南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

百貨店

改革路線が潰されて大規模リストラが始まる可能性も

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 三越伊勢丹HDの大西洋社長が電撃解任される直接的な働きかけは労働組合からだった。

これを見るにつけ、一連の大西改革は現場社員にとっては苦痛だったのだろうと察せられる。
日経新聞の記事によると、少ない人員に対して次々と新しい仕事を積み上げられて現場は疲弊していたとされているが、まあ、それはその通りだったのだろう。

2012年から始まった大西改革の眼目は、

1、新規ビジネスを作り出すこと
2、従業員の意識改革

にあった。その次の段階もあったのではないかと思われるが、もうそれが形になることはない。

まず、1についてだが、外食やブライダルなどとの合弁会社設立、エステや旅行会社のM&A(企業買収)などを実行した。

EC強化やファッションヘッドラインという自社ウェブメディアの立ち上げもあった。

個々の事例を見ると、その意図がよく分からないものもあるし、効果があったとは言い難いものもある。

三越伊勢丹HDの百貨店依存比率は92%に及ぶ。
文字通り、「百貨店のみの一本足打法」である。
その一方で、百貨店事業の利益率は1%強しかなく、Jフロントリテイリングや高島屋に比べて格段に低い。

きらびやかな伊勢丹新宿本店のイメージや大西改革による話題性であまり注目されてこなかったが、足元はすでに崩れ始めていたといえる。

経営者ならここで選択が迫られる。

1、大規模な解雇を含めたリストラを行う
2、大規模解雇を回避するならほかの成長エンジンを作る

である。

実際に6回ほどインタビューをした個人的感想をいえば、大西社長は百貨店が大好きだった。
Jフロントリテイリングのような「脱百貨店」を唱えるつもりは毛頭なかった。

そうなると、大好きな百貨店を守り、雇用を守ろうとすると「百貨店自体を成長させる」か「百貨店事業以外の新規事業を立ち上げ、ホールディングス全体の収益をかさ上げする」という方針にならざるを得ない。

そして、大西社長は後者を選んだ。

小島健輔さんが、「大規模なリストラを先延ばしして受け皿としての新規事業作りを行っていた」と指摘されるのは、言い方は別として、そういう側面も十分にあったと考えられる。

「百貨店自体を成長させる」という構想は不可能だったのだろうかという疑問を抱く人もいるかもしれないが、これはかなり難しいのではないかと思う。
それほど簡単にできるなら、とっくの昔にどこぞの百貨店が実践しているだろう。


状況から大西社長の思考をたどると、

百貨店を守るために新規事業で収益をかさ上げする

そのためには従業員の意識改革が必要だ

という結論が導き出されたのだろうと思う。

いくつかの百貨店で催事販売をしたり、取材した感想でいうと、百貨店の従業員や管理職者は保守的でスピード感がなくて、危機感のない人が多い。(全員がそうだとは言わない)

大西社長はその体質に危機感を持ったのだろう。

自身の過去の著書でも、昨年のインタビューでも盛んに「スピードが遅い」「危機感がなさすぎる」を連発されている。

他業種の成長企業のスピード感を取り入れることを最重要課題としていた。
それが従業員にとっては苦痛だったのだろうと想像できる。

百貨店業界の危機を煽られるのも苦痛だったのかもしれない。

それでも状況を眺めると、百貨店業界は危機に瀕しているといえる。
売上高が6兆円を割り込み、地方店の閉店や撤退、倒産、営業譲渡が相次いでいる。

だからこそ、スピードを上げて新規事業や百貨店改革を成し遂げたかったのだろう。
もう百貨店にはのんびりゆっくり改革している時間はない、という思いだったのだろう。

今回の電撃解任は労働組合と現場従業員によるものなので、後任社長は当然、現場に対する配慮を強いられ、大規模で急激な改革はできにくくなる。
なぜなら、また労働組合と現場によって電撃解任される恐れがあるからだ。

自然と、改革のスピードは遅くなるし、改革自体がなくなる可能性もある。

違法なブラック経営者に従業員がNOを突き付けることは当然の権利だし、そうすべきである。

しかし、今回の場合はそれに相当するのかどうか。
むしろ、従業員の収入源である会社そのものが業績低迷をすると、大規模解雇をせざるを得なくなる。
百貨店という旧態依然とした企業が、従来通りのやり方では生き残れないというのは衆目の一致するところである。

