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ストライプデパートメントの事業計画が控えめであることは正しい

ストライプインターナショナルとソフトバンクが提携し、合弁会社ストライプデパートメントを設立し、ECモールを開設した。
これに対して様々な意見があるが、個人的にはピンと来ない。
いつも眉唾で見ている経済系インフルエンサーやスタートアップ界隈も賛否両論に分かれている。

期待している人たちには申し訳ないが、彼らの目論見ほどは広がらないのではないかと見ている。

「日本一のファッションECデパートに」ストライプとソフトバンクの合弁会社がF2層向けオンラインモール開設
https://www.fashionsnap.com/article/2018-02-15/stripe-department/

ターゲットはF2と分類される35歳~49歳の女性で、百貨店ブランドをそろえる。

スタート時は、百貨店で取り扱いがある「ビューティフルピープル(beautiful people)」「タロウ ホリウチ(TARO HORIUCHI)」「アキラ ナカ(AKIRA NAKA)」といった国内ブランドや、三越伊勢丹のプライベートブランドなど約600ブランドのアイテム計6万点以上をラインナップ。

とのことで、

アパレルと雑貨が6対4、今後はスポーツアパレルや美容・健康分野を増やし、セレクトショップや海外のハイブランドの出店も視野に入れている。基本的に委託販売で、物流は外注。客単価は1万5,000円を想定し、取扱高の目標は初年度16億円、3年後に100億円。事業計画として、取り扱い3000ブランド、購入顧客数300万人、1000億円の取扱高を目指す。

としている。

百貨店ブランドや百貨店価格帯を扱うECというのはたしかにあまりなかったから、挑戦してみる価値はあると思う。
しかし、なかなか上手く行かないのではないかと思う。
実際に、事業計画もそれほど大きくない。
初年度の取扱高は16億円と抑えているし、3年後の取扱高も100億円と控えめだ。

取扱高というのは、出店テナントの売れた総額で、ストライプデパートメントはそこから手数料やら出店料をもらうという形になっている。
取扱高が16億円というのは、初年度の出店ブランドすべて合わせた売上高が16億円ということで、商品単価の高さや出店ブランド数から考えるとそれほど大きな数字とは言えない。

むしろ、かなり控えめに見積もっているといえ、ストライプデパートメント側もかなり慎重である。当方としてもこれくらいが妥当で、もしかしたらこの見積もりを下回るのではないかとも思っている。

そもそも衣料品をEC、ネット通販で買う人は業界人やスタートアップ界隈が想像しているより少ない。
先日アップした当方のブログでもそれをまとめている。

ファッション性が高くて高価格な服はインターネット通販では売れにくい

・1年に1回以下服をECで購入する人が8・6%
・直近の1年間は購入していない人が13・5%
・インターネットで服を買わない人が36・0%

という数字になっており、合計すると58%強にもなる。
いかにインターネットで服を買う人が少ないかである。

で、インターネットで服を買う場合、

・試着したことがあったり、以前に買ったことがあってサイズ感がわかっている
・生地を触ったことがある

この2点をクリアできない限りは高額な洋服は売れにくい。

先日の記事でも紹介したが、圧倒的に利用されているのはユニクロ(22%)で、それにニッセン、セシール、ベルメゾン、ゾゾ(それぞれ9%ずつ)と続く。
どれも低価格帯の商品を扱っているところばかりだ。

唯一ゾゾだけは違う印象があるが、ゾゾも近年はウィゴーやタカキュー、ジーンズメイトなどの低価格ブランドの出店が相次いでおり、低価格帯の商品量が増えている。
ゾゾの利用者(9%)の何割かはこれらを利用しているのではないかと見ている。

インターネットで購入される衣料品の主力は、サイズ感が厳密ではないTシャツ類・カットソー類・セーター類となり、あとは肌着や靴下となり、これもブラジャーやガードル、コルセットなどのファンデーションは除いてサイズ感が厳密ではない。
オッサンがワイシャツの下に着る肌着Tシャツなんて1センチや2センチ小さかろうが大きかろうが大した障害ではない。
靴下だって同じことだ。1センチ小さいからといってさほどの弊害はない。

こう考えるとストライプデパートメントが狙っている百貨店価格帯の衣服がそう簡単には売れるのかと疑問に感じる。
恐らくは売れないだろう。だから取扱量が控えめに16億円となっているのではないか。

またターゲット層としているF2層がそれほどネットで高額衣料品を買うかどうかも怪しい。
当方はほとんど買わないと見ている。

もちろん、ユニクロやらニッセン、セシール、ベルメゾンなんかの低価格品は買うだろうが、試着もせずに生地も触らずに1万円を越える服をネットで買う人がそれほど多いとは考えられない。

返品・交換のめんどくささを考えると、触ったこともない衣料品をインターネット通販で買う場合は、「もし合わなかったら捨てても惜しくない」という値段帯に限られるといえる。

この辺りを冷静に考えて、初年度取扱高(くどいようだが売上高ではない)を16億円と控えめに設定しているのではないかと思う。
新しい物好きのスタートアップ界隈ですら否定論が散見されるのはこの辺りを踏まえてで、無条件にワクテカしているスタートアップ界隈はよほどに無邪気な性質なのだろう。英語でいうところのnaiveである。

また、ストライプデパートメントの集客もなかなか難しい。
そもそも知名度がない。
凋落しているとはいえ、ニッセン、セシール、ベルメゾンがゾゾと同率で利用されているのは、以前からカタログ通販としての知名度が強固だからだ。
またカタログを利用していた人たちの中にもインターネット利用へ乗り換えた人も多いだろう。

そのどちらもストライプにはない。

さらにいえば「ストライプ」という社名・ショップ名とF2層もミスマッチである。
ストライプインターナショナルといえば、アースミュージック&エコロジーやイーハイフンワールドギャラリーなどのブランドが知られており、圧倒的に10代・20代前半の若い女性層(F1層)での知名度が高い。
当然、社名に対するイメージも若い女性層と密接にリンクしており、F2層とはマッチしない。
F2層の人で、ストライプという社名を聞いて自分たち向けの衣服を販売しているとイメージする人がどれほどいるだろうか。
恐らくほとんどいないのではないかと思う。

「あ~、若い女の子向けね」と思う人がほとんどだろう。

となると、社名・ショップ名に「ストライプ」の冠を付けてF2層を狙うというのは得策ではない。

ある知り合いが「ソフバンデパートメントという名前の方がよかったんじゃないですかね?」と言ったが、ソフバンではあまりにダサいが、ストライプを冠する必要性はまるでなかったと思う。

ソフバンとストライプでSSデパートメントか何かの店名の方がよかったのではないか。

そんなわけで、ストライプデパートメントが爆発的に売れるということは考えにくく、ストライプインターナショナルが展開するメチャカリ同様に少数安定的な売れ行きで推移するのではないかと思う。

市場を開拓するにはさまざまな挑戦が必要となり、今回も貴重な挑戦だとは思うが、これは嚆矢に過ぎず、すぐさま成功をおさめられるような事業プランではない。
目標に掲げている取扱高1000億円に到達するには相当に長い期間が必要となるだろう。

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アパレルブランドの広告が失敗する理由

アパレルブランドにとって広告は必要不可欠なもので、ブランド側はもう何十年も出稿し続けているわけだから、本来はすごく広告に詳しいはずである。
しかし、業界紙、編集プロダクションで勤務した経験上でいうと、そういうブランドはほんの一握りしかない。

多くのブランドは、惰性とお付き合いと「何となく」で出稿している。
そしてそれらは広告代理店にお任せである。

例外的な少数を除くと、アパレルブランドの広告担当者のお仕事というのは広告代理店と親しくすることが8割くらいを占めている。
各ブランドにはそれぞれお抱えに近いような代理店が存在する。
1社の場合もあれば、それが複数の場合もある。
要はそれら「お抱え」と親しく付き合って、リサーチからプランからすべてお抱えに丸投げし、出てきたものに対して判断を下すだけであり、その判断自体も担当者の好き嫌いやその上司の好き嫌い程度しか基準がない。
広告担当者か上司(社長である場合も多い)が「これ、ええやん」といえば、それで終わりなのである。
その「ええやん」の基準は好き嫌いだ。

だからアパレルブランドの広告は成功しにくい。

いくつか失敗例を提示する。
当方が広告に携わったのは雑誌媒体なのでそれがメインになる。

以前、某中堅ジーンズメーカーに雑誌「Begin」の広告を相談されたことがある。
このジーンズメーカーに限らず、アパレルブランドの勘違いは、そこそこ人気のあるファッション雑誌に1度広告を掲載すれば、売上が即座に増える・回復すると思っている点である。

