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アパレルブランドの広告が失敗する理由

アパレルブランドにとって広告は必要不可欠なもので、ブランド側はもう何十年も出稿し続けているわけだから、本来はすごく広告に詳しいはずである。
しかし、業界紙、編集プロダクションで勤務した経験上でいうと、そういうブランドはほんの一握りしかない。

多くのブランドは、惰性とお付き合いと「何となく」で出稿している。
そしてそれらは広告代理店にお任せである。

例外的な少数を除くと、アパレルブランドの広告担当者のお仕事というのは広告代理店と親しくすることが8割くらいを占めている。
各ブランドにはそれぞれお抱えに近いような代理店が存在する。
1社の場合もあれば、それが複数の場合もある。
要はそれら「お抱え」と親しく付き合って、リサーチからプランからすべてお抱えに丸投げし、出てきたものに対して判断を下すだけであり、その判断自体も担当者の好き嫌いやその上司の好き嫌い程度しか基準がない。
広告担当者か上司(社長である場合も多い)が「これ、ええやん」といえば、それで終わりなのである。
その「ええやん」の基準は好き嫌いだ。

だからアパレルブランドの広告は成功しにくい。

いくつか失敗例を提示する。
当方が広告に携わったのは雑誌媒体なのでそれがメインになる。

以前、某中堅ジーンズメーカーに雑誌「Begin」の広告を相談されたことがある。
このジーンズメーカーに限らず、アパレルブランドの勘違いは、そこそこ人気のあるファッション雑誌に1度広告を掲載すれば、売上が即座に増える・回復すると思っている点である。

で、相談をされたのでこれまた、ファッション雑誌広告に強い某中堅代理店を紹介した。

ジーンズメーカーの予算は年間1000万円、代理店はこの予算で、Beginの年4回掲載を獲得してきたと記憶している。
単なる純広告(綺麗なイメージ写真とブランド名だけの広告)ではなく、タイアップ記事広告だったので、1回あたり200万円以上した。
通常、雑誌では純広告よりもタイアップ記事広告の方が高額になる。

これで決まるかと思った矢先に、メーカーが「以前から懇意にしている地域密着の小規模代理店から出稿したい」と言い出した。
これは本来は厳禁な行為である。
なぜなら、その料金プランはその中堅代理店が掛け合って実現したもので、お抱え代理店が作ったプランではない。
お抱え代理店が本来すべきことは、己らも掛け合って独自のお得感のある料金プランを作成することである。

しかし、お抱え代理店の甘えとそれを許したメーカーの不見識が相まって、結局はそのプランをお抱え代理店からやることになった。

こうなると、次からはその中堅代理店はメーカーには協力しなくなる。当たり前だ。先に不義理をしたのはメーカー側である。

結果からいうとこの広告はさほど効果がなかった。
年4回というのは無名ブランドにとっては掲載回数が少なすぎるし、Beginという雑誌がそれほどの「大部数」を抱えているわけでもないからだ。モノに対する記事や写真での見せ方に定評のある雑誌ではあるが、読者数はそれほど多くないし、読者層とブランドの相性も考慮しなくてはならない。
これはBeginに限らずどのファッション雑誌でも同じだ。
読者数の多寡も重要だが、読者層との相性がさらに重要となり、どんなに大部数のある雑誌でも読者層との相性が悪ければ、まったく反応はない。
ブランドの広告担当者はそこをよく考え、リサーチを自身でし、判断しなくてはならないが、それができている広告担当者は知っている範囲でいえば見たことがない。

結局はこのタイアップを1年か2年でメーカーはやめてしまった。効果もさることながら1000万円の広告費が捻出できなくなったからだ。できなくなったというのは表向きの理由でもしかすると、もったいないと感じたのかもしれない。

これはもっとも非効率的なカネの使い方である。
無名のブランドが年4回ちょろっと広告を掲載したところですぐさま認知度が上がるわけでもない。
もっと回数を多く、長期間にわたって掲載しないと実はファッション雑誌広告には意味がない。
年6回以上で、3年~5年間の広告掲載は必要だろうと思う。

1年や2年でやめてしまえば、その広告費は無駄になる。
このメーカーでいえば、2000万円をドブに捨てたようなものである。
これで従業員を雇うとか、従業員のボーナスを増やすとか、従業員と豪勢な食事を楽しむとか、に使った方がずっと社内の士気が上がる。

こういう失敗をするブランドは本当に珍しくない。アパレルブランドのありふれた日常風景である。

じゃあ、中小代理店を使わずに大手代理店を使えば成功するんじゃないかと考えるのが、アパレルブランドの浅はかさである。

また別のジーンズメーカーが20年くらい前まで10年間、電通を使っていた。
このメーカーはかつて「大手」と呼ばれており、ピーク時の年商は130億円くらいあった。

結果的にいえば、このメーカーの売上高は現在はピーク時の6分の1以下にまで低下している。
完全なる「ドブ金」だったといえる。

年間予算は毎年5000万円~1億円だったと聞いている。

これだけ多額の予算を払えばさぞかし効果があると、アパレル業界では考えるが、結果はまったく逆だ。
それがこのメーカーの凋落が証拠といえる。

アパレル業界からすれば広告宣伝費5000万~1億円というのは多額だが、電通からすれば鼻くそである。
だから電通はこの程度の予算では身を入れて仕事をしない。

例えば、当方とは比べ物にならないほど著名人で広告業界ともかかわりの深い永江一石さんもご自身のブログでこう述べられている。

東京都の豊洲市場における、スーパーお馬鹿なインフルエンサーマーケティングが草ボウボウ
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=37864

電通で5000万というのは鼻くそですので、わたしの推測ではPR会社に丸投げしたものと思います。

とのことで、年間5000万円程度の予算では電通にとっては「どうでも良い」依頼なのである。

文中で述べられている事例は、大手広告代理店ならやらかしそうなウェブマーケティングでの失敗例といえる。
アパレルも行政も理解していないのは、広告代理店には各社それぞれ得意分野と不得意分野があるということで、電通でいうならファッション雑誌やらウェブは苦手で、芸能人のブッキングやビッグイベントやテレビCMは得意なのである。
分野によって代理店を使い分けるのが得策で、大手に少ない金額で丸投げするのが最愚策といえる。

かつての大手ジーンズメーカーも東京都もその最愚策を採用している。
5000万円はまさしく「ドブ金」だ。

かつての大手ジーンズメーカーなんて総額10億円以上を使って、売上高を6分の1以下にまで低下させたのだから愚の骨頂としか言いようがない。

まあ、付け加えておくと、今現在も電通とか博報堂を何十年間も使い続けているのに、中高年以外の層にはまったく知名度が上がらない大手肌着メーカーというのもある。知名度が上がらないどころか、知名度は下がっているのではないかと思う。
これも現在進行形の「ドブ金」の一つの代表事例といえる。

アパレル業界が広告で成功したいのなら、

1、広告というのは多額のカネが必要と強く認識する(節約のために年1回の掲載なんて効果なし)
2、広告代理店にはそれぞれ得手不得手があり、それを見極めて事案ごとに代理店を使い分ける
3、大手に少額のカネで頼めば、必ず手抜きされる

これを徹底的に頭に叩き込まないと、アパレル業界の「ドブ金」事例がさらに積み上がることは間違いない。

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プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
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怪しさと矛盾点が際立つプライベートブランド「ゾゾ」の発表

