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ZOZOのオーダースーツがホールガーメントで作られるという完全なるミスリード

スタートトゥデイがオーダースーツを開始することが発表された。

生地が伸び縮みして多少のサイズ違いなんてどうとでもできるTシャツとは異なり、メンズのスーツ、ワイシャツというのはそれこそ「ミリ単位」は大げさでも「1センチ単位」での正確さが要求される。
首回り39センチの男が、40センチのワイシャツを着るのはひどくだらしなく見える。

それほどの精度が求められる。

自己採寸できるZOZOSUITによる計測は現在のところ、誤差が大きく、果たしてあの誤差で大丈夫なのかと思ってしまう。

とはいえ、まあ、オーダースーツに進出するのは規定路線だっただろうから、当方はそれほど興味がなく、発表も注目していなかった。

ついでに言っておくと、スタートトゥデイは「フルオーダー」と言っているが、これは間違いで、「パターンオーダー」である。
フルオーダーというのは一人ずつ型紙(パターン)が全く異なり、型紙作りから行われるオーダーであるが、そのため価格も非常に高額になる。定価として発表されている39,900円なんて低価格では絶対に実現できない。

 

パターンオーダーとは「原型」となるパターンがあり、それを基に各個人の体型に合わせて修正するオーダーであり、こちらは比較的低価格にすることが可能だ。

ゾゾの定価である39900円という値段設定は、パターンオーダーなら極めて当たり前の平均的価格である。

スーツカンパニーのオーダースーツの最低価格は39000円だし、麻布テーラーのオーダースーツの最低価格は37000円でzozoよりも安い。
グローバルスタイルなら2着48000円で、1着当たりは24000円となり、zozoよりも圧倒的に安い。

オンリーならオーダースーツが1着28000円、2着38000円で2着作ってもzozoよりも安い。

zozoのパターンオーダースーツの定価設定は同業他社よりも高いくらいに設定されているというのが事実である。

発表後、ツイッターのタイムラインには「ZOZOがオーダースーツをホールガーメントで無人製造」みたいな意味不明のツイートが多数流れてきた。

それもある程度業界知識があるはずの人まで一緒になってやっているのだから呆れ果てるほかない。

よく記事を読んでみると、スタートトゥデイの発表は大きくわけて2つの項目があった。

1、オーダースーツを開始すること
2、ホールガーメントを導入すること

である。そしてこの2つのトピックスは全くの別物で、オーダースーツとホールガーメントは何ら関係ない。ホールガーメントはあくまでもセーターなどのニット製品向けである。
それを2つを合体させてしまうからわけのわからないことになっている。

1、ラーメン屋に行った
2、そのあとでユニクロに行って服を買った

というのを「ラーメン屋でユニクロの服を買った」と合体させてしまうのと同じくらい意味不明である。

ではどうしてホールガーメンで通常のスーツが製造できないのか説明していく。

ホールガーメントとは?

 

ホールガーメントとは、島精機製作所が開発したニット編み機で、一体成型でセーターが編み上げることができる。
これが開発された理由の一つに、国内リンキング工場の激減という事情がある。

同じ編み物でありながら、セーターとカットソー(Tシャツ類)は業界では区別される。

Tシャツ類は、各パーツを縫い合わせる(縫製する)ことに対して、セーターは袖口や裾、襟のリブを縫い合わせるのではなく、編み合わせる。これを「リンキング」という。大雑把に、リンキングされている物はセーター、されていない物はカットソーと業界では分類される。

リンキングはセーター本体と比べると、極めて細い針をセーター本体の編み目に通して編み合わせる作業なので、視力が良くないとできない。
国内工場はリンキングに限らず、高齢化が進んでいるから、老齢で視力が衰えるとリンキングは満足にできなくなる。
そしてリンキング工場は儲からないし、その技術を生かして独自製品を開発することもできない。
結果的に廃業していくということになった。

リンキングなしでは「セーター」は製造できないから、その解決法の一つとして、一体成型のセーターが提案された。
これがホールガーメントである。

今回の発表でにわかに注目を集めたホールガーメントだが、開発されたのは相当前で20年くらい前の話である。
もちろん毎年改良は加えられているが、何も「最新鋭技術」というわけではない。

ホールガーメントはいわゆる頭被りのオーソドックスなセーターだけではなく、前開きのカーディガンやらニットジャケットなんかも編めるし、ニットスカート、ニットワンピースも編める。

だから、ニットジャケット、ニットズボンも編めるが、いわゆる「通常のスーツ」は製造できない。
もし、ニット生地を縫製するならスーツは製造できるが、ホールガーメントの一体成型では「通常のスーツ」は製造できない。

なぜなら、一体成型ということは芯地を挟み込むことができないからだ。

「通常のスーツ」、とくにテーラードジャケットがパリっとしているのは、芯地を挟んで縫製されているからだ。
ついでにいうとワイシャツの襟と袖口が胴体よりも硬くてパリっとしているのはそこに芯地が挟み込まれているからである。
だからホールガーメントでワイシャツを製造することもできない。

高級スーツ、高級ワイシャツになればなるほど使っている生地は柔らかく薄くなる。
そんな柔らかくて薄い生地を2枚重ねて縫ったところで、多くの人が想像するようなスーツやワイシャツみたいにパリっとはしない。
その間に芯地を挟み込んで縫製するから硬くてパリっとするのである。

一体成型なのだから芯地を挟み込んで縫製なんてできるわけがない。
だから多くの人が思い描く「通常のスーツ」「通常のワイシャツ」はどうしたってホールガーメントでは製造できない。

だが、例えば、通販ニュースですらこの混同ぶりだ。

ZOZO、海外展開開始…ゾゾスーツなど10万人に無償配布

 

 

 PB商品の生産体制についても言及した。「体型データ」と「オンデマンド生産機器」を組み合わせた生産を行うとし、一例として(株)島精機製作所とコラボレーションし商品ごとに最適な製造インフラを構築すると言う。前澤社長が「3Dプリンターの洋服版」と称した「WHOLEGARMENT(ホールガーメント)」という機械などを使用し、無人のアパレル生産を行うとした。

これだと、ホールガーメントという機械wwwでどんな洋服でも製造できるように読めてしまう。
残念ながら製造できるのは編み物に限られている。
だからセーター、カットソー、トレーナー類に限定される。

ジーンズ風ニットズボンは製造できても、「通常のジーンズ」は製造できない。

織物と編み物の違い

 

生地には織物と編み物があり、それぞれ生地の構造も製造する機械の構造も異なる。
少ない本数の糸を輪っか状にして連結させる「編み物」と、合計何千本、何万本という本数の経糸と緯糸を組み合わせる「織物」はまったく別物の生地構造をしており、通常のスーツやワイシャツ、ジーンズは織物で作られている。

お分かりだろうか。

ツイッターでは、「布帛(織物)も一体成型できるようになる気がする」なんて意見もあるが、それは絶対に無理だ。
編み物は、脇に縫い目のないTシャツやセーターがあることを見てもわかるように、円形に編むことができる。しかし織物は平面の直線で織られており、円形に織ることは生地の構造上からも機械の構造上からも不可能である。

だから「織物の一体成型」は現時点では不可能で、それが開発されることはまずない。

一方、島精機製作所のウェブサイトにはインレイ編みで布帛に近いハリコシのあるホールガーメントができると書いてあることから、インレイ編みに期待を寄せた人もいるが、インレイ編みがいくら通常のニットよりもハリコシがあるとはいえ、芯地を挟み込まなければスーツにパリっと感は再現できない。

http://www.shimaseiki.co.jp/wholegarment/

インレイ技術を活用したホールガーメント製品で、驚きの軽さと快適な着心地が特長です。ジャケット、コート、スーツなど従来布帛でしかなかったようなアイテムをニットで表現できます。横方向に編成することで、横方向にストレッチ性を持たせながらも、縦方向には伸縮を抑えて形態を安定させることも可能です。

とあり、なかなかミスリードさせるような文面だが、芯地がなければ通常の布帛スーツや布帛コートのパリっと感は実現できない。
島精機も罪な書き方をしている。わざとだろうか?わざとだとすると極めて悪質だ。

インレイ編みってなんだ?インレイ編みは万能じゃない

 

じゃあ、インレイ編みってなんだろう?

