カテゴリー: 経営破綻

産地の自立化事業は自社ブランドを立ち上げることがゴールではない

 製造加工業が下請け脱却を目指して、自社オリジナルブランドを立ち上げたり、小売店を立ち上げたりする事例が多く見られるようになり、それは企業存続のためには正しい方針だと考えられている。

もちろん、筆者もその考え方には賛成だが、それでもやっぱり自社オリジナルブランドを立ち上げて軌道に乗せるのは難しいと、改めて感じる。

先日、泉州の杉友ニットが破産申請をした。

杉友ニット(株)(大阪)/破産手続き開始決定
http://n-seikei.jp/2017/06/post-44479.html

ニット工場としてはそれほど知名度が高かったわけでもなく、売上高が大きかったわけでもないが、このニット工場はいち早く、自社オリジナルのニットブランドを展開していた。
「タップルーツ」というブランド名でだ。

このブログでも以前に採り上げたことがあった。

新事務所に移転してから1度お邪魔したが、その後、あまり行き来がなくなってしまい、ここ3年くらいは近況が聞けないでいたから、直近の状況がどうだったのかはわからない。

新事務所に移転した直後までは、自社製品を製造しつつ、工場としては他社ブランドの製品の製造を請け負っていたという二刀流の構えで活動していた。

「タップルーツ」も自社ブランドとはいうものの、卸売りが基本で、卸売り先の店舗の別注商品や他社ブランドの別注商品も積極的に受けていた。
また、ネット販売も楽天市場をメインに行っており、2002年ごろからネット販売を開始していた。
2002年というと今から15年前で、そのころに衣料品をインターネットで販売するなんてことは、業界の大多数が否定的に見ていた時期だ。

業界が猫も杓子も「ネット販売」と言い始めたのは2010年以降のことだから、先見の明はあったといえる。

しかし、それでも倒産してしまった。

自社オリジナル商品を開発しながら、他社の製造も請け負うというのは、いわゆる自立化のお手本みたいな取り組みであるし、2002年から楽天市場でとはいえ、ネット販売に着手するのも先見の明があった。

恐らく、今現在でも産地企業が、コンサルタントに相談するとこれと同じプランを提示するだろう。
違うのは楽天市場はあまり勧めないという部分だけだろう。

自立化のお手本みたいな取り組みを行っていても経営破綻に追い込まれてしまうということだ。

直近の状況がわからないから、数年前までの取り組みを思い返してみる。

上に書いたような取り組みは変わらず続けていた。
その取り組みから次の段階に進めなかった(進まなかった)というのがビジネス的に苦しくなったのではないかと想像している。

また、ブランド名、工場名の知名度があまり高まらなかった(高める取り組みが少なかった)ことも事業が好転しなかった原因の一つではないかとも思う。

自社ブランドを開発して卸売りしつつ、他社ブランドの別注商品も受ける。
また工場はこれまで通り他社ブランドの製造も請け負う。

こういう形態はこの15年間くらいである程度完成していたと考えられるが、そこから次の段階への移行ができなかったと断続的に見ていて感じる。

しかし、言うは易く行うは難しで、従業員数も少ない中では、次のことに取り組む(取り組ませる)のは容易ではない。どうしても目の前の日々の業務をこなさねばならないから必然的に従来通りのルーチンワークに比重の重きを置くようになる。

そのルーチンワークの中で少人数で新しいことにはなかなか取り組めない。

このルーチンワークに埋没してしまえば、それは製造業の自立化事業ではなく、単なる卸売り型ニットアパレルになってしまう。
小規模な卸売り型アパレルが苦戦しているのは業界全般に共通した話なので、その状況に巻き込まれてしまう。
出自が工場だとかは関係ない。

小規模な卸売り型アパレルが苦戦している状況に置かれてしまう。

それにしても、製造加工業者の自立化事業とはなんと難しいものか。
自社オリジナルブランドを開発してお終いではないのである。
開発したあとは、アパレルブランドとしての舵取りが求められ、その舵取りを間違ってしまえば、いかに模範的なモデルを作り上げようとも、経営は破綻してしまうのである。