ようやく、延び延びになっていたZOZOTOWNのプライベートブランド「ZOZO」の一端が発表になった。
どんな商品なのかなと一応興味を持って外野から眺めていたが、第1弾はTシャツ(1200円)とジーンズ(3800円)だと判明し、正直期待外れだと感じた。

価格面でいうと、ユニクロに合わせてきたという感じだが、体型測定スーツ「ZOZOSUIT」で得られることになるであろう26万人の膨大な体型データを使ってTシャツを作る必要があるのかと正直疑問しか感じない。

某人気ブランドの中の人が言っていた「ZOZO社員は本気でユニクロと競合する気でいる」というのは価格設定を見ると、本当だったのだとわかる。ただし、値段が同じくらいだからユニクロと同等には売れない。それなら、今頃イオンもイトーヨーカドーもジーンズメイトももっと衣料品が売れている。

ZOZOSUITが発表されたときには随分と熱狂があったが、発送が延び延びになり、有名人と一部顧客にしか届いていない状況にあり、身の回りでも「発注したけど遅いからもう興味が薄れた」という人もちらほら現れている。

ZOZOSUITの報道や熱狂には違和感があり、その違和感は今でもあるのだが、例えばこういう見出しの記事については本当に疑問しか感じない。

一つ断っておくと、ZOZOSUITのような開発は続けるべきだし、全否定するのはナンセンスだが、逆に持ち上げすぎるのもどうかと思う。

「ミリ単位の精度求めた」ZOZOSUITの体型計測データが生み出すスタートトゥデイの新展開
http://jp.techcrunch.com/2018/01/31/zozo-maezawa-kanayama/

この「ミリ単位の精度」っていうのがちょっとどうかと思う。
例えば、今回発表されたTシャツだ。

Tシャツは、ニット生地で綿100%組成であろうが、生地の構造上伸縮性がある。
5ミリくらいは普通に伸び縮みするから、はっきり言って「ミリ単位の精度」なんてものはTシャツには必要ない。
さらにいえば、縫製する段階で普通に1ミリくらいはズレや誤差がある。
逆にミリ単位の精度で縫製できる工員なんてほとんどいない。

これはセーターでも同じで、5ミリや1センチは伸縮性が生地自体にあるし、縫製やリンキングの段階で1ミリくらいは普通にズレる。

いくらミリ単位でデータを調整しても実際の製造工程では1ミリや2ミリは確実にズレるから無駄である。

こういう発言をする人やこういう記事を書く人は衣料品を精密機器か何かと勘違いしているのではないか。
こういう発言や記事が独り歩きして、ミリ単位の服なんていうユニコーンやグリフォンみたいな奇妙な空想の産物が生まれる。

逆に、そういう「ミリ単位」という発表をある程度信用していたからTシャツという選択には首を傾げてしまう。
ミリ単位が売り物になるのは例えば、スーツ、ワイシャツ、ビジネス用コートなど、である。
こちらは1ミリ・2ミリの精度なんて意味がないが、5ミリや1センチは重要な差になる。

ワイシャツの首回りが1センチ変わればフィット感も見た目も大きく変わる。
昔のソフトスーツは別としてスーツだって1センチの差で大きくシルエットが変わる。

Tシャツやセーターの着心地にミリ単位の精度はまったく必要ないのに、それを選んでしまうところが拍子抜けというか期待外れだった。

またワイドシルエットの商品もミリ単位では着心地は左右されない。

おわかりだろうか?ガウチョパンツやそれのフルレングス版ワイドパンツなんて1ミリや2ミリ細かろうが太かろうが着心地には全く関係ない。
今春にジーユーから発売されているリーバイスセカンドの完コピジージャンだってダボっとした古臭いシルエットだから1ミリ違ったところでまったく着心地には影響しない。

ミリ単位の精度が求められるのは先に挙げたスーツ、ワイシャツ類とタイトシルエットが売り物のカジュアル商品に限られる。それだって実際のところ1ミリや2ミリ程度は誤差があるし縫製段階でズレる。
これが現実の洋服である。

しかし、ZOZOSUITによる採寸がまったく無駄とは思っていない。
むしろ、着心地よりもそのデータを使って「より美しいシルエット」「よりスマートに見えるシルエット」作りに取り組むべきである。

今回の会見の記事はこちらがコンパクトにまとめられている。

“ZOZOSUIT”到着は最大8カ月の遅延も、PB発表で前澤社長が決算会見に登場
https://www.wwdjapan.com/515448

最大8か月の遅延って、今年の8月ごろ届くということだから、はっきり言ってますます興味は薄れる。
忘れたころに届くことになって「ああ、そんなのも頼んでいたっけなあ」という感じになるだろう。

今回、前澤友作・社長は

「注目すべきは値段。メディアにはいろんな予測記事が出ていたが、期待を上回るというか下回るというか、Tシャツが税込1200円、デニムは税込3800円で販売する。過剰に在庫を積み上げるつもりはない。オーダーメードに近い受発注生産を行うことで、価格を下げられた」とコメント。

と話しているが、オーダーメードに近い受注生産だから価格が安いというところがちょっと意味不明だ。
恐らく、在庫を持たずにその都度生産するから、在庫処分での投げ売りが無くなるからその分販売定価を下げたということなのだろうが、その都度縫製する方が普通は縫製工賃は高くなる。
極端な話、一挙に100枚縫製した方が、1枚ずつその都度縫製するよりも工賃はずっと安くなる。
逆に1枚とか2枚しか縫わないサンプル縫製の工賃は最低でも5000円とか1万円くらいはする。
どう考えてもシステムに矛盾がある。
しかも生地は、専用生地ならどこかの問屋が備蓄しているとしか考えられず、専用生地でないなら、市場に流通している「在り物」の定番
生地をその都度購入することになる。
「在り物」の定番生地ならはっきり言ってユニクロにはまったく生地の値打ちではかなわないが、そのことは理解しているのだろうか?

また

ヤマト運輸の配送運賃変更による経費15億円やPB業務委託の13億5000万円などのコストが発生したにもかかわらず、増収増益を記録した。

という箇所があるが、やはりPB製造にはOEMやODMを使っているということだろうか。
たしか、工場なんかも買ったというような記事も読んだ記憶があるが、PB業務委託13・5億円ということは製造も委託していると考えられ、それはとりもなおさずOEM・ODMを使用したということになる。

なんだか生産システムも製造も矛盾だらけの内容だが、ますます実態の見えない怪しげなプロジェクトだとしか感じられなくなっている。
各メディアの記事の書き方が悪いのか、説明した方の説明が悪いのかわからないが、その結果、怪しさと矛盾点だけが際立ってしまっている。

NOTEを更新~♪
大手広告代理店を使って残念な結果を甘受する残念な国内アパレル 企業
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メディアの「何でもユニクロ病」「何でもゾゾ病」はミスリードを引き起こすだけ

仕事らしい仕事にもなっていないのに、一応、衣料品関連の記事は目につく限り読むようにしている。

繊維・アパレル業界はそれはそれなりに混迷し続けているが、記事を読んでいるとメディア側も相当に混迷している。
というか、メディア側は少なくとも20年前から混迷していて、ステレオタイプの紋切り型の報道が多い。

今のメディア側のトレンドでいうと、「なんでもユニクロ」「なんでもゾゾ」である。
業績好調な新興アパレルがあれば「第二のユニクロ」、衣料品のネット通販関連なら「第二のゾゾ」とか「ゾゾと比べて云々」である。

