カテゴリー: 企業研究 (1ページ / 14ページ)

卸売りブランドが陥りやすい魔のスパイラル

先日、「〇〇ブランド(仮名)って最近名前を聞かないね」という話題になったところ、相当に経営難に陥っているそうだ。

いわゆるカジュアルブランドなのだが、そういえばこの5年間くらい名前をほとんど聞かなくなった。
以前は、1店当たりへの納品枚数は少ないものの、多数の高感度専門店に卸売りしていた。

業界紙やファッション雑誌にもそれなりに掲載していたし、実は当方も18年ぐらい前には取材に伺ったこともある。

すごく画期的なことは何もなかったが、それでも上手くやれば個性派小規模ブランドとしての存立は可能だったとその時は思った。

では何が問題だったのだろうか。

商品企画やデザインもさることながら、営業の仕組みに問題があったようだ。
しかし、これはこのブランド特有の問題ではない。
卸売りブランドに共通する問題なので、いつ何時、あなた方の卸売りブランドも同じような機能不全に陥るかもしれないのである。

一般的に、ベンチャー的に立ち上げた卸売りブランドは、少人数で運営されている。
3~4人で経営者も営業マンとして各小売店と商談を行い、自社の商品が卸売りできるように交渉する。

拡販することが会社の成長に直接的につながるからだ。
その他の2~3人のメンバーも立場的には単なる従業員ではなく、役員だったり、経営者の同志だったりという状況だから、ほぼ経営者と同一の目線で拡販に努める。
そこには「ヤラされ感」とか「ノルマに追われる感」はあまりない。

良い意味で士気が高いという場合がほとんどだ。

そうこうしているうちに会社の業績が拡大してくる。
取引先も増え始めるとスタート時のメンバーだけでは人手が足りなくなる。

そこで営業担当者を求人募集する。

何人かが採用されて戦列に加わるが、これは第1次メンバーとは異なり、純粋なる従業員となる。
士気が高くないとは言わないが、立ち上げメンバーに比べると幾分かは従業員気質が強い。
これは仕方がない。
当方だって同じ立場なら、立ち上げメンバーほどにはその会社に入れ込まない。

世界の経済は資本主義だから、日本も同様で、会社は利益追求と拡大再生産が求められる。

営業担当者としては前年実績を上回ることが求められ、やがてはノルマに追われることになる。
ノルマ追求が全くなければ逆にだれてしまうが、かといって過度にノルマ追求をしすぎると、社員の士気は下がる。

やがてノルマに追われる営業マンたちは、「卸売りできれば何でもいい」という境地にたどり着く。

アパレル業界の取り引き形態としては、

1、完全買い取り
2、委託販売という名の消化仕入れ

の2つが大きく分けてある。

卸売り先を増やそうと思うなら、完全買い取りよりも委託販売や消化仕入れの方が手っ取り早い。

なぜなら、完全買い取りだとその商品を店側が買い取らねばならない。
売れ残ってもそれは店の自己責任だ。
だから店側としてはリスクが高い。

一方、委託販売や消化仕入れは、売れた分の料金だけをメーカー側に支払って、残った商品はメーカーに返品できる。
従って店側が負うリスクは低くなる。

だから、ノルマに追われる営業マンは委託や消化仕入れで卸売り先の軒数を増やす。

これによって見かけの取引高は大幅に増える。
しかし、ここに落とし穴がある。

現場の営業マンからすれば経営者や幹部ではないので、自分に与えられたノルマがクリアできれば良いと考える。
期初に店に大量納品すればノルマがクリアできる。
期末に大量返品があろうが、消化分の代金が少々回収できなかろうが、そんなことは知ったことではない。
ノルマをクリアできなければ経営者や幹部からドヤされる。

かくして、期末の大量返品や代金の未回収が増えた結果、卸売りメーカーは経営の危機に瀕するのである。

そして、この噂に上らなくなったカジュアルブランドも同様の経緯で経営難に喘いでいるといわれる。

これは何もこのブランドに限ったことではない。
卸売り主体のブランドならどこにでも起こり得ることである。

そして過去にもこれが原因で経営難に陥ったり、経営破綻したブランドは掃いて捨てるほどある。

いわゆる大手ジーンズメーカーもその中に入る。
大手ジーンズメーカーはライトオンだとかマックハウスだとかの大型チェーン店に大量納品していた。
定番品を除いて、シーズン商品はシーズンごとにメーカーが入れ替えていた。
夏なら麻混や吸水速乾パンツ、冬ならコーデュロイや保温パンツである。

当然、完売する商品もあれば売れ残る商品もある。

売れ残った商品はジーンズメーカーが引き取り、代わりに次シーズンの商品を納品する。

売れ残ったコーデュロイパンツを引き取って、代わりに麻混パンツを納品するという仕組みだ。
これがなぜ可能なのかというと、完全買い取りではなく、委託販売という契約だからだ。

このため、各ジーンズメーカーは期初に大量に売り上げが作れるものの、期末には大量の返品に苦しめられることになる。

2005年以降にジーンズメーカー各社が苦戦に転じたのはこの手法が限界に来ていたという理由もある。
返品された在庫が蓄積しすぎて減損処理を行うととてつもない損失を計上することとなり、経営と資金繰りを圧迫する。

各メーカーはアウトレットストアを林立させることで乗り切ろうとしたが、それにも限界があり、逆に最近ではジーンズメーカーのアウトレットストアは以前ほどには見かけなくなってしまっている。

これを回避するには、経営陣と幹部のきめ細かで緻密な管理が必要となる上に、アメとムチのバランスが重要となる。
アメだけだと従業員は舐めてしまうし、ムチばかりだと萎縮してしまう。
なかなかに難しい。

ジーンズメーカーや、先のカジュアルブランドに限らず、同じ窮地に陥っている卸売りブランドは珍しくない。
事業主もこうした危険性を理解しているとはいえ、この魔のスパイラルを克服できるブランドがほとんどないのも実情である。

NOTEの有料記事を更新~♪
原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n96317a6e146f

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

ユニクロ心斎橋店に自動レジが導入されたので試してみた

今年の春からユニクロ心斎橋店にクレジットカード専用の自動レジがついに設置された。つい最近のことだ。

先日、初めてこれを試してみた。

同じ会社でありながらジーユーの自動レジとはシステムが異なる。
ジーユーの自動レジは、レジに設置してあるボックスの中に商品を放り込んで、蓋を閉めれば数秒で値段が表示されるという仕組みだが、ユニクロのは商品の下げ札に書いてあるバーコードをスキャンして読み取らせるという仕組みだ。

この点はスーパーのセルフレジに近い。

値段が表示されたらクレジットカードをスラッシュして決済を終える。

これで終了だ。

このときは、期間限定値引きされたスリムストレッチチノパンを買っていて、裾上げがあるので預けて帰ったため、袋に入れるのはどうするのかは体験できなかった。

ジーユーの場合は自分で備え付けのビニール袋に放り込む。
丁寧に畳みたい人は畳めばいいし、丁寧に畳んでなくても気にならない人はそのように放り込めばいい。

当方が買ったのはユニクロ心斎橋店の3階だが、今までレジが6~7台くらい並んでいたが、そのうちの半分がカード専用セルフレジに代わった。台数は3~4台ほどだ。

それにしても同じ会社でありながらどうしてジーユーとは異なるレジ台にしたのだろうか。
ジーユーと同じレジにすれば調達コストは削減できたはずだ。

ユニクロも自動レジ化を見越して、昨年か一昨年あたりから下げ札にあICタグが付けられている。
準備は万端のはずなのに、仕組みの異なる自動レジ機を備え付ける意図がまるで理解できない。
今回はクレジットカード専用機だが、日本人は現金取引が好きだから、ジーユーみたいにカードと現金どちらも対応できる機械が本来は好ましい。

外国人観光客が多い心斎橋店だから、キャッシュレスに慣れているという判断から、クレジットカード専用機にしたのだろうか?

