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産地企業や製造加工業者は決して「善良なる弱者」ではない

10月から人気ドラマ「下町ロケット」の続編が始まる。
7月に発売された3巻が原作になっている。

初回ドラマは1巻と2巻を原作にしていたから、ドラマとしては二作目でも原作は三作目になる。

ちなみに、7月に3巻「下町ロケット ゴースト」が発売されたばかりなのに、また4巻「下町ロケット ヤタガラス」の発売も決まっている。
すごいハイペースで原作小説が執筆されている。

原作は池井戸潤さんで、「半沢直樹」以来ヒット作を連発しており、ドラマ化すればほとんどが高視聴率となる。
今年の1月に放送された「陸王」も池井戸潤さんの原作である。

大概は主人公はしがない立場の小規模工場経営者だったり、大手企業のサラリーマンだったりする。
その主人公が大手企業の妨害にあい、苦労しながらも最後は大逆転をする。
近年のヒット作はほとんどがこの黄金パターンで構成されている。
ヒットドラマの多くは勧善懲悪で、ヒットする理由は、往年の水戸黄門や遠山の金さんとまったく同じだ。
ドラマの方が原作よりも性善説ベースで描かれており勧善懲悪の色が強い。

舞台が江戸時代か現代かの違いしかない。

この池井戸ドラマに代表されるように、当方も含めて、多くの日本人は、零細・小規模企業はかわいそうな立場にあると思い込んでいる場合が多い。
池井戸ドラマは零細企業・中小企業を善良なる弱者として描かれている。
大手は悪辣で冷徹。これがステレオタイプというやつだろう。実にくだらない。

この世の中に「善良なる弱者」なんてほとんど存在しない。
弱者は存在するが弱者は必ずしも善良ではない。

もう1年ほど前になるが、ある知り合いの個人デザイナーが「ブランドを立ち上げた」と報告してきた。
大々的に起業しているわけではないから、どうやって製造の資金を調達したのだろうと思っていたが、これもまた小規模な縫製工場が製造に協力しれくれることになったようだ。

そうこうするうちに徐々に雲行きが変わってきた。

もともとは製造に協力し、製造の観点からアドバイスをくれるというはずの立場だった縫製工場の社長がだんだんと、デザインにも口を出すようになり、さらには自社ブランドとして売り出そうとするようになってきた。

この辺りから、当方は、その社長とは決別すべきだとアドバイスしていたのだが、デザイナー氏は踏ん切りがつかずにズルズルやっていた。

それが先日、その縫製工場の社長が「自社ブランドを始めました」という内容でメディアに掲載されていた。
デザイナー氏は「やられた」と嘆いていたが、後の祭りである。

とはいえ、そのデザイナー氏は提携を切るだろうから、次シーズンからそのブランドのデザインは大きく変わるはずだ。
そして立ち上がったばかりの無名ブランドがいきなり次シーズンからデザインが大きく変わることはリスクでしかない。

デザイナー氏はお人よしに過ぎたし、この縫製工場の社長も目先の利益に飛びつく短絡者でしかない。
狡く立ち回ったようでいて、実は大局観のない愚か者といえる。

ここに出てくるデザイナー氏も縫製工場も新ブランドも業界ではまったく無名であることを断っておく。

しかし、この事例を見てもわかるように小規模な縫製工場社長は決して「善良なる弱者」ではない。
弱者であるかもしれないが、決して善良ではない。

デザイナー氏はどちらかというと「善良なる弱者」といえるが、善良なる弱者では世の中から搾取されて終わる。

見方を変えれば、弱小縫製工場が生き残りのためになりふり構わず必死で工夫したといえなくもないが、立ち上がり次シーズンからデザインが大きく変更になるリスクを考えると、決して上手いやり方ではない。

実は衣料品業界にはこの手のことが掃いて捨てるほどある。

例えば、某大手縫製工場の年配の社長がいるが、実はその縫製工場を何十年も前に創業者一族を追い出して乗っ取ったという噂がある。
何十年も前のことなのでネットにも記録が残っていないが周辺の人からはいまだにその話がチラホラと出てくる。

一時期はシャツアパレル最大手といわれ、その後民事再生法を申請したトミヤアパレルだって、古い業界関係者は「パインシャツが名門のトミヤアパレルを乗っ取った」と話すことがある。
これは「華麗なる一族」よろしく、「小が大を飲み込んだ」合併だったようだ。

まあこんなことは氷山の一角である。

池井戸潤さんの小説やドラマのように、ついつい人は小規模工場や小規模企業を「善良なる弱者」を見てしまいがちである。
メディアも所詮人が報道するのだからそういう価値観に引きずられる。

昨今の産地企業や製造加工業に関する報道なんてそういう基調のものが多い。

しかし、実態は弱者といえどもそれなりの爪や牙を備えているし、生き残るためなら、自分よりも弱者を養分にすることだっていとわない。
まさに自然界の弱肉強食の摂理そのままである。

大型肉食獣に捕食されることもある小型肉食獣は、自分よりも小型の生物を捕食して生き延びるのである。

まあ、そんなわけで、産地企業も製造加工業も決して「善良なる弱者」ではないので、提携する個人デザイナーや個人業者、小規模業者はくれぐれも注意が必要である。
世の中に必要なのは性善説ではなく、性悪説であると改めて思う。

久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276

 

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そんなわけで「現代風時代劇」の「下町ロケット ゴースト」をどうぞ~

「ウールのフェイクファー」とか「本物に見えるフェイクファー」をもっと売り込むチャンスなのに

リアルファーに対する風当たりが強まってきたが、リアルファー業界からの反撃も始まった。
リアルファーVSフェイクファーの宗教戦争は、ドイツ30年戦争のようにこれから長い間続くのだろうと思う。

個人的には右翼と左翼の対立のように、どちらかがどちらかを殲滅するまで終わらないだろうと思う。

まあ、それはさておき。

だったらこの隙に乗じて、ウール100%のフェイクファーをもっと拡販してしまえばどうだろうと個人的には思っている。

岡田織物のウール100%(毛足部分)のシープフェイクファー

 

ウール100%のフェイクファーなんて実は10年以上前から業界には存在する。
フェイクファーというのは通常、ポリエステルやナイロンやアクリルを使って毛足を再現するが、その代わりにウールを使うだけのことで、原材料費の高低という問題はあるにしても、技術的にはそう難しいものではない。

さらにいえば、これだけ良くも悪くも「フェイクファー」が注目されているんだったら、日本で唯一のフェイクファー産地である高野口産地はもっとニュースを発信すべきではないかと思う。

当方が初めて高野口産地の仕事に携わらせてもらったのが、2010年頃のこと。
産地企業にさまざまなフェイクファーを見せてもらったが、やっぱりフェイクファーは合繊独特の手触りがある。
その中に、まるで本物のファーみたいな手触りのフェイクファーが何種類かあった。

フェイクファーの作り方を簡単にいうと、基布があって、その基布の編み目・折り目から糸を垂直に出す。
そして裏をバインダーで止める。
この出した糸がファーの毛足になり、バインダーの工夫で、できるだけソフトでなおかつ毛が抜けにくいというのが理想的なフェイクファーであり、高野口産地はそれを売りにしている。