少し前まではストライプインターナショナル(旧社名クロスカンパニー)も成長途中はずいぶんと「第二のユニクロ」とか「ユニクロを追撃」なんて報道があったが、ストライプインターナショナルのどこが第二のユニクロなのか当方にはさっぱりわからない。

メンズ服をほとんど手掛けないストライプと、メンズ服の売上構成比が大きいユニクロは土台がブランドスタンスが異なる。
どこぞの経済記事で、「ユニクロはなんとメンズ売上高が4割を占める」というのを見たが、昔から知っている人たちからすると「何を今更」だし、逆に「メンズ売上高が4割まで低下したのか」と驚かされる。

ユニクロは元々メンズ服の方が強かった。
2005年ごろでさえメンズ服の売上高が6割強あったとも聞いている。

低価格・高機能性・高品質というユニクロのキーワードは、レディースよりもメンズの方が響きやすい。
ユニクロというブランドは極めて男性的な思考で構築されていると思う。
だから、当方はユニクロが好きなのかもしれない。

感性だとか共感だとかカワイイだとか雰囲気だとかそういう女性的な判断基準のブランドは当方の好むところではないからだ。

手の届く範囲の価格でそれなりの見え方をする洋服を提供するというところは共通しているかもしれないが、それなら、コックスもパレモもキャラジャも第二のユニクロといえる。
低価格でそれなりの見え方をする洋服を提供しているSPA型企業は全部「第二のユニクロ」ということになる。

第二のユニクロ、どんだけあんねん?!

20年前後、記者会見に出席してきた経験からすると、業界紙や業界雑誌ではなく、朝日・読売・産経・毎日などの「大手一般紙」(部数が激減しているのでそろそろ大手でもなくなりそうだが)の記者は、会見の場で見ている限りにおいては、繊維・ファッション業界に詳しくない人が多く、質問が的外れなことが多い。

これも以前に書いたが、グランフロント大阪のオープン会見に出席したときのことだ。

記者会見場では質疑応答の際、記者は所属会社と名前を述べてから質問する。

読売新聞経済部の若い記者が質問をしたのだが、その質問内容に驚かされた。

「グランフロント大阪にはアウトレットモールに入店しているブランドが多数入店していますが、グランフロント大阪の競合相手はアウトレットモールでしょうか?」

という質問で、傍から聞いていて失笑を禁じ得なかった。
これに冷静に丁寧に回答されたグランフロント大阪側の人は流石に大人だと感心した。
当方なら、アホらしすぎて質問を却下しただろうから。

この記者は正規店とアウトレット店の関係すら知らないのである。
デスクによる手直しがあるとはいえ、こういう記者が記事を書いている。

だから、一般紙のファッション記事がおかしいのは仕方がないとして、業界紙・業界雑誌・経済誌・経済紙と呼ばれる媒体が、一般紙よろしく「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」という報道姿勢はいかがなものか。

このブログの改装でもお世話になり、ウェブ関連の仕事でもお世話になっているスタイルピックスの深地雅也社長がこんな記事を書いている。

メディアはわかりにくい指標を使わないでください
https://note.mu/fukaji/n/n3eacc37e63a0

これは先ごろWWDのウェブに掲載された

ユークス ネッタポルテの2017年通期決算 売上高2800億円で「ゾゾ」に拮抗か
https://www.wwdjapan.com/536735

という記事に対しての意見である。

ユークスネッタポルテというのはリシュモン傘下(そこからの売却が先日発表されたが)で、ラグジュアリーブランドECの最大手企業である。当然、国内企業ではない。

一般にECには直販型とモール型があり、さまざまなブランドをテナントとして入店させているゾゾはモール型である。
早い話がファッションビルといえ、それぞれのテナントから出店料やら手数料やらを徴収していて、それがゾゾの「売上高」である。
テナントの売上高合計は「取扱高」として表される。
当然のことながら、仮に「取扱高」が1兆円を越えようと、それはゾゾ自体の売上高にはならない。おわかりだろうか。
1兆円の何%かがゾゾの売上高ということになる。

一方、ユークスネッタポルテは今のところ直販型である。
そうすると売上高は直接的な売上高であり、取扱高ではない。

しかも取り扱いブランドがまったく異なる。
方や欧米ラグジュアリーブランド、方や国内ファッションブランド(一部に量販ブランドも含む)。
当然、顧客層も客単価も販売価格も異なる。

これでどうして「ゾゾに拮抗」などという見出しを付けるのかまったく理解できない。

顧客層やらなんやらは置いておいたとしても「取扱高」と「売上高」を並べて「拮抗した」と報道することに何の意味があるのか、いや、ない。(反語的表現)

これこそ、グランフロント大阪とアウトレットモールを並べて論じようとした読売新聞経済部記者と同じレベルといえる。

ゾゾはもしかしたらユークスネッタポルテもベンチマーク対象としているかもしれないが、おそらくユークスネッタポルテはゾゾを歯牙にもかけていないだろう。ラグジュアリーからするとジーンズメイトやタカキューまで入店しているゾゾはまったくの競合相手ではないからだ。

これを知ってて混同させたならWWDの編集方針はおかしいし、知らなくて混同してしまったのなら業界メディアとも思えない。

メディアの「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」病は本当に根深く、百害あって一利なしでしかない。

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年間8000万枚を製造する縫製企業マツオカコーポレーションが上場

地味であまり業界人も注目しておらず、SNS上でも拡散されていないが、WWDの

縫製の巨人マツオカコーポが東証一部に上場、ベールに包まれてきた事業内容が明らかに
https://www.wwdjapan.com/519875

という記事に注目した。
この記事を素直に評価したい。

当方は縫製業にうとく、国内の縫製工場をいくつか見学したことはあるが、その程度の経験と知識しかない。
縫製業自身もあまりメディアには登場せず、業界紙にすらめったに登場しない。

それゆえに、同業者や縫製業に詳しい人以外には、実態があまり知られていない。

マツオカコーポレーションも当方はその社名は知っていたものの、実態はほとんど知らなかった。
こういう記事は勉強になる。
今回はほとんど当方の勉強のための転記みたいな内容になりそうなので、めんどくさい人は読まない方が良いかもしれない。

日本最大手の縫製企業で、広島県福山市に本社を置くマツオカコーポレーションが13日、東証一部に上場した。カジュアルウエアの縫製からスタートした同社は現在、中国、バングラデシュ、ミャンマーなどに縫製工場を持ち、従業員数は約1万人、年間の生産量は約8000万枚の巨大な縫製企業グループだ。

とのことで、

上場目論見書によるとマツオカコーポ―レーションは、直接あるいは間接的に、売上高の7割を「ユニクロ(UNIQLO)」を中心にしたファーストリテイリング向けが占めており、ファーストリテイリングは2.89%を出資する大株主として名を連ねている。主力工場は3万8470平方メートルの土地に従業員数約4000人を抱えるバングラデシュで、現在は約20億円を投じ、月産200万枚にまで生産能力を増力中だ。

この数年は減収傾向が続いてきたが、2018年3月期は売上高が前期比9.7%増の567億円、営業利益が同12.7%減の36億円、経常利益は同5.3%減の38億円、純利益は同0.5%増の25億円を見込んでいる。自己資本比率は9月末で総資産388億円に対し純資産168億円で39.5%、売上高営業利益率6.3%と、ファイナンスや利益率の低さが構造的な課題として指摘されることの多い日本の縫製企業の中で高水準になっている。