このあたりはまったく謎である。

もしかしたらさらに何かの仕掛けを考えており、そのための布石なのだろうか。

ところで、ジーユーのようにすべて自動レジにせよとは言わないが、ユニクロも自動レジ化を大いに進めるべきだと思う。
今回の自動レジ設置がはじめの一歩なのだろうと思うが、例えば、当方が頻繁に利用するユニクロあべのキューズモール店だとレジ台だけで20台前後はある。

閑散期はそのうちの半分~4分の1程度の稼働だから、レジに入っている人間は5~6人ということになるが、繁忙期だとレジ台はすべて稼働しているから少なくともレジ要員だけで20人くらいは必要になる。

ジーユーよりも客数が多いユニクロだからこそ、自動レジ化は大いに進めるべきだろう。
少なくともレジ要員は半分に減らせる。

しかし、その逆もあり、老人客が少ないジーユーだからすべて自動レジ化できたが、老人客も多いユニクロは大々的な自動レジ化は難しいだろう。
本来、機械の操作なんて慣れでしかないから、若かろうが最初は戸惑う。
若くても物覚えの悪い人もいるから、そういう人は1回や2回では操作が覚えられない。
それを我慢して使っていくうちに慣れて使えるようになる。

老人には機械操作に対して抵抗感のある人が多いように感じるが、それは思い過ごしである場合が多く、実際は慣れが足りないのではないかと思う。
とはいえ、ユニクロがジーユーのように全面自動レジ化すれば老人客からの不満は多くなるだろうと予測する。

業界の大御所と呼ばれる年配者でも頑なに自動レジに抵抗感を示す人がいるくらいだから、業界外の老人客ならさらに激烈な抵抗を示すだろうことは容易に想像できる。

今でこそ、JR、地下鉄、私鉄すべてで自動改札機は当たり前になったが、30年ほど前まではほとんどの鉄道は自動改札機がなかった。
駅員が切符にハサミを入れていたのである。

自動改札機がいち早く登場したのは大阪で、地下鉄は30年以上前から自動改札化されていた。
大阪の地下鉄にJR西日本や他府県のJR、地下鉄、私鉄が追随したのが実態であり、東京もその一つである。

東京の各鉄道が全面的に自動改札化した際、ちょうど30年くらい前のことだが、そのとき、一部の全国紙では「人の暖かみが失われる」なんて論評記事を掲載しており、当時高校生だった当方はその記事を読んで「この記事を書いたオッサンらはアホじゃないのか」と思った。
切符にハサミを入れてもらう行為にどれほどの暖かみがあるというのだろうか。

当時、電車で高校通学をしていた当方は改札で温かみを感じたことなど一度もなかった。

少し脱線するが、居酒屋やファミリーレストランなどで、席に備え付けられたタブレット端末で注文する店が増えた。
当方はこれがすごく便利で使いやすい。

ホールスタッフを一々呼んで注文を聞いてもらう方式だと、店が混雑するとなかなかスタッフに来てもらえない。
もしくは店内の騒音でこちらが呼んでいる声が通りにくい。

はっきり言ってストレスしか感じない。
また注文の聞き取りを間違えることも珍しくない。

これもストレスでしかない。
タブレット端末での注文ならそれは一切ない。
多くのストレスから解放される。

今でもときどき、タブレット端末のない店に必要に迫られて入ることがあるが、タブレット端末注文に慣れている身にはイラっとさせられっぱなしだ。

このタブレット端末や、海外のマクドナルドに導入された自動食券機についても否定的な意見があると聞くが、一体何に不満を感じているのかさっぱりわからない。

自動レジに頑なに抵抗する人は、30年前の自動改札機反対派や現在のタブレット端末注文反対派と同じくらい当方にとっては理解不能な存在である。

『人が人に服を売る暖かみ』を感じさせる

なんて文言を目にしたことがあるが、レジを販売員が打ってくれることにそんなに「暖かみ」とやらがあるのだろうか?当方は48歳になった今まで感じたことなどまるでないが。

何事をするにしても反対派というのは確実に存在する。全員が納得して賛成できることなんて世界にはほとんどない。
ピントのズレた反対派の意見に過剰に振り回されることなく、粛々とユニクロもその他洋服店も自動レジの導入を進めてもらいたいと思うし、日本のマクドナルドも自動食券機を全面的に導入すべきだと思う。

NOTEの有料記事を更新~♪
原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n96317a6e146f

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

EC売上高においてZOZO比率の高い企業と低い企業 ~ZOZOに依存している企業と離脱可能な企業~

アパレル業界は猫も杓子もネット通販という感じになっており、その中でもアパレル製品に関してのみ影響力が強いとされるのがスタートトゥデイの運営するECモール「ZOZOTOWN」である。

水面下では有力ブランドがゾゾ離れを画策しているといわれるが、果たしてそういう有力ブランドのECにおけるゾゾ比率はどの程度なのか。
それをまとめてくれたお役立ちNOTEがある。

「業界の美肌プリンス」の異名を欲しいままにする深地雅也さんがまとめてくれているので紹介する。

大手アパレルのEC売上におけるZOZO比率をまとめてみた
https://note.mu/fukaji/n/n4888917d9f0c

ユナイテッドアローズ、パルグループ、ベイクルーズ、アダストリアホールディングス、オンワード樫山、トウキョウベースの6社のゾゾ比率をまとめている。

本文記事を読んでもらえればわかるが、決算書類に書かれてあることをもとにしてゾゾ比率を算出している。
算出というほどのことではなく、各社はゾゾ比率がどれくらいかを自社で発表している。

まず、ユナイテッドアローズ。

ユナイテッドアローズのZOZO売上構成比は全体の57%。232億円の57%ですから正確な売上は132億円。2017年と比較すると、EC全体が202億円でZOZO売上構成比が60%で121億円。まとめたものが下記になります。

   2017年3月期 2018年3月期
EC全体    202億円   232億円
ZOZO売上   121億円   132億円
自社EC売上  40億円    54億円
ZOZO比率    60%     57%

となっている。

また

ユナイテッドアローズのECはスタートトゥデイがフルフィルメントを担当していますから、自社ECが伸びてもスタートトゥデイに恩恵があります。

とのことで、ユナイテッドアローズはゾゾへの依存度が少し高すぎるといえる。

続いてパルグループである。

パルは先日、公開されてましたのですぐわかります。

EC全体   110億2100万円
ZOZO売上 71億8300万円
自社売上   19億8700万円
ZOZO比率    65%

となっており、自社運営のサイト「パルクローゼット」の売上高は微々たるものだということがわかる。
ここもゾゾ依存度が高すぎる。

3番目はベイクルーズ。

2017年末の記事ではその当時の数字が、

EC全体   275億円
ZOZO売上 107億円 ※ZOZO比率39%から逆算
自社売上   137億円
ZOZO比率    39%

とのことで、ここはゾゾ比率を下げることに成功している。

アダストリアもゾゾ比率は比較的低い。

EC全体    333億円
自社売上   172億円
ZOZO比率  48%以下

アダストリアは自社ECサイトのドットエスティがあり、こちらはなかなか健闘している。
ドットエスティは4000円以上で送料が無料となるため、何万円買おうが送料200円が必要なZOZOTOWNで買うよりもお得だから、アダストリアの商品をネットで買う際には必ずドットエスティで買っている。
ここもゾゾ比率は今後さらに下がると見ている。

オンワード樫山もゾゾ比率は低い。

EC全体    203億円
自社     152億円 ※自社比率75%から逆算
ZOZO比率   25%以下

オンワード樫山の主力ブランドは23区にしろ組曲にしろ、40代以上が主力客層となっており、30代前半がメイン顧客のZOZOTOWNとは最初から親和性が低い。
このため、今後もオンワード樫山のゾゾ比率は高まらないまま推移するだろう。
オンワード樫山にとってはゾゾはほとんど必要ではないと思う。

