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三越伊勢丹とルミネの「セール後ろ倒し」が失敗したのは当然

三越伊勢丹が来年1月の冬バーゲンは、他の商業施設に歩調を合わせて1月4日からにするということで、適切な判断だといえる。

大西洋・前社長が「セール後ろ倒し」を言い始めたが、個人的にこれは最大の失策だったと思っている。
「定価販売できる時期を長く」という気持ちと狙いはわからないではないが、時流にあまりにも逆行しすぎていた。
逆行していてもその意見が業界のスタンダードになることもあるが、セール後ろ倒し派はそのスタンダード化にも失敗して、敗退してしまったといえる。

三越伊勢丹、「冬セール」6年ぶり前倒しの衝撃
今冬は1月4日、同業他社と歩調合わせる
http://toyokeizai.net/articles/-/200578

一体何が衝撃なのかよくわからない。

大西・前社長に同調したルミネが昨年からセール開始時期を元に戻しているのには呆れ果てた。
相変わらず、ルミネは口先だけの綺麗事ばかりである。

ただそのルミネも、冬のセールに関しては昨年から通常時期に戻している。

ルミネは常に上っ面の綺麗事しか言っていない。

ところで、今年は昨年よりもインターネット通販を積極的に利用してみた。
昨年までは、ほぼガンダムのプラモデルとパソコン回りの備品をインターネット通販で買うのみだったが、今年は服や靴も買ってみた。
また、Amazon以外にAmazonのマーケットプレイスや、Yahoo!ショッピングへの出店者ページ、アダストリアなどの通販サイトも「利用するつもり」でじっくりと見てみた。

登録していたライトオンやジーンズメイトなどのメルマガも一通りは目を通すようにしてみた。
また、フェイスブックなどに出てくるドゥクラッセの広告ページも念入りに見てみた。

そうすると、さまざまな通販サイトが今秋なら11月から頻繁に値引きセールや投げ売りセールを行っていることがわかった。
また検索をすると、セールはやっていないものの、定価自体が驚くほど安い商品も数多くある。
さらにバッタ屋的に在庫品を低価格で販売しているサイトもある。

今年11月初旬にiPhoneを機種変更した。
それまで使っていた6Sから7に変更した。
その際に、丸2年間使用したスマホカバーを廃棄して、新しいスマホカバーをネットで探したが、148円送料無料とか198円送料無料というのを発見して、それを購入した。

現在は148円送料無料のを使っていて、予備として198円送料無料のも購入した。
これであと2年間は安泰である。

また、すでに11月中旬からアダストリアはネット通販で先行セールを開催しているし、シークレットセールも開催している。
ライトオンは12月8日の金曜日からネットだけで日替わりの投げ売りセールを開催している。
一昨年からの在庫品と思われる丸八ダウンが12月9日の土曜日は1日間限定で4900円にまで値引きされていた。

こういうことがインターネット上ではあちこちで起きている。
安い商品が欲しい人は当然インターネットで買うようになる。

以前にこのブログでインターネット通販利用者が予想よりも少ないだろうということを書いたが、それでもジワジワとは増えてきているし、ネット検索を使う人の比率は圧倒的に高いから、実店舗での定価販売期間をいくら引き延ばしたところで、売れるようにはなりにくい。

なぜなら、インターネット検索で低価格をいくらでも見つけられるし、買わないまでも目当てのブランドが低価格販売していることも見えてしまうからだ。

大西・前社長もルミネの社長も、業界のセール後ろ倒し論者もインターネットで買い物をしていないのではないかと思う。
もしくはインターネットで商品ページやブランドページを見ていないのではないか。

我が国の「セール後ろ倒し」論者には、フランスやイタリアが実店舗でのバーゲン開始時期や値引き率を政府が規制している状態を羨ましいと感じる人が多いようだ。
しかし、フランスやイタリアでも状況は同じで、インターネット販売はそのセール規制に引っかからないといわれている。

そうなると状況は我が国とさして変わらない。

結局実店舗でセール開始時期をいくら遅くしようと、インターネットで安く売られていれば、そちらを買うようになる。
また、三越伊勢丹やルミネがバーゲン開始時期を10日やそこらを後ろ倒しにしたところで、実際の「定価販売期間」なんてほとんど伸びない。たかだか10日ほど伸びたところで何が変わったのだろうか?
やるなら1か月とか2か月くらい後ろ倒しにしないと何の効果もない。

しかし、衣料品が売れていない状況下で三越伊勢丹もルミネも1か月や2か月も後ろ倒しにはできない。
それだけの体力がない。

また、ルミネはインターネット上では今年も11月から早々に値引き販売をしており、何を言っているのかと呆れ果てる。
実店舗にはセール後ろ倒しをいい、インターネット上では前倒しで売る。
そんな二枚舌みたいな施策でだれが納得するというのだろうか。

三越伊勢丹とルミネの「セール後ろ倒し」政策は敗れるべくして敗れたとしか言いようがない。

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三越伊勢丹HDが「ケイタマルヤマ」を手放す理由とは?
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百貨店がSPA化できない理由

百貨店の自主企画商品は過去に何度も挑戦されているが、なかなか成功しない。

https://senken.co.jp/posts/mete-171128

大手百貨店が拡大した自主商品開発は、何をもたらしたのだろうか。先行した三越伊勢丹、そごう・西武は拡大路線から一転し、この一年で整理・縮小して収益重視を徹底する。

とのことである。

そもそもなぜ百貨店がSPA化を目指したのかというと、昨年夏にインタビューした三越伊勢丹HDの大西洋・元社長は次のような意味のことを語っていた。

「大手アパレル各社が業績不振によって大規模な生産調整を行った。その結果、商品供給量が減り、都心旗艦店は別として地方の小型店にまで商品が供給できなくなり、売り場が埋まらなくなった」

売り場にスペースを開けるわけにはいかないから、例えば近鉄百貨店あべのハルカス本店ウイング館のように、「お客様なんたらカウンター」みたいなものを設置するというのも一つの手だが、「なんたらカウンター」ばかりの売り場になるのも極めて不格好である。
そうなると、量の多寡は別として、自主企画商品を開発するほかない。

また大西・元社長は、売り場を埋めること以外にも、現在の「洋服小売業」ではこれ以上の成長が望めないから、「卸売業」にも進出したいという考えがあり、自主企画商品を他社へ卸したがっていた。
伊勢丹の婦人靴PB「ナンバー21」は他社にも卸売りを行っているので、この考えのモデルケースだといえる。

一方、そごう西武が自主企画商品を強化した理由は、「売り場が埋まらない」というところは共通だと思えるが、卸売業への進出ではなかったと思う。
そごう西武は大手百貨店グループの中でもっとも決算内容が悪い。
しかも残念ながら現在のステイタス性も低い。

