南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

素材

業界人ですら衣料品への知識が浅いのだから、消費者の知識はさらに浅くて当然

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 断続的に売り場に立っていると、毎日必ず着用しているものなのに、一般消費者は衣料品に関する知識は驚くほど持ち合わせていないことがわかる。

いわゆるファッソニスタがいうようなテイストやらデザインやらシェイプやらに関してではなく、生地に関することだったり洗濯に関することだったりで、こちらの方はファッソニスタの御託とは異なり、生活とは密接にリンクしているはずなのだが。

先日、50代後半と思われる黒で統一したモードっぽい服装をしたご婦人が商品を買った。
非常に言葉遣いも丁寧な方だった。
買ったのは、いわゆる真っ黒のストレッチパンツである。

話は逸れるが、真っ黒のストレッチパンツとストレッチのブラックデニムパンツは、厳密にいえば生地が異なる。

生地の知識を持ち合わせている方は読み飛ばしてもらいたい。

通常の真っ黒のストレッチパンツもストレッチブラックデニムパンツも「綾織り」という織り方で織られた生地である。
織り方としては同じである。

しかし、真っ黒のストレッチパンツは経糸(たていと)・緯糸(よこいと)ともに黒い糸で織られているが、ブラックデニムは、経糸が黒・緯糸が白である。

真っ黒のストレッチパンツに使われる生地は、ツイルとかカツラギとか呼ばれる綾織りの生地が多い。

通常のストレッチパンツは綿が主体でそこにストレッチ素材が交織されている場合が多い。
表示としては綿98%・ポリウレタン(正確にはポリウレタン弾性繊維)2%くらいのものが主流だ。

そのご婦人が買ったのは、まさに綿98%・ポリウレタン2%という組成の黒いカツラギパンツだった。

そのとき、ご婦人がこう質問された。
「このズボンは洗濯すると色落ちしますか?」と。

恐らくブルーデニムのように、他の洗濯物に色移りするかという意味だったと思うのだが、カツラギの多くは移染しにくいので、そのように答えた。

しかし、質問にはもう一つの意味もあったようで、「洗濯をすると、ブラックが薄くなりますか?」との意味も含んでいた。

こちらにはちょっと驚かざるを得なかった。

なぜなら、50代後半ということはこれまで何度も様々な衣服を洗濯してこられたはずだ。
(もしかしたら超金持ちで、「アテクシは洗濯なんてしないわ、毎日全部クリーング屋に任せています」という人なのかもしれないが)

綿主体の衣服は洗濯を繰り返せば徐々に色落ちするのは、少し洗濯をしたことがある人ならそれは常識として持ち合わせているはずである。
にもかかわらず、それを質問してくるということは、それを認識せずにその御年まで生きてこられたということになる。

これも自分の経験からだが、綿素材で洗濯を繰り返せば徐々に色落ちすることは避けられない。
ポリエステル素材なら家庭洗濯を繰り返しても色落ちはほとんどない。

洗濯層の中で他の衣類と擦れて摩擦することがさらに色落ちに拍車をかけているといえる。
だから、ネットに入れて洗濯をすれば、色落ちは幾分かは緩和できる。

だから、黒や紺などの濃色の綿素材衣服は必ず洗濯ネットに入れて洗濯をするようにしている。

そのように伝えた。

それにしても、一般消費者の生地・洗濯に関する知識のなさには驚かされる。
一般消費者が悪いのではなく、それを伝えてこなかった・上手く伝えられなかった業界に責任があるのではないかと思う。

家事を得意とする方は、そういう法則を自分で発見されているようだが、それはどちらかというと少数派だ。
多くの人は、綿素材で洗濯を繰り返せば色落ちするかどうかすら知らない。

そこらあたりを啓蒙するような活動を業界がしてみてはどうだろうか?
モンスタークレーマー対策としては、すべての衣服は洗濯できないという表示にするに越したことはないのだが。