で、相談をされたのでこれまた、ファッション雑誌広告に強い某中堅代理店を紹介した。

ジーンズメーカーの予算は年間1000万円、代理店はこの予算で、Beginの年4回掲載を獲得してきたと記憶している。
単なる純広告(綺麗なイメージ写真とブランド名だけの広告)ではなく、タイアップ記事広告だったので、1回あたり200万円以上した。
通常、雑誌では純広告よりもタイアップ記事広告の方が高額になる。

これで決まるかと思った矢先に、メーカーが「以前から懇意にしている地域密着の小規模代理店から出稿したい」と言い出した。
これは本来は厳禁な行為である。
なぜなら、その料金プランはその中堅代理店が掛け合って実現したもので、お抱え代理店が作ったプランではない。
お抱え代理店が本来すべきことは、己らも掛け合って独自のお得感のある料金プランを作成することである。

しかし、お抱え代理店の甘えとそれを許したメーカーの不見識が相まって、結局はそのプランをお抱え代理店からやることになった。

こうなると、次からはその中堅代理店はメーカーには協力しなくなる。当たり前だ。先に不義理をしたのはメーカー側である。

結果からいうとこの広告はさほど効果がなかった。
年4回というのは無名ブランドにとっては掲載回数が少なすぎるし、Beginという雑誌がそれほどの「大部数」を抱えているわけでもないからだ。モノに対する記事や写真での見せ方に定評のある雑誌ではあるが、読者数はそれほど多くないし、読者層とブランドの相性も考慮しなくてはならない。
これはBeginに限らずどのファッション雑誌でも同じだ。
読者数の多寡も重要だが、読者層との相性がさらに重要となり、どんなに大部数のある雑誌でも読者層との相性が悪ければ、まったく反応はない。
ブランドの広告担当者はそこをよく考え、リサーチを自身でし、判断しなくてはならないが、それができている広告担当者は知っている範囲でいえば見たことがない。

結局はこのタイアップを1年か2年でメーカーはやめてしまった。効果もさることながら1000万円の広告費が捻出できなくなったからだ。できなくなったというのは表向きの理由でもしかすると、もったいないと感じたのかもしれない。

これはもっとも非効率的なカネの使い方である。
無名のブランドが年4回ちょろっと広告を掲載したところですぐさま認知度が上がるわけでもない。
もっと回数を多く、長期間にわたって掲載しないと実はファッション雑誌広告には意味がない。
年6回以上で、3年~5年間の広告掲載は必要だろうと思う。

1年や2年でやめてしまえば、その広告費は無駄になる。
このメーカーでいえば、2000万円をドブに捨てたようなものである。
これで従業員を雇うとか、従業員のボーナスを増やすとか、従業員と豪勢な食事を楽しむとか、に使った方がずっと社内の士気が上がる。

こういう失敗をするブランドは本当に珍しくない。アパレルブランドのありふれた日常風景である。

じゃあ、中小代理店を使わずに大手代理店を使えば成功するんじゃないかと考えるのが、アパレルブランドの浅はかさである。

また別のジーンズメーカーが20年くらい前まで10年間、電通を使っていた。
このメーカーはかつて「大手」と呼ばれており、ピーク時の年商は130億円くらいあった。

結果的にいえば、このメーカーの売上高は現在はピーク時の6分の1以下にまで低下している。
完全なる「ドブ金」だったといえる。

年間予算は毎年5000万円~1億円だったと聞いている。

これだけ多額の予算を払えばさぞかし効果があると、アパレル業界では考えるが、結果はまったく逆だ。
それがこのメーカーの凋落が証拠といえる。

アパレル業界からすれば広告宣伝費5000万~1億円というのは多額だが、電通からすれば鼻くそである。
だから電通はこの程度の予算では身を入れて仕事をしない。

例えば、当方とは比べ物にならないほど著名人で広告業界ともかかわりの深い永江一石さんもご自身のブログでこう述べられている。

東京都の豊洲市場における、スーパーお馬鹿なインフルエンサーマーケティングが草ボウボウ
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=37864

電通で5000万というのは鼻くそですので、わたしの推測ではPR会社に丸投げしたものと思います。

とのことで、年間5000万円程度の予算では電通にとっては「どうでも良い」依頼なのである。

文中で述べられている事例は、大手広告代理店ならやらかしそうなウェブマーケティングでの失敗例といえる。
アパレルも行政も理解していないのは、広告代理店には各社それぞれ得意分野と不得意分野があるということで、電通でいうならファッション雑誌やらウェブは苦手で、芸能人のブッキングやビッグイベントやテレビCMは得意なのである。
分野によって代理店を使い分けるのが得策で、大手に少ない金額で丸投げするのが最愚策といえる。

かつての大手ジーンズメーカーも東京都もその最愚策を採用している。
5000万円はまさしく「ドブ金」だ。

かつての大手ジーンズメーカーなんて総額10億円以上を使って、売上高を6分の1以下にまで低下させたのだから愚の骨頂としか言いようがない。

まあ、付け加えておくと、今現在も電通とか博報堂を何十年間も使い続けているのに、中高年以外の層にはまったく知名度が上がらない大手肌着メーカーというのもある。知名度が上がらないどころか、知名度は下がっているのではないかと思う。
これも現在進行形の「ドブ金」の一つの代表事例といえる。

アパレル業界が広告で成功したいのなら、

1、広告というのは多額のカネが必要と強く認識する(節約のために年1回の掲載なんて効果なし)
2、広告代理店にはそれぞれ得手不得手があり、それを見極めて事案ごとに代理店を使い分ける
3、大手に少額のカネで頼めば、必ず手抜きされる

これを徹底的に頭に叩き込まないと、アパレル業界の「ドブ金」事例がさらに積み上がることは間違いない。

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ジーンズメイトの赤字継続は当然

ジーンズメイトが18年3月期決算の下方修正を発表した。
案の定だ。

これまで、売上高115億5000万円、営業利益3億円、経常利益3億300万円、当期利益4億円と発表してきたが、これを

売上高95億9000万円、営業損失5億5000万円、経常損失5億4000万円、当期損失7億3000万円とした。
見事な赤字継続である。

個人的にいえば、当初の見通しが甘すぎただけのことで、赤字継続には何の驚きもなく、むしろ当然だと感じる。

ジーンズメイトの発表によると

また重点販売商品と位置づけた新しい商品群の販売や新しいマーケティング 手法により新規顧客を獲得することを企図していたものの、計画値には届いておりません。

と売上高減少について述べている。
24時間販売の廃止での減少とも書かれているが、果たして24時間販売の売上高がどれほどあったのかは疑問である。
また、引用した部分については、新PB「メイト」の不発や他のPBの刷新が上手く行かなかったということを示している。

赤字については

今期計画は、商品回転率の向上と値引き率の抑制に取り組むことで売上総利益率を 50.0%(前 期比 5.3 ポイントの改善計画)としておりましたが、上述の通り売上が計画を下回り値下げ・値 引が徐々に増大していったことや、シーズン末の大幅値下げを伴う在庫処分が増加した事などに より、売上総利益率は 46.1%の見通しとなりました。

とのことで、要するに売れ行きが悪くて値引きセールをしたのでその分利益が削られたということである。
まあ、たしかにいくつかのお買い得品はあった。
先日、春に向けてPB「ブルースタンダード」のボートネックボーダー柄カットソーを買ったが、これは以前にも1490円に値下げされていたのが、ほぼ1年ぶりに店頭投入され990円に値下げされていた。持ち越し在庫である。
ただし、綿100%の生地は肉厚で、品質はそれなりに高く、定価は2990円である。
裾にスリットがないのがちょっと疑問な作りだが、それ以外に不満はない。
990円なら割安感がある。

リリースで述べている在庫処分セールとはこういう種類の商品を指している。
また先日、このブログで紹介したローゲージウールニットパーカも7990円が1990円にまで値下げされており、大変なお買い得品だった。

ジーンズメイトがライザップ傘下になって、変わった部分はあまり見えない。
唯一変わったのは、これまでよりも商品の店頭投入量が減ったところくらいしかない。

店頭と、店頭に並ぶ商品を見ていると、以前とはそんなに大きく変わっていない。
店作りも商品も変わらないなら、よほどの上手い販促・プロモーションがない限りは、業績が急回復することはない。
これはアパレルに限らずどの分野においても同じ理屈である。そしてジーンズメイトにはその「よほど上手い販促」は今に至るまで存在していなかったから、結果は火を見るよりも明らかだった。

