カテゴリー: 展示会レポート

今度こそ「再生ポリエステル」は広まるか?

生地問屋の展示会を見ていると、2年くらい前から急速に「エシカル素材」の取り扱いが増えたと感じる。
「エシカル素材」とはなんぞや?というと、オーガニックコットンだったり、リサイクル繊維だったり、そういう「環境に良い」と思われている素材を使った生地のことである。

個人的には、素材に限らず「熱く」エシカルを語る企業、ブランド、人は好きではない。胡散臭く感じる。
人間が生きて現代文明生活を営むこと自体が環境破壊しか生まないのに、そんな表層的に取り繕って何の意味があるのかと思う。

とはいっても、現在の中国の工場のように廃液垂れ流しで良いとは思わない。
公害を減らすことは重要である。ただ、生来のへそ曲がりとしてはそれを華々しく打ち出す行為が嫌いである。

そんな初老のオッサンの好き嫌いはどうでも良いとして、欧米に向けた商売をする場合は、エシカルな取り組みを見せる必要がある。
このあたりは、さすがは偽善的な綺麗事の建前が大好きな欧米人だとしか言いようがない。

先日、お邪魔した瀧定名古屋の2018年秋冬素材展でも、海外販路を意識した「エシカル素材群」を発表していた。
同社の様式でいえば「サスティナブル素材群」ということになる。

瀧定名古屋の2018秋冬素材展の表示

今回の展示会でいえば、この「サスティナブル素材群」と「機能性素材群」の2つが目玉といえる。

機能性素材群とは、撥水、防風、ハイストレッチ、抗菌などの機能性を有した素材群で、サスティナブルは海外向け、こちらは国内市場向けというふうに見ることができる。

当方も含めて、日本人の多くはそんなにサスティナブルとかエシカルに興味はなく、機能性素材の方に関心が集まっているからだ。

初老のオッサンになると、もう「見た目がかっこいい」とか「色柄が素敵」とか「トレンドだから」ということだけでは服は買わなくなる。撥水だとか吸水速乾だとかストレッチだとか、そういう便利機能が付与されて初めて購買意欲が湧く。
別に初老に限らず、若い人でもそういう機能性への関心は高い。だから機能性素材を使用した衣服が売れるのだろう。同じ服ならやっぱり便利な方が良いに決まっている。

そういう業界がいう「エシカル」「サスティナブル」素材の一つに、再生ポリエステルが含まれている。
若い人たちは「再生ポリエステル」と聞いて、斬新さを感じるだろうか?
ペットボトルを再生したポリエステルのことだ。

しかし、実はこの素材は20年前に注目されたが、あまり普及せずに終わった素材で、これが最近「エシカル」「サスティナブル」によって再注目されているということになる。

2000年間近のころ、当方は駆け出しの業界紙記者だった。
このころ、注目を集めていたのが再生ポリエステルで、おもにワーキングユニフォーム業界に多く使われていた。

一般衣料品にも広めようという動きは合繊メーカーではあったが、あまり普及せずにそのうちに耳にすることもなくなった。
2003年にはほとんど聞かなくなっていたと記憶している。

理由は二つある。

1、再生するコストが高い
2、糸そのものの品質が悪い

品質の悪い糸に高値が付くのだから、そりゃ誰も使わない。
よほど暑苦しいイシキタカイ系しかそんなメンドクサイ素材は使わなくて当たり前だ。

それが近年のブームで再注目されているというわけだ。

そこで、当方は過去に普及が妨げられた2つの要素が解消されたのかどうかを何社かに雑談程度に尋ねてみた。
将来的には解消されるかもしれないが、現時点では解消されていないということだった。

ただ、再生ポリエステルにせよ、エシカル原料ばかり使えということではなく、混ぜて使っても良いということで、「使っているという姿勢が重要」なのだというから、まあ、その程度の取り組みにとどめた方が暑苦しくなくて良いと思う。

ところで、その「エシカル」「サスティナブル」とされている素材、原料も「定義」が複数あり、統一されていない場合もあるので要注意だ。

例えば、オーガニックコットンだと日本には協会が2つあって、お互いに相容れていない。「定義」が異なるのである。
また、業者が勝手に定義を広げたり再解釈する例もある。

ある工場は、オーガニックコットン工場で出た「落ち綿」を集めて、それを糸にして「オーガニックコットン糸」として比較的安値で発売しているが、別の生産業者からするとこの手法は邪道だという。

オーガニックコットンとは、国だけではなく畑までトレーサビリティが可能であるべきだとされているから、各国・各農園の落ち綿が混じり合っていればオーガニックコットンとは言えないという主張がある。
また落ち綿を拾い集めると必然的にゴミやホコリも混じる。そういう物が混じっていてオーガニックコットンと呼べるのかという疑問も呈されている。

このあたりの論争はなかなか終結を迎えないだろうから、この分野もなかなか厄介であり、当方はますます興味がなくなる。
まあ、暑苦しくない程度でとどめておいてもらうのが一番マシだと感じる。

再生ポリエステルにせよ、オーガニックコットンにせよ、美名と大義名分は理解できるが、現状はその程度のものだから、美名に踊らされすぎないようにするのが、消費者の自己防衛の手段である。

NOTEを更新しました⇓
「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

アパレルブランドの「小売店向け展示会」は意味がなくなりつつある

 関西視点で気候のことを話すと、お盆のころに猛暑がやわらいだ。
安心していたら、お盆明けから再び猛暑となった。
26日の土曜の明け方に雷雨があり涼しかったのだが、また昨日から猛暑が復活している。