最後のトウキョウベースは反対にゾゾ依存度がもっとも高い。
個人的には高すぎて逆に危険ではないかとさえ思う。

EC全体    49億7000万円
ZOZO比率    86%
自社比率    14%以下

自社ECはほとんど売れていないに等しい。

スタートトゥデイとトウキョウベースは経営者のタイプがビッグマウス同士で似ていると感じる。
似ている者同士は同族嫌悪になるか、べったりになるかのどちらかなので、この場合は後者なのではないかと見ている。
いくら馬が合うといっても、ここまで他社に依存しているのは危険極まりないと思うのだが。

ざっと深地さんのNOTEを引用抜粋してきたが、今後、ゾゾ離脱が早期に可能な企業はこの6社のうち、ベイクルーズとオンワード樫山とアダストリアホールディングスだろう。そこにストライプデパートメントを立ち上げたストライプインターナショナルも加わる。
この4社はすぐにでもゾゾ離脱が可能なので、今後何かのきっかけがあればゾゾを離脱してもまったく不思議ではない。
とくにオンワード樫山はZOZOTOWNの必要性をまったく感じてないのではないかと見ているがどうだろうか?

逆にゾゾと心中しかねないのがトウキョウベースであり、自社比率14%というのは危険水域に達しているのではないか。
パルグループも同様であり、ちょっと自社サイトの力が弱すぎる。

離脱する腹積もりはあるが、なかなか踏ん切りがつかないのがユナイテッドアローズではないか。

トウキョウベースやパルほどは依存していないが、離脱するには依存度が高すぎる。
ユナイテッドアローズは今後どうするのだろうか?
自社ECサイトを強化するのか、このままゾゾ比率を50~40%くらいで維持するのか。
どちらの方向を選ぶのだろうか。
ちょっと注目して観察してみたいと思う。

NOTEの有料記事を更新~♪
原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n96317a6e146f

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

オンワード樫山の商品はAmazonでも買える。

スタートトゥデイの「中期経営計画」と「新ゾゾスーツ」に対する疑問

4月28日からゴールデンウィークの連休が始まった。
連休に入る直前の27日夕方、株式市場が終わった直後くらいに、スタートトゥデイから「ゾゾスーツの失敗と新ゾゾスーツ」「中期経営計画」の2つが発表されたが、個人的にはどちらも疑問しか感じない内容だった。

まず、ゾゾスーツの失敗と新ゾゾスーツだが、生産に至ることができずに新方式でのゾゾスーツを発表した。

スタートトゥデイ、“ZOZOSUIT”生産失敗で約40億円の損失を計上
https://www.wwdjapan.com/607378

体型を採寸できるスーツとして注目を浴びたゾゾスーツだったが結局は量産化できずに終わった。
旧ゾゾスーツは、着用してスマホと連動させることで一瞬で体型が採寸できるという触れ込みで、ここに未来性を感じた人が多く、その人々から高く評価された。
昨年10月末に発表されたものの、年が明けてもほんの一部の人間にしか配布されておらず、いわば掛け声だけの「幻」の状態が4月まで続いていた。

どうなっているのかという声も多数上がっていたが、2月にはスタートトゥデイは別のアイデアを3億円で買ったという報道があった。

「ゾゾスーツ」超えるアイデア 3億円で買い取り
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26992020W8A210C1000000/

この時点で複数の業界人からは「これは先に発表されて動きがないゾゾスーツを諦めて、こちらに乗り換えるつもりだろう」という指摘が出ていたが、まさしくその通りの展開になった。

旧ゾゾスーツを申し込んだ人はもれなく、新ゾゾスーツに替えて送付されるとのことだが、この対応は個人的には疑問だ。
まず、旧ゾゾスーツの量産失敗、もしくは量産断念を先にアナウンスすべきではないのか。
それを4月末まで隠しておいて、いきなり「新ゾゾスーツに替えて送付します」というのはちょっといただけない。

今回は、販促戦略もあって無料送付だったから、各人に金銭的被害は発生していないが、通常買い物をした場合なら、その商品がなければ先にそれを説明する。そのうえで、代替品を用意すると説明する。
いきなり、代替品のアナウンスと同時に量産断念をアナウンスするのはどうかと思う。

生産コストは1着1000円で、費用は広告宣伝費に計上するという。発表会ではデモンストレーションを実施したが、音声にしたがって全身の撮影をするため、旧型に比べると計測にかなりの時間がかかるようだ。

着ただけで採寸できるのではなく、着てそれを音声に従ってカメラで撮影して採寸するという新ゾゾスーツがすごく性能が良いという擁護記事がさっそく書かれているようだが、フェイスブックの書き込みでは「使いにくい」「採寸が正しいのかどうかわからない」という書き込みもあり、一概に擁護派のいうようなメリットばかりではないと考えられる。

また、中期経営計画だが、ちょっと実現は困難なのではないかと思う。
株価対策のために盛ったのだろうか。

ゾゾ初の中期計画、2年後に商品取扱高5000億円突破、PBは3年で2000億円へ
https://www.wwdjapan.com/605521

19年3月期決算では商品取扱高が前期比33.1%増の3600億円、売上高が同49.3%増の1470億円、営業利益が同22.4%増の400億円、純利益が同38.9%増の280億円を見込む。PB事業の売り上げ目標は200億円。2年後の20年3月期には商品取扱高5080億円、21年3月期には7150億円、営業利益900億円を目指す。

今期のPB売上高は135億〜225億円を見込む。6月にはカジュアルシャツやデニムなど3型を追加する予定で、今後フルオーダーのビジネススーツ、ドレスシャツ、ワンピースを計画する。7月以降は世界72カ国でも販売を開始し、2年目にはグローバルで売上高800億円、3年目には2000億円を目指す。

とあり、取扱高5000億円の目標はともかくとして、自社企画ブランド「ゾゾ」の初年度売上高200億円、3年目2000億円という数字と、新ゾゾスーツの今期は600万〜1000万個の発送予定はちょっと盛りすぎた数字で実現性に乏しいと感じる。

これを端的に深地雅也さんがまとめている。

https://note.mu/fukaji/n/n9ff1ca89028d

 

 

(ゾゾの)昨年度のアクティブ会員が5,112,861人。ゲスト会員が2,110,366人。トータルで年間購入者数が7,223,227人。アクティブ会員の定義は年間1回以上購入なので僕はアクティブ会員に属していますから、少なくとも既に主要な会員500万人にリーチしている情報で100万件の発注数。SUIT発表のタイミングで新規登録した人もいるかとは思っていましたが、昨年度からトータルで17450人しか購入者数が増えていませんし、むしろゲスト購入者数は減少しています。ZOZOSUIT購入者はカウントしていないのかもしれませんが特に記載はありません。

とのことで、ゾゾスーツ購入者はカウントしていないのかもしれないが、アクティブ会員とゲスト購入者を合わせたトータル利用者数は1年間で1万7450人しか増えていない。
個人的な考えでいえば、ゾゾの会員数はほぼ極大値に近づいていると思う。ファッションやファッションテックに興味のある人はとっくに会員になるかゲスト購入者になっているだろう。当方のようにゾゾが嫌いな人はいくらもてはやされてもこれからも利用しないだろう。
ましてやファッションやファッションテックに興味のある人はマスの中では少数派である。逆に興味のないマス層が今後、服しか売っていないゾゾで積極的に買い物をするとは考えられない。
服に興味のないマス層は、服以外の商材が豊富なAmazonやYahoo!ショッピング、楽天あたりで買い物をする。
みんながみんな服に興味があると思ったら大間違いだ。当方だってこの仕事をしていなかったら服なんか買わずにもっとガンプラを買っている。