にもかかわらず、メディア系著名人、経済系著名人などのいわゆるインフルエンサーはもろ手を挙げて「ライザップの手法」とやらを誉めそやした。
で、同じ人たちが今、800SKUという超細分化されたサイズピッチの既製服のZOZOを「完全オーダーメイド」だと誉めそやしているのである。この輩の評価はまったく当てにならない。

そもそもこれまでライザップは手あたり次第にアパレルを買いまくってきた。
そこに何か戦略があったとはとても思えず、瀧定大阪同様に場当たり的に買ったとしか見えない。
なぜなら、買ったアパレル各社に何ら共通項がない上に、買収後もまったく各社が連動する気配もない。
ジーンズメイトは1年にしかならないからまだしもそれ以外だと4~5年になる会社もあるのに、いまだに何も変わっていないし、それらが連動・連携する気配もいまだにない。

ライザップ傘下のアパレル各社を見てみよう。

・エンジェリーベ 2012年4月グループ入り
・馬里邑 2013年9月グループ入り
・アンティローザ 2014年5月グループ入り
・夢展望 2015年3月グループ入り
・三鈴 2016年4月グループ入り
・マルコ 2016年7月グループ入り
・ジーンズメイト2017年2月グループ入り
・堀田丸正2017年6月グループ入り

となっており、雑貨小売り系だと

・イデアインターナショナル 2013年9月グループ入り
・パスポート 2016年5月グループ入り

となっている。

2016年、2017年にグループ入りした各社はあまり変貌していなくても仕方がないと思うが、それ以外の会社はどうだろうか。あまり変貌していないことは問題ではないか。2015年にグループ入りしたネット通販の夢展望もそろそろ変貌が顕在化しないとちょっと今後の芽はないだろう。
また、それらの企業やブランドはまるでいまだに連携していない。
連携・連動できない傘下企業を増やしたところで意味はなく、ライザップは何のためにアパレルを買いあさっているのか理解に苦しむ。
優良企業を買うならまだしも優良でない物件が多く、本当にその目的はわからない。
単にメディア系・経済系インフルエンサーの期待値を上げるためだけとしか思えない。

ジーンズメイトに限らず、健康食品・スポーツジムのライザップがアパレルを買ったシナジー効果は全く現れないままに6年になろうとしている。
考えうるシナジー効果としては、健康食品・スポーツジムのライザップがプロデュース・ディレクションをしたというスタイルで、各ブランドから「単なる従来型衣料品」ではなく、「スタイルを美しく見せるパターン作りやカッティングに工夫を凝らしました」という触れ込みで新商品を投入することである。

ジーンズメイトでいうなら、ユニクロを辞めた人、しかも企画職でもなかった人を起用して、ユニクロと同じテイスト・同じターゲットで、ユニクロより価格の高いカジュアルウェアを作るなんて何の意味もなく、ユニクロに勝てるはずもない。
ユニクロに勝つ必要なんてないが、その商品では、ユニクロではなく、メイトを選んでもらう理由すらない。

それよりもライザップがプロデュースして、本当に美脚に見えるスキニーパンツだとか、細マッチョに見えるTシャツだとかそういう「価値作り」をすべきなのである。
ユニクロと同じ土俵でライザップが戦う必要性なんてまるでなく、むしろ自ら望んで負け戦に飛び込んでいるにすぎない。

しかし、ライザップがそこに向かわないということは、個人的にはライザップにはアパレル再生のノウハウが存在しないと見ている。

皮肉にもライザップとの提携でもっとも効果的な商品を開発したのは、傘下のアパレル・雑貨企業各社ではなく、ライセンス契約したに過ぎないグンゼである。
これなどはその最たる例である。

着るだけでバイタルデータを取得
グンゼ×RIZAPによる最先端衣料「筋電WEAR」が誕生

http://www.gunze.co.jp/corporate/news/2017/09/20170925002.html

これが本来、ライザップに期待されるアパレルブランドとのシナジー効果といえる。
ライセンス契約のグンゼ以外にその方向性を指し示せない限り、ライザップが傘下のアパレル企業を経営再建することは、ほぼ不可能に近いと当方は見ている。

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プライベートブランド「ゾゾ」のすごさは商品ではなく、そのプロモーション手法にある

プライベートブランド「ゾゾ」が発表され、各報道を見ると、矛盾した言説・受け答えが溢れており、読めば読むほど整合性がなくなる。
長らく交流している方から、ゾゾ商品のサイトが完成していると教えていただき、直接自分の目で確認することにした。

http://zozo.jp/pb/

基本的に、ゾゾという商品はフルオーダーではなく、パターンオーダーだということがわかる。
ゾゾスーツでの採寸によって、サイズを合わせるという「仕掛け」によって、「一からその人に合うサイズの服を作る」と思っている人が多いように感じる。
とくに、衣料品業界外のイシキタカイ系ジャーナリストや経済紙関係者にはその嫌いが多い。

採寸によって、一から型紙を起こすというのは、「フルオーダー」でこれは何十万円もする。
何せ、ゼロから形を作り上げるのである。

一方、近年、3万円前後で「オーダースーツ」が売られるようになっているが、これはフルオーダーではなく、パターンオーダーないしイージーオーダーと呼ばれる手法で、厳密にいうとパターンオーダーとイージーオーダーは別らしいが、ここではほぼ同じとして取り扱わせてもらう。

あらかじめ決まったパターン(型紙)があり、採寸したデータをもとにそれを微修正するのがパターンオーダーである。

A6サイズのスーツがあったとして、採寸したデータをもとに、袖を短くしたりウエストを広げたりと微修正する。
襟の形やボタンの種類を選べるようなオプションを付けることができるが、それもゼロから作り上げるわけではない。

これによって、製造期間は短縮できるし、製造コストも抑えることができる。
だから3万円前後でオーダースーツが作れるというわけだ。

受注して即日~2週間で納品できると謳っているゾゾは取りも直さずパターンオーダー商品だといえる。
また「即日納品」が可能だということは、あらかじめ標準商品を何枚か作りおいていて、その標準商品に適応した体格の人から受注があれば、それを即座に送り出すということになり、これなどはパターンオーダーですらなく、単なる既製服販売と同じということになる。
既製Tシャツ1200円というのは、果たして「破格値の安さ」といえるだろうか?

標準商品で満足できない人には、採寸データをもとにした「微修正」が加えられる。
裾丈の長さ、袖の長さ、袖幅などなどを微修正する。

これはジーンズでも同じである。

型紙の微修正なんていうのは、現在ではパソコンのCADCAMを使って行う。
袖丈や袖幅を変更した際に最適なように全体を自動的に微修正してくれる。

ジーンズで限りなく、ウエストのデカい人(150センチくらい)がいて、それ用にウエストを広げた場合、グレーディングと呼ばれる各部の比率変更が必要となる。これを今ではパソコンソフトでできる。
ウエスト150センチに広げた場合、それに比例して各部を広げると、ジーンズの裾幅なんてめちゃくちゃに広くなって袴みたいなジーンズになってしまう。
それではさすがにおかしいので、裾幅はあまり広げずにウエストだけを広げる。
これがグレーディングという作業で、標準とされるS~Lサイズだって同じグレーディングが行われている。

例えば、アダストリアのレイジブルーの商品で見てみよう。

http://www.dot-st.com/rageblue/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=780048

このズボンのサイズは

Sサイズ ウエスト74センチ・もも周り62センチ・裾幅31センチ

となっている。また、

Lサイズ ウエスト89センチ・もも周り64センチ・裾幅34センチ

となっている。

見比べてみてどうだろうか?
ウエストは15センチ拡大しているのに、もも周りは2センチしか違わない。
裾幅も3センチしか大きくなっていない。

これはウエストに比例して各部を広げていないという証明で、このサイズ比率の変更がグレーディングであり、これは既製服でも普通に用いられている。

ゾゾのオーダーとはパターンオーダーと採寸によるグレーディングを合わせた手法で、「完全オーダーメイド」ではなく、イシキタカイ系が夢想するような「フルオーダー」でもないということである。

商品そのものについてはどうだろうか。
Tシャツとジーンズの画像と説明文を見た限りでは、はっきり言って「普通」である。
恐ろしくかっこいいわけでもないし、恐ろしくダサいわけでもない。
あくまでも「普通」であり、それ以上でもそれ以下でもない。

素材も普通だが、ちょっと奇妙なこともある。

メンズのTシャツの使用素材は40番手双糸なのに対して、レディースのTシャツは20番手単糸なのである。(ウェブサイトにそう書いてある)