基布と毛足は別の素材組成になる。

だからウール100%のフェイクファーも基布は合繊生地になる。

しかし、毛足の部分がウール100%になると、まるで本物の毛皮のような手触りになる。

言葉で表現するのは難しいが、合繊のフェイクファーは脂分がなく、キシキシした手触りがある。
これに対してウールのフェイクファーは、脂分があるのでしっとりした手触りになる。

カツラでも合繊毛髪だとキシキシした手触りだが、人毛カツラは脂分があるからしっとり、ぬめぬめした手触りになる。
それと同じような感じである。

せっかく10年以上前からあるウールのフェイクファーを高野口産地はもっと積極的にアピールすべきではないかと思う。
今が絶好の好機ではないか。

それに加えて、高野口産地には、「合繊フェイクファーだけで限りなく本物に見えるフェイクファー」というのもある。
本物のキツネとかミンクに限りなく近く見えるという優れものだ。

これも10年以上前から産地にはある。

特にこの「本物に見えるフェイクファー」は産地の中でも岡田織物が得意とするところである。

岡田織物の本物に見えるフォックスフェイクファー

 

もちろん手触りは合繊フェイクファーとは変わらないが、見た目は本物のキツネやミンクにそっくりである。

これも大いに発信されるべきではないかと思う。

もちろん、産地合同展示会ぷわぷわも毎年開催されて発信はしているのだが、展示会開催以外の情報発信は本当にほとんどない。
一部の業界新聞が定期的にごく小さく報道する程度である。

一般紙、経済紙、ウェブメディアではまず見ない。

それにそのごく一部の業界新聞だって、産地側から発信しないと、時々巡回に来てネタを拾ってやっと掲載される程度にしかならない。

最近だと各地の産地でブログで近況を報告している企業も増えてきたが、残念ながら高野口産地はそれもない。

以前にも、「フェイクファーの名称を変更しよう」という会議があったときに結局はそれも果たせず、その1年後か2年後に欧米で「フェイクファーをエコファーと呼び変える」という動きになって、悔しい気持ちになったことがあると、このブログで書いたが、今もそういう歯がゆさを感じている。

高野口産地に限らず、どこの産地でも業界団体でも「組合全体が足並みをそろえて発信する」「足並みをそろえてアクションを起こす」というのは不可能である。

個人だって10人いれば意見がそれぞれ異なって意識統一することは難しい。
組合に加入している企業は10どころじゃないし、それぞれの企業も何十人というスタッフを抱えている。
だからどんなに良い議案でも必ず反対者は出るし、反対者に考慮すればするほどアクションは起こせない。

もっとも良いのは少数の企業が独断でアクションを起こすことなのだが、産地でそれをやる企業はそれほど多くない。

まあ、産地企業からすれば「そんなめんどくさいことをせずとも、既存の取引先でそれなりに食えている」ということなのだろうけど、なんとももったいないと思う。

ちなみに高野口産地のフェイクファーは安くはない。
1メートル1000円を越える生地は珍しくない。

先ほど紹介した岡田織物もネット通販でウール100%のフェイクファーや本物みたいなフェイクファーを売っているが、1メートル5000円以上になる生地もある。

しかし、高い生地だからこそ、注目が集まりやすい今、発信して「高くても欲しい」という状態にすべきではないかと思う。

それを怠ると海外(とくにアジア)の生地がまたそういう需要をかっさらうのではないかと思う。
後発の海外企業が儲けるくらいなら国内企業に儲けてもらいたいと思うのだが。

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アパレルの「デジタル化」は販売方法だけにとどまっている現状

プリンス氏の企画で有料トークショーを開催することになった。

【告知】8月24日にあのマサ佐藤(佐藤正臣)氏と有料トークショーを開催します。
ぜひともご参加を。詳細は以下のURLで。
https://eventon.jp/13683/

 

 

インターネット通販の成長ぶりにアパレル業界は色めき立ち、「IT化推進」とか「デジタル化推進」なんて掛け声ばかりが聞こえてくるが、販売方法・受注方法だけが「デジタル化」「IT化」しているだけに過ぎない。

販売方法・受注方法だけが「デジタル化」したところで、製造や加工、原料工程はほとんどが旧態依然とした受発注システムを使っており、何が変わるのかと言ったところで、単に消費者(買う人)が便利になったよねという程度にしか過ぎない。

製造・加工は何も変わらないし、そこに製造・加工を依頼するブランド側の商品供給体制も何も変わらない。

ブランド側が商品を取りそろえるシステム、速さ、タイミングはウェブが普及する前と何も変わっていないから、当方のように製造・加工側から衣料品を見る機会のある人間からすると「デジタル化」の効果は極めて限定的にしか見えない。

製造・加工、メーカー側からするとデジタル化で何が変わったのかわからない。
せいぜいが納入先の社名が変わったくらいである。
今まで百貨店アパレルに納入していたが、今はインターネット通販会社に納入するという程度の変化でしかない。

最近、洋服の供給量が多すぎるということが指摘されることがあるが、一部の「識者と呼ばれる人たちww」からは「オーダー生産を強化することで減らせることができる」という声が聞こえてくる。
インフルエンサーとか著名人と呼ばれる人たちは、フルオーダーとパターンオーダーの区別ができていない人たちばかりだから、ここでいう「オーダー」はすべてがごっちゃになった状態であることは言うまでもない。

ZOZOのオーダースーツが話題となっているが、じゃあ、ポッと出のスタートトゥデイなんていう会社がどうしていきなりプライベートブランド(自社企画製品)を発売できるのかというと、それは生地、付属(ボタンやファスナー)、副資材(芯地など)が大量生産されて、メーカーや問屋に大量に備蓄されているからである。

タレントがいきなり洋服ブランドを開始することができるのも、それらが大量生産されていて、大量に備蓄されているからである。

だから、思い付きで「ジーンズを作りたい」「スーツを作りたい」と言っても、すぐに生産することができる。

結局のところ、服が仮に大量生産されなくなったとしても(大量生産されないなら縫製工場はほとんど死滅するから考えにくい未来だが)、生地・副資材・付属は大量生産され続けているから、それが大量廃棄されるだけになる。

インターネットと使ったオーダー受注なんてほんの小手先の誤魔化しに過ぎない。

アパレルが真にデジタル化するには、そういう製造・加工段階までデジタルにつながる必要がある。
とはいえ、そのあたりの人々は高齢化が進んでいてEメールすらろくに使えない人も多い上に、国内の工場は零細が多く、デジタルへの設備投資をする資金力がない。

この製造段階をデジタルで統合することで効率化できるというのは当方のオリジナルではない。

コンサルタントの河合拓さんが最近、何度も提案しておられることである。
例えば。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56225

生産プロセスを最初から最後まで牛耳る「SPA型」プラットフォーマー(垂直型プラットフォーマー)が生まれるのも時間の問題です。

とあり、

日本のアパレル産業は万単位の中小企業群でなりたっており、日本のアパレル産業の将来を考えるなら、こうした中小企業がどうしていくか、に目を向ける必要があります。

大多数の中小企業は、見てきたような最先端技術に対して投資余力がなく、このままいけば大手の勝ち組と中小企業の差は広がる一方です。
しかし、別の角度から見れば事情は違ってきます。中堅企業の取りまとめ役を伝統的に行ってきたのはアパレル専門の「商社」。