最近ひそかなブームになりつつあるニットインレイ編みとは?

通常の横編み(いわゆるセーター生地)に緯糸を通すことで、ハリコシを持たせる編み方で、構造は以下の図のようになっている。

しかし、いくらハリコシが出るとはいえ、何千本・何万本もの経糸と緯糸で高密度に織られた織物には遠く及ばない。
ニットは所詮ニットなのであり、さらにそこに芯地がないとなれば、通常のニットジャケット、カットソージャケットの少し硬い程度でしかない。

スタートトゥデイはここを意図的か無意識なのか混同させるような説明の仕方をしていた。

そして、製造や生地のことの知識を持ち合わせていないメディア関係者や、知識の浅いファッション業界人はまんまとそれを鵜呑みにした。

それが今回の騒動の原因である。

スタートトゥデイは話題作りが上手いと思う。しかし、いつも優良誤認させるような手法を積極的に用い、今回もまたそういう手法を用いた。ここが好きになれない点である。

ホールガーメントは別に未来の最新テクノロジーでもないし、どんな服でも自動製造してくれる魔法の箱でもない。
ホールガーメントは20年くらい前に開発された一体成型型のセーター類専用製造機で、それ以上のものではない。

とんだ空騒ぎである。馬鹿馬鹿しい。

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トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみた
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「センス」と「感覚」だけでのブランド運営はすぐに行き詰まる

先日、雑貨ショップASOKO南堀江店が5月20日に閉店した。

入店していたビルの耐震補強工事が閉店の理由だそうだ。
ただ、もしすごく売れ行きが好調なら、工事終了後に再開するだろうから、それがないということは再開するほどの旨味がなかったのではないかと思う。

オープン当時のASOKO南堀江店の外観

オープン当時のASOKO南堀江店の内装

先日、アメリカ村を通ったら、雑貨ショップ「フライングタイガー」アメリカ村店を久しぶりに見た。
オープン当初は連日スゴイ客入りだったが、今はそんなことはない。
まあ、普通の店である。

ASOKO南堀江店も同様だ。オープン当時は連日の賑わいでテレビや新聞、雑誌の報道合戦だったが、ここ2年くらいは当方はその存在すら忘れていたほどだ。

フライングタイガーがあちこちに店ができた。大阪でいうなら、あべのキューズモールにもある。
買い物するのは楽になったが希少性はなくなり、話題性もなくなった。

オープン→ブーム加熱→沈静化

という流れは、フライングタイガー、ASOKOともにその歩みはほぼ同一である。

報道によるブームのなんと一時的なものか。

各地方の大河ドラマ商法もこれと似たような印象がある。

さて、フライングタイガーも、オープン当初のASOKOも品ぞろえ、商品の陳列法・ディスプレイともに「センス」があり、「良い感覚」だと思った。もちろん、商品の一つ一つをつぶさに見れば「なんじゃこれ?」という商品もあったが、ブランドやショップというのは、トータルで見ての整合性がとれていることの方が重要だと思うので、当初の在り方はありなのだと思う。

この2ブランドの特徴は、ある程度「低価格」であるということ。
中には低価格でない商品も一部にはあるが、全体的には低価格なので、基本的には「薄利多売」となる。
そのため、「センス」や「感覚」「雰囲気」もさることながら、商品の発注、補充、追加などのシステム構築が重要になる。
単価の安い商品を大量に販売しなくてはならなくなるため、その商品の供給、補充・追加、そしてそれを備蓄して店頭に運ぶ物流システムの構築が何よりも重要になる。

物流に関してはド素人なので詳細はまるでわからないが、従業員や店舗運営担当者が商品を手運びしているのでは到底間に合わないことぐらいはわかる。
1店舗だけで営業するならそれも可能だろうが、両ブランドともに多店舗化を目的としていたので、それでは到底追いつかなくなる。
さらにいえば、低価格店なので多店舗化しなければ収益はまるで高まらないので、多店舗化は目標であり、義務だった。

ところが、フライングタイガー1号店であるアメリカ村オープン時の混乱はこの物流システムがまるでなかったことが原因の一つであり、連日の過熱報道で客が多数押し寄せ品切れ状態となって何か月か休店していた。

オープン当時のフライングタイガーアメリカ村店の外観

ASOKOも同様である。
ASOKOは現在は雑貨店スリーコインズを運営するパルグループの傘下だが、当初は遊心クリエイションが自社で開発した業態だった。しかし、遊心クリエイションは2016年1月に会社解散してしまい、その後、ASOKOはパルグループに引き取られて今に至る。

当時の遊心クリエイションのメンバーに聞いたところ、オープン当初のASOKOは南堀江と原宿の2店舗体制で、物流会社とは契約しておらず、商品の供給、追加補充はすべて社員が人力(手運び)で運び、在庫の棚卸も社員が行っていたという。そのためすさまじい労力が必要だったとのことだった。

ASOKOが多店舗化を目標として公言していたにもかかわらず、まったく店舗数が増えなかった理由はここにもあった。
物流を自社で賄ったままで店舗数を50店舗だの100店舗だのまで増やすことは物理的に不可能で、それをやればそれこそ過労死する社員が続出したのではないかと思う。

フライングタイガーの当初も同様だ。
システムを構築せずにアメリカ村店をオープンさせた結果、商品供給が追い付かずに何か月も休店する事態となった。

売り方にはさまざまある。
低価格店、中価格店、高価格店。

それぞれ、損益分岐点に達する販売数量があり、それを継続的に越え続けないと事業やブランドは継続できない。

とくに薄利多売、大量生産・大量販売を基本とする低価格店はそれを支えるシステム構築が不可欠である。
だからASOKOはパルに、フライングタイガーはサザビーリーグの傘下となった現在の方がはるかに商品供給がスムーズである。
なぜなら、パルもサザビーリーグもそれなりに大手なので物流システムは小規模企業だった遊心クリエイションやゼブラジャパンよりははるかにしっかりとしているからだ。

何の変哲もない雑貨を安く売るのではなく、ある程度「ファッション」的に売るから「センスや感覚が重要」と言われがちだが、この手の低価格店を運営するには、物流も含めたシステムや仕組みの構築が重要になる。
もちろん、走りながら構築するというやり方もありで、システムや仕組みの構築なんて凄まじく莫大な投資が必要だから、小規模企業では一度には支払えない。走りながら投資して構築するというやり方しかない。

しかし、そういうシステムや仕組みの構築が「まったく頭になかった」というのはお話にならない。
旧運営会社の2社は「まったく頭になかった」とまでは言わないが、そこを重視していなかったということはできるのではないかと思う。

「センス」「感覚」も重要だが、それと同様にシステムや仕組みの構築も重要なのである。

嗜好の成熟化や情報量の増大によって、以前のように「かっこいい物を並べれば、それで売れる」という時代ではなくなっているから、もしかすると、中価格、高価格ブランドの売り方もそういうシステムや仕組みの構築が重要なのではないかと思う。

各社、各創業者によって目指すべき企業規模やブランド規模は異なる。
一概に大規模化することが良いとは思わないが、それでもブランドや企業を永続的に続けるにはそういう物流を含めたシステム構築が不可欠だろうし、単に「センス」「感覚」「イケてる」と言っているだけでは永続的な収益は上がらない。

国内の小規模ブランドがいつまでも損益分岐点に達しないのは、価格政策や販売政策もさることながら、「センス」「感覚」のみに頼りすぎているからではないかと思う。「センス」「感覚」のみのブランドは価格帯にかかわらず事業拡大はできない。まあ、事業拡大を目指していないブランドはそんなことを考える必要はないが。

「センス」「感覚」だけで走っていた遊心クリエイション時代のASOKOがまったく店舗数が増えず、結局は破綻したことはそれを象徴しているといえる。

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そんなASOKOの商品をどうぞ。

細分化して「併存型」になったファッショントレンド ~消費動向の変化~ 

今回初めて、現代ビジネスというウェブメディアに寄稿させてもらった。

ヒットが出ない…!アパレル業界「トレンドの崩壊」はなぜ起きたか

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56185

という記事で、この20年間の総まとめみたいな感じである。

48歳のオッサンになって、過去の業界やファッション消費の動向を振り返ると、現在と若い頃ではだいぶ違うような気がする。
これは誰でもがそう感じることなのだろうが、オッサンの単純な思い込みだけではないと思いたい。