ちょっとでも生地や糸の知識がある人にはその可笑しさが伝わると思うのだが、そうではない人のために蛇足ながら説明をする。

この二つの生地は一見するとほぼ同じに見えるだろう。
生地の厚さも同じだ。

しかし、どちらが高品質な素材かというとメンズである。

20番、40番とは糸の太さを表す「番手」であり、数字が大きい方が糸は細くなる。
40番より20番の方が糸が太い。

ところが、糸というのは1本だけで生地を織ったり編んだりせずに、2本を撚り合わせて使うこともある。
1本の糸で織ったり編んだりすると「単糸使い」といい、2本撚り合わせた糸で生地を構築すると「双糸使い」となる。
当然、糸を2本使っているので、材料費は「双糸使い」の方が高くなる。

じゃあどうしてそんなめんどくさい「双糸使い」なんていう生地があるのかというと、単糸使いの生地は総じて、洗濯をすると斜行しやすくなるからだ。とくにTシャツやカットソーの単糸生地は斜行しやすい。これを防ぐために「双糸使い」という生地がある。

そういう意味でメンズTシャツ素材の方が圧倒的にレディースよりも高品質である。

またなぜ生地の厚さが同じかというと、細い40番手の糸も2本撚り合わせると、太さは倍になる。当たり前だ。
40番手2本で、20番手単糸と同じ太さの糸になるため、それぞれを使って編んだ生地は厚さは同じになる。

だから、見た目はメンズもレディースも同じ生地に見えるが、中身は別物だ。

通常、レディースの方の生地クオリティをメンズより落とすことは考えにくく、これは恐らく、同じ生地が手配できなかったための代替措置ではないかと思う。
それでも当方なら20番単糸生地をメンズに使うが、あえてそれをレディースに持ってきたスタートトゥデイは本当に生地に興味がないんだと思う。

プライベートブランド「ゾゾ」の商品自体は限りなく「普通」で、レディースのTシャツ生地のクオリティはあまり高くない。
ジーンズも普通だし、デニム生地も綿99%・ポリウレタン1%の12・75オンスデニム生地なので、ありふれている。

ゾゾの「物」自体は大したことがない。現段階では。

ゾゾのすごいところはその「仕掛け」「販促の手法」にある。
アパレル業界が見習うべきはこの部分である。

まず、採寸できるゾゾスーツの開発に投資するという「仕掛け」。

そして、そのスーツを無料配布するという手法。
それで期待感を煽り、商品の発表ということになるが、期待感で煽られている人が多数いるため(特に経済系インフルエンサーやメディアなど)、メディアに大量に記事掲載される。

従来からあるパターンオーダーと場合によっては既製服販売に過ぎないものが、最新鋭テクノロジーで作られた服かのように報道される。

商品自体はあくまでも「普通」だし、その供給システムも従来型パターンオーダーの域を何一つ出ていないのに、最新テクノロジー服という「イメージ」だけが醸成され続けていく。

この「イメージ戦略」は正直なところ、海外ラグジュアリーブランドにも匹敵するといえる。
単なる塩化ビニールの鞄をさも「良い物」というイメージを与えているルイ・ヴィトンと同じ手法といえる。

そういう意味では、この「仕掛け」「販促手法」「見せ方」は見事だというほかない。

そもそも、今の衣料品でだれもが驚くような画期的な商品なんてものは出現しない。
もしかしたら、未来においては1ミリ秒で蒸着できるようなコンバットスーツが開発されるかもしれないが、そういうものでない限りは、驚くほど画期的な服なんてものは出現しない。

そういうものが現れるとしたら、ハイテクノロジーを詰め込んだウェアラブルだったり、ハイテク機能を満載した機能素材で作られた服くらいしかない。

洋服という商品においては「物自体」での差別化や革新は生まれにくくなっており、「普通の物」と「従来型パターンオーダー」という手垢にまみれた供給システムを再編集して見せなおしたというスタートトゥデイの手腕はすさまじいものがある。
国内のアパレル業界に足りないのはこの部分であり、そこは大いに見習うべきである。

ただし、個人的にはこの商品を買おうとは思わない。
ユニクロで1990円に値下がりしたジーンズを無料で裾上げしてもらった方がコスパが高い。

NOTEを更新~♪
大手広告代理店を使って残念な結果を甘受する残念な国内アパレル 企業
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怪しさと矛盾点が際立つプライベートブランド「ゾゾ」の発表

ようやく、延び延びになっていたZOZOTOWNのプライベートブランド「ZOZO」の一端が発表になった。
どんな商品なのかなと一応興味を持って外野から眺めていたが、第1弾はTシャツ(1200円)とジーンズ(3800円)だと判明し、正直期待外れだと感じた。

価格面でいうと、ユニクロに合わせてきたという感じだが、体型測定スーツ「ZOZOSUIT」で得られることになるであろう26万人の膨大な体型データを使ってTシャツを作る必要があるのかと正直疑問しか感じない。

某人気ブランドの中の人が言っていた「ZOZO社員は本気でユニクロと競合する気でいる」というのは価格設定を見ると、本当だったのだとわかる。ただし、値段が同じくらいだからユニクロと同等には売れない。それなら、今頃イオンもイトーヨーカドーもジーンズメイトももっと衣料品が売れている。

ZOZOSUITが発表されたときには随分と熱狂があったが、発送が延び延びになり、有名人と一部顧客にしか届いていない状況にあり、身の回りでも「発注したけど遅いからもう興味が薄れた」という人もちらほら現れている。

ZOZOSUITの報道や熱狂には違和感があり、その違和感は今でもあるのだが、例えばこういう見出しの記事については本当に疑問しか感じない。

一つ断っておくと、ZOZOSUITのような開発は続けるべきだし、全否定するのはナンセンスだが、逆に持ち上げすぎるのもどうかと思う。

「ミリ単位の精度求めた」ZOZOSUITの体型計測データが生み出すスタートトゥデイの新展開
http://jp.techcrunch.com/2018/01/31/zozo-maezawa-kanayama/

この「ミリ単位の精度」っていうのがちょっとどうかと思う。
例えば、今回発表されたTシャツだ。

Tシャツは、ニット生地で綿100%組成であろうが、生地の構造上伸縮性がある。
5ミリくらいは普通に伸び縮みするから、はっきり言って「ミリ単位の精度」なんてものはTシャツには必要ない。
さらにいえば、縫製する段階で普通に1ミリくらいはズレや誤差がある。
逆にミリ単位の精度で縫製できる工員なんてほとんどいない。

これはセーターでも同じで、5ミリや1センチは伸縮性が生地自体にあるし、縫製やリンキングの段階で1ミリくらいは普通にズレる。

いくらミリ単位でデータを調整しても実際の製造工程では1ミリや2ミリは確実にズレるから無駄である。

こういう発言をする人やこういう記事を書く人は衣料品を精密機器か何かと勘違いしているのではないか。
こういう発言や記事が独り歩きして、ミリ単位の服なんていうユニコーンやグリフォンみたいな奇妙な空想の産物が生まれる。

逆に、そういう「ミリ単位」という発表をある程度信用していたからTシャツという選択には首を傾げてしまう。
ミリ単位が売り物になるのは例えば、スーツ、ワイシャツ、ビジネス用コートなど、である。
こちらは1ミリ・2ミリの精度なんて意味がないが、5ミリや1センチは重要な差になる。

ワイシャツの首回りが1センチ変わればフィット感も見た目も大きく変わる。
昔のソフトスーツは別としてスーツだって1センチの差で大きくシルエットが変わる。

Tシャツやセーターの着心地にミリ単位の精度はまったく必要ないのに、それを選んでしまうところが拍子抜けというか期待外れだった。

またワイドシルエットの商品もミリ単位では着心地は左右されない。

おわかりだろうか?ガウチョパンツやそれのフルレングス版ワイドパンツなんて1ミリや2ミリ細かろうが太かろうが着心地には全く関係ない。
今春にジーユーから発売されているリーバイスセカンドの完コピジージャンだってダボっとした古臭いシルエットだから1ミリ違ったところでまったく着心地には影響しない。

ミリ単位の精度が求められるのは先に挙げたスーツ、ワイシャツ類とタイトシルエットが売り物のカジュアル商品に限られる。それだって実際のところ1ミリや2ミリ程度は誤差があるし縫製段階でズレる。
これが現実の洋服である。

しかし、ZOZOSUITによる採寸がまったく無駄とは思っていない。
むしろ、着心地よりもそのデータを使って「より美しいシルエット」「よりスマートに見えるシルエット」作りに取り組むべきである。

今回の会見の記事はこちらがコンパクトにまとめられている。

“ZOZOSUIT”到着は最大8カ月の遅延も、PB発表で前澤社長が決算会見に登場
https://www.wwdjapan.com/515448

最大8か月の遅延って、今年の8月ごろ届くということだから、はっきり言ってますます興味は薄れる。
忘れたころに届くことになって「ああ、そんなのも頼んでいたっけなあ」という感じになるだろう。