彼らは企画機能、調達機能、生産管理、物流、ファイナンスなど一連の機能を有しており、その気になればデジタルSPAを導入することも可能です。
デジタルSPAを大手商社が導入し、投資余力がない中堅企業にソフトウエア・サービスとして提供し新しい産業エコ・システムを作り上げることも考えられます。商社は、グループ内にIT企業もシンクタンクももっており、優秀な経営者も次々と輩出しています。

とある。

正直なところ、今のウェブ、インターネット技術の要求水準は高まっており、零細企業のオヤジが20万~30万円くらい出したところでまったく効果がないのが実態である。

河合さんは、商社育ちなので商社の良い点と悪い点をよく理解しておられる。
たしかに資金力のある大手商社や専門商社(いわゆる大手問屋)なら本格的なデジタル化への設備投資も可能になる。
業界には商社を嫌う人も多いが、実際のところは商社なしではあの大手アパレルもあの大手アパレルも商品生産が立ち行かなくなることは業界内では公然の事実である。

店頭での販売と、顧客からの受注のみのデジタル化では生産体系はまったく変わらないし、供給体制自体を変えたいと思うのなら、デジタル化を製造・加工段階まで進める必要がある。

問題はその設備投資を誰が行うのかという点であり、河合さんは商社なら可能だと言っておられる。
たしかに商社ならその資金力から考えて可能だろう。

しかし、利にガメつい商社がそこまで業界全体のための設備投資をするのかどうか、当方はイマイチ信用しきれない。

とはいえ、個別の零細工場ではとてもじゃないがそんな大々的な設備投資ができないことは、火を見るより明らかであるという点は当方も深く賛同する。

店頭や通販段階だけのデジタル化・IT化で製造・加工の問題が何も取沙汰されていないのは、その界隈の識者wwやインフルエンサーがその方面の知識を何も持ち合わせていないからで、彼らこそ、単なる思い付きを次々と商品化できているのは、その製造・加工段階の恩恵を被っているからにすぎない。

販売方法のデジタル化なんて小手先では、業界構造は何も変わらない。

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3足1000円の靴下を作る国内工場が潤っている理由

国内の繊維製品製造の苦境を脱するために「高価格・小ロット」生産が提唱されている場合が多い。

1枚当たりの製造費を高くして製造加工業者の収入を多くする。しかし、高価格品は量は売れにくいから、小ロット生産になる。
小ロット生産にするから製造費が高くなる。

こういう仕組みで生き残りを図る製造加工業者は多い。
これはこれで正解なのだろうが、高価格品を売るということになると「売るノウハウ」「販促のノウハウ」が必要になる。
なぜなら、高価格品は黙っていては売れないからだ。
低価格品なら黙っていても売れやすい。なぜなら「値段そのもの」が販促ツールになるからだ。

靴1足1000円で売れば、黙っていても何足かは確実に売れる。
靴1足35000円となると、それなりに売るノウハウが必要で、そこには「高価格品を売ることができる販売員」が必要になる。

こうなると、当方が属している「TOP SELLER . STYLE」の範疇になるので、興味のある人は彼らに直接聞いてもらいたい。
また「その商品がどうして高価格なのか?」という説明も必要だし「高価格でも欲しくさせる」手法も必要になり、これらはすべてプロモーションの範疇になる。

ところが、残念なことに国内の製造加工業者の多くは、高価格品の店頭販売やプロモーションが絶望的に下手くそだ。

ここが国内業者の苦しいところである。

一般的に「高コスト」と信じられている国内の繊維製品の製造加工だが、実は数量さえまとまれば、比較的安値で生産することが可能になる。
例えば、ユニクロにデニム生地を納めているカイハラだ。
数年前にタイ工場を作ったが、それまでカイハラは国内生産のみでユニクロのオーダーに対応していた。
いろいろ厳しいこともあったり、危機もあったりしたと業界裏話では聞くが、数量さえまとまればユニクロ向けのデニム生地製造だって国内でできるという事例である。

また、つい最近では、無印良品から4万メートルの生地の発注が国内某産地にあったといわれるが、4万メートルの数量があれば、国内で生地生産してもコストが抑えられるという事例である。

先日、某SPA型大手靴下ブランドの人とお会いした。
だいたい1足600~2000円くらいが中心価格帯だが、3足1000円という特価品もある。
通常商品はすべて国内生産だが、驚くことに3足1000円の特価品も90%くらいは国内生産なのだという。
3足1000円を国内で製造してコストが合うのかと心配になったが、意外にも3足1000円を担当している国内工場はそれなりに潤っているという。
逆に高価格な通常商品を担当している国内工場はなかなか潤わないらしい。

巷間に流れている情報とは逆である。

その理由を尋ねてみると。

低価格品で1足当たりの利益は薄いが、大量に売れるのでそれなりにまとまった金額になる。
1足あたり100円とかの利益でもそれが1000万円とか500万円くらいになるのをイメージしてもらいたい。

その利益を蓄えて最新鋭の編み機を導入する。
最新鋭の編み機を使うとやっぱり生産の効率が良く、さらに品質も良くなる。
効率良く生産できてしかも品質も良いから、さらに量が売れる。
何せそれで3足1000円だから。

さらに量が売れるから利益がまとまる。

という好循環スパイラルである。

一方、高価格品を担当する国内工場は

1足当たりの単価は高いが、高いから量が売れにくい。量がまとまらないから工場は儲からない。儲からないから設備投資ができずに旧式の編み機を使い続ける。旧式編み機は生産効率が悪い

という悪循環スパイラルに陥っている。

この話を聞いて、一概に「高価格・小ロット生産」が良いことばかりではないということを改めて感じた。

靴下という消耗品だからこそという部分もあるだろうが、他の繊維製品とも通じる部分があるのではないかと思う。
もちろん、嗜好性が高くて傷みにくい商品に関しては、「高価格・小ロット」で乗り切るしかないだろうが、靴下同様に「必ず傷む消耗品」ならやり方次第では「まとまった量」を売ることができる。
まとまった量なら国内で製造しても業者は成り立つ。

靴下の場合、高価格といっても1足1000~2000円くらいで、普通に働いていたら毎月1足くらいは買えるが、それでもやっぱり高価格品をたくさん売ることは難しい。これが万を越える価格の商品ならもっと売ることは難しくなる。

産地ブランドが高価格品を開発することは理解できるが、開発した後にどのように売るか、誰に売ってもらうか、の視点が欠けており、多くの場合「開発しただけ」で終わってしまう。

どんなにストーリーだ、背景だ、歴史だ、職人だ、テクノロジーだ、とカッコイイことを言っていても、高額品は絶対的に量が売れにくい。
バブル期に高い服が飛ぶように売れたというのは、好景気で、カッコイイ低価格衣料品がなかったからだ。
景気が悪くて、カッコイイ低価格衣料品があれば、必ずそちらが売れる。

「大量生産は悪だ」みたいな風潮が一部のイシキタカイ系にはあるが、そういう「モノヅクリ」大好きなイシキタカイ系がシンパシーを勝手に感じている国内の製造加工業者は大量生産の仕組みの上に成り立っており、製造加工業者自体が大量生産者なのである。