繊維産地に向けて発信するコンサルタントの多くの主張を見聞きしていると、オリジナルブランドや直営店開設をまるでゴールかのように捉えているケースが多いと感じる。

なるほど、コンサルタントにとってはそれがゴールでその時点で報酬を受け取ってしまえば、お終いなのかもしれない。

しかし、事業者にとってはそこからが新たなるスタートであり、今度はアパレル企業、小売流通業としての企業活動が始まるわけで、その経営に失敗すると倒産に至ってしまう。

今回の杉友ニットの経営破綻は、改めてそのことを感じさせてくれる。

繊維産地の事業者も自立化を勧めるコンサルタントも改めて「そこがゴールではない」ということに思いを致すべきではないか。

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日本の工芸を元気にする!
中川 政七
東洋経済新報社
2017-02-24




バナリパの縮小とオールドネイビーの撤退は何の不思議もない

 先日、オールドネイビーの日本撤退とバナナリパブリックの不採算店閉鎖が発表された。
この2ブランドはGAP傘下のブランドである。

米ギャップが「オールドネイビー」日本の全店閉鎖、「バナナ・リパブリック」も縮小へ
http://www.fashionsnap.com/news/2016-05-20/oldnavy-gap-close/

米ギャップは5月19日、「オールドネイビー」の成長を見通して最も有利な市場にフォーカスし、北米と中国に資源をシフトさせる戦略を発表。2012年に初上陸してから日本国内で展開している全53店舗を、2017年1月の会計年度末までに閉店する。

更に「バナナ・リパブリック」は全世界で不採算店舗の閉鎖を進め、今年度中に両ブランド計75店舗を閉める。
【追加情報】米ギャップは、今後の日本市場について「Gap」と「Banana Republic」の投資に焦点を絞ると発表。

とのことだ。

これについては専門家諸氏がそれぞれ指摘されている通りである。

身の回りの人から聞いていると、オールドネイビーは子供服の評価が高いようだ。
本体のGAPとは異なるテイストでしかも低価格なので愛用してた若い夫婦が多い。

しかし、全体的な印象でいうとオールドネイビーはGAPとの区別がつきにくい。
アイテムバリエーションの少ないメンズなんてそれが顕著だ。

もともと、GAPよりも低価格のブランドとして北米ではオールドネイビーは展開されていた。
ところが、日本では本体のGAPが先に上陸しただけでなく、価格面でも最終処分値が恐ろしい低価格まで投げ売りされていたことから、個人的には「オールドネイビーが進出する理由が見当たらない」と感じていた。

GAPは日本では元値設定が高すぎておかしいと思うのだが、たくさんの数量を店頭投入して売り減らすというスタイルなので、ほとんどのアイテムはあまり期間を置かずに半額に値下げされる。
GAPの商品はこの半額に値下げされた価格が適正価格だと感じるのだが、これでも売れ残った場合は、さらに値下げされ、最終的にはだいたい1900円とか990円になる。
ひどい場合はその価格からさらにレジで半額に下がったりもする。

筆者はいつも1900円とか990円になってからしか買ったことがない。
GAPで買った最高値の商品は2900円である。

バナナリパブリックも同様に投げ売りをする。
だいたいが最終的には70%オフくらいになるし、さらにレジにて20%オフとか25%オフとかされることもある。
昨年夏に半袖Tシャツを買ったが、それは800円くらいまで値下がりしていた。
それ以前に綿のカーディガンを買ったこともあるがそれは2000円くらいまで値下がりしていた。

個人的にはこの2ブランドの投げ売り品を買うので、オールドネイビーに興味を持てなかったし、いまだに買ったこともない。

本来は

中価格でアメカジのGAP
低価格でアメカジのオールドネイビー
GAP以上の価格でコンテンポラリーカジュアルのバナナリパブリック

というのが戦略だったのだろうが、日本市場だけで見ると、GAPもバナナリパブリックもひどい投げ売りを行うので低価格ブランドであるオールドネイビーを上陸させる必要性がまるで見当たらなかった。