大西改革をつぶしたことで却って大規模解雇を招きかねず、従業員は自分たちを窮地に追い込んだのかもしれない。

仮に、今後、三越伊勢丹が従来路線に戻るとするなら、その業績は必ず今以上に低迷する。
そうなった際には問答無用の大規模解雇が始まるだろう。
その時に労働組合が「雇用を守れ」と言い出してもそれは、後の祭りでしかない。












三越伊勢丹の従業員は「変わらないこと」を選んだように見える

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 三越伊勢丹ホールディングスの今回の社長解任劇は、本当に興味深い。
大西社長を追い落としたのは誰だったのかというところに注目が集まっていたが、日経新聞の報道によるとそれは労働組合だったとのことである。

なんという強大な労組なのだろうか。

三越伊勢丹、大西改革に労組反旗 石塚会長が辞任迫る
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07I3B_X00C17A3EA2000/?dg=1&nf=1

百貨店最大手、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の経営トップが代わる。7日、大西洋社長(61)が辞任し、杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で昇格すると発表した。大西氏は収益の柱を増やそうと、多くの新規事業を進めてきた。これに現場が反発して、労働組合が辞任を要求。経営から距離を置きつつあった石塚邦雄会長(67)が辞任を迫る異常事態だった。


とのことである。

記事自体は途中までしか読めないが、この報道を元にまとめられたこのブログでおおよその顛末はわかる。

[三越伊勢丹社長降ろしのドラマが深い] 三越伊勢丹HDの労組が大西改革に反旗。辞任というより降ろされたに等しい。次期社長の杉江氏は融和派だが、また百貨店一本足経営に戻るつもりなのか、今後どうするのか。
http://www.okatai.com/blog/2017/03/07/mitsukoshi-isetan-rouso-onishi-sugie/

新しい試みに現場社員の負荷は増え続けていたが、インバウンド(訪日外国人)や富裕層による消費が拡大している局面はよかった

その効果がはがれ落ちると「『新規事業で収益を上げろ』と厳命されても対応できない」(関係者)と、隠れていたひずみが表面化

本業の立て直しに追われている中、最終的には労働組合の関係者が石塚氏に泣きつき、改善を強く要求する事態となった

事態が動き出したのは4日午後

「現場がもうもたない。構造改革による混乱の責任をとりやめてもらいたい」
三越伊勢丹HD本社の一室で石塚氏は大西氏にこう切り出し辞表を差し出した
 
なんと労働組合関係者が会長に直訴。で、会長が大西氏に、辞めてくれという事態。完全に社長降ろしの現場。


とのことである。

当初は、三越派による巻き返しかと考えられていたが、労組と現場が反発していたということで、もちろん、それに同調した上層部もいたことだろう。

三越伊勢丹に限らず、複数の百貨店で催事販売をした経験からいうと、百貨店の社員は基本的に保守的で新たな試みを嫌う人が多いと感じる。

矢継ぎ早にさまざまな改革が行われれば、当然それに対する現場からの反発はあっただろうと推察される。
また、大西社長自身もそれを知っていたので、なかなか現場が変わらないという発言もあった。

大西支持者の社員もいたが、結局は少数派だったということだろう。

著書でも買いているように、大西社長はとにかくスピードを上げることを重視した。
個人的な経験で言っても、百貨店はなかなか物事が決まりにくい。

そういう多くの社員はスピード化に反発を覚えたのだろう。

それでも実際のところは、社員が反発するほどのスピード化でもなく、三越伊勢丹との合弁相手の会社に取材をしたこともあるが、やっぱり百貨店の意思決定は遅いという感想を相手が抱いていた。

一例でいえば、出張でもそちらは即決するが、三越伊勢丹はなかなかその稟議が通らない。

現場からするとスピード化を強制されて苦痛だったのかもしれないが、異業種と比べるとまだまだ遅いのが実情である。

各報道で指摘されているように、三越伊勢丹の業績悪化に対する大西社長の経営責任はある。
4年以上も社長に就いていたのだから、責任追及されることは仕方がないだろう。

それでも百貨店事業比率が高すぎ、その百貨店事業そのものが苦戦に転じた状況下で、多角化という方針は完全なる間違いとは言えないのではないかと個人的には思う。

逆に新社長に就任する杉江俊彦専務が、「本業回帰」というメッセージを発しておられるが、大丈夫だろうかと疑問を感じる。
大西社長も多角化とは言いながら、本質的には百貨店重視の姿勢であり、その結果が現在の業績悪化なのである。これ以上さらに百貨店を重視するという姿勢で効果が出るのだろうか。