なかなか難しいことだが、繊維製品の国内の製造加工業者を救いたければ、即効性があるのは「大量生産」させてやることである。
やはり、「数は力」なのである。

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靴下業界で注目の新鋭高価格国産ブランドの商品もどうぞ~。

縫製工場が自社オリジナル商品開発に挑戦

先日、三重県の縫製工場、近藤ソウイングの近藤社長にお会いした。
お会いしたというより、近藤社長がわざわざ会いに来てくださったという方が正しい。

一部を除いては国内の縫製工場はなかなか厳しい状況にある。

先日も某ブランドからTシャツの縫製依頼があったそうだが、工賃の安さに驚いたという。
そのブランドのTシャツは店頭販売価格12600円だそうで、1メートル1000円以上の割合に高い生地を使っている。
しかし、半袖Tシャツだと用尺は1メートルくらい、場合によっては1メートル未満の80センチほどしか使わないから、高額生地を使っても、製造コストは増えにくい。

仮に1メートル1500円の生地を使ったとしても、1枚あたりの生地値は最大でも1500円にしかならない。

にもかかわらず、提示された縫製工賃は1枚600円だったという。
それほどに一般的には縫製工賃は低い。

そんなわけで、一部のブランド化に成功した縫製工場以外は、なかなか縫製を請け負うだけでは儲かりにくい構造となっている。

週刊誌の調査で、「今後賃金が上昇する職業」の1位が縫製士だったという報道があったが、それは今までの賃金が低すぎたから上がらざるを得ないという側面もある。

そこで今回、工場オリジナルのアロハシャツをクラウドファンディングで製造することを決めた。
これだ。

残存率2%の国内縫製工場が作る、新感覚のアロハシャツを届けたい!

https://readyfor.jp/projects/Aloch

この商品のミソは、個人的には国内縫製工場云々というよりも、ポリエステル100%のジャージ生地で作られたアロハシャツというところにあると思っている。

1枚ブルーベースのサンプルをいただいてしまったので、早速着用してみた。

サンプルの合繊ジャージ素材のアロハシャツ

 

当方は非常に汗かきなので、夏は苦手である。
できれば冷房の効いた部屋から出ずにすごしたいほどだ。

綿のTシャツやポロシャツは好きだが、ずっと汗で濡れていて不快な感触が長時間続く。

このアロハシャツは、ポリエステル糸を編んでジャージ素材にしている。
ポリエステルには元々、吸水性はない。
だが、近年は毛細管現象を利用して、吸水性を付与したポリエステル素材が数多くある。

昔、全く吸水性のないポリエステル100%のシャツを着たことがあるが、レインコートを着ているみたいに汗だくになった。

最近はそういうポリエステル生地はほとんど見かけなくなった。
このアロハシャツも吸水性はそれなりにあるし、乾くのも早い。
汗をかいていても肌への接触は少なくサラサラしている。

おまけに編み生地なので伸縮性があって動きやすい。

このクラウドファンディングはめでたく、すでに目標を達成している。

商品として見た場合には、改良する点もいくつかあるように思える。
まず、「柄」がこれで良いのかどうかである。

やはり専門のグラフィックデザイナーを起用してそれなりに考えられた柄を使用すべきではないかと思う。

次に「形」である。

伸縮性のある編み生地だからだろうか、割合にタイトなシルエットで着丈は短めである。
この「形」が果たして良いのかどうか。
個人的にはあと何センチかは着丈を長くしても良いのではないかと思う。

あと、身幅にももう2センチくらいゆとりを持たせた方が良いのではないかと思うが、このあたりは個人の好みの問題である。

それよりもポリエステル100%のジャージ生地という部分を評価している。

近藤ソウイングとしては、初のオリジナル商品ということでクラウドファンディングに挑戦したわけだが、一先ず達成できて可能性は広がったといえる。

これをオリジナル製品として今後拡散するなら、柄・形はもう一度見直しなり改良を加えてみる必要があるのではないかと思うが、初めての挑戦だから、まず成功させ、そこから徐々に改良に取り組むという進み方で良いと思う。

縫製工場が純然たる縫製の請負だけではなかなか収益性は高まりにくい。
工賃を上げるか、請け負う数量を増やすか、のどちらかしかないが、現在の低価格化する衣料品では工賃を上げることは難しい。
かといって、国内工場に大量発注が舞い込むことも考えづらい。

出来得るやり方としては、工賃を少しだけ上げつつ、自社オリジナル製品を販売してプラスアルファを狙うというのがもっとも現実的ではないか。

とはいえ、オリジナル製品は開発するにもそれなりの試行錯誤があるし、発売したからといって確実に売れるとは限らない。
それなりのリスクはある。

昔のように、高い工賃の仕事が大量に舞い込むようになるなんてことは国内縫製工場には起こらない。

そういう点では今回は、幸先の良い上々のスタートが切れたということになる。

工場の新たな収益の一つにするには、商品自体のブラッシュアップと安定的な販売が必要不可欠になる。
期待して今後の流れを見守りたいと思う。

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儲からないから国内縫製工場は減り続ける ~衣料品の国内生産比率(数量ベース)は2%台に~

2017年の衣料品の輸入品比率(数量ベース)は98%になったとの報道があった。
国内生産比率は数量ベースで2%になったということになる。

これを受けて、WWDジャパンの6月4日発売号でも記事が掲載されていた。

日経新聞にも同様の報道がある。

衣料品、国産消滅の瀬戸際 輸入比率98%に迫る
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30973410V20C18A5TJC000/

この日経新聞の記事で気になるところは、むしろ、エドウインの国内工場の相次ぐ閉鎖という部分だ。
13あった工場もすでに一桁台にまで減っている。

エドウインが経営破綻によって伊藤忠商事に買収された時点では13ある国内工場が随分とクローズアップされて報道されたものだが、所詮は客寄せにしか過ぎなかったのだろうか。

それはさておき。

WWDジャパンの記事では国内生産数量は1億枚をついに下回って9840万枚と報道されている。

こちらでも同様の記事が掲載されている。

FISPA便り「アパレル生産、1億枚割れ」
http://fispa.gr.jp/archives/4271.html

日本繊維輸入組合が毎年、まとめているアパレル製品の輸出入統計を見ると、2017年のアパレル製品の供給では、国産の減少と輸入の増加に歯止めがかからず、輸入浸透率は前年比0.3ポイント増の97.6%になったことがわかりました。大きな変化は見られませんが、1991年には51.8%だった輸入浸透率はその後上昇を続け、限界とも思える90%に達した以降もジリジリと上昇しています。

とある。2%は正確には2・4%ということである。
そして

国内市場向けのアパレル製品の総供給量は、37億9200万枚です。前年に比べて1.8%増加しました。

とあり、前年より微増しているものの、ピーク時の41億枚からは微減している。

国内生産量はどうなのでしょう。前年比8.1%減の9840万枚でした。

とある。国内生産数量がついに1億枚を割り込んだ。個人的には、この数量が増える可能性はほとんどないと見ている。

さてWWDでは衣料品の国内生産が伸びない理由を考察している。
衣料品の国内生産というのは、主に縫製工程を指している。生地製造はまた別である。

「メイドインジャパン」とか「国産にこだわった」とかいうブランドが紙面を賑わわせているが、実際のところ数量ベースではほとんど寄与していないことになる。
話題になることと、数量が売れるということは別物だということが、この統計だけでも十分に理解できる。