家庭での手入れのやり方がわかると、もしかしたら衣料品の購入も多少は増えるかもしれない。

自分も含めて業界にいる人の知識のあやふやさも業界の衰退を早めているのではないかとも思う。

先日も有名なファッションブロガーが、織物(布帛)と編み物(ジャージ)を間違うということがあった。昨今では、洋服づくりに直接携わっているデザイナーや企画担当者までがこの手の知識を持ち合わせなくなっている。

スポーツウェアメーカーの若手社員が、業界紙記者に対して「ポリエステルって何ですか?」と質問してきたこともあるくらいだ。

自動車やらパソコンやらの業界でそういうことはあるのだろうか?
傍から見ていると、衣料品業界よりは随分と各人がしっかりした商品知識を持ち合わせているように見えるのだが。


オムニチャネルが云々とか、サステナビリティがどうのこうのとかエシカルがナンタラとか、そんな宙に浮いたようなことよりも、崩れかけた足元を固め直す方が先決ではないのか?
発射する土台が崩れかけているのに、空中戦ばかり志向していても飛び立つことすらできないのではないか。

業界が衰退しているのは、土台となる商品知識が崩れかけているからではないのか?


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「吸水速乾」を「部屋干し速乾」と言い換えると新しい需要が生まれた

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 そろそろ暑くなってきた。嫌な季節が始まった。
筆者は暑さが苦手である。できれば夏がない方が良い。
そうはいっても夏はやってくるから、我慢するしかない。

暑くなると、各社はこぞって「吸水速乾機能」を持った洋服を発売するが、個人的にはあまりこの機能が夏に必要だとは思っていない。

というのは、以前にも書いたが、吸水速乾機能を持った肌着を着用するとたしかに汗は吸うが、逆に吸い過ぎて肌着の上に着たシャツが汗でびしょ濡れになってしまうからだ。
吸水速乾肌着を着るなら、上に着るシャツもジャケットもすべて吸水速乾製品でそろえないと意味が無い。

しかし、吸水速乾機能は重宝であることは間違いない。
洗濯をすると乾くのが早い。

ありふれた機能に対して、別の角度からの見方を与えると、それは新しい商品になり、新しい需要が生まれる。
ありふれた吸水速乾機能でも、「洗濯をしたら早く乾きます」という売り方なら新しい需要が生まれる。

こういう売り方が上手いと思うのは、「ディーパーズウェア」ブランドを展開するオールユアーズである。

それについて、ウェブメディアのインディペンドに先日寄稿した。

「必要」に気づき、「形(かたち)」にする “ALL YOURS”
https://independ.tokyo/?p=3091

ブランド立ち上げ時から親しくさせてもらっているが、このブランドはそういう「売り方」が上手い。
このブランドのヒット商品に速乾の「ファストパス」というラインがある。

キャッチコピーは

「真冬に部屋干ししても3時間で乾きます」

というものである。

IMG_2584

(ファストパスのツナギ)


真冬の部屋干しにそれほどの需要があるのかと疑問を感じたが、都心で独り暮らしをする人や、二人暮らしの共働き夫婦などは、洗濯物は部屋干しすることが多いから、ありがたい機能ということになる。

祖父母や大きくなった子供と同居していれば、洗濯を外に干しても雨が降ったり日が暮れりすれば、誰かが取り入れてくれる。
しかし、一人暮らしや共働き夫婦はそうはいかないから、必然的ににわか雨なんかを警戒するなら部屋干しすることが増える。

真夏だと室温も高いから部屋干しでも5時間くらいすれば洗濯物は乾くが、真冬はそうはいかない。
たまに自分も冬の雨の日に部屋干しするが、なかなか乾かない。

そういうときに、この機能は便利だからヒット商品になっているという。

じゃあ、わざわざ洗濯用に新素材を開発したのかというとそうではない。
実は、これは既存の吸水速乾素材なのである。

「吸水速乾素材ですよ」というと夏場しか売れないが、「部屋干し用の速乾素材ですよ」というと一年中売れる。

現在のアパレル業界に欠けているのはこの「視点の転換」「売り方の工夫」だろう。

多くのブランドは固定概念に凝り固まっているから、視点の転換なんてできずにいる。
「売り方の工夫」ということになると、規模やシステムを無視してユニクロに価格追随するか、伝わらない広告をファッション雑誌に掲載するか、どこぞのブランドみたいに低価格な日本製を打ち出すか、くらいしかない。