そんな中で4年前にオールドネイビーを上陸させたが、タイミングが遅すぎたのではないだろうか。
H&M、フォーエバー21、しまむら、ジーユーで低価格耐性ができた上に10年間以上もGAPの投げ売りに親しんだ日本人にとってはオールドネイビーの定価は「驚くべき低価格」とは映らなかった。
あくまでも「普通の低価格」である。

53店舗まで広げたがこれ以上爆発的に広がる要素も需要もなかったと個人的には見ている。

また縮小するバナナリパブリックだが、これも当然かなという意見しかない。
関西にも何店舗かあるが、この店がにぎわっているのを見たことがない。
一昨年ぐらいから業界内では「撤退する」とか「縮小する」といううわさが飛び交っていたが、まったく不思議には思わなかった。
むしろ、昨年「上陸10周年祭」を行っていたことのほうが不思議だった。
あれ?撤退するのに上陸祭なんてやってて良いのかな?と思ったほどである。

そういえば10年前に上陸したときに奇異な感じがした。
日本でのバナナリパブリック人気のピークは25年ほど前ではないかと思う。
筆者が大学生のころ、ちょっとイケてる(当時こういう言い方はなかった)学生がTシャツなんかを着ていた記憶がある。
筆者はイケてない大学生だったから、イズミヤかジャスコでオカンが買ってきた1900円のトレーナーかTシャツしか着ていなかったのだが。

あの当時のバナリパはアメカジテイストが濃厚で、そういうイメージが残っていたので今のコンテンポラリーテイストを見たときにはちょっと驚いた。
GAPに買収されてから顧客層が被らないようにテイストを変更したということである。

しかし、今のバナリパのテイストと価格帯では日本の若者は買わない。
30代・40代・50代はバナリパのブランド名をしっかりと覚えているが、この年代がバナリパに求めているのは今のコンテンポラリースタイルではなく、当時のアメカジ・リゾートカジュアルテイストである。

こうなると若い層からも中年層からも支持されなくなる。

やっぱりグローバルブランドといえども様々な意味でローカライズできないとその国の市場では残っていけない。

3年位前からGAPで買うことが減ってきた。
以前投げ売り品を買っていたのは、デザイン面もそうだが、品質的にも投げ売り価格なら価値があったからだ。
3年位前からデザイン面もそうだが、使用素材や縫製の品質も低下していると感じるので、投げ売りでも価値を見出せない。

その上、高すぎる定価設定は変わっていない。

果たしてこれで大丈夫なのかと他人事ながら心配になる。
GAP本体の日本での縮小も今後十分あり得るのではないかと見ている。




創業家の手から離れたイトキン

 さて、1月末で資金ショートに陥る危機だったといわれていたイトキンがインテグラル社に買収された。

興味の対象はインテグラル社がどのような方策を打ち出すのか、そして創業家の辻村家はどうなるのかというところだろうか。

まず、辻村家は経営から手を引く。

繊研新聞社のウェブニュースではすでに新会長が就任することが伝えられていた。
となると、辻村家の現会長は退任するということである。

繊研新聞はそこまで書いていないが、普通の知識がある人間が読めばそう判断する。
会長2人体制なんていうのはあり得ない。

問題は社長以下の辻村家が残るかどうかだったが、インテグラル社は大株主から株式の大半を譲り受けたことがすでに伝えられている。
非上場の同族企業であるイトキンの大株主は辻村家しかないわけだから、辻村家から株式の大半を譲り受けたことは明白であった。
どの新聞もなぜか書いていないが。(笑)

本日の日経ビジネスオンラインでさらに真相が書かれており、辻村家の経営からの撤退も明言されている。
ここまで突っ込んだ記事を書いた媒体はない。評価に値する。

イトキン買収のファンド、真相を語る
「あと1年遅ければ債務超過だった」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021100248/