例えば、「国産」を旗印にずいぶんとメディアに露出しているブランドがある。
著名なところだとファクトリエとかトウキョウベースとかになるが、あれほどメディアに出れば、どれほどの数量が売れているのかと思うが、実態はこんなもんである。国産品は数量ベースで減り続けており、彼らのスローガンは耳目を引き付ける効果はあっても、数量ベースの改善には何ら役に立っていないということである。

WWDの記事では、国産品が増えない理由として、「衣料品の低価格化」と「工場の後継者難」を挙げている。
経営者も工員も後継者難なのである。
国内の工場は経営者も工員も高齢化しており、経営者は自分の代で廃業しようと考えている。
工員には若手がほとんど入ってこない。(ゼロではないが)

理由は儲からないからだ。

外国人実習生でしのいでいる縫製工場もあるが、3年で帰国してしまう外国人実習生では技術は安定しない。
3年ごとにメンバーが入れ替わるので、また最初から教えなおさなくてはならない。

また、外国人実習生を厚遇している国内工場もあるが、法定以下の扱いをしている国内工場も珍しくなく、むしろ後者の方がクローズアップされてさらに求人難となっている。

そのほか、衣料品の低価格化が止まらないことから、国内工場の人件費も上がらないままここまできた。
一部の工場からは日本人の工員の給料も20年間据え置かれたままだという声もある。また、老年の工員は年金を支給されているため、割安で仕事をしていることも珍しくない。

WWDの記事では、「国産衣料品をこのままなくしてしまって良いのか?」と結んでいるが、かといって、無理やりに国が保護したりすることもおかしな話だろうし、人が集まらない産業は消え去るしかない。

現実的に、G7の先進国で衣料品製造がそれなりの規模の産業となっている国はイタリアくらいではないか。
まあ、そのイタリアでも繊維工場の外国人労働者は増えているといわれるが。
フランスに拠点を置くラグジュアリーブランドも自社縫製工場、工房を維持している。

アメリカやイギリスでは縫製工場はほとんどなくなってしまっており、日本の縫製工場が限界まで減ることは不自然なことではない。

もちろん、国内工場はゼロにはならない。後継者に恵まれた工場もあるし、当方の知る限りでも若い社長ががんばっている縫製工場もあるが、現存の縫製工場がすべて残ることは不可能だ。後継者に恵まれない工場は廃業するほかない。

結局の解決策としては、縫製業が儲かる職業になるほかない。
儲かる職業なら若い人が就職してくる。いくら、「国産品ガー」とか「産地を守りたい」とか綺麗事ばかり言っていても儲からなかったら、その産業は続かないし若い人も就職しない。儲からないのにわざわざ就職するのはよほどの変人か、マゾヒストだけである。

「国産品を守りたい」なんて言っているブランドはもっと真剣に数量を売ることを追求すべきだし、縫製工場は残りたいなら従来型の下請けに甘んじることなく、直販でもEC直販でも儲かるかもしれないことには何でも挑戦してみるべきだろう。

「儲かるようになる」という以外に解決策はない。

国内縫製工場の減少を見ていると金儲けの大切さが改めて理解できる。
アパレルは芸術ではなく、産業であり経済活動なのである。

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ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
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工場と直接やるなら毎月確実に発注する必要がある ~商社やOEM/ODM会社が必要とされる理由~

ブランドでもセレクトショップ、百貨店でも同じだが、縫製工場を直接使っての物作りは非常に難しい。
非常に難しいから商社やOEM/ODM会社が仲立ちしている。

近年は、商社やOEM/ODM会社悪玉論が盛んだが、一部のブランドやセレクトショップを除いては、縫製工場と直接やり取りすると失敗する場合がほとんどである。
だから、商社やOEM会社に頼らざるを得ない。

国内だろうが海外だろうが、縫製工場というのは、家族操業でない限りは、コンスタントに仕事がなければ運営が立ちいかなくなる。
父母と息子2人くらいの家族操業なら、どこぞの産地の工場のように

「今月は仕事がないから工場を休んで農作業でもしよう」

というふうにできる。

しかし、パートやアルバイトも含めた従業員がいるなら、そんなわけにはいかない。

パート、アルバイト、社員に

「今月は仕事がないからお休み」

なんていうわけにはいかない。

毎月、最低限の仕事を割り振る必要がある。

これは、ショップ店員の立場に置き換えて考えれば、工場のことがわからない人でも理解できるだろう。

店長やオーナーからいきなり

「今月は売上高が見込めないから店を休む。だから君も今月は全部休み。代わりに給料は払わない」

と言われたらどうだろうか?
従業員の立場なら、よほど貯金を持っている人以外は困ってしまうだろう。
工員とてそれは同じである。

だから、縫製工場は毎月最小限度の仕事がなくては立ちいかなくなってしまうのである。
縫製工場に限らず、生地工場、染色加工場、整理加工場すべて同じだ。

ところが、ブランドやセレクトショップ、百貨店は毎月工場に発注することは難しい。
例えていうなら、3月投入向けの商品は必要だが、6月投入用の商品は要らない、という感じである。
店頭投入商品が必要な月と不要な月がある。

当然、縫製工場へ発注する月と発注しない月が出てしまう。
工場はそれでは困る。

毎月、例えば100枚ずつでもオーダーしてもらう必要がある。

1月は1000枚の発注があったが、4月はゼロなんてことでは工場経営は成り立たない。
しかし、各ブランドや各セレクトショップ単体ではこういうバラつきは確実にある。

じゃあどうすれば良いのかということになるが、ここで商社やOEM/ODM会社の存在が浮かび上がってくる。

これらの企業は、よほどの大型ブランドでない限りは、単体のお抱えということはない。
これら企業も毎月業務を回さねばならないから、どこかのブランド単体とかセレクトショップ単体のみの生産を受注しているわけではない。
複数のブランドの生産を受注することで自社の業務を回している。

そして抱えるブランドが多ければ多いほど、ブランドごとに生産時期のバラつきがあるから、縫製工場に毎月最低水準の受注を回すことが可能になる。

1月はAブランドの生産
2月はBブランドの生産
3月、4月はAブランドとBブランド
5月はCブランドの少量生産

という具合にである。

そして工場側は、AブランドやBブランドに対してではなく、毎月仕事を落としてくれる商社やOEM/ODM会社に恩義を感じて多少の無理を聞くのである。(多少どころではない無理を押し付けられることもあるが)

このことを理解しないブランドやセレクトショップが「中抜き論」に踊らされて、直接縫製工場と取引しようとして失敗するのである。

欲しいときに欲しいだけの量を発注したい

ほぼSPA化したブランドや大手セレクトショップの本音はこれであるし、ワールドがかつて業界を風靡したクイックレスポンス(QR)対応もこれである。
しかし、そんな都合の良いことは世の中では通らない。

あんたらの都合だけで世界が回っているのではない。
世間でいくら著名なブランドだかファッソニスタだかインフルエンザインフルエンサーだか知らないが、都合の良いときだけ発注があるブランドよりも、少量でも毎月確実に仕事をくれる先を工場は大事にする。

