最初から親和性が低い。
このため、今後もオンワード樫山のゾゾ比率は高まらないまま推移するだろう。
オンワード樫山にとってはゾゾはほとんど必要ではないと思う。

最後のトウキョウベースは反対にゾゾ依存度がもっとも高い。
個人的には高すぎて逆に危険ではないかとさえ思う。

EC全体    49億7000万円
ZOZO比率    86%
自社比率    14%以下

自社ECはほとんど売れていないに等しい。

スタートトゥデイとトウキョウベースは経営者のタイプがビッグマウス同士で似ていると感じる。
似ている者同士は同族嫌悪になるか、べったりになるかのどちらかなので、この場合は後者なのではないかと見ている。
いくら馬が合うといっても、ここまで他社に依存しているのは危険極まりないと思うのだが。

ざっと深地さんのNOTEを引用抜粋してきたが、今後、ゾゾ離脱が早期に可能な企業はこの6社のうち、ベイクルーズとオンワード樫山とアダストリアホールディングスだろう。そこにストライプデパートメントを立ち上げたストライプインターナショナルも加わる。
この4社はすぐにでもゾゾ離脱が可能なので、今後何かのきっかけがあればゾゾを離脱してもまったく不思議ではない。
とくにオンワード樫山はZOZOTOWNの必要性をまったく感じてないのではないかと見ているがどうだろうか?

逆にゾゾと心中しかねないのがトウキョウベースであり、自社比率14%というのは危険水域に達しているのではないか。
パルグループも同様であり、ちょっと自社サイトの力が弱すぎる。

離脱する腹積もりはあるが、なかなか踏ん切りがつかないのがユナイテッドアローズではないか。

トウキョウベースやパルほどは依存していないが、離脱するには依存度が高すぎる。
ユナイテッドアローズは今後どうするのだろうか?
自社ECサイトを強化するのか、このままゾゾ比率を50~40%くらいで維持するのか。
どちらの方向を選ぶのだろうか。
ちょっと注目して観察してみたいと思う。

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オンワード樫山の商品はAmazonでも買える。

高価格で扱い難い商品はマスには売れない

ユーザーを増やしたい、マスに売りたいと考えるなら、

1、価格の安さ
2、扱いの楽さ

が重要になる。

価格の安さは言わずもがなだが、扱いの楽さとは、操作の楽さやメンテナンスの楽さと考えている。

扱いにくくて高額な物はマスには売りづらい。
これは何の商品でも同じだろう。

日本はiPhoneユーザーが異様に多い国として知られているが、iPhoneだって単なるブランドステイタスだけで多くのユーザーを作ったのではなかろう。
当方も6年前からiPhoneを使い始めたが、その理由は「安かったから」である。

auショップに行って、他のスマホとiPhoneを比べると当時の料金体系ではiPhoneの方が月額1000円くらい安かった。
当方は別に贔屓にしているスマホメーカーがあるわけではないから、安くて性能が良ければそれでいい。
1000円安くて性能が良かったからiPhoneにしただけのことである。

先日、こんな記事が掲載された。

やってみたら、案外いけた…「着物生活」貫く男性に学ぶ“ささいな勇気”「3回会えば『そういうもの』に」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180504-00000002-withnews-soci

和服で勤務する外資系IT企業の男性技術者の話である。
この記事の核となる部分は

田中さんが主に着用するのは木綿素材の着物です。かつての庶民の日常着。自宅で洗濯できます。

予算は1着あたり「仕立て代込みで3万円台」。半襟には、手芸店で気に入った数百円の布を使うこともあります。最近では、1万円台で購入した木綿の反物を妻が仕立てることも多いそうです。

だと思っている。

1着3万円くらいという安さで、洗濯可能な木綿素材という点である。
安くて扱いが楽だからこの人は毎日着物を着て過ごせる。
これが高くて、扱いにくい着物なら毎日着ては過ごせない。

和装業界の年間市場規模は3000億円内外を行ったり来たりしており、和装業界からは「売上高回復のためにはデイリーユーザーを増やそう」という声が聞こえてくる。

たしかにデイリーユーザーを増やせば、和装全体の売上高も増える可能性が高い。
買い替え需要だって増えるだろう。

しかし、現在の和装業界がスタンダードとしているような着物では到底デイリーユーザーを増やすことはできないと当方はその声を冷ややかに眺めている。

理由は、1・価格が高い 2・扱いが難しい である。

某若手経営者の会で出席者が言ったように「10万円くらいの着物は安物」というのが「価格が高い」ことを何よりも物語っている。
10万円の服なんて一般人からすると結構な高額品である。

デサントの水沢ダウンと同等クラスの価格帯で、衣服としては高い。
和装業界の人は、「生産背景や生産数量が異なるから高いのは当然」という説明をするが、それはそうだが、買う方からするとそれはそれ、これはこれでしかない。

今まで洋服を着ていた人が和服を買うのだから、洋服の価格感に引っ張られるのは極めて当然である。
洋服を着ていた人に和服を買わせたいのなら、そういう比較をされる。これは避けようがない。

この田中さんだって3万円くらいの着物だから毎日着ようという気になるのであって、和装業界がスタンダードとするような何十万円の着物なんてもったいなくて特別な日以外は着ようとは思わないだろう。

また、和装業界がスタンダードとする「正絹」という素材の扱いづらさもユーザーを増やすことの障害になっているといえる。

毎日着用するなら洗濯が必須となる。
綿素材で洗濯できるから毎日着用できる。

今なら合繊素材の着物もある。

洗濯しづらく保管しづらい「正絹」という素材にこだわるからユーザーを拡大できない。
そんなめんどくさい素材の服を毎日着ようとする人なんてほとんどいない。

価格の安さと扱いの楽さがない服を、「伝統」だとか「文化」だとか「ファッション性」だとかのキーワードだけで普及させることなんて不可能である。

そしてこれは洋服も同じだといえる。

洋服業界の人たちは低価格品の出現を嘆いているが、低価格品だと試してみやすいからマスに広がる。
ユニクロが国内売上高8000億円を突破したことがそれを証明している。
安ければなんでも良いというわけではないが、安さがなければマスには広がりにくい。

決して安くはないオンワード樫山の「組曲」「23区」あたりのブランドの売上高は大きいと言っても200億円台しかない。
単一ブランドで売上高1000億円を越えるのは絶対無理だろう。

