カテゴリー: 素材

今度こそ「再生ポリエステル」は広まるか?

生地問屋の展示会を見ていると、2年くらい前から急速に「エシカル素材」の取り扱いが増えたと感じる。
「エシカル素材」とはなんぞや?というと、オーガニックコットンだったり、リサイクル繊維だったり、そういう「環境に良い」と思われている素材を使った生地のことである。

個人的には、素材に限らず「熱く」エシカルを語る企業、ブランド、人は好きではない。胡散臭く感じる。
人間が生きて現代文明生活を営むこと自体が環境破壊しか生まないのに、そんな表層的に取り繕って何の意味があるのかと思う。

とはいっても、現在の中国の工場のように廃液垂れ流しで良いとは思わない。
公害を減らすことは重要である。ただ、生来のへそ曲がりとしてはそれを華々しく打ち出す行為が嫌いである。

そんな初老のオッサンの好き嫌いはどうでも良いとして、欧米に向けた商売をする場合は、エシカルな取り組みを見せる必要がある。
このあたりは、さすがは偽善的な綺麗事の建前が大好きな欧米人だとしか言いようがない。

先日、お邪魔した瀧定名古屋の2018年秋冬素材展でも、海外販路を意識した「エシカル素材群」を発表していた。
同社の様式でいえば「サスティナブル素材群」ということになる。

瀧定名古屋の2018秋冬素材展の表示

今回の展示会でいえば、この「サスティナブル素材群」と「機能性素材群」の2つが目玉といえる。

機能性素材群とは、撥水、防風、ハイストレッチ、抗菌などの機能性を有した素材群で、サスティナブルは海外向け、こちらは国内市場向けというふうに見ることができる。

当方も含めて、日本人の多くはそんなにサスティナブルとかエシカルに興味はなく、機能性素材の方に関心が集まっているからだ。

初老のオッサンになると、もう「見た目がかっこいい」とか「色柄が素敵」とか「トレンドだから」ということだけでは服は買わなくなる。撥水だとか吸水速乾だとかストレッチだとか、そういう便利機能が付与されて初めて購買意欲が湧く。
別に初老に限らず、若い人でもそういう機能性への関心は高い。だから機能性素材を使用した衣服が売れるのだろう。同じ服ならやっぱり便利な方が良いに決まっている。

そういう業界がいう「エシカル」「サスティナブル」素材の一つに、再生ポリエステルが含まれている。
若い人たちは「再生ポリエステル」と聞いて、斬新さを感じるだろうか?
ペットボトルを再生したポリエステルのことだ。

しかし、実はこの素材は20年前に注目されたが、あまり普及せずに終わった素材で、これが最近「エシカル」「サスティナブル」によって再注目されているということになる。

2000年間近のころ、当方は駆け出しの業界紙記者だった。
このころ、注目を集めていたのが再生ポリエステルで、おもにワーキングユニフォーム業界に多く使われていた。

一般衣料品にも広めようという動きは合繊メーカーではあったが、あまり普及せずにそのうちに耳にすることもなくなった。
2003年にはほとんど聞かなくなっていたと記憶している。

理由は二つある。

1、再生するコストが高い
2、糸そのものの品質が悪い

品質の悪い糸に高値が付くのだから、そりゃ誰も使わない。
よほど暑苦しいイシキタカイ系しかそんなメンドクサイ素材は使わなくて当たり前だ。

それが近年のブームで再注目されているというわけだ。

そこで、当方は過去に普及が妨げられた2つの要素が解消されたのかどうかを何社かに雑談程度に尋ねてみた。
将来的には解消されるかもしれないが、現時点では解消されていないということだった。

ただ、再生ポリエステルにせよ、エシカル原料ばかり使えということではなく、混ぜて使っても良いということで、「使っているという姿勢が重要」なのだというから、まあ、その程度の取り組みにとどめた方が暑苦しくなくて良いと思う。

ところで、その「エシカル」「サスティナブル」とされている素材、原料も「定義」が複数あり、統一されていない場合もあるので要注意だ。

例えば、オーガニックコットンだと日本には協会が2つあって、お互いに相容れていない。「定義」が異なるのである。
また、業者が勝手に定義を広げたり再解釈する例もある。

ある工場は、オーガニックコットン工場で出た「落ち綿」を集めて、それを糸にして「オーガニックコットン糸」として比較的安値で発売しているが、別の生産業者からするとこの手法は邪道だという。

オーガニックコットンとは、国だけではなく畑までトレーサビリティが可能であるべきだとされているから、各国・各農園の落ち綿が混じり合っていればオーガニックコットンとは言えないという主張がある。
また落ち綿を拾い集めると必然的にゴミやホコリも混じる。そういう物が混じっていてオーガニックコットンと呼べるのかという疑問も呈されている。

このあたりの論争はなかなか終結を迎えないだろうから、この分野もなかなか厄介であり、当方はますます興味がなくなる。
まあ、暑苦しくない程度でとどめておいてもらうのが一番マシだと感じる。

再生ポリエステルにせよ、オーガニックコットンにせよ、美名と大義名分は理解できるが、現状はその程度のものだから、美名に踊らされすぎないようにするのが、消費者の自己防衛の手段である。

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「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
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ジョガーパンツ風ジーンズで生じている「織物」と「編み物」の錯誤

今日はかなりニッチでミクロな話を。

衣料品や生地で、誤解が生じやすい原因の一つとして「名称の定義」があやふや、誤って使われやすいということがある。

例えば、ディーゼルが先行発売し、他社が追随してあっという間に消費者にも浸透したジョガーパンツ風のジーンズ。

通常のストレッチジーンズよりもキックバック性の高いストレッチデニム生地が使用されている。

ウエスト部分がゴム入りだったり、裾がリブ使い・ゴム入りになっていたりというデザインが多いので、着想の元ネタはいわゆるスエットのズボンだったと考えられる。

スエットのズボン風のジーンズがあれば面白いんじゃないかという発想ではないかと想像する。

デニム生地にもストレッチ入りは普及していたが、スエットズボンのリラックス感を再現するためには通常のストレッチデニム生地では不十分でもっとソフトで伸縮性があることが求められる。