それが名の知れないブランドや弱小ブランドでもだ。
それが工場の心意気ともいえる。

毎月、確実に仕事を出せないなら縫製工場と直接やることなんて考えずに、これまで通りに商社やOEM/ODM会社を通す方が工場サイドにとっても迷惑にならない。

何円かの手数料惜しさに軽薄な「中抜き論」を振りかざすべきではない。
ここが理解できずに生産に失敗するブランドやセレクトショップが多くある。

ここまで書くと、縫製工場側が単なる弱者、被害者だと思われるかもしれないが、縫製工場は純粋な弱者、被害者ではない。
もちろん、工場全部がそうだとは言わないが、商道徳にもとる工場もある。
それは国内工場も同じである。

毎月少量でも発注していたOEM会社を裏切って、目先の3000枚の飛び込みオーダーに飛びつく国内縫製工場だって珍しくない。
お得意様のOEM会社の発注を後回しにして納期遅れを起こさせてしまう。
OEM会社は当然、その次からその工場はあまり使わなくなる。
目先の3000枚のオーダーを納品してしまえば、翌々月からの仕事に工場が困ってしまうというわけだが、そんなものは自業自得でしかない。

この場合、目先の3000枚のオーダーの工賃が高ければまだ納得できる部分が無きにしも非ずだが、ブランドや大手セレクトショップが高い工賃なんて支払うはずもなく、「枚数が多いから(3000枚程度なのにwww)」という理由で通常よりも1枚当たりの工賃を安く叩いてくるのが常道である。

縫製工場にとっては、美味しいのは「数量」だけでしかない。

しかし、翌々月以降のこと、それまでの付き合いも考慮せず、それに飛びついてしまう縫製工場があるのも事実なのである。

単純な「中抜き論」提唱者も、ブランドやセレクトショップ側も、そして目先に飛びつく工場も、各段階がそれぞれ勘違いしているのがこの繊維・アパレル・ファッション業界といえる。
別に商社やOEM/ODM会社は「完全なる悪玉」などではない。必要性があったから生まれた機能である。
ここを正しく認識しないと、工場側はもとよりブランドやセレクトショップ側もいつまで経ってもまともな物作りなどできない。

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原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~
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時流に応じてアップデートできることが本物の「伝統」

先日といっても3月末のことだが、とある会合で、以前から面識があった「ごのみ」という雑貨ブランドを展開している方と久しぶりにお会いした。

西陣織の技術を生かして数年以上前から活動されている雑貨ブランドなのだが、その日は、「正絹ではなく、摩擦に強いポリエステルで織った生地を使いました」というポーチを持ってきておられた。

「ごのみ」のポーチはこんなイメージ

これは正解だと思う。

バッグやポーチは自分や他人の身体と常に摩擦するから、摩擦に弱いシルクは不適合である。
バッグ類や名刺入れなど、摩擦して当然というアイテムには、いくら西陣織の伝統だからといって頑なに正絹を使うのは最低の愚策だと思う。
それこそ、製造側の自己満足にすぎず、消費者のことは何も考えていないのではないかと思う。

こういうことを書くと、製造業の人の多くはお怒りになるのだが、何も正絹の西陣織を否定しているわけではない。
それはそれとして技術伝承すれば良いし、製造し続ければよいと思っているが、用途も何も無視して頑なに正絹を何のアイテムにでも使用することは全く意味がないと言っているだけである。

現在、和装に限らず、日本の製造業には共通する宿病なのではないかと思う。

例えば、漆器にしろ銅器にしろデニム生地にしろ同じではないかと感じる。

デニム生地だと、製造業者の多くは「〇〇年代のビンテージ感覚あふれた凹凸感のある表面感、綿100%で厚みのあるデニム生地」が最高だと認識しているし、実際のところ当方だってそういうデニム生地を見るのは好きである。

ただし、当方の場合は、50歳手前の初老になっていることもあり、洋服に対して「我慢」することはしたくなくなっている。
シルエットやパターン(型紙)、サイズ取りにもよるが、綿100%厚地デニム生地で作られたジーンズは動きにくいのであまり穿きたくない。ここ5年間で綿100%ジーンズは1本も買っていない。

とくに細いシルエットのスキニージーンズが全盛だったということもあるだろう。
あんなものを綿100%で作られたら、拘束衣でしかない。

スキニージーンズならストレッチデニムでないと不快で仕方がない。
極太のワイドシルエットジーンズなら綿100%厚地デニムでも苦痛はかなり軽減される。

要するに用途やシルエットによって生地を使い分ければ良いだけの話ではないのか。

だが製造業者や愛好家の中には「ストレッチ混デニム生地は邪道」という人がいまだにいる。

漆器だってそうだ。
昔ながらの外側が黒で、内側が赤い手塗の漆器がある。
それはそれでよいと思うが、いかんせん値段が高すぎる。
味噌汁椀が3万円とか平気でしてしまう。

一方、職人の手間を考えれば、それは妥当な値段であることは間違いない。

しかしながら、今、あのデザインの3万円の味噌汁椀が欲しい人がどれほど存在するだろうか。
当方は買わない。

日常使いには値段的にもったいなくてできないし、かと言って、漆器を鑑賞用にする趣味もない。

職人側も売れないことには生活が成り立たない。
だったら、現在、売れるデザイン、売れる値段に漆器をリニューアルさせるしかない。

くどい様だが、伝統的な漆器を全部やめちまえと言っているのではない。
それはそれとして「伝統モデル」とか「クラシックモデル」とか「ハイエンドモデル」とか名称は何でもよいが、そういう形で製造し続ければよい。
リニューアル品で儲けたカネでそれを作り続けて伝承し続ければよいだけのことではないのか。

何が何でも旧来品を旧来の値段で売ろうとする方がよほど傲慢ではないかと思う。

デニム生地しかり西陣織しかりだ。

旧来の文物をそのまま保存したがるのは日本の良いところであり悪いところである。
長所と短所なんて同じ性質の見え方が異なるだけだから、良い方に発揮されたのが古い文物が今も残る日本であるし、悪い方に発揮されれば旧来品を旧来の値段で頑なに売りたがる製造業、ということになる。

良い事例も少し挙げておくと、当方の浅い知識では繊維から離れてしまう。

中華で散逸した文献が我が国だけで残っているということはよくある。
宋版史記なんかもそうだ。
これは略奪したのでもなんでもなく、我が国はそういう保存文化なので散逸を免れたということである。

正倉院の宝物として教科書なんかによく掲載されている琵琶がある。
阮咸琵琶というのだが、三国時代末期といえば良いのか、魏晋南北朝時代初期といえば良いのか迷うところだが、西暦3世紀ごろの中華では、「竹林の七賢」という政府高官であり文化人でもある7人グループがあった。
そのうちの一人が阮咸という人物で琵琶の名手だったという。彼が愛用した形の琵琶をそれにちなんで阮咸琵琶と呼ぶようになったが、本場の中華では相次ぐ戦乱によってとっくの昔に阮咸琵琶は消滅してしまった。
しかし、我が国の正倉院には今もそれが残っている。