あとは、マニア・ニッチ層に向けた「物作りの取り組み」を過度にクローズアップするかである。

そしてそのどれもが効果が出ていない。

この4つの手法はありきたりになっており、ちょっとやそっとでは消費者の注意を喚起できない。
それはやっているブランド側が痛感しているだろう。
痛感していないとしたらそれはブランドの構成員と経営者の認識力が著しく低いというしかない。

国内のアパレルブランドの場合、粗悪品は除いて、低価格品とはいえそれなりの品質になってしまっているのだから、ミクロな縫製仕様を過度にアピールしてもよほどのマニア以外には響かない。

ありきたりな既存の「吸水速乾素材」を、新たな切り口で「部屋干し専用素材」にするような発想力、売り方を身に付ける必要があるのではないか。


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帝人フロンティアが和装向け合繊素材ブランドを発表

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 先日、帝人フロンティから着物向けの機能素材ブランドが発表された。

http://www2.teijin-frontier.com/news/161115.html

「華月™」は、これまで当社がスポーツウェアやファッション素材の開発を通して培ってきた技術を活かし、それらを日本の着物と融合させることにより新たな価値を創造する和装向け機能素材群の新ブランドです。

・家庭用洗濯機で製品の丸洗いが可能
・洗濯後にノーアイロンで着用可能
・吸汗・速乾性に優れる
・着用時にシワになりにくい
・色あせ・黄変の心配が少ない
・保存時の虫くい・カビの発生などの心配が少ない

とある。
いわゆるポリエステルなどの合繊を使用した和装向けの機能素材ということになる。

斬新さや新規性に欠けることが多い帝人フロンティアとしては思い切った取り組みだと思うし、率直に評価したい。

着物を着用しない人間からすると、着物はやたらとハードルが高い。

1、価格が高い
2、洗濯、メンテナンス、保管方法がめんどくさい
3、着慣れた人は別として自分で着ることができない
4、動きにくい

などなどがあるから、個人的には一生着物を着ることはないと思う。

が、それでも和装業界として生きていかねばならない人々もいるから、やはり市場規模は最低限として現在の3000億円内外は維持しなくてはならない。
できれば、市場規模、着用人口を増やしたいのだろうが、現在のすべてを墨守したままで、市場規模・着用人口を増やしたいというのは、筆者からすれば単なるワガママにしか映らない。

先ほど挙げた1~4のうちの少なくともどれか1つは改良されなくては、市場規模・着用人口は絶対に増えない。

今回の帝人フロンティアの提案は、2を解決することができる。
もしかしたら1も解決できるかもしれない。

ちなみに帝人フロンティアは

「華月™」は 2017年夏の浴衣用途から展開を開始し、初年度(2017年度)は3千万円、2018年度は6千万円、2020年度には1億円の売上を目指します。

としており、まあ、順当な規模設定ではないかと思う。
それほど巨額に売れる要素が着物というジャンルにはない。

以前にもこのブログで何度か和装のことを書いているが、着用しない筆者からすると、シルクは高級で単価が高い反面、「洗濯、メンテナンス、保管方法が煩雑」というイメージがあり、よほどの数寄者でなければわざわざ手を出そうとは思わないと感じる。

じゃあ、シルク以外の素材、例えば綿や合繊などを使った着物をもっと売り出せばどうかと思って書いてみたのだが、案の定、和装関係者から「昔から合繊着物はあったが、売れなかった」という書き込みがあり、その行間には「だからシルクが売りたい」という思いがにじみ出ていて鼻白んだ。