今回、前澤友作・社長は

「注目すべきは値段。メディアにはいろんな予測記事が出ていたが、期待を上回るというか下回るというか、Tシャツが税込1200円、デニムは税込3800円で販売する。過剰に在庫を積み上げるつもりはない。オーダーメードに近い受発注生産を行うことで、価格を下げられた」とコメント。

と話しているが、オーダーメードに近い受注生産だから価格が安いというところがちょっと意味不明だ。
恐らく、在庫を持たずにその都度生産するから、在庫処分での投げ売りが無くなるからその分販売定価を下げたということなのだろうが、その都度縫製する方が普通は縫製工賃は高くなる。
極端な話、一挙に100枚縫製した方が、1枚ずつその都度縫製するよりも工賃はずっと安くなる。
逆に1枚とか2枚しか縫わないサンプル縫製の工賃は最低でも5000円とか1万円くらいはする。
どう考えてもシステムに矛盾がある。
しかも生地は、専用生地ならどこかの問屋が備蓄しているとしか考えられず、専用生地でないなら、市場に流通している「在り物」の定番
生地をその都度購入することになる。
「在り物」の定番生地ならはっきり言ってユニクロにはまったく生地の値打ちではかなわないが、そのことは理解しているのだろうか?

また

ヤマト運輸の配送運賃変更による経費15億円やPB業務委託の13億5000万円などのコストが発生したにもかかわらず、増収増益を記録した。

という箇所があるが、やはりPB製造にはOEMやODMを使っているということだろうか。
たしか、工場なんかも買ったというような記事も読んだ記憶があるが、PB業務委託13・5億円ということは製造も委託していると考えられ、それはとりもなおさずOEM・ODMを使用したということになる。

なんだか生産システムも製造も矛盾だらけの内容だが、ますます実態の見えない怪しげなプロジェクトだとしか感じられなくなっている。
各メディアの記事の書き方が悪いのか、説明した方の説明が悪いのかわからないが、その結果、怪しさと矛盾点だけが際立ってしまっている。

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メディアの「何でもユニクロ病」「何でもゾゾ病」はミスリードを引き起こすだけ

仕事らしい仕事にもなっていないのに、一応、衣料品関連の記事は目につく限り読むようにしている。

繊維・アパレル業界はそれはそれなりに混迷し続けているが、記事を読んでいるとメディア側も相当に混迷している。
というか、メディア側は少なくとも20年前から混迷していて、ステレオタイプの紋切り型の報道が多い。

今のメディア側のトレンドでいうと、「なんでもユニクロ」「なんでもゾゾ」である。
業績好調な新興アパレルがあれば「第二のユニクロ」、衣料品のネット通販関連なら「第二のゾゾ」とか「ゾゾと比べて云々」である。

少し前まではストライプインターナショナル(旧社名クロスカンパニー)も成長途中はずいぶんと「第二のユニクロ」とか「ユニクロを追撃」なんて報道があったが、ストライプインターナショナルのどこが第二のユニクロなのか当方にはさっぱりわからない。

メンズ服をほとんど手掛けないストライプと、メンズ服の売上構成比が大きいユニクロは土台がブランドスタンスが異なる。
どこぞの経済記事で、「ユニクロはなんとメンズ売上高が4割を占める」というのを見たが、昔から知っている人たちからすると「何を今更」だし、逆に「メンズ売上高が4割まで低下したのか」と驚かされる。

ユニクロは元々メンズ服の方が強かった。
2005年ごろでさえメンズ服の売上高が6割強あったとも聞いている。

低価格・高機能性・高品質というユニクロのキーワードは、レディースよりもメンズの方が響きやすい。
ユニクロというブランドは極めて男性的な思考で構築されていると思う。
だから、当方はユニクロが好きなのかもしれない。

感性だとか共感だとかカワイイだとか雰囲気だとかそういう女性的な判断基準のブランドは当方の好むところではないからだ。

手の届く範囲の価格でそれなりの見え方をする洋服を提供するというところは共通しているかもしれないが、それなら、コックスもパレモもキャラジャも第二のユニクロといえる。
低価格でそれなりの見え方をする洋服を提供しているSPA型企業は全部「第二のユニクロ」ということになる。

第二のユニクロ、どんだけあんねん?!

20年前後、記者会見に出席してきた経験からすると、業界紙や業界雑誌ではなく、朝日・読売・産経・毎日などの「大手一般紙」(部数が激減しているのでそろそろ大手でもなくなりそうだが)の記者は、会見の場で見ている限りにおいては、繊維・ファッション業界に詳しくない人が多く、質問が的外れなことが多い。

これも以前に書いたが、グランフロント大阪のオープン会見に出席したときのことだ。

記者会見場では質疑応答の際、記者は所属会社と名前を述べてから質問する。

読売新聞経済部の若い記者が質問をしたのだが、その質問内容に驚かされた。

「グランフロント大阪にはアウトレットモールに入店しているブランドが多数入店していますが、グランフロント大阪の競合相手はアウトレットモールでしょうか?」

という質問で、傍から聞いていて失笑を禁じ得なかった。
これに冷静に丁寧に回答されたグランフロント大阪側の人は流石に大人だと感心した。
当方なら、アホらしすぎて質問を却下しただろうから。

この記者は正規店とアウトレット店の関係すら知らないのである。
デスクによる手直しがあるとはいえ、こういう記者が記事を書いている。

だから、一般紙のファッション記事がおかしいのは仕方がないとして、業界紙・業界雑誌・経済誌・経済紙と呼ばれる媒体が、一般紙よろしく「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」という報道姿勢はいかがなものか。

このブログの改装でもお世話になり、ウェブ関連の仕事でもお世話になっているスタイルピックスの深地雅也社長がこんな記事を書いている。

メディアはわかりにくい指標を使わないでください
https://note.mu/fukaji/n/n3eacc37e63a0

これは先ごろWWDのウェブに掲載された

ユークス ネッタポルテの2017年通期決算 売上高2800億円で「ゾゾ」に拮抗か
https://www.wwdjapan.com/536735

という記事に対しての意見である。

ユークスネッタポルテというのはリシュモン傘下(そこからの売却が先日発表されたが)で、ラグジュアリーブランドECの最大手企業である。当然、国内企業ではない。

一般にECには直販型とモール型があり、さまざまなブランドをテナントとして入店させているゾゾはモール型である。
早い話がファッションビルといえ、それぞれのテナントから出店料やら手数料やらを徴収していて、それがゾゾの「売上高」である。
テナントの売上高合計は「取扱高」として表される。
当然のことながら、仮に「取扱高」が1兆円を越えようと、それはゾゾ自体の売上高にはならない。おわかりだろうか。
1兆円の何%かがゾゾの売上高ということになる。

一方、ユークスネッタポルテは今のところ直販型である。
そうすると売上高は直接的な売上高であり、取扱高ではない。

しかも取り扱いブランドがまったく異なる。
方や欧米ラグジュアリーブランド、方や国内ファッションブランド(一部に量販ブランドも含む)。
当然、顧客層も客単価も販売価格も異なる。

これでどうして「ゾゾに拮抗」などという見出しを付けるのかまったく理解できない。

顧客層やらなんやらは置いておいたとしても「取扱高」と「売上高」を並べて「拮抗した」と報道することに何の意味があるのか、いや、ない。(反語的表現)

これこそ、グランフロント大阪とアウトレットモールを並べて論じようとした読売新聞経済部記者と同じレベルといえる。

ゾゾはもしかしたらユークスネッタポルテもベンチマーク対象としているかもしれないが、おそらくユークスネッタポルテはゾゾを歯牙にもかけていないだろう。ラグジュアリーからするとジーンズメイトやタカキューまで入店しているゾゾはまったくの競合相手ではないからだ。

これを知ってて混同させたならWWDの編集方針はおかしいし、知らなくて混同してしまったのなら業界メディアとも思えない。

メディアの「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」病は本当に根深く、百害あって一利なしでしかない。

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グローバルブランドが各国で等しく支持されるわけではない

ZARAやH&M、GAPなどのグローバルSPAブランドのことになると「その良さがわからない。世界基準なのにそれがわからない」というような反応を見ることがある。

はっきり言って当方にもわからない。(笑)
正確にいうなら、わからない商品が何割か常に含まれている。

当方は別にグローバル志向でもないし、グローバルでありたいとも思っていない。

実際のところ、グローバルに展開しているブランドだからグローバルにまんべんなく受け入れられているわけではない。
例えば、デマンドワークスの齋藤さんが以前に書かれていたことがあるが、ZARAはアメリカに進出して20年になるが、それほど店舗数は増えなかった。最近では増加に転じたという報道があったが、そうなるまでに20年以上を必要とした。

