カテゴリー: 企業研究 (1ページ / 15ページ)

産地企業や製造加工業者は決して「善良なる弱者」ではない

10月から人気ドラマ「下町ロケット」の続編が始まる。
7月に発売された3巻が原作になっている。

初回ドラマは1巻と2巻を原作にしていたから、ドラマとしては二作目でも原作は三作目になる。

ちなみに、7月に3巻「下町ロケット ゴースト」が発売されたばかりなのに、また4巻「下町ロケット ヤタガラス」の発売も決まっている。
すごいハイペースで原作小説が執筆されている。

原作は池井戸潤さんで、「半沢直樹」以来ヒット作を連発しており、ドラマ化すればほとんどが高視聴率となる。
今年の1月に放送された「陸王」も池井戸潤さんの原作である。

大概は主人公はしがない立場の小規模工場経営者だったり、大手企業のサラリーマンだったりする。
その主人公が大手企業の妨害にあい、苦労しながらも最後は大逆転をする。
近年のヒット作はほとんどがこの黄金パターンで構成されている。
ヒットドラマの多くは勧善懲悪で、ヒットする理由は、往年の水戸黄門や遠山の金さんとまったく同じだ。
ドラマの方が原作よりも性善説ベースで描かれており勧善懲悪の色が強い。

舞台が江戸時代か現代かの違いしかない。

この池井戸ドラマに代表されるように、当方も含めて、多くの日本人は、零細・小規模企業はかわいそうな立場にあると思い込んでいる場合が多い。
池井戸ドラマは零細企業・中小企業を善良なる弱者として描かれている。
大手は悪辣で冷徹。これがステレオタイプというやつだろう。実にくだらない。

この世の中に「善良なる弱者」なんてほとんど存在しない。
弱者は存在するが弱者は必ずしも善良ではない。

もう1年ほど前になるが、ある知り合いの個人デザイナーが「ブランドを立ち上げた」と報告してきた。
大々的に起業しているわけではないから、どうやって製造の資金を調達したのだろうと思っていたが、これもまた小規模な縫製工場が製造に協力しれくれることになったようだ。

そうこうするうちに徐々に雲行きが変わってきた。

もともとは製造に協力し、製造の観点からアドバイスをくれるというはずの立場だった縫製工場の社長がだんだんと、デザインにも口を出すようになり、さらには自社ブランドとして売り出そうとするようになってきた。

この辺りから、当方は、その社長とは決別すべきだとアドバイスしていたのだが、デザイナー氏は踏ん切りがつかずにズルズルやっていた。

それが先日、その縫製工場の社長が「自社ブランドを始めました」という内容でメディアに掲載されていた。
デザイナー氏は「やられた」と嘆いていたが、後の祭りである。

とはいえ、そのデザイナー氏は提携を切るだろうから、次シーズンからそのブランドのデザインは大きく変わるはずだ。
そして立ち上がったばかりの無名ブランドがいきなり次シーズンからデザインが大きく変わることはリスクでしかない。

デザイナー氏はお人よしに過ぎたし、この縫製工場の社長も目先の利益に飛びつく短絡者でしかない。
狡く立ち回ったようでいて、実は大局観のない愚か者といえる。

ここに出てくるデザイナー氏も縫製工場も新ブランドも業界ではまったく無名であることを断っておく。

しかし、この事例を見てもわかるように小規模な縫製工場社長は決して「善良なる弱者」ではない。
弱者であるかもしれないが、決して善良ではない。

デザイナー氏はどちらかというと「善良なる弱者」といえるが、善良なる弱者では世の中から搾取されて終わる。

見方を変えれば、弱小縫製工場が生き残りのためになりふり構わず必死で工夫したといえなくもないが、立ち上がり次シーズンからデザインが大きく変更になるリスクを考えると、決して上手いやり方ではない。

実は衣料品業界にはこの手のことが掃いて捨てるほどある。

例えば、某大手縫製工場の年配の社長がいるが、実はその縫製工場を何十年も前に創業者一族を追い出して乗っ取ったという噂がある。
何十年も前のことなのでネットにも記録が残っていないが周辺の人からはいまだにその話がチラホラと出てくる。

一時期はシャツアパレル最大手といわれ、その後民事再生法を申請したトミヤアパレルだって、古い業界関係者は「パインシャツが名門のトミヤアパレルを乗っ取った」と話すことがある。
これは「華麗なる一族」よろしく、「小が大を飲み込んだ」合併だったようだ。

まあこんなことは氷山の一角である。

池井戸潤さんの小説やドラマのように、ついつい人は小規模工場や小規模企業を「善良なる弱者」を見てしまいがちである。
メディアも所詮人が報道するのだからそういう価値観に引きずられる。

昨今の産地企業や製造加工業に関する報道なんてそういう基調のものが多い。

しかし、実態は弱者といえどもそれなりの爪や牙を備えているし、生き残るためなら、自分よりも弱者を養分にすることだっていとわない。
まさに自然界の弱肉強食の摂理そのままである。

大型肉食獣に捕食されることもある小型肉食獣は、自分よりも小型の生物を捕食して生き延びるのである。

まあ、そんなわけで、産地企業も製造加工業も決して「善良なる弱者」ではないので、提携する個人デザイナーや個人業者、小規模業者はくれぐれも注意が必要である。
世の中に必要なのは性善説ではなく、性悪説であると改めて思う。

久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276

 

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そんなわけで「現代風時代劇」の「下町ロケット ゴースト」をどうぞ~

ブランドロゴ入りのTシャツは意外と売りやすいアイテム

8月4日の土曜日、ビッグジョン大阪店のプレオープンにお邪魔した。

ジーンズメーカーのビッグジョンが、直営の大阪店を出店した。
今回は、8月5日に東京と大阪の同時オープンだという。

東京店は東京支社と併設で9坪の小さな店だが、大阪店は40坪の面積がある。
しかし、ビッグジョンとしてはとりあえず1年間の挑戦と位置付けており、ダメだった場合、1年間で撤退する。
売れ行きが良ければ、2年目が始まるということになる。

これに先駆けて、エドウインも堀江に大阪店をオープンした。

ジーンズメーカーもようやく直営店出店に積極的になり始めたといえる。

もちろん、これまでもエドウインもビッグジョンも直営店は出店していたが、これまで成功しないままに今に至っており、両社とも何度目かの仕切り直しだといえる。

ビッグジョンが今回、直営店出店に改めて積極的になったのは、岡山・児島の大型直営店が好調だからだとのことだ。

これまで何度か直営店を出店してきたが、いずれも長続きしていない。
長続きしていないということは、売上高が厳しかったということだろう。
売れていれば続けている。

これはエドウインとて同じだ。
売れ行きが悪かったから直営店が減ったのである。

これまで失敗続きだった直営店だが、児島店で好成績となったことからビッグジョンは自信を取り戻したのだろうと思う。

これに先駆けて、ビッグジョンとアダム・エ・ロペとのコラボ商品発売も始まった。

ムードだけでいうなら、ビッグジョンは少し上昇する兆しが出てきたのではないかと感じる。

これまでビッグジョンは、アダム・エ・ロペみたいな「イケてる」セレクトショップやブランドとコラボはあまりなかった(少しはあったが)し、それがウェブメディアに大きく載ることはなかった。今回はファッションスナップドットコムが掲載している。
それはなぜかというと、ブランド側もメディア側も「専業ジーンズメーカーはダサい」と思っていたからだ。これは当方の妄想ではない。はっきりと何度も目の前でそう言い切られた。

そのことから考えると、少しムードは好転しつつあるのではないかと感じられる。

背景には、大手有名各店はメジャーブランドをこぞって扱っており、同質化が進んでいたことが挙げられる。同質化を小手先の別注品番やらコラボ商品で凌いでいたにすぎず、同質化を回避するためにマイナーブランドを取り入れたいという各社の意向が働いているのではないかと考えられる。