本当に「猛暑死ね」としか言いようがない。

Yahoo!の週間天気予報によると、猛暑のピークは今日でお終いのようで、この予報が的中してくれることを切実に祈っている。

これまで我慢して毎年夏の猛暑の中を移動してきたが、今年はついにこらえ性がなくなって、必要最小限の移動しかせずに過ごした。

また猛暑のピークが過ぎたらあちこち覗いてみようと思う。

そんなわけで今夏の各社の動きはあまりよくわからない。(笑)
しかし、6月ごろまでの傾向でいうなら、各ブランドの小売店向け展示会というのは、芳しくない受注状況が続いている。

これは大小問わずにそういう傾向がもう数年以上続いているし、単独展示会・自社展示会だけではなく、合同展示会も同じような状況だといえる。

いつも展示会にお邪魔するほか、ときどき雑談に立ち寄る「スー・ヒライ」「スー・スー・スー」の2ブランドをご夫婦で展開している平井達也さんも「小売店1店舗あたりの受注数は例外店を除いて年々減っています」という。
Mサイズ1枚、Lサイズ1枚みたいな受注が多いのだそうだ。

名前は伏せるがもう20年以上続いている中規模カジュアルアパレルも年々、展示会での受注枚数は減っていて、商品のデザイン傾向を変えようが、新ブランドを投入しようがほとんど効果がない。ついにはこらえ切れずに新ブランドをやめてしまった。

これには理由があって、一部の好調店を除いて、小売店は総じて苦戦傾向にある。苦戦傾向にある小売店は過剰在庫を抱えていたり、売上高が激減していたりして仕入れ金額を抑えざるを得ない。

また、「売る」ことに対して自信を喪失していて、「数量を売る自信がない」とか「何が売れるかわからない」という心理状態も作用していると考えられる。

だから、無難な物・実績のある物・ネームバリューのある物(あると思われる物)だけを発注する。
それがさらに同質化を生み、売れ行きを鈍らせるという悪循環スパイラルに陥っている。

なぜなら、それらをほとんどの店が仕入れるのだから、必然的に店同士の品揃えは同質化する。これで同質化しない方がおかしい。

それを少しでも緩和させるために考え出された狡すっからい手段が「別注品」である。
自社・自店だけ正規品と少し異なる色柄やデザインの商品を納品してもらうやり方である。

猫も杓子もラベンハムのキルティングジャケットの別注、リーとチャンピオンのTシャツの別注を販売している理由はこれだ。

しかし、素人から見ると、その別注品の差異なんていうのはかなり微細で、あまり見分けがつかないことも多いし、ロゴマークを少し大きめにプリントしました程度なら、どちらで買っても同じことだとしか思えない。

先日、今ちょっとした話題となっているオールユアーズの人と久しぶりにお会いした。

キャンプファイヤーが主催するクラウドファンディングで、ファッション部門で史上(歴史は短いが)最高額をたたき出した新進アパレル企業である。

「毎日着てしまう」ジャケパン CFで1000万円超受注
https://senken.co.jp/posts/allyours-170828

どうでも良いことだが、この見出しの「CF」というのはクラウドファンディングのCFだろうか?それともキャンプファイヤーのCFだろうか?
もしかして、それに引っ掛けたキャンプファイヤーという名称設定なのだろうか?

それはさておき。
明日が締め切りだが、現時点(8月29日)で1500万円超にまで受注金額が膨れ上がっている。

久しぶりにお会いしたのは、オールユアーズの企画を一手に担当している原康人さんで、素材や製造に詳しいだけでなく、商品企画や販売方法のプランニングまで幅広く能力を発揮できるので、個人的には「業界の若き逸材」だと見ている。

その原さんが、「僕らは近々、小売店向けの展示会を廃止しようと思っているんです」という。
その理由を尋ねると、「実際に展示会を開催しても受注数量はトータルで10枚~20枚程度なんです。Mサイズ1枚だけとかそういう受注はざらにありますから」とのことだ。

これまで多くのブランドで耳にしていた状況と同じで、廃止することは納得である。

じゃあ、その代わりにどうするのか?と尋ねてみた。

すると「今回、クラウドファンディングでこれだけの受注があると、逆に小売店からかなりまとまった数量の発注がありました。それこそ1店舗で10枚とか20枚はざらです。じゃあ、これからはクラウドファンディング主体で商品を発表すれば効率的ではないかと考えています。クラウドファンディングでバカ売れしたと聞けば、小売店はまとまった枚数を発注してくれますから」という答えが返ってきた。

なるほど理にかなっている。そして「ビビっている」小売店からすればクラウドファンディングで売れれば「実績」が見えるわけだから、安心して仕入れることができるということになる。

展示会での受注精度を上げたり、受注枚数を増やそうと努力しても、多くの小売店がビビッていて、迷走しているのだから、効果を上げることは極めて難しい。
そのメーカー、ブランド側の努力はほとんど無駄に終わるだろう。

それよりも新しい売り方を模索した方が良いのではないか。

クラウドファンディングで実績を見せるというのも一つのやり方だろうし、例えば、ウェブ通販で売りまくるとか直営店舗で売りまくるとか、そういうことも一つの方法ではないかと思う。

展示会にさらに多くの小売店を呼ぶとか、展示会での発注枚数を増やすためにアトラクションを企画するとか、そういう方向の努力は今の状況では実を結ばない可能性が極めて高い。

そういえば、その昔、某GFF(岐阜ファッションフェア)というイベントは、バイヤーを「長良川の鵜飼い+ホテルでの宴会」に招待して効果を出そうとしていたが、徒労に終わっていた。
まあ、効果が出ると考えていたことが不思議でならないのだが。