高い服があっても何も悪いことではないが、高い服はマスには売りづらいということを認識して、ニッチ&マニア層を狙うことに専念すべきだと思う。
その心構えがなく、いまだに80年代のDCブランドブームのころを懐かしんでいるから、洋服業界はいつまで経っても浮上できないでいる。

高いブランドの服が定価や30%オフ程度で飛ぶように売れたDCブランドブームなんて、日本が今後どれほど好景気になったとしても二度と起きない。

和装業界もデイリーユーザーを増やしたければ、高くて扱いづらい着物を入門者に売ろうとすることをやめればいい。
入門者を増やしたいなら入門者にふさわしい商品を増やすことを考えてみてはどうか。

入門者に高額で扱いづらい商品を提案するから売れないし、入門者は増えないのである。

今回の記事の肝は、田中さんの姿勢云々ではなく、低価格で扱いやすい商品さえあれば、デイリーユーザーは作れるということを示している部分だと思うのだが。

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知られていないだけで、和装にもけっこう機能性商品があるね。こんなのをもっと大々的に打ち出せばいいのに。

「フィット感」だけで洋服の価値は計れない ~現時点では精度が低く見える自己採寸システム~

洋服とかファッションの価値というのはわかりにくい。
いくつもの価値が重なっているからだ。

当方にもわからない。
その中から自分の好みの価値をいくつか抽出してそれを評価しているに過ぎない。

わかりにくいから大衆にアピールする際には一つか二つの事柄をフォーカスする方が効果的だと思う。
当方はまったく評価していないが、「郵政民営化」という一つの事柄だけで選挙に勝ってしまった小泉純一郎のように。

ZOZOTOWNは「サイズ感」「フィット感」という事柄にのみフォーカスして価値をアピールした。
それを評価している人も多くおり、当方もそのアピール手腕は高く評価する。

その象徴的なのが採寸スーツ「ゾゾスーツ」の発表である。
これによって自分のサイズが手軽に測定でき(実際は5分以上かかるようだが)、そのサイズを元に洋服が買えたり、自社企画ブランド「ゾゾ」はオーダーによってピッタリサイズの商品が送られてくる、というのが最大の売りとなった。

旧ゾゾスーツの破棄とともに新ゾゾスーツが発表されると同時に続々と到着の知らせがSNSにアップされるようになったということは、新ゾゾスーツの発表までスタートトゥデイは発送を意図的に遅らせていたのではないかとさえ感じる。

ところが、当方の目にする限りにおいては、新ゾゾスーツでの計測を元にして送られてきて「ゾゾ」商品のサイズが明らかに大きいことという事例が多発しているように見える。

例えば

ZOZOからTシャツとデニムが届きました・・・試着テスト
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12375339847.html

本当にウエストのユルユルは気になります。
究極のフィットといっても、まあ、店頭で試着する以上には決してならないなと。

ウエストブカブカ。。。ちょっとだけ残念でした

とある。
これだと一体何のための採寸なのかと思ってしまう。

もう一つはこちらだ。
書き手はゾゾに好意的にまとめているのだろうけど、画像を見る限り明らかにサイズよりも大きい。

【レビュー】ZOZOスーツで計測しデニムを注文してみた
https://www.buzzfeed.com/jp/hiroshiishii/zozosuit?utm_term=.woEZaEEex8&ref=mobile_share#.hdVXr11G6P

Tシャツのサイズは多少大きいものの、

え?多少大きいもののって意味がわからない。
多少大きいで許されるなら「ミリ単位の精度」なんてクソみたいなキャッチフレーズは取り下げろよって話だ。

 

 

このTシャツのどこに「究極のフィット感」とやらがあるのだろうか。

もちろん、システムがスタートした当初だから上手く行っていないということは考えられるし、そういうことは普通に発生する。
今後、ゾゾの精度も向上するのだろうと思う。
が、逆にいうと、自動採寸システムとそれに連動したサイズオーダーシステムというのはこの程度のレベルでしかないということだ。

いずれはさらに精度が向上するだろうが、現状では店頭で試着すること以上の精度は実現できていない。

ところで、洋服におけるフィット感ってそれほど重要だろうか。

当方は腕が短いので、袖丈の長さは気になる。
袖が長い服はあまり好きではない。だからZARAの服はほとんど買わない。

袖の長さはオーダーシステムがあれば良いと常々から思っている。
ユニクロのメンズだとMサイズがピッタリでLサイズだと袖が2~3センチ長い。
ジーユーも同じだ。

じゃあそれ以外の部分でいうと、例えば「身幅」。
これはピタっとしたタイトなシルエットでも、ダボっとしたビッグシルエットでもどちらもありだ。
それこそ着る人の気分や、他のアイテムとのバランスで決める。
ワイドパンツを穿いたなら、なるべくトップスはタイトシルエットの方がバランスが良い。
スキニーパンツなら、トップスはタイトでもビッグでもどちらも合う。
しかし、その上からジャケットなりブルゾンを着るなら、そのジャケットやブルゾンのシルエットに合わせないと着づらい。
タイトなジャケットやブルゾンを羽織るのにインナーのセーターやTシャツがビッグなら着づらい。

結局、洋服なんてそれ単品での良し悪しはもちろんあるが、組み合わせる他の洋服や着る人の顔立ち・骨格でどうとでも左右されてしまうというのが実態である。

例えば、手持ちのTシャツでいうと、

昨年夏、ユニクロが発売したビッグシルエットVネックTシャツと、無印良品の太番手天竺ボーダー柄Tシャツを比べてみよう。
ユニクロのはゆったりとしたシルエットで、無印良品のはタイトなシルエットであり、両方ともMサイズである。

 

これはどちらが正解でどちらが間違っているということはない。
両方ともコーディネイトに応じて使い分けるだけの話だ。

じゃあ、「究極のフィット感」なんて言い出した場合、このビッグシルエットVネックTシャツはどうなるのだろうか?