とはいえ、このチャンスをぜひモノにしてもらいたいと願わずにはいられない。

両社の店舗は当たり前だが、ジーンズがほとんどで、ジーンズがメインに見えている。

しかし、ボトムスというのは売れにくい。
なぜかというと、どこかで教えてもらったのだが、だいたいの人は、パンツ1本に対してトップス3~5種類を着まわすのだそうだ。

例えば、ビッグジョンのワンウォッシュのスキニージーンズを1本買ったとする。
これに対して3種類~5種類くらいのトップスを着まわす人が多いらしい。
自分で考えてみてもそうで、トップスの所有数に比べるとズボンの所有数は少ない。
一つのジーンズに対して、いろいろなTシャツ、いろいろなポロシャツ、セーターなどを着まわす。

そうするとトップスほどズボンは売れないということになる。
売れる枚数はトップスより絶対的に少ない。

だからパンツ専門店はなかなか成立しにくい。

ハニーズのパンツ専門の新業態「パンツワールド」もあっという間にひっそりとなくなってしまった。

エドウインにしろビッグジョンにしろ、ジーンズが主力商品なのでどうしてもパンツ主体の店になってしまう。
今更、この2社にトータルアイテムを作れと言ったところで、不良在庫を増やしてお終いになるだろう。

しかし、どんなブランドでも作りやすくて効果的なトップスアイテムが一つある。

ブランドのロゴ入りTシャツである。

これはある人に指摘されて気が付いたのだが、ブランドのロゴ入りTシャツというのはすごく売れやすいのだそうだ。
そのショップなりブランドのファンなら、ロゴ入りTシャツは買ってしまう商品なのだという。
おまけにジーンズやジャケットに比べると、Tシャツは安いからこれまた買いやすい。

だから、その人は、あるブランドに対して「比較的低価格のロゴ入りTシャツを作ればいい」と提案していた。

ところがブランド側は「俺たちダサいから」とか「俺たちのロゴ入りTシャツなんて誰が欲しいの?」と否定的になりがちだが、そのブランドの愛用者なら、ロゴ入りTシャツを買うことには抵抗はほとんどない。むしろ喜んで買うくらいではないかと思う。

だからエドウインとビッグジョンのショップももっとロゴ入りTシャツを全面的に打ち出して売れば良いのではないかと思う。
値段はジーンズより安くて買いやすいし、ちょうど今は夏だから半袖のTシャツは売りやすいし、売れやすい。

先日、ZOZOとしまむらのコラボTシャツがZOZOで売り出された。
シュプリームを丸パクリしたデザインと「しまむら」という平仮名のロゴが絶妙にダサかった。
値段もしまむらではあり得ないほど高い値段設定で2160円だった。
ダサい上に高いなんてTシャツを誰が買うのかと思ったが初日に完売していた。
完売といっても、製造関係者によると初回は、たった600枚投入しただけだということで、まあ、個人的にはあんなのを2000円も払って買いたいとは思わないから、最初から1万枚とか2万枚を用意しても売れ残っただろうと思っている。

まあ、それはさておき、あんなのでもそれなりに売れるのだから、エドウインやビッグジョンのロゴ入りTシャツもそれなりに売れるだろう。
何より、エドウインのグループ会社である、LEEのロゴ入りTシャツは売れているではないか。

また、あんなにクソダサいチャンピオンのロゴ入りTシャツだって売れているじゃないか。

ということは、ブランドロゴのデザインが少々ダサくても売れやすいということである。

そんなわけで、もう少し両店ともブランドロゴ入りTシャツを目立つように陳列して販売してみてはどうか。

また、売れ行きが鈍いブランドやショップは、自ブランドのロゴ入りTシャツの発売を検討してみてはどうか。その店を利用しているファンからするとブランドロゴ入りTシャツというのは絶対に欲しいアイテムの一つだからだ。

業界人の嗜好とお客の嗜好はちょっと違っていることが多く、ブランドロゴ入りTシャツに関する嗜好もその一つといえるのではないか。

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エドウインのロゴ入りTシャツをどうぞ~

洋服の製造を完全受注生産にしても廃棄問題・売れ残り問題はなくならない

洋服の廃棄が話題になっているが、なぜか「焼却」という言葉が頻繁につかわれているが、洋服が生地だけで作られているなら焼却も可能だろうが、付属や副資材が使われているから焼却は無理で、産業廃棄物として処理される。
もしかして「償却」という言葉を聞いて「焼却」と変換されてしまったのだろうか。

それ以外に、日本には何十年も前から「バッタ屋」という職種があり、さまざまなブランドの在庫品を安く仕入れてきて安く売る。
当方が手伝っているラック・ドゥもその一つだし、大手メディアでときどき取り上げられるショーイチもその一つだ。
ジーンズメイトも創業当時はジーンズ関連のバッタ屋だったといわれている。
それ以外にもそういう業者は数えきれないほど存在する。
実際、当方は、違うバッタ屋何軒かで何度か買い物をしたことがある。

http://doluck.jp/

 

本当にさまざまなブランドの不良在庫品がバッタ市場には流れてくる。
アーバンリサーチ、タケオキクチ、ユナイテッドアローズという錚々たるブランドの不良在庫品もバッタ屋の店頭で見たことがあるし、世間的には安売りで知られ、最後の一枚まで売り切ると思われているしまむらの在庫品もバッタ屋の店頭で見たことがある。
しまむらの値札は1500円だったが、バッタ屋はそれを590円に値下げして販売して無事完売していた。
中には大手セレクトショップや有名ブランドのサンプル品もバッタ屋に流れてくる。

産廃として処分するのと、バッタ屋に安値で払い下げるという2通りの処分方法があるのだが、どちらにもメリットとデメリットが存在する。

産廃として処理されるのメリットは、安売り市場に出回らないのでブランド価値が維持できる。
デメリットは、産廃処理費用がかかるということと、近年注目されているサスティナビリティとエシカルに反するというところである。
ちなみに個人的には過剰なサスティナビリティも過剰なエシカルもあまり好きではない。

バッタ屋に払い下げたときのデメリットは、産廃だと金を払わないといけないのに、バッタ屋だと少額とはいえ金をもらえる点にある。
デメリットは、ブランド価値が大きく毀損する点である。

そういえば、今年7月上旬に、天満のバッタ屋でアースミュージック&エコロジーのサンダルが399円で売られていて、その3週間後くらいに訪れた際、299円に値引きされていた。今でも何足か残ってて売られているはずだ。

 

どちらの処分方法を選ぶのかは、経営者判断にならざるを得ない。
ブランド価値を維持するのか、目先の少額な現金を取るのか、である。

売れ残り品の処分をしなくて済むようにするなら、過剰供給はやめねばならない。
その一つの方法としてオーダーメードのような受注生産が注目されている。

じゃあ、それで解決でめでたしめでたしとはならない。

洋服を作るための生地、裏地、芯地、ボタン、ファスナー、織りネームなどは常に大量生産され続けている。

そしてそれらをメーカーや問屋が大量に備蓄しているのである。

例えば、タレントが思い付きでブランドを開始するときに、どうしてすぐに商品が作れるのかというと、洋服を作るためのそれら材料がメーカーや問屋にたっぷり備蓄されているからである。

小規模ブランドや小規模デザイナーズブランドがいとも簡単に直近で商品を作ることができるのは、それらの材料がメーカーや問屋にたっぷり備蓄されているからである。

そして需要が少なくなれば、備蓄されていて動きの悪い商材は廃棄されるかこれまた材料のバッタ屋に二束三文で売り飛ばされることになる。

エドウインの本社がある西日暮里には1メートル100円くらいの安い生地を売っている店が何軒もあるが、あれらはそういう材料のバッタ屋なのである。

洋服製造の部分だけをオーダーメードや受注生産に切り替えたところで廃棄ないし安売りはなくならず、材料段階でそれが行われるだけのことであり、さらにいえば、いつでも生地が織れる・編めるように、糸も大量に備蓄されているし、糸の元となる原料も大量に備蓄されている。