とある。

国内で苦戦する縫製工場が多い中で、いち早くアジアへ進出してグローバル化に成功しつつある。

同社のウェブサイト(ホームページとは言わないww)の会社概要によると、

1956 株式会社松岡呉服店 従業員10人
資本金100万円 縫製業を始める

とあり、その後、90年に中国へ進出し、98年に国内工場を閉鎖している。

多くの工場が、95年ごろから中国進出を本格化させていったが、それよりも一足早く中国へ進出している。

記事中に、売上高の7割がファーストリテイリング中心だと書いてある部分があり、そこに対しては「過度に依存していて大丈夫なのかな?」と一抹の不安を感じる。

このマツオカコーポレーションのように、国内では一部の関係者を除いてほとんど知られていないが、実はグローバルに活動しているという企業がいくつかある。

例えば、安全靴・ワーキングユニフォームの大手、ミドリ安全もその一つといえる。

中国への進出はもちろん、近年はアセアン諸国にも積極的に進出している。

当方はよく、ワーキングユニフォーム関係でその社名を耳にしていたがこちらも実態はほとんど知らない。
ミドリ安全の沿革によると、

73年に皮革製造会社でしてブラジルに進出、88年に中国進出、2008年にラオス、2009年にベトナム進出、2015年にカンボジア進出とある。また2006年からはメキシコで自動車用のレザーシート製造も開始しており、なかなかのグローバル企業ぶりが伺える。

個人的には全企業がグローバル化する必要はないと思っているが、ともすれば「グローバル企業に押されて日本は負け組」みたいな自虐的な見方が幅を利かす風潮の中で、世間一般の知名度は高くないものの、このようにグローバル化している国内の製造加工業者があるということは特筆すべきニュースだといえる。

これらの企業はなかなか取材しにくかったり、よしんば取材ができても知識がないと理解できない話の内容も多いから記事にしにくい。
また企業名の知名度もないことから、掲載しても反響が少ないことが考えられるため、メディア側としてはあまり積極的に報道しようとは思わない。

マツオカコーポレーションだって今回の株式公開というきっかけがあったから、詳細を公表しただけで、これがなければ今後も実態はほとんどわからないままだったと考えられる。

それにしても、業界にはまだまだ知られていない重要情報が多いことを再認識した。
業界全体を一通り知るということは、才能乏しい当方にとっては不可能ではないかと思う。
少しずつでも見識を広めるためには日々勉強するほかない。

しかし、当方ももう47歳。年が明けると4回目の年男で48歳となる。
老年に差し掛かった今、思うことは「日暮れて途遠し」である。

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専業ジーンズメーカーは決して新しいことに取り組まなかったわけではない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nd4bc9e30188b

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ファッション雑誌の販売部数は激減している

最近、ファッション雑誌をほとんど読まなくなった。
当方はモデルやタレントに一切興味はないので、元からそれが目的では読んでいない。

93年に「デモシカ」で洋服販売員になるまではファッションに興味はなかったから、働き出してから「勉強しなくちゃ」ということでファッション雑誌を読み始めた。
仕事で商品を扱っていることもあって、読んでみると意外に面白かった。
まあ、暗記することが好きなので、読んで新しい用語を覚えることが当方にとっての快楽だっただけのことである。

洋服のコーディネイトなんてまったく知識がなかったから、ファッション雑誌の全コーディネートを暗記するまで繰り返し読んだ。
月刊誌を1冊買って、それを10回以上全ページ読んですべてのコーディネイトを暗記した。

暗記量が増えると、買い物に行っても「あ、あの号のあのページに掲載されていたシャツと似ている」ということが瞬時に思いつくようになり、じゃあ、「似たようなこのジャケットと合わせればあのページが再現できる」という選び方ができるようになった。

もちろん、雑誌に載っている商品はン万円もするので、貧乏人であり貧乏性な当方がそのまま買うはずもない。
似たような安い商品で代用するのである。

似たような安い商品だけでどこまで再現できるか、というのも貧乏性の当方にとってはなかなかの快楽で、そのまま今に至っている。

2005年までおよそ10年間はそんな生活が続いていた。
2007年ごろから、一応1冊は買うけどそんなに繰り返し読むことはなくなった。
覚えなくてはならないコーディネイトがなくなったからだ。

それでも惰性で毎月1冊は買っていたが、2010年頃から買うことすらしなくなった。
今では発売日に書店に行って、30秒くらいペラペラ流すくらいしかしない。

ファッション雑誌に掲載されていることで未知のことがなくなったというのが最大の理由だ。
それとコーディネイトが見たければ、インターネット上で無数にある。しかも雑誌と違って日替わりだ。
また、インターネットだとブランドの公式サイトでもそれぞれのコーディネイトが掲載されている。

コーディネイトが知りたければファッション雑誌を買うよりもインターネットのほうが圧倒的に利便性がたかく、サンプル数も桁違いに多い。

ファッション雑誌が冬の時代になるはずである。笑

そういえば、先日、こんな報道があって驚いた。

宝島社がトップ独占で依然好調 2017年上半期雑誌売り上げ
https://www.wwdjapan.com/508530

これを読んで「相変わらず宝島は絶好調!」とか「宝島スゲー」なんて思ってはいけない。
この報道で注目すべきは販売部数だ。

女性ファッション雑誌1位は「スウィート(sweet)」で月間平均販売部数25万7554部、2位は「リンネル(Liniere)」で19万3001部、3位は「グロー(GLOW)」で18万4783部、4位は「インレッド(InRed)」で15万2729部となり、上位を宝島社が独占した。「スウィート」は09年上半期に1位を獲得して以来、17期中(09年~17年)14期1位を獲得している。5位には「ニコラ(nicola)」(新潮社)が14万9014部でランクインし、ティーン誌が健闘した。

とある。

しかし、2008年頃までは宝島のファッション雑誌は100万部くらいあった。
それが今はトップのスウィートですら25万部しかない。
ピーク時の4分の1か5分の1まで販売部数が減少している。

2位のリンネルや3位のグロー、4位のインレッドの販売部数は20万部を下回っている。
20万部を越えているのがスウィートしかないというところが、ファッション雑誌の不振を如実に物語っている。

インレッドの15万部というのはメンズのサファリやライトニングとあまり大きく変わらない。

女性ファッション雑誌はそこまで低迷しているということである。

「マニアック」と評されたメンズのライトニングとほとんど変わらない部数にまで追い込まれてしまっている。
ファッション雑誌は最早「マスコミ」などではなく「ミニコミ」になっているといえる。

もちろん、ミニコミとして狭い範囲の人々に厚く深く支持されるという在り方は一つの存在理由になる。
それを否定するつもりはまったくない。ミニコミとして突き進めば良い。

注意を喚起したいのは、アパレル企業、アパレルブランドに対してである。

ごくまれにアパレルやブランドの販促に関わるミーティングを覗かせてもらうことがあるのだが、旧型アパレルはほぼ全社といっても良いくらいにいまだにファッション雑誌と人気タレントにこだわっている。
90年代の手法を20何年間も後生大事に続けているわけだ。

しかし、近年、とくに2010年以降不振が続いているということは、その90年代手法は現代においてまったく販促効果がないということにほかならない。

アパレル経営者の大好きな「費用対効果」でいえば、まったくないということになる。
ボーナスをカットしたり、昇給を据え置きしたりというコストカットには俊敏に行う癖に、なぜ費用対効果が限りなく低い90年代販促手法に固執するのかまったく理解に苦しむ。

売りたいのなら「売れる手法」を取り入れるべきで、90年代のままの手法を続けている限り、「売れるようになる」ことは絶対にない。
そして「売れない手法」しかいまだに提案できないような広告代理店とは付き合うべきではない。