だからゾゾの会員数とゲスト購入者はここから大きくは伸びにくいと考えられる。

そんな状況で新ゾゾスーツ600万枚配布はちょっと難しいといわねばならない。

仮に今の発注数である100万件が6月中に届いたとして、残りの500万件はどのタイミングでお届けするのでしょうか。

という疑問がすべてを物語っている。

また自社企画ブランド「ゾゾ」の売上高も同様にかなり難しい数字を出していると見ている。

ユニクロのTシャツ・ジーンズ売上の何%売れば、どのくらいの売上になるかの指標が書かれています。ユニクロのヒートテックですら初年度150万枚。1枚1200円のZOZOのTシャツが仮に150万枚売れても18億円です。ユニクロのジーンズは毎年1000万枚以上販売しているようですが、仮にその10%販売出来ても100万枚×3800円なので38億円です。


とある。ゾゾはこれからジーンズとTシャツ以外にも商品の種類を増やすと発表しているが、それを入れても初年度200億円というのは難しい。5月1日現在、まだ売り物は1200円のTシャツと3800円のジーンズしかない。ゾゾがいうようにフルオーダーのスーツ、ドレスシャツ、ワンピースなどの新商品を投入したって、あと10か月でどれほどの売上高が見込めるのだろうか。
そしてあと10か月となった5月1日現在もまだ新商品の具体的な発表はなされていないし、もちろん投入もされていない。

一般的に考えて、1200円のTシャツが150万枚も売れることはないし、3800円のジーンズが100万本売れることはない。

また、この自社企画ブランドが3年後2000億円というのも眉唾物だ。個人的には「言うだけはタダ」ではないかと見ている。

年間売上高2000億円というと現在のジーユーと同等ということになる。
またアダストリアホールディングス全体の売上高と同等ということになる。

マス層にそこまで知られていないゾゾタウン、さらに自社企画ブランド「ゾゾ」がマス層にも知られているジーユー、アダストリアに匹敵する売上高をたった3年で作るのは至難の業である。
ファーストリテイリングという強力な後ろ盾があったジーユーだって方向転換してから年商2000億円に達するまで7年間もかかっている。

「ゾゾは世界に向けて売るから達成できる」という人もいるだろうが、世界こそそんなに簡単ではないのではないか。
中国にはすでにアリババやタオバオなどの巨大ECがあるし、高級ゾーンでは欧米のネッタポルテがある。
ここにウィゴーやらジーンズメイトやらタカキューなんかの低価格ブランドが増加したゾゾが新規参入してそこまで世界から支持を受けるとは当方は到底考えられない。

一気に生産枚数や配送数を増やしたり、一気に流入者を増やしたりできるような「魔法」はこの世には存在しない。
そしてゾゾはそんな「魔法」を持ち合わせてはいないと当方は見ている。
「魔法」に期待している人はさぞかし天真爛漫・純粋無垢なのだろうと思う。

NOTEの有料記事を更新~♪
心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n2eb0ac5ccb54

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

オールユアーズの直営店兼事務所のプレオープンに参加してきた話

クラウドファンディングでファッションのジャンルで1800万円を集めて記録を作ったオールユアーズが、4月27日、東京の世田谷区池尻2‐15‐8に直営店舗兼事務所をグランドオープンする。
1階が店舗兼ショールーム、2階が商談スペース、3階が事務所となっており、4月23日に関係者を集めてのプレオープンがあった。

そのプレオープンに「ぜひに」と呼ばれたので、「東京まで行くのはめんどくせえな~」と思いながらも、せっかくなので参加した。

大阪での仕事を終えて、23日の午後8時半ごろに現場に到着した。
東京の土地勘はほとんどないので、池尻大橋がどんな場所なのかあまり知らなかったが、オールユアーズがオープンする場所は住宅街である。それもマンションなどはなく、ほとんどが一軒家という地域で、オールユアーズの建物も一軒家を改装したものだという。

ようやく到着してから30分ほどすると、縫製工場の担当者や生地メーカーの担当者ら6~7人くらいが挨拶を終え、飲みに行き始めたが、そのとき、「南さんも一緒に行きましょうよ」と誘われ、初対面だったにもかかわらず同行することになってしまった。
プレオープンの滞在時間はわずか30分で終了してしまった。

気を取り直して、翌日24日の午後に再度オールユアーズを訪問した。

オールユアーズの外観

せっかく東京くんだりまで来たので、今後の展望とか店舗の方向性などを聞いておかないと、単に飲み会に参加しただけになってしまう。

オールユアーズの頭脳ともいえる企画担当者の原康人さんにいつもの雑談形式であれこれ質問してみた。
基本的に「服だけを売ることは難しい」という認識で当方とはかねてより一致している。

念願の事務所兼ショップの解説ということだが、どんな方策を考えているのか?と尋ねてみた。

そうすると原さんは、

「我々の服がクラウドファンディングで売れたといっても、さらに何億円も服を売ることは難しい。特にブランド立ち上げから注力してきた卸売りで売上高を拡大するのは相当に難しい」

と指摘する。
たしかに現在の専門店は、売れ行き不振から極度に仕入れ枚数を減らしている店舗が多く、ジャンルを問わず専門店への卸売りではどのブランドも売上高を拡大しにくい状況にある。

そこで「服だけではなく、体験も売る」ことを目指す。

今年夏から秋口くらいの時期に、1階の店舗部分に何台かのミシンを設置することを考えているという。
ミシンを設置することで、まず、サンプル品や1型20枚程度の超小ロット商品を店内で縫製してしまう。

縫製している風景が見られるということで、来店客へのデモンストレーションにもなるし、10枚~20枚程度の商品を店内で製造することで小回りの利く商品追加が可能になる。

そのうえで、オールユアーズは、このミシンを有料で希望者に店内で貸して、自分で洋服を縫製するという体験をしてもらうことを構想しているという。
これが「体験も売る」ということの一つだ。

また、一つの商品を縫製せずに型紙・生地・付属(ボタンやリベット、ファスナーなど)を一まとめのパッケージにして、それを買ったお客に、店内のミシンを使ってそれを組み立ててもらうという売り方も構想している。

今回のショップオープンにあたって、店内の工事を手伝う権利をクラウドファンディングで販売したところ、7人くらいの購入者があったのだという。
当方からするとわざわざカネを払って、他人の店舗作りの工事を手伝うなんて意味がわからない。
手伝ったんだからバイト代をもらっても当然だと思うのだが。(笑)

しかし、そういう「カネを払ってまで物作りに参加したい」という嗜好のある人もいるということだ。
当方には理解できないが。

そういう嗜好のある人も少なからずいるから、店内のミシンを有料で使って、商品を自分で組み立てて(縫製して)みたいという人もそれなりにいるだろう。

現在、商品そのもので差別化することは非常に難しい状況にある。

一昔前までは「生地ガー」とか「縫製ガー」とか「生産地ガー」というだけである程度の差別化が可能だったが、今はそれで差別化することはほとんど不可能になっている。
2005年くらいまでは百貨店に並ぶ服と、低価格ブランドに並ぶ服では生地のクオリティが如実に異なったが、今ではほとんど格差がなくなっている。縫製仕様にしても同様だし、生産地にしても同じだ。
日本製なら高く売れるかというとそうではない。すでに低価格の日本製だって珍しくない。
無印良品の3足990円の脱げにくいフットカバーはその低価格にもかかわらず日本製である。

となると、商品を製造しているところが店舗内で見られたり、プラモデルみたいに商品キットを購入して、店舗内のミシンを使って自分で組み立てることができるというサービスを付加した方が差別化しやすい。

よくファッションビルや百貨店が手垢にまみれた「コト販売」をスローガンに掲げているが、休憩ゾーンを広くしたりトイレを綺麗にしたりすることにとどまっていて、それのどこがコトを売っているのか?と不思議でならないが、オールユアーズの構想する売り方はまさしくコト販売といえるだろう。