これが事実であり、そこまでを解決するとなるとどれほどの費用やシステムの構築が必要になるのか想像もできない。

じゃあ、どうして、そういう生産しかできないのかというと、各段階で採算ベースに乗る「経済ロット」というものがあるからだ。

その一端はこのブログに詳しい。編み生地の場合がわかりやすく説明されている。

ロットと在庫とわたし

http://www.ulcloworks.net/posts/4611965

しかし、生地商社さんは各色のバランスを生産コストを一律にしてストックしておく必要があるため一色辺りの経済ロットで生産して在庫を持つことになる。

染色の経済ロットは染色工場によって様々だが、概ね6反/色というのがある程度の規模の工場が提示している経済ロットである。
なのでこれ以下の数量に関しては加工賃にチャージアップなどの経費が加算されるので基本的にはこの経済ロットに応じて加工していることが多い。

一つの生地品番あたり、染色ロットが満たせても、色数が少なければ編みの経済ロットをクリアすることができない可能性がある。
無地編みの場合、生機(染色前の生地)の経済ロットは生地組織によるが基本的には「糸ひと立て分」が提示されるケースが多い。
「糸ひと立て分」とは、編み機のフィーダーと呼ばれる糸を送り込む糸口の数に合わせて糸を買うロットのことを意味するので生地によるのだが、わかりやすくするために例として今回は一般的な量産型の30インチ28ゲージという編機を利用した天竺という生地を編む場合で話を進めていく。

30インチ28ゲージ天竺の機械のフィーダーは高速機なら国内はほとんどが90口である。
つまり「糸ひと立て分」は糸90本分ということになる。
糸は分割といって小割して使うこともできるが、このひと立て分という意味の中に分割してという言葉は付かない。
糸は綿糸の場合1本1.875kgが中心で、糸ひと立て分は90口x1.875kg=168.75kg(30/1天竺40m巻き1反がだいたい11kgくらいなので15反とちょっと)が編みの経済ロットという認識になる。

ところが、綿糸は90本という綺麗な数字で買うことができない。
1ケースという単位で買い取る必要があり、1ケースは12本入りの22.5kgが糸を買う際の最小ロットになる。
90本揃えなければならないので90口÷12本=7.5ケース。そして糸は半端ケースで買えないため切り上げ8ケースという量の糸を買うことになる。
8ケース×22.5kg/ケース÷11kg/反=16反と余り糸4kgが編みの経済ロットになる。

これと、先程の染色ロットの最小公倍数がいわゆる経済ロットということになる。
色数はストック生地を販売していく上で2色展開などではあまりにも寂しいので、4-6色が少なくとも容易されている。
そして一色6反以上×色数でアソートを組んで編みの経済ロットと染色ロットの最小公倍数を探していくのである。
例として単純に全部の色が6反の加工をするとした場合、染め6反と編み16反の最小公倍数は48反編んで8色染めるのが答えになる。

アパレルメーカーさんに別注の生地提案をして一色6反染めて編みで48反という注文をもらうのは簡単ではない。
なのでニッター編工場は生地問屋めがけて営業をかけたほうが工場稼働をまもりやすい。

しかしこうした経済ロットをクリアして積み込まれた在庫をキレイに売り捌くのは非常に難しい。必ず売れ残りの在庫が出る。
こうしたものがバッタ屋などに破格で流通していくことになる。生地の世界でもこのようなことはザラである。

ちょっと長いが読んでいただければ、生地作りの数量問題の一端が理解できる。

編みの場合は、重さ(㎏)が基本となっているが、織りの場合は、長さ(メートル)が基本となる。
これは生地の場合だが、ほかの付属や副資材、織りネームなども同様の理屈で「経済ロット」が求められる。

廃棄問題に心を痛めるのは個人の自由だが、ここの部分を変えない限りは廃棄問題はなくならない。
そしてそれを変えるには膨大な費用と膨大な手間がかかる。綺麗事のスローガンを念仏のように唱えるだけでは何も変わらないし、変えられない。

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バッタ屋の小説があったよ~

銭湯からジーンズショップに転換した企業があったほど、昔はジーンズが「売れる商品」だった

先日、ワークとジーンズカジュアルを両刀で攻めるブランド「ブルーモンスタークロージング」を運営するブリッツワークスの青野睦社長と対談した。対談というと大げさだが雑談した。

この雑談はブリッツワークスのウェブサイトに記事として近々掲載される予定となっている。

https://www.bmc-tokyo.com/

↑ここね。

で、ついでに告知・拡散を頼まれたのでやっておくと、5月の連休にセメントプロデュースデザインの金谷勉社長と居酒屋で対談した。その様子が動画で編集されているので興味のある人は見ていただきたい。

当方は自分の顔と声が嫌いなので見ようとは思わないが。(笑)
金持ちになったら中条きよしみたいな顔に整形したいと思っている。

8月から配信開始なのでどうぞ。 ↑

それはさておき、青野社長との対談で、様々なジーンズカジュアル店や国内ジーンズメーカーの話が出たが、その中で、ジーンズカジュアルチェーン店の生い立ちみたいなのも話題に上った。

某大手チェーン店はもともとワーキングウェア販売店(今でいうところのワークマン)だったが、ジーンズブームを見た創業者が、これを商機だと考えてジーンズ販売店に変えた。

また、2015年末で廃業したジーンズショップ デンバーを運営していたモリオカという会社は、もともとは銭湯として起業している。ところが折からのジーンズブームを見た創業者がジーンズ販売店へと業種を変更した。

当方は生まれてなかったり、生まれて間もなかったりするが、1960年代後半~1970年代にかけて、ジーンズが爆発的に売れた。
ジーンズというのはホットなアイテムだったといえる。
だから、それを見ていた人たちが「チャンスがある」ということで、ジーンズ販売店に業種を変更することが相次いだ。
ワーキングウェアからジーンズとか、スーツからジーンズというのはまだわかるが、銭湯からジーンズというのは今からするとちょっと想像できない。

しかし、80年代~90年代前半に続々と街中にコンビニができ、酒屋や小間物屋がフランチャイズでコンビニに変わっていったが、それと同様だと考えれば何となく当時のムードはわかる。

90年代後半~2005年くらいにかけては携帯電話ショップが続々とできて、商店街の電器屋なんかが携帯電話ショップに変わっていった。

まあ、そういうことである。

現在、わざわざジーンズショップを開業したり、コンビニを開業したり、携帯電話ショップを開業したりしようとする人はほとんどいない。
もう優勝劣敗がついてしまったし、マーケットも飽和状態にある。いるとしたらよほどのお馬鹿さんか変わり者だろう。

そして90年代後半からはジーンズショップが業態変更を始めている。
従来型のジーンズとジーンズショップが曲がり角になりつつあると見えたのだろう。

水戸のジーンズショップ「ポイント」は「ローリーズファーム」という自社ブランドを開発して、SPA企業へと転身を図った。
これが現在のアダストリアホールディングスである。

また、東大阪のジーンズショップであるジグ三信はセレクトショップ「アーバンリサーチ」を97年に立ち上げた。現在は社名もアーバンリサーチに変わっている。

こうして見ると、90年代後半は従来型のジーンズが曲がり角に差し掛かっており、その当時のホットな業態はSPAかセレクトショップだったといえる。

それから20年が経過した現在では、わざわざSPAブランドやセレクトショップを立ち上げようという人は減っている。
ゼロではないが20年前と比べると減っていると感じる。