究極のフィット感なんて追求すれば行き着く先はキュウレンジャーでしかない。

 

ワイドパンツとかどうするの?ってことになる。

そして、ビッグシルエットでいうと、身幅が広くなっても着丈は長くなっていない。
ビッグTシャツとボーダーTシャツを重ねてみると、身幅が左右に2センチずつくらい大きくなっているだけなのがわかる。
着丈は両方ともほとんど同じだ。

 

要するに、ビッグシルエットTシャツは身幅を3~4センチ広くして、着丈はそれに比例させずに据え置きにしているということになる。

結局、洋服を企画するというのは各部位のバランスをどうするかということになる。
身幅に比例して着丈を長くすれば、オバハン向けのチュニックみたいなTシャツが出来上がる。

ゾゾとその信奉者はやたらと「フィット感」をブチ上げているが、実際に現時点ではその「フィット感」は実現されていないし、そもそも「フィット感」ってどこまでフィットさせるのかということになる。

キュウレンジャーみたいなシルエットを一律に作りたいのだろうか?

フィット感もたしかに重要だが、それだとワイドシルエットやビッグシルエットは要らないのかということになる。

洋服を企画する、デザインするということの作業の一つには、サイズを大きくする小さくすることよりも、それによって各部位のバランスをどう整えるのかということが重要になると当方は思っている。
ビッグシルエットTシャツを企画してオバハン向けチュニックみたいな着丈の長いTシャツを作るのか?ということである。

ユニクロはさすがにそのバランスは考えていると感じる。だから着丈は従来のTシャツのまま据え置いている。

「究極のフィット感」だとか「ミリ単位の精度」だとかは所詮はキャッチフレーズに過ぎず、洋服やファッションに求められている事象ではない。
各部位のバランスだとかコーディネイトだとか、その部分の方が重要になり、少々のサイズ違いならコーディネイトで誤魔化すことだってできるのである。

そのあたりを考えないと、せっかく開発したテクノロジーや構想がひどく薄っぺらなもので終わってしまうことになってしまう。

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終わってしまったけど、キュウレンジャーをどうぞ

タイムセールと割引きクーポンが乱発されてるのに「プロパー消化率」にこだわる意味あるの?

かつてアパレルやファッションショップは、勘と度胸とどんぶり勘定(KDD)で経営されていた。
バブルが崩壊し、洋服が売れにくくなったころから数値管理が本格化した。
これまでみたいな野放し状態では売上高はもちろんのこと、利益が確保できなくなったからだ。

これはアパレルだけに限らず、例えば出版社なんかもそうだ。

領収書による経費管理もずさんで、申請すればするだけ接待費がもらえたなんて話もバブル期は珍しくなかった。
97年に山一証券や北海道拓殖銀行など大手金融機関が倒産し、にわかに不況感が強まってから、アパレルも出版社も経費の締め付けと数値管理が如実になった。

その結果、さまざまな指標が作られるようになったが、今では逆にその指標にこだわるがために意味不明な分析がなされている。

その一つに「プロパー消化率」というものがある。
今でも専門学校生向けの計数管理の教科書にも掲載されている。

プロパー消化率というのは、平たくいうと値引き販売せずにどれだけの商品が消化できたかという指標である。
これが高ければ高いほど利益が増えるというわけだ。

そしてどうしても売れきれない商品だけをセールで捌く。

これが計数管理の教科書に載っている図式だ。

しかし、それができたのはせいぜい2000年前ごろまでだろう。
このころまでは不況だとは言いながら、夏と冬の年二回のバーゲンセールしかなかった。
店やブランドの「創業〇周年記念セール」とか「上場記念セール」とかそういうイレギュラーは別として。

測定もしやすい。夏と冬のバーゲン時期以外は、店頭で売れた物はみな定価販売されているからだ。
夏と冬のバーゲン時期にはバーゲン品と少しだけの定価品が混在するが、定価品をセール品と間違えてカウントしたところで誤差の範囲内だ。
1月と7月、それも下旬の1週間~2週間だけがバーゲンで、あとの10か月はプロパー販売なのだから、カウントも管理も楽で数値も算出しやすい。

しかし、今はどうだろうか。
夏と冬のバーゲンのほか、12月にはプレセールがあるし、某ストライプインターナショナルのように毎日何度もタイムセールを繰り返す売り方も横行している。
正規のバーゲンとは関係なく、毎月のように値下げ販売をしているブランドも珍しくないし、GAPやユニクロのように常に店内に「セール品コーナー」があるブランドも多い。

これでどうやって「プロパー消化率」を測定しているのだろうか。

おまけにネット通販だと割引や値下げはさらに乱発されている。
アダストリアホールディングスのドットエスティでは、しょっちゅうタイムセールが行われる。
実店舗ではタイムセールを行わないアダストリアだが、自社直営ECサイトではしょっちゅうタイムセールが開催される。
定価で買う奴はアホじゃないかと思う。

業界の期待が過剰じゃないかと思うZOZOTOWNだって値引きクーポンの乱発で、買い上げ客単価は20%くらい下がっていると出店者は嘆いている。

ジーユーではオンライン限定割引が存在し、店頭では値下がりしていなくてもネット通販では期間限定で値下がりする商品がある。

これでどうやって「プロパー消化率」を測定しているのだろうか?
そういう指標を出す必要があるのだろうか?

ネット通販というのは、はっきりというと値下げした者勝ちで、商品を簡単に手元の端末で比較できるため、実店舗よりも値下げしないと集客できにくくなる。
「店員さんや店長さんの接客のファンで」なんていう人が実店舗にはいるが、ネット通販にはいない。
書いてある文言や写真が何であれ、商品が同じなら誰だって安い方で買う。

当方がガンプラ(ガンダムのプラモデル)を買う場合は、Amazonと価格コムで値段を比べてから一番安いところで買う。
Amazonが安い場合もあればヨドバシカメラの方が安い場合もある。
ガンプラに関していえば、Amazonよりも安いことが多いのが駿河屋である。
だから年に何度か駿河屋のネット通販で買っている。

Amazonはプライム会員ではないので2000円以下は送料が必要になるが、駿河屋は1300円以上で送料無料になる。
1250円のガンプラを買う場合は50~100円の商品を探し出して抱き合わせにして送料無料にしている。

これがネットでの商品の買い方だ。服だって同じだろう。

本日の繊研新聞でこんなコラムが紹介されている。
結論はあまり正しいとは思わないが導入部分が参考になる。

https://senken.co.jp/posts/mete-0510

「無印良品」「ユニクロ」が堅調だ。主力商品を「買いやすい」価格に抑え、客数が増えている。注目すべきは正価販売を重視し、値引きを抑えている点。かといって正価で押し通し、売れ残りを増やすのではない。動きが悪ければ値下げして売り切る。その素早い判断の積み重ねが利益を産む。