そういう百貨店が卸売業なんて模索するはずもなく、開発の理由は収益性を高めるためだろうと考えられる。
自主企画商品は安値で売っても利幅が大きい。この開発に成功すれば、理論上は利益面は大きく改善できる。
それが最大の眼目だったのではないかと個人的には見ている。

しかし、両社とも自主企画商品の開発はすんなりとは行っていない。
三越伊勢丹には「ナンバー21」という成功事例はあるものの、後続商品が表れていない。
そごう西武のリミテッドエディションは空振りが続いている。

先の記事では失敗の原因について

要因の一つは、生産から販売までのサプライチェーンを構築できなかったことだ。産地の構造や素材、縫製など物作りを理解せずに、生産、納期管理は取引先任せだった。買い取りでありながらも返品や未引き取りが横行し、在庫を抱えて撤退を余儀なくされた。



と指摘しているが、原因はこれだけではない。

そもそも百貨店には商品企画・商品デザインのノウハウがない。
大手セレクトショップ各社も同じだが、彼らには優秀なベンダーと優秀な企画屋がバックに付いている。
百貨店各社にそれはない。
だから「企画」が失敗する。

生産管理のノウハウもないだろう。

またマーチャンダイジングのノウハウも持っていないのではないかと推測される。
マーチャンダイジングは日本語では「商品計画」と訳されるが、商品の計画だけを立案していれば良いというものではない。
在庫の管理、利益の管理、天候や社会情勢への柔軟な対応が求められる。

今の百貨店平場で「真の意味」でのマーチャンダイジングができている店があるだろうか。
当方の知る限りにおいてはない。

管理できているとしたら、商品の投入時期と、帳簿上の利益率の確認程度だろう。
商品の投入時期はこれまでの小売業の慣例に従っていることが多く、お盆明けに秋物の本格立ち上げ、10月21日に防寒アウター投入という具合で、これは20年以上前からまったく変わっていない。

「販売員付き消化仕入れ」という仕組みにドップリ漬かりすぎて、そういうマーチャンダイジングは長らく手掛けてこなかった。年配社員ができないものを新人に教えることはできないから、百貨店の新人がこれを身に着けられる機会は永遠にない。

サプライチェーンなんて今の百貨店に構築できるはずもないし、構築できたところで、企画やマーチャンダイジングのノウハウがまったくないのだから、どっちにしろ在庫の山が積みあがったという結果は変わらない。

逆にサプライチェーンを構築できれば売れていたと考えているのなら、その発想そのもののナンセンスさに驚く。
工場のおっさんと同列の考え方である。

企画が良くない商品をいくらたくさん作ったって売れるはずもない。
また真の意味での商品計画が機能していなければ、売れるはずもない。

そごう西武のリミテッドエディションが成功しない理由は、「カール・ラガーフェルド」などの超一流デザイナーとのコラボが原因ではないのか。
最近、百貨店に限らず「コラボ」流行りだが、成功するコラボと失敗するコラボがある。
その相違点はなんだろう。失敗するコラボには確実に共通点があると思うのだが、いずれ別の機会で考えてみたい。

ただ、そごう西武のコラボの場合、今の日本の消費者にとって、欧米の超一流デザイナーとのコラボというのはそんなに魅力的に映らないのではないか。自分たちの日々の暮らしとまったくかけ離れた印象を与えているのではないかと思う。

あくまでも仮説だが、そういう超一流デザイナーとのコラボよりも、例えば「上質なレザーを30000円で」とか「モンゴル奥地から取り寄せた高品質カシミヤを3万円で」とかそういう「高品質・割安感」商品の方が、今の消費者には響くのではないかと思う。
いかがだろうか?

それにしても先ほどの一節にはもう一つ驚くべき箇所がある。
「買い取りでありながらも返品や未引き取りが横行し」という部分である。
これは明らかに法令違反だ。
下請け法違反で摘発されるべき案件だ。

これが事実だとしたら百貨店は法令違反集団だといえる。

それにしても、衣料品に関してはイオンやイトーヨーカドーなどの大型量販店も自主開発商品は上手く行っていない。
百貨店も量販店も無理に衣料品にこだわり続ける必要はないのではないか。

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衣料品に固執している限り百貨店の業績は回復しない

百貨店という業種の業績回復を目指すなら、所詮は単なる小売店に過ぎないのだから、「売れる物を売れ」としか言いようがない。
「売れない物」「売りにくい物」に固執して何を嘆いているのかと思う。

今、百貨店で「売りにくい物」といえば衣料品、とくに婦人服である。
これを減らして「売りやすい物」である化粧品と食品の売り場を拡張すれば良い。
それだけのことである。

一方、「百貨店=ファッション売り場」だと考えている人からすると、婦人服売り場は減らせないというだろう。
百貨店という業態をどう捉えるかによって結論は異なるが、そもそも百貨店は「ファッション売り場」だったのだろうか?
80年代ごろから「勝手に」ファッション売り場へと変貌させたのではないのか?

なまじ「ファッション売り場」として死守しようとするから苦戦しているのではないか。

失速したはずの”爆買い”が帰ってきた理由
「百貨店業界の底入れは本物だ」
http://president.jp/articles/-/23609

この記事に書かれているように「底入れは本物」だとはまったく思わないが、富裕層の消費が回復しているのは事実である。

インバウンド以外では時計など高額品が堅調だ。高島屋の広報担当者は「日経平均で2万をつけた6月ごろから伸びが顕著になった」と説明。株高の恩恵を受けた富裕層の消費が支えているという。宝飾品は4.0%、美術品は7.9%、それぞれプラスになった。



とのことで、ここに加えて外商も回復しているという。
知り合いの某毛皮業者は、2年ほど前から外商向けの30万円~50万円くらいの毛皮製品(フェイクファーではない)の売れ行きが回復してきて、今年は毎月追加発注が来るという。

これまでは黒、茶、ベージュなどのベーシックカラーの需要ばかりだったが、2年くらい前からはピンクなどの綺麗な色のファーの発注が主流だという。

一方、再三各方面でも報道されているように、インバウンド消費が回復しているが中身は変わっている。
以前は高級ブランド品だったのが化粧品などが主体となっている。

インバウンド消費をことさら重要だとは思わないが、そこに照準を当てても洋服よりは化粧品を強化すべきなのである。

このプレジデントの記事にも


一方で米アマゾンなどのインターネット通販に押される中間所得層は厳しい戦いが続く。高島屋は婦人服が1.7%減、紳士服が4.6%減と衣料品は相変わらず不振だ。

 