例えば、2005~2007年まで、レディースではブーツカットパンツが大ブームだったが、2008年にスキニーパンツがブームになると、2010年頃にはブーツカットパンツを穿いた女性の姿はほとんど消えた。(一部の愛好家を除いて)

ところが、2015年にワイドシルエットのガウチョパンツがブームになってもいまだにスキニーパンツは消えない。
ユニクロやジーユーも主力商品の1つとして扱っている。

街行く人を見ていても相当数、スキニーパンツを着用している。
消費動向からすると、ワイドパンツとスキニーパンツを一人の消費者が併用しているような感じである。

これには理由はさまざまあるのだろうと思う。
思いつくままに挙げさせていただく。

1、社会の成熟化
2、所得の減少または伸び悩み
3、娯楽・趣味の選択肢が増え、ファッションという娯楽の優先順が下がった
4、過去のトレンドがそれぞれファッションジャンルとして定着した

2018年の現在から20年前というと、98年頃である。
まだ股上の深いパンツを穿いていた。パンツが一様にローライズになる直前である。

しかし、股上の深い・浅いは別にして、全体的な服装のテイストや髪型は現在とさほど変わっていない。
微妙な差異は当然あるものの、大きくは変わっていないと感じる。
40代の方なら20年前なんて昨日のことのように覚えているのではないだろうか。
現在の生活様式や服装、髪型とそれほど変わっていないことに気が付くのではないかと思う。

しかし、90年代にその20年前である70年代を振り返ると、そこ最早異世界である。
90年代にあんな重たいモッサリした長髪の男はいなかったし、あんなベルボトムのズボンを穿いた人もいない。
あんなヒッピーみたいな服装の男女もいない。

もちろん90年代には空前のキムタクブームでロン毛の男は山ほどいたが、もっと軽るめにカットされたサラサラのロン毛だった。
あんな、散髪をに行くのを2年間さぼったような重たいロン毛はいない。

70年代から90年代までの毎年と言っていいほどの目まぐるしいトレンド変化は、90年代以降はそこまで起きていないということがわかる。
もちろん、記事中に書いたようにそれでも90年代から2005年までというのは意外にアパレル業界にとっては、やりやすかった時代で、それでもほぼ毎年大ヒット商品が生まれていた。

2008年のスキニー登場以降、トレンドはほとんど変わらなくなった。

その一方で、「トレンド消費がスマホの登場で目まぐるしくなった」という意見もある。

それは個々のアイテムの人気が持続している期間が短くなったことを指しているのだろうと思う。
例えば、2015年にジーユーが100万本売ったガウチョパンツだが、今ではアンクル丈ワイドパンツに名前が変わっている。
その一方で、天神橋筋商店街のバッタ屋に飛び込んでくる大阪のオバハンは「ガウチョパンツ欲しいねん」というほど、ガウチョという名称を連呼している。

3年後には大阪のオバハンまでがガウチョを愛用するにようになっているのである。

人気ファッションブロガーのMB氏のブログで、つい先日まで大人気だったスニーカー、アディダスのスタンスミスの着用者が急速に減り、代わって田舎のオバハンがスタンスミスを着用するようになったことが触れられている。
ガウチョもこれと同じといえる。

スタンスミスの前はニューバランスのスニーカーが大人気だったが、その人気は短期間で終息した。

しかし、現在もニューバランスの着用者は普通にいるし、一時期に比べてスタンスミスの着用者は減ったものの普通にいる。

「うわ、まだニューバランス履いてるの?ダサ」とか「まだスタンスミスで消耗しているの?プゲラ」とかそういう雰囲気ではない。
普通の定番スニーカーとして少なからず着用者がいる。

ここが、オッサン世代が見てきた70年代~90年代までのトレンド変化と、現在が大きく異なっている点だと思う。

天神橋筋商店街のオバハンがガウチョを穿いてたって、若いおねえちゃんもアンクル丈ワイドパンツという名のガウチョパンツを穿いている。
田舎のオバハンと都心のファッション好きの若い衆が共通してスタンスミスを履いているのと同じである。

この辺りが社会の成熟化といえるのではないかと思う。
また、各ファッションジャンルの定着化といえるのではないかと思う。

それに加えて、所得の伸び悩みまたは減少も大きく、2000年頃までの「トレンドアイテム総入れ替え」体制だと、人気アイテムに合わせてトップスや靴、アウター類まですべて買いなおさなければならなくなる。

エディスリマンのピチピチシルエットが流行って、それに一斉に変わってしまえば、それまでのバブル期のダボダボの服はすべて捨ててしまわなくてはならない。
今は、そんなもったいないことはできないということだろう。

だから5年前に買ったスキニーパンツと、去年買ったワイドパンツを併用するのだろう。
それぞれに合わせるトップスも異なるから、スキニーに合わせるのは以前に買ったトップスで、ワイドパンツに合わせるトップスを何枚か今年買い足すという消費動向になる。

現在、ワイドパンツにワイドなトップスがトレンド最先端だが、このジャンルもトレンドが去った後も消滅することはないと思うし、このトレンドは意外に長く続くのではないかと思う。

MB氏がブログで触れているように、ワイドシルエットの上下は「試着なし」で買うことが可能だからだ。
そしてネット通販が定着すればするほど「試着なし」で買って失敗する可能性が少ないワイドシルエットの服は重宝されるということだ。
アパレル各社がネット通販に力を入れれば入れるほど、ワイドシルエットの服の寿命は長くなると見た方が良いだろう。

その一方で、スキニーも今後も消滅することはないだろう。
なぜなら、カッコよく見える着こなしには3つのシルエットがあるからだ。

1、Aライン(トップスがタイトでパンツがワイド)
2、Iライン(トップスもタイト・パンツもタイト)
3、VラインまたはYライン(トップスがワイドでパンツがタイト)

3シルエット中の2つまでがタイトなパンツであるから、確率論的に言えば、タイトなパンツを買っていれば間違いが少ないということになる。そしてそのタイトなパンツの代表例がスキニーといえるから、こちらも消滅することはなく、むしろマスアイテムとして生き続けるのではないかと思う。

当方より上の年代層のアパレル企業幹部が「2000年ごろまでの総取り換え」の消費動向を理想として思い描いているとしたら、それはあまりにも時代遅れだといえる。そんな時代はもう二度とやってこない。今後は、各ジャンルのファッションが共存並立する時代である。その消費動向に向けた商品開発や販売方法を模索できないアパレル企業やブランドは消え去るのみになるだろう。

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天神橋筋商店街のオバハンまでもが愛用しているガウチョパンツをどうぞ

女性ファッション雑誌の凋落 販売部数17万部強でリンネルが首位になるレベル

最近、さっぱり興味が湧かなくなったものの一つにファッション雑誌がある。

当方はもともとレディースのファッション雑誌にはまったく興味がなく、仕事以外では読むこともなかった。
一方、ファッション雑誌を読むのは完全に娯楽であり趣味だと思っていたことと、大学を卒業するまでまったくファッションに興味がなかったため、メンズのファッション雑誌は興味を持って読んでいた。
2008年ごろまでは。

このころになると、メンズのファッションのコーディネイト例も一通り全部覚えてしまったから、徐々に買う頻度が減っていった。
94年頃からとすると足掛け15年に渡って毎月メンズのファッション雑誌を買っていた。

2009年以降は毎月は買わなくなり、ネタ枯れで街頭スナップばかりになる2月発売号と8月発売号は買わなくなった。
街頭スナップばかりのページが延々と続くから読む意味も感じなかったからだ。

2011年を越えるころからは、年に何冊かしか買わなくなり、2015年以降はまったく買わなくなった。
発売日に本屋でパラパラと一通りめくるだけ、散髪屋で髪を切ってもらいながら備え付けのを読むだけ、というふうになって今に至る。