今、起業したり業態を転換したりしようという人は、必ずウェブを前面に押し出す。
衣料品を売るにしてもウェブを介在させることがほとんどだ。

SPAブランドもセレクトショップも優勝劣敗が決しているし、市場を見渡しても飽和状態にある。
だから「海外へ進出せよ」とか「海外需要を取り込め」という議論になるが、SPAブランドはまだしも、いわゆる教科書的「セレクトショップ」では利益率も低く、各地のローカルトレンドに細かく対応しなくてはならないため、大規模企業にはなりにくい。

欧米のセレクトショップのほとんどが零細規模であることがそれを証明している。

SPAとて、海外進出とはいわず、立ち上げるだけでも莫大な資金が必要になる。

物事は何でもそうだが、黎明期には小規模企業が大雑把なプランと勢いだけでやっても何とかなるが、市場が成熟してくると、徐々に細分化され大規模な資本投下が求められるようになる。
今更、零細企業がSPAブランドを立ち上げることはかなり難しくなっている。
新たにSPAブランドを立ち上げるなら、中規模以上の企業が新ブランドとして立ち上げるか、そういう企業から支援されるかでないと不可能になっている。

デザイン業の黎明期には、オンワード樫山のデザイナーだった大河原邦男氏が、アニメのメカニックデザインへ転身して、後年、ガンダムのモビルスーツをデザインして大ヒットを飛ばしたが、今はそんなことは不可能になっている。

アパレルブランドのデザイナーが、アニメ制作会社にメカニックデザイナーやキャラクターデザイナーとして転身することは現在はほぼ不可能である。
これは成熟化し、細分化した結果そうなっており、SPAもセレクトショップも同様の状況にある。

そんなことをツラツラと考えると、「こだわり」だとか「本物」だとか掲げているジーンズショップの多くも当時の「売れるアイテム」「売りやすいアイテム」に飛びついただけだし、90年代に立ち上がったSPAやセレクトショップも同様だということがわかる。

「売れる物」「売りやすい物」を売るというのはビジネスとしては正解なので、そういう意味では、ジーンズもSPAもセレクトも今までの商品ややり方で売れないのなら、売れるように変わるというのが自然な流れなのではないかと思う。

とはいえ、どのように変われば良いのかというのは当方にもわからない。わかるならそれを指南して巨万の富を得て、中条きよしみたいな顔にとっくの昔に整形している。

とりあえずいえることは、「今まで通りのやり方以外は邪道」とか「新しいやり方は偽物」というような思考停止のままでは、永遠に売れるようにはならないということだけである。

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「ワークマン」がカジュアル業界に進出 ~ワーキングのカジュアル進出は昔からあった~

スーツ業界が、団塊世代の定年退職による需要激減を緩和するために4つの施策を採っていることを何度か書いた。

1、レディースビジネススーツの強化
2、カジュアルウェアの強化
3、低価格パターンオーダースーツの導入
4、カラオケや結婚式場運営などの異業種参入である。

需要激減に備えているのは、ワーキングユニホーム業界も同じで、大手販売店ワークマンのカジュアルウェア参入も同様の傾向であるといえる。

ワークマンがファッション市場に参入 新業態をSCに出店

https://www.wwdjapan.com/662658

作業着のワークマン(群馬県伊勢崎市、栗山清治・社長)は、新業態のカジュアルウエア店「ワークマンプラス(WORKMAN PLUS)」を東京・立川のショッピングセンター(SC)「ららぽーと立川立飛」に9月5日オープンする。これを手始めに全国のSCに大量出店し、数年後には100店舗、売上高120億円を計画する。主戦場である建設業に関わる労働者が減少傾向にあるため、作業着で培った機能性をスポーツウエアやアウトドアウエアに活用して、新しい需要を開拓する。

とのことである。

新業態の屋号に「プラス」を付けるのは、なんだか2004年当時に、デザインをファッション寄りに一新したユニクロが「ユニクロ プラス」を名乗っていたのと重なる。
「プラス」を付けるのは常道なのだろうか?

Zガンダムの量産機にZプラスがあったり、デルタガンダムの量産型にデルタプラスがあったりするようなものなのだろう。

ワークマンのカジュアル用途は数年前から盛んに「高機能なのに低価格がすごい」とSNSなどで拡散されている。

ワークマンは全国825店舗でプロ向けの作業着を販売しているが、2年前から一般客に向けた3つのPBの販売を始めた。PBは初年度の17年3月期に30億円、18年3月期に60億円を売り上げ、19年3月期は115億円に届く見通し。

100億円を突破する見込みなので一つのブランドとして独立しても良い規模になったといえる。

この記事ではちゃんと触れられているが、ワークマンはワークマン単体として見ていては誤る。

ワークマン単体では800億円弱の売上高があるのだが、それ以上の資金力がワークマンにはある。
知っている人は知っているが、知らない人は業界人でも知らない人が多い。

ワークマンは、売上高8500億円のベイシアグループの企業で、ホームセンターのカインズと同じグループ企業なのである。
800億円でもそれなりのパワーはあるが、8500億円という桁違いの資金力が背景にあることを忘れてはならない。

ワークマンの18年3月期業績は、チェーン全店売上高が797億円、純利益が78億円で7期連続で最高益を更新した。北関東を拠点にして売上高8500億円のベイシアグループに属しており、スーパーのベイシア、ホームセンターのカインズと並ぶ中核企業でもある。

とのことである。

需要減に苦しみ始めたワークウェア業界だが、カジュアルウェア業界への進出は今に始まったことではない。
例えば、ワーキングユニホームメーカー最大手の自重堂だが、量販店向けにカジュアルチノパンやカジュアルシャツを以前から企画生産している。そのほかにも量販店向けにカジュアルパンツなどを企画製造していたワーキングメーカーは数多くあった。

一定の数量は売れて、それなりの売上高にはなったが、各社ともブランドステイタスの向上にはつながらなかった。

ワークマンはそれを打ち破ることができるのかどうかというところに注目が集まる。

個人的な思い付きなのだが、ワークマンは「ワーク」を現場作業や屋外作業に限定するのではなく、オフィスワークにまで範疇を広げてみてはどうか。
吸汗速乾やストレッチ、軽量、防シワなどの機能性合成繊維を主体とするお得意の素材を使って、カジュアルセットアップやカジュアルスーツを低価格で発売してみてはどうだろうか。

ジーユーのスーパーストレットドライスーツのように、合繊主体のカジュアルスーツで、スーツとしても着用できるし、上下バラバラでも着用できるというカジュアルスーツだ。

ユニクロの「感動ジャケット」と「感動パンツ」はセットで定価1万円くらいだ。
ジーユーのセットアップは定価7000円くらいだ。

これらと同等かそれ以下の価格で発売してみてはどうだろうか。

某業界紙では「ユニフォーム担当」は「ワーキング」「オフィス」「白衣」などの分野を兼任する。
オフィスユニフォームとは何かというと、いわゆる事務員が着ている制服で、男性も女性もスーツ調のデザインが多い。
業界紙の大区分では同じユニフォームなのだから、オフィス分野への越境を名目にして、機能性低価格カジュアルスーツへ進出するのはどうだろうか。

ノースフェイスやらヘリーハンセンやらスノーピークやらロゴスやらの強力な競合が犇めくアウトドア分野よりもよほど勝ち目は大きいような気がするが。

ワークマンなら積極的に展開しそうな気がするのだが。

いずれにせよ、大手各社は従来の事業以外に、新規分野への参入をドンドンはたすようになる。
業界やら専門分野やらの壁は崩され、ますますボーダレスな時代になりつつある。

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ワーキングユニフォームメーカー、クロダルマのカジュアルっぽいパンツ

カジュアルとワーキングの両業界を攻めているブルーモンスタークロージング(BMC)の商品もどうぞ~

外資ファストファッションは国内低価格ブランドに負けた

2008年ごろに上陸し、猛威を振るった外資系グローバル低価格SPAの勢いが目に見えて衰えてきた。

H&Mの銀座店もついに閉店してしまった。H&M自体は日本撤退は考えられないものの、フォーエバー21は店舗数も20店舗を下回っているし、いつ日本から撤退してもおかしくはない。