NOTEを更新~♪
三越伊勢丹HDが「ケイタマルヤマ」を手放す理由とは?
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企業規模や販売数量を無視した「売れている」という報道の有害性

アパレル業界の人もそうだが、特にメディア業界の人に顕著なのが洋服に関しての「売れている」という基準である。

メディアの紋切り型としてはこうだ。

低価格品しか売れないと言われているが、一方で〇〇万円もする高額衣料が飛ぶように売れている。

というのが池井戸潤のドラマ並みに黄金のワンパターン化している。
しかし、この「売れている」という基準が何なのかはちょっとわからない。
数量で考えると「売れている」とはいっても圧倒的に少ない場合が多い。

例えば、高額にもかかわらず売れているのがデサントの水沢ダウンである。
8万~12万円くらいの価格帯だが、好調に推移している。
しかし、生産数量はフル稼働しても1万枚未満しかない。
これは設備が小規模なので設備投資なしではこれ以上の生産数量は不可能なのである。

この数量をどう見るかである。

ユニクロのウルトラライトダウンは言うに及ばず、他の低価格ダウン、中価格ダウンはもっと販売数量がある。

これなんかすごく数量的にはビミョウすぎる例ではないかと思うのが、繊研プラスに掲載されたインディマークというブランドのパンツだ。

「インディマーク」デニム調パンツがヒット 2千本超
https://senken.co.jp/posts/indimark-fleece-lining

聴いたことのないブランドだなあと思って記事を読むと、レッドペッパーのブランドとのことだ。
レッドペッパーといえば、刺繍がコテコテに入ったコテコテジーンズの代表として2005年ごろ局地的なブームとなった。
ブランド自体が無くなってしまった「トゥルーレリジョン」の系譜であれをさらにコテコテにしたブランドで、韓国ブランドである。
国内ブランドだとこの系譜にはクックジーンズがある。マイルドヤンキー御用達のテイストである。

見出しは2000本の大ヒットとあるが、どれだけの期間で2000本を売ったのかというと

今年5月からの販売数量は約2000本に達し、来年2月までに3000本の追加販売を見込んでいる。販路は専門店など。

とあり、今年5月からだと半年で2000本ということになる。
経済紙的観点からいうと、6か月で2000本を売れていると言ってしまっていいのか甚だ疑問を感じる。
1か月で300本強だ。価格は1万3800円だから上代ベースの金額で考えてもそれほど大した額ではない。

マックハウスあたりが発売する新商品はだいたい年間2万本とか3万本で計画される。
それと比べると半年で2000本というのはかなり少なく「売れている」と言えるのかどうか。

しかし、結局、「売れている・売れていない」というのはその会社なりブランドなりの売り上げ規模や販売計画に基づいて判断するのがもっとも適切だといえる。

デサントとして水沢ダウンが今の数量で売れていることに満足していればそれは「売れている」「好調」といえる。
レッドペッパーがインディマークのパンツを1年で5000本売れれば良しとしているならそれは「売れている」といえる。

売れている・売れていないというのは、5000本とか8000本で満足するのか、それともそれを通過点としてユニクロよろしく無限成長を目指すのかという企業姿勢・ブランド姿勢にも密接に関係する。

10万円のダウンジャケットはいくら頑張って販促したって、年間に10万枚も売れない。
10万枚を目指すなら値段は絶対に引き下げなくてはならない。

気仙沼ニットだって500枚以上は生産できない。
これを1万枚に増やそうと思うと作る人を増やして販売価格を引き下げなくてはならない。
15万円のセーターなんて買う人はそれほど多くないからだ。

しかし、ブランド側が今の数量で満足だというならそれはそれでありだ。
今の数量で満足して安定的な収益が確保できるならそれは一つのビジネスモデルであり、無限成長を目指すことばかりが正しいとは言えない。

メディアはこの部分を混同してしまっている。
特に経済紙・経済誌の見方はひどい。

1万枚未満の水沢ダウンを引き合いに出して「高額品が飛ぶように売れていますよ」なんて吹聴する。
それをまたちょっとアレな経営者が頭から信じて「高い商品なら売れるらしい」と言い出して、意味のわからないハイエンドモデル化してしまう。その結果、経営は極度に悪化する。場合によっては会社がつぶれてしまう。

今までそういうことがどれほどあったか。

高価格化するということは販売数量が少なくなるということだし、大規模な数量を狙うなら価格は引き下げなくてはならない。
そのどちらを狙うのもそれは経済活動の自由というものだが、高価格で大量に売れるということはほぼない。
インディマークの1万3800円くらいならやり方次第では何万枚か(10万枚は越えない)には達するだろうが、10万円の服が何万枚・何十万枚も売れるようにはならない。これが現実である。

販売数量の違い・販売目標の違い・ブランドのスタンスの違いを一緒にして、「10万円もする〇〇がバカ売れ(でも販売数量は3000枚くらい)」というような煽りは百害あって一利なしである。

NOTEを更新~♪
三越伊勢丹HDが「ケイタマルヤマ」を手放す理由とは?
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中小零細企業や組合のウェブ政策が成功しない理由

3年くらい前から、小規模・零細企業や組合からウェブの相談を受けることが増えた。
それらの相談を聞くと、だいたいはなんだか成功しなさそうに感じる。
どの部分がそう感じさせるのかが自分でもモヤモヤとしていたのだが、やっとわかった。

先日、ある組合がウェブ業界ではそこそこ名の知れたところのサービスに、組合加盟企業を参加させる方向で取りまとめているという話を耳にした。
この手の話自体は今に始まったことではなく、数年前からあちこちで行われていたから驚くには値しない。
しかし、結果で言うとその多くは成功していない。

アパレルや繊維企業はITに著しく乗り遅れているから、そういうことに参加すること自体は意義がある。
やらないよりはやった方が良い。これは間違いない。
しかし、参加しただけでは知名度はそんなに上がらないし、ましてや売上高が目に見えて伸びることはない。

何事も経験が重要だと思う。
経験してみて伸びる企業や伸びる人間はいるから、どんどん参加すべきだが、参加しただけで何も変わらない企業や人間も掃いて捨てるほどいる。
成果が出ないのはそういう企業や人間である。要するに「参加しただけ」という姿勢では絶対に成果が出ない。

これがインターネット黎明期やウェブサイト草創期なら「参加しただけ」でもそれなりの効果が期待できた。
先行者メリットというやつだ。
先行者は失敗することもあるが、競争相手がいないから、あまり手の込んだことをせずに「やっただけ」でもそれなりに効果が出ることがある。
インターネット黎明期やウェブサイトの草創期ならこの先行者メリットが期待できた。

しかし、もはや、現在は過当競争の時代である。
よくあるように「参加しただけ」では何の効果もない。
無名ブランドや無名企業なら埋没しておしまいである。
よほどのカネを注ぎ込むかやり方を工夫しなければ、無名ブランドや無名企業が浮上することは極めて難しい。

これが、ここ3年くらいで「ウェブに参加しただけ」の中小・零細企業が成果を出せない理由である。

実例を見てみよう。
現在、衰退の兆しがある楽天市場だが、出店社数は年々減っているとはいえ、いまだに4万店もある。
ここにいきなり、無名ブランドや無名企業が参加したところで注目されるはずもない。
4万店に埋もれてしまう。
事実、知り合いの無名企業だって楽天に出店しているが、売上高はサッパリだそうだ。
わざわざ、新参の無名企業を検索して買いに来てくれる人なんて存在しないから当たり前だ。