まだ、こんなことを言っているのか、往年の栄華が忘れらないんだな。あほくさ。

というのが筆者の感想である。

今までの着物と商法では売れなくなっているんだから、商材か売り方かを最低でもどちらかを変えなくては絶対に売れない。個人的には両方を変えるべきだと思っているが。

ところで、シルク以外の素材の着物は昔から売れなかったというのは本当だろうか?
矢野経済研究所のこんなグラフがある。

平成25年までしかないが、26年、27年も着物市場規模はそれほど変わっていないのでほぼ横ばいが続くと推測される。

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正絹の着物の売れ行きはピーク時は1兆2000億円を越えていたが、今は2000億円にまで低下している。実に84%減である。

正絹以外の着物の売れ行きはピーク時は2000億円強しかなかったが、今でも1000億円くらいはある。こちらも減っているが50%減程度にとどまっている。

正絹と正絹以外の着物の売れ行きはピーク時だと6倍前後あったが、今では2倍にまで差は縮まっている。

個々の店やメーカーの事情は異なるかもしれないが、業界全体で見た場合、異素材(正絹以外)の着物の売れ行きはたしかに減っているが、正絹の着物よりも減り幅が小さく、現在では正絹着物の売上高との差はかなり縮まっているといえる。

これでもまだ「異素材着物は今も昔も売れない」といえるのだろうか。

それほどに正絹着物が素晴らしいならなぜ売上高84%減になるほどに消費者に見放されているのか。

このグラフは売上高なので、正絹着物の単価の高さと異素材着物の安さを考慮すると、もしかしたら販売枚数は2倍も差がないかもしれない。販売枚数の差はもっと小さいのではないかとも考えられる。

「正絹のスバラシサガー」「本物ガー」という人々は、どうしてそこまで販売量が減ったのかを冷静に直視する必要がある。

やたらと高い着物の入門ハードルを下げることが、着用人口の増加に寄与すると思うが、このまま商業的には滅んでしまって無形文化財のような存在を業界が目指したいなら、それはそれで一つの選択だろう。筆者のような部外者がとやかく言うことではない。

しかし、もっと売りたい・着用人口を増やしたいと本気で考えるなら、帝人フロンティアのようなアプローチも考えるべきだろう。

繰り返すが、「今までのままで売れたい」というのは根拠なき願望で、実現不可能な夢物語としかいえない。

着物 東レシルック 白無地 バイアス 半衿
京都半衿風呂敷和装卸協同組合








「使用素材」や「製造方法」だけに頼った売り方では通用しない時代

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 固定客、ロイヤルカスタマーを獲得できているアパレル企業、ブランドは別として、これまで通り一遍の「素材」や「製法」の打ち出しだけで価値を演出してきたアパレル企業、ブランドは取り巻く状況が年々厳しさが増している。

例えば、先日のファーストリテイリングと島精機製作所による合弁会社設立である。
これによって「ホールガーメント」という「製法」だけで商品価値をアピールしていたブランドは軒並み苦戦することになるだろう。

また、ハリスツイードの雑貨がついにダイソーにも登場した。

ダイソーにあの「ハリスツイード」がついに登場しました!~お値段もお手頃価格で手に入りやすい~
http://more.hpplus.jp/morehapi/article/sachiko/fashion_news/16138?page=1

キーケースや財布などサイズの小さな雑貨に限定されているようで、価格は500円だという。

ハリスツイードは、しまむらでも靴やバッグなどの雑貨に使用されて、にわかに大衆感が急上昇していたが、このダイソーとの取り組みはそれを極限まで推し進めることになってしまうだろう。

もちろん、高額なハリスツイード商品とは異なるし、何よりも小サイズ雑貨(ダイソーの場合)や靴やバッグ(しまむらの場合)での取り組みだから生地の使用量(用尺)は少ない。それゆえに価格も抑えられるのだが、一般消費者にはそんなことは知られていない。
あの高額な商品もダイソーの財布も「同じハリスツイード」として映ってしまう。