新社長にはイトキンの前田和久副社長が就任することも書かれてある。

そして、記事末尾にはこうある。

ファンドが再生支援に入ることで、創業家は経営からすべて手を引くことになります。

とのことである。

まあ、正しい判断だろう。
むしろ、もっと早くに同族経営から脱していれば債務超過目前のような窮地に陥らなかったのではないかとも思う。

同族経営から離れられなかったのが、創業者・辻村金吾氏の限界点だったのではないかと個人的には見ている。

そして方策だが、まずは7ブランド廃止で400店舗の閉鎖である。
7ブランドの廃止はすでに報道されていたが、400店舗の閉鎖という具体的数字は初めてである。

収益力を高めるため、国内約1400の店舗は千店程度まで絞り込む。昨年1月末で約4800人いた従業員についても早期退職を募っていて、4千人規模になる見通しだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160211-00000003-asahi-bus_all

昨年のワールドと合わせて900店舗の閉鎖である。
それ以前にもTSIも大量のブランド廃止を発表しているから、少なく見積もっても3社で1200店程度は閉鎖することになると考えられる。

すごいなあ、と思うのは、その1200店舗がなくなっても従業員以外は誰も困らないというところだ。

だれかいますか?
ワールドのあのブランド店がなくなってすごく困っている人。
イトキンのあのブランド店がなくなってすごく困る人。
TSIのあのブランド店がなくなってすごく困る人。

その店で働いていた従業員以外はだれも困らない。
あ、そのブランドの製造を担当していた製造関係者も困るが、一般消費者はだれも困らない。

だからなくなっても当然だと思う。

むしろ、これまでの洋服の供給過多が改めて浮き彫りになったのではないか。
1200店舗がなくなっても誰も困らない。
これが今の国内市場である。

洋服が売れないのも、値崩れを起こしているのも、その原因の一端は供給過剰にある。
しかし、社会主義経済ではないから国やら役所が各社の製造数量を決めるわけにはいかない。
自由競争に任せた結果供給過剰に陥るのは仕方がない。
供給過剰でどう勝ち残るかを考えるべきであって、「オシャレに興味がない人が増えた」なんて責めても始まらない。興味を持たれるような方策を採ってこなかった方が悪い。

元来が供給過多だから大手アパレルの大量閉店は、供給量を戻すための正常行為だともいえる。

脳内が高度経済成長期やバブル期で時間停止している経営者や幹部連中が君臨するアパレルは今後もさらに淘汰が進み、供給量は限りなく正常値に近づいて行くのではないか。




イッツの解散、イトキンのブランド廃止

 国内の倒産件数は低水準に推移しているが、アパレルの倒産件数は2年連続で増加している。
今年も新年早々に大手の解散、ブランド廃止が次々に発表されている。

イッツインターショナルが解散 事業はフランドルが吸収
https://www.wwdjapan.com/business/2016/01/27/00019432.html

 アパレルメーカー大手のフランドルは、SPA(製造小売り)ブランド「イッツインターナショナル」を展開する子会社イッツインターナショナル(以下、イッツ)を吸収合併する。1月26日付の官報で開示した。今後はフランドルの一事業として運営する。

イッツはフランドルを中心に住金物産(現日鉄住金物産)、帝人グループ、フェニックス・ホンコンの4社が出資して2009年に設立。後にクラボウが加わった。大手素材メーカーや商社が一致団結した”オールジャパン型SPA”として、高付加価値素材を使ったベーシックアイテムを手ごろな価格で提案することで、当時マーケットを席巻していたファストファッションとの差別化を目指した。

とある。

イッツは15年2月期に2億5000万円の純損失を計上したと報じられているが、開始から5年間ずっと赤字続きだったと聞いている。

立ち上げの2010年に旗艦店となる原宿店を開設したがこの店舗は早々に閉店している。
現在は21店舗残っているされているが、今後は店舗数が減ることはあっても増えることはないだろう。

「日本の物作り」に焦点を当てつつ、中間価格帯を打ち出したイッツの取り組みは個人的には注目していた。
しかし、何度か売り場を見た感想を言うなら、その「思い」とターゲット層がマッチしていなかったと感じた。