まるで、「ジーンズが売れないから、生地の重さを0・5オンス上げてみました」とか「トレーナーの着丈を1センチ長くしてみました」みたいな意味のない改変と同じといえる。

従来型の「小売店向け展示会」にこだわり続けるメーカー、アパレルブランドは今後さらに厳しい状況に追い込まれていくと考えられる。

noteで有料記事を始めてみました~。

鎌倉シャツのビジネスモデルが秀逸なポイントを考えてみた
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/na76c612e6d37

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/




日登美の新社長にお会いしてきた話

 今日は日記みたいな感じで。

先日、久しぶりに日登美の展示会にお邪魔した。
日登美は百貨店向けのメンズパジャマとシニアメンズカジュアルのメーカーだ。

驚いたのが昨年10月に日登美の図師雅文・前社長が急逝されたことだ。
その半年くらい前に大阪展示会でお会いしていたので、ちょっと驚いたのだが、業界紙の報道によると交通事故とのことだった。

もうかれこれ、20年前から断続的にお付き合いしていただいていたのだが、それは突然終わってしまった。

50歳手前になると人を見送ることが多くなり、自分の番もそう遠いことではないと改めて実感する。

そういえば、図師社長の身内を会社で見かけたことがなかったので後継をどうするのだろうと思っていたら、女性が新社長に就任したという記事を業界紙で見かけた。

メンズのパジャマとカジュアルウェアの会社で、社内も男性社員の方が多いから、女性が新社長になるというのは意外だった。

業界紙を読むと、ご息女ということだが、前社長には実子がいなかったため、姪御さんを後継として養子縁組をしたのだそうだ。
証券会社出身とのことで、ビジネスの仕組みやカネの流れについての理解は明るいのではないかと想像した。

古株の副社長、常務はご健在だから、いきさつをお聞きすると、事業を後継するために前社長の亡くなる何か月か前に養子縁組し、本来ならそこから数年間でアパレル業務を勉強してから後継する予定だったが、前社長の急逝で前倒しとなってしまった。

そんなわけで、いざ、新社長の図師綾さんにお会いしてみると、予想外にお若かった。
初対面の女性に年齢を尋ねるわけにもいかないので、20代後半から30代前半くらいだろうと思う。
50歳手前になると20代後半も30代前半もそんなに違いがわからない。

10代、20代の若者が47歳と52歳を区別できないのと同じである。

IMG_2684

(図師綾新社長)

年配の男性社員ばかりの中に若い女性社長というのはちょっと奇異な印象も受けるが、実際に展示会場で見ていると、それなりに溶け込んでいたようで、文字通り「男くさい(笑)」社風がこれからは少し変わるのではないかとも思った。

新社長とお話した感想をいえば、まだ半年なので業界のことに対しては不慣れな感じがあるが、古株の役員がサポートしておられるので、そんなに手ひどい失敗はないと思われるし、おいおいと業界のことには慣れていくのではないかと思う。

前社長の急逝、新社長の急登板という状況なので、事業内容そのものには大きな変化がない。

需要が急増もしない代わりに急減もない百貨店パジャマを基盤にしつつ、メンズカジュアルを展開する。

この展示会訪問で、以前にもこのブログで紹介した谷野美智雄・副社長のコメントを聞かせてもらった。

そう、「物作りが上手い同業他社が、得意とする物作りに注力して売り場変化に対応できず消え去っていった」という内容のあのコメントだ。

カジュアルのVUMPS(ヴァンプス)では、色落ちしにくいデニム生地を使ったパンツとジャケットが提案されていたのが印象に残った。

IMG_2678
IMG_2680

(ヴァンプスの色落ちしにくいデニム製品)

これが提案されたのは、通常のデニム生地を使った商品を着用して白いシートの自動車に乗ると、シートにブルーが移染したというクレームがあったことがきっかけとなった。
まあ、その色落ちこそがデニム生地本来の魅力ではあるのだが、それをデメリットに感じるという人も確実にいるということだ。

ちょうど同じ時期に2017秋冬展示会が開催されたジョンブルでも色落ちしにくいデニム生地を使ったGジャンとジーンズが提案されており、こちらは「濃色が気に入っているのでこれ以上色落ちしてほしくない」というファッション的な要望があったことが製造するきっかけとなっている。

IMG_2657

(ジョンブルの色落ちしにくいデニムブルゾン)

デニム関係者やジーンズ業界人の多くは、「デニムは本来色落ちするもの」「色落ちするからこそデニム」という考え方を多かれ少なかれ持っている。
デニムの本来の定義からするとそれはその通りなのだが、色落ちしないでほしいという需要は確実に存在する。

筆者もそのうちの一人で、リジッド(ノンウォッシュ)やワンウォッシュなどの濃紺ジーンズを買った場合、できるだけ色落ちしてほしくないと思う。
なぜなら、その「濃紺」という色を気に入って買っているからだ。色落ちするのは仕方がないとあきらめてはいるが、可能ならばできるだけ色落ちしてほしくない。

筆者のように「色そのもの」が気に入って買っている人間からすると、3年後か5年後に「色が変わってしまう」とそれは別の商品になってしまうからだ。

濃紺のパンツを買ったのに、5年後には薄ブルーのパンツへと「変色」してしまうのなら、その商品を買う理由、所有し続ける理由がなくなってしまう。
それなら、デニムほど色落ちしない濃紺のパンツを買って所有し続けるという選択をする。