謎の「プロパー消化率」を過剰に信仰している人はよく考える必要があるのではないか。

最近のユニクロは値引きが減っている印象がある。しかし、見切った商品は恐ろしい価格で投げ売っている。
例えば、当方が興味もないのに投げ売り度合いに惹かれて買ったのが昨秋のJWアンダーソンコラボ商品だ。
キルティングコート1枚、セーター4枚、シャツ2枚、Tシャツ3枚を買った。
デザインもまずまず気に入っていたこともあるが、何よりも値段が格安でバッタ屋並みの価格だったからだ。

オバハンの横顔がプリントされた半袖Tシャツなんて500円に値下げされていたし、派手なレゲエカラーみたいなボーダー柄のファインメリノセーターは990円に値下げされていた。
魚柄のラムウールセーターを当方は1990円と1290円に値下げされて買ってしまったが、最終的に500円にまで値下げされている。

この見切りは凄まじい。
これだけ値引きしていてもユニクロは直近の第二四半期決算で過去最高収益をあげている。

となると、「プロパー消化率」とやらにこだわる必要性はほとんどないのではないかと思う。

最近、老眼に突入したローガン・佐藤正臣氏もブログでこう書いている。

http://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/fashion-soroban/911c3b7e-647c-4e8f-a656-2e7aeb2b920a

プロパーの日本語訳は、普遍的な・元来の等の意味があります。
にも関わらず、ディベロッパー側の10%オフ(ルミネ10%的なもの)で売れているものは、プロパーでカウントする。タイムセールは商品の売変自体はしていないのでプロパーに含める?OFF率10%以内はプロパー売りとする??等。定義自体がしづらく、その定義そのものをコロコロと変えられるものです。

プロパーがもつ本来の言葉の意味で考えれば、売価変更していなくても「ポイントが多くつく」「カード割引」で商品を買える。と顧客が考えた自体で、(顧客の側から見れば)プロパーという言葉の本来持つ意味からかけ離れているのであり、プロパー消化とは言えません。この業界でいうプロパー消化率は、はっきり言ってしまえば「売価変更前消化率」であることが殆どです。

もちろん、値引きせずに売れる工夫は利益確保のためには必要だが、過剰にそれにこだわり不良在庫を抱えすぎて、期末にバッタ屋に二束三文で投げ売るよりも、ユニクロのように早めに見切って投げ売ってしまう方がはるかに利益率も高いし、損失も少なくて済む。

バーゲンセールとタイムセール、割引きクーポン、ポイント5倍デイが乱発されるご時世でプロパー消化率なんて過去の指標にこだわる意味はほとんどない。

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毎週服屋に行く人がどれほど存在するの?52週MDって意味ないよね

「常識とされていること」を疑えとよくいわれる。
好調業界なら「常識とされていること」を踏襲しても、業績は伸び続けるから、当面は問題がない。
しかし、不振業界や不振企業が、「常識とされていること」を守り続けている意味はほとんどない。
なぜなら「常識とされていること」を守り続けてきた結果が現在だからだ。

そういう場合は、自分の頭で考えて、「常識とされていること」を疑う必要があり、無意味だと思ったら捨て去るべきだと思う。

95年以降のワールドの躍進によって、それを支えた

1、SPA化
2、クイックレスポンス対応
3、52週MD

が業界では「勝ちパターン」だと認識された。

だから、アホな業界紙記者はどこの企業の取材に言っても
「御社のQR対応は?」「御社のSPA化について」と壊れたテープレコーダーのように質問し続けたのである。

1の「SPA化」については正解だと思うし、品ぞろえに独自性を持たせようとすると究極的にはSPA化するしかない。
これは当方が独断で言っているのではなく、カルチュアコンビニエンスクラブの増田宗昭社長がそう言っておられて、当方も深く賛同するところである。

中途半端にSPA化しようとしたのが、セレクトショップ各社が自慢気にアナウンスしている「〇〇ブランドの別注品」である。

自社企画製品ではネームバリューがない、かといって、人気ブランドの商品をそのまま仕入れたのでは同質化してしまう。
だったらその人気ブランドに当社独自の色柄物を作ってもらえば良いじゃん

別注品はこういう安易で安直な発想から生まれており、今となってはどのセレクトショップも別注品ばかりになっている。

発注する店側に世俗的な力があれば、取り得るもっともイージーな方法である。

問題は2と3だ。

クイックレスポンス対応(QR)と52週MDは今となってはそれほど有効な手段ではない。
なぜなら、これをやっている大手アパレルが軒並み苦戦しているだけでなく、これをやっていないユニクロが圧倒的な支持を受けているからである。

本当に効果があるならこれを20年近くやり続けてきた大手アパレル各社の業績はもっと伸びていなくてはおかしいということになる。
論理的に考えればそうなる。

在庫を過剰に抱えることはリスクだから、売れた分だけ欲しいときに追加生産するというのがクイックレスポンス対応なのだが、現在の工場システム、業界システム、輸送システムでは今以上の短縮化は不可能である。
最低でも2~3週間はかかる。今のところ、これ以上は縮めようがない。

だったらそれを見越して、当初計画を作るしかない。

「2~3週間後では消費者の嗜好が変わっていて対応できない」なんて言葉を聞くことがあるが、本当だろうか。
嗜好がそれほど短期間に変わっているなら、どうして売れ筋上位ランキングのほとんどを「ベーシック商品」が占めているのだろうか?
短期間で嗜好が変わるなら何年間も、何か月間も変わらないベーシック商品がそこまで支持されることはないのではないか。

次に最大の弊害だと思うのが52週MDへの過剰な信仰である。

要するに毎週新しい商品を投入するということで、正確にいうなら「マーチャンダイズ(MD)」ではなく「52週商品投入計画」なのではないかと思う。

本当の意味のMDは在庫管理から利益計算までを求められるから、毎週ではそこまで精度の高いことはできない。
この辺りは最近老眼になったローガン・佐藤正臣氏にでも専門的な講義を受けていただく方が良いだろう。

毎週の新商品をそこまで数値管理できないから、製造業者の工賃を「%表示」で管理するのである。
そして、「製造費がいつもより5%高いから値引きしろ」なんてことを言うのである。
その5%がたった50円にしかならなくてもだ。

「50円×100枚で5000円分を値引きしろ」なんて言い草はアパレル業界では普通にある。
5000円くらいを値引きしてもらってその会社の業績がどれほど変わるのだろうか。それこそ社長が月々の小遣いからでも5000円くらい払っておけよという話である。