このブランドは明らかにレディースが主体。
アイテム数の比率からしても売り上げ構成比はレディースが7~8、メンズが2~3割というところだろうと推測できる。
もしかしたら9:1くらいの比率かもしれない。

「〇〇産地の〇〇織り」「〇〇にこだわった〇〇素材」

こんな風に各素材、産地を説明した大型のPOPも取り付けられており、説明しようとする意思は感じられた。
しかし、この販売方法で心に響くのは女性ではなく男性である。
女性向けブランドなのに販促手法は男性向けなのである。ここにミスマッチがあった。
また原宿店を旗艦店としたが、このブランドのターゲット層は明らかに30代以上の女性である。
商品テイストはコンサバトラッドだ。

原宿という土地は、30代以上のコンサバトラッドファッションを好む女性が多く立ち寄る場所だろうか?
明らかに違うだろう。

原宿でその狙いで成功しているブランドがあるだろうか。

明らかに、「思い」とターゲット層がずれている。
旗艦店を原宿という土地に出店したことも失敗を印象付ける補強材となったのではないか。
あまりにも安易に出店場所を決めすぎたのではないかと感じられる。

物作り系ブランドにありがちな失敗といえる。

それにしても日鉄住金は繊維事業を急速に縮小させている。
遊心クリエイションの会社清算に続いてイッツの解散である。
もともと金属商社だが、全般的に不振が続く繊維事業なんてやっていられないというところだろうか。
この判断は正しい。得意分野に集中した方が効率的といえる。
消費不振の続く繊維事業なんて日鉄住金に限らずどんどん切り捨てれば良いのである。

続いてはイトキンのブランド廃止である。

業績低迷「イトキン」複数ブランド終了へ シンシアローリーの婦人服ライセンス事業も撤退
http://www.fashionsnap.com/news/2016-01-28/itokin-brand/

 総合アパレル大手のイトキンが、春にかけて複数のブランドや事業を終了する。ウィメンズ向けの「シンシア ローリー(Cynthia Rowley)」と「グレイセラ(GRACERA)」は秋冬商品、男女複合の「ヒアーズ(HERE’S)」は2月発売の商品がラストコレクションで、各店舗は順次閉鎖される。

25~30歳がコアターゲットの「シンシア ローリー」は、婦人服ライセンス事業を1月末で終了。昨年11月末でオンラインストアは閉鎖されており、各都市の百貨店などに展開する22店舗も2月8日までにクローズする。

同じくウィメンズブランドの「グレイセラ」も2015年秋冬商品で販売を終える。同ブランドはシニア市場の開拓を狙い、イトキンのベテラン勢を集めて2014年8月に設立された会社イトキン メビウスの運営で昨年春にデビューしたばかりだが、わずか1年の展開となった。

イトキンの不振はウィメンズブランドだけではなく、複合業態も同様のようで、都市部や郊外の商業施設に展開するライフスタイルブランド「ヒアーズ」は4月上旬の終了を発表。今週25日に閉鎖したオンラインストアをはじめ、東急プラザ表参道原宿や大阪グランフロントなどに構える30以上の店舗を順次閉鎖している。

とある。

このほかにも先だって「クレージュ」ブランドの廃止も発表されており、イトキンはこれからブランドの廃止ラッシュになるだろう。
ブランドの廃止ラッシュくらいならまだマシだが、さらに衝撃的な発表が控えているという噂もある。

そういえば、ヒアーズだが、昨年からかなり大量にバッタ屋に商品が流れている。
天神橋筋商店街の各店舗でヒアーズの商品が500円とか300円で投げ売りされているのをよく見かけた。
相当在庫を抱えていたのだろうと推測していた。