メンズのファッション雑誌の発行部数・販売部数ともに恐ろしいことになっているのだろうと思う。

発行部数を調べたい方はここで調べると良いだろう。

https://www.j-magazine.or.jp/

最新データは2017年10月~12月の3か月間の平均データが掲載されているが、案の定、メンズファッション誌は壊滅的な数字が掲載されている。

男性ヤングという分類のファッション雑誌を見ると、メンズノンノ、メンズジョーカー、ポパイの3誌の発行部数が掲載されているが、すべて10万部ぎりぎりである。
2018年年末までには3誌とも10万部を割り込むことになるだろう。

発行部数が10万部なのだから、販売部数は当然それよりも少ない。
月刊誌は書店でなるべく売り切れが出ないように、販売部数よりも少し多めに印刷する。
少し多めに印刷して10万部なのだから、実際の販売部数は当然10万部未満ということになる。
個人的に推測すれば恐らくは5万~7万部あたりが販売部数ということになるのではないだろうか。

メンズノンノ、メンズジョーカーあたりは2011年頃と比べると3万~5万部は発行部数が減っている。
恐らく販売部数はもっと減っているのだろう。

5~6年前に12万部~13万部くらいを発行していた「ライトニング」はついに6万4000部となっており、ほぼ半減している。

メンズファッション雑誌で唯一発行部数が落ちずに踏ん張っているのが、サファリで以前と変わらず18万部をキープしている。
同年代向けのファッション雑誌(レオンやウォモ、メンズEXなど)は3万~7万部の発行部数しかないことを考えると、サファリの発行部数はメンズファッション雑誌の中では断トツである。

さて、メンズファッション雑誌よりはマシだが女性ファッション雑誌各誌もその凋落ぶりは悲惨といえる。

つい先日、こんな報道があった。

日本の女性ファッション雑誌販売部数ランキング、「リンネル」が初の1位に
https://www.fashionsnap.com/article/2018-05-11/abc-liniere/

一般社団法人日本ABC協会が2017年下半期(2017年7月~12月)の雑誌販売部数を発表し、宝島社の「リンネル」が月刊女性ファッション雑誌の販売部数において初の1位を獲得した。リンネルが17万7,052部

とのことだ。

発行部数と販売部数だと販売部数の方が少なくなるのだが、それでもたった17万部で1位になるということは、他の女性ファッション雑誌の販売部数がいかに少ないかということを物語っている。

ちなみに2010年にはこんな記事が掲載されている。

出版不況もどこ吹く風?
雑誌「sweet」が100万部を突破できた宝島社の秘密
http://diamond.jp/articles/-/9063

くどいようだが、発行部数と販売部数は異なり、販売部数の方が発行部数よりも少ない。
8年前に発行部数が100万部を越えていた「sweet」は、8年後の現在の販売部数はリンネルよりも少ない17万5,844部しかない。

発行部数はこれよりも当然もう少し多いだろうが、それでも何十万部も多いわけではない。
販売部数に比して異様に発行部数を多くすると、それは大手新聞各社が指摘されている「押し紙」と同様になってしまう。

媒体力を上げ底にするために、販売部数に比して異様に発行部数を増やすという水増しだ。

「発行部数が多いから媒体力が衰えておらず、だから広告費を高く設定しますよ」

という目的がある。
しかし、雑誌の場合はそこまで水増しはされていない。
sweetの場合、多くても水増しは10万部程度ではないかと個人的には推測する。

だとするとsweetの発行部数は30万部前後ではないだろうか。

発行部数という同じ基準で考えた場合、sweetは8年間で3分の1程度にまで縮小しているといえる。

これは他の雑誌も同様だろう。リンネルは昔から地味な雑誌なので落差は少ないと考えられるが、赤文字だの青文字だのエビちゃんだモエちゃんだと囃し立てられてブームになった各雑誌の落差はおそらくsweetと同等かそれ以上の落ち込みだと考えられる。

これだけ媒体力が落ち込んでしまうと、ファッション雑誌に広告掲載する意味もほぼなくなってしまう。
また、広報目的として商品やブランドを掲載する意味もほぼなくなってしまう。

今後、アパレル企業やブランドのプレス担当者や広報担当者はこれまでの「ファッション雑誌一辺倒」という姿勢では仕事ができなくなり、ファッション雑誌一辺倒という能力しか持たないプレス担当者や広報担当者はこれから生き残れないと見ている。

生き残れるプレス担当者・広報担当者はファッション雑誌ではなく、紙・ウェブを問わず活字メディアに強い人物、ウェブメディアに強い人物になるだろう。

ファッション雑誌編集者と酒を飲んで休日に遊ぶことで親睦を深めて、それで掲載を勝ち取ってきたようなプレス担当者・広報担当者はほぼ必要なくなってしまうのではないか。
この辺りもアパレル業界・ファッション業界に起きた地殻変動の一つといえる。

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原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~
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リンネルをどうぞ

ポップアップストアのメリットとデメリットはここ

どんなものでもそうだが必ずメリットとデメリットがある。
ポップアップストア(期間限定出店)も同じだ。メリットとデメリットがある。

先日、岡山県津山市のネクタイ縫製工場が自社ネクタイブランド「笏の音」のポップアップストアを阪急メンズ館うめだで開催していたので、覗きに行ってきた。
フェイスブックでお友達になっていたので、一度お会いしようと思ったわけだ。
1万円のネクタイが1日に10本以上売れ続けたということで成功といえるだろう。

「笏の音」のネクタイ

ポップアップストアのメリットとしては、無名ブランドや知名度の低いブランドが有名な商業施設で開催することで、知名度を高められるという点がある。

そういう意味では広告宣伝費と等しい。
通常の広告宣伝費はカネを払いっぱなしだが、ポップアップストアの場合は、物が売れれば収入となる。
そのため通常の広告宣伝よりも費用的に美味しくなる可能性がある。

常設店を作れば、家賃や人件費が必要になるが、1週間とか2週間くらいのポップアップストアなら自社スタッフで何とか回せるため、人件費はそこまで増えない。また家賃も必要ない。

一方でデメリットもある。
ポップアップストアではそれほど大幅な利益を稼ぐことは難しい。
ポップアップストアは家賃が必要ない代わりに、必ず売上高の何%を施設側に徴収される。
百貨店の場合は通常だとだいたい30~40%を徴収される。

10万円売れたとしても3万~4万円は百貨店に取られる。

よほど、超人気ブランドで百貨店が頼み込んでポップアップを開催してもらった場合はこの%はもっと低くなるが、通常のブランドだとだいたいそれくらいである。
1日に10万売れて、それが7日間開催だったとすると、売上高は70万円になる。
このうち百貨店は21万~28万円をもっていくというわけで、出店者の手元には42万~49万円しか残らないということになる。

この49万円で売れた商品の仕入れ代や製造費、店頭で立ってくれたスタッフの人件費・交通費・宿泊費、あとはこまごまとした備品などを支払うから純粋な儲けはさらに減る。

だからポップアップストアで大幅な利益を稼ぐことは基本的には難しい。

この構造を理解した上でポップアップストア出店するならそれはそれで一つの販売戦略といえる。
笏の音の場合は、ブランドスタートから間もないため、広告宣伝活動の一環とすれば大いにポップアップストアのメリットは大いにある。

しかし、すでに知名度が高いブランドはポップアップストアを頻繁に開催するメリットは少ない。
まあ、年に1回か2回くらいやるのは気分転換にもなって良いが、年間何十回もやる意味は、収益面から考えるとほとんどない。

逆にそこまで頻繁にやるなら、通常のスタッフをローテーションで回すことは難しく、それ専用のスタッフを雇ったり、販売代行社と契約しなくてはならなくなり、さらに収益面は圧迫される。

なんでこんなことをクドクド書いているのかというと、先日読んだ記事に疑問を感じたからだ。

1万円でバカ売れ 神戸発バレエ靴の戦略
http://president.jp/articles/-/24758

神戸のクロシェという企業が発売しているファルファーレという1万円のバレエシューズが年間8万足も売れるという内容である。

3万円以上か4000円以下かの2極化しているバレエシューズ市場に1万円という中間価格帯で提案した結果、年間8万足を売るまでに成長した。

ファッション用品不況の現状では、参考になることの多い内容だが、個人的にはこのクロシェのやり方はオンリーワンの要素が強く、真似ても失敗する可能性が高いと見ている。
参考にするのは構わないが、真に受けて真似るとひどいことになるだろう。