雅楽なんかも中華では滅んで我が国には残っている文物の一つといえる。

そういう風土なので、旧来の物を旧来の値段で売りたがるという心情もわからないではない。
しかし、いくら「伝統ガー」とか「本物ガー」と叫んでみたところで要らない物は要らない。
大衆が欲しがらない物にいくら「伝統」とか「本物」というキャッチフレーズを付けてもマスには売れない。

時流に合わせてアップデートした物を売りながら、守りたければそれを売ったカネで旧来品を作ってその技術を伝承し続ければよいだけのことだと思う。

そのように考えれば、伝統工芸品に限らず、洋服もまだまだ新しい切り口があるのではないだろうか。

スポーツウェア用の素材を使ったストレッチ性があり洗濯性もあり、シワになりにくいというスーツがあちこちから発売されている。
ミズノのムーブスーツとかビームスのトラベルスーツとかはその代表だろうし、それの廉価普及版がジーユーのカットソースーツであり、スーパーストレッチドライスーツだと思う。

「スーツは純ウールまたはウール高混率素材しか認めない」

という原理主義者から見るとこれらの商品はいかにも邪道だが、利便性からこれらの商品を選ぶ消費者も増えている。
見た目が著しくおかしいならこれらの商品は到底売れないだろうが、見た目が従来のスーツと変わらなく、価格も値ごろだから当たり前に売れる。
決して消費者の感性が退化したわけでもなく、スーツの伝統が破壊されているわけでもない。

ロングランな商品はつねにアップデートされるものだし、派生品も数多く生み出される。

そのあたりを冷静に考えないと、本当に製造業は終わってしまう。
自分の代で廃業するなら守旧し続ければよいが、生き残りたいなら時代に適応するべきであり、守旧したままで生き残りたいというのは虫が良すぎる願望だろう。

当方が「まったく働かずに月給100万円欲しい」というのと同じくらいに虫が良すぎる願望だといえる。

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心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
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竹林の七賢についてはこんな本で

既製服に「手縫い」「手作業」を求める百貨店部長の愚かしさ

洋服の価格下落を食い止める方策として、付加価値を高めるというやり方が注目されているが、難しいのは何をもって「高付加価値」をアピールするかである。
作り手側・売り手側の響くポイントと、消費者が響くポイントはあまり重なり合わない。
もう一ついうと、作り手側・売り手側の響くポイント、消費者が響くポイント、メディアが響くポイントと「事実」は往々にして異なる場合があり、当方はその場合、事実を絶対的に尊重すべきだと考えている。

最近、流行りの「高付加価値」化の一つとして、少量生産とか手作業というポイントがある。

まあ、これはこれで一つの価値だといえる。当方はほとんどそこには価値は見出さないが、それが価値だと感じる人がいることは否定しないし、それもまた価値だと思う。

その影響からか、過度に「手作業」を神聖視したり、過剰な演出を求めることが増えて、これは逆に事実を歪曲してしまい危険な行為だといえる。

先日、ある縫製業者が百貨店で自社ブランドのポップアップショップを開催した。
百貨店でもっともファッションが充実しているのは、単独店舗では伊勢丹新宿本店、次いで阪急百貨店うめだ本店だとされており、これに異論を唱える業界人はいないだろう。

余談だが、伊勢丹、阪急ともに本店のみが強く、他の地方店が弱いという構図はそっくりで、大量生産メーカーとして付き合うにはロットがまとまりにくいのでお勧めはできない。
日本全国に満遍なく大型店舗を所有していてロットがまとまるのは高島屋である。

まあ、それはおいておいて。

縫製業者は自社の工場風景を動画にして、店頭のディスプレイで流した。
ところが、そのフロアの部長がやってきて、「動画を作り直してほしい」と言い出した。

なぜか。

当たり前だが縫製工場は国内といえども大量生産が前提で、少人数でも5人~10人程度でミシンでの流れ作業が当たり前となっている。
中型、大型だとその人数がもっと増えるだけであり、構図は小型でも大型でも変わらない。
中国、アジアの大型工場はその規模が格段に大きいといえる。

当然、工場風景の動画ではミシンで縫製する姿が流されている。
それを流さなければ何を流すのかということになる。

部長はそれがダメだという。
そして、「手縫い」の風景を動画で流してほしいと言ったのである。

まったくアホかバカかアボカドバナナかと。

ファッションの百貨店のフロア部長がこの程度の認識なのである。
そりゃあ、ファッションも凋落するはずである。(笑)

手縫いの量産縫製工場なんてどこの世界にあるというのか。
くだらない社内政治ばかりしている暇があれば縫製工場の1つでも見学して実情を認識すべきである。

そして百貨店の店頭でこの「嘘の動画」を流すことで、消費者をミスリードし、それを拡大再生産してしまうという危険性がある。
そのことを理解しているのだろうか?多分理解していないだろう。だからそんなアホなことが言えるのである。

小規模工場とはいえ、月産何百枚程度は最低でもこなさなければ、経営者も従業員も生活ができない。
手縫いで月産何百枚がこなせると思っているのだろうか?

もしかしたら、件の部長は「演出として」と言いたいのかもしれないが、それは演出ではなく完全なるフィクションである。
じゃあ、動画に「この動画はフィクションです」っていうテロップでも入れるべきだ。

しれっとノンフィクションみたいな顔して流してるんじゃねえよ!

衣料品業界、繊維の製造加工にはこの手の「過剰演出」「嘘の神話」がまかり通っていて、それが消費者間で拡大再生産されてしまっている。

例えば、オーガニックコットンだ。
このブログにも以前に書いたことがあるが、オーガニックコットンとは有機栽培された綿花である。
土壌汚染とか栽培している作業員の健康を守るとか、そういうことを主眼に置いた社会運動である。

はっきり言えば、オーガニックコットンには、肌に優しい成分は何一つ含まれていないし、通常の綿花と手触りが異なることもない。
科学的にはこれらは何一つとして証明されていない。
それが事実である。

稀に肌荒れに効いたとかアトピーが軽減されたという人がいるが、それはほかの要因で効いたと考えられる。
製品のペーハーが通常の製品とは異なっていたのかもしれないし、プラシーボ効果が発揮されたのかもしれない。

にもかかわらず、製造している人間がその「効果」を吹聴している場合も多いし、その製品を扱っている業者がその効果を吹聴していることも決して珍しくない。
かくして、科学的に何の証明もされていないオーガニックコットンが、肌荒れの救世主みたいにあがめる信者が誕生してしまう。
鰯の頭も信心から、とはよく言ったものだ。
まさに鰯の頭である。

オーガニックコットンも信心から、だ。

話を手縫いに戻すと、当方は手縫いの何が良いのかさっぱりわからない。
手縫いステッチを施しましたという商品もいくつか持っているが、微妙に歪んでいるため、ミシンのまっすぐなステッチの方が1億倍くらい好きだ。
これを重宝がる人の気持ちはまったく理解できない。

そして、こういう「手作業信仰」は既製服にとって何の益もない。
既製服は大量生産・大量販売を前提とした工程・機械で成り立っており、手作業の工芸品とはまったく別物だ。
この2つを混同することは、既製服にとっては有害でしかない。

手塗の漆器やら、一枚の銅板を職人が槌で叩いて鍋を作るのとは違う。
既製服は生地も付属も染色加工も縫製も大量生産の流れ作業である。

その仕組み、機械なくしては現在の既製服は生産できないし、イシキタカイ系の好きなブランドだって商品(作品ではない)を生産することはできなくなる。

そういうミスリードを増幅させ、誤った手作業信仰を百貨店のフロア部長という要職にある者が助長するのは、まったくアホの所業でしかない。
猛省を願いたい。

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技術書だけど、これでも読んでみたら?