ところで毎週毎週新商品投入が本当に必要なのだろうか。
もちろん店頭は新鮮になる。

しかし、毎週服屋に行く人がどれほどいるのか。ましてや毎週服を買っている人がどれほどいるのだろうか。

ほとんどいないだろう。だからこそ洋服不振に陥っているのではないか。
毎週服を買っている人がそれほど多数いるならアパレル各社はもっと儲かっている。

毎月服を買っている人だってどれほど存在するのか怪しいものだ。
せいぜい2か月か3か月に1度買うくらいではないのか。

100万歩譲って、みんなが毎月服を必ず1枚は買っていると仮定すると、毎週新商品を投入して「店頭を目新しくしました」とアピールしてもあまり意味はない。
だってそうだろう?多くの人は月に1度か2度しか店頭に出向かないのだから。
月に1度とすると、毎週の新商品投入だと3週間分は無駄になる。

月に2度だとしても残り2週分はまるっきり無駄だ。

さらにいうなら、業界で独り勝ちを続けているユニクロは毎週新商品を投入していない。
せいぜい多くても1か月に1度くらいである。
もしかしたら1・5か月に1度くらいではないかと思う。

新商品の毎週投入が必要不可欠ではないということがこれで証明できるのではないか。

新商品投入は月に1度か多くて2度で十分ではないか。

店頭を変えたければ、毎週マネキン人形が着ているコーディネイトを変えてもそれで充分ではないかと思う。

月に2度の新商品投入なら24回ということになり、52回から半減以下になる。
その分、企画や生産管理も業務が楽になるし、店頭の販売員・店長も品出し・検品作業が楽になる。

毎週毎週頼みもしない新商品が投入されるから店頭の販売員・店長は過重労働になるし、企画担当者や生産管理担当者も負担になる。

52週MDで飯を食っている人は今でも業界には掃いて捨てるほどいる(文字通りに掃いて捨てたいが)が、自分自身で毎週服屋に行って服を買っているのか、自分の家族はそういう行動をしているのかをもう一度考え直してみてはどうか。
当方だって毎週服屋には行っていない。めんどくさいし行く時間もない。

業界の人間やその家族ですらそうなのだから、業界がお客としている一般消費者はもっと服を買う頻度も服屋へ行く頻度も低いと考えるのが当然である。

結局、52週MDはお客を見ずに業界の都合を押し付けてきただけではないのか。

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52週MDに興味のある人はどうぞ。

「単なる手段」を「目的」だと履き違えたゾゾスーツ狂騒曲

連休の合間なので、昨日に続いてゾゾスーツについて。

ゾゾスーツ自体は計測するための道具であり手段に過ぎないが、ゾゾスーツへの支持・話題性の高さは、この「手段」が評価されたためといえる。「目的」を果たすにはゾゾスーツである必要性すらない。
とくに旧ゾゾスーツは、スーツ自体に近未来性があり、「手段」自体が高評価された。もしくは、多くの支持者が錯覚を起こした。

本来、計測したいのなら、別にあれである必要性はさらさらなく、家族に巻き尺で測ってもらったって数値が正確ならなんら問題はない。

量産化の目途もたっていないのに、旧ゾゾスーツの発注を開始したのは明らかにスタートトゥデイの勇み足でしかない。

当方はスタートトゥデイが嫌いだから、送料200円ですら支払うのが嫌で、旧ゾゾスーツも新ゾゾスーツも申し込んでいないし、これからも申し込まない。ついでにゾゾで服は買わない。同じ値段なら他のモールかそのブランドの直営ECで買う。

特に2000円を越える商品ならAmazonで買えば送料無料だし、アダストリアのドットエスティなら4000円以上で送料無料だし、ユニクロ・GUなら5000円以上で送料無料だ。ついでにいうと、店舗受け取りにするとユニクロ・GUは5000円未満でも送料無料になる。

何万円買おうが送料200円が必要なゾゾタウンでは絶対に買わない。もちろん何万円分も服を買うカネは当方は持ち合わせていないが。

それはさておき。

旧ゾゾスーツを勇み足で受注開始をし、何の断りもなく量産を撤回したからには、いくら無料(送料200円)とはいえ、注文者が不満を漏らすのは極めて当たり前といえる。

この反応に対して、Lineからスタートトゥデイに移籍した某役員がツイッターで、

「ゾゾスーツは計測する道具に過ぎず、メジャーや定規と同じ。定規やメジャーのデザインにそんなにこだわる必要があるのか?」



というような意味のことをツイートしていたが、部外者が言うならまだしも、スタートトゥデイの中の人間がこれを言ってしまうのはどうかと思う。
スタートトゥデイと旧ゾゾスーツが支持されたのは、「単なる道具」が「目的」だと優良誤認された結果だからだ。
その優良誤認の恩恵を最大限に被った会社の人間が何を言っているのかとあきれるほかない。

決して「計測した結果」が評価されたのではなく、「計測する手段」が過剰評価されたに過ぎないといえる。本来なら、自動巻き尺でもエキナカ計測システムでもなんでもよかったのである。

今回は消費者を巻き込んでの大優良誤認大会になってしまったが、アパレル界隈・繊維業界界隈ではこういう「手段」と「目的」の履き違えはよくある。
今だと差し詰め、猫も杓子もネット通販・EC比率向上だろうか。
20年前だとクイックレスポンス対応(QR対応)だったし、52週MDだったし、SPA化だったし、10年前ならライフスタイル提案型ショップだった。
そのいずれもが、本来は「物を売るための道具にすぎない」にもかかわらず、そこに対応することが業界全体の「目的」だと誤認された。

物さえ売れれば別にQR対応も52週MDもSPA化もライフスタイル提案型ショップもネット通販も必要ない。

 

そういう根本的な原則を各社・各ブランドは見誤って、そういうシステム構築を目的化した結果が今のアパレル不振である。

コンサルタントの河合拓さんが、今回のゾゾスーツ騒動について触れておられる。

https://comemo.io/entries/7255

騒いでいる人の騒いでいる理由が不明。となりで火事が起きるとかけだしわっせと騒ぐ騒ぎ屋さん達。実は、SNSなどで大騒ぎしている人は、ZOZOで買うのはスーツで無く服だということを忘れているのではと思います。服を見たこともない、着たこともないのに、未来的なボディースーツのデザインだけをみて、ユニクロもこれで打撃を受ける。ZOZOは世界制覇をする、など、テクノロジーに騒いでいるのです。
巷で言われる、目的と手段の逆転ですね。おそらく、売られているのが、デニムとTシャツだということさえ知らないのではないでしょうか。PBを売るためにこのスーツを開発したのに、騒いでいる人はスーツについて騒いでいる。全く理解できない話しです。