そこで、当初の業界には二つの商品があった。

●ディーゼルのジョグジーンズのように、あくまでも織物であるデニム生地で伸縮性の高さとソフト感を追求した商品群。

●もう1つは、スエット生地(編み物)をデニム風に見せた商品群。

とこの2つである。

当初は、デニム風スエット生地を着用した商品群がけっこう店頭に出回っていたが、今はほとんど消えた。

理由は、スエット生地(正規名称は裏毛)はいくら見た目や色合いをデニムに似せても、所詮は編み物なので、ヒゲ加工を施した際にもし、1本でも糸が切れるとそこから穴が拡大して破れてしまうという欠点がある。
また、織物のデニム生地と異なり、ヒゲ加工を施してもメリハリの効いたヒゲが表現しにくいという欠点もあった。

 

そのため、ディーゼルのジョグジーンズに追随したデニム生地使用の商品群が現在の店頭ではほとんどとなっている。
デニム風スエット生地の商品が根絶されたわけではないが、それはあくまでも「デニムっぽいスエット」として商品デザインされていて、デニムの代わりにはなりえていない。

 

各店頭をざっと見まわした感じでいうと、ディーゼルはじめエドウイン、ユニクロとほぼすべてが「ニットデニム」とか「ジョガーパンツ」とか名乗っていながら織物であるストレッチデニム生地を使用している。
だから、もともとは「デニム風ニット(スエット生地は編み物だからニット)」だったのが、現状は「ニット風デニム生地」へと逆転しているのである。

「ニットデニムパンツ」ではなく「ニット風デニムパンツ」が正しい。

まあ、以上のような状況を頭に入れて、続きを読んでいただきたい。

しかし、業界人でもこの「ニット風デニム生地(織物)」と「デニム風裏毛生地(編み物)」の区別ができない人が相当数存在する。
それは、製造方法の違いだけでなく、見た目でも判別できていない。

例えば、名実ともに国内ナンバーワンブランドといえるユニクロでさえそうだ。

現在、ユニクロは「イージージーンズ」というソフトでストレッチ性の高い生地を使用したジーンズを発売している。

そのソフト感、ストレッチ性はほとんどスエットやTシャツなどと変わらないので、ニット(編み物)のように感じられる。
生地の裏面を見ても、パイル状っぽくなっているので、トレーナー類と同じ裏毛生地なのかと見誤ってしまう。

しかし、このイージージーンズに使われている生地はれっきとした「織物」なのである。
経糸と緯糸で構成された織物だ。
純然たるデニム生地ではなく、二重織の技術を応用したデニム風織物というのが正式な生地の説明になる。

それをユニクロでさえ「ニット生地」と認識しているようで、「裏地パイル」と説明してしまっている。
それは弛んだ緯糸で決して、タオル生地のような「パイル」ではない。

ユニクロのイージージーンズ

イージージーンズに使用されている生地の裏面が白くて裏毛状になっている理由は、

1、二重織なので表面と裏面に出てくる色や柄が異なる
2、ループ状に見えるのは緯糸が弛んでいるから。
それは不良品ではなく、ストレッチ性とソフト感を出すためにわざと緯糸を弛ませている

というこの2つである。

実は同じ技法で織った二重織り生地でも緯糸をもっとピンと張ることで、裏面の見え方はまったく異なる。

過去の他社製品に使用された二重織りの裏面

しかし、ピンと張るとソフト感とストレッチ性は幾分か損なわれる。

結局どこまでソフトにするのか、ストレッチ性を高めるのか、で緯糸の張り具合を変えるのであり、それを考えることが本来の商品企画である。

ソフト感とストレッチ性を幾分か殺しても良いのか、逆に高めたいのか。
ならそれを実現できる生地はどのように織るのか。緯糸は弛ませるのか張るのか。

それが企画の仕事だ。

ユニクロでさえ見分けができないということは、そういうことをすべて生地問屋や生地メーカー、製造業者に丸投げしているから、わからないのである。

かくして、安易な誤った説明が流布され、消費者も混乱するし、メディアも混乱する。
だからファッション、衣料品業界は「ええかげん」とみなされがちになる。

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アパレル業界は丸投げ体質か?
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業界人ですら衣料品への知識が浅いのだから、消費者の知識はさらに浅くて当然

 断続的に売り場に立っていると、毎日必ず着用しているものなのに、一般消費者は衣料品に関する知識は驚くほど持ち合わせていないことがわかる。

いわゆるファッソニスタがいうようなテイストやらデザインやらシェイプやらに関してではなく、生地に関することだったり洗濯に関することだったりで、こちらの方はファッソニスタの御託とは異なり、生活とは密接にリンクしているはずなのだが。

先日、50代後半と思われる黒で統一したモードっぽい服装をしたご婦人が商品を買った。
非常に言葉遣いも丁寧な方だった。
買ったのは、いわゆる真っ黒のストレッチパンツである。

話は逸れるが、真っ黒のストレッチパンツとストレッチのブラックデニムパンツは、厳密にいえば生地が異なる。

生地の知識を持ち合わせている方は読み飛ばしてもらいたい。

通常の真っ黒のストレッチパンツもストレッチブラックデニムパンツも「綾織り」という織り方で織られた生地である。
織り方としては同じである。

しかし、真っ黒のストレッチパンツは経糸(たていと)・緯糸(よこいと)ともに黒い糸で織られているが、ブラックデニムは、経糸が黒・緯糸が白である。

真っ黒のストレッチパンツに使われる生地は、ツイルとかカツラギとか呼ばれる綾織りの生地が多い。

通常のストレッチパンツは綿が主体でそこにストレッチ素材が交織されている場合が多い。
表示としては綿98%・ポリウレタン(正確にはポリウレタン弾性繊維)2%くらいのものが主流だ。

そのご婦人が買ったのは、まさに綿98%・ポリウレタン2%という組成の黒いカツラギパンツだった。

そのとき、ご婦人がこう質問された。
「このズボンは洗濯すると色落ちしますか?」と。

恐らくブルーデニムのように、他の洗濯物に色移りするかという意味だったと思うのだが、カツラギの多くは移染しにくいので、そのように答えた。

しかし、質問にはもう一つの意味もあったようで、「洗濯をすると、ブラックが薄くなりますか?」との意味も含んでいた。

こちらにはちょっと驚かざるを得なかった。

なぜなら、50代後半ということはこれまで何度も様々な衣服を洗濯してこられたはずだ。
(もしかしたら超金持ちで、「アテクシは洗濯なんてしないわ、毎日全部クリーング屋に任せています」という人なのかもしれないが)

綿主体の衣服は洗濯を繰り返せば徐々に色落ちするのは、少し洗濯をしたことがある人ならそれは常識として持ち合わせているはずである。
にもかかわらず、それを質問してくるということは、それを認識せずにその御年まで生きてこられたということになる。