まず、中間価格帯商品のあえての投入という部分だが、個人的には意味のあることだとは思うが、現実的には攻め方を間違えて苦戦している中間価格帯ブランドは山のようにある。
エドウインなんかもその一つといえる。

日本製で8000円くらいのジーンズは本来価値があると思うが、それが高い評価を受けているかというとそうでもない。

また

ファルファーレには常設店舗はない。そのかわりにファルファーレは、1週間単位でポップアップストアを全国の各所で次々に出店していく。その数は年間で100以上にのぼる。これで年間8万足という販売の根幹を確保する。

とあるが、年間の3分の1もポップアップストアを開催するには、それ相応の投資が必要となる。
まず人件費である。本社スタッフをローテーションで投入して賄うことは100回以上もやっていれば不可能だ。
ポップアップ専門スタッフを雇っているか、そういう派遣と契約しているかだろう。クロシェはこれで成功したとされているが、他社が真似ても確実に成果が出るとは限らない。
むしろ、上でも書いたように収益は低いから早々にポップアップ疲れを起こすだろう。
労多くして益少なしの事態に陥る。

その昔、付き合いのあった独立したばかりのデザイナーズバッグブランドがあった。
彼らはブランドスタート当初はポップアップストアを頻繁に開催していた(とはいえ年間100回もやっていない)が、3年目か5年目くらいからポップアップストアを大幅に減らした。
理由は収益が悪いからである。いくらシャカリキに開催したって大きな利益は確保できなかったからだ。

これが現実である。

これまでと違うやり方として参考にするのは良いが、クロシェをそのまま真似ることはかなり危険度が高いといえる。

あと、この記事の書き方には疑問がある。
クロシェを中堅企業としているが、年間14億円程度の売上高では中堅企業とは言わない。
最低でも20億~30億円は必要だろう。

また、見出しの「バカ売れ」も陳腐で逆にうさん臭さを煽っている。
この手の経済雑誌や経済紙の記事は「バカ売れ」という表現を多用する。
しかしその実態の多くは、数量が少なかったり、数量自体が明示されていなかったりする。
クロシェの8万足は売れているといえるが、バカ売れという見出しは本当にバカっぽくしか見えないので、媒体側はあまり使わない方が良いのではないかと思う。

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こんな感じの靴らしい。

ZOZOはそれほど大衆に知られていないし支持もされていない

物事を考える場合いはミクロな視点とマクロな視点が必要になる。
ミクロとマクロが両輪で必要なのは何も経済学だけのことではない。

衣料品業界だってミクロとマクロがある。
業界人の多くが注目しているのはたいていがミクロな現象である場合が多い。

これが80年代とか90年代なら、それこそ、わけのわからん業界人が注目したといわれるちっぽけな裏原宿の店がブームになることも珍しくなかった。
当時はミクロな視点がマクロっぽい(完全なるマクロでもない)ブームを引き起こすこともあった。
しかし、2005年以降はそういうブームはほとんど起きなくなった。

あるとすれば、最初からマクロ狙いのヒートテックブームやウルトラライトダウンブームくらいだろうか。
夏場の男性の超短い靴下のフットカバーも着用人口が多いからマクロブームといえるが、これはアイテムがブームであって、特定のブランドがブームであるわけではない。

〇〇ブランドのフットカバーでなくてはダメ!

そんな買い方をする人はいない。ブランドがどこだろうが、脱げにくければそれで良いのである。
その観点からいけば、脱げにくく安いのはグンゼと無印良品が双璧といえる。
グンゼの自社ブランド、トゥシェやボディワイルドは2足で1000円未満だし、無印良品は3足990円だ。しかも無印良品のは日本製だ。
グンゼのは定価が990円くらいだが、値引きで2足500円台になることもある。

この2ブランドがあれば、ほかのフットカバーはカネがもったいなくてちょっと買えなくなる。

それは置いておいて、まあ、最近の衣料品業界の業界人が注目する事象は影響力がミクロにとどまることが多いと感じる。
このあたりも衣料品業界、ファッション業界の影響力が下がった、あるいは業界への注目度が低下していることの現れではないかとも思う。

さて、現在、業界は猫も杓子もアホの一つ覚えみたいに「ネット通販」「EC強化」である。
その成功事例として、業界人とメディア、スタートアップ界隈の騒ぎ屋どもが注目するのが、スタートトゥデイが展開するZOZOTOWNであり、それに付随した各種サービスだ。

しかし、その注目は所詮はミクロな現象でしかないと当方は感じている。
盛り上がっているのは業界人だけ、そんな印象でしかない。

以前にネット通販についてのアンケート調査をこのブログで紹介した。

ファッション性が高くて高価格な服はインターネット通販では売れにくい
http://minamimitsuhiro.info/archives/2242.html

この中で、アンケート調査の結果を引用した。

 

その消費者アンケートによると、衣料品を購入した通販サイトの圧倒的1位(22%)はユニクロである。
二位が半分以下の9・9%でニッセン、三位が僅差の9・8%でセシールであり、業界人が大好きなZOZOTOWNは9・3%でベルメゾン(千趣会)と同率四位でしかない。

一般大衆にいかにZOZOTOWNの知名度が低いか、いかに支持されていないかがわかる。

ユニクロの半分以下というのが本当にその事実を示している。

そして、スタートアップ界隈の騒ぎ屋どもとイシキタカイ系が注目しているゾゾスーツだが、これも知名度は低い。
極めてミクロにしか注目されていないといえる。
それをまとめたアンケートがこちらだ。

「ZOZOスーツ」認知率33%、Instagramでファッション情報入手するのは22%
https://netshop.impress.co.jp/node/5253

ZOZOSUIT」を「利用したことがある」と答えた割合は1.6%。「利用したことはないが知っている」は16.4%、「名前は聞いたことがある」は15.2%だった。回答者全体から「知らない」(66.8%)の割合を除いた認知率は33.2%。

とのことで、67%の人間はゾゾスーツの存在すら知らないのである。
これがマクロの正しい反応である。業界人やスタートアップ界隈の騒ぎ屋どもがいかにニッチな嗜好なのかがよくわかるではないか。

しかもまだほとんどの人間の手元にしか届いていないはずのゾゾスーツを利用したことがあると答えている1・6%という数字は盛っているのではないかとさえ思う。
もし、盛っているとなると、ゾゾスーツの認知度はもう少し低くなる。まあ1%くらいの話だが。

実情は68%くらいの人間がその存在を知らないというところだろう。

この結果に立脚すると、最近、メディアやスタートアップ界隈の騒ぎ屋どもが煽っているように、「ゾゾがユニクロに取って代わる」なんていうことは短期的にはほとんど可能性はゼロといえる。

知名度も利用者数もユニクロの半分以下であり、これが現在のゾゾへの評価である。
そんな程度の存在が発売したPBごときでユニクロの牙城が崩されることは短期的にはない。
あったとしてもそれは10年後~20年後のことだろう。そのときまでゾゾが存在していればの話だが。

某ブランドのネット担当者が、「ゾゾのスタッフは本気でユニクロ追撃を狙ってますよ」と言っていたが、スタッフは白昼夢か幻覚でも見ているのだろう。

現時点においては、ゾゾはマス化しておらず、ニッチな存在であり、これがユニクロほどの存在になることはちょっと考えにくいと言わなくてはならない。
そのため当方はゾゾを極めて冷ややかにしか眺めていない。

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まだ読んでない人はこちらもどうぞ。ちきりんの推薦文は要らんけど。(笑)

スニーカービズってなんで私服警官みたいな服装を提案してんの?提案する側はアホなの?