とある。
「アマゾンなどのインターネット通販に押される」とはステレオタイプの紋切り型で失笑するほかないが、高島屋だけの数字で見ても衣料品は苦戦している。
百貨店協会の売上速報でも衣料品は押しなべて不調である。

だとしたら、百貨店という「単なる一小売店」がファッション衣料品に固執する意味があるのだろうか。
当方はまったく意味がないと考える。
それは単なる自己満足じゃないのか。

小島健輔さんや松岡真宏さんが指摘しておられるように、百貨店の衣料品売り場は80年代から拡大し始めた。
80年代、90年代と拡大を続けて2010年代に至っている。

http://www.apalog.com/kojima/archive/2077

 

80年頃には1.7倍程度の差(婦人服売り場と紳士服売り場の広さの差)だったのが90年頃には2倍強になり90年代末には3倍にまで開いた経緯を振り返っても、消費の実勢を超えた拡大であった事が伺われる。

 

じゃあ、どうして80年代と90年代はひたすら衣料品売り場を拡張し続けてきたのだろうか。
それは百貨店にとって最も「売りやすい」「売れやすい」物だったからにほかならない。
別に百貨店は元から「服屋」なのではない。
服が売りやすく、売れやすかったから衣料品売り場を広げただけで、当時、ほかの物が売りやすかったなら、それを広げていただろう。
しかし、90年代だとすでに家電量販店が成長しており、家電と玩具は最早値段と品ぞろえの豊富さでは百貨店が勝負できなくなっていた。
だから百貨店は家電と玩具を切り捨てた。

別に衣料品が百貨店のアイデンティティだったわけでもあるまい。
バブル景気とファッションブームでそれが最も売りやすい品物だったというだけに過ぎない。

先ほどの小島健輔さんのブログから再び引用しよう。

 

衣料品は前年(16年)も大きく落としているため前々年比で見ると、紳士服・洋品が8~10月平均で93.4とヒト桁の落ち込みに踏み止まったのに対し、婦人服・洋品は同88.7と大きく落としており、その差は4.7ポイントも開いている。前々年からの減少額(年間)は紳士服・洋品の339.5億円に対して婦人服・洋品は1451.9億円と4.3倍近く、そこにこそ衣料不振の本質が潜んでいるように思われる。
家計支出調査では紳士衣料の1.8倍弱の婦人衣料が百貨店では紳士衣料の三倍近い売場を占めて三倍強を売り上げており、婦人服が過大供給になっている事は間違いない。

 

とのことで、結局は80年代・90年代に婦人服偏重になったままで、それをいまだに維持しようとするから百貨店は苦戦し続けるのである。

今なら、家電量販店の家電に飽き足らないと思っている層を呼び込むというのはどうだろうか?
また自転車やサイクリング用の衣服なんていうのを強化してみてはどうか?

たしかに消費者教育は必要だが、要らない物を無理やりに売り続けるというのはいかがな姿勢だろうか。
百貨店の婦人服売り場なんて伝統芸能でも重要文化財でも国宝でもないのだから、売れなくなればさっさと縮小すれば良いのではないか。
そういう硬直したマインドそのものが百貨店を凋落させていることに気が付くべきである。

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洋服への関心が薄れているのに、洋服売り場が多いから百貨店が苦戦するのは当然

先日、久しぶりに会ったアパレル業界の人と雑談していたら、最近、キャンプをはじめたとのこと。
当方が子供のころ、子供会とか学校で夏休みにキャンプがあったが、嫌で嫌でしょうがなかった。
簡易宿舎みたいなところに泊まるのは、暑いし蚊に刺されて眠れないし、汗だくになったのに風呂にも入れずに気持ち悪いし。
地面にテントを張る方はもっと不快だった。
地面が固くて寝にくいし、暑くて虫が多くて。

そんなわけで当方は今でも真夏のアウトドアは嫌いだし、キャンプは嫌いなままだ。
真夏はクーラーの効いた部屋でのんびりして、夜になったら布団で寝るのが一番である。

しかし、最近はグランピングなる言葉ができていて、ほとんどホテルに近い環境で宿泊することが可能になっている。
まあ、これなら機会があれば参加してみてもいいかなと少しは思うようになった。

身の回りのアパレル業界でもキャンプ愛好家はけっこう多いが、話を聞いてみるといわゆる「グランピング」の人がほとんどで、あと、関西大学探検部OBから教えてもらったが、真夏に野宿はしないそうだ。野宿は春と秋が最適だとのことである。

で、そのグランピング用品の値段を聞くと、驚くほど高い。
3万円や5万円は当たり前、10万円や20万円でも高すぎるとはいわれない。
そういう道具を平気でみんな買っている。

当方だってがっしりとしたノートパソコンが7万円なら「安いな」と思って買ってしまう。

ところが、洋服だとどうだ?
物にもよるが、どんなに高品質でも5万円の商品をポンと買う人はなかなかいない。
当方も2万円くらいまでなら、よほど欲しい服なら買うがそれ以上はちょっと買わないし、所得的にも買えない。

最近だと自転車を趣味にしている人も多いが、10万円くらいの自転車は普通に買っているし、道具類も洋服ほど安くはない。
当方は2万円くらいのママチャリを長年愛用しているが、逆に5000円くらいの自転車だと安すぎて不安になる。

そういう状況を考えると、業界の人も含めて洋服への関心が2000年以降は薄まっているといえる。
趣味は多様化しており、その趣味には少なくとも洋服よりはカネをかけている。

しかし、洋服への関心はゼロにはなっていない。現に下がったとはいえ、国内のアパレル市場規模は9兆円強もある。

ただ、キャンプ用品や自転車用品、釣道具などに比べて、洋服の場合は価格の高低が機能の高低とは結び付いていないので、「見た目が同じ」なら低価格の物でも構わないというふうに考えられがちになる。

実際のところ洋服の低価格代替品は見た目の良さは向上しており、それらだけで身を固めてもほとんど問題はなくなっている。

さて、先日、週刊現代から「百貨店が苦戦しているのはなぜか?」という取材を受けたが、上に書いたことが原因の1つといえる。
そういう状況下にありながら、百貨店の売り場構成は今でも過度に洋服に集中している。

婦人服、婦人ファッション用品のフロアがだいたい3~5層くらいある。
メンズが1フロアか2フロア、子供服が1フロアあり、場合によっては、欧米ラグジュアリーブランドのフロアが1フロアか2フロアある。