原さんは、

「ぼくたちは、今後どういう方向性を取ろうかと会議をしました。このまま売上高を伸ばさず小さなニッチブランドでいるのか、それとも売上高を拡大するのか。その結果、売上高の拡大を目指すことになりました。売上高の拡大といっても、今の大手ブランドみたいに何十億円とか何百億円になれるとは思っていませんが。(笑)しかし、服だけを売っていては売上高を拡大できる世の中ではありません。そこでそういう体験も売ることで売上高の拡大を目指します」

という。

店舗にミシンを導入して、それを使えることをサービスとして販売する。
この売り方にどのような反響があるのか、ちょっと期待して見守りたいと思う。

NOTEの有料記事を更新~♪
心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n2eb0ac5ccb54

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

オールユアーズの商品はAmazonでも売ってるよ~。

「大手セレクトショップ」という日本独特の奇態~アメリカンラグシーの撤退から~

先日、サザビーリーグが展開するセレクトショップ、アメリカンラグシーの日本撤退が発表された。店舗数がこのところ極端に減っていたからさもありなんとしか思わなかった。
サザビーリーグは以前にもセレクトショップ、アンドエーを閉鎖していて「セレクトショップ」を長続きさせることは難しいということが改めて認識されたのではないかと思う。

アメリカンラグシーは2008年の売上高をピークに相次いで店舗を閉鎖しており、現在では全国に5店舗を展開するのみとなっていた。アンドエーの末路とほぼ同じような状態だった。

先日、Yahoo!ジャパンにこんな記事が掲載された。

サザビーリーグが「アメリカンラグ シー」事業から撤退、セレクト業態が抱える構造的課題が浮き彫りに
https://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20180415-00084027/

これは当方の旧知の松下記者が書いたものだが、記事中にこんな一文がある。

現在、セレクトショップといわれる多くのブランド・ストアでも、オリジナル比率は50%近くまで高まっているところが多い。セレクトショップでもある程度の規模を確保し、価格競争力のある商品を企画・生産できるだけの調達プラットフォームが必要不可欠な時代に突入しているといえる。

とのことで、松下記者は控えめに「オリジナル比率は50%近く」と書いているが、実際のところ、ユナイテッドアローズやビームスなどの大手セレクトショップのオリジナル商品比率は7割から8割くらいになっている。ただし、7割と言っても、こと衣料品に限ればオリジナル比率は8割~9割にもなっている。じゃあどうして1割~2割くらい構成比率が下がるのかというと、バッグや靴がオリジナル比率を下げているからだ。

洋服は業界全体での製造インフラが整っているから、カネさえ支払えばいくらでもオリジナル品が作れるようになっている。しかし、靴やバッグは専門性が高いために、洋服に比べるとそう簡単にオリジナル品は作りにくい。だから必然的に他ブランドからの仕入れ品が増えざるを得ない。このためオリジナル品比率が洋服よりも低くなってしまう。

本来は、いろいろなブランドから仕入れてきた商品を集めたのがセレクトショップだが、事業を拡大するには、収益性の面や商品デリバリーの面から考えると、オリジナル商品比率を高めざるを得ないのが実態である。

例えば、5000円の商品を他ブランドから仕入れたとする。現在の国内の仕入れの慣習からすると、2700円くらいだろう。店側の儲けは2300円くらいしかない。ところが、同じ5000円でも自社が企画して製造を委託したオリジナル商品の場合は1700円くらいで製造できるから、儲けが3300円になる。オリジナル商品の方が明らかに利益率が高いく儲けが多い。

また、仕入れ品だと「欲しいときに追加発注しても商品がなくなっている」という可能性が高い。メーカー側はなるべく早く売り切りたいから、商品を多めには作らない。よほど売れに売れているなら追加生産するが、ポテンヒットやシングルヒットくらいの当たりでは追加生産はしない。その結果、店が追加発注しても生産せず、商品が入荷しないということも珍しくないから、仕入れ品のみでは店作りが難しくなってしまう。期初は商品がキチンと並んでいるが、期中になると棚やラックがスカスカということにもなり得る。

だからセレクトショップ各社は業績を拡大するにつれて段々とオリジナル商品比率を高めていった。大手セレクトショップの内情はすでに「ほぼSPA(製造小売り)」化してしまっている。
実は売上高500億円や1000億円を越えるような大手セレクトショップという「不思議な」業態が存在するのは日本だけである。欧米のセレクトショップは、仕入れ品のみを頑なに守っているので大規模な業容拡大をしていない。していないというよりできないのである。

つい先年、閉鎖が話題となったパリの有名セレクトショップ「コレット」だが、多店舗化していない。今回閉鎖が決定したアメリカンラグシーもアメリカ本国では多店舗化していない。一時期多店舗化を志向したものの失敗しており、個店に戻っている。そもそも「セレクト」というコンセプトで多店舗展開することは不可能に近いといえる。理由は、上に挙げたように、利益率が低く儲けにくいから大規模な投資につなげにくいということと、仕入れ品のみでは店作りが困難だからということの2つが挙げられる。
大手セレクトショップなる業態が林立しているのは日本独特の奇観だといえる。

大手セレクトショップ各社が「ほぼSPA」と化したしまった現在、弊害も徐々に現れ始めている。オリジナル商品の各社の同質化である。自社企画製品といっても、元来が小売店であるセレクトショップ各社にはデザイナーもパタンナーもいない。必然的に、そういう専門の会社に商品の製造をデザインから委託する。平たくいえば丸投げしているのである。

そうすると専門の会社はいくつものセレクトショップやSPAブランドの商品作りを手掛けているから、自然とそれらの商品は似てしまう。
出来上がった商品はどれも似ているから、それを並べた店頭は似てしまうのは当たり前である。こうして同質化が起きると、消費者が購入する動機は低価格ということになる。同じ商品・似たような商品なら人は誰でも安い方で買う。いずれ、大手セレクトショップ各社も否応なく価格競争に巻き込まれることになると考えられる。

今回のアメリカンラグシーの日本撤退からもわかるように長年にわたって、他社ブランドの仕入れだけで収益性を維持し、店作りをすることは困難を極める作業である。かといって、安易にオリジナル比率を高めてしまっては同質化が進んでしまう。これがアメリカンラグシーとアンドエーが苦戦に転じた背景で、他の大手セレクトショップも表面化していないだけで同様の課題を抱えている。

2000年ごろから国内ファッション業界を牽引してきた日本独自の「大手セレクトショップ」という不思議な業態もそろそろ曲がり角に差し掛かっているのではないだろうか?何事も盛者必衰だし無限成長することはできない。

そしてこれらの課題の解決方法を誤れば、2015年ごろから一気に経営不振に陥った大手アパレル各社と同じような結末を迎えてしまう可能性もある。

衣料品ビジネスで儲け続けることの難しさを改めて感じる。

NOTEの有料記事を更新~♪
心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n2eb0ac5ccb54

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

さらばアメリカンラグシー

ジーユーの伸び悩みはトレンドの多様化が原因 現状のままで売上高1兆円を達成することは不可能

業界紙記者時代ほどにはアパレルや生地問屋の展示会を多数回ってはいないが、それでも幸いなことに何社かはいまだに展示会案内をいただくので、時間が合う限りは見て回るようにしている。

バブル崩壊後から洋服不振が始まったとはいえ、90年代や2000年代前半はそれでもアパレルにとってはまだやりやすい環境だったのではないかと今にして思う。

バーバリーブルーレーベルのチェック柄ミニスカートが売れに売れて「アムラー」という言葉が流行ったのが97年、ビンテージジーンズブームで2万円~3万円のレプリカジーンズが売れたのは96~98年、ローライズジーンズが売れたのが2000年ごろ、神戸エレガンスブームが2005年、インポートプレミアムジーンズブームが2005~2007年といった具合だ。