健康増進のためにビジネスでもスニーカー着用というスニーカービズが提唱されているが、意味がわからない展開になっている。

提唱した行政はもとから服装のことなんてちっともわかっていないのは当然として、受けている衣料品業界、靴業界もなぜか「本来は」服装のプロであるはずが、ネクタイ着用のかっちりとしたスーツにナイキやニューバランスなどのオーソドックスなスニーカーを合わせようとしていたり、それを見てファッソニスタたちは「合わない」と叫んでいたりする。
およそ「プロ」とは思えない動向ばかりである。

もちろん、革靴よりはスニーカーの方が歩きやすく足が疲れにくいことは言うまでもない。
また革底の革靴よりもゴム底の革靴の方が疲れにくく機能性が高いことも言うまでもない。

現在、多くのビジネスマンが革底の革靴ではなく、ゴム底の革靴を履いているのは極めて当然といえる。
本来の「スニーカービズ」はこれをさらに進めるべきであり、「スニーカー」にこだわる必要はまったくない。
ゴム底のクッション性をさらに高めるとか、アッパーの革(合皮も含む)をさらにソフトにするとか、そういう工夫で達成できる。

しかし、プロであるはずの受け手が提唱するのは、選挙運動中の政治家か私服警官みたいなスーツ+ネクタイ+スポーツシューズである。
ちょっと頭がおかしいのではないかと思う。

端的に提示してくれているのが、このセシールのページなので紹介してみたい。
画像もいくつかお借りする。

https://www.cecile.co.jp/sc/sneakers/

これらはどう見ても巡回中の私服警官かブレザーが制服の高校生にしか見えない。また手提げのスポーツバッグっぽい鞄が高校生感を10倍増ししている。
仮にもファッションを販売する会社がこの程度の提案力しかないから服もファッションも売れないのではないかと思う。
何もセシールだけのことではない。同様の提案をしている衣料品、ファッション企業は掃いて捨てるほどある。

この手のナイキ、アディダス、ニューバランスなどのスポーツシューズに合わせるなら、正絹布帛のネクタイまで締めるべきではない。
スーツはそのままとして、インナーはTシャツやタートルネックなどのカジュアルアイテムを合わせ、ズボンの裾は短めに切るかロールアップするかすべきである。
こうすれば、カジュアルなおしゃれセットアップになるが、この服装だと出版やアパレルなどの企業なら問題ないかもしれないが、ゼネコンや金融などのお堅い職場では叱責される。

出版やアパレルなどの服装規定の緩い職場の服装をさらに緩くさせるのが目的ではなく、お堅い職場に勤める人の健康増進を考えるなら、私服警官ルックなんて推奨すべきでもないし、政府が認可すべきでもない。

例えば、見た目は限りなく革靴に近いが、クッション性や機能性は限りなくスニーカーに近い靴を推奨すべきだし、業界はそういう物を提案すべきで、業界が先んじてなんらスタイリッシュではない私服警官ルックを推奨するというのは「プロ」としていかがなものか。

例えば、アシックス商事が展開する「テクシーリュクス」というシリーズがある。

https://www.asics-trading.co.jp/brand/texcy_luxe/

画像を一つお借りすると、こういう具合である。

これなら、普通のゴム底革靴にしか見えないから金融などのお堅いスーツにも合わせても違和感はない。
決して私服警官には見えない。

もちろんこのほかにもさまざまなブランドがこういう機能性革靴を打ち出している。
あんまり認知されていないが。

行政に服装のことを期待する気なんてさらさらないが、衣料品・靴業界はこういう物を提案、開発すべきで、無理やりに私服警官ルックを「イケてる」と吹聴するのはプロとしての意識があまりにも低いのではないか。

また、ファッション雑誌を除くメディア関係者も極めて服装に疎い人が多いから、私服警官ルックに少し疑問を感じながらも報道してしまう。

とはいうものの、快適な商材に需要が流れるのも事実で、正統派とされる革底の革靴の着用者が減るのは極めて当然である。
クッション性がない上に、雨の日は底から水が染みこんでくる。
「欧米デワー」の出羽守どもや「本物ガー」が何を言おうと知ったこっちゃない。
こんな不便な靴は履きたくない。しかも価格は高い。

それなら安価でクッション性がまだましで底から水も染みこんでこないゴム底の革靴を履いた方が一億倍ましだ。

しかし、ゴム底の革靴も従来のマス需要に安住しすぎてきたのではないかと思う。
もちろん、さまざまな取り組みがこれまでもあったし工夫もあった。
ただ、これまで大衆には認知されなかったし、業界やメーカーも認知されるための努力が不足していた。

今回の「スニーカービズ」はそういうさらに機能性を高めたゴム底革靴の認知を高め、需要を増やす好機なのではないか。

業界はそこに注力すべきで、私服警官や万引き防止Gメンみたいな服装を推奨することでお茶を濁すべきではない。
そういう安易なお茶の濁し方をしてきたから「売れない」という状況に陥っているのではないか。

私服警官ルックが本当に、心底かっこいいと思っているなら、霞が関の官僚がやってみてはどうか。
まず隗より始めよでないか。言い出した人間が手本を見せるべきである。

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アシックスのテクシーリュクスはAmazonでも売ってるよ。

H&MとCOSの比較なんて店舗数も価格帯も違うから意味がない

比較対象の基準がおかしなアパレル業界記事は日本のメディア内では日常茶飯事である。

アパレルブランドの自社EC売上高比率の記事では、なぜかユニクロは外されている。
これはまた別に書いてみるが、アパレルブランドでもっともEC売上高が大きいのがユニクロである。
今期は500億円前後まで成長すると考えられ、単に「EC比率が低い」というだけの理由でユニクロを軽視するのは机上の空論でしかない。
どんなに「EC売上が急増」と報じられているブランドでもEC売上高はユニクロに遠く及んでいない。

比較対象の基準がおかしいのは日本だけかと思っていたら、海外も同じらしい。
まあ、人間なんて国や人種がちがったって愚かしさは同じということだ。

最近はH&M凋落の記事が目につく。
凋落はその通りだろうし、日本で店頭を見ていても勢いもないし、近年に限ったことではなく、もとから売り場が汚い。
内装やら照明にごまかされているが、場末のイズミヤ平場のようにサークルラックには服がパンパンにかけられているし、シングルラックにもパンパンにかけられており、これが普通の量販店平場の内装だったらとてもではないが売れないだろうと思う。

心斎橋筋商店街で見ても、対面にあるユニクロに比べて入店客はかなり少ない。

しかし、H&Mの凋落を報道するのと、比較対象の基準がおかしいことは別だ。
比較するなら正しく比較されなくてはならない。

例えばこの記事だ。

苦戦するH&Mの秘密兵器? 好調な姉妹ブランド「COS」に行ってみた
https://www.businessinsider.jp/post-162835

概略はこれである。

・H&Mは苦戦が続いているが、同社CEOのカール・ヨハン・パーソン氏によると、同グループの別ブランドは好調だ。
・2007年にスタートした「コス(COS)」は、現代的かつタイムレスでミニマリストなデザインを提供し、成功している。
・コスの戦略は、トレンドを追い、大量に販売しようとする姉妹ブランドのH&Mとは異なる。

COSの好調さを報道するのは良いが、どうしてH&Mと比較する必要があるのだろうか。
まったく理解できない。

同じグループ会社とはいえ、店舗数も商品価格もまったく違う。
ちょうどユニクロとセオリーと同じ関係である。

店舗数でいえばH&Mは全世界に3000店以上あるが、COSは全世界で300店ほどしかない。
また商品価格帯でいえばH&Mはユニクロよりも安いくらいだが、COSはこの記事にも書かれてあるように、シルクのジャケットとレザーのバッグはそれぞれ225ドル(約2万4000円)、白いベーシックシャツが9600円である。

一方でアクセサリー類は2000円台から3000円台とそれほど高くはないし、Tシャツも20ドル(2000円台)とそれほど高くはないらしい。

しかし、客層はH&Mとは違う。
とくにこの記事はアメリカで書かれており、アメリカではCOSの客がH&Mに来ることはあってもその逆はない。
客層はまったく違う。

店舗数も客数も異なる2ブランドを比較して何の意味があるのだろうか。

この記事には結論はなく、単なる紹介という要素が強いが、もしこの記事を読んで「低価格ブランドは苦戦でそこそこの値段の服が復活している」なんていう総括をする人がいるならちょっと知能を疑う。

ZARAもそうだが、ユニクロやジーユー、H&Mほど安くはない。
安くはないが昨年あたりまで日本でもかなりの高回転率を誇ってきた。

しかし、ZARAの好調が高額ファッションの復活にはつながっていない。
むしろZARAの国内客は今まで百貨店で買っていた客で、彼らからすると「百貨店ブランドの半額で買えるZARAは割安感がある」という。
実際にアパレル業界人も多くZARAを購入している。