また、今回の解任劇で三越伊勢丹のイメージは悪化した。
この悪イメージを逆転させるのは簡単なことではない。

単なる本業回帰だけではまったく効果がないだろう。

これから中期的には三越伊勢丹にかなり厳しい状況が続くだろうと見ているが、果たしてどうなることやら。







大西洋漂流76日間 (ハヤカワ文庫NF)
スティーヴン キャラハン
早川書房
1999-05






百貨店事業依存度が高く、百貨店事業収益率が低い三越伊勢丹

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 三越伊勢丹HDの大西洋社長退任が話題となったが、もっとも内情を詳細に分析して報道しているのは、この日経ビジネスオンラインの記事である。

三越伊勢丹の社長退任、頼みの「新宿」低迷響く
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/030600602/?i_cid=nbpnbo_tp&rt=nocnt

まず、前提として、辞任を申し出たのではなく、解任動議が決議される予定ということである。

三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長が月内に退任する見通しとなった。同社は7日に開く取締役会で「代表取締役の異動について決議する予定」と発表した。

とのことで、いわば反対派によるクー・デタとたとえることができるだろう。

この記事でも触れられているように、5月の決算発表に向けて新経営計画を策定中だったということで、自ら退任する意思は微塵もなかったと考えることができる。
なにせ、新経営計画策定中という話は、2月に耳にしているからだ。

また先週金曜日には自身が地方で講演されていたという情報もあり、退任の決議は寝耳に水だったのではないかと推測される。

それだけ、反対派は周到に根回しをしていたということであり、社内政治という点においては反対派が1枚も2枚も上だったということになる。

立ち上げて事業が始まったばかりの数々の合弁会社、数々の買収企業、そして、大西社長の肝煎りで行った中途採用の人員などは、どうなるのだろうか。
おそらく、反対派はこれらの事柄を継承しないと考えられる。

なぜなら、継承するつもりなら大西社長を失脚させる必要はないからだ。

退任後、会長にもならないということは文字通りの失脚である。

さて、この記事では三越伊勢丹の事業を数値で分析しているがなかなか秀逸である。
百貨店の盟主と目されている三越伊勢丹だが、その内実は崩壊の一歩手前という印象だ。

記事から引用抜粋してみよう。

高島屋、Jフロントリテイリング、三越伊勢丹の3社を比較している。

三越伊勢丹HDの2016年4月~12月期の売上高は約9300億円。このうち百貨店事業が約8500億円を占め、比率は約92%に達する。同じく第3四半期までの累計で、同比率が約65%のJフロント、同約87%の高島屋と比較しても、百貨店依存度が高いことが分かる。

一方、百貨店事業の利益率は三越伊勢丹HDが最も低い。百貨店事業で稼いだ利益を同売上高で割った百貨店利益率は1.04%しかなく、Jフロント(同2.43%)の半分以下で、高島屋(同1.22%)にも届かない。


現在「衣料品不況」などの逆風もあって、流通業界の中でも、百貨店の厳しさは際立つ。

三越伊勢丹HDは、百貨店事業に集中しながら、その事業の利益率が低いという、危機的な状況にあるのだ。2016年1月以降の株価を見ると、他の2社と比べて低迷が続いている。

とのことである。

株価云々は置いておいて、あれだけ華やかなイメージがある三越伊勢丹だが、事業の収益性という点においてはかなり厳しい状況に追い込まれている。

脱百貨店を掲げているJフロントは置いておくとしても、「ザ・百貨店」的なクラシカルなイメージの強い高島屋よりも百貨店依存度が高い。
そして百貨店利益率は高島屋よりも低い。

これは致命的で絶体絶命のピンチだといえる。

また新宿伊勢丹、銀座三越、日本橋三越の旗艦三店舗も苦戦している。

2016年4月~12月期で、伊勢丹新宿本店の売上高は、1979億6900万円と前年同期比2.8%の減少。三越日本橋本店は1261億6500万円で、2.2%減、三越銀座店は599億4300万円で6.9%減と苦戦した。

とあり、さらに

2014年3月期の新宿本店の売上高は、2654億円と前の期比で12.1%増となったが、翌2015年3月期は2585億円と2.6%減。

とも指摘されており、2016年3月期も減収が予想される。

「ファッションの伊勢丹新宿」にも陰りが出ており、2014年3月期の大幅増収は爆買いによる買い支えがあっただけで、日本人の需要は伸び悩んでいたと考えられるのではないか。