自分が消費者の立場になって考えてみればすぐにわかることだ。
「存在自体を知らない無名ブランド」をわざわざ検索することがあるか?絶対にないだろう。
なぜなら、「存在自体を知らない」からだ。検索しようがない。

だから売れなくて当たり前である。

しかし、ウェブリテラシーが低いのがアパレル・繊維業界だから、多くの中小・零細企業は「掲載すれば確実に売れる」と勘違いしている。

北新地でも中洲でもススキノでも構わないが、飲み屋がひしめき合っている繁華街にいきなり、脱サラしたばかりのオッサンが無名の店がオープンさせてすぐに満員御礼になるだろうか。絶対にないだろう。
固定客ができるまで何か月かは必要になる。

それと同じことなのだが、ウェブのことになると安直に考えてしまうのがこの業界のウェブリテラシーの低さを物語っている。

楽天でもAmazonでもZOZOTOWNでも同じことだ。
ZOZOTOWNがいくら好調だといっても、出店企業全社が好調なのではない。
タカキューが出店しているがだれかタカキューに注目して観察を続けている人がいるのか?

中小零細企業や組合がウェブで成果を出せない理由は、大手に掲載されただけで思考を停止させてしまうからだ。
掲載されただけでそのまま放置プレーになるから、固定客もできないし新規ファンも開拓できない。

で、この「大手に掲載されただけで思考停止」というのは、ファッション雑誌全盛期の行動そのままではないのかと最近思うようになった。

2005年頃までのファッション雑誌全盛期には、「掲載されただけ」ですさまじい反響があった。
ブランド側もその反響があるから高い金を払ってタイアップし続けてきた。

しかし、ファッション雑誌の神通力は狭い層のファン以外には通じなくなったし、そういうやり方はウェブでは通用しない。

これだけウェブサイトがひしめき合っていれば、ポッと出の無名ブランドのサイトをわざわざ検索で探してくれる人なんてほとんどいない。
だから「掲載されただけ」「サイトを作っただけ」で放置プレーしていては絶対に効果は上がらない。

ポッと出の無名ブランドがファンを開拓するためには、買い物目的でなくても定期的にチェックしに行きたくなるようなコンテンツを定期的に更新することが不可欠になる。
それはブログでも記事でも画像でも動画でも構わない。
個々のブランドスタイルにどれが合うかを模索する必要があるが、そういうコンテンツ自体を作らないことには、スタートラインにも立てない。

これまで見てきた多くの中小零細企業や組合のウェブサイト政策がことごとく失敗しているのは、そういう独自のコンテンツ作りをまったく考えていなかったからであると改めて気づいた。

長くなるが、入場者数が多い展示会に東京ギフトショーがある。
入場者数が多いから出展者は必ず売れるかというとそうでもない。
売れる出展者もいればまったく売れない出展者もある。

入場者数が多いとは言っても、その全員が自社のブースに立ち寄るわけではない。
だったら、自社で集客をしなくては無名企業のブースに足を止める人は少ない。

自社で集客の努力をした企業は受注が取れやすいし、入場者数におんぶに抱っこで無為無策だった企業はほとんど受注がない。
これは毎回同じ結果が出ている。

ウェブも同じだ。
いくらAmazonや楽天やZOZOTOWNへの訪問者数が多いとはいえ、全員が自社のサイトを見てくれるわけではない。
無名ブランドが無為無策ならだれも立ち寄らない。これはリアルでもウェブでも同じだ。

そしてそういう集客の努力、コンテンツ作りの努力がほとんどないから中小零細企業や組合のウェブは成功しない。
極めて当たり前のことだが、それができていない中小企業や組合がアパレル・繊維業界には多すぎる。
当たり前のことを当たり前にできない企業や組合は淘汰されるしかない。

NOTEを更新~♪
日本製デニム生地の現状をまとめてみた
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nf1f2b20fc0b6

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若手デザイナーズブランドの苦境は販売先がないから

衣料品におけるデザイナーズブランドにはあんまり興味もないし、判別する知識もない。
それでも衣料品業界に20年以上もいると、何らかの接点もできてしまっているし、展示会やコレクションショーを見る機会もある。
個人的に交流していただいている方もいる。

そういう外野の人間から見て、デザイナーズブランドというビジネスは成功するのが難しいと感じる。
まあ、どんな分野にせよ成功するのは難しいのだが、デザイナーズブランドで一般のサラリーマンの平均収入を得るのはかなり難しいと感じる。
東京コレクションに10年以上も出品し続けて、知名度もそれなりにあるブランドでも実際は売上高は極小なうえに収益はまったく赤字で、親の会社から回してもらっているカネで暮らしているというデザイナーもいると聞く。

それほどに厳しく、10年以上のベテランがこのありさまなので、若手ブランドのビジネスはもっと厳しい。
もし自分ならそんな仕事は絶対にやらないなと思う。

なんでこんなしみったれた話を朝から書いているのかというと、台東デザイナーズビレッジの鈴木淳村長のフェイスブックの書き込みに激しく賛同したので、それを紹介したいからである。

このルームサービスの元記事はどうでもよい。
論調としては冷静だといえるが、そこには鈴木村長が指摘された事柄がない。
今更、サカイと若手ブランドのビジネスを比較して「若手がなってない」といったところで何か状況が変わるのだろうか。
じゃあサカイが海外で売れた理由をもっと取材してそれを分析してみてはどうか。

クリックするのがめんどくさい人のために抜き出してみる。

■コレクションの取材記事は
1)ショーの実況
2)ショーの感想 ←ここまではある。評価軸はない。
3)ブランドへの評価 ←これもある。どうしてそうなったのかという背景をもっと取材してほしい。
4)ブランドへの改善提案 ←これはあまりない。ビジネスの仕組みがわからないからではないか。
5)自分、自社は業界のために何をするか←ほとんどみたことがない。
日本の若手ブランドに対して「現実を見るべきである」と突き放すのではなく、取材できる立場を活かして多くの成功・失敗事例を分析したうえで、そうならざるをえない理由、できない環境に切り込んで、どうしたらよいかという指針と具体的な方策ぐらいは示してほしいものです。

川久保玲のコム・デ・ギャルソンが欧米で売れた理由は何もクリエイションが評価されただけではあるまい?
金融の話やら、現地のエージェントや人脈の話やら、川久保玲のパートナーの話やらいろいろあって海外で「売れる」に至っている。
サカイだって同じだろう。商品のデザインが評価されただけではあるまい。
そのあたりを何も分析せずして、「若手はなってない」と言ったところで若手にはどうしようもない。

商品のデザインが評価されれば売れるなんていうのは、産地のおっさんが「良い物を作れば必ず売れる」と言っているのと同じ神話でしかない。

現在の若手デザイナーズブランドを見ていて思うことは、20年前に創業した人たちよりも環境が厳しいなあということである。
個人的にはクリエイションのことなんてちっとも興味がないから、ビジネスのことのみを書く。

20年前の創業組もたいがいが厳しいビジネス環境だった。
インディーズデザイナーズブームに沸いたのは98年ごろまででそのあとはひっそりと消えたブランドも数多くある。
当時のデザイナーでまったくの異業種に転職してしまっている人もいる。

当時のデザイナーたちが糊口をしのげたのは、大手アパレルブランドからの「外注デザイン」が受けられた部分が大きい。
年間数百万円くらいの仕事料が支給される。
たとえ、自分のブランドが売れなくても、その契約料だけで最低限度の生活は送れた。