あらかじめ色落ち加工を施されたデニムでも同じで、その色落ち具合が気に入って買ったのに、5年後はさらにブルーが薄くなってしまうのなら、無邪気には喜べない。

色落ちしにくいデニムへの要望が少なからずあるということは、デニムが「特別で独立した」な生地ではなく、数ある色の中での一色に過ぎないと見ている消費者が相当数いるということではないか。

需要を作る、消費者を啓蒙するというのも一つのビジネススタイルだが、需要のある商材を供給するというのも一つのビジネススタイルである。色落ちしにくいデニム生地を欲しいという層があるなら、そこへ商品を供給するのも立派なビジネススタイルだといえる。個人的にはデニム業界はその需要を取り込んだ方が良いと思う。

「本物のジーンズとは」「本物のデニムとは」と、作り手のこだわり・マニアのこだわりばかりを押し付けていても仕方がない。

そうそう、日登美がAmazonへの出品ということでごく少数の型数からネット通販を始めたので、ここにアフィリエイトをいくつか貼っておく。(笑)





大手の「前年実績脳」に無理にお付き合いする必要なし

 2月10日、11日と久しぶりに仕事で東京に行った。
多くの人にとって、こんな禿げかけたオッサンの動向なんてそんなに興味もないだろうが、追って詳細は公表させていただく。

また、昨年の10月下旬以来ストップしていた仕事があるのだが、これの再開が決定したので、また3月か4月に東京に行くことになる。

さて、今回の上京のタイミングでも東京では多くの展示会があり、そのご案内もいただいていたのだが、申し訳ないことにすべてを回ることはできなかった。
関西も含めた地方都市と比べると東京は段違いのボリュームがある。

地方なしには東京とて成り立たないことは原則としてはその通りだろうが、アパレルに限らず東京一極集中するのは当然の流れだといつも上京するたびに痛感する。

実際にかつて付き合いのあった地元関西のメーカーやブランドもどんどんと東京へ本社移転したり、展示会を東京のみの開催にしたりしている。

そんな中、アレスという神戸のマフラー、ストールメーカーから久しぶりに展示会の案内をいただいた。

アレスも神戸が本社だが数年前から活動の比重を東京に置くようになっており、神戸にお邪魔するのは本当に3年ぶりくらいのことになる。

事務所には懐かしいカシミヤ山羊人形が置かれていたが、随分と数が減ってしまっている。
かわいいので出入り業者などが「売ってください」というらしく、売っていると、残ったのがこの2匹だけになってしまったらしい。

IMG_2399

新しく作ることはできるが100個とか1000個のロットが必要なので躊躇しているそうだ。
いっそのこと、大量生産してこの人形も販売してみてはどうかと思ったが、どんなものだろうか。

今回、神戸に先駆けて行った東京展示会で好評だったのが梳毛カシミヤの大判ストールだった。

通常の大判ストールは60センチ×200センチくらいだが、これは140センチ×200センチあり、通常の二倍以上の幅がある。

IMG_2389
IMG_2390

(生地のアップ)

アレスからするとこの商品発売は大きな賭けだったそうだが、ウール・獣毛の門外漢である筆者には実はその悲壮さは理解できなかった。(笑)説明を聞いてやっと理解した次第だ。

ウール・獣毛を得意とする方には当たり前のことだが、梳毛と紡毛がある。
ウール・獣毛の繊維長の長さをそろえるというのが梳毛で、そろえないのが紡毛である。
一手間加えるので、当然、梳毛の方が高い。
普通のウールでさえ、梳毛にすると原材料費が高くなるのであまり使われなくなる傾向にあるが、そもそも高額なカシミヤで梳毛にするとさらに割高になる。

このため、梳毛カシミヤはよほどの高級ブランドでないと使用されなくなっている。

また幅を2倍以上にするということはそれだけ原料の使用量が増え、原材料費が高くなる。

梳毛+2倍以上の幅ということで、通常のカシミヤストールよりも原材料費が高くなってしまい、果たしてそんな高額な物が売れるのかという心配があったとのことで、そういうふうに説明されると「なるほど」と納得できる。

卸値は1万円だそうだ。

店頭販売価格は企業ごとの設定にお任せだが、2万5000~3万5000円くらいになる。
内モンゴル自治区製だ。

もちろん、カシミヤには等級もあるから、一概にはいえない。
最上級の梳毛カシミヤだともっと高額になるだろう。

現在、ストールブームは一段落している。
マフラーと同様に冬は必需品といえるが、春秋シーズンにおいては不可欠な商品ではない。
以前だとファッションとしての人気が高かったため、春秋でも薄手ストールを巻いた人を多く見かけたが、一昨年くらいからその割合は減った印象がある。

原価が高くなるうえに需要が一段落した商品だから、製造側とすると「大きな賭け」という気になるのも無理はない。

そんなおっかなびっくりで展示したところ、意外にも好評だったという。

とくに地方の好調な専門店やネットショップからの受注が好調で、知名度の高い大手卸売りアパレル各社からは予想通りあまり受注に結び付かなかったようだ。

そういう話を聞くと、なんだかかつての大手アパレルは完全に顧客を見失っていて、それらの企業をさまざまな指標の目安としているメディアも判断基準を誤りつつあると感じる。

大手アパレルのように国内で何百億円規模のビジネスを追求するなら、トレンドから外れた高額商品というのは「売れない」ということになるが、そういう物が欲しいと思っている人はゼロではない。

そういう要望を集めればもしかすると5億円とか10億円くらいの売上高にはなるかもしれない。

それを丹念に拾い集めているのが、逆風下でもある程度の好調を維持できている本当に「売る力」のある地方専門店だろうし、中小規模のネットショップといえるのではないか。

すべてを「前年実績」を基本に考える大手アパレル・大手流通(GMS、百貨店)のやり方は、物が溢れている今の時代には、適合しなくなっている。

また後日、詳しく書いてみるが、以前、ステテコがブームになったことがある。
そうすると猫も杓子もユニクロもステテコを発売する。
複数年に渡って売っていれば、当然どこかで飽和状態になり、売れ行きが鈍る。