個人的な感想をいえば、伊勢丹新宿の売り上げ効率がいまだに高いことは大したものだが、いわゆる「最先端ファッション特化」路線は2014年3月期の2654億円が限界値ではないかと感じる。
その数値以上に、日本人に「最先端ファッション」の需要は無いし、潜在的需要もない。
「最先端の高価格ファッション」なんて誰もが求めるものではない。

銀座三越の爆買い向け改装は大失敗で、

初年度133億円の売り上げ目標に対し、売上高は44億円、営業損益は20億円の赤字となる見込みだ。

とのことで、爆買いブームは去り、中国人優遇に嫌気がさした日本人の富裕客層の上位3割も離れ、虻蜂取らずの見本のような事態になっている。

最後は

大西氏の退任の背景として、取締役など幹部の間で、かねて不協和音があったことを指摘する声は多い。業績悪化が鮮明になる中で、社内の摩擦は抑えきれないところまで来たのかもしれない。三越と伊勢丹が経営統合したのは2008年。約10年を経て、業界の盟主は岐路に立っている。

と締めくくられているが、業績が良ければ反対派は黙るが、業績が悪化して求心力が低下すれば、反対派は活動を活発化させる。三越伊勢丹に限らず、どの組織でも同じだ。

それにしても三越との統合から10年が経過して、盟主と目された伊勢丹自体も衰退の危機を迎えるようになるとは、まさにこの世は盛者必衰といえる。

評論や記事の中には、新社長が改革路線を継承することや、激しいリストラを期待する論調もあるが、それはあり得ないだろう。
なぜなら、改革路線に賛成なら、今の段階でわざわざ大西社長を失脚させる必要などないからだ。
もう少し成果が出始めるまで、上に戴いておくのがもっとも効率的で効果的だ。

まあ、そんなわけで今後、しばらく三越伊勢丹は混迷の度合いを深めることになるだろう。

三越伊勢丹の最新 儀式110番: こんなときどうする? 冠婚葬祭
三越伊勢丹ホールディングス
誠文堂新光社
2016-05-25



誰からも信頼される 三越伊勢丹の心づかい
株式会社三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ
KADOKAWA
2017-02-24






後任を決めずに社長が辞任する異例事態となった三越伊勢丹

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 予定を変更して(予定なんてないけど、言ってみただけ)今日はこの話題に触れたいと思う。

三越伊勢丹HD、大西社長が辞任へ 多角化の成果出ず
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ05H6O_V00C17A3MM8000/

 三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長(61)が3月31日付で辞任することが5日わかった。傘下の事業会社、三越伊勢丹の社長も同時に辞任する。消費者の百貨店離れが進むなか、事業の多角化を目指す構造改革で成果を上げることができなかった。後任の社長は週内をめどに社内から選ぶ方向で調整し、石塚邦雄会長(67)は当面続投するとみられる。

 大西氏は2012年に三越伊勢丹HDの社長に就任。消費者との接点を広げる小型店の積極出店などに取り組む一方、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)や婚礼事業のプラン・ドゥ・シー(東京・千代田)といった外部企業との提携も推進してきた。

 ただ、17年3月期の連結営業利益は前期比28%減の240億円となる見通し。急速に事業分野を広げる大西氏に対し、社内からは「少ない人数で運営している現場への負荷が大きい」との指摘も多かった。

とのことで、直近の業績急低下を見ていると、引責辞任もやむなしだと感じられてしまう。

昨年、6回に渡ってインタビューをさせていただいたこともあるので、今回はこのニュースについての感想をまとめてみたい。あくまでも個人的な感想である。

記事中で挙げられている多角化の事例のほかに、外食産業のトランジットジェネラルオフィスとの合弁会社設立や旅行会社ニッコウトラベルの買収などもあり、2012年の就任以来、百貨店のみでは限界があるとしての多角化を進めていた。

今回の辞任発表は、多くの方々が指摘しておられるように後任を決めないままの辞任発表なので、かなり異例で異常な事態だといえる。

同社の決算は3月期で、5月に毎年決算発表がある。
実はそれに向けて、新経営計画を策定しており、決算発表前に一度聞かせていただけそうな話もあった。

それだけに今回の辞任発表はかなり突発的な何かが内部で起きたと考えられる。

個人的な印象では昨年秋口からムードが変わったと感じる。
というのは、東洋経済オンラインに社内の反対派の大西改革への否定的なコメントが掲載された。

そのときに「ああ、業績に陰りが出て、反対派の活動が活発になってきたんだなあ」と感じ、下手をすると反対派に足元をすくわれることがあるかもしれないとも感じたが、それが現実になったということだろう。