だから、「単にハリスツイードだから」という理由だけで高額な値段をつけていたブランドや、そういう売り方しかできなかった店の商品は軒並み売れにくくなるだろう。

別に客は「ハリスツイード」という生地を買いに来ているわけではない。
店やブランドのファンだったり、製品のデザインやコーディネイト提案などに惹かれるのが購入動機となる。
ハリスツイードという生地ブランドは最後にそれを後押しする要素である。

そういう売り方をしているブランドや店の影響は軽微だろうが、逆に「ハリスツイード」を前面に打ち出して「とにかくハリスツイードだからイケてるんですよ」なんて売り方をする店やブランドはダイソーの使用でとどめを刺されるのではないか。

カイハラデニムだって同じだ。
もちろんカイハラが製造するデニム生地にもグレードがピンキリである。
厚さだとか色合いもさまざまあり、ブルーだけで数百種類がある。

しかし、一般消費者にはそんなことはあまり知られていない。
「カイハラデニムだから良いんです」なんて売り方しかできない店やブランドは、ユニクロに脅かされるのは当然だろう。

コーンデニムだってGAPやグローバルワークに並んでいるし、しかも期末に投げ売りされる。

「コーンデニム使用」ということだけを前面に打ち出しているブランドでは売れなくなるのは当たり前である。

カシミヤだって同じだ。
グレードはピンキリだし、製品の良し悪しもピンキリだが、それでも「カシミヤだから良いんです」としか言えないようなブランドや店はユニクロやらGMSやらの製品と比較されてしまうことになる。

ダウンジャケットしかりである。


すべての製品はコモディティ化する。衣料品も例外ではない。

まだまだ素材ブランドは残っている。クールマックスだとかコーデュラナイロンだとかゴアテックスだとか。
しかし、いずれはコモディティ化すると考えておいたほうが良いのではないだろうか。

「コモディティ化反対」とか「ファストファッション不買」とかそんなキャンペーンをいくらやったって無意味である。
自動車もテレビも冷蔵庫も洗濯機もパソコンもスマホもすべてコモディティ化して大衆に普及した。
どれもこれも開発当時に比べると販売価格は何分の1にまで低下している。

なぜ、衣料品だけが例外に成りうると考えられるのか、その思考方法がまったく間違っている。

コモディティ化に巻き込まれないためには、ブランドなり店なりがロイヤルカスタマーを作るほかない。
その手法は千差万別だろう。それぞれのブランドや店に適した手法があるはずだ。

その手法は何なのかを各社・各ブランド・各店舗が考える必要がある。

もう「素材」や「製法」だけに頼った売り方は通用しない。
ダイソーのハリスツイード雑貨はそのことを象徴しているのではないか。












伝統工芸を守るために伝統工芸を変化させてみてはどうか?

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 先日、西陣絣なる生地があるのを初めて知った。
通常、西陣というと西陣織が思い浮かぶのだが絣があるのは知らなかった。
西陣らしくシルクでの絣だということである。

で、知名度が低いのと比例して作り手が激減しているそうで、絣加工をする職人は7人くらいしか。
年齢は65歳以上ばかりで、40代の職人が一人だけしかいないそうだ。

このままでは滅んでしまうということで、従来の和装用途以外の商品開発が進められている。

http://itohen-univers.com/

メインはストールで、変わり種としてはクラウドファンディング用としてクラッチバッグも提案されている。

西陣絣に限らず、他の伝統工芸でも伝承者が減っているのはそれで食える可能性が低いからだ。
収入がほとんどないことが容易に予想される分野にわざわざ足を踏み入れる人はあまりいない。

伝統工芸が伝承者を育てていこうと思えば、それを「食える産業」にする必要がある。

今まで通りの商品や用途に期待していても無駄である。回復できるならとっくに売れ行きは回復しているはずだ。
ここまで衰退するのに何十年もかかっているのだから、今までの商品や用途で売上高が回復できるならその間に回復できていたはずである。できなかったということは今までの商品や用途ではもはや需要は増えないということである。