これも自分の経験からだが、綿素材で洗濯を繰り返せば徐々に色落ちすることは避けられない。
ポリエステル素材なら家庭洗濯を繰り返しても色落ちはほとんどない。

洗濯層の中で他の衣類と擦れて摩擦することがさらに色落ちに拍車をかけているといえる。
だから、ネットに入れて洗濯をすれば、色落ちは幾分かは緩和できる。

だから、黒や紺などの濃色の綿素材衣服は必ず洗濯ネットに入れて洗濯をするようにしている。

そのように伝えた。

それにしても、一般消費者の生地・洗濯に関する知識のなさには驚かされる。
一般消費者が悪いのではなく、それを伝えてこなかった・上手く伝えられなかった業界に責任があるのではないかと思う。

家事を得意とする方は、そういう法則を自分で発見されているようだが、それはどちらかというと少数派だ。
多くの人は、綿素材で洗濯を繰り返せば色落ちするかどうかすら知らない。

そこらあたりを啓蒙するような活動を業界がしてみてはどうだろうか?
モンスタークレーマー対策としては、すべての衣服は洗濯できないという表示にするに越したことはないのだが。

家庭での手入れのやり方がわかると、もしかしたら衣料品の購入も多少は増えるかもしれない。

自分も含めて業界にいる人の知識のあやふやさも業界の衰退を早めているのではないかとも思う。

先日も有名なファッションブロガーが、織物(布帛)と編み物(ジャージ)を間違うということがあった。昨今では、洋服づくりに直接携わっているデザイナーや企画担当者までがこの手の知識を持ち合わせなくなっている。

スポーツウェアメーカーの若手社員が、業界紙記者に対して「ポリエステルって何ですか?」と質問してきたこともあるくらいだ。

自動車やらパソコンやらの業界でそういうことはあるのだろうか?
傍から見ていると、衣料品業界よりは随分と各人がしっかりした商品知識を持ち合わせているように見えるのだが。

オムニチャネルが云々とか、サステナビリティがどうのこうのとかエシカルがナンタラとか、そんな宙に浮いたようなことよりも、崩れかけた足元を固め直す方が先決ではないのか?
発射する土台が崩れかけているのに、空中戦ばかり志向していても飛び立つことすらできないのではないか。

業界が衰退しているのは、土台となる商品知識が崩れかけているからではないのか?

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「吸水速乾」を「部屋干し速乾」と言い換えると新しい需要が生まれた

 そろそろ暑くなってきた。嫌な季節が始まった。
筆者は暑さが苦手である。できれば夏がない方が良い。
そうはいっても夏はやってくるから、我慢するしかない。

暑くなると、各社はこぞって「吸水速乾機能」を持った洋服を発売するが、個人的にはあまりこの機能が夏に必要だとは思っていない。

というのは、以前にも書いたが、吸水速乾機能を持った肌着を着用するとたしかに汗は吸うが、逆に吸い過ぎて肌着の上に着たシャツが汗でびしょ濡れになってしまうからだ。
吸水速乾肌着を着るなら、上に着るシャツもジャケットもすべて吸水速乾製品でそろえないと意味が無い。

しかし、吸水速乾機能は重宝であることは間違いない。
洗濯をすると乾くのが早い。

ありふれた機能に対して、別の角度からの見方を与えると、それは新しい商品になり、新しい需要が生まれる。
ありふれた吸水速乾機能でも、「洗濯をしたら早く乾きます」という売り方なら新しい需要が生まれる。

こういう売り方が上手いと思うのは、「ディーパーズウェア」ブランドを展開するオールユアーズである。

それについて、ウェブメディアのインディペンドに先日寄稿した。

「必要」に気づき、「形(かたち)」にする “ALL YOURS”
https://independ.tokyo/?p=3091

ブランド立ち上げ時から親しくさせてもらっているが、このブランドはそういう「売り方」が上手い。
このブランドのヒット商品に速乾の「ファストパス」というラインがある。

キャッチコピーは

「真冬に部屋干ししても3時間で乾きます」

というものである。

IMG_2584

(ファストパスのツナギ)

真冬の部屋干しにそれほどの需要があるのかと疑問を感じたが、都心で独り暮らしをする人や、二人暮らしの共働き夫婦などは、洗濯物は部屋干しすることが多いから、ありがたい機能ということになる。

祖父母や大きくなった子供と同居していれば、洗濯を外に干しても雨が降ったり日が暮れりすれば、誰かが取り入れてくれる。
しかし、一人暮らしや共働き夫婦はそうはいかないから、必然的ににわか雨なんかを警戒するなら部屋干しすることが増える。

真夏だと室温も高いから部屋干しでも5時間くらいすれば洗濯物は乾くが、真冬はそうはいかない。
たまに自分も冬の雨の日に部屋干しするが、なかなか乾かない。

そういうときに、この機能は便利だからヒット商品になっているという。

じゃあ、わざわざ洗濯用に新素材を開発したのかというとそうではない。
実は、これは既存の吸水速乾素材なのである。

「吸水速乾素材ですよ」というと夏場しか売れないが、「部屋干し用の速乾素材ですよ」というと一年中売れる。

現在のアパレル業界に欠けているのはこの「視点の転換」「売り方の工夫」だろう。

多くのブランドは固定概念に凝り固まっているから、視点の転換なんてできずにいる。
「売り方の工夫」ということになると、規模やシステムを無視してユニクロに価格追随するか、伝わらない広告をファッション雑誌に掲載するか、どこぞのブランドみたいに低価格な日本製を打ち出すか、くらいしかない。

あとは、マニア・ニッチ層に向けた「物作りの取り組み」を過度にクローズアップするかである。

そしてそのどれもが効果が出ていない。

この4つの手法はありきたりになっており、ちょっとやそっとでは消費者の注意を喚起できない。
それはやっているブランド側が痛感しているだろう。
痛感していないとしたらそれはブランドの構成員と経営者の認識力が著しく低いというしかない。

国内のアパレルブランドの場合、粗悪品は除いて、低価格品とはいえそれなりの品質になってしまっているのだから、ミクロな縫製仕様を過度にアピールしてもよほどのマニア以外には響かない。