しかし、大手肌着アパレルもGMSも百貨店もおバカさんなので、「ステテコ」という項目で前年実績があるため、その項目をいきなり激減させることはできない。

だから、本来、春夏用の商品だったステテコなのに、秋冬向けの保温ステテコなんていう珍妙な物が作られ販売されることになった。春夏のステテコの減りを秋冬でカバーするためだ。まことにバカげた動機である。

冷静に考えてほしいのだが、いわゆる股引、パッチとよばれるズボン下防寒着がすでに昔からあるのに、そんな珍妙な保温ステテコなんて商品を誰が必要と思うだろうか。

結果、珍妙なる保温ステテコは2シーズンくらいで姿を消した。
当然である。

これが業界に跳梁跋扈する「アホな前年実績脳」である。

そうして衣料品業界は活力を失ってきて現在の状況に陥っている。

それはさておき。

そういう「アホな前年実績脳」になっていない中小型専門店やネットショップが存在し、そこでは大手が「売りにくい」と思い込んでいる商品を売りこなせている。そういう先と如何に取り組むか、如何にクローズアップして伝えるかが、今後のこの業界が存続できるかどうかという指標になるのではないかと思う。

何はともあれ、アレスの今回の挑戦はそれなりに評価されたようで良かったのではないか。

サンプルの貸し出しも行っているアレスの受注サイトのアドレスを貼り付けておくので、興味がある方はどうぞ。

http://www.alles-inc.com/wcf/




白いズボンでも透けにくいグンゼYGは女性向けを作ったら大ヒットするのでは?

 今日は小ネタを。

先日、グンゼの2017年春夏展示会にお邪魔した。
毎回、肌着、靴下、ストッキング、パジャマと盛りだくさんである。

今回、これはアイデア商品だと思ったのがあった。
グンゼYGカットオフのパンツである。ズボンではなく、肌着のパンツである。

サンプルでいただいたトップスはこの夏重宝した。
薄手の丸編み生地でありながら、袖口、首回り、裾とすべて切りっぱなしで段差がない。
段差がないからワイシャツの下に着ていても透けにくくクールビズに最適である。
しかも綿素材が主体なので、合繊主体のエアリズムに嫌悪感のある中高年にはピッタリではないかと思う。

筆者はフリーランスになってから冠婚葬祭以外ほとんどワイシャツを着用しないので、Tシャツの下に重ねたのだが、生地が薄いのでTシャツの下に重ねるのにも重宝した。

それのパンツ版である。

で、ディスプレイを見てなるほどと思ったのだが、白いズボンの下に着用すると透けにくいのでこういう需要はあるのではないかと思った。

IMG_1728

(白いズボンでも透けにくいグンゼYGカットオフのベージュのロングパンツ)

昨今、好き嫌いは別として(こう書かないと、クールビズはダサいって言ってくるめんどくさい業界関係者がいるからね)、クールビズが定着している。
夏場の白っぽい綿パンはクールビズの定番でもある。

またカジュアルシーンでもホワイトジーンズも含めて白いズボンはここ数シーズンで定番化している。

白いズボンは清潔感があって、涼しげなイメージがあるが、一つ問題がある。
下着が透けやすい。
とくに昨今はコスト削減の影響からか生地が薄くなっていてただでさえ透けやすい白いズボンがさらに透けやすくなっている。

オッサンの肌着パンツが透けてて、それを見て嬉しく思う人間はほとんどいない。
透けるというのは不思議なもので、肌着パンツのまま歩いているよりもいやらしく見えてしまう。(笑)
15年位前なら、ブリーフ派のおっさんが少なからず世間を闊歩しており、白ズボンのお尻にブリーフのラインをくっきりと浮かび上がらせていて、今のボクサーブリーフが透けているよりもダサく見えていたが、現在はブリーフ派のオッサンはほとんど消滅しており、その分、まだ透けていてもマシに感じる。

が、まあ、オッサンに限らず野郎の肌着パンツなんて透けないに越したことはない。

そういうわけでこのグンゼYGカットオフの肌着パンツは、透けにくいから白ズボンスタイルに最適ではないかと思う。

で、会場で商品を見ていてふと思ったのだが、これは男性用だが、もしかしたら女性用に改良したほうが売れるのではないかと。

白ズボンが定番化しているのはレディースも同様だ。
さらに白スカートも定番化している。

で、レディースのズボンの方がメンズよりも生地が薄い場合が多い。
これは女性の方が、男性よりも柔らかくて軽い生地を好むことが多いからなのだそうで、それは白ズボンにも適応されている。
レディースに比べれば肉厚感のあるメンズの白ズボンですら肌着のパンツは透けやすいのに、それよりも薄いレディースの白ズボンは透けないわけがない。

実際に街で少しゆっくりと見てみるといい。

白ズボンを穿いた女性の体感では8割くらいは下着のパンツが透けている。(当社調べ)
最近、性欲の減退も著しいし、女性肌着のファッションショーなんかも見慣れてるから、それでムラムラしたりはしないが、あんまりスケスケなのもナントカならないのかと思ってしまう。

白スカートになるとさらに生地が薄い場合がある。
中にペチコートがついていたとしても結構スケスケの場合があって、本人はこれを気付いているのかと不安になることがある。たまに注意してあげようかと思ったこともあったが、そんなことをしたら確実に変態認定されてしまうので黙っていた。