2008年のスキニージーンズブームを最後にこういう単品による大量販売は見られなくなる。

2015年頃のジーユーのガウチョパンツブームが例外的といえる。
ただし、個人的にはジーユーを含んだガウチョブームは2008年までのものとは傾向が少し異なると見ている。

ガウチョはガウチョという形(シルエット)のみが支持されただけで、色・柄・素材・テイストに関しては何の統一性もなかった。
それまではスキニージーンズにしろ、アムラーにしろ、素材や色・柄、テイストは画一的だった。
ガウチョの場合は、ポリエステル素材でもデニム素材でもレーヨン素材でもなんでもありだ。また、色・柄もなんでもありだ。
無地あり、細ストライプあり、チェックありだし、色も黒・白・ベージュ・紺・グレー・ボルドー・マスタードと何色でも構わない。

テイストもナチュラルカジュアルもあればオフィスカジュアルもある。エレガンスフェミニンもある。

だからジーユーでも構わなかったということになる。
また、ブームを牽引したトップブランドもない。

それまでのブームは最終的に廉価版が発売されてマスに普及するが、まず先端層が食いつくトップブランドがあった。

アムラーならバーバリーブルーレーベルだし、神戸エレガンスならビッキーでありクイーンズコートであり、プレミアムジーンズならセブンやらヤヌーク、といった具合だ。

しかし、ガウチョブームにはそれがない。
だからジーユーで十分だったと考えられる。

おまけにテイストは様々だから一人の女性が複数本買う必要があり、そのためジーユーでのまとめ買いが起こり、結果として100万本売れた考えられる。

基本的にスキニージーンズブーム以降は、ガウチョを除いてビッグトレンドが存在しない。
とくにこの3年間は本当に消費者の嗜好は多様化しており、トレンド傾向も多様化している。

売り場担当者からは「スカートが好調」との声も聞こえるが、一口にスカートと言ったって、色も柄も素材もシルエットもテイストも多種多様である。
デニムスカートもあれば、ポリエステルのスカートもある。フレアスカートもある。タイトスカートもあるし、ナチュラルアメカジテイストもあればセクシーテイスト、フェミニンテイストもある。

かつてのように「タイトミニスカート」という具合に決め打ちするわけにはいかない。

展示会をいくつか回ってもアパレルメーカーも生地問屋も「多様化するトレンドにそれぞれ対応するしかない」と口をそろえるのが印象的である。

こうなると、トレンド対応型のブランドは収益を伸ばすのは厳しい。
さらなる多品種小ロットでの対応を迫られるから、製造コストがかさみ、在庫処分の値引き販売が増えざるを得ない。
しかも売上高は容易に伸びない。

ジーユーの伸び悩みも同じ原因ではないかと個人的には見ている。

ジーユー、じわり復活でも満足できない理由
「売上高1兆円」を目指すが、ハードルは高い
https://toyokeizai.net/articles/-/216532

この記事だが、今のままのジーユーなら売上高1兆円はまず無理だろう。期待している方がアホなんじゃないかと思う。

ジーユーの第二四半期の業績は

2月期上期決算は、売上収益1058億円(前年同期比8.3%増)、営業利益91億円(同23.3%増)。防寒アイテムが少なく十分に需要を取り込めなかったため、既存店売上高は前年同期をやや下回ったが、新規出店が寄与して増収となった。値引き処分も減り、利益は大幅に改善した。

とあるが、トレンド対応型とはいえ、ガウチョのように100万本単位で売れる商品が見当たらない状況下ではジーユー、ひいてはファーストリテイリングの強みは思うようには発揮できない。
多品種小ロット化すると、その他大勢のアパレルブランドと同じ構造になってしまうからだ。
お得意の大量発注による製造原価引き下げもそれほどはできなくなる。
とはいえ、製造を担当する商社に取られる手数料の%は他ブランドに比べて格段に低いのだが。(笑)

ジーユーが悪いというよりは、トレンドの多様化という状況ではやむを得ない。

それでも店頭を見ていると、ジーユーの今春夏物は昨年春夏物に比べて随分と良い商品が増えたと感じる。
商品企画はがんばっているといえるが、売上高が稼げるビッグトレンドが存在しない。

ベーシックアイテム・機能アイテムを核とするユニクロとは顧客層やビジネスモデルが根本から異なる。

ところで、この「売上高1兆円構想」というのは、現状のジーユーでは達成不可能だろう。
まず、ジーユーの展開店舗はほぼ国内のみである。
正確には358店舗(2017年8月期末)だが海外店舗は14店舗しかない。
現状では96%が国内店舗だといえる。

国内店舗のみで1兆円を達成するのは不可能だろう。
王者・ユニクロだって国内売上高はいまだに8000億円台である。

しかも、多様化したトレンド対応ブランドということになると、売上高を急激に伸ばすことは難しい。

それができるのだったら、そういうビジネスモデルを構築してきたワールドやオンワード樫山がとっくに1兆円企業になっているだろうが、現状彼らとて3000億円弱で止まったままである。

1兆円達成ができるとしたら、海外に大量出店した暁ということになるだろう。
というか、それしか達成できる方法はない。

現状のジーユーを見ながら「1兆円構想の達成は可能か」なんて論じたってまったくの無駄でしかない。
ジーユーの1兆円構想が現実味を帯びることはまだまだ先の話で、それまでは単なるビジョンを掲げているとして流しておくのが正解だろう。

NOTEの有料記事を更新~♪
5年後ダメになっているアパレルを3つ挙げてみたよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nebd50266b6df

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

ワールドとオンワード樫山の新しい動き。成功できるのか?失敗を繰り返すことになるのか?

2008年以降、さっぱり良いところがなかったアパレル業界の2トップのワールドとオンワード樫山にこのところ新しい動きがある。
起死回生の手札になるのかどうか外野から見守りたいと思う。

まず、ワールドは有力企業を2社買収した。

ワールドがラグタグとレンタルサービス「サスティナ」のM&Aを発表
https://www.wwdjapan.com/594621

タイトルの通りの記事なのだが、ブランド古着販売の「ラグタグ」と洋服レンタルサービスの「サスティナ」をワールドが買収したという話だ。
このところさっぱり良いところがなかったワールドにしては目の付け所がシャープな感じがする。
メディアや業界の識者の論調を見ていても好意的なものが多く、当方もその見方に賛成する。

またオンワード樫山だが、こちらも明るいニュースである。

オンワードHDのEC売上高が203億円を達成 SC向けの新ブランドを今秋スタート
https://www.wwdjapan.com/597630

これも読んでタイトルの通りで、オンワードのEC売上高が37%増で200億円に到達したという話だ。
じゃあ、どうやってEC売上高を増やしたかというと、

具体的なEC強化策は、EC上での受注販売の開始をはじめ、EC限定商品の拡充によるプロパー売り上げの底上げだ。オンラインでのセールを強化し、店舗の催事販売からECに切り替えたことで在庫処分を効率化させた。また、3月までに実店舗の在庫一元化を実行し、8月にはEC在庫の一元化を実現する予定で、今後も商品の機会ロスを減少させていく。

とのことで、珍しいことは何もしていない。

1、EC限定品の拡充
2、オンラインセールの強化
3、それに伴う店頭催事(要は安売り催事)をECへ切り替えた

であり、極めてオーソドックスなやり方で、アダストリアホールディングスとほとんど同じである。
アダストリアの場合はこれに、EC限定のタイムセール連発が加わるのだが。

そしてSC向けの新ブランドを始めるとのことだが、これはいわゆる真っ新のブランドではない。
リバイバルのブランドである。

フィールドドリームというブランドだ。

記憶だと2000年初めに開始して、いつの間にか話題に上らなくなったブランドで、2010年くらいには廃止になっていたのかと思ったら、記事によると2016年までひっそり継続していたとのことで、逆に10年以上も良く我慢していたなというのが正直な感想である。

旧フィールドドリームのロゴマーク

 