一方で、H&Mはアメリカでは好調に広がった。

同じグローバルブランドがアメリカに進出してもこれほどの差が出る。
もちろん、各ブランドのビジネスモデルの組み立て方の違いもあるだろうが、それほどに各国・各地域で人間の嗜好性には差があるということである。

日本人がZARAやH&M、GAPの商品でその良さがわからないと思うのは何の不思議でもない。

低価格ブランドではないが、スペインのデシグアルというブランドがある。
日本ではどう見ても売れてない。
デザインの色柄が激しすぎるからだ。チェック柄の上に刺繍とプリントをさらに施すような過剰な柄付けを行い、そしてその色彩は常に派手である。こんな盛り盛りの服を好む日本人はかなり少ない。

あべのHOOPの2階のグリーンレーベルリラクシングの跡地にオープンしたが、すぐさま閉店になった。
客が入っているのを見たことがないほど閑散としていたから当然だろう。
ちなみにそのスペースはいまだにテナント入店がなく、空き家になったままである。

デシグアルと多少のかかわりがあるという日本人から聞いたことがあるが、本国は日本での不振が信じられないと言っているらしい。
本社の言い分としては「スペインでこれほど好調なのになぜ日本で売れないのか」というものらしいのだが、色柄のセンスが日本人に合っていないからであり、それを早く認識した方が良いのではないかと思う。

世界各国で変わらず支持されるようなブランドなんて存在しない。
ユニクロはアジアでは強いが、欧米ではイマイチだし、オールドネイビーは米国では売れたが日本からは撤退した。
そんなもんである。

先日、こんな記事も掲載された。

欧州発ファストファッション、米国で伸びない訳
ネット通販しないプライマーク、一部店舗は縮小へ

http://jp.wsj.com/articles/SB11636997194453903320304583596910111609112?mod=searchresults&page=5&pos=17

ところが近年、米国の数都市を含む欧州外に展開していくなかで、実店舗のみで販売する戦略にひび割れが生じ始めてきた。米国進出から2年、同社は米国内の8店舗中の3店舗で規模縮小を図っている。販売実績が予想を下回ったからだ。

とのことで、ヨーロッパでは人気が高く、日本未上陸のプライマークだがアメリカ進出は苦戦している。
日本人は一括りに「欧米」というが、ヨーロッパ市場とアメリカ市場は異なる。ヨーロッパでも国ごとにその市場は異なる。
ヨーロッパで人気だからアメリカでも人気になるとは必ずしも限らず、古くはZARAがそれに当てはまったし、プライマークもその一つだといえる。

だから日本人が「グローバルブランドの良さがわからない」というのも至極当然だし、日本でグローバルブランドが売れないのも別段恥ずかしいことでも日本の後進性の現れでも何でもない。売れなくても全く不思議ではない。

さて、ここではプライマークの不振の理由として、オムニチャネルをやっていないことが挙げられている。
記事ではオムニチャネルをシームレスショッピングと表現している。

店舗とネットの垣根をなくし、消費者がストレスを感じることなく買い物ができる環境を提供する「シームレスショッピング」というビジネスモデルをプライマークが受け入れていないことで、「その戦略に大きな穴が開いている」とオーストラリアのマッコーリー・グループのアナリスト、アンドレアス・インダースト氏は指摘する。

とのことで、これに対して

だがプライマークではそうせざるを得ない、とABFのベーソンCFOは反論する。
「われわれのプライスポイントでは宅配のためのコストを賄いきれない」が、売上高成長が見込めれば低価格には十分な価値があると同CFOは主張する。「販売数量はわずかではなく大幅に伸びるからだ」

と反論しているが、これを読んだときに気付かされたのは、低価格すぎるとネット通販の宅配コストが賄えないということだった。
当方は生来、不明な性質なのでこれに今まで気が付かなかったのだが、そういわれればそうだ。

ネット通販での宅配が盛んな米国と、宅配の少ないヨーロッパではやはりそこに対する嗜好が異なるということだろう。

そして、これを読んだときに、しまむらが宅配ネット通販に参入しない(できない)理由の一つも同じなのではないかと思った。
ユニクロと並んで勝ち組低価格ブランドと称されるしまむらだが、ネット受注からの店舗受け取りは新たに発表したものの、宅配には依然として参入していない。

しまむらは2000店舗あることが強みのように言われるが、2000店舗もあってユニクロよりも売上高が低いということは、1店舗あたりの売上高は相当に低いということになる。
大雑把にいうと、しまむらグループは約2000店舗で5600億円の売上高があるから、1店舗あたりの平均売上高は年間で2・8億円ということになる。もちろん平均なのでもっと売ってる店もあればもっと売ってない店もある。
一方、ユニクロは約800店舗で8000億円なので1店舗あたり10億円ということになり、しまむらグループの1店舗あたりの売上高は低い。
おまけに従業員はほとんどがアルバイト、パートでローコストオペレーションに徹している。
だからプライマークと同じ理由で宅配は賄いきれないのではないか。

それに比べると同じようなプライスラインで宅配まで行っているジーユーはすさまじいということになる。
もちろん、ファーストリテイリングという超巨大企業の資金力があったればこそなのだが。

ネット通販に対する考え・仕組みもさまざまだし、国ごと・地方ごとにも人間の嗜好性は異なる。
グローバルブランドだからどの国でも等しく売れるなんていうのは単なる幻想・幻覚に過ぎない。

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日本の消費者は取捨選択する。取捨選択できないのはメディア業界人とファッション業界人だ

衣料品ビジネスにおける考え方はある程度賛同することが多い株式会社せーのの石川涼氏だが、政治や経済における思想は左寄りだと感じられるのでまったく評価しない。

先日、「#FR2」ブランドについてのインタビュー記事もなるほどと思わされるところも多かったが、結末の

「日本人はほとんど自分で取捨選択ができていない。誰かが評価していたり、世界で評価されて初めて”自分も欲しい”という状況になっている。だから世界にウケれば、日本人も買う」。

https://www.fashionsnap.com/article/ishikawaryo-fr2/

という箇所には疑問しか感じなかった。
衣料品ブランドだけでいえば、世界で評価されていて鳴り物入りで上陸したものの、撤退する外資ブランドが数多くあり、業績が低迷している外資ブランドも数多くあるからだ。日本の消費者はそれなりに取捨選択しているといえる。

取捨選択できていないのは、日本のメディア業界人とファッション業界人であり、その選択のできなさは一般消費者よりはるかに劣る。

外国物なら何でもありがたがっているのはその2つの業界人だけのことに過ぎない。

先日、こんな本をたまたま見つけた。

産経新聞社から発行された「ファストファッション戦争」で、巻末の発行日を見ると平成21年12月24日になっている。
今は平成30年だが年始ということを考えると、丸8年前に発行された本で、2009年末までの当時の最新情報をもとに考察されているのだが、この考察は外れまくっている。

たった8年間でこうまで予言を外すのは、浜矩子か藤巻健史並みといえる。

このページにも書かれているように05年頃から続々とグローバルファストファッションブランドが日本に本格上陸してきた。

書かれている通りに引用する。

05年アメリカンアパレル
06年トップショップ
08年H&M
09年フォーエバー21とキットソン

そして、この本では「大本命」として09年12月に銀座店をオープンした「アバクロ」を挙げている。

09年12月のアバクロ銀座店のオープン時にはそれこそ「取捨選択できない」メディア業界人のアホみたいな提灯記事が多数の媒体に掲載されていた。
「大ヒット間違いなし」だとか「国内市場を席捲するだろう」とか美辞麗句のオンパレードで、もちろんこの本もその一つといえる。

しかし、結果はどうか?
アバクロは銀座店以外は福岡店以外に出店できず、国内市場ではまったく存在感がなく、あまりの不振ぶりに何度も日本撤退のうわさが流れている。
アメリカで流行っているから(当時)、日本でも絶対に流行ると太鼓判を押したのはメディア業界人とファッション業界人だけであり、消費者は一度か二度行ってみて、行かなくなったのである。
メディア業界人・ファッション業界人と一般消費者のどちらが「取捨選択」できているだろうか。一目瞭然ではないか。

おまけにアバクロは米国本国でも不振を極めている。

ちなみにこの本に挙げられているブランドがどうなったかというと、H&Mとフォーエバー21以外はすべて日本から撤退した。
アメリカンアパレルとキットソンは米国本国ですらブランドが消滅している。