このストールやクラッチバッグはその第1歩と言えるだろう。

ただ、個人的に言わせてもらうと、シルク100%のストールとクラッチバッグは広く需要を喚起するにはイマイチ弱いと思う。
理由はシルクという素材である。

シルクという素材は昔から使われてきた素材だが、現代生活において一般庶民が使うにはちょっと食指が動きにくい。個人的な独断と偏見だが、シルク素材のアイテムは和装にせよ洋装にせよ、ちょっと買う気が起きない。
理由は保管とメンテナンスがめんどくさいからだ。

綿や麻のように気軽に洗濯機で洗濯ができない。
また保管にも気を付けないと虫に食われる。
洗濯をしない場合、汗や皮脂による変色が必ず起きる。
ストールは首筋に巻くため、汗と皮脂がかなり付着する。
気軽に洗濯できないと、変色するのは必至だろう。

また摩擦にも弱いため、常に手のひらで摩擦されるクラッチバッグには向かない。

ユニクロがシルクを大々的に提案したことがあったが、今は継続していない。
価格が高かったわけではない。2900~5900円程度だったから、高すぎて敬遠されたのではないと思う。

継続していないということは売れなかったと考えられるが、売れなかった理由は洗濯・保管が面倒だったからではないかと思う。

となると、西陣絣以外でも絹織物系はここをクリアしないと大衆向けの商品にはならないということである。

ここから3通りの考え方ができる。

1、これまで通りの技法とシルク素材によって、洋装向けの新商品開発を続ける
2、従来技法のエッセンスだけを用いて、扱いやすい素材に付与して、新商品開発を続ける
3、技法も商材もこれまで通りで何も変化させない

である。
3は論外だろう。早晩絶対に滅ぶ。

日本人の多くは1を選ぶと思うのだが、筆者は2の方法を選んだ方が効率的ではないかと考える。

例えば、綿や麻、ポリエステルやナイロンといった耐久性があってメンテナンスも楽な素材に乗せ換えて商品開発をしたらどうだろう。
それはもちろん、純粋な西陣絣ではなくなるが、伝統的な西陣絣はハイエンドモデルとしてそのまま細々と、新商品で儲けた金で作り続ければ良いのではないか。

伝統的な西陣絣を保存するために、新商品で金を儲けるというスタイルがもっとも効率的で現実的ではないかと思う。

繊維以外の他の伝統産業も同じようにしてみてはどうか。
何も変化させたくない人はそのままでいれば良いと思うが、今よりも売りたいと考えるなら、伝統的技法を少しだけ用いた新商材を開発すべきだと思う。

銅板を槌で叩いて鍋を作るという伝統工芸があるが、その技法は保存して伝承すべきだと思うが、新商品はその技法をフルに活用する必要はない。何かエッセンスだけを用いて製造してはどうか。そのほうが製造コストも安くなり、販売価格も下げられる。

いくら伝統技法だからといって銅の鍋が3万円とか5万円もしていたら、好事家や数寄者以外はあまり買わない。必然的に需要は増えない。

需要を増やそうと思うなら、簡易版をもう少し低価格(激安ではなく)で販売してみてはどうか。

もちろん鍋以外の商品も開発してだ。

こういう考え方には反対が多いのは知っているが、従来通りに何も変わらないままなら需要が増えることはない。そこに「臭い物作り物語」を100倍盛りにして売り出そうというのだろうが、要らない物は要らない。

例えば、デニム生地だが、国内でデニム生地が製造できるようになったのは1970年代である。
備後絣製造工場から発展させてデニム生地工場となった。
このときあくまでも「ワシらは伝統の備後絣を墨守し続ける」と言っていれば、今頃はデニム生地も作られていなかっただろうし、この工場はとっくにつぶれていただろう。

伝統を基にそれを変化工夫させることが本当の伝統ではないかと思う。
そして、そこで稼げた収益で、伝統的な技法を守り、伝統的な商材を作り続ければ良いのではないかと思う。

まあ、そんなわけで西陣絣の今後の変化に期待したい。















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