これ以外は化粧品と食品で、あとは申し訳程度に呉服やリビングのフロアがある程度に過ぎない。

洋服への関心が薄まっているのに、洋服の売り場が7割から8割も占めていては、そりゃ売上高が低下するのは当然である。
逆に百貨店でも食品と化粧品の売上高は好調だ。

大丸東京店は好調店舗として知られているが、牽引しているのは地下1階と地上1階の食品売り場で、地上1階も食品売り場にしたことが好調の要因だと指摘されている。
また、伊勢丹新宿本店でも地下1階の食品売り場は好調で、今年春に電撃解任された大西洋・前社長も昨年夏の時点で「ファッションは停滞気味だが食品は好調です。ただ、ファッションの伊勢丹なのでファッションが評価されないのは複雑ですが」と述べていた。

最近のファッション専門学校生は百貨店で洋服を買わない。
しかし、その中にも化粧品は百貨店で買っているという生徒はいる。
専門学校生からして百貨店への評価基準は「化粧品>洋服」なのである。

こういう消費動向なのに過度に洋服に偏重した売り場を維持している百貨店の売上高が回復するはずがない。
さらに滑稽なのが、洋服を回復させるために無駄な労力と金を投入し続けているところである。
魚のいない場所に餌を巻き続けているようなものだ。

80年代以降、百貨店は洋服の売り場を増やし続けた。
2000年頃まではそれが効率的だったからだ。
しかし、状況が変わって今はその「選択と集中」に苦しめられている。
アホみたいに液晶テレビに「選択と集中」しすぎて経営破綻したシャープと同じ轍を踏んでいる。

35年くらい前の百貨店の売り場は薄ぼんやりとしか覚えていないが、洋服のフロアは今よりも少なかった。
家電やら自転車やら仏壇やら玩具の売り場があった。

80年代からファッションが盛り上がって、そちらの方が収益が高いから洋服偏重を強めて行っただけのことで、洋服偏重は伝統でも何でもない。

重要文化財でも国宝でもなく、百貨店なんて所詮は「単なる売り場」に過ぎないんだから、消費動向に応じて売り場編成を変えれば済む話だ。
売上高を増やして収益性を高めたいなら、今の消費動向に合わせた売り場構成にすれば良い。
早い話が、洋服売り場を減らして、グランピング用品だの高級釣り具だの高級自転車だのの売り場を作れば良いだけのことではないか。
売れ行きは別として蔦屋家電よろしく、高感度家電を集めた売り場や高級カメラ売り場なんていうのも作れば良いのではないか。

洋服そのものへの関心が薄れているのに、さらに「洋服強化」とか「洋服復活」なんて何を言っているのか意味がわからない。
80年代の残滓としての「洋服」にこだわり続けているうちは、百貨店の復活なんていうのは絶対にあり得ない。

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百貨店のECはゾゾタウンには到底追いつけない

猫も杓子もEC販売強化で本当に大丈夫なのかなと思う。
先日、三越伊勢丹HDもEC強化を改めて説明していたが、正直なところ、大きくは成功しないのではないかと思っている。

三越伊勢丹HD、デジタル活用した新成長戦略を発表
https://www.fashionsnap.com/news/2017-11-08/mi-digital/

記事の中身には別段目新しい箇所はない。
まあ、ありふれたオーソドックスなECについて再説明しているに過ぎない。

そういえば、ECの強化と、その中でのアパレル各社との連携については、退任させられる前の大西洋前社長が構想を漏らしていた。
偶然にも当方もその構想を直接聞いたことがある。

その際の構想では、アパレル各社・各ブランドと連携して物流倉庫を一元化したいという考えだった。
三越伊勢丹のECへの出店・出品者と共同で専用の倉庫を持ち、そこから出荷することでコストを削減したいという考えがあった。
まあ、これも実現せずに終わってしまったのだが。

自前での商品開発機能をほとんど持たない百貨店としては、ECでできることはさまざまなメーカーやブランドからの商品を仕入れて(委託も含めて)サイト上で売るしかない。
オリジナル品は「別注」という形でメーカーやブランド品に作らせるしかない。

記事で気になる箇所がある。

杉江社長は「ゾゾタウンに近いビジネスになるんじゃないか」と展望を語った。

とある。
ここは2つの意味が考えられる。

1、わかりやすい実例としてZOZOを出した
2、本気でそう考えている

である。
案の定、メディアでは「ZOZOのような」という部分が独り歩きして、センセーショナルに煽られているが、実際のところ実現は不可能である。
ZOZOと同じような形態のウェブモールは作ることができるだろうが、売り上げ規模や存在感で並ぶことはないだろう。

この会見での空気感や杉江社長の人となりがわからないので、なんとも言えないが、メディアや出席者にわかりやすい実例としてモール型のZOZOを持ち出して説明したということは十分に考えられる。
1、の場合なら何の心配もないが、もし2だったら、先行きには不安を感じる。

はっきり言ってしまえば、ウェブ上にZOZOは二つ要らないのである。
ファッション衣料品に特化したウェブモールはZOZOが一つあれば十分であり、並立するにはZOZOとよほど差別化されている必要がある。
差別化されていないなら、存在価値はない。
消費者にとっても同じようなモールが二つあっても意味がない。

そして、さらにいうなら、ZOZOには先行者メリットがあり、後発組が簡単に追いつけるものではないということである。

ZOZOTOWNはまだネット通販がそれほど行き渡っていない2004年に開始されている。
そういえば、この時期にすでにAmazonも上陸していた。
当方はネット通販デビューが2015年ごろになるので実際に2004年にネットで物を買ったことはなかったが、Amazonは名前は知っていた。

2004年当時勤務していた編集プロダクションのスタッフたちが何人かAmazonで本を買っていたからだ。
Amazonは当初、本の通販サイトとして上陸していた。
当時の販売形態は、同僚によると、1500円以上で送料無料になるので、彼らはいつも3冊くらいまとめて購入して送料を浮かせていた。

その当時にZOZOの名前は聞いたことがなかった。
当方のECリテラシーなんてその程度のものでしかない。

13年前からサイトを構築して、ノウハウを蓄積したZOZOTOWNに、金看板に胡坐をかいたままの百貨店ECモールが追いつけると思っているのだろうか。すでにZOZOTOWNのブランドは確立されてしまっている。
それに13年遅れで後追いしようということをもしも本気で考えているなら、ちょっとアレすぎるのではないか。

いわゆるランチェスターの法則でいうなら、大手は資本力に物を言わせて後追いで物量作戦を展開すればよいのだが、三越伊勢丹HDはそこまで圧倒的な大手だろうか?
開始当初は一点突破主義の小資本だったZOZOTOWNは13年が経過した現在では大手となっている。
大手に対してそうい後追いは、まるでユニクロを後追いするイオンやイトーヨーカドーなどの大型スーパーの衣料品施策と同じではないか。