しかし、この「外注デザイン」は現在ではほとんどない。
受けているという若手デザイナーも見たことがない。

これがなくなっていることが大きい。
しかし、理由は単純だ。デザイナーに外注デザインを頼むより、OEM/ODM業者に依頼した方が便利で商品品質が安定するからだ。

デザイナーにデザインを外注しても、実際に商品を作るのはアパレル側である。
アパレル側が工場を手配して生産管理を行わねばならない。

しかし、OEM/ODM業者ならデザインも請け負ってくれるし、工場の手配や生産管理も請け負ってくれる。
アパレル側は丸投げで済ませることができる。

アパレル側から考えれば外注デザインなんていうめんどくさいことよりも、OEM/ODM業者に依頼した方が楽チンである。
当然、そちらを使うようになる。

今のデザイナーズブランドが厳しいのは、販路がないからだ。
自社でネット通販をすれば良いという声もあるが、乱立するネット通販という世界で知名度のないブランドがどれほど集客できると思っているのか。
集客するためにはそれなりのノウハウが必要とされている。もう、「ネット通販を始めましたというだけ」では売れない。

地方の有力専門店が仕入れてくれるのが最も現実的な成功だといえるが、地方の有力専門店も資金も店舗スペースも有限である。
だから、すべてのデザイナーズブランドがその恩恵を被れるわけではない。
当然、取引してもらえないブランドが多数生まれてしまう。

20年前なら大手セレクトショップやアパレルが小手先の観測気球みたいな扱いで、インディーズデザイナーズブランドを扱うことはあったが、アパレル不況でチビってしまっている彼らがそんな売れるか売れないかわからないようなブランドは取り扱わなくなっている。
彼らがほしいのは、「すでに有名で、仕入れたら今すぐ確実に売れるブランド」だけである。

偉そうなことをいうなら、ユナイテッドアローズの上席なんたらという役職のオッサンが自社店で若手デザイナーズブランドを取り扱うようにしてやれば良いのである。

それを棚に上げてメディアも「化石みたいな業界有識者」も上席なんたらのオッサンも何を虫のいいことを言っているのかと思う。

若手デザイナーズブランドが伸びない最大の理由は売り先・販売店がないからだ。
そういう状況を作ってきたのは偉そうに論評している高齢化して化石化した業界有識者たちである。

若手デザイナーたちが「国内は販路がないから海外へ」となるのは当然だ。
しかし、海外こそ「クリエイションだけ」では売れない。金融やらコネクションやらが重要になる。
若手デザイナーが直視しなくてはならないのはその部分である。

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知名度だけに胡坐をかいたタレントブランドは売れない
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「増減率」だけで論じる経済系の愚かしさ

 9月下旬にこのブログの仕様をライブドアブログからワードプレスへ変えた。(正確には変えてもらった)
ドメインは同じでURLも同じだが、基本的にシステムはまったく違うのでそれまでのRSSが役に立たなくなってしまっている。
もし、以前に登録されていた方がおられたら、お手数をかけてしまうが再度登録しなおしていただきたい。

さて、経済系メディアやアナリストと呼ばれる人たちの記事や指摘には参考になる部分も多数含まれているが、「数字のマジック」に踊らされすぎではないかと感じられることのほうが多い。

例えば、昨年までの「ライトオン復活、ユニクロ低迷」という論調や「しまむら復活、ユニクロ低迷」という論調である。
その期の「%表示」のみに従えばそういう論調になることは理解しているが、実際の金額や一昨年対比した場合、この論調はもろくも崩れてしまう。

それが今年になって証明され始めており、ライトオンは赤字転落してしまったし、しまむらも業績は伸び悩んでおり、今年9月度単月の業績だけをもって「しまむら苦戦、ユニクロ好調」なんていう浅はかな記事を書いてしまうアナリストすら存在する。
しかもそのアナリストの肩書は「ベテランアナリストで、海外(主に欧米)での業務経験も豊富」だから驚いてしまう。

アパレル企業の経営者もピンキリで、ひどく短絡的な人も珍しくないが、優秀で冷静な方も数多く存在する。
年度決算という近視眼的な視点ではなく、3年後~5年後、少なくとも再来年までを考慮して中長期的に取り組む経営者もいる。

先日、久しぶりにお会いできた経営者も後者に属する。
30億円規模のカジュアルメーカーだが、直近の決算内容をお聞きすると、卸売り事業は前年割れ、直営店とネット通販が伸びたということで、卸売り事業の前年割れは計画通りだったという。

この規模のメーカーなので当然、株式公開はしておらず、単年度の業績によって株主から責められることはない。

トップとしては、卸売りという事業そのものが伸びにくい状況となっているため、減収を織り込み済みというのは、賢明な見通しといえる。

しかし、仮にこのメーカーを取り上げて「卸売り事業減収により、今後の業績に懸念」という記事を書こうと思えば書ける。
とくに%表示による増減率の「数字のマジック」に踊らされる性質の人なら迷わずそう書くだろう。

だが、その指摘は正しいのだろうか?

アパレル業界において、卸売りという事業そのものが伸びにくくなっている。
理由はさまざまあるが、最大の理由は、卸売り先の減少である。

小規模・零細の個人経営専門店は次々に廃業・倒産している。
また、中規模の専門店チェーンは徐々に自主企画製品(PB)比率を徐々に高めている。

さらに大手有力チェーン店、大手セレクトショップチェーンは完全にPBが主体に切り替わっている。

こう見ると、卸売り先が減ることはあっても増えることはないことがわかる。
この状況下では卸売り事業が減少することは当然といえる。

卸売り事業しかない企業であれば、これをいかに維持するか・伸ばすかということが至上命題になるが、このメーカーは直営店とネット通販というほかの事業を持っている。環境が厳しい卸売り事業を自然減に任せて、その分、直営店とネット通販を伸ばすという考え方は、きわめて当然だといえる。

経済系の指摘は、このメーカーに対し「そうは言っても卸売り事業が縮小するのは問題だ、今後に懸念を感じる」と言っているようなものに過ぎない。

昨日、2017年8月期のファーストリテイリングの決算が発表された。
内容では過去最高実績となる増収増益だった。

しかし、件の経済系はやはりというか、なんとかの一つ覚えというか「それでも物足りない」と指摘するので笑ってしまった。

1、国内ユニクロ事業が6・4%営業減益
2、EC事業が売り上げ構成比6%にとどまった

この2点である。本当に増減比率しか見ていないことが丸わかりだ。

国内ユニクロ事業の営業利益は6・4%といえども959億円もある。ちなみに件の経済記者は国内ユニクロの売上高の伸びにも物足りなさがあると書いていたが、それは前年比1・4%増にとどまったことを受けている。が、売上高は8107億円もあり、この金額でさらに上積みできてしまっている時点で、通常のアパレル企業とはまったく販売力が異なっている。まさに異次元レベルの伸び率といえる。1%でも80億円で、今時、80億円規模のアパレルはおいそれとは誕生できない。

また、経済系の大好きなEC事業だが、売り上げ構成比6%である理由は、全売上高の分母が大きすぎるからで、伸び率は前年比15・6%もある。
国内ユニクロに含まれるEC売上高は487億5300万円に拡大しており、衣料品ブランド単体のEC売上額は断トツの1位である。
500億円規模のアパレル企業といえば、業界では大手の範疇に入る。