遅れて上陸したオールドネイビーはわずか4年半で2017年1月に日本から撤退してしまった。
まあ、それだけ売れてなかったということである。

それについてポストセブンに原稿を書いた。

H&Mなど外資ファストファッションが苦戦に転じた3つの理由

https://www.news-postseven.com/archives/20180718_720418.html

多くの業界メディア人が論考を書いているが正直どれもしっくりこない。
もちろん自分の見方がすべて正しいとはいわない。

それでも例えば、

ギンザシックスで人の流れが変わったとか、洋服を長く使いたい人が増えた、とかそういう見方はちょっと的外れではないかと思う。

まずギンザシックスだが、たしかに前身の松坂屋銀座店よりは売上高が大幅に増えたが、しかし今後さらに伸びる気配はなく、600億円くらいで横ばいから微減になると見ている。

「600億円はすごい」という称賛が業界からはあふれたが、三越銀座店もそれくらい売っているから、銀座という立地ならそれくらい売れて当然なのではないかと思う。
逆に前身の松坂屋銀座店がたった100億円程度しか売れなかった方があの立地ではおかしい。

洋服を長く使いたいというのも疑問だ。
可処分所得の伸び悩みや減少で、短期間で買い替えたくないというニーズはあるとは思うが、「洋服を長く使いたい」が先に来るのではなく、「気に入った洋服があったら」長く使いたいのであって、順序が逆である。

「長く使いたい」が前提条件ではない。
気に入らない服ならすぐに捨てても良いというのが消費者である。
しかも、そのために「安い」ファストファッションを利用してきたのだから、まるっきり順序が逆だ。

当方が考える外資系グローバル低価格SPA(ファストファッションと略す)が日本国内で苦戦し始めた理由は次の3つだ。

(1)価格が安いだけで品質が劣っていた
(2)日本独自のトレンドに対応できなかった
(3)日本独自の低価格トレンドブランドが成長した

である。
1については、上陸当初からさんざん言われてきて、何を今更である。
まあ、一度か二度買ってみたが、品質が悪いのでリピーターにはならなかったということだろう。

ユニクロはおろかジーユーにも品質的に遠く及ばないブランドがほとんどで、価格帯はそのジーユーと変わらない。
だったらジーユーで買えば良いということになるのは当たり前だろう。

2は、業界では知られているが、例えば2015年のガウチョパンツブームは世界的トレンドなどではなく、日本国内の限定トレンドだった。
それに対応したジーユーは100万本を売ったが、グローバル企画である外資系ファストファッションはほとんど対応できなかった。

ローカルトレンドが存在する国は日本だけではなく、どの国でもローカルトレンドは存在する。
ユニクロだってイスラム教徒が多い中東向けにはローカルトレンドに対応した商品を販売している。
日本にローカルトレンドが存在するからと言って、日本が遅れているとか日本が負けるとかそういう論調になることは的外れでしかない。

アメリカだってローカルトレンドはある。ジョギングの帰りみたいな服装が「アスレジャー」として一大トレンドになるなんていうのは完全なるローカルトレンドで服装に無頓着なアメリカ人らしいといえる。

そして、あまり指摘されないが3が一番大きな要因なのではないかと思う。

「廉価版粗悪ユニクロ」として2006年にスタートしたジーユーがトレンド対応低価格ブランドへと変身したのは2010年のこと。
2012年には562億円まで売上高を拡大し、そこからわずか6年で1500億円前後も売上高を増やしている。(2018年8月期決算では2000億円超の売上高を見込む)
この1500億円は外資ファストファッションからもぎ取った売上高だといえる。

ジーユーだけではない。
ストライプインターナショナル(旧社名クロスカンパニー)もそうだ。
決算を公開していないが、2010年の売上高は400億円だったが、2017年1月期は単体の売上高は990億円となっている。
7年間で600億円弱も売上高を伸ばしており、これも頻発するタイムセールと低価格商品で外資ファストファッションからもぎ取った売上高だといえる。

また、アダストリアホールディングスもそうだ。
2015年にトリニティアーツと合併したので、単純比較はできないが、今では2000億円以上の巨大SPAアパレルに成長した。
この成長も外資ファストファッションから売上高をもぎり取った結果といえる。

そのほか、ユナイテッドアローズの低価格ブランド「コーエン」の成長や、アーバンリサーチが開始した低価格ブランド「センスオブプレイス」など国内企業の低価格ブランドは増えているし、この8年間で売上高を拡大したものも多い。

となると、それだけ外資ファストファッションは売上高を国内各ブランドに売上高を削り取られてきたといえる。

外資ファストファッションが2008年、2009年の上陸時に持て囃され、その後数年間支持されたのは、「高トレンド」という部分にあったと思う。
低価格・高トレンドというブランドが日本には少なく、その需要が取り込めたのだと思うが、上記の各社がトレンド性を強め、価格据え置きになれば、グローバル企画でピントがぼけたブランドよりも、国内の雰囲気を反映する国内ブランドの方が支持されるのは当たり前だ。おまけに素材や縫製の品質は国内ブランドの方が高い。

2010年以降のジーユーはグローバルファストファッションキラーだったし、ストライプやアダストリアもキラーぶりを発揮したといえる。

ファッション業界やメディア業界には外資ブランドが受けないことが「ファッションへの渇望がなくなった」とか「感度が退化した」とかいう人が多いが、そんな見方は強度の舶来コンプレックスでしかないし、当方としては国内ブランドはよくぞ外資ファストファッションを追い込んだと各社を褒め称えたいほどである。

よくやった!国内ブランド。

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コーエンの激安品をどうぞ

業績の明暗が表すユニクロとジーユーの値下げ方針の違い ~今春夏の店頭を見て~

今春物から、ユニクロとジーユーがそれぞれ異なった値下げの手法をとるようになった。

ユニクロは今春夏物から値下げパターンが変えた。
自動的・段階的値下げはこれまでと同じだが、その値下げ幅が小さくなった。
反面、同じ商品でも色柄によって値下げ幅が異なるようになった。

昨年冬物までは、自動的・段階的値下げされ、それまで同様、期末には驚くほどの安値になった。
それが今春物からはそこまで値下げされなくなった。

お気づきだろうか?

2990円のパンツはせいぜいが1990円までにしか値下げされない。
1290円に値下げされるのはよほど時間が経過してからになっている。

シャツしかり、アウター類しかりだ。

しかし、売れ行きが鈍いと思われる商品は容赦なく値下げされる。
アンダーソンとトーマス・マイヤーは値下げされている物が多いが、アンダーソンは昨年秋冬物に比べると値下げ幅が小さい。
昨年秋冬物でデビューとなったJWアンダーソンコラボだが、はっきりいって投げ売りされまくっていた。

ウールをふんだんに使ったセーター類は本来なら製造コストが高いからそこまでの値引きはされないはずなのに、「魚柄ラムウールセーター」は最終500円にまで値下げされていた。
また、フェアアイルモックネックセーターも990円にまで値下げされたし、カラフルボーダー柄のファインゲージセーターも990円に値下げされた。これらをいずれも当方は底値または底値に近い価格で買っており、全然アンダーソンなんて注目していなかったのに、昨年秋冬にユニクロで買った商品の中で最も多かったのがアンダーソンコラボになってしまった。

今春夏のアンダーソンも通常ラインに比べて値下げされている物が多いが、秋冬物ほど値下がりしていない。切り替えボーダー柄Tシャツだっていまだに990円で踏ん張っている。
ロング丈シャツは3990円が最終1990円に値下がりしたが、1990円になる前にほどんど完売となっている。