そして、フォーエバー21も日本では店舗数を拡大できず存在感をなくしており、今後撤退することも十分にありえる。

ある程度堅調なのはここで挙がっている中ではH&Mだけである。
そのH&Mも小島健輔さんによると売上高の伸び率が鈍化しており陰りがみられるという。
この陰りはそれこそ「取捨選択できない」ファッション業界人がほめたたえるZARAも同じで、小島さんによると伸び率は鈍化しているという。

結局、「世界で売れている」と言っても、ローカライズができていない・ローカライズが下手くそなブランドは、日本の消費者によって「取捨選択」されてしまうのである。
ローカライズができない・下手くそなブランドの代表はアバクロだろう。

グローバルブランドのZARAとGAPはどうしてこのページに登場しないのかというと、この2ブランドが日本に上陸したのはもっと前だからだ。

GAPは90年代後半に上陸しており、上陸後20年が経過しており、それなりのファンを獲得した。
しかし、「アメリカで売れている」という触れ込みだったオールドネイビーは不振でわずか数年で撤退している。
GAP自体も日本ではあまり好調ではなく、買い上げ客数が半減しているという噂もあり、GAPの代名詞にもなっていた「投げ売り値引き」をやめると宣言しているが、これは失敗に終わるのではないかと見ている。

オールドネイビーなんて日本人が「取捨選択」した見本ではないか。

ZARAの上陸も2000年頃のことである。
東京のどこに1号店をオープンさせたのかはしらないが、関西だと今は亡き心斎橋ビブレに3フロアぶち抜きで入店していた。
マイカル破綻後で先行きが不透明だった心斎橋ビブレに入店してきたときにはそれなりに話題となったが、あまり売れ行きは芳しくなかった。なぜかというと、しょっちゅう投げ売りセールをやっていたからだ。
当時のZARAは今のような「コレクションブランドのコピー」ではなく、イタリアモード系のブランドで、とくにメンズはイタリアンモードっぽいシンプルなスーツやドレスシャツが並んでいて、それが毎シーズン、大量に売れ残っており、シャツは1枚1000円くらいに値下げされていた。
当然、安物好きな当方としてはその1000円シャツを何枚か買っていた。

黒無地・紫無地・ワインレッド無地などのカラーシャツであり、一歩間違えるとVシネマのチンピラになるような商品だった。

このころのZARAは独資ではなく、先ごろ三井物産による買収が発表されたビギとの合弁だった。
いつ、ビギとの合弁を解消したのかはちょっとわからない。ご存知の方が居られたらお教えいただきたい。

2005年以降に鳴り物入りで上陸してきたグローバルブランドを見ても、そのほとんどが日本から撤退しており、もちろんトップショップのように運営会社の不手際というケースもあるが、「世界で売れているから日本でも売れる」という構図にはならず、日本の消費者は確実に「取捨選択」しているといえる。「世界で売れたらなんでも日本で売れる」と言い放つ石川涼氏こそ「取捨選択できていない」のではないかとさえ思う。

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GAPは大幅値下げをやめる前に、高すぎる定価設定を見直すべき

国内外の市場にはさまざまなブランドがひしめきあっているが、迷走していると感じるのがGAPである。
廉価版のオールドネイビーがすでに日本から撤退したが、GAP本体もけっして好調とはいえなさそうで、一説には客数が半減しているともいわれる。

バナナリパブリックも日本では店舗数を減らすと発表があった。

米国本国でもGAPは苦戦しているといわれるが、廉価版のオールドネイビーは好調なのだそうだ。
日本では「衣料品のデフレがー」といわれるが、低価格品が好まれるのは日本だけでなく、米国でも同じで、GAPは不振だがオールドネイビーは好調、アバクロは不振だがホリスターは好調といわれ、米国でも低価格ブランドが好まれることがわかる。

人間だれだって似たような商品なら安い方で買いたい。
それだけのことで、日本人が格段に安物好きで欧米人が金払いが良いわけではない。

日本国内のGAPもそろそろ危険水位に達しつつあるようで、先日、GAPの代名詞ともいうべき「大幅値下げ」をやめるという新方針記事が掲載された。

大規模セール「回数を減らす」 ギャップジャパン社長
https://www.asahi.com/articles/ASL1D5SFWL1DULFA01V.html



米カジュアル衣料大手ギャップの日本法人ギャップジャパンは12日、主力ブランド「GAP」の価格戦略の見直しを進めていることを明らかにした。大幅に値下げするセールの回数を減らし、定価に近い価格での販売を増やす。スティーブン・セア社長がインタビューで答えた。

とのことであり、具体的には

16年11月にギャップジャパン社長に就任したセア氏は「低価格による販売促進に頼り、商品の魅力を伝えていなかった」として、夏冬の定期セールを除き値下げの回数削減を進めていることを明らかにした。その代わり会員向けサービスを充実。これまでの常時5%割引に加え、昨年4月から月初の1週間を1割引きにするなど、顧客のつなぎとめを図っている。

ということだが、この試みは恐らく失敗に終わるだろう。
99%成功しないと思う。

まず、オールドネイビーとGAPは日本国内では住み分けができていなかった。
バナリパはテイストが違うので存在理由がある。
しかし、オールドネイビーとGAPはブランドのテイストがアメカジで同じなのである。
バナリパはもっとトラッド寄り・ビジカジ寄りだ。

本来なら、オールドネイビーはテイストが同じGAPの廉価版として日本市場でも効力を発揮するはずだった。
あくまでも本来なら。

しかし、日本におけるGAPとは定価設定は高めだが実質的な販売価格はユニクロと同等かそれ未満の超安売りブランドなのである。
実際に当方も相当GAPの投げ売り品を買った。

580円に値下げされた裏毛スエットパーカとか300円~600円に値下げされたウールニットのマフラーだとか、1600円に値下げされたデニムシャツだとか2900円に値下げされたコーンデニムのジーンズだとか枚挙にいとまがない。

ここまで投げ売られているのに、それの廉価版ブランドなんて必要だろうか?

しかもテイストはほとんど同じである。
もちろん異なるデザインの商品もあるが、全体的な見え方としては同じテイストであり、下手をするとオールドネイビーの方がGAPの投げ売り品より高いのである。だからオールドネイビーは売れなかった。売れなくて当たり前であり、この状況で「売れる」と考えていた方がおかしい。

国内市場ではGAPの投げ売り品があればオールドネイビーは不要だった。

ちょうどユニクロの廉価版に過ぎなかったころのジーユーがまったく売れなかったのと同じだといえる。
ユニクロと似たような商品ならユニクロの投げ売り品を買えば良いのである。
ユニクロだってTシャツ500円とかセーター990円にまで値下げされる。しかも使用素材や縫製はジーユーより格段に上だ。
だったらチープな作りのジーユー商品を定価で買うよりも、高品質なユニクロの投げ売り品を買った方が良いに決まっている。

GAPが日本に上陸して20年くらいになるが、一貫してGAPは高めの定価設定を見せながら、ユニクロを時に下回るほどの投げ売りを行い続けてきた。
今更、大幅値下げをやめたところで20年間の蓄積されたイメージは容易に覆らない。
イメージを覆すには、同じく20年間とはいわないまでも相当長い時間が必要になる。果たして目先の利益追求が激しいアメリカ企業が根気よく、長期間にわたる取り組みを続けられるだろうか。
極めて疑問である。

それにこのジャパン社の社長の施策はGAPの根本的な問題を直視していない。
GAPの問題は大幅な投げ売りにもあるが、それ以上に日本市場において定価設定が高すぎるのである。
だから定価では売れない。

もちろん、ビジネスの基本はいかに高値で売るかということだから、売れる手法を持っているならいくらでも高値に設定すれば良いのである。
しかし、その手法を持っていない、少なくともこの20年間一度も効果的に発揮できていないのであれば、高すぎる定価設定を見直すべきだろう。

消費者にとっては高値で買う魅力がない商品なのだから、値引きをせずに売ろうとするなら、定価設定を下げるのがもっとも賢明である。

今までの売り方・売り場づくり・商品作りを継続したままで、大幅値下げをやめるとどうなるだろうか。
おそらく在庫過多になり、さらに収益性は悪化するだろう。

売り方・売り場づくり・商品作りを変えないままで、いくら価格政策をいじったところで意味はない。
そんなものは、値段を3割下げたら売れると思っているシップスジェットブルーと同じ愚策にすぎない。

さらにいえば、定価設定が高すぎるままで常時5%オフとか月初の1週間を1割引きにしたところで焼け石に水だ。
12000円の商品が、10800円になったからといってどれほど多くの人が「お買い得だ」なんて思うだろう。