COSの日本での客層も同じで、アメリカも同じではないかと推測される。

高額ファッションは復活しているのではなく、ZARAやCOSなどの割安ブランドが買われているといえる。

欧米でH&MやZARA,GAPのような低価格ブランドが成長したことはそれだけ先進諸国で需要があったということに他ならない。
日本もバブルが崩壊して同じ需要構造になったというだけのことで、別に消費者の感性が退化したわけではない。
可処分所得の減少とか社会構造の変化はあるが、それ以上に、今まで高かった服と見た目が変わらない安い服が出てくればそちらに消費者がなびくのは極めて当然である。

同じような商品が安ければだれだってそちらで買う。

ガンプラもユンケルの錠剤も服も同じだ。
安くて利便性の高い方で大多数は買う。

そういう価格競争に巻き込まれたくなければ、異なる売り方・見せ方をするほかない。
それは、今のアパレル業界人が勘違いしている「品質ガー」とか「生地ガー」とか「エシカルガー」ではない。
そんなもんに魅力を感じるのは少数のマニアだけだ。

少し前から、河合拓さんのブログを拝読しているが、非常にロジカルな河合さんはマッキントッシュのゴム引きコートを愛用しておられて、定期的に修理に出しているとのことだが、このゴム引きコートは読んでみると非常に不便だ。
すぐに劣化するし、おまけに雨に濡れるとダメらしい(なんじゃそりゃw)。
よって、こんな不便で高額な商品は大衆に売れるはずもないが、それに魅力を感じて使い続けておられる河合さんはこの点に関しては非常なマニアだといえる。

しかし、重要なことは、マニア嗜好のままで大衆向け商品を作らないというところで、河合さんはこの点の混同はない。
それは一マニアとしてひっそりと楽しめば良いだけのことで、大衆はブロックテックやワークマンのイージスを支持する。

結局アパレル業界人とメディア業界人が致命的なのはこの使い分けができないところだと思っている。
だからH&MとCOSの比較だとか、EC売上高でユニクロを外すだとか、そういう的外れな議論が横行してしまう。
そこを整理できない限り、アパレル業界もメディア業界も現在の洋服の低価格化の核心に触れることは100万年かかったって不可能だろう。

NOTEを更新~♪
プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nc6e9da2bffeb

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そうそう、的外れと言えばこの本も。
書いている予言がすべて外れているという稀有な本。(笑)
逆の意味で参考になる。

アパレルブランドの広告が失敗する理由

アパレルブランドにとって広告は必要不可欠なもので、ブランド側はもう何十年も出稿し続けているわけだから、本来はすごく広告に詳しいはずである。
しかし、業界紙、編集プロダクションで勤務した経験上でいうと、そういうブランドはほんの一握りしかない。

多くのブランドは、惰性とお付き合いと「何となく」で出稿している。
そしてそれらは広告代理店にお任せである。

例外的な少数を除くと、アパレルブランドの広告担当者のお仕事というのは広告代理店と親しくすることが8割くらいを占めている。
各ブランドにはそれぞれお抱えに近いような代理店が存在する。
1社の場合もあれば、それが複数の場合もある。
要はそれら「お抱え」と親しく付き合って、リサーチからプランからすべてお抱えに丸投げし、出てきたものに対して判断を下すだけであり、その判断自体も担当者の好き嫌いやその上司の好き嫌い程度しか基準がない。
広告担当者か上司(社長である場合も多い)が「これ、ええやん」といえば、それで終わりなのである。
その「ええやん」の基準は好き嫌いだ。

だからアパレルブランドの広告は成功しにくい。

いくつか失敗例を提示する。
当方が広告に携わったのは雑誌媒体なのでそれがメインになる。

以前、某中堅ジーンズメーカーに雑誌「Begin」の広告を相談されたことがある。
このジーンズメーカーに限らず、アパレルブランドの勘違いは、そこそこ人気のあるファッション雑誌に1度広告を掲載すれば、売上が即座に増える・回復すると思っている点である。

で、相談をされたのでこれまた、ファッション雑誌広告に強い某中堅代理店を紹介した。

ジーンズメーカーの予算は年間1000万円、代理店はこの予算で、Beginの年4回掲載を獲得してきたと記憶している。
単なる純広告(綺麗なイメージ写真とブランド名だけの広告)ではなく、タイアップ記事広告だったので、1回あたり200万円以上した。
通常、雑誌では純広告よりもタイアップ記事広告の方が高額になる。

これで決まるかと思った矢先に、メーカーが「以前から懇意にしている地域密着の小規模代理店から出稿したい」と言い出した。
これは本来は厳禁な行為である。
なぜなら、その料金プランはその中堅代理店が掛け合って実現したもので、お抱え代理店が作ったプランではない。
お抱え代理店が本来すべきことは、己らも掛け合って独自のお得感のある料金プランを作成することである。

しかし、お抱え代理店の甘えとそれを許したメーカーの不見識が相まって、結局はそのプランをお抱え代理店からやることになった。

こうなると、次からはその中堅代理店はメーカーには協力しなくなる。当たり前だ。先に不義理をしたのはメーカー側である。

結果からいうとこの広告はさほど効果がなかった。
年4回というのは無名ブランドにとっては掲載回数が少なすぎるし、Beginという雑誌がそれほどの「大部数」を抱えているわけでもないからだ。モノに対する記事や写真での見せ方に定評のある雑誌ではあるが、読者数はそれほど多くないし、読者層とブランドの相性も考慮しなくてはならない。
これはBeginに限らずどのファッション雑誌でも同じだ。
読者数の多寡も重要だが、読者層との相性がさらに重要となり、どんなに大部数のある雑誌でも読者層との相性が悪ければ、まったく反応はない。
ブランドの広告担当者はそこをよく考え、リサーチを自身でし、判断しなくてはならないが、それができている広告担当者は知っている範囲でいえば見たことがない。

結局はこのタイアップを1年か2年でメーカーはやめてしまった。効果もさることながら1000万円の広告費が捻出できなくなったからだ。できなくなったというのは表向きの理由でもしかすると、もったいないと感じたのかもしれない。

これはもっとも非効率的なカネの使い方である。
無名のブランドが年4回ちょろっと広告を掲載したところですぐさま認知度が上がるわけでもない。
もっと回数を多く、長期間にわたって掲載しないと実はファッション雑誌広告には意味がない。
年6回以上で、3年~5年間の広告掲載は必要だろうと思う。

1年や2年でやめてしまえば、その広告費は無駄になる。
このメーカーでいえば、2000万円をドブに捨てたようなものである。
これで従業員を雇うとか、従業員のボーナスを増やすとか、従業員と豪勢な食事を楽しむとか、に使った方がずっと社内の士気が上がる。

こういう失敗をするブランドは本当に珍しくない。アパレルブランドのありふれた日常風景である。

じゃあ、中小代理店を使わずに大手代理店を使えば成功するんじゃないかと考えるのが、アパレルブランドの浅はかさである。

また別のジーンズメーカーが20年くらい前まで10年間、電通を使っていた。
このメーカーはかつて「大手」と呼ばれており、ピーク時の年商は130億円くらいあった。

結果的にいえば、このメーカーの売上高は現在はピーク時の6分の1以下にまで低下している。
完全なる「ドブ金」だったといえる。

年間予算は毎年5000万円~1億円だったと聞いている。

これだけ多額の予算を払えばさぞかし効果があると、アパレル業界では考えるが、結果はまったく逆だ。
それがこのメーカーの凋落が証拠といえる。

アパレル業界からすれば広告宣伝費5000万~1億円というのは多額だが、電通からすれば鼻くそである。
だから電通はこの程度の予算では身を入れて仕事をしない。

例えば、当方とは比べ物にならないほど著名人で広告業界ともかかわりの深い永江一石さんもご自身のブログでこう述べられている。

東京都の豊洲市場における、スーパーお馬鹿なインフルエンサーマーケティングが草ボウボウ
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=37864

電通で5000万というのは鼻くそですので、わたしの推測ではPR会社に丸投げしたものと思います。

とのことで、年間5000万円程度の予算では電通にとっては「どうでも良い」依頼なのである。

文中で述べられている事例は、大手広告代理店ならやらかしそうなウェブマーケティングでの失敗例といえる。
アパレルも行政も理解していないのは、広告代理店には各社それぞれ得意分野と不得意分野があるということで、電通でいうならファッション雑誌やらウェブは苦手で、芸能人のブッキングやビッグイベントやテレビCMは得意なのである。
分野によって代理店を使い分けるのが得策で、大手に少ない金額で丸投げするのが最愚策といえる。