ちなみにavvの商品もそこそこに見かける。
これも在庫を抱えているのだろう。

イトキンの直近の業績(2015年1月期)は、売上高が952億5,900万円、純益は前の期の40億円に続く赤字。

とあるが、2016年1月期の業績はさらに落ち込むと個人的には見ている。
最終的に創業家がどういう判断を下すのか注目したい。

2016年が明けて、まだ1か月である。

すでに年始早々にセレクトショップWOmBの経営破綻が伝えられた。

1か月の間に名の通ったアパレル3社が相次いでの経営破綻、解散、ブランド大量廃止の発表である。
今日から立春だがアパレル業界の春は当分訪れそうにない。

残り11カ月、どれほどのビッグニュース(悪い意味での)が発表されるのか、想像するのも恐ろしいくらいである。
今年、来年あたりでアパレル業界のガラガラポンが本当に起きるのではないだろうか。




遊心クリエイションも消える

 この土日に業界で話題となったのは、このニュースだろう。

日鉄住金、遊心クリエイションを清算
http://www.senken.co.jp/news/management/nssmc-yushin-151205/

いくつかの媒体を読み比べてみたが、経緯の詳細ではこの繊研新聞の記事に勝るものはない。

抜粋しつつ紹介したい。

日鉄住金物産は100%子会社で「イーブス」「アソコ」などを運営する遊心クリエイション(大阪市)を清算することを決めた。来年1月末をめどに全店の営業を停止し、清算手続きに着手する。清算結了は来年9月をめどとしている。

 遊心クリエイションは02年、森島純嗣前社長が設立し、10年に住金物産(現日鉄住金物産)が株式35%を取得、14年11月には全株式を取得していた。現在の店舗数はレディス・メンズの「イーブス」34店、レディスの「グランデベーネ」7店、低価格雑貨業態の「アソコ」4店の合計45店。

とある。

主力業態のイーブスは、グローバルSPA(製造小売業)をはじめとする競合激化や不良在庫が膨らんだこと、不採算店舗を数多く抱えたことで不振が続いていた。一時期大きな話題を呼んだアソコも、店舗ごとの収益性にばらつきがあっり、効率性の悪さもあって、収益面では厳しい状況だった。

 会社全体の業績も13年2月期こそ黒字を確保したが、14年2月期は売上高58億4000万円で、最終赤字に転落。債務超過に陥った。15年2月期も売上高56億5000万円で、引き続き赤字。今期(16年2月期)も赤字が避けられない状況となっていた。

この決算内容では日鉄住金が会社清算を決めても不思議ではない。
アパレル業界からすれば56億円というのは中堅企業だが、日鉄住金からするとそれほど大きな売上ではない。
それほど大きな売上ではないくせに3年連続の赤字で、2年前には債務超過に陥った会社なんて単なるお荷物に過ぎない。解散か売却、清算というのが日鉄住金側からすると妥当な判断である。

その上で、

事業継続を念頭に、自社での再建だけでなく、事業譲渡の可能性も検討。アパレル企業、ファンドなどと交渉を重ねたが、現状での赤字に対する懸念が強かったことに加えて、新規出店、不採算店舗の閉鎖など事業建て直しには大きな投資が必要と判断されたことから、不調に終わった。

とあるから万策尽きたということである。

関係者から聞くと一縷の望みをもってまだ水面下では動いているらしいとの情報もあるが、実際のところ、すでに全店閉鎖が決まっている会社が万が一にも存続できたとして、当面の売り場確保はどうするつもりだろうか。
また再出店するならどれほどの出費が必要となるのか。
さらにいえば、卸売業務をすでに廃止している。
これらを考えると、スポンサーになる、もしくは会社ごと買収しようという企業が現れる可能性は限りなくゼロに近い。
水面下での動きがもしも仮に本当だとしたら、完全なる徒労に終わると見ている。

アパレル業界にとっては「イーブス」の方が注目度が高かったが、世間的には「ASOKO」の方が注目されていた。アパレルにまったく詳しくない経済誌記者も「ASOKO」は知っていたほどである。

世間が「ASOKO」の何にそれほど注目したのかよくわからないが、店舗数から考えてみても遊心の主要業態は「イーブス」であり、「ASOKO」はアクセントであり、今後の育成業態に過ぎない。
そういう意味においては世間は主客反対の認識を持っていたといえる。