これらを指して「%表示の増減」のみで「物足りなさを感じる」と書いてしまえるところがなんとも驚くほかない。
この手の人たちはおそらく、洋服を販売するという実務経験が乏しい、またはまったくないのではないかと思う。

1年でも2年でも洋服販売に従事したことがあれば、この金額がどれほどすさまじいか容易に理解できる。
また、従事経験がなくとも、8000億円のブランドが1%(80億円)売上高を伸ばすことと、10億円程度のブランドが20%(2億円)売上高を伸ばすことの困難さは全く異なるということは容易に想像できるはずだ。

個人的には「想像力を~」と主張する輩は全く好むところではないが、それこそ想像力が欠如しているのではないか。

NOTEを更新しました⇓
「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n3260aa3e5852

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ゾゾタウンと百貨店の比較はまったく意味がない。百貨店が「小売りの王様」なんて化石の認識

 おそらく、ゾゾタウンの株式時価総額が1兆円を越えたことも影響しているのだと思うが、ニュースピックスでも三越伊勢丹の凋落と比較したシリーズ特集が組まれている。

「ゾゾタウンは次世代百貨店」
「ゾゾタウンが百貨店の『王座』奪った日」

などのタイトルの記事がたしか8回に分けて掲載されていた。

もちろんゾゾタウンの好調は特集すべきだが、百貨店との比較はピントがズレているし、それを総力特集してしまう認識もどうかと思う。

まず、驚くのはいまだに百貨店を「小売りの王様」だと思っている人が多いことである。
何をもって彼らは「王様」を選んでいるのか判断基準はわからない。
ステイタス性ならそれなりに今でも残っているから、まあ「王様」と言えなくもない。
中元や歳暮、贈答品を送るときにやっぱりバラの模様の包装紙は効果がある。東京だったらあのタータンチェック柄の包装紙だろうか。
その包装紙のステイタス性はいまだにある。同じアサヒスーパードライの詰め合わせをもらうにしたって、そういう包装紙でもらった方が良いと感じる人は多い。イオンやセブンの包装紙にはそこまでのステイタス性はない。

売り上げ規模でいえば、百貨店の王座なんてとっくの昔に陥落している。

例えば、日本チェーンストア協会によると、スーパーの売上高は2006年に14兆円にも達している。
百貨店が20年前に9兆円弱あった売上高を毎年減らし続けてきているので、2006年当時はすでにスーパーの売上高の足元にも及ばなかったことになる。

すでに売り上げ規模でいえば、2005年あたりに百貨店の王座なんてスーパーに奪われているといえる。

2016年の百貨店の売上高は5兆9780億円しかないが、ドラッグストアチェーン店は6兆4900億円もあり、ドラッグストアの方が百貨店よりも売り上げ規模がはるかに大きくなっており、百貨店が「王様」なんていう認識は化石時代の遺物かと思ってしまう。

そういう観点での議論は無益でしかない。

また、ゾゾタウンを百貨店と比較するのもナンセンスだ。

百貨店の主要な販売物としてはファッション衣料はあるものの、それ以外に食料品もある。
現に食品強化をした百貨店はそれなりに善戦している。地上1階を食品売り場にした大丸東京店がそれを証明している。

他方、ゾゾタウンはどうだろうか。売り物はファッション衣料・用品しかない。
食料品はない。

また百貨店がステイタス性を保ち、富裕層を顧客化できている理由の一つに「外商」がある。
いわゆる富裕層と直接、個別に商品を販売するやり方で、詳細はあまり明かされていない。
一般的に高島屋や松坂屋、三越のような老舗は外商が強いとされていて、新参百貨店やファッション特化した百貨店はあまり外商は強くないとされている。

ゾゾタウンに外商なんていうシステムはない。
ツケ払いはあっても外商はない。

ゾゾタウンが扱っているのは徹頭徹尾衣料品とファッション用品のみである。

となると、ゾゾタウンは百貨店ではなくファッションビルだといえる。

ゾゾタウンの形式も、いわゆるネットの仮想商業施設に各ブランドをテナント出店させ、そこでの売上高の何%かをゾゾタウンへ納めるというもので、これはファッションビルの形式と原則的には同じだ。だからゾゾタウンは「取扱高」という表現で、テナント各店の売上高総額を発表している。
取扱高のうちの何%かがゾゾタウンの収益となるから、純粋なゾゾとしての「売上高」ではない。

さらに、ゾゾタウンの看板の一つにユナイテッドアローズやナノユニバースなどの人気セレクトショップの入店がある。ゾゾタウンが一気に成功した理由の一つにはこういう人気セレクトショップが先駆けて入店したことがある。
しかし、百貨店には例外を除いてセレクトショップは出店しない。

三越・栄店にはセレクトショップは一切出店していない。しかし、三越が運営するファッションビルの「ラシック」にはセレクトショップがひしめいている。
となると、ゾゾタウンは百貨店ではなくファッションビルだ。

一方、ゾゾタウンにはタカキューやジーンズメイトといったベタな低価格チェーン店も出店している。
どこの百貨店にタカキューやジーンズメイトが出店しているのか?
ファッションビルならこういうベタな低価格店も出店できるが、百貨店には出店できない。

この方向から見てもゾゾタウンが百貨店ではなくファッションビルであることがわかる。

だからゾゾタウンを比較すべきは百貨店ではなく、ルミネやアトレ、パルコ、ルクアなどのファッションビルであるべきで、基準が違うものを比較してあーだこーだ言っても何の意味もない。

そして、この手の記事に共通するのが、Jフロントリテイリングのギンザシックスの賞賛である。

一部を除いたラグジュアリーブランドを集めたという狙いは面白いが、実際に賞賛されるほどの売上高があるのかというとそれは疑問だ。
すでに小島健輔さんもブログで、売上高が芳しくないことを指摘しておられる。
オープン後わずか3か月強でその状態なのだから、旧JR大阪三越伊勢丹と同じ推移だといえる。

そして、ギンザシックスとは百貨店形態ではなく、ブランドをテナント入店させるファッションビル形式であり、百貨店が不動産業・デベロッパー業へと大きく舵を切った事例になる。

現状の既存社員・既存役員だけで従来の百貨店事業を立て直せるような状況では、もはや、なくなっているから、良くも悪くも効率しか見ていないジェイフロントがデベロッパー業へと転身するのは、それなりに評価はできるが、全百貨店の再生モデルがあれだというのはおかしいのではないか。
現にギンザシックスもオープン3か月後くらいで失速しているではないか。

なら、全百貨店が全部ルミネとかアトレとかパルコになれば事態は解決するのか。

これらの議論が大手を振ってまかり通り、それをまたアホな経営陣が真に受けるから、さらなる悲劇が生まれるのである。百貨店に限らずアパレルでも。

ニュースピックス編集部に限らず、メディアも評論家も一般大衆も、ファッションといえば百貨店とユニクロとゾゾタウンしか見ていない。
そして、まるで立脚点が違うその3つを比較して語り合っているにすぎない。
これが酒飲み話ならそれはそれで楽しいが、大真面目にやる議論ではない。

個人的には百貨店に対しての共感も同情も利害関係もまるでないが、この手の「酒飲み話」に振り回されることなく、再建したければ工夫を凝らしてもらいたいと思う。

noteで有料記事を始めてみました。

三越伊勢丹とカルチュアコンビニエンスクラブの提携は何が目的だったのか?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n101ec8cd6c29?creator_urlname=minami_mitsuhiro

ファクトリエが国内工場を立て直せない最大の理由
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