ありきたりな既存の「吸水速乾素材」を、新たな切り口で「部屋干し専用素材」にするような発想力、売り方を身に付ける必要があるのではないか。

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帝人フロンティアが和装向け合繊素材ブランドを発表

 先日、帝人フロンティから着物向けの機能素材ブランドが発表された。

http://www2.teijin-frontier.com/news/161115.html

「華月™」は、これまで当社がスポーツウェアやファッション素材の開発を通して培ってきた技術を活かし、それらを日本の着物と融合させることにより新たな価値を創造する和装向け機能素材群の新ブランドです。

・家庭用洗濯機で製品の丸洗いが可能
・洗濯後にノーアイロンで着用可能
・吸汗・速乾性に優れる
・着用時にシワになりにくい
・色あせ・黄変の心配が少ない
・保存時の虫くい・カビの発生などの心配が少ない

とある。
いわゆるポリエステルなどの合繊を使用した和装向けの機能素材ということになる。

斬新さや新規性に欠けることが多い帝人フロンティアとしては思い切った取り組みだと思うし、率直に評価したい。

着物を着用しない人間からすると、着物はやたらとハードルが高い。

1、価格が高い
2、洗濯、メンテナンス、保管方法がめんどくさい
3、着慣れた人は別として自分で着ることができない
4、動きにくい

などなどがあるから、個人的には一生着物を着ることはないと思う。

が、それでも和装業界として生きていかねばならない人々もいるから、やはり市場規模は最低限として現在の3000億円内外は維持しなくてはならない。
できれば、市場規模、着用人口を増やしたいのだろうが、現在のすべてを墨守したままで、市場規模・着用人口を増やしたいというのは、筆者からすれば単なるワガママにしか映らない。

先ほど挙げた1~4のうちの少なくともどれか1つは改良されなくては、市場規模・着用人口は絶対に増えない。

今回の帝人フロンティアの提案は、2を解決することができる。
もしかしたら1も解決できるかもしれない。

ちなみに帝人フロンティアは

「華月™」は 2017年夏の浴衣用途から展開を開始し、初年度(2017年度)は3千万円、2018年度は6千万円、2020年度には1億円の売上を目指します。

としており、まあ、順当な規模設定ではないかと思う。
それほど巨額に売れる要素が着物というジャンルにはない。

以前にもこのブログで何度か和装のことを書いているが、着用しない筆者からすると、シルクは高級で単価が高い反面、「洗濯、メンテナンス、保管方法が煩雑」というイメージがあり、よほどの数寄者でなければわざわざ手を出そうとは思わないと感じる。

じゃあ、シルク以外の素材、例えば綿や合繊などを使った着物をもっと売り出せばどうかと思って書いてみたのだが、案の定、和装関係者から「昔から合繊着物はあったが、売れなかった」という書き込みがあり、その行間には「だからシルクが売りたい」という思いがにじみ出ていて鼻白んだ。

まだ、こんなことを言っているのか、往年の栄華が忘れらないんだな。あほくさ。

というのが筆者の感想である。

今までの着物と商法では売れなくなっているんだから、商材か売り方かを最低でもどちらかを変えなくては絶対に売れない。個人的には両方を変えるべきだと思っているが。

ところで、シルク以外の素材の着物は昔から売れなかったというのは本当だろうか?
矢野経済研究所のこんなグラフがある。

平成25年までしかないが、26年、27年も着物市場規模はそれほど変わっていないのでほぼ横ばいが続くと推測される。

kimono-gyoukai-yanokenkyuujo

正絹の着物の売れ行きはピーク時は1兆2000億円を越えていたが、今は2000億円にまで低下している。実に84%減である。

正絹以外の着物の売れ行きはピーク時は2000億円強しかなかったが、今でも1000億円くらいはある。こちらも減っているが50%減程度にとどまっている。

正絹と正絹以外の着物の売れ行きはピーク時だと6倍前後あったが、今では2倍にまで差は縮まっている。

個々の店やメーカーの事情は異なるかもしれないが、業界全体で見た場合、異素材(正絹以外)の着物の売れ行きはたしかに減っているが、正絹の着物よりも減り幅が小さく、現在では正絹着物の売上高との差はかなり縮まっているといえる。

これでもまだ「異素材着物は今も昔も売れない」といえるのだろうか。

それほどに正絹着物が素晴らしいならなぜ売上高84%減になるほどに消費者に見放されているのか。

このグラフは売上高なので、正絹着物の単価の高さと異素材着物の安さを考慮すると、もしかしたら販売枚数は2倍も差がないかもしれない。販売枚数の差はもっと小さいのではないかとも考えられる。

「正絹のスバラシサガー」「本物ガー」という人々は、どうしてそこまで販売量が減ったのかを冷静に直視する必要がある。

やたらと高い着物の入門ハードルを下げることが、着用人口の増加に寄与すると思うが、このまま商業的には滅んでしまって無形文化財のような存在を業界が目指したいなら、それはそれで一つの選択だろう。筆者のような部外者がとやかく言うことではない。

しかし、もっと売りたい・着用人口を増やしたいと本気で考えるなら、帝人フロンティアのようなアプローチも考えるべきだろう。

繰り返すが、「今までのままで売れたい」というのは根拠なき願望で、実現不可能な夢物語としかいえない。

着物 東レシルック 白無地 バイアス 半衿
京都半衿風呂敷和装卸協同組合




「使用素材」や「製造方法」だけに頼った売り方では通用しない時代

 固定客、ロイヤルカスタマーを獲得できているアパレル企業、ブランドは別として、これまで通り一遍の「素材」や「製法」の打ち出しだけで価値を演出してきたアパレル企業、ブランドは取り巻く状況が年々厳しさが増している。

例えば、先日のファーストリテイリングと島精機製作所による合弁会社設立である。
これによって「ホールガーメント」という「製法」だけで商品価値をアピールしていたブランドは軒並み苦戦することになるだろう。

また、ハリスツイードの雑貨がついにダイソーにも登場した。

ダイソーにあの「ハリスツイード」がついに登場しました!~お値段もお手頃価格で手に入りやすい~
http://more.hpplus.jp/morehapi/article/sachiko/fashion_news/16138?page=1

キーケースや財布などサイズの小さな雑貨に限定されているようで、価格は500円だという。

ハリスツイードは、しまむらでも靴やバッグなどの雑貨に使用されて、にわかに大衆感が急上昇していたが、このダイソーとの取り組みはそれを極限まで推し進めることになってしまうだろう。

もちろん、高額なハリスツイード商品とは異なるし、何よりも小サイズ雑貨(ダイソーの場合)や靴やバッグ(しまむらの場合)での取り組みだから生地の使用量(用尺)は少ない。それゆえに価格も抑えられるのだが、一般消費者にはそんなことは知られていない。
あの高額な商品もダイソーの財布も「同じハリスツイード」として映ってしまう。