まず「ASOKO」から考えてみよう。

一説には採算が取れていた店舗もあったというが、雑貨の型数は洋服どころではないほどに多い。
しかも単価は安い。
となると、大量生産による製造費引き下げしか利益率を確保できない。
もし、ASOKOが当初の計画通りに3年間(2016年までに)で国内50店舗体制になっていれば採算性は変わったのかもしれない。
しかし、結局、4店舗体制にしかできなかった。
たった4店舗分の生産ロットでは採算性の改善はほとんど見込めない。
雑貨は単価が安い分、洋服よりも製造ロット数は大きくなるからだ。
4店舗分では雑貨の経済ロットには達しないと見るべきだろう。

4店舗体制から増やせないという状況に陥った時点ですでに事業としては破綻したといえる。

次に「イーブス」である。
これはユニクロも含めた低価格グローバルSPAに対抗した低価格SPAブランドである。
センスは悪くない。デザイン性は高かった。
けれどもどういえば良いのかわからないが、今一つパンチ力がなかったように感じる。
これは商品的なことではなく、販促・広報的な面でだ。
あの価格帯を買う層、イーブスが出店していた郊外型ショッピングセンターに来る層に対して、響かなかったのではないかと感じられる。

またピーク時でも40店舗強、現在は34店舗という店舗数もあの価格帯の製品を作るのなら少ない。
最低でも100店舗は欲しいところだ。

あの価格帯で製造するならアジア地区でしか無理であり、中国には比較的小ロットの工場も現れているし、韓国は小ロット専門だが、それ以外のアジア地区はまだまだロット数が必要である。
となると、100店舗くらいあると全店に10枚ずつを配送しても1000枚となり、アジア地区での生産も可能になる。

ところが40店舗しかないなら、10枚ずつなら400枚だ。
そうなるとやはり製造コストは劇的には下がらない。あの価格を維持するには難しかったのではないかと思う。

遊心クリエイションは、昨年4月に創業社長であった森島純嗣氏が退任して、久保木大世氏に社長が交代している。その後、昨年11月には森島氏が退職している。

業界には「創業社長が去った時点で終わっていた」という意見もあるが、その通りではないかと思う。

アパレルはよくも悪くも創業者のセンスとカリスマ性で成り立っている部分が多い。
創業者が去った時点で会社は別物となるし、その製品も別物となる。
大きく成長しきったアパレルならそれでも次代、次次代と存続する場合もあるが、遊心クリエイションのようなベンチャーで成長段階にあるアパレルではそれでは存続できない。

もちろん、各氏が指摘するように、採算性と資金繰りの悪化から、創業社長が居続けたとしても財務面での破綻はあったかもしれない。

それにしても「寄らば大樹の影」ではないが、大手の傘下に組み込まれるのも善し悪しの場合がある。
遊心クリエイションの場合、資金的に行き詰ったから5年前に日鉄住金に35%の株式を売却したのだろう。しかし、大手には大手の論理がある。
大手の後ろ盾は心強いが、採算性が彼らの望むような向上を見せなかった場合、売却、解散ということになる。

別に遊心だけではない。過去にもそういうアパレルがたくさんあった。
今年2月末に解散したTSIホールディングス傘下のフィットもその一例といえる。

資金繰りがなんとか自前でできたなら、遊心クリエイションという企業はもう少し永らえたかもしれない。
売上高30億円くらいでカツカツで苦しいけれども創業者とその仲間であと5年か10年くらいは継続できた可能性はある。

あと、卸売り業務の廃止で直営店一本槍という経営方針の変更も会社清算を結果的に早めたのではないかとも思える。
集中と選択とは一昔前に流行った言葉だが、もしその博打に外れた場合、他に逃げ道がないということである。
液晶画面を選択して集中しすぎたシャープは今どうなっているか。それと同じことである。

それにしてもフィットに続いて、大阪拠点の有名アパレルがまた消えた。
そういう意味での感慨もある。

報道に接しての思うところをまとめてみた。

PCメガネ (子ども用) 赤
株式会社遊心クリエイション


PCメガネ (子ども用) 黒
株式会社遊心クリエイション



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