このグンゼYGカットオフのベージュを女性用に改良すれば、そういう「スケスケおパンツ事件」は随分と減るのではないかと思う。
もちろんメンズにも重宝されるとは思うが、レディースの方が需要は大きいのではないか。

グンゼYGカットオフベージュの女性版肌着パンツを開発すれば、大ヒット商品になりそうな気がする。




エドウインが503をリニューアル

 今回は展示会レポートを。

エドウインが定番ジーンズの「503」を今秋冬からリニューアルする。

FullSizeRender

最大のリニューアル点はデニム生地。
強撚糸で織って、そこに液体アンモニア加工を施すことで、綿100%でありながら緩やかなナチュラルストレッチ性と光沢感、ソフト感が出た。
個人的には、そのソフト感が印象に残っている。
14オンスデニムなので市場に出回っているデニム生地より重く感じる。
手にしたときのソフト感を言葉で表現するのは難しいが、しいていうなら、超ヘビーオンスのレーヨン混デニム生地に近いとでも言えば分かりやすいだろうか。

ターゲット層は30代半ばから上のベーシックを好む層。
あくまでもファッション好みではない層と言った方が伝わり易いのではないか。

以前に発表した「Eスタンダード」もベーシック路線だが、こちらはトレンド層を意識しており、非トレンド層の「503」との棲み分けを図る。

さて、この「液体アンモニア加工」だが、日清紡の技術である。
かつてジーンズ業界で一世を風靡したことがある。

90年代半ばにビンテージジーンズが登場するまで、ジーンズというアイテムは「きれい目」路線を進んでいた。
その理由はさまざま考えられる。

作業着として誕生したジーンズがファッションアイテムとなった。
ファッションアイテムにはなったものの、「ドレス」「フォーマル」ジャンルからは阻害されていた。
90年代前半に筆者自身も経験したことがあるのだが、ヨーロッパではジーンズ穿きでは入店すら拒むレストランがあった。
この扱いは日本でも同様である、というより日本は欧米のやり口をコピーしていたに過ぎない。
90年代後半に盛り上がった?カジュアルフライデーでもジーンズは除外されていた。

オッサン世代は当時を思い返してもらいたい。
ゴルフスラックスやチノパンはOKだったが、多くの会社でジーンズは除外されていたはずだ。

それほどにジーンズは「フォーマル」ではないと位置づけられていた。
出自がワーク、カジュアルのジーンズとしては通常の衣服と同等になるためには、きれい目に進むという方向性は当たり前だったといえる。

生地に光沢感があってソフト感があるという「液体アンモニア加工」が各ナショナルブランドで重宝されたのは当然の成り行きだといえる。
この「ジーンズきれい目化路線」の最終形態が、90年代前半に登場したレーヨン、テンセルのソフトジーンズだったのではないかと個人的には見ている。

しかし、その反動から90年代半ばから粗野でワークテイストに溢れたビンテージジーンズがブームとなる。
そのブームを誰が仕掛けたとか仕掛けられたとかそういうことはここでは除外する。

ここからデニム生地にも一気に反動が押し寄せる。
表面に凹凸感があって固くて色落ちのしやすいデニム生地が好まれるようになる。
液体アンモニア加工とは正反対である。
デニム生地を織る糸も、ストレートで滑らかな糸に代わって、節くれだった不均一なスラブ糸が好まれるようになる。

この流れはほんの2,3年前まで続く。
厳密にいうと今でも続いているといえる。

ただし、2008年にスキニージーンズが登場してから、ストレッチ混デニム生地が標準となった。
その影響もあり、デニム生地は全体的に12オンス前後にまで軽量化したが、デニム生地そのものの表情は相変わらずビンテージ感が好まれていた。
この傾向は今でも残っている。しかし、現在は、それと反対の潮流が勢力を盛り返しつつあり、併存している状態だといえる。

エドウインの503に液体アンモニア加工が大々的に採用されるということは、きれい目なジーンズ、きれい目なデニム生地の需要が大々的に復活したと考えられる。

粗野なデニムときれいなデニム、この両方が現在は並立しており、それぞれにファンがいるといえる。
もしかすると購入者は同じで、その日の気分やコーディネイトによって使い分けているだけなのかもしれない。

実は業界紙記者になったころ、液体アンモニア加工の特徴をレクチャーしてもらったが、それほどの違いがあまりわからなかった。
しかし、今回の展示ではそのソフト感がはっきりとわかった。
当時は経験不足でその差異がわからなかったが、20年近くが経過してようやくその違いが分かるようになったということだろうか。

ジーンズファンからするとエドウインのジーンズはきれいすぎると言われる。
縫製などのクオリティの高さは折り紙つきだが、いわゆる粗野感は微塵もない。
今回の503なんてその典型ではないかと思う。

しかし、個人的にはそれで良いのではないかとも思う。
なぜなら、粗野感のあるジーンズを欲しがっている日本人が一体どれほど存在するのか。
それに粗野感あふれるジーンズを企画製造しているブランドは一体いくつ存在するのか。

ならマスメーカーとしてエドウインはマス層に向けた商品を提供すれば良いのではないかと思う。
粗野感あふれるジーンズが欲しい人は多数存在するその手のブランドの商品をチョイスすれば良いのではないか。

ちなみに、エドウインは単一ブランドでありながら、多くのテイストの商品を企画製造している。
けっこう先端層に向けた提案もあるのだが、ブランド名が同じなので、先端層からは敬遠されることもある。
これはもしかしたら、以前の「ボブソン」が踏んだのと同じ轍なのかもしれない。