また、これまでユニクロは同一品番は同一価格で値下げされていたが、今春物から、同一品番でも動きの鈍い色柄だけが大幅に値下げされるようになった。
例えば、春先に綿セーターが何種類か投入されたが、薄手の家庭洗濯可能なセーターの中で赤とピンクが不人気だったのか、いきなり500円に値下げされた。他のカラーが990円でとどまっているにもかかわらずだ。当然、当方はその赤を500円で買った。

今夏のユニクロUのTシャツもそうだ。袖リブの色だけが本体と異なる「カラーブロックTシャツ」という品名の商品があるが、黒、グリーン、紺は990円でとどまっているのに対し、赤茶色だけが790円に値下げされているし、「ユニクロU」のボーダー柄Tシャツも同様で赤茶色とあせたピンクのボーダー柄だけが790円に早くも値下げされている。

これと対照的なのが今夏のジーユーで、190円・390円・590円・790円というバッタ屋価格の商品が目白押しである。
はっきり言ってなまじのバッタ屋よりも安い商品が多い。
バッタ屋を越えたジーユーというのはなかなかすごい。

390円に値下げされていて、5月に買ったデニムの水玉プリントシャツ

 

 

キム・ジョーンズとのコラボアイテムなんてもうとっくに投げ売り価格で、カラーブロックセーター(冬向け素材)なんて今や390円である。ルイ・ヴィトン、ディオールなどのスーパーブランドを歴任したデザイナーの商品とは思えないバッタ屋価格となっている。

夏物に関してはユニクロよりもジーユーで買うことが増えた。
麻混の開襟シャツを790円で買ったし、先日、このブログでも紹介した切りっぱなしスキニージーンズも790円で買った。
ワイドボーダー柄Tシャツも590円になったときに3枚買った。

この安さを体験するとまともな店で服は買えなくなるほどの衝撃がある。

ユニクロとジーユーの値下げの違いを考察すると、ユニクロが以前よりもあまり値下がりしなくなった理由として、業界の製造関係からは「今春物から製造原価率を上げたから」だという声が聞こえる。それによると「製造原価率を5%上げてさらに品質を高めた。そのため、以前ほどの値下げはされなくなった」と言われている。それが正しいとするとユニクロの平均製造原価率は45%前後ということになり、あの数十万枚という量の多さで、その原価率の高さは驚異的といえる。
そこらの細かいロットしかないくせに「原価率50%ガー」とアホの一つ覚えのようにいっている某ブランドの商品とはまったく比べ物にならない。

一方、ここまで投げ売りするジーユーは恐らく在庫がダブついているのだろうと推察される。

さて、ユニクロとジーユーを擁するファーストリテイリングの2018年8月期第三四半期決算が発表された。
それによるとユニクロは増収増益であるものの、ジーユーは減益となった。特に3~5月は既存店売上高が前年を割り込み、大幅減益となっている。大幅減益となった理由は、在庫処分を進めた結果だ。

そしてジーユーは第4四半期も在庫処分を進めるため、粗利率が低下し、赤字幅が拡大すると見通している。

ジーユー/3~5月既存店売上減、春夏商品不振・在庫処分で赤字拡大

ジーユー/3~5月既存店売上減、春夏商品不振・在庫処分で赤字拡大

ジーユーの2018年8月期第3四半期の売上収益は1666億円(前年同期比6.4%増)、営業利益は150億円(1.7%増)と、増収増益になった。

一方、ジーユーの3~5月の既存店売上高は、減収となった。
春夏のキャンペーンで打ち出したマドラスチェックのボトムス、トップスや、ロングスカートなどの商品の販売が不振で、計画を大幅に下回った 。

売上が計画を大幅に下回ったため、値引きを早期に進めたことにより、3~5月の売上総利益率は前年同期比1.9ポイント低下し、また、売上高販管費率は同1.2ポイント上昇した。
営業利益は同20.0%の大幅な減益となった。

また、第4四半期は、シーズン末の在庫処分が増え、粗利益率が低下、赤字幅が拡大する見込みで、下期、通期ともに減益となることを予想している。

とのことである。
当方が喜んで買っている値下げ品はやはり在庫処分だったのである。

だいたい当方が喜んで投げ売り品を買うブランドは、その時、苦戦傾向にある場合が多い。
今年5月、6月のジーユーもそうだし、2017年のライトオンもそうだし、ジーンズメイトもそうだ。
だから当方が「これは破格値!」と紹介するブランドは概してその時点では不良在庫を抱えており、苦肉の策として投げ売りをしているということである。

ジーユーの春夏の店頭を見ると、たしかに商品のクオリティもデザインも良くなってるが、トレンドに偏重しすぎていると感じる。ベーシックアイテムが減った。そのあたりを当方が面白いと見ていてその投げ売り価格に魅力を感じているのだが、マス層のニーズとは少し異なっているといえる。

もちろん、ジーユーもそれに気が付いていて、夏物には無地のポロシャツとか無地のTシャツなんていうベーシック品も差し込まれているが、必然性のなさと売り場での見せ方の下手さが災いして全く売れずに590円の投げ売り価格となっている。

例えば、マーセライズドTシャツだ。今590円にまで値下がりしている。
無地で色展開も多く、通常ならもっと売れるはずだが、全商品がビニール袋に入れられている。
これは触られて汚れないようにという工夫とともに、マーセライズド加工された生地がテロっとしていて畳みにくいからではないかと思う。
マーセライズド加工とはシルケット加工とも呼ばれ、シルクみたいなソフト感と光沢感を綿に与える加工である。

そのため、ビニール袋に入ったままではその肌触りの良さはまったく実感されない。
なぜならビニール袋に入っているため触れないからだ。

いくらPOPで「マーセライズド加工」なんて書いたって意味がない。
それに一般消費者からすれば「マーセライズド加工」なんていわれたところで何のこっちゃでしかない。

完全に売り方・見せ方のミスである。

下期は、商品構成を見直し、防寒衣料、デニム、Tシャツ、ラウンジウエアといった実需商品の割合を増し、これらの実需商品の中にもジーユーらしいトレンドの要素を取り入れる。

とのことで増えすぎた品番数を絞り、ベーシックアイテムを強化するとのことだが、結局洋服屋というのはベーシック一辺倒でもダメだし、トレンド一辺倒でもダメだということで、ベーシックとトレンドのバランスをどう取るのかということが永遠の課題だといえる。
そしてそのバランスの取り方を誤ると今回のジーユーのようになるし、過去のユニクロの伸び悩みのようになってしまう。

それにしても、店頭の動きがそのままジーユーの3~5月の業績に反映されていたことには笑ってしまう。
店頭を見ていると、AIだ、POSだ、KPI指標だ、と難しいことを言わずとも、ある程度の売れ行きは推察できてしまう。店頭の動きをどれだけ正しく見るか、衣料品ビジネスはその一点にかかっており、それができていない人が多すぎるから「斜陽産業」と呼ばれるような事態に陥ってしまったといえるだろう。

【告知】8月24日にあのマサ佐藤(佐藤正臣)氏と有料トークショーを開催します。
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ZOZOのオーダースーツの価格は極めて平均的 ~ZOZOよりもお買い得なオーダースーツはこんなにある~

本日はちょっとお気楽に。

先日、ZOZOのオーダースーツが発表されたが、すごく安いという印象が世間で独り歩きしているが、実際のところはそんなに安くない。
今回はお試しで2万円台だが、定価は39,900円と発表されている。

業界の人ならだれでも知っている知識だが、オーダースーツには、大きく分けて3種類のオーダースーツがある。

基本的なことのおさらいをさらっと簡単にしておく。

1、パターンオーダー
2、イージーオーダー
3、フルオーダ

の3つがある。

パターンオーダーとは、基となるパターン(型紙)があり、それを体型に合わせて修正する。
標準仕様の服を着て、採寸し、それを基として各部を調節する。
現在の国内価格だと2万~5万円くらいでできる。ZOZOのオーダースーツは価格的にこれだ。