とのことで、これは本当にゾゾスーツに限らず、日本の消費者・アパレル業界が常にこれまでおかし続けてきた「手段の目的化」と同じであり、スタートトゥデイへの消費者の支持も優良誤認の賜物であると当方は見ている。

さらにいうなら、旧ゾゾスーツ発表時に掲げた「ミリ単位の精度」も優良誤認を意図的に招くキャッチフレーズだったといえる。

一口に衣料品といっても、ミリ単位の精度を必要とされる商品と、まったく必要とされない商品がある。

生地の話でいうと、編み物(ニット、ジャージ)やストレッチ素材が入った織物は何センチ単位で伸縮するので、ミリ単位の精度なんて全く不要だ。
例えば、セーターやTシャツは普通に3センチくらいは伸縮性がある。だからサイズが少し小さくても着られるし、引っ張って伸ばし続ければ、伸びた状態にもなる。
自社企画ブランド「ゾゾ」でTシャツを販売しておきながら、「ミリ単位の精度」なんて言ってる時点で意味がおかしい。

ストレッチ素材が入った織物(布帛)も同じで3センチくらいは伸び縮みするから「ミリ単位の精度」なんて不要である。

身幅よりも着丈の長短には気を使う部分もあるが、あえて短めに着る・あえて長めに着るという着方もあるため、センチ単位の精度は必要になってもミリ単位の精度なんてものはまったく必要ではない。

以前にこのブログでも書いたが、縫製段階ですでに1~5ミリ程度の誤差は常に生じているのである。

もちろん、ミリ単位は大げさに過ぎても、1センチ単位での精度を求められる服もある。
例えば、メンズのワイシャツ、ビジネススーツ、メンズ・レディースの靴などである。

メンズのワイシャツの首回り・袖丈は1センチの違いで着こなしが大きく変わる。
首回り39センチではピチピチだが、40・5センチならジャストサイズ、41センチだと不格好ということは普通にある。
袖丈も同じで、あまりに長すぎるとおかしいし、短すぎてもおかしい。手首のラインの上下1~2センチくらいが誤差の範囲内だ。それを越えると不格好になる。

靴はもっとも精度が求められる。
表示サイズで5ミリ小さければ、足を入れることさえできない。

ゾゾスーツであってもなくても、これらの商品をECで売るためには計測システムが必要になるが、Tシャツやセーター、トレーナー類ではまったく必要ではない。

最後になるが、河合さんが提言しておられるが、「サイズ」にこだわりすぎる今の風潮も服にとってはおかしな状況であるといえる。

しかし、世の中はサイズの話題ばかりがフィーチャーされている。また、カスタム・オーダーの話しをすると、必ず暗黙的に論点が(なぜか)サイズの話になっている。

スタートトゥデイは「サイズを計測してカッコイイ着こなし感のサイズの黄金比を算出する」とぶち上げているが、その「黄金比」とやらはだれが決めるのか?

例えば、オーダースーツ屋は各部位のサイズを計測するが、その各部位のサイズを単純につなぎ合わせるというようなことはしない。
それを直線で結ぶのか、それとも曲線で結ぶのかを職人が決める。
大手アパレルならデザイナーやパタンナーが決める。
そこには数学的な数値だけではなく、それこそ美的センスも必要になる。(この言葉は嫌いだが)

かつてのエディ・スリマンのディオールオムはピチピチがカッコいいとされ、現在のヴェトモンはダボダボがカッコいいとされている。そのシルエットを提案したのはデザイナーのセンスであり、デザイナーの独断と偏見による決定である。
そして世間はそのどちらもを「カッコイイ」と見ており、画一的な基準は存在しない。

じゃあ、スタートトゥデイは誰が、「そのシルエットがカッコいい」と決めるのだろうか?

前澤友作社長がそこまでのセンスを発揮して独断と偏見でシルエットの基準を決めるのだろうか?個人的には彼が決めたのなら、その基準はちょっと受け入れがたい。一体、どれくらいの人が彼が決めた基準を甘受するのだろうか。当方はそれほど多くないと見ているがどうだろうか。

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スタートトゥデイの「中期経営計画」と「新ゾゾスーツ」に対する疑問

4月28日からゴールデンウィークの連休が始まった。
連休に入る直前の27日夕方、株式市場が終わった直後くらいに、スタートトゥデイから「ゾゾスーツの失敗と新ゾゾスーツ」「中期経営計画」の2つが発表されたが、個人的にはどちらも疑問しか感じない内容だった。

まず、ゾゾスーツの失敗と新ゾゾスーツだが、生産に至ることができずに新方式でのゾゾスーツを発表した。

スタートトゥデイ、“ZOZOSUIT”生産失敗で約40億円の損失を計上
https://www.wwdjapan.com/607378

体型を採寸できるスーツとして注目を浴びたゾゾスーツだったが結局は量産化できずに終わった。
旧ゾゾスーツは、着用してスマホと連動させることで一瞬で体型が採寸できるという触れ込みで、ここに未来性を感じた人が多く、その人々から高く評価された。
昨年10月末に発表されたものの、年が明けてもほんの一部の人間にしか配布されておらず、いわば掛け声だけの「幻」の状態が4月まで続いていた。

どうなっているのかという声も多数上がっていたが、2月にはスタートトゥデイは別のアイデアを3億円で買ったという報道があった。

「ゾゾスーツ」超えるアイデア 3億円で買い取り
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26992020W8A210C1000000/

この時点で複数の業界人からは「これは先に発表されて動きがないゾゾスーツを諦めて、こちらに乗り換えるつもりだろう」という指摘が出ていたが、まさしくその通りの展開になった。

旧ゾゾスーツを申し込んだ人はもれなく、新ゾゾスーツに替えて送付されるとのことだが、この対応は個人的には疑問だ。
まず、旧ゾゾスーツの量産失敗、もしくは量産断念を先にアナウンスすべきではないのか。
それを4月末まで隠しておいて、いきなり「新ゾゾスーツに替えて送付します」というのはちょっといただけない。