ネット通販勃興期の2004年頃に、「インターネットで服を売る」ということを考えた人はたくさんいると思う。
当方だって考えた。
当時、交流があった小規模のIT業者に相談したところ、面白いということで、大阪市内の卸売り型メーカーに何社か声をかけた。
ところが卸売り型メーカー各社は「前例がない」「取引先への説明が難しい」という理由でまったく相手にもしてもらえなかった。

他方、ZOZOTOWNはスタート当初にユナイテッドアローズなどの有力セレクトショップに賛同してもらい、スタートすることができた。

やっぱり持ち込む先は選良しなくてはならない。
古めかしい会社に持ち込んだところで意味はない。

百貨店自体が仕入れ型専門店(委託販売が多いけど)である以上、セレクトショップを取り込んだモールであるZOZOTOWNとは土台、ビジネスモデルが違う。
さらにいうなら、ZOZOTOWNは良くも悪くも、好き嫌いも別にして、前澤社長が露出をすることで消費者への認知度を高めている。
今の百貨店にそれと同等の露出ができる経営陣がいるだろうか。拝見したことがない。

経営陣の顔出しは除いたとしても、今の百貨店の発信はZOZOTOWNの発信には量・質ともに足元にも及ばない。
ECサイトは作っただけでは人は流れてこない。

人を引き込むコンテンツ制作、発信の質量が重要であり、今の百貨店にはその両方を作れるだけの力がない。
本気で「ゾゾタウンに近いビジネス」を模索しているとしたら、なんと身の程しらずなことかww

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百貨店は「殺される」のではなく「自死」しているだけ

 誰が百貨店を殺すのか
閉店続き、市場規模36年ぶり6兆円割れ
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/072400684/

この記事が日経ビジネスオンラインに掲載された。
オンラインはダイジェスト版で、こちらは誌面に掲載されたそのままである。

タイトルのつけ方は何とかの一つ覚えとしか言いようがなく実態を反映していないといえる。アパレルは「殺された」側面があるが、百貨店は記事中にもあるように、小売りの王様だった60年代・70年代にその優越性から、納入メーカーにリスクを押し付け、今に至るわけだから「殺された」というのは当てはまらず、「自死した」というべきであろう。

この記事は全般的によく考察されていると思うが、百貨店の売上高低下についての根本的な部分を見逃しているように感じる。
貧富の格差が拡大して、高額な百貨店衣料品を買えなくなった人が増えたということは前提にあるにしても、ファッション衣料と日常衣料が限りなく近接したことによって、「百貨店で服を買う」ことの意味が薄れていることを認識した書き方ではないと感じる。

例えば、記事中では

60年代は「百貨店で既製服を買う、という行為が時代の最先端だった」と、アパレルの歴史に詳しいウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッションの尾原蓉子会長は指摘する。ファッションも今とは全く異質の輝きを放っていたのだが、百貨店はアパレル業界との「なれ合い」の中で、いつしかその輝きを失ったのだ。

とあるが、この認識は書き手も尾原氏も甘いのではないか。

60年代までは既製服そのものがほとんどなかった時代で、多くの場合は家庭で縫われていた。
当方の母親も70年代はまだ洋裁というものをやっていて、自分で洋服を縫っていた。
当時の雑誌には型紙が付録として付けられていた。

存在しなかった商品が供給されたのだから、消費者がそれに飛びつくのは当たり前で、初期のビデオデッキや初期の液晶テレビ、初期のiPhoneなどが飛ぶように売れたのと同じ理由だ。

また、初期商品が高額だということも家電製品や自動車と変わらない。
当然、60年代の既製服はそれなりに高額で、低価格衣料品は生まれていなかった。どうしても節約したい人は70年代が終わるころまでは、当方の母親のように自宅で縫っていた。

「百貨店で買うことが時代の最先端だった」のではなく、これまでに存在しなかった商品が百貨店に大量供給されたから、百貨店へ買いに行っただけのことである。
たしかに最先端だった部分はあるだろう。それ以外の商業施設がほとんどなかったのだから。
ここを記者も尾原氏も事実誤認しているのではないか。

一方、かつての百貨店は「大衆に受けそう」なものなら何でも飛びついて、導入するのが早かった。
昔、にぎわった大食堂も屋上の遊園地もその一例だろう。
これは記事が指摘する通りである。
それがいつの間にか過度な名門意識を持ち始め、プライドだけが高いガチガチの保守組織に変貌してしまった。

実際に百貨店での催事で売り場に立っていると、意味のない名門意識を持ち、プライドだけがやたら高く、保守意識で固まった社員が数多くいることを身をもって体験できる。
あんな社員ばかりなら、そりゃ業績が低迷しても仕方がない。

マスコミの多くは百貨店について割合に同情的な報道が多い。
例えば、この記事の「殺された」という表現にしてもそうだ。
逆に百貨店で買い物をしない(できない)人は年々増えており、今の20代・10代の多くは百貨店に行ったことさえない。
30代・40代にしても百貨店に行かなくなった人は多いのではないか。

当方は47歳にしてカネなしなので、百貨店で買い物をすることは10年位前からなくなった。
2007年ごろから百貨店で洋服は買っていない。

しかし、大手メディアにいる社員の多くは、いまだに百貨店で服を買っている。
彼らの収入の良さがうかがいしれるが、この格差が、百貨店報道のピントをズレさせているのではないかと思う。
大手メディアは二言目には「民意」とか「国民の声」とか「庶民感覚」いうが、それらからもっとも乖離した場所にいるのが大手メディアの社員である。

当方がやり取りしている経済誌の30代・20代の記者だっていまだに百貨店で洋服を買っている。
また、当方が様々なことを教えていただいた業界の先輩が付き合っておられる経済各誌の30代記者も百貨店で洋服を買っているという。
大手新聞社・大手テレビ局の社員も同様だろう。

彼らにとっては百貨店は「親しみのある場所」なのであり、今の40代以下の消費者の多くが百貨店離れしているのとは正反対といえる。

それにしても、百貨店が「ファッション」にこだわっているうちは、百貨店の売上高が回復することなんてありえないだろう。
先ほどの話に戻るが、既製服そのものがなかった60年代とは時代が異なる。70年代・80年代もまだその延長線上で服は売れた。
それぞれが洋服を持っていなかったからだ。しかし、今の消費者はそれぞれが膨大なタンス在庫を抱えている。
よほどの「何か」がなければ洋服なんて買う必要がないのである。

また、洋服の歴史がなかったころと、さまざまなテイスト別・ジャンル別・スタイル別でのすみわけが出来上がった現在とでは、洋服の売れ行きが異なるのは当然で、以前のような活況ぶりが戻る可能性があると考えるのはアホとしか言いようがない。