今回の施策によってGAPはさらに在庫過多となり、混迷を極めることになるのではないか。

苦闘する米ファッションブランド、9社は「瀕死」の状況か
https://forbesjapan.com/articles/detail/19365

この記事でも触れられているように米国本国ではGAPは瀕死9ブランドのうちの1つに挙げられている。
それほどにGAPは日米ともに危険水域に達しつつあり、日本では今回の価格政策は失敗してしまい、ジャパン社の終わりの始まりになるのではないかと見ている。
GOOD LUCK!(キュウレンジャー風に)

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繊維・アパレル業界のマーケティングはまったく「価値創造」できていない

なんだかんだで繊維業界に20年以上もいると、それなりに多くの企業や経営陣を外野から見てきた。
2000年以降、頭角をあらわしてきた新興企業は別として、旧型アパレルの多くは苦戦を続けている。

とくに老舗と呼ばれるアパレルメーカー、ブランドの鈍重さには驚かされる。

ブランディングとかマーケティングという作業が必要なことはわかっているが、実際にはまったく取り組めていない。
広報宣伝活動といえば、80年代から変わらないファッション雑誌への広告出稿に終始している。
ウェブでの活動が重要なことはわかっているが、80年代・90年代の雑誌広告と同じだと考えており、やみくもに投稿を増やしたり、業者に丸投げすればフォロワーやエンゲージメントが増えると思っている。
はっきりいってこんな企業、ブランドばかりである。

もう読まれた方も多いと思うが、ダイヤモンドオンラインにUSJを再建した森岡毅氏のマーケティングについての記事があるのでご紹介したい。
マーケティングとは何かということがわかりやすく書かれてあるので、まだ読んでいない方には一読を勧める。

USJ再建の森岡毅が語る、マーケティング下手な企業に足りない3つの視点
http://diamond.jp/articles/-/156025

大阪のUSJは鳴り物入りでオープンしたが低迷していた。
それを浮上させ、ある意味で東京ディズニーランドよりも人気の高い施設へと変貌させた森岡毅氏のインタビューである。

まず

私はよく、マーケティングとは「価値を創造する仕事」と説明しています。市場における価値を創造すること「全般」がマーケティングの役割なのです。
我々マーケターは、価値を「ブランド」とも定義しますが、要するに、消費者の頭の中で知覚される「価値」、つまり「ブランド」を作る仕事はすべてマーケティングの領域です。

とのことで、アパレル各社が思っているような「リサーチ」ではないということである。
旧型アパレルでも大手になるとマーケティングナンチャラ室とかマーケティングナンタラ部みたいな部署があるが、やっていることは単なる市場・他店リサーチに過ぎない場合がほとんどである。

マーケティングが「価値を創造する仕事」とすると、「どうやって価値を創造していくのか」という疑問が当然生まれるでしょう。マーケターが「何を考え、どこを見ているのか」という部分です。
ここで重要になってくるのが次の3つの視点です。

(1) 市場構造を解き明かす
(2) 消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる
(3)(1)と(2)を実行できる組織をつくる

(1)の「市場構造を解き明かす」とは、簡単に言えば、移ろいやすい消費者のニーズがどのような状況、構造になっているのかを把握することです。一般に「消費者のニーズは変わりやすい」と言われますが、本質的な「人間の欲」はそれほど変わらないと私は思っています。
ただ、それを「満たす方法」が変わるのです。

とのことで、とくにこの3点を理解していない企業、ブランドは繊維・アパレル業界には数多くある。
市場構造を解き明かす気もなく、天候やら景気動向のせいにして終わってしまう。
各社の月次売上高速報そのものではないか。

また、「消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる」ことをまるで考えていない。
考えていないというと語弊がある。考えてはいるのだ。
しかしその考えた理由というのは「価格が安いから(値下げすれば売れるだろう)」とか「機能性・スペックが優れているから(7つの機能性だとか過剰なフィクションに彩られた匠の神話だとか)」というようなものばかりで、表層的なものにすぎない。
挙句の果てが「タレント頼み」である。

優れたコンテンツがあってそれを紹介するために人気タレントを起用するならわかるが、コンテンツがないくせに人気タレントを起用すればすぐさま爆発的に売れると考えているのだが、それが大きな間違いである。
キムタクに着させたらどんな商品でも売れるなんていうのは2005年までで終わっている。

そして

そして、ここからがさらに大事な話ですが、「(1)と(2)の戦略を正しく実行できる組織」を作っていかなければなりません。
どんなに精緻に市場構造を解き明かし、プレファレンスを高める戦略を構築しても、それを実行できなければ何の意味もありません。私はよく「戦略人事」という表現を使いますが、目的を達成するための人事改革、組織改革を成し得なければ、本当の価値は生まれません。

とあるが、人事というのは本当に重要である。

そこで重要となってくるのが、CMO(最高マーケティング責任者)の役割です。CMO(あるいは、それに準ずる役割の人)が、マーケティングの意味や幅をきちんと理解し、その責務をきっちりと果たす。その一方で、経営者も同様の認識を持ち、CMOに相応の権限を与える。

ここが大事なポイントです。
私がUSJで働いている際、非常に幸運だったのは、社長であったグレン・ガンペルが、これまで述べた三つの領域において「私がリードできる十分なスペース」を与えてくれたことです。それだけの権限と自由を与えてくれたからこそ、私は自分の責務を果たし、結果を出すことができたのです。

もちろんグレンとは、激しい議論を何度もしましたし、ここでは紹介できないような激しい表現での言い合いもしょっちゅうしました。また、彼がマーケティングを深く理解していたかと言えば、決してそんなことはありません。
彼は強烈な存在ではありましたが、一方で、優秀な多くの人間がそうであるように「自分が足りていないもの」をきちんと理解し、必要な人材を登用し、権限と自由を与えるだけの極めて高い知性を持ち合わせていました。だから、彼はいくら激しい議論をしても、最終的に「私がこうしたい」ということについては、さんざん激しい議論の末に、私の自由にやらせてくれました。

とのことで多少なりとも宮仕えをしたことがある身としては非常に重要だと感じる。
部下や担当者に任せることができない経営者は本当に数多い。むしろそちらの方が9割がたを占めるだろう。
そして多くの企業や組織は、経営者よりも劣る人材が集められており、いつぞや、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがおっしゃられたように「経営者より優れた部下は組織には居られなくなる」というのが常態となっている。

逆に言えば、自分より優れた部下を集めて使える経営者はそれだけ稀有な存在だといえる。

根本的な視点がないのに、小手先のウェブ告知やSNSの投稿やインフルエンサー起用なんて百万回やったってなんの成果も生まない。
このことをわかっていない企業とわかっている企業の格差がより開いてきており、わかっていない企業が繊維・アパレル業界では9割くらいあって苦戦を続けているというのが実態といえる。

この森岡氏の記事は連載のようなので今後が楽しみである。

*ここからは趣味の話なのでめんどくさい人はスルーしてほしい。

森岡氏は三国志のトップに例えておられるが、ここの部分の見方ははっきりいって疑問である。
孔明、関羽、張飛という優れた部下を集めた劉備は、その点だけは曹操に勝っていると言っておられるが、三国志演義に毒されすぎである。
魏・呉・蜀の三国でもっとも人材の層が薄く、国力が劣っていたのが蜀である。
劉備が建国した蜀は、孔明と関羽・張飛・趙雲・馬超・黄忠・魏延以外に優れた人材はほとんどおらず、彼らの死後、人材は払底してしまう。

また、建国前の劉備軍団にも優れた人材は少なく、社長(劉備)のずぼらな人的魅力と、凄腕部長(関羽、張飛、趙雲)の個人プレーに支えられた完全な体育会系零細企業で、さらにいえば文官はほとんどいない。
孔明登場前に劉備軍の参謀となったのが徐庶だが、孔明を推薦したのち、曹操陣営に移籍するが、移籍後はめだった活躍をしていない。少なくとも史書に記されるほどの活躍はできていない。
それはなぜかというと、曹操陣営には荀彧、司馬懿、程昱、賈挧、荀攸などの優れた参謀が数多くいたからである。
むしろ優れた人材を多数使いこなした曹操の方がトップとして力量が優れていたといえる。

劉備軍は孔明以外に龐統、馬良しかおらず、法正が加入してきたものの3人とも早逝したため、本来、行政官向きの孔明が政戦の要とならざるを得なかった。この激務が孔明の寿命を縮めたともいわれている。

また史書でいうと三国のうち、蜀の記録がもっとも少なく、文官をあまり重視していなかったともいわれている。

物語は歴史に親しむきっかけとなるが、あまりにもその物語がポピュラーすぎるとかえって史実を見誤らせることになる。これは何も三国志演義に限ったことではないのだけれど。

以上、蛇足である。

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