今回は、販促戦略もあって無料送付だったから、各人に金銭的被害は発生していないが、通常買い物をした場合なら、その商品がなければ先にそれを説明する。そのうえで、代替品を用意すると説明する。
いきなり、代替品のアナウンスと同時に量産断念をアナウンスするのはどうかと思う。

生産コストは1着1000円で、費用は広告宣伝費に計上するという。発表会ではデモンストレーションを実施したが、音声にしたがって全身の撮影をするため、旧型に比べると計測にかなりの時間がかかるようだ。

着ただけで採寸できるのではなく、着てそれを音声に従ってカメラで撮影して採寸するという新ゾゾスーツがすごく性能が良いという擁護記事がさっそく書かれているようだが、フェイスブックの書き込みでは「使いにくい」「採寸が正しいのかどうかわからない」という書き込みもあり、一概に擁護派のいうようなメリットばかりではないと考えられる。

また、中期経営計画だが、ちょっと実現は困難なのではないかと思う。
株価対策のために盛ったのだろうか。

ゾゾ初の中期計画、2年後に商品取扱高5000億円突破、PBは3年で2000億円へ
https://www.wwdjapan.com/605521

19年3月期決算では商品取扱高が前期比33.1%増の3600億円、売上高が同49.3%増の1470億円、営業利益が同22.4%増の400億円、純利益が同38.9%増の280億円を見込む。PB事業の売り上げ目標は200億円。2年後の20年3月期には商品取扱高5080億円、21年3月期には7150億円、営業利益900億円を目指す。

今期のPB売上高は135億〜225億円を見込む。6月にはカジュアルシャツやデニムなど3型を追加する予定で、今後フルオーダーのビジネススーツ、ドレスシャツ、ワンピースを計画する。7月以降は世界72カ国でも販売を開始し、2年目にはグローバルで売上高800億円、3年目には2000億円を目指す。

とあり、取扱高5000億円の目標はともかくとして、自社企画ブランド「ゾゾ」の初年度売上高200億円、3年目2000億円という数字と、新ゾゾスーツの今期は600万〜1000万個の発送予定はちょっと盛りすぎた数字で実現性に乏しいと感じる。

これを端的に深地雅也さんがまとめている。

https://note.mu/fukaji/n/n9ff1ca89028d

 

 

(ゾゾの)昨年度のアクティブ会員が5,112,861人。ゲスト会員が2,110,366人。トータルで年間購入者数が7,223,227人。アクティブ会員の定義は年間1回以上購入なので僕はアクティブ会員に属していますから、少なくとも既に主要な会員500万人にリーチしている情報で100万件の発注数。SUIT発表のタイミングで新規登録した人もいるかとは思っていましたが、昨年度からトータルで17450人しか購入者数が増えていませんし、むしろゲスト購入者数は減少しています。ZOZOSUIT購入者はカウントしていないのかもしれませんが特に記載はありません。

とのことで、ゾゾスーツ購入者はカウントしていないのかもしれないが、アクティブ会員とゲスト購入者を合わせたトータル利用者数は1年間で1万7450人しか増えていない。
個人的な考えでいえば、ゾゾの会員数はほぼ極大値に近づいていると思う。ファッションやファッションテックに興味のある人はとっくに会員になるかゲスト購入者になっているだろう。当方のようにゾゾが嫌いな人はいくらもてはやされてもこれからも利用しないだろう。
ましてやファッションやファッションテックに興味のある人はマスの中では少数派である。逆に興味のないマス層が今後、服しか売っていないゾゾで積極的に買い物をするとは考えられない。
服に興味のないマス層は、服以外の商材が豊富なAmazonやYahoo!ショッピング、楽天あたりで買い物をする。
みんながみんな服に興味があると思ったら大間違いだ。当方だってこの仕事をしていなかったら服なんか買わずにもっとガンプラを買っている。

だからゾゾの会員数とゲスト購入者はここから大きくは伸びにくいと考えられる。

そんな状況で新ゾゾスーツ600万枚配布はちょっと難しいといわねばならない。

仮に今の発注数である100万件が6月中に届いたとして、残りの500万件はどのタイミングでお届けするのでしょうか。

という疑問がすべてを物語っている。

また自社企画ブランド「ゾゾ」の売上高も同様にかなり難しい数字を出していると見ている。

ユニクロのTシャツ・ジーンズ売上の何%売れば、どのくらいの売上になるかの指標が書かれています。ユニクロのヒートテックですら初年度150万枚。1枚1200円のZOZOのTシャツが仮に150万枚売れても18億円です。ユニクロのジーンズは毎年1000万枚以上販売しているようですが、仮にその10%販売出来ても100万枚×3800円なので38億円です。


とある。ゾゾはこれからジーンズとTシャツ以外にも商品の種類を増やすと発表しているが、それを入れても初年度200億円というのは難しい。5月1日現在、まだ売り物は1200円のTシャツと3800円のジーンズしかない。ゾゾがいうようにフルオーダーのスーツ、ドレスシャツ、ワンピースなどの新商品を投入したって、あと10か月でどれほどの売上高が見込めるのだろうか。
そしてあと10か月となった5月1日現在もまだ新商品の具体的な発表はなされていないし、もちろん投入もされていない。

一般的に考えて、1200円のTシャツが150万枚も売れることはないし、3800円のジーンズが100万本売れることはない。

また、この自社企画ブランドが3年後2000億円というのも眉唾物だ。個人的には「言うだけはタダ」ではないかと見ている。

年間売上高2000億円というと現在のジーユーと同等ということになる。
またアダストリアホールディングス全体の売上高と同等ということになる。

マス層にそこまで知られていないゾゾタウン、さらに自社企画ブランド「ゾゾ」がマス層にも知られているジーユー、アダストリアに匹敵する売上高をたった3年で作るのは至難の業である。
ファーストリテイリングという強力な後ろ盾があったジーユーだって方向転換してから年商2000億円に達するまで7年間もかかっている。

「ゾゾは世界に向けて売るから達成できる」という人もいるだろうが、世界こそそんなに簡単ではないのではないか。
中国にはすでにアリババやタオバオなどの巨大ECがあるし、高級ゾーンでは欧米のネッタポルテがある。
ここにウィゴーやらジーンズメイトやらタカキューなんかの低価格ブランドが増加したゾゾが新規参入してそこまで世界から支持を受けるとは当方は到底考えられない。