セクシー系、アメカジ系、ナチュラル系、原宿系などさまざまなスタイル別に住みわけがなされており、2000年までのように、全員がビッグトレンドに飛びつくような事態は今後絶対に起きない。

そこを理解しない限り、売れる洋服は作れないだろうし、百貨店の凋落の原因は報道できないだろう。

あと、横道にそれるが、相変わらずルミネの社長はピントのズレたことを言っていると思う。

バーゲンの前倒し傾向について

「売るプロが努力を放棄して、商品を作ってくれる人たちに申し訳ないと思わないのか」。駅のファッションビルを運営するルミネの新井良亮会長は憤る。

と記事中にあるが、そういうルミネそのものが、ウェブで先行値引き販売を行っている。定価で売る努力をいち早く放棄しているのはルミネ自身ではないか。何を言っているのか。

それに「作ってくれる人たちに申し訳ない」という人情論もまったく賛同も共感もできない。
作っている人はあくまでも「仕事」として作っているのであってボランティアでも人道的活動でも奉仕でもない。経済活動の一環である。
だったら、販売員だって「売ってくれる人」である。

「売ってくれる人に対して、こんな売れなさそうな商品を作って申し訳ないと思わないのか?」と言わねばならない。

当方が大好きな韓非子にはこうある。

王良が馬を愛し、越王勾践が民を愛したのは、民を戦に駆り立てたり馬を速く駆けさせるためである。医者が人の傷口を吸い、血を口に含むのは肉親の情愛ではなく、利益が得られるからである。

車作りの職人が車を作ると、人々が富貴になることを望み、棺桶職人が棺桶を作ると、人々が早く死ぬことを望む。これは車を作る職人が善人で、棺桶職人が悪人だということではない。

人々が富貴にならなければ車は売れないし、人々が死ななければ棺桶が買われることはない。人が憎いわけではない。人の死によって利益が得られるからである。

単なる経済活動、仕事である作り手に対して、「作ってくれる人」と言っている時点で、ルミネ社長の認識は2000年前の韓非子に遠く及ばないということがわかる。

庶民感覚から大きく乖離したメディアが同情的に報道しているうちは、百貨店が回復することもないだろうし、百貨店の委託販売体質が改革されることもないだろう。

百貨店は「殺される」のではなく、「自死している」としか言いようがない。

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売上高だけでなく店舗数も激減した百貨店 でも総営業時間は激増

 百貨店全店の売上高合計が2016年はついに6兆円を割り込んで、5兆9780億円にまで低下したことは周知の事実で、それに対して対策が様々議論されているが、実もふたもない言い方をするなら、既存の個々の店舗が少しずつ売上高を伸ばした程度では、百貨店全体の売上高は回復しないのではないかと思っている。

なぜなら、百貨店の店舗数自体が減っているからだ。

不振百貨店の閉店が近年相次いでいるが、不振とはいえ、各店100億円前後の売上高がある。
不振百貨店が閉店するたびに百貨店全体では100億円ずつ売上高が減っているともいえる。

逆に残存した個々の店舗が売上高100億円を増やそうとすると並大抵の努力では実現できない。
相当にキツい作業になる。

日本百貨店協会の資料を見てみる。
これは2014年までの資料だが、売上高のピークは90年で9兆3000億円ある。
このときの店舗数は260店である。

キャプチャ

ちなみに日本百貨店協会によると2017年4月度は229店となっており、90年当時より約30店減っている。

百貨店の店舗数がもっとも多かったのは、99年で311店舗ある。
311店舗もあるのに売上高は9兆円を割り込んで8兆9900億円にまで低下している。
各店舗の売上高が如何に下がっていたかがわかる。

99年というとユニクロのフリースブーム(98年)の翌年でまだブームは継続しており、低価格化がキーワードになっていた。
翌年の2000年にそごうが経営破綻して民事再生法を申請している。

ピーク時から比べると今は百貨店店舗数が80店近くも減っているということになる。

これだけ店舗数が減れば、残存した個々の店舗が少々売上高を伸ばしたところで、かつてほどの売上高には回復できないことは、誰でもわかるだろう。
利益面は無視して、売上高だけを伸ばそうとすると新店舗をオープンさせることがもっとも手っ取り早い手法である。イオンリテールとイオンモールの手法はこれに近い。

店舗数がこれだけ減っているということはその逆で全体売上高は下がって当たり前ということになる。

現在、残存する百貨店は、今後、オンリーワン・ナンバーワン店舗しか残らないだろう。
どこか強い企業、強い店舗だけが生き残り残存者メリットを得るという未来図しか残されていないと個人的に見ている。

百貨店全部が今の規模で生き残るということはひどく楽観的なファンタジーだろう。

ついでに営業時間を見てみる。

売上高ピークの90年の総営業時間は2847時間だったのに対して、97年にはすでに3000時間を突破してそこから右肩上がりに総営業時間は増えていく。

ピークは2005年の3565時間で、その後、一旦3400時間台に下がるが、2014年は3553時間にまで増えており、ピーク時とほとんど変わらなくなっている。
そしてこの間、一貫して百貨店売上高は減り続けているのだから、百貨店が如何に効率の悪い販売方法を採っているかがわかるのではないか。

営業時間を増やしても売上高は回復せずに下がり続けている。
もちろん全体売上高が減っているのは店舗数が減っていることもあるが、営業時間を増やすことでは売上高低下に歯止めがかけられていないともいえる。

営業時間が長時間化するということは、百貨店の社員だけではなく、アパレル各社から派遣されている販売員も勤務時間が長時間化しているということであり、販管費が増える要因にもなっている。

普通に考えると営業時間が長くなればそれだけ販売員の人件費(人数を増やす、または労働時間を長くするから)は増えることになるが、それを抑える傾向が強いから、「衣料品販売員は拘束時間が長いわりに給与が良くない」といわれ、販売員が集まりにくくなっているといえる。

各メディアでは今更、「なぜ百貨店業界は衰退したのか」という犯人捜しをいまだにしているが、ここまで店舗数が減り、それに比例して総売上高が減ってしまっている状況で、犯人捜しをしたところで手遅れではないか。
先程も書いたように、百貨店全店が今の規模を維持して生き延び続けるというのは不可能としか思えないから、どこか特定の強い店舗、強い企業だけが生き残れる方策を探るべきだろう。

はてさて、最後まで生き延びられる百貨店はどこになるだろうか。

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そごう 壊れた百貨店―乱脈経営の全貌とメインバンクの過ち
『週刊ダイヤモンド』特別取材班
ダイヤモンド社
2001-04



「無くなっても誰も困らない」百貨店という業態は生き残れるか?