もともと、ユニクロが牽引する低価格ブームへの対応として生まれたブランドで、当初はメンズ・レディースの両方があった。当方も実際にメンズ服を何枚か買った。
メンズは売れ行きが悪くて廃止され、中盤以降はレディースのみの展開となっていたと記憶する。(間違っていたらごめん)
これをショッピングセンター向けの低価格ブランドとしてリバイバルするということだ。

2トップ企業がようやく新しい動きを見せたといえるが、当方には懸念も少しある。

まず、ワールドの買収だが、ワールドは過去にも積極的買収を仕掛けていた時期があった。
そのときに買収されたのがコキュとミニマムである。
若い人はこんなブランド知らないと思うが、90年代後半にはそれなりに話題になった新進気鋭のブランドだった。

ところが買収された途端に、クソつまらないブランドになり下がり、そのうちに消滅してしまった。

詳しい内部事情は知らないが、コキュやミニマムが得意とした面白い商品作りがワールドの管理下に置かれてすっかり精彩を失ったというのが当方の感想である。

あれから20年近くが経過していて、ワールドの経営陣のメンバーもあらかた交代している。(全部ではない)
ラグタグやサスティナがワールド仕様のクソつまらないブランドになり下がることはないと思うが、そうならないように気を付けてもらいたいと思う。

次にオンワードのフィールドドリームだがこちらも以前とターゲット層が同じなので、また同じ失敗を繰り返すのではないかという不安がある。

90年代後半から2000年代前半に投入された大手アパレルメーカーの低価格対応ブランドは軒並み失敗に終わっている。
フィールドドリームしかり、コムサイズムしかりだ。
イトキンのオフオンやショッピングセンター向けブランド群もその失敗の一つだ。

彼らのやり方はユニクロの低価格に合わせるのが大前提だったが、生産ロットの違い(ユニクロは多い、彼らはそれより少ない)もあって、完全にユニクロと同等価格にすることはできなかった。
彼らのブランドの方が幾分かは高くなってしまった。

2004年以前のユニクロは安くて高品質かもしれないが、デザイン・シルエット・色柄はクソダサかったから、本来は彼らの持っていたデザイン性を導入すれば勝ち目はあった。
しかし、彼らはデザイン性を強調するわけでもなく、ひたすら価格を強調したために「でもユニクロの方が安いやん」ということになった。

また彼らの導入したデザイン性や意匠性は、低価格が障壁となって十分な見せ方ができなかった。
例えば、本来ならもっと斬新な色柄やデザインになっただろうはずなのに、5900円に抑えるためにそこを省略したり、簡素化で誤魔化したりた。
その結果、デザイン性も価格も中途半端な商品が出来上がることになった。

中途半端なデザインなのに中途半端に高いという商品だ。

明らかに彼らの持つ百貨店ライン・ファッションビルラインよりも見劣りした。
その結果、だれからも選ばれなくなったというのがこのブランドたちで、売れないからさらに値上がりするという悪循環の繰り返しに陥った。

フィールドドリームは廃止になり、イトキンはショッピングセンター向けブランドから撤退した。
コムサイズムは続いているが、安くもなくデザイン性が高くもないという中途半端な位置づけになっており、本来は本体とされるコムサ・デ・モードと値段もデザインもどう違うのかさっぱりわからないブランドになってしまっている。

幾分か毛色は違うがパルのチャオパニックとチャオパニックティピーも似たようなものだろう。

以前は高価格のチャオパニック、低価格のティピーと別れていたが、不振からかチャオパニックが低額化し、ティピーが値上がりして価格差はなくなった。逆にティピーの方が高い商品があるという珍現象に陥った。
おまけにテイストは元から同じだから余計に区別ができなくなった。

一方、コーエンとユナイテッドアローズは区別ができていて、コーエンはスタート当初はクソダサかったが、年々商品企画がマシになっていっており、ユニクロに飽きたら買っても良いかと思わせる商品が出始めている。

再スタートするフィールドドリームだが、前回の失敗を繰り返すのかどうか、そこに注目したい。
フィールドドリームが成功すれば、他の大手アパレルの失敗続きの低価格ブランドにも幾分が光が差すのではないかと思う。

NOTEの有料記事を更新~♪
5年後ダメになっているアパレルを3つ挙げてみたよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nebd50266b6df

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

こんな古い本を改めて読んでみても面白いかも。買おうかな。

大手アパレルだけではなくセレクトショップとSPAブランドも同質化している

かつての大手アパレルの各ブランドが限りなく同質化してしまっていることは多くの人が認めるところで、その理由については以前にもこのブログで書いた。

もう一度おさらいしておくと、

1、情報源が同じ
2、製造を商社に委託した。国内の商社は数えるほどしかなく、すべてのブランドがそれら少数の商社の手で作られるから必然的に似る
3、商品企画をOEM/ODM業者に丸投げした

この3つが渾然一体となって得も言われぬ同質化のハーモニーを生み出すのである。(美味しんぼ風に)

しかし、同質化しているのはワールド、オンワード樫山、ファイブフォックス、TSIホールディングス、イトキンなどの大手アパレルだけではない。
その後、隆盛を極めている大手セレクトショップやSPAブランドもすでに同質化している。

例えば、アダストリアの「ベイフロー」とアーバンリサーチの「サニーレーベル」なんてほとんど同じ店にしか見えない。
おそらく「ロンハーマン」の廉価版なのだと思うが、それにしても似すぎていて、当方では区別ができない。

どのセレクトショップに行っても、最近だとチャンピオンのTシャツ・スエット・帽子、ディッキーズのチノパンやジャケットが並んでいる。アダストリアのグローバルワークにまでディッキーズが今春並ぶようでは、ディッキーズももう国内では広がりきったといえる。
チャンピオンのTシャツ・スエット類の人気はオッサンにとっては理解不能だ。

あの「C」マークなんて昔の体操服か、部活の練習着のイメージ丸出しである。

セレクトだ、セレクトミックスのSPAだ、といったところで、所詮は同じ人気ブランドを各店で売っているだけである。
そうなると価格競争に入るから、各ブランドはそれを回避するために「別注」「コラボ」「ダブルネーム」を盛んに打ち出す。
盛んに打ち出すというよりは乱発、アホの一つ覚えというのが正確なる実態といえる。

チャンピオンと〇〇ブランドのコラボ、ダブルネーム、別注というわけだ。

これだとチャンピンの赤色は、〇〇でしか手に入らないから値崩れしないというのが、セレクトショップ、SPA側の理由だが、そもそもチャンピオンの「C」マーク、ディッキーズの「D」マークがどの店にも並ぶのだから、消費者から見るとどこもそれほど変わらないように見える。
ラベンハムだって同じだ。〇〇ならグレーがあるが、××は黒がある、とかその程度の差異しかない。

セレクト、SPAが同質化してしまった理由も大手アパレルの同質化とまったく同じである。

1、情報源が同じ(トレンドソースが同じ)
2、製造を大手商社に委託している
3、商品企画をOEM/ODMに丸投げしている

あと、もう一つ付け加えるとすると、

安全パイの人気ブランドに頼ろうとする

である。チャンピオン、ディッキーズへの依存はまさにこれの象徴といえる。

そしてこのあたりの商品はライトオン、ウィゴー、スピンズあたりまで並んでおり、普段、小規模ブランドには「バッティングが~」なんて圧力をかけているのに、よくもまあ自ら望んでバッティングをやりたがるものだと、そのダブルスタンダードぶりには唖然とするほかない。

そして彼らは滑稽なことに、チャンピオンやディッキーズが溢れ出すと、まったく違った商品を探すのではなく、それらに似ているけど知名度の低いブランドを探すのである。

要は「チャンピオンやディッキーズに似ているけど、まだ知られていない別のブランドですよ」という売り方をしたいのだが、客からすると「なんで似たような別の無名ブランドを買わねばならんのか?」ということになる。
それなら、チャンピオンやディッキーズで良いじゃないかということになる。

どうだろうか?当方ならそうなるが、業界の「感度高いファッソニスタさんたち」の理屈は違うのだろうか?