非トレンド向けの「503」、トレンド層向けの「Eスタンダード」のほか、地方や都心下町に根強く残る元ヤンキー層に向けたこんなコテコテ商品も作り続けている。

FullSizeRender1

元ヤンキー層のファッションの嗜好にはまったく興味も共感も持てないが、この手の商品が非トレンドアイテムになってから久しく、この手の有力ブランドの存在感がほぼなくなっている。
トゥルーレリジョンはジャパン社を解散しているし、韓国ブランドのレッドペッパーやロリータジーンズもほとんど存在感がない。

オズファーストのクックジーンズが根強い固定ファンを集めているが、東京都心では存在感があまりない。
関西や地方都市限定という印象が強い。

そんな中、エドウインのこの手の商品はそれなりに収益を上げている。
これは残存者メリットといえるだろう。
資金的にゆとりがある大手ならではの戦略ともいえる。

注意深く見ていてもらいたいのだが、日曜日のショッピングセンターにはこれを穿いた元ヤンキー層が多数闊歩していることに気が付くはずである。
都心でもあべのキューズモールでは多数見かける。

そこに市場が残っているから取りに行くというのもまた一つの立派な営業方針といえる。





オッサンが着用すると間違いなくダサく見える最新アイテム

 今から20~30年くらい前、亡母がテレビを見ながらこんなことをよく言っていた。
「私らが若いころに流行った服がまた流行している。私らはあれの何が良いのかよくわからん」と。

今年46歳のなる初老の筆者も最近のファッション傾向を見ていて、同じ気持ちになる。
確実に年老いていることを実感する。
とくに3年くらい前からバブル期のファッションがリバイバルするようになってそう感じるようになった。

今から20~30年くらい前のファッションが断続的にリバイバルしている。
例えばクラッチバッグ。どうしてもバブル期にオヤジ連中が小脇に抱えていたセカンドバッグに見えてしまう。
若い人が抱えていると新鮮に見えるが、30代半ば以上の男性が抱えていると、25年前の商品を引っ張り出してきたように見える。

そう、バブル期前後のリバイバル商品は今のオヤジ世代が身に着けると危険である。
一部の例外的オヤジを除いて、9割くらいのオヤジはバブル期そのままの風情になってしまう。

先月から断続的に今秋冬向け展示会にお邪魔している。
業界紙記者時代とは異なり、体系立てて訪問できるわけではないので、お付き合いのあるブランドをいくつか覗かせてもらうという形になる。

そうすると、そこでは筆者が20代に見たアイテムがリバイバルされていることが多くて驚かされる。
とくに今秋冬向けアイテムはその傾向が強い。

今回はオッサンが着用すると間違いなくダサく見えるアイテムをいくつか紹介したい。

懐かしのジーンズブランド「リベルト」の復活。
以前、エドウインが企画生産していた「リベルト」が久しぶり(たぶん10年ぶりくらい)に復活する。
今回は、エドウイングループのリー・ジャパンが企画生産し、ドリームワークスが卸売り営業を担当する。
以前の常見時代のエドウインなら考えられない他社との役割分担で、このあたりは伊藤忠商事効果なのかもしれない。

今回、展示会で見たところ2品番だけだったのだが、「アイダホ」という品番のデニム生地を見て驚いた。
ちょうどバブル期に各社で良く使われていた表面感の生地である。
これをワンウォッシュと懐かしのストーンウォッシュの2色で展開する。

縦落ち感のないワンウォッシュと、全体的にのっぺりと色が薄くなるあの懐かしのストーンウォッシュである。

FullSizeRender2

(縦落ち感のないワンウォッシュ)

FullSizeRender1
FullSizeRender

(懐かしのストーンウォッシュ)

このストーンウォッシュを見ていたら、ジーンズのポケットの中からよく丸っこい軽石が出てきたことが思い出される。

96年ごろから始まったビンテージジーンズブームから縦落ち感が重視され、ところどころに大きな節(フシ)のあるスラブヤーンがデニム生地に使われるようになったがそれ以前のデニム生地はこういう顔をしていた。
ヒゲ加工が生まれたのもビンテージジーンズブームから。
それ以前は全体的にのっぺりと色を落としていた。

それを再現している。しかし、今回は表面感は同じでストレッチ混である。

これは若い人たちには新鮮ではないかと思うが、オヤジが穿くとダメである。
絶対にバブル期そのままの姿になる。
バブル期のコスプレがしたい人はぜひとも挑戦してみてほしい。

次はアルファインダストリーのアイテムである。

まずスカジャン。
襟なしアイテムの人気からMA-1が復活し、その派生でスカジャンに注目が集まっている。
個人的にはスカジャンというアイテムは好きじゃなく、これが似合っている日本人男性は老若ほとんどいないと感じる。相当に顔面と体型偏差値が高くないと似合わない。
それでも若い人の着用は何となく許せるが、オッサンが着ると大概は目も当てられない。
若いころのヤンチャ(笑)ぶりを自慢する老ヤンキーにしか見えない。

IMG_1027

これはリバーシブルで、裏返すとMA-1としても着用できるお得アイテムだ。
筆者は絶対に試さないが、興味のある人は試してもらいたい。

ここ8年間くらいズボンのシルエットはタイトが主流だが、トレンド最先端としてワイドシルエットが注目されている。しかし勘違いしてはいけないのは、マス層は依然としてタイトシルエットで、先端層がワイドを注目しているという点である。
そこでこんなダボっとしたカーゴパンツが打ち出された。