かつての大手ジーンズメーカーも東京都もその最愚策を採用している。
5000万円はまさしく「ドブ金」だ。

かつての大手ジーンズメーカーなんて総額10億円以上を使って、売上高を6分の1以下にまで低下させたのだから愚の骨頂としか言いようがない。

まあ、付け加えておくと、今現在も電通とか博報堂を何十年間も使い続けているのに、中高年以外の層にはまったく知名度が上がらない大手肌着メーカーというのもある。知名度が上がらないどころか、知名度は下がっているのではないかと思う。
これも現在進行形の「ドブ金」の一つの代表事例といえる。

アパレル業界が広告で成功したいのなら、

1、広告というのは多額のカネが必要と強く認識する(節約のために年1回の掲載なんて効果なし)
2、広告代理店にはそれぞれ得手不得手があり、それを見極めて事案ごとに代理店を使い分ける
3、大手に少額のカネで頼めば、必ず手抜きされる

これを徹底的に頭に叩き込まないと、アパレル業界の「ドブ金」事例がさらに積み上がることは間違いない。

NOTEを更新~♪
プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nc6e9da2bffeb

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怪しさと矛盾点が際立つプライベートブランド「ゾゾ」の発表

ようやく、延び延びになっていたZOZOTOWNのプライベートブランド「ZOZO」の一端が発表になった。
どんな商品なのかなと一応興味を持って外野から眺めていたが、第1弾はTシャツ(1200円)とジーンズ(3800円)だと判明し、正直期待外れだと感じた。

価格面でいうと、ユニクロに合わせてきたという感じだが、体型測定スーツ「ZOZOSUIT」で得られることになるであろう26万人の膨大な体型データを使ってTシャツを作る必要があるのかと正直疑問しか感じない。

某人気ブランドの中の人が言っていた「ZOZO社員は本気でユニクロと競合する気でいる」というのは価格設定を見ると、本当だったのだとわかる。ただし、値段が同じくらいだからユニクロと同等には売れない。それなら、今頃イオンもイトーヨーカドーもジーンズメイトももっと衣料品が売れている。

ZOZOSUITが発表されたときには随分と熱狂があったが、発送が延び延びになり、有名人と一部顧客にしか届いていない状況にあり、身の回りでも「発注したけど遅いからもう興味が薄れた」という人もちらほら現れている。

ZOZOSUITの報道や熱狂には違和感があり、その違和感は今でもあるのだが、例えばこういう見出しの記事については本当に疑問しか感じない。

一つ断っておくと、ZOZOSUITのような開発は続けるべきだし、全否定するのはナンセンスだが、逆に持ち上げすぎるのもどうかと思う。

「ミリ単位の精度求めた」ZOZOSUITの体型計測データが生み出すスタートトゥデイの新展開
http://jp.techcrunch.com/2018/01/31/zozo-maezawa-kanayama/

この「ミリ単位の精度」っていうのがちょっとどうかと思う。
例えば、今回発表されたTシャツだ。

Tシャツは、ニット生地で綿100%組成であろうが、生地の構造上伸縮性がある。
5ミリくらいは普通に伸び縮みするから、はっきり言って「ミリ単位の精度」なんてものはTシャツには必要ない。
さらにいえば、縫製する段階で普通に1ミリくらいはズレや誤差がある。
逆にミリ単位の精度で縫製できる工員なんてほとんどいない。

これはセーターでも同じで、5ミリや1センチは伸縮性が生地自体にあるし、縫製やリンキングの段階で1ミリくらいは普通にズレる。

いくらミリ単位でデータを調整しても実際の製造工程では1ミリや2ミリは確実にズレるから無駄である。

こういう発言をする人やこういう記事を書く人は衣料品を精密機器か何かと勘違いしているのではないか。
こういう発言や記事が独り歩きして、ミリ単位の服なんていうユニコーンやグリフォンみたいな奇妙な空想の産物が生まれる。

逆に、そういう「ミリ単位」という発表をある程度信用していたからTシャツという選択には首を傾げてしまう。
ミリ単位が売り物になるのは例えば、スーツ、ワイシャツ、ビジネス用コートなど、である。
こちらは1ミリ・2ミリの精度なんて意味がないが、5ミリや1センチは重要な差になる。

ワイシャツの首回りが1センチ変わればフィット感も見た目も大きく変わる。
昔のソフトスーツは別としてスーツだって1センチの差で大きくシルエットが変わる。

Tシャツやセーターの着心地にミリ単位の精度はまったく必要ないのに、それを選んでしまうところが拍子抜けというか期待外れだった。

またワイドシルエットの商品もミリ単位では着心地は左右されない。

おわかりだろうか?ガウチョパンツやそれのフルレングス版ワイドパンツなんて1ミリや2ミリ細かろうが太かろうが着心地には全く関係ない。
今春にジーユーから発売されているリーバイスセカンドの完コピジージャンだってダボっとした古臭いシルエットだから1ミリ違ったところでまったく着心地には影響しない。

ミリ単位の精度が求められるのは先に挙げたスーツ、ワイシャツ類とタイトシルエットが売り物のカジュアル商品に限られる。それだって実際のところ1ミリや2ミリ程度は誤差があるし縫製段階でズレる。
これが現実の洋服である。

しかし、ZOZOSUITによる採寸がまったく無駄とは思っていない。
むしろ、着心地よりもそのデータを使って「より美しいシルエット」「よりスマートに見えるシルエット」作りに取り組むべきである。

今回の会見の記事はこちらがコンパクトにまとめられている。

“ZOZOSUIT”到着は最大8カ月の遅延も、PB発表で前澤社長が決算会見に登場
https://www.wwdjapan.com/515448

最大8か月の遅延って、今年の8月ごろ届くということだから、はっきり言ってますます興味は薄れる。
忘れたころに届くことになって「ああ、そんなのも頼んでいたっけなあ」という感じになるだろう。

今回、前澤友作・社長は

「注目すべきは値段。メディアにはいろんな予測記事が出ていたが、期待を上回るというか下回るというか、Tシャツが税込1200円、デニムは税込3800円で販売する。過剰に在庫を積み上げるつもりはない。オーダーメードに近い受発注生産を行うことで、価格を下げられた」とコメント。

と話しているが、オーダーメードに近い受注生産だから価格が安いというところがちょっと意味不明だ。
恐らく、在庫を持たずにその都度生産するから、在庫処分での投げ売りが無くなるからその分販売定価を下げたということなのだろうが、その都度縫製する方が普通は縫製工賃は高くなる。
極端な話、一挙に100枚縫製した方が、1枚ずつその都度縫製するよりも工賃はずっと安くなる。
逆に1枚とか2枚しか縫わないサンプル縫製の工賃は最低でも5000円とか1万円くらいはする。
どう考えてもシステムに矛盾がある。
しかも生地は、専用生地ならどこかの問屋が備蓄しているとしか考えられず、専用生地でないなら、市場に流通している「在り物」の定番
生地をその都度購入することになる。
「在り物」の定番生地ならはっきり言ってユニクロにはまったく生地の値打ちではかなわないが、そのことは理解しているのだろうか?

また

ヤマト運輸の配送運賃変更による経費15億円やPB業務委託の13億5000万円などのコストが発生したにもかかわらず、増収増益を記録した。

という箇所があるが、やはりPB製造にはOEMやODMを使っているということだろうか。
たしか、工場なんかも買ったというような記事も読んだ記憶があるが、PB業務委託13・5億円ということは製造も委託していると考えられ、それはとりもなおさずOEM・ODMを使用したということになる。

なんだか生産システムも製造も矛盾だらけの内容だが、ますます実態の見えない怪しげなプロジェクトだとしか感じられなくなっている。
各メディアの記事の書き方が悪いのか、説明した方の説明が悪いのかわからないが、その結果、怪しさと矛盾点だけが際立ってしまっている。

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大手広告代理店を使って残念な結果を甘受する残念な国内アパレル 企業
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