 大西洋・前社長が電撃解任され三越伊勢丹HDの新体制が発足したわけだが、一連の動きについては賛否両論さまざまな意見がある。

お家騒動によってイメージ低下を懸念する声も多いが、杉江新社長に期待するという声もあるし、大西・前社長の不備を指摘する声もある。

大西時代には催事が160~200もあったという報道もあり、それが事実だとすると、現場が疲弊するのも理解できる。催事で目先を変えて売り場の鮮度を保ちたかったのだろうが、ネタはそんなに落ちているわけではないから、ネタ作りだけでも現場は疲弊する。

そんな中で一連の動きに対する報道で個人的に賛成できる部分が多いのが、ダイヤモンドオンラインのこの記事である。

三越伊勢丹HD「1億かけて1銭の利益も出ない催事」が象徴する苦境
http://diamond.jp/articles/-/127814

仕入れ構造改革について「利益貢献額は目標値を上回ったが、改革に要したコストを含めればマイナスの可能性がある」と負の側面を挙げ、中小型店の展開については「ビジネスモデルを確立する前に店舗数を拡大してしまった」として見直す方針を強調。特にエムアイプラザについては、新規出店の原則凍結を打ち出すなど、大胆に見直す考えだ。

とあり、それはその通りだ。
とくにエムアイプラザやイセタンサローネ、イセタンハウスなどの中小型店は不振だといわれており、拡大路線を転換することは当然だろう。

業界内部から聞こえてくるのは、東京ミッドタウンに出店した「イセタンサローネ」と大名古屋ビルヂングに出店した「イセタンハウス」の不振の噂だ。

ただでさえ店舗面積の狭い伊勢丹新宿本店のさらにその中小型版は果たして必要なのだろうかと思ってしまう。ジェイアール大阪三越伊勢丹からリニューアルしたルクアイーレ内の伊勢丹コーナーもわずか1年ほどで縮小されてしまった。縮小されたということは業績不振だったと考えるべきである。業績が好調なら拡大もしくは維持されていたはずだからだ。

しかし、この記事では

 ただ、今回、未達に終わった中期経営計画は、杉江社長が当時、経営戦略本部長として大西前社長とともに策定したもの。社長就任時の記者会見でも「計画の立案には私も携わった」と明言している。

 杉江社長は、不採算事業の見直しを後回しにして成長事業を優先していた大西前社長に対し、「自分はコストカットに最優先に取り組むべきだと訴えていたと」主張するが、「なぜ計画策定時ではなく、今になって全否定するのか疑問は残る」と指摘する百貨店関係者は少なくない。

とも指摘しており、これもその通りである。

杉江新社長は大西時代の中期経営計画の策定にもかかわっており、それを今更まったくの他人事のように批評するのはどうかと思う。

もちろん、反対意見を述べたもののトップの意向で却下された可能性もあるが、経営戦略本部長という要職にあったのだから責任は免れない。
現場の平社員や外部の評論家とは立場が異なる。

人件費の削減は大西・前社長も取り組むべき課題だとしていた。

三越と伊勢丹が合併して、本部スタッフをほとんど減らさないままに10年が経過してしまっている。
合併したら本部スタッフは1・2倍くらいに抑えねばならないのに、これを純増ないし微減で10年過ごしてしまったとかつて大西・前社長も反省の弁を述べたことがある。

今回、大西・前社長の根回し不足という要因はあるものの、地方店リストラに現場が反発して電撃解任に至ったと公表されており、杉江新社長のリストラ構想も容易く実行できないのではないかと見られてもおかしくはない。

この記事は

もっとも中計の達成度や業績を見れば、大西路線の成果には確かに疑問符が付く。杉江体制に入り、その問題点の洗い出しがようやく始まったわけだが、かといって明確な成長戦略があるわけでもない。立て直しに残された時間は、決して多くはない。

と結ばれており、これもその通りである。
そもそも従来型百貨店を維持しながらの成長戦略なんていうものは考えられない。

それが可能ならジェイフロントリテイリングは「脱百貨店」を打ち出さなかっただろう。

これは大西・前社長も明言されたことがあるのだが、今の時代、百貨店はなくなっても誰も困らない。
百貨店従業員とその家族、納入業者とその家族は困るだろうがそれくらいである。
今の百貨店はライフラインでもなければ圧倒的なステイタスシンボルでもない。

そういう「なくても困らない物」をどのようにブランド化して、大衆から利用され続ける店にするのか。
百貨店各社にはそういう難問の解決が求められており、何らかの答えを導き出さなければ市場から退場させられてしまう。

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同じ事象でも切り取り方によって見え方は変わる

 今日はなんということもない感想なのだが。

先日、名古屋の老舗百貨店である丸栄に関するニュースが報道された。

一つは、丸栄が百貨店事業から撤退する可能性が高いこと。

丸栄 百貨店業務から撤退も
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170412-00002376-cbcv-bus_all


もう一つは、丸栄が興和の完全子会社になること。

興和が老舗百貨店の丸栄を、TOBで完全子会社化
https://www.wwdjapan.com/408855

である。

どちらも同じ会見から記事にしているわけで、本来は、二つまとめて一つの話になるのだが、記者や媒体がどちらの内容が重要だと考えているかで、クローズアップする部分が変わってくる。
これはその見本みたいな事例だといえる。

事実としては、

7年前に興和が子会社化した丸栄だが、業績不振が続いているので、100%子会社にしてしまって再建に取り組む。再建案としては百貨店事業からの撤退もあり得る。

ということである。

このうちのどこを重要視するかは記者や媒体の判断によって異なるということだ。

今回の報道の場合、世間的な話題性も含めると、「百貨店事業から撤退の可能性」という方がニュースバリューがあるだろう。

もうすでに2010年に丸栄は興和の子会社になっている。
この時点で興和が株式の69%を所有していた。

これが100%になると丸栄の上場廃止という事態になり、それなりには重要な事実だが、上場廃止以外はあまり現状と変わらない。

まあ、これがいわゆる報道で、どこを切り取るかによって記事の印象はまったく異なってしまう。

さて、丸栄の2017年2月期の業績だが、

17年2月期は売上高が前期比10.5%減の186億1200万円、営業損失は4億8500万円(前期は2億7800万円の赤字)、経常損失は6億2600万円(前期は4億2600万円の赤字)、純損失は8億9500万円(前期は5億6400万円の赤字)に留まっていた。

とある。

赤字もひどいが、売上高がかなり低い。
たった186億円しかない。これは地方の中型ファッションビル程度の売上高である。

名古屋市内の百貨店は「4M」とか「4M1T」と言われてきた。
4Mとは、松坂屋、三越、名鉄、丸栄で、1Tはジェイアール名古屋高島屋である。
近鉄百貨店は残念ながら含まれていない。(笑)