オッサンがこれを穿いたら間違いなく作業員に見える。
超イケてるオッサンがかろうじて刑事ドラマ「相棒」に登場していた亀山薫に見える程度で、筆者も含めたそこらへんのオッサンは間違いなく作業員に見える。

IMG_1028

亀山薫はダボっとしたカーゴパンツにアルファインダストリーのトップスを合わせていたから、亀山薫のコスプレをしたい人にはちょうど良いかもしれない。

これにレザーのライダースジャケットを合わせると懐かしのチーマー風情が出来上がる。
髪型もサラサラロン毛にすればかなり再現度は高い。
オッサンが年老いた元チーマーになってみるのも面白いかもしれない。筆者は絶対にしないが、笑いは取れるだろう。

オッサンが多少なりとも「イケてる」風に見えるためには、ちょっと綺麗目にまとめる方が無難だ。
パンツは細身で全身をトラッドテイストとかアイビー・プレッピーテイストにまとめる。
これで高感度は少しは上昇する。
下手に全身アメカジとかイタカジにまとめると元ヤンキーとか水商売好きのイタイオッサンに見えてしまう。

「相棒」オリジナル・サウンドトラック(通常盤)
TVサントラ
エイベックスイオ
2008-10-22


杉下右京の密室 (朝日文庫)
碇 卯人
朝日新聞出版
2016-03-07


相棒 season 1 DVD-BOX
水谷豊
ワーナー・ホーム・ビデオ
2006-11-03


一皮むけた展示を見せたクラボウ秋冬素材展

 先日、クラボウのテキスタイルファッション課の2015秋冬展示会にお邪魔した。
カジュアルアイテム向けの素材展である。それにしてもクラボウの素材展を覗くのは久しぶりだ。

何でも今回から展示方法を一新したという。

さっそく会場に入ってみると、たしかに展示方法が通常の素材メーカーの展示会とは異なる。
それが一目でわかった。

製品のサンプルがメインで展示されているし、棚やハンガーなどの什器もオリジナルで製作されており、アパレルショップの店頭をイメージさせるものとなっている。

s_MIU_6984+

(ショップ店頭風にまとめられた展示)

IMG_3517

(ハンガーもオリジナルで製作)

瀧定大阪や瀧定名古屋、サンウェルなどの大手生地問屋の展示会では、数年くらい前から製品サンプルを積極的に展示していたが、素材メーカーでここまで製品サンプル群を構築した展示方法は珍しい。

ターゲットはアパレルブランドやSPAブランドの企画担当者だが、素材メーカーがなぜここまで製品サンプルを作り込むのかというと、それはブランドの企画担当者が素材を見て製品をイメージする力を低下させているからだ。
正確にいうと、ブランドの企画担当者がそれまでは製品をイメージする力があったのに、ある時期から急にその力を低下させたわけではない。
そういう力を持った企画担当者は今も変わっていない。

問題は、ある時期以降で採用された企画担当者が、そういう能力をほとんど育成されないままに今に至っていることである。

大手生地問屋が早くから製品サンプル展示を積極的に進めたのも同じ理由だ。
生地だけを展示していては、それで何を作ったら良いのかわからないというブランドの企画担当者が増えたためである。

そういう企画担当者に向けて、製品展示をすることはビジネス的には理に適っている。
素材メーカーや生地問屋の受注が増える可能性があるからだ。

また、クラボウの場合は、糸、生地製造以外にもアパレル向けOEM製造の機能もある。
糸、生地を販売する以外にも、今回の製品サンプルを欲しがるアパレルブランドにはOEM部門として対応することも可能である。

しかし、素材メーカーにここまで製品対応をされることで、アパレルブランド側の企画担当者の能力はさらに低下してしまうのではないかという危惧も感じた。

全体を5つのコンセプト分けてある。

「世界のコットン」
「ランドリー」
「ハードトリック」
「ポケットテイラー」
「ベビーローブ」

である。

「世界のコットン」は
オーストラリア、中国、インド、ペルー、タンザニア、アメリカの6か国の綿花で繊維長別にそれぞれ異なる打ち出しをしている。

s_MIU_7203+

(国別に展示)

「ハードトリック」は肉厚で凹凸感があるが、ツーウェイストレッチ機能がある素材

IMG_3521

(これでもツーウェイストレッチ素材)

「ランドリー」はポリエステル中空糸とカポックを使った素材群。
軽量と速乾性に特徴がある。
このカポックだが、10年ほど前に新素材として各素材メーカーから提案されたことがある。
特徴は綿のような風合いで圧倒的に軽いところにある。中空率は80%。
しかし、紡績が難しいのかその後あまり広まらずに終わってしまった。
通常のカポック混素材は10~20%程度だが、これをクラボウは独自技術で50%の混率にまで高めることができたという。

「ポケットテイラー」はポケッタブルウェアに適した合繊混の軽量素材。

「ベビーローブ」でも綿50%・カポック50%素材を使用。起毛加工と仕上げ加工で、ソフト感を打ち出した。

s_MIU_6937+

(白で統一したベビーローブ素材群の展示)

今回がリニューアル第1弾であり、
今後は年4回のペースで開催する計画である。

見せ方はしばらくこれを続け、毎回、数種類のコンセプトグループを提案する。

クラボウと取引を行うかどうかは別としてカジュアルアパレルの企画担当者は見ておいて損はないと感じた出来栄えだった。

それにしても素材メーカーにここまで対応されてしまえば、アパレルの企画部門はますます弱体化するのではないかとも感じる。
物事には必ず長所と短所が同時に存在するが、なかなか難しいものである。

それはさておき、次会以降のクラボウの展示会にも期待したいと思う。

©Style Picks Co., Ltd.