だから、「単にハリスツイードだから」という理由だけで高額な値段をつけていたブランドや、そういう売り方しかできなかった店の商品は軒並み売れにくくなるだろう。

別に客は「ハリスツイード」という生地を買いに来ているわけではない。
店やブランドのファンだったり、製品のデザインやコーディネイト提案などに惹かれるのが購入動機となる。
ハリスツイードという生地ブランドは最後にそれを後押しする要素である。

そういう売り方をしているブランドや店の影響は軽微だろうが、逆に「ハリスツイード」を前面に打ち出して「とにかくハリスツイードだからイケてるんですよ」なんて売り方をする店やブランドはダイソーの使用でとどめを刺されるのではないか。

カイハラデニムだって同じだ。
もちろんカイハラが製造するデニム生地にもグレードがピンキリである。
厚さだとか色合いもさまざまあり、ブルーだけで数百種類がある。

しかし、一般消費者にはそんなことはあまり知られていない。
「カイハラデニムだから良いんです」なんて売り方しかできない店やブランドは、ユニクロに脅かされるのは当然だろう。

コーンデニムだってGAPやグローバルワークに並んでいるし、しかも期末に投げ売りされる。

「コーンデニム使用」ということだけを前面に打ち出しているブランドでは売れなくなるのは当たり前である。

カシミヤだって同じだ。
グレードはピンキリだし、製品の良し悪しもピンキリだが、それでも「カシミヤだから良いんです」としか言えないようなブランドや店はユニクロやらGMSやらの製品と比較されてしまうことになる。

ダウンジャケットしかりである。

すべての製品はコモディティ化する。衣料品も例外ではない。

まだまだ素材ブランドは残っている。クールマックスだとかコーデュラナイロンだとかゴアテックスだとか。
しかし、いずれはコモディティ化すると考えておいたほうが良いのではないだろうか。

「コモディティ化反対」とか「ファストファッション不買」とかそんなキャンペーンをいくらやったって無意味である。
自動車もテレビも冷蔵庫も洗濯機もパソコンもスマホもすべてコモディティ化して大衆に普及した。
どれもこれも開発当時に比べると販売価格は何分の1にまで低下している。

なぜ、衣料品だけが例外に成りうると考えられるのか、その思考方法がまったく間違っている。

コモディティ化に巻き込まれないためには、ブランドなり店なりがロイヤルカスタマーを作るほかない。
その手法は千差万別だろう。それぞれのブランドや店に適した手法があるはずだ。

その手法は何なのかを各社・各ブランド・各店舗が考える必要がある。

もう「素材」や「製法」だけに頼った売り方は通用しない。
ダイソーのハリスツイード雑貨はそのことを象徴しているのではないか。





伝統工芸を守るために伝統工芸を変化させてみてはどうか?

 先日、西陣絣なる生地があるのを初めて知った。
通常、西陣というと西陣織が思い浮かぶのだが絣があるのは知らなかった。
西陣らしくシルクでの絣だということである。

で、知名度が低いのと比例して作り手が激減しているそうで、絣加工をする職人は7人くらいしか。
年齢は65歳以上ばかりで、40代の職人が一人だけしかいないそうだ。

このままでは滅んでしまうということで、従来の和装用途以外の商品開発が進められている。

http://itohen-univers.com/

メインはストールで、変わり種としてはクラウドファンディング用としてクラッチバッグも提案されている。

西陣絣に限らず、他の伝統工芸でも伝承者が減っているのはそれで食える可能性が低いからだ。
収入がほとんどないことが容易に予想される分野にわざわざ足を踏み入れる人はあまりいない。

伝統工芸が伝承者を育てていこうと思えば、それを「食える産業」にする必要がある。

今まで通りの商品や用途に期待していても無駄である。回復できるならとっくに売れ行きは回復しているはずだ。
ここまで衰退するのに何十年もかかっているのだから、今までの商品や用途で売上高が回復できるならその間に回復できていたはずである。できなかったということは今までの商品や用途ではもはや需要は増えないということである。

このストールやクラッチバッグはその第1歩と言えるだろう。

ただ、個人的に言わせてもらうと、シルク100%のストールとクラッチバッグは広く需要を喚起するにはイマイチ弱いと思う。
理由はシルクという素材である。

シルクという素材は昔から使われてきた素材だが、現代生活において一般庶民が使うにはちょっと食指が動きにくい。個人的な独断と偏見だが、シルク素材のアイテムは和装にせよ洋装にせよ、ちょっと買う気が起きない。
理由は保管とメンテナンスがめんどくさいからだ。

綿や麻のように気軽に洗濯機で洗濯ができない。
また保管にも気を付けないと虫に食われる。
洗濯をしない場合、汗や皮脂による変色が必ず起きる。
ストールは首筋に巻くため、汗と皮脂がかなり付着する。
気軽に洗濯できないと、変色するのは必至だろう。

また摩擦にも弱いため、常に手のひらで摩擦されるクラッチバッグには向かない。

ユニクロがシルクを大々的に提案したことがあったが、今は継続していない。
価格が高かったわけではない。2900~5900円程度だったから、高すぎて敬遠されたのではないと思う。

継続していないということは売れなかったと考えられるが、売れなかった理由は洗濯・保管が面倒だったからではないかと思う。

となると、西陣絣以外でも絹織物系はここをクリアしないと大衆向けの商品にはならないということである。

ここから3通りの考え方ができる。

1、これまで通りの技法とシルク素材によって、洋装向けの新商品開発を続ける
2、従来技法のエッセンスだけを用いて、扱いやすい素材に付与して、新商品開発を続ける
3、技法も商材もこれまで通りで何も変化させない

である。
3は論外だろう。早晩絶対に滅ぶ。

日本人の多くは1を選ぶと思うのだが、筆者は2の方法を選んだ方が効率的ではないかと考える。

例えば、綿や麻、ポリエステルやナイロンといった耐久性があってメンテナンスも楽な素材に乗せ換えて商品開発をしたらどうだろう。
それはもちろん、純粋な西陣絣ではなくなるが、伝統的な西陣絣はハイエンドモデルとしてそのまま細々と、新商品で儲けた金で作り続ければ良いのではないか。