丸栄はWWDの記事によると、1615年創業というから、関ケ原の合戦の15年後に創業されているということになる。
三越の創業350年を上回る老舗といえる。

しかし、2005年以降、業界での存在感は乏しい。
地元関係者は別として、筆者のような他地方の人間からするとほとんど知名度も認識もない。
筆者の認識は丸栄を除いた3M1Tである。

松坂屋が売上高1000億円規模であることを考えると、売上高186億円というのは、差が開きすぎているといえる。

しかも他地方に多店舗展開しているわけでもないから、百貨店としてのバイイングパワーは落ちる。
納入メーカーからすると1店舗での仕入れ枚数が多いわけでもないし、店舗網を生かして多くの枚数が仕入れられるわけでもない。
だったら、メーカー側には付き合うメリットはあまりない。

事業再建案の一つとして出された、「百貨店事業からの撤退の可能性」はそれなりに妥当だといえる。
ここまで売上高が低下してしまえば、バイイングパワーは極度に弱まっているから、ブランドテナント店を誘致しての貸しビル業にシフトすることは合理的な選択肢の一つだろう。

「百貨店の伝統ガー」という嘆きの声も聞こえてきそうだが(笑)、冷静に考えると、この丸栄だって400年も続いてこられたのは、時代に合わせて売る物や売り方を変えてきたからではないか。

1615年の創業当時は当然百貨店だったわけではなく、着物を売っていた。
着物の販売に固執していれば、おそらくは現在まで企業としては存続できていなかっただろう。

どこかの時点で着物の販売をやめたということだ。

となると、ここまで既存の百貨店業態で失敗してしまえば、異なる形態に変わるほかないと外野のオッサンは思う。もちろん、変わるにも資金が必要だから、今の丸栄自体にはそんな金はないだろう。
そのために親会社の興和がある。

そういう意味では、今後、興和と丸栄がどのような再建案を提示し、どのように変わるかに注目したい。
変わらなければ座して死を待つのみだろう。







ファッション企業に入社する人すら、百貨店ではファッション用品を買わない時代

 甲斐性無しの貧乏人たる筆者は普段、百貨店とは無縁の生活をしている。
以前も書いたようにここ10年間近くは百貨店で買い物をしていない。

例外は、大丸梅田店のユニクロで3度か4度買い物をしたくらいで、少なくとも2010年以降は百貨店で買い物をしたことがない。

ただし、仕事上、一応百貨店のニュースなり動向なりはチェックしているが、あくまでも「観察対象物」としてしか眺めていない。

先日、某ファッションアクセサリー大手の役員の方と久しぶりにお会いしたが、今年も100人を越える新入社員があったという。その100数十人中で、百貨店で買い物をしたことがあると手を挙げた人は、1割程度しかいなかったらしい。

10~20人程度だったとのことで、「若い人の百貨店離れはここまで進んでいるのかと驚いた」とおっしゃっていた。

若い人どころか今年47歳になるオッサンだって利用していないのだから、百貨店離れは全年代通じた傾向ではないかと思う。

そのアクセサリーの新入社員の中で百貨店を利用していると答えた人は、何を利用しているかというと「食品」「スイーツ」で、洋服を含めたファッションを利用していると答えた人はゼロだった。

食品は消え物で一度食べてしまえばなくなってしまうから、愛好者は定期的に購入する。
また、食品は衣料品を含めたファッション用品に比べて全般的に価格が安い。

酒とか肉とか魚介の一部には例外があるが、他の食品やスイーツで何万円もするような商品はあまり売っていない。せいぜい5千円とか1万円くらいだ。

一方、百貨店のファッション用品で5000円だと、催事の投げ売りセール品くらいで、ちょっとマシなものを買おうと思うと1万円は軽く越える。

スイーツだと高くても1個500円とか1000円で、2000円を出せば2~4個くらいは買えるから、所得の少ない若い人でも買える。1個500円のショートケーキは高いが、普通に働いていれば月に何個かは買えるが、3万円の洋服を年に何枚も買うことは所得が低い人間にとっては難しい。

そうなると、筆者も含めて百貨店ではファッション用品をなかなか買わなくなるが、スイーツや食品は定期的に買うようになる。

実は、これはファッションを売りにしている伊勢丹新宿本店でも同じで、食品売り場が活況を呈している。
3月に電撃解任された大西洋前社長も昨年夏の取材時には「地下の食品売り場が最近は好評です。ファッションを売りにしている新宿本店なのでちょっと複雑ですが」と答えておられた。

最近、好調だと報じられる大丸東京店もその要因として、地上1階をスイーツ売り場にしたことが挙げられている。

通常の百貨店1階は化粧品売り場だったり、ラグジュアリーブランド売り場だったりするが、大丸東京店はスイーツを中心とする食品売り場にしたことが集客装置となっている。

ターミナル駅隣接という特性もあるのだろうが、実際に大丸東京店を訪れると1階は平日昼間でも活況で、上の階に行けば行くほど閑散としている。
8階あたりは平日昼間だと恐ろしく閑静である。

小売店やブランドには2つのやり方がある。

1、啓蒙活動を行いながら、消費者や顧客のニーズを作る、または誘導する
2、消費者や顧客のニーズに合わせて品ぞろえやサービスを変える

この2つである。
どちらが正しいとはいえないが、即効性があるのは、2のやり方だろう。
1のやり方は時間も根気も必要になる。

今の多くの消費者はファッションよりも食品のほうが興味が高い。
だったらそのニーズに対応して、1階を食品売り場にした大丸東京店のやり方は適切だといえる。

他の百貨店も見習ってもよいのではないか。

何せ、百貨店内にも入店するファッションアクセサリー大手に入社する新入社員全員が、百貨店でファッション用品を買ったことがないという時代になっている。
百貨店で買い物するのは1割程度で、しかも食品とスイーツしか買っていない。
これが現実である。

啓蒙活動を行いながら、需要を喚起しニーズを作るというやり方は否定されるべきではないが、今の百貨店にそれを根気よく続けられる環境があるとは思えない。
業績が下がればリストラが行われ、首切りが行われる。

Jフロントリテイリングは大丸と松坂屋でかつて大規模な人員削減を行ったが、大丸、松坂屋の店舗の中にはさらなる人員削減の計画案を練っている店舗があるという噂も聞こえてくる。

いずれにせよ、従来通りの「百貨店でござい」という姿勢では消費者ニーズを作ることも、沿うこともできない。
そのことは百貨店関係者は自覚すべきだ。



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