老年向けカジュアル・ファッション衣料の市場規模は期待されるほど拡大しないのではないか

我が国は年々、老人人口が増える高齢化社会となっている。
このため、何年も前からその人口の市場規模が拡大すると考えられてきたが、こと洋服に関してはその予想は当てはまらないのではないかと思う。

これまで、老年層の衣料品需要が伸びないのは、「欲しいと思うような服がないからだ」とされてきたが果たしてそうだろうか。
異なる理由があるのではないかと思う。

今回は身の回り調査のみでの推測論となるが、議論のネタにしていただければ幸いである。

当方自身が最早50歳手前の初老となっているので、親戚や周りで当方より年上の人はみんな老人である。
個人差はあるのだが、彼らが口々にいうのは「だんだんと物欲が薄れてきた」ということである。
これが60歳くらいから薄れる人もいるし、75歳を越えてから薄れる人もいる。この辺りには個人差がある。
しかし、例外なく加齢とともに物欲は薄れるようだ。

当方自身に照らし合わせても、今と25歳ごろを比べると、今の方が物欲が薄れている。物欲だけではなく睡眠欲以外のすべての欲は薄れつつある。睡眠欲は旺盛だ。時間とカネが許せば何時間でも眠っていたい。

となると、年配の人々が口をそろえるように、もっと加齢すればもっと物欲は薄れるのではないかと感じる。

先日、あるシルバーレディース向けニットブランドの社長と話す機会があった。
2000年頃に立ち上げたブランドで、当時のターゲット層は60歳だったが、顧客はそのまま加齢して今では70代後半から80歳くらいになっているという。

このブランドはちょっと変わっていて、もともとは大手アパレルの下請け工場だったが、自立化を目的としてこのブランドを立ち上げた。
その一方で大手アパレルの下請け生産も継続している。自社ブランドの卸売りと、大手アパレルの下請け生産がこの会社の両輪という構造である。

生産を請け負う大手アパレル各社のブランドもやはり同様にシルバーレディース向けだそうだ。

最近の商況を伺うと苦戦傾向にあるという。

まず、大手アパレルの下請け生産だが、こちらが大幅に落ち込んでいるらしい。
理由は、大手アパレル各社の卸売りがさっぱり受注量がまとまらないからだ。

この層だけではなく、テイストとターゲットに関係なく、卸売り型アパレルはほぼ全社、売り上げ枚数が激減している。
理由は、専門店・百貨店の発注枚数が激減しているからだ。

ある商品が1型で3色展開し、3サイズあったとしよう。
ワンピースが紺、グレー、赤の3色でそれぞれSMLの3サイズがあったとする。
全部1枚ずつ小売店が発注すれば9枚の発注がある。

紺のSML各1枚ずつ、グレーのサイズ各1枚ずつ、赤各サイズ1枚ずつ、だから全部で9枚となる。

しかし、店頭の売れ行き不振、店舗の販売力低減によって売れ行きが鈍っているため、各店ともに発注量を極小化しているのが現状である。
紺のMサイズ1枚、グレーのMサイズ1枚、赤のMサイズ1枚の合計3枚発注という具合だ。

もっとひどい場合なら、紺のMサイズ1枚だけ、とか、グレーのMサイズ1枚だけというのも珍しくない。

その結果、店側からの発注枚数の総合計が恐ろしく激減してしまうというわけだ。

だから大手アパレル側も売上高を減らし、その生産を請け負う工場も売上高が減るという構図になり、今回話を伺った工場では年間5000万円分くらいの請負生産額が減少しているという。
年間5000万円も売上高が減少すれば国内工場としては死活問題だ。

それを自社ブランドの売上高で補填しているが、そちらも伸びなくなっている。

理由は、同じく専門店からの受注量が激減していることと、もう一つの理由は顧客層が80歳前になってきて、物欲が薄れて服を買わなくなっているからだ。

身の周りで見ていても60代までは結構洋服を買う人も、70歳とか75歳を越えるとあまり買わなくなる。
80歳にもなるともっと買わなくなる。彼らに尋ねてみると「欲しいとは思わなくなる」と口をそろえる。
服だけでなく、食べ物に関してもそうだ。高くて珍しい食べ物や高くておいしい食べ物を食べたいとはそんなに思わなくなるらしい。

当方は元々食べ物に関してほとんど興味がないからその気持ちはよくわかる。
別にスーパー万代の半額に値引きされた弁当(198円)を毎食食べたってなんら苦痛ではない。
毎日昼飯が松屋の牛めし(290円で味噌汁が付いていてお得)でもまったく苦痛ではない。

それ故、この工場としては新販路向けの新商材開発や新たな売り方を、生き残るために模索したいとのことだが、現状のままで何ら手を打たないとたしかに早晩倒れてしまうのは間違いない。

このような例と身の周りの話を合わせて考えると、今後、老人人口はさらに増えるが、市場規模はそれほど大きくならないのではないかと思う。特に衣料品や食品は。
もちろん、介護用品やらそういう物の市場規模は増えるだろう。必要不可欠だからだ。

しかし、衣料品、とくにカジュアル、ファッション衣料はいくらその世代の人口が増えようと、それほど市場規模は拡大しないと考えた方が企業戦略を誤らないだろう。
特に75歳以上のターゲット層、80歳以上の層の需要は人口の増加に比してほとんど増えないだろう。

かつて10年くらい前、団塊世代のリタイアに向けて、団塊世代向けファッションブランドを強化するというアパレルが何社もあったが、結局どこも成功していない。

ポイント(現アダストリア)はアンダーカレントという団塊向けブランドを開始したが、見込みがなくて早々に廃止している。

その原因については、「その層が欲しがるような商品が提案できていないからだ」とされることが多いが、最近、それは違うのではないかと思い始めている。団塊世代といえども、現在はそこまでカジュアルやファッション衣料には興味がないのではないかと思う。
少なくとも30代、40代の頃よりもそういう物への欲求が薄れているのではないかと思う。

団塊世代よりも上の層はさらにそういう物への欲求が薄れているだろう。

こう考えると、老年向けカジュアル・ファッション衣料というのは今後も大きく需要は伸びないのではないかと思う。
当方だって後20年もすれば70歳手前だが、その時まで生きていられたとして、カジュアル・ファッション衣料への物欲があるかと問われれば疑問だ。もう今でもそういうものがだいぶと薄れている。

さらにいえば、75歳になったとして、あと何年生きていられるかわからないと思えば、高額な衣料品をわざわざ買おうとは思わない。
5年で使い捨てて惜しくない程度の低価格品で十分だと考えるだろうと思う。

そうではないという老年層もおられるとは思うが、それは少数派だと考えられるため、もし、老年向けブランドを強化しようと考えるアパレル企業があるなら、その売り上げ目標は低めに設定しておくのが賢明だろう。

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