伝統的な西陣絣を保存するために、新商品で金を儲けるというスタイルがもっとも効率的で現実的ではないかと思う。

繊維以外の他の伝統産業も同じようにしてみてはどうか。
何も変化させたくない人はそのままでいれば良いと思うが、今よりも売りたいと考えるなら、伝統的技法を少しだけ用いた新商材を開発すべきだと思う。

銅板を槌で叩いて鍋を作るという伝統工芸があるが、その技法は保存して伝承すべきだと思うが、新商品はその技法をフルに活用する必要はない。何かエッセンスだけを用いて製造してはどうか。そのほうが製造コストも安くなり、販売価格も下げられる。

いくら伝統技法だからといって銅の鍋が3万円とか5万円もしていたら、好事家や数寄者以外はあまり買わない。必然的に需要は増えない。

需要を増やそうと思うなら、簡易版をもう少し低価格(激安ではなく)で販売してみてはどうか。

もちろん鍋以外の商品も開発してだ。

こういう考え方には反対が多いのは知っているが、従来通りに何も変わらないままなら需要が増えることはない。そこに「臭い物作り物語」を100倍盛りにして売り出そうというのだろうが、要らない物は要らない。

例えば、デニム生地だが、国内でデニム生地が製造できるようになったのは1970年代である。
備後絣製造工場から発展させてデニム生地工場となった。
このときあくまでも「ワシらは伝統の備後絣を墨守し続ける」と言っていれば、今頃はデニム生地も作られていなかっただろうし、この工場はとっくにつぶれていただろう。

伝統を基にそれを変化工夫させることが本当の伝統ではないかと思う。
そして、そこで稼げた収益で、伝統的な技法を守り、伝統的な商材を作り続ければ良いのではないかと思う。

まあ、そんなわけで西陣絣の今後の変化に期待したい。




圧倒的にコストパフォーマンスが高い「グンゼYGカットオフ」

東京に2泊3日で出張した。
最終日の8月12日は最高気温が31度か32度くらいで、朝晩はかなり涼しかった。
といっても上着を着るほどではないが、日が暮れるとあの嫌な熱気はないくらいだった。

関西に帰ってくるとまだ猛暑が続いている。
おそらく8月に入ってからずっと35度を越えているのではないか。
暑さが苦手なので早く涼しくなってもらいたい。
暑いとただでさえ短気なのにさらにイラっとする。

それはさておき。

出張の間、何を着ようかと迷って、ちょっと試してみたら非常に具合の良かったことがある。
大量の汗をかくので、夏の間、ポロシャツやTシャツを1枚で着てうろうろすることは個人的には避けたい。
発汗は止められないから、汗ジミが極力表面に目立たないようにしたい。

重ね着をすればその問題はクリアできるが、普通のTシャツやポロシャツを重ねると生地が厚すぎて、ゴワつくし圧迫されて窮屈になる。

手元にあるグンゼYGのカットオフを下に着用してその上にTシャツを重ねてみてはどうかと思いついた。

早速、出発前に実験をしてみた。
カットオフのグンゼYGを着た上から普通のTシャツを着てみた。

ちなみにグンゼYGのカットオフは通常半袖タイプと、半袖の袖丈がさらに短いタイプがある。
筆者がグンゼからサンプルとしていただいたのはさらに袖丈が短いタイプである。

首回り・袖口・裾がすべて切りっぱなしなので上にTシャツを重ねても、段差がない。
袖も短いし、首回りのVも深いので、外から見えることもない。
おまけに生地が薄いので重ね着しても圧迫感がない。

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本来はクールビズ用としてドレスシャツの下に着用するために開発された商品だが(ドレスシャツは素肌に着るべしという五月蠅い輩がいるから)、カジュアルTシャツの下にも着用できることが分かった。
あまり汗をかかない人は必要ないが、汗っかきの人間にとってはTシャツやポロシャツを1枚で着て外回りをするのはなかなか恐怖を感じるのである。

このグンゼYGカットオフシリーズの価格は1620円(税込み)となっており、オッサン連中御用達のスーパーマーケットの3枚1000円とか3枚990円シャツに比べると幾分高い。

しかし、個人的にはこの商品はコストパフォーマンスが高いと評価している。

同じ、グンゼの「シーク」という百貨店向け商品がある。
カットオフの技法はこちらの「シーク」のほうが早くて、YGカットオフはシークのセカンドラインのような位置づけにあると見ている。
シークは税抜きで2800円くらいである。

YGカットオフはその半額だからかなりのコストパフォーマンスだといえる。

切りっぱなしということになると、ユニクロのエアリズムシームレスもある。
これと比べてみる。

まず、ユニクロのエアリズムシームレスはネーミングがダメだ。
ネーミングに偽りありだ。
シームレスとは「縫い目がない」という意味だが、裾と肩に縫い目がある。
これで「シームレス」を名乗るのはいかがなものか。
エアリズムカットオフに改名したほうが良いのではないか。

グンゼYGカットオフはたしかに3枚1000円の肌着シャツに比べると高い。
しかし、ユニクロのエアリズムカットオフシームレスは1枚税抜きで1500円もする。
税込みで1620円である。

グンゼYGカットオフと同じである。
仕様でいうなら、グンゼYGのほうが裾も切りっぱなしとなっており、切りっぱなし比率はこちらのほうが高い。
仕様だけでいってもこちらのほうがコストパフォーマンスに優れている。

次に素材面を見てみよう。

エアリズムカットオフシームレスはナイロン84%・ポリウレタン16%という組成である。
はっきり言って合繊100%である。

グンゼYGのほうは、通常版のカットオフが綿90%・ポリウレタン10%、短袖版は綿55%・ポリエステル30%・ポリウレタン15%という組成で、綿比率が圧倒的に高い。
とくに通常版はシークと同じ組成である。

綿素材が一概に良いとは言わないが、合繊100%はやはり吸水性に難がある。
合繊は基本的には汗を吸わない。業界では「汗を落とす」と表現する。
合繊が混紡されているTシャツは普通に使用するが、合繊100%のTシャツはちょっと日常使いはしたくない。
せいぜい、運動するときのウエア止まりである。

素材面から考えてもYGの方が圧倒的にコストパフォーマンスが高いといえる。

エアリズムの価格が圧倒的に安いなら、エアリズムを着用するという選択肢もあるが、価格が同じなら絶対に買わない。

とくに中高年は男女ともに盲目的ともいえる天然素材信奉者が多い。
中高年男性(通称:オッサン)がもし、アウターに響かない肌着をほしいと考えるなら、価格から考えてもグンゼYGカットオフをお勧めする。