一気に生産枚数や配送数を増やしたり、一気に流入者を増やしたりできるような「魔法」はこの世には存在しない。
そしてゾゾはそんな「魔法」を持ち合わせてはいないと当方は見ている。
「魔法」に期待している人はさぞかし天真爛漫・純粋無垢なのだろうと思う。

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「大手セレクトショップ」という日本独特の奇態~アメリカンラグシーの撤退から~

先日、サザビーリーグが展開するセレクトショップ、アメリカンラグシーの日本撤退が発表された。店舗数がこのところ極端に減っていたからさもありなんとしか思わなかった。
サザビーリーグは以前にもセレクトショップ、アンドエーを閉鎖していて「セレクトショップ」を長続きさせることは難しいということが改めて認識されたのではないかと思う。

アメリカンラグシーは2008年の売上高をピークに相次いで店舗を閉鎖しており、現在では全国に5店舗を展開するのみとなっていた。アンドエーの末路とほぼ同じような状態だった。

先日、Yahoo!ジャパンにこんな記事が掲載された。

サザビーリーグが「アメリカンラグ シー」事業から撤退、セレクト業態が抱える構造的課題が浮き彫りに
https://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20180415-00084027/

これは当方の旧知の松下記者が書いたものだが、記事中にこんな一文がある。

現在、セレクトショップといわれる多くのブランド・ストアでも、オリジナル比率は50%近くまで高まっているところが多い。セレクトショップでもある程度の規模を確保し、価格競争力のある商品を企画・生産できるだけの調達プラットフォームが必要不可欠な時代に突入しているといえる。

とのことで、松下記者は控えめに「オリジナル比率は50%近く」と書いているが、実際のところ、ユナイテッドアローズやビームスなどの大手セレクトショップのオリジナル商品比率は7割から8割くらいになっている。ただし、7割と言っても、こと衣料品に限ればオリジナル比率は8割~9割にもなっている。じゃあどうして1割~2割くらい構成比率が下がるのかというと、バッグや靴がオリジナル比率を下げているからだ。

洋服は業界全体での製造インフラが整っているから、カネさえ支払えばいくらでもオリジナル品が作れるようになっている。しかし、靴やバッグは専門性が高いために、洋服に比べるとそう簡単にオリジナル品は作りにくい。だから必然的に他ブランドからの仕入れ品が増えざるを得ない。このためオリジナル品比率が洋服よりも低くなってしまう。

本来は、いろいろなブランドから仕入れてきた商品を集めたのがセレクトショップだが、事業を拡大するには、収益性の面や商品デリバリーの面から考えると、オリジナル商品比率を高めざるを得ないのが実態である。

例えば、5000円の商品を他ブランドから仕入れたとする。現在の国内の仕入れの慣習からすると、2700円くらいだろう。店側の儲けは2300円くらいしかない。ところが、同じ5000円でも自社が企画して製造を委託したオリジナル商品の場合は1700円くらいで製造できるから、儲けが3300円になる。オリジナル商品の方が明らかに利益率が高いく儲けが多い。

また、仕入れ品だと「欲しいときに追加発注しても商品がなくなっている」という可能性が高い。メーカー側はなるべく早く売り切りたいから、商品を多めには作らない。よほど売れに売れているなら追加生産するが、ポテンヒットやシングルヒットくらいの当たりでは追加生産はしない。その結果、店が追加発注しても生産せず、商品が入荷しないということも珍しくないから、仕入れ品のみでは店作りが難しくなってしまう。期初は商品がキチンと並んでいるが、期中になると棚やラックがスカスカということにもなり得る。

だからセレクトショップ各社は業績を拡大するにつれて段々とオリジナル商品比率を高めていった。大手セレクトショップの内情はすでに「ほぼSPA(製造小売り)」化してしまっている。
実は売上高500億円や1000億円を越えるような大手セレクトショップという「不思議な」業態が存在するのは日本だけである。欧米のセレクトショップは、仕入れ品のみを頑なに守っているので大規模な業容拡大をしていない。していないというよりできないのである。

つい先年、閉鎖が話題となったパリの有名セレクトショップ「コレット」だが、多店舗化していない。今回閉鎖が決定したアメリカンラグシーもアメリカ本国では多店舗化していない。一時期多店舗化を志向したものの失敗しており、個店に戻っている。そもそも「セレクト」というコンセプトで多店舗展開することは不可能に近いといえる。理由は、上に挙げたように、利益率が低く儲けにくいから大規模な投資につなげにくいということと、仕入れ品のみでは店作りが困難だからということの2つが挙げられる。
大手セレクトショップなる業態が林立しているのは日本独特の奇観だといえる。

大手セレクトショップ各社が「ほぼSPA」と化したしまった現在、弊害も徐々に現れ始めている。オリジナル商品の各社の同質化である。自社企画製品といっても、元来が小売店であるセレクトショップ各社にはデザイナーもパタンナーもいない。必然的に、そういう専門の会社に商品の製造をデザインから委託する。平たくいえば丸投げしているのである。

そうすると専門の会社はいくつものセレクトショップやSPAブランドの商品作りを手掛けているから、自然とそれらの商品は似てしまう。
出来上がった商品はどれも似ているから、それを並べた店頭は似てしまうのは当たり前である。こうして同質化が起きると、消費者が購入する動機は低価格ということになる。同じ商品・似たような商品なら人は誰でも安い方で買う。いずれ、大手セレクトショップ各社も否応なく価格競争に巻き込まれることになると考えられる。

今回のアメリカンラグシーの日本撤退からもわかるように長年にわたって、他社ブランドの仕入れだけで収益性を維持し、店作りをすることは困難を極める作業である。かといって、安易にオリジナル比率を高めてしまっては同質化が進んでしまう。これがアメリカンラグシーとアンドエーが苦戦に転じた背景で、他の大手セレクトショップも表面化していないだけで同様の課題を抱えている。

2000年ごろから国内ファッション業界を牽引してきた日本独自の「大手セレクトショップ」という不思議な業態もそろそろ曲がり角に差し掛かっているのではないだろうか?何事も盛者必衰だし無限成長することはできない。

そしてこれらの課題の解決方法を誤れば、2015年ごろから一気に経営不振に陥った大手アパレル各社と同じような結末を迎えてしまう可能性もある。

衣料品ビジネスで儲け続けることの難しさを改めて感じる。

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さらばアメリカンラグシー

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