イージーオーダーとは、その人と似た体型の人用の型紙を修正して使う。これはパターンオーダーよりも少し高い。

フルオーダーとは採寸して、その人専用の型紙を作るところから始める。これは最低でも何十万円かはする。

だから、ZOZOが「フルオーダー」と言っているのは、完全に誤りで「パターンオーダー」が正しい。

で、市場には2万~4万円程度のパターンオーダーはあふれかえっており、取り立ててZOZOが割安ということもない。

付け加えておくと、素材の「スーパー110」というのは高級ウール素材だが、すでに10何年前のツープライススーツショップでも使われていた。数字が大きくなるごとに糸が細くなって高級素材となるが、「スーパー150」以上は細すぎて耐久性がなくなって、スーツ地としては実用に適さないと言われている。

ちなみに当方が12年前くらいに買ったスーパースーツストアのスーツにもすでに「スーパー110」が使われていた。
既製服なので19000円くらいだったと思う。

近年、団塊世代のリタイアとスーツのカジュアル化によって、スーツ販売各社は既製服スーツの売れ行きが鈍ってきた。
そのため、各種方策を繰り出してその穴埋めをしていたのだが、その方策の一つが低価格パターンオーダーの導入だった。

そのほかの方策は、レディースビジネススーツ類の拡充、カジュアルウェアの拡充である。

まとめると

1、低価格パターンオーダーの導入
2、レディースビジネスウェアの拡充
3、カジュアルウェアの拡充

がスーツ販売各社の2007年以降の方策である。

だから、39900円程度のパターンオーダーなんて実際は珍しくもなんともない。
世間にはもっと安いパターンオーダーが実は溢れている。

今回は各社の低価格パターンオーダーを見てみよう。

〇まずは関西ローカルチェーン店のツキムラ

http://www.tukimura.com/

1着28,800円、3着50,000円という安さ。これだけですでにZOZOより破格に安い。

 

〇次にかつて「ザ・スーパースーツストア」でツープライス業態を開発したオンリー

https://only.co.jp/

1着28,000円、2着38,000円という破格値。2着作ってもZOZOより1900円も安い。
1900円あればジーユーで590円のTシャツが3枚買えてしまう。

 

〇エフワン かつては既製スーツを販売していたが、経営破綻して縫製工場グッドヒルの子会社になってからオーダー専門店へと変わった

https://www.f-one.co.jp/

1着29,800円でここは纏めオーダーはやっていない。

 

〇最近店舗数を増やしたグローバルスタイル

https://www.global-style.jp/

1着38,000円だが2着で47,000円という値引きスタイル。

 

〇大手ツープライススーツショップの「スーツカンパニー」の派生形態「ユニバーサルランゲージ」

https://www.uktsc.com/custom-order/

1着39,000円、2着49,000円という安さ。

 

〇最近始まったオンワード樫山の新業態「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」

https://kashiyama1927.jp/

1着30,000円(税抜き)が最低価格。

とざっと駆け足で見てきたが、ZOZOのオーダースーツの価格がどれほど「平均点」なのかということがわかるだろう。
39,900円のオーダースーツなんて珍しくもなんともない。

また、一度作ったら採寸データは残るから、リピートするのも簡単で、IT化が進んでいるから、パソコンやスマホからデータを自分で入力して買えるというサービスも別に珍しくない。現に「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」は指定した場所にフィッターが出張してきて採寸してくれるだけでなく、2着目からはスマホからもオーダーできるし、最速で1週間で完成するから、ZOZOのサービスが霞んで見える。

逆にあんなに12回もクルクル回らねばならない上に、採寸に誤差が生じやすい水玉模様のZOZOSUITよりもプロのフィッターに出張してきてもらった方が手軽だし信頼できる。

こうして見ると、ZOZOよりも価格競争力もあり、サービスも優れているオーダースーツは業界には掃いて捨てるほどある。
ZOZOが上手いのは現時点ではイメージ戦略だけということができる。

それにしてもメディアはこういう競争力のあるブランドを紹介せずに何をイメージ優先のZOZOばかり紹介しているのか。
偏向報道と叩かれても当然の報いといえる。

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苦し紛れの思い付きで専門外の商品を扱ったって絶対に成功しない

先日、某大手SPA企業の中の1ブランドのOEM(実態はODM)を担当している方とお会いした。

その企業が抱えるブランド群はこのところそろって不振で決算は大幅減益となっている。
またインターネット通販を見ていても、タイムセールの連発や2点購入割引などの値引き販売が続いており、在庫を捌くためになりふり構わない様子が見て取れる。

その方の担当しているブランドは、少し前から200円くらいのボールペンやノートなどの文具も販売を始めており、洋服販売の不振を何を使ってでも穴埋めしたいという姿勢が露わとなっていた。

ところがさらに驚くことに、このブランドは秋口からシャンプーやヘアワックスなどの販売も計画しているという。
これが事実なら、最早、そこまで手を出さなければならないほどに洋服の販売は不振を極めているといえる。

しかし、これは苦し紛れとしか言いようがないし、恐らく成果は出ないだろうと見ている。

なぜなら、シャンプーやヘアワックスなどの整髪剤を洋服ブランドの店で買う理由がないからだ。

コンビニでも販売しているし、今は隆盛を極めるドラッグストアでも販売している。
しかもドラッグストアは幾分か割引販売している。

さらに言えば、行きつけの美容室やヘアサロンでも買える。
美容室やヘアサロンでは通常のコンビニ、ドラッグに置いていない整髪剤を買える。

こうなると、洋服の店で「わざわざ」整髪剤を買わねばならない理由は何一つない。

ナショナルブランドの割引品が欲しければドラッグに、定価のナショナルブランドが欲しければコンビニに、価格は高いがコンビニにもドラッグにもない本格商品が欲しければ美容室に、という消費行動となり、そこに髪についてズブの素人だった洋服店が入り込む余地はまったくない。

そして、シャンプーなどのその手の商品は無印良品でも売っている。

これだけ強力なライバルに挟まれていて、活路があると思う方がおかしい。
よほど市場の現状を見ていないのではないかと思う。

近年、ライフスタイル提案型ショップが流行っているが、多くの洋服ブランドは洋服店の域を越えられていない。
餅は餅屋という言葉があるように、洋服屋は洋服屋でしかなく、その壁を乗り越えることは並大抵の努力ではできない。
だから多くの場合は、洋服にバッグ類と靴を数点ずつ置いてお茶を濁しているが、通常の洋服ブランドではそれが限界なのである。

無印良品のように、洋服から住宅、インテリア、食品、整髪剤などライフスタイル全般を網羅したブランドを構築することは至難の業で、無印良品も30年近い歴史を積み重ねてたどり着いており、苦し紛れの思いつきで追いつけるレベルでは到底ない。

唯一、シャンプーやヘアワックスが売れる可能性があるなら、コンビニにもドラッグにも美容室にも置いていない希少性の高い商材を集められた場合だけだろう。

それとてもプロモーションが上手く行っての話であり、プロモーションは必ず成功するという類のものではない。

また店構えも無印良品のごとくトータルライフスタイル提案にふさわしいものが要求され、通常の30坪とか40坪程度の洋服店にシャンプーの棚を1つ作りました程度では売れるはずがないし、このSPA企業の過去からの実績を顧みると、シャンプーの棚を1つか2つ作ってお終いとなるのが関の山である。

こんな当たり前のことがなぜわからないのか不思議でならない。
それとも負けるとわかっているがやらざるを得ないほどに洋服の販売が不振を極めているのか。

もちろん、何事もトライ&エラーを繰り返すことでしか成功しない。
頭でわかっているがやってみなくては実際のところは理解できない。

このブランドが将来的に「真のライフスタイルブランド」を目指すという覚悟があるのなら、今回の取り組みは第一歩となるだろうが、そこまでの覚悟があるのだろうか。
何年間もの試行錯誤を繰り返して投資を続けるだけの覚悟があるのだろうか。
外野から見ていると、失礼ながらそこまでの覚悟は感じらない。