これまでは「カットオフの肌着なんて真夏にドレスシャツを着る人向けだろ?」という偏見があったが、今回試してみて、Tシャツやポロシャツの下にも着用できることが分かった。
来年からはTシャツの下として大いに活用したいと思う。

それにしても、グンゼYGカットオフを見ていても「良い物が必ず売れる」とは限らないことがよくわかる。
グンゼYGカットオフが売れていないというわけではない。
けっこうな売れ行きだと耳にしているし、Amazonでも一時期は品切れだったとも聞いている。

しかし、ユニクロのエアリズムに比べると圧倒的に知名度が低く売り上げ枚数が少ない。
これはひとえに売り方・見せ方の差だといえる。
物性面の品質でいえば縫製仕様・使用素材ともにグンゼYGカットオフが圧勝である。
それでいて価格は同じだ。

モノヅクリガーの人たちの理論なら、グンゼYGカットオフが圧倒的に売れねばおかしいということになる。
だが、結果は逆だ。
だから、物作りを得意とする会社は売り方・見せ方を工夫すべきなのだと思う。
そうでなければいつまでもユニクロやグローバルSPA、ファストファッションの後塵を拝し続けることになる。
それで構わないのであれば、いつまでも「物作りのロマン」とやらにこだわっていれば良いと思うが。




百貨店ブランドはかつては圧倒的に高品質だった

 基本的に洋服は自分の収入から手の届く範囲で買えば良いと思っているし、今の百貨店ブランド・ファッションビルブランドは、郊外型ショッピングセンターに入店している低価格ブランドの商品と見た目も品質も変わらないと思っている。

一方、本当に高品質の洋服を見たければ、それはもはやラグジュアリーブランドにしか存在しないとも思っている。

同年輩で、素材関連・OEM生産関連の仕事をなさっている社長がいる。
素材のことも縫製のこともアパレルの動向のこともお詳しい。

その人が、以前「本当に品質の良い生地が使われた洋服が百貨店やファッションビルで売られていた時期は20~15年前で終わった」というようなことを言った。
これはその通りだと思う。

20~15年前というと95~2000年くらいということになる。
こんな筆者でも2005年くらいまでは夏冬のバーゲン時には百貨店ブランドやファッションビルブランドで洋服を買っていた。
2005年当時、ショッピングセンターがあちこちにでき、各社は低価格ブランドを開発しており、それを見たり触ったりしたが、圧倒的に見た目も品質も違っていた。

さすがに90年代に買った服はほとんど残っていないが、2000年くらいに買った洋服は何枚か残っている。
元値が高かったというのもあるが、デザイン、品質ともに気に入っておりなかなか捨てるに捨てられない。
2010年以降に買った低価格ブランドの商品とは比べ物にならない。
まあ、ジャケット、コート類はアームホールが太すぎるので思い切って捨てたが。

例えば、今年3月末で廃止となったワールドのボイコットというメンズブランドがある。
OZOC、インディヴィと同じグループで展開されたメンズブランドである。
当初はタケオキクチとヤング向けのボイコットとして上手く住み分けていたが、タケオキクチにヤング向けや低価格ラインができるようになって市場でのポジショニングが被さってしまい、存在意義をなくした。

このボイコットのTシャツを今でも捨てられずに持っている。
もちろん傷まないように登板回数は減らしているが。

2004年にはすでに着用していた記憶がある。
なぜなら、当時これを着用していて「胸のシルバーのロゴがギャル男みたいですね」と言われたことがあるからだ。
こんな風貌のおっさんがギャル男みたいなTシャツを着ていたら気味が悪いだろう。(笑)
本人はそこまでギャル男みたいだとは思っていないのだが。

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おそらく2002年か2003年に買ったような気がする。
定価も買値も覚えていないが、阪急百貨店うめだ本店の催事場で投げ売られていたのを買った。
当時は夏冬のバーゲン終了時に、催事場で一段の投げ売りが行われていた。
元値が4000~5000円くらいで、それを1500~2000円で買ったのではないだろうか。

で、このTシャツの素材がかなり品質が高い。
6オンス前後の分厚さがあると思うのだが、その割にはソフト感がある。
襟の部分が色落ちしているが、全般的には染色堅牢度も高く、10年以上洗濯を繰り返しているがそこまで色落ちしていない。

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(襟の色落ち)

そして何よりうれしいのが、どんなに大量の汗をかいても、乾いたときに汗のあとが白く浮き出ないことである。
黒とか紺のTシャツ類は汗が乾いた後に白く塩が浮き出ることがある。
あれは見苦しいので、真夏に黒・紺のTシャツを着用することを避けているのだが、それがない。

同じ黒・紺でも、不思議なもので塩が白く浮き出るTシャツと浮き出ないTシャツがある。
一体、素材にどういう違いがあるのだろうか?
ここの詳細な説明を聞いたことがないので、ご存知の方はぜひ教えていただきたい。

買った当時は、「やっぱりブランド物は違う」と感じたのだが、今の百貨店ブランド・ファッションビルブランドにここまで感じさせる商品はほとんどない。
下手をするとユニクロや無印良品の方が素材が高品質だったりする。

末期のボイコットがマルイやらキューズモールの催事場で投げ売られていたが、ひどいものだった。
冬物だが合繊100%の安物くさいセーターとかおざなりな綿素材で作られたカジュアルパンツとか。
定価設定が高すぎるのではないかと感じた。あんなセーターを7000円とか8000円で売っていたらぼったくりも良いところである。

同じころに買ったジュンメンのボーダーTシャツがある。
おそらく2000~2002年ごろに買ったと記憶している。
これは今でいうビッグシルエット気味で、顔デカで肩幅の広い筆者が着ると、単なるゴツイおっさんみたいになるので部屋着として使っているが、これも肉厚生地で、染色堅牢度が高く、型崩れもしない。
ほとんど色落ちしていない。

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これは阪神百貨店で買った。おそらく値引きされて1500~2000円くらいだったと記憶している。

余談だが、90年代後半に女性を中心にチビTブームが2年ほどあった。
いわゆるSサイズとかXSサイズのTシャツをピチピチにして着るのだが、これがメンズにも波及した。
メンズのトップス類も2~3年くらい小さめが主流で、2000年ごろからそれが終わって、通常サイズに戻った。
このジュンメンのTシャツはそのころのもので、2004年からまたディオールオムのブームによってタイトフィット主流へと戻ってしまう。