昔話をしてもたいていの場合は意味がないが、今回ばかりは例外的に昔の方がまだ矜持があったのではないかと思う。
もちろん人気ブランドはどこでも扱われていたが、店作りを差別化しようとする努力とか、無名ブランドを発掘しようとする努力は80年代・90年代の方があったのではないかと思う。

2005年以降は「〇〇で売れているあのブランドを導入したい」とか「〇〇で売れているのと同じ素材が欲しい」とか「現在人気の〇〇と似たような店舗設計にしたい」とかそんなことばかりで、自ら進んで同質化している。

先日、あるワーキングカジュアルブランドの展示会にお邪魔したが、滑り出しは上々だという。
その理由は「ディッキーズが広がりすぎたので、それに代わる同じようなテイストのブランドを各ショップが探しているから」だという。
各ショップはアホじゃないのか。

このサイクルをやっている限りは洋服は絶対に価格競争に陥る。

人は、同じ物や似たような物なら絶対に安い方で買うからだ。

当方は投げ売り商品しか買わないから、どんどん価格競争をやっていただいても構わない。その価格競争品のさらに投げ売りを買うだけのことだ。
しかし、業界のファッソニスタたちが価格競争をやめたいと思うのなら、このサイクルをどこかで断ち切らねばならないだろう。

結局は「口では個性」と言いながら、根底では「安全パイを求める」という業界人特有の心理が現在の同質化を生み出しているといえる。

価格競争に陥っているのは消費者のせいではなく、同質化で安心している業界自らが招いた結果であることを認識する必要がある。

NOTEの有料記事を更新~♪
5年後ダメになっているアパレルを3つ挙げてみたよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nebd50266b6df

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

この「C」ロゴはダサいと思うんだけどなあ。(笑)

値下げ販売で収益を圧迫したのは実店舗じゃなくてECサイトでは? ~アダストリアの場合~

アダストリアホールディングスの2018年2月期連結が発表された。

売上高2227億8700万円(対前期比9・4%増)
営業利益50億500万円(同66・4%減)
経常利益54億2800万円(同64・1%減)
当期利益8億6300万円(同92・5%減)

と増収ながら大幅減益に終わった。

大幅減益の理由については、各メディアで、

また、頻繁なセールの実施や、客のニーズをとらえきれなかった商品の在庫消化のための値下げ販売を推し進めたことで、売上総利益率は54.2%と2.1ポイント悪化した。

https://www.wwdjapan.com/595815

などと伝えられている。
これについてはその通りだろうと思う。
実際に店頭を見ていると、頻繁に値下げセールが開催されており、現に今の春物だってすでに50%オフにまで値下げされており、この値下げ販売は「終わった話」などではなく、現在も進行形の話であり、これが収益悪化の原因なら2019年2月期の収益だって悪化したままになるのではないかとすら思う。

趣味で店頭を見る際、レディースには興味がないので見ない。
アダストリアの場合、メンズのレイジブルーとグローバルワークの店頭を見た感想でいえば、値引きは2017年度だけに行われたものではなく、毎年頻繁に行われていた。
2016年秋冬物でも、ウール系のコートは2016年末にすでに40~50%オフにまで下げられていた。

この2ブランドに関しては防寒アウターが割安になるというのが、個人的な評価である。

一方、同じWWDの記事でも

EC売上高は同17.3%増の333億円と順調に推移した。

と報道されており、他メディアでもだいたい似たような論調が主流だが、アダストリアのECを定点観測していると容易にわかることだが、ECでの値引きはリアル店舗とは比べ物にならないほどに凄まじい。

リアル店舗ではやらない「タイムセール」も頻繁に行われている。
値下げで収益を圧迫しているのはリアル店舗よりも各紙が「好調」と報じているECの方ではないのかとさえ思う。

例えば、2016年秋冬商品も、ECサイトのドットエスティを見ている限りにおいては多数在庫を抱えている。
それが2017年12月にはいきなり当時の店頭価格の半額以下で販売される。
もう店頭にはない2017年秋冬物だってECでなら今でも買える。
しかも値下げされたままだ。

多くの2017年秋冬アイテムは半額から6割程度にまで値下げされている。
今年秋に備えて買うなら今がお買い得だろう。もっとも今年秋にはさらに値下げされる可能性も十分に高いが。

そんな中でなぜかレイジブルーのウール混のチェスターフィールドコートだけは頑なに16%オフでとどまったままだ。
よほど製造原価が高かったのだろうか。それ以上は値下げしたくないというのがありありと伝わってくる。

一方、昨年12月から頻繁にドットエスティでは数日間の「タイムセール」が行われている。
例えば、50%オフされている商品があったとして、数日間だけはそこからさらに20~30%オフくらいになる。
しかもそれが毎月とか月に2回とかの頻繁なペースで行われており、早速2018年春物のタイムセールも行われた。

値引き販売で収益を圧迫しているのはリアル店舗ではなく、ECの方ではないのか。

ここを見ないとアダストリアの値引きの本質は見えないだろう。

その一方で、ECサイトの使い方としては上手いと思う。
某ワールドのようになんでもかんでもすぐにアウトレットストアの「ネクストドア」に放り込むというのは乱暴に過ぎてお話にならない。
あんたらの会社ごとネクストドアに放り込んだらどうかと思ってしまう。(笑)

リアルなアウトレットストアを大規模に展開すれば、どうしてもそちらと見比べて正規店のイメージダウンにつながる可能性がある。
また、シーズン遅れ商品や昨年の売れ残り商品はアウトレットでもなかなか売り切りづらい。

しかし、ECサイトなら話は別だ。

リアルなアウトレットストアとは異なり、誰でも見られるというわけでもない。
その存在を知らない人は見つけようもない。ウェブの苦手な人は一生見つけることはできない。

シーズン遅れ品や昨年度の在庫を値引き販売していたところでイメージもあまり悪化しない。
むしろ、ネットで買う場合こういう格安品を探すことが醍醐味となっている部分もある。

リアル店舗と異なり、陳列場所の広さにも制限はないから、売れ残りの格安品をいくらでも表示できる。

このように見ると、アダストリアのECサイト「ドットエスティ」の使い方は他ブランドよりも上手いと思う。
さらに頻繁なタイムセールで消化を高めている。

逆にちょっと笑ってしまうこともドットエスティではある。

お気に入りに登録したアイテムが残り少なくなると「残りわずかです」というお知らせメールと、その商品が再入荷したら「再入荷しました」メールが送られてくる。
これはこれで非常に便利な機能なのだが、ときどき「残りわずかです」というメールが送られてきた10分後くらいに「再入荷しました」というメールが送られてくることがある。

これには笑うしかなく、単なるマッチポンプではないのか。

そもそも10分後に再入荷することもわからないのかということにもなるし、10分後に再入荷させるくらいならあらかじめ数量を積んどけよって話でもある。

まあ、もしかしたら、現在、スタートアップ界隈の騒ぎ屋連中がワーワー言っているAI(人工知能)のなせる技かもしれないが、数十年後はどこまで進化しているのかわからないが、現状はこの程度だとするとAIに職を奪われるということはあり得ないといえる。

まあ、なんにせよ、アダストリアのブランドを安値で買いたいという人がいたら、もっともお勧めできるのはECサイトのドットエスティである。リアル店舗で買うよりも格段に安い。返品不可だったり試着できないという不便があったりするが、コストパフォーマンスを狙うならこちらで買う方が圧倒的にお得だといえる。

NOTEの有料記事を更新~♪
5年後ダメになっているアパレルを3つ挙げてみたよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nebd50266b6df

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

こんなの見つけた。なんだこれ?

1 / 14ページ

©Style Picks Co., Ltd.