余談ながら、この大手企業は最近会議が頻発しており、毎週月曜日から水曜日までの3日間が会議だといわれている。
会議をすべて否定するわけではないが、毎週3日間もの会議は必要なのだろうかと疑問に思う。
1か月で12日間も会議に費やしており、それこそ生産性が著しく低いのではないかと思う。

一般的に、長い会議を頻繁に行う企業は業績を伸ばすことができない。
とくにアパレルでそういう企業は必ず退勢となる。

苦し紛れでの思いつきの異分野商材の取り扱い、長時間会議の頻発、と、この大手はかなり危うい状況にあるといえる。
過去20年間の経験則だけでいうと、こうなった企業はほぼ間違いなく凋落した。
だから、この大手が凋落する可能性は高いのではないかと個人的に見ている。

文具には東急ハンズとか雑貨専門店、100円均一、コンビニ、無印良品という強力なライバルがひしめき合っている。
整髪剤にもコンビニ、ドラッグストア、美容室、無印良品などの超強力なライバルがひしめき合っている。

どちらの分野も生半可な覚悟と投資では戦えないことは誰が見てもわかりそうなものである。
毎月12日間もの会議を繰り返しながら、何を見てどう分析してその答えにたどり着いているのだろうか。
まったく理解不能である。

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ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
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個人的にはナカノスタイリングワックスがええと思う

「大量生産・大量販売から脱却する」という意味不明なルミネの主張

ルミネという商業施設のコメントはどうしていつも屁理屈臭が漂うのだろう。
これこそ企業の風土というやつかもしれない。

ルミネの夏のセール日が決定 昨年と同時期の7月末から
https://www.wwdjapan.com/635519

今年の冬セールは他の施設とほぼ同時の1月4日から開催したが、夏セールは他の施設から遅れて7月27日からするそうだ。
で、遅らせる理由だが

広報担当者は「しっかりとプロパーで販売し、適正な時期にセールをするという方針を取っている。これまでと変わらず、大量生産、大量販売から脱却し、素材やデザインにこだわった商品の価値を丁寧に伝えて販売していく」としている。

と書かれており、はっきり言って意味不明だ。
ルミネは真面目のこんなことを考えているのだろうか。だとしたら上層部は相当アレな人がそろっている。

そもそもルミネというファッションビルに入店しているテナントブランドのほとんどは「大量生産・大量販売」である。

例えばルミネ新宿を見てみようか。

1階にはユナイテッドアローズとトゥモローランドという「ほぼSPA」化した大手セレクトショップである。すでにこの2店でも相当に大量生産・大量販売だ。大量生産・大量販売という仕組みがなければこの2店はここまで大手になっていない。

2階にはガリャルダガランテ、デミルクスビームス、ドゥージィエムクラス、マークジェコブス
3階はイエナ、ピーチジョン、グレースコンチネンタル、ルシェルブルー
4階はユナイテッドトウキョウ、スピック&スパン、ブラックバイマウジー

などというふうになっており、目玉テナントはすべて大量生産・大量販売である。
そうではないと完全に言い切れるのは4階の大塚呉服店くらいだろう。その大塚呉服店とて、仕入れている着物のうち何割かは大量生産品が含まれている。

現代の大手アパレルブランドで大量生産・大量販売でないところはない。

「素材やデザインにこだわった」と陳腐化した言葉を並べているが、ルミネ内の店以外でも同じ商品が並んでおり、ルミネ内の店で買う必要性はまるでない。

以前に、バーゲンセールを後倒しし始めた際に持ち出したルミネの屁理屈は「産地の保護」だった。
しかし、上記のテナントにどれほど国内生産品が並んでいるのか。上記のテナントが扱っている商品はほぼアジア工場で生産されている。
生地や染色加工の段階にまでさかのぼれば、国内品比率が増えるが、縫製段階で限っていえば、当時ですら97%(数量ベース)は海外製造品だ。「産地の保護」で掲げている「産地」というのはどこを指しているのか?アジアの縫製工場のことか?
まったく笑わせてくれる。

ルミネの「理由」を聞いて前回も今回も納得する人がいるのだろうか。
いるとしたらその人たちの頭の中身は相当におめでたい仕様になっている。

で、これらのルミネの目玉テナントの各ブランドのウェブサイトに行くと、すでにウェブ上では一部セールが5月から始まっている。
ZOZOTOWNも5月にすでに大々的なセールを行っているし、割引きクーポンの乱発は日常茶飯事だ。

ウェブだけではない。実店舗でも今年は夏のセール開始が早い。
ショッピングセンター内や都心路面店では5月半ばから「店内一部セール」「最大〇〇%オフ」というデカイ看板が掲げられているし、ストライプインターナショナルとそれに触発されたブランドが毎日「タイムセール」を繰り返している。

言ってしまえば、消費者は常に割引品を買うことができる状況にあり、ネット通販の進展によってそれはさらに周知されている。
突き詰めればネット通販の最大の集客手法は「安売り」だからネット通販が盛んになればなるほど、各サイト間の競争は激化して安売りは進む。ZOZOTOWNの5月の大セールや割引クーポンの乱発はそれを証明している。

2008年ごろまでのインターネットがそれほど普及していない時代なら、ネットと実店舗は違うという理屈でも押し通せたかもしれないが、これほど多くの人が日常的にインターネットを使用している状況下ではその理屈は最早通用しない。
それにルミネのネット通販、アイルミネも早期に割引セールを行っている。自社のサイトがやっていることを実店舗で否定する意味がわからない。こういうのをダブルスタンダードというのである。

加えて、常に店内に「値下げセールコーナー」を持つユニクロ、ジーユー、GAP、ストライプインターナショナルの各ブランド、アダストリアの各ブランド、などのSPAブランドが浸透している。
消費者からすると、店内に見切り品コーナーがあることは最早常態と化している。

このような状況下で、90年代の遺物のような夏と冬の年二回の大幅値下げセールに固執する意味があるのだろうか。
当方はまったくないと思う。ルミネで値下げされていないブランドだってそのブランドのウェブサイトでは値下げされているのだから、そちらで買えば良いだけのことである。

こうなると、いくら、大手流通が「セール後倒し」を叫んだってもとには戻らない。
ネット通販とSPAブランドがすべて壊滅しないと実現できないので、事実上実現不可能ということである。

となると、ここでやらねばならないことはノスタルジー丸出しでの「セール後倒し」模索よりも、SPA方式での売れ行き不振商品の自動的段階的値下げである。それとともに、ZARA式の「売り切れ御免」方式を組み合わせるマーチャンダイジングの模索であろう。

ZARA式を取り入れることで「値下げまで待てない」という心理を消費者が持てば、セール品は減る。
それでも売れ行き不振商品が出るならそれは、企画と販売が下手くそなせいだから、諦めて値下げすればいい。
後生大事に定価で抱えていても最終的に投げ売るよりも早い段階で、30%オフくらいで枚数を減らした方が利益率が高いはずだ。
また、廃棄するにも廃棄料としてカネがかかるから、不振だと気が付いた段階で少し値下げする方が適切な処置だといえる。

定価で買うのは嫌だが、30%オフでこのデザインなら買っても悪くはないと考える消費者は多い。

まとめると、

・SPA方式の自動的かつ段階的値下げ
・ZARA方式の「売り切れ御免」の商品手配の確立と、商品企画の精度向上

セール後倒し派はつまらない日程操作よりも、この2つに注力すべきだろう。

それにしてもルミネの主張はいつもまったく共感も支持もできない。

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ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
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