ビッグシルエットが市民権を得るのは2014年以降のことである。

百貨店やファッションビルで手の届く価格で上質素材の商品が手に入ったのは、今から思うと幸せな時期だったのだと思う。
逆に今の30代半ばより下の世代は、そういうものがラグジュアリーブランド以外で手にすることができなくなったのは気の毒だと思う。

2008年ごろから原材料費はすべて上がり続けている。
比較的安定しているのが綿素材と合繊だけで、ウール・獣毛類、レザー、ファーはすべて値上がりし続けている。(綿は2011年ごろに高騰したがその後、もとに戻った)
今後原材料費が高くなることはあっても安くなることは考えられないから、素材クオリティの低下はまだまだ続くと見た方が良いだろう。

低価格ブランドとの違いをどこで打ち出すのか。百貨店ブランド・ファッションビルブランドには苦しい状況が続く。




低価格ブランドがスーピマコットンTシャツを製造販売できる理由

 ユニクロでスーピマコットンTシャツが販売されていることはよく知られている。
そういえば、何年か前は、ユニクロでプレミアムコットンのTシャツやポロシャツが売られていたが最近は見かけない。それがスーピマコットンに代わったということだろうか?

さて、夏のバーゲン売り場を歩くと、今夏のメンズブランドのTシャツは素材に着目したものが多いことに気が付く。

ユニクロと同じくスーピマコットンをTシャツやポロシャツに使用しているのがグローバルワークである。

またコーエンはギザコットン、アメリカンコットンを使ったTシャツを販売している。

いずれのブランドも低価格の範疇に属しており、その差別化の一端として希少性の高い(といわれる)素材を使用することになったのだろう。
また、Tシャツというアイテムは、細部はさまざまあるが、見た目はほとんどどのブランドもあまり変わらない。
明らかに差別化を訴えるのはこれまで色・柄だった。
しかし、色・柄の差別化も行きつくところまで行っているから、次の差別化の手段としては、使用素材での差別化ということになったのではないかとも思う。

そういえば、少し前まで無印良品では新疆綿のTシャツやポロシャツが販売されていた。

ところで、スーピマコットンとはなにか?
コットンUSAのページから引用する。

http://www.cottonusa.jp/

アメリカ綿は品質の良さで知られていますが、

なかでももっともグレードの高いのが「スーピマ綿」です。

スーピマは、“Superior Pima(高級ピマ)”を略したもの。

もともとアメリカ大陸では、南米ペルーでピマ種の綿花が

栽培されていました。

その綿花を中心に品種改良されたのが

スーピマ綿で、この名称は、アメリカスーピマ協会の登録商標になっています。

スーピマ綿は、繊維長35mm以上の超長繊維綿です。

繊維が細く長く、しかも長さが均一で、強く、耐久性に優れています。

また、しっとりと柔らかい肌ざわりはカシミヤに匹敵すると言われているほど。

製品になったときの独特の光沢も魅力です。

とのことでカシミヤに匹敵するかどうかは置いておいて、スーピマコットンを使った生地は光沢がありソフトなことは事実である。

ここで、綿についてのおさらいだが、コットンは綿花から作られる。
採取されたばかりの綿花はタンポポの綿毛みたいな感じである。
その綿毛みたいなのを紡いで(これが紡績)、綿糸にする。

この綿毛みたいなものの1本当たりの長さを繊維長(せんいちょう)という。
繊維の長さだから繊維長というわけだ。

で、綿花の種類や栽培する地区の気候によって繊維長の長さは異なる。
アメリカのピマ綿はもともと繊維長が長かった。
南米のアスペロ綿は繊維長が短いことで知られている。

繊維長の長い綿を長綿(ちょうめん)と呼ぶ。
スーピマはそれをさらに長くしたから超長綿(ちょうちょうめん)と呼ばれる。

筆者の入った業界新聞は素材分野が強かったし、筆者も入社当初は紡績各社を回ったこともあるので、
長綿とか超長綿とかいう言葉を一番最初に覚えた。
文字で書かれるとなるほどと思うのだが、一番最初に音だけで聞かされたときは、チョウチョウメンは蝶々綿かと思った。

綿花は一般的に繊維長の長いものほど高級とされる。
理由は、それを使って生地を作るとソフトで光沢感があるからだ。
また昔は繊維長の長い綿の存在が希少だったということもある。

だからスーピマは長い間、高級綿とされていたということとである。
コーエンのTシャツに使われているギザ綿も同じ超長綿である。
スーピマがアメリカなら、ギザはエジプトの綿花である。

じゃあどうしてユニクロはスーピマコットンを使ったTシャツを1000円で販売できるのか。
そんなに希少だというならユニクロだけでなくグローバルワークでも使えるのか?
コーエンがなぜギザ綿を使えるのか?

もちろん、ユニクロが想像を絶するほどの大量生産をしているから、一枚当たりのコストが下がってその値段で売れるという背景はほかのアイテムと変わらない。

が、以前、カシミヤニットでも書いたように、材料そのものが高級でもその使用量さえ少なくすれば比較的低コストで製造することができる。

綿花1グラム=10円だったと仮にする。

これを100グラム使ってTシャツを作ると、生地代は1000円になる。
一方、30グラムだけを使ってTシャツを作ると生地代は300円で済む。

当然、100グラム使って作られたTシャツは生地が肉厚だが、30グラムのTシャツは生地が薄くなる。

カシミヤだってシルクだって同じやり方で生地代を抑えることは可能だ。
ギザ綿だって同じ理屈だ。

筆者がユニクロのスーピマコットンTシャツを見ると、明らかに生地が薄い。
プレミアムコットンを名乗らせていた過去の商品よりも生地が薄いと思う。

もちろん1000円はコストパフォーマンスが高いのだが、多汗症か更年期障害かわからない汗っかきの筆者にとっては、ユニクロのスーピマコットンTシャツは真夏に着るには頼りないと感じる。

それにしてもスーピマコットンやらギザ綿やらを低価格ブランドまでが使う時代になった。
「こだわり素材を使っているからうちは品質が良くて高価格」なんて言っていたブランドは、より異なる打ち出しを求められることになる。
リバティプリントにしてもそうだ。ユニクロではリバティ社と契約したプリント柄シャツが1290円で投げ売られている。

もう使用素材だけで差別化、高級化できる時代ではない。
いわゆる「こだわりブランド」はそろそろ別の打ち出しを考えなくてはならない。
もしくは素材についてもっと詳細に語るかのどちらかである。

なかなかやっかいな時代になったものである。





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