知り合いの某経済誌記者にその話をすると、「実は大西反対派の愚痴みたいなものは以前からも頻繁に寄せられていた」との返事があったので、以前から根深い対立があったのだと改めて感じた。

業績の急低下の原因はいくつかあるのだろうけど、目に見えての大失敗は銀座三越店の改装だろう。
爆買い重視の改装だったが、改装オープンと同時に爆買いのムードは終結した。
その結果、中国人は来なくなり、日本人客も離れた。

インタビューでは、大西社長自ら「中国人客を重視しすぎて、日本人の富裕客層の上位3割が離れた」と認めておられた。

大西社長が提唱された改革の中身が正しかったのかどうかはわからない。
最終形態にたどり着いておらず、結果がわからないからだ。

しかし、方向性の正誤は別として、百貨店が今までのままで生き残れる可能性はほぼないから、何かを変えねばならなかったことは事実である。

トランジットとの合弁会社による、新規外食店はやっと今年4月に第1号店オープンが発表されたばかりである。

シドニー発のイタリアンダイニング「フラテリ パラディソ」を4月末に表参道ヒルズにオープンするとのことだが、筆者のような田舎者にはシドニー発のイタリアンというのはなんだか微妙なフレーズだと感じられてならない。たとえて言うなら、「東京発の本格中華料理」みたいな感じを受けてしまう。

まあ、中身はともかくとして第1号案件がやっと決まったばかりだ。

また、以前から旅行業強化を掲げていて、先日、ニッコウトラベルを買収したばかりである。

改革プランの良し悪しは別として、やっと形になったばかりのものも多かった。

これらの案件は、社長が辞任することで、間違いなく方向転換は強いられるから、当初に描かれていた完成形態にたどり着くことはできなくなった。
逆にすべての合弁事業が中途半端な尻すぼみで終わってしまう可能性も極めて高い。
尻すぼみで終わればかえってホールディングスの収益を圧迫することになり、三越伊勢丹HDはかなり厳しい状況に追い込まれると個人的には見ている。

じゃあ、これまで通りの三越と伊勢丹のやり方、ひいては百貨店のやり方を継続していればよかったのかというと、その選択肢がありえないことは誰しも認めるところだろう。
現に、「これまで通りのやり方」で百貨店の業績は低下する一方だったから、そのやり方は間違っていたということである。

残念ながら、三越に往年の勢いはすでにないし、伊勢丹のファッション特化路線は新宿本店以外で成功したためしがない。

名古屋のイセタンハウスも苦戦しているという話しか聞かないし、大阪・梅田のルクアイーレの伊勢丹コーナーも縮小されている。JR京都以外の地方店では伊勢丹は連戦連敗である。

伊勢丹はトップから現場まで東京大好き人間で固められている。
大西社長自身だって、著書で明かしておられるように、就職する際、東京にあるという理由で伊勢丹を選んでいる。

東京大好き人間だけで固められた百貨店が地方民の需要を正確に把握できるはずがない。
伊勢丹新宿店のような「先端ファッション」を求める人数は地方には少ない。
そもそも各地方の人口は首都圏の足元にも及ばない。
ファッション大好き人間の比率は変わらなくても、分母が少なくなれば実数も少なくなる。
それだけのことである。

三越も変わらない、伊勢丹も変わらないということを反対派が選択したのなら、三越伊勢丹HD自体も三越という暖簾も伊勢丹という暖簾もこのまま衰退することになる。

百貨店という業態も、変わらないなら売上高はこのままどんどん低下し続ける。

今回の異例の事態はそんな未来を確実にしてしまったのではないか。










6兆円を割り込んだ百貨店売上高は今後さらに縮小する

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 多くの人がすでに話題にしているが、百貨店の売上高が36年ぶりに6兆円を割り込んだ。

16年の百貨店売上高6兆円割れ 36年ぶり 主力の衣料品落ち込む
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170121/bsd1701210647002-n1.htm

日本百貨店協会が20日発表した2016年の全国の百貨店売上高(全店ベース)は5兆9780億円で2年連続で前年実績を下回り、36年ぶりに6兆円を割り込んだ。既存店ベースで前年比2.9%減だった。

16年の売上高は化粧品以外、ほぼ全ての商品で前年実績を下回った。特に主力の衣料品が前年比5.8%減と苦戦した。インバウンドは購買客数が18.5%増の約297万人だったものの、円高の影響もあり、免税売上高は5.3%減の約1843億円だった。

とのことであり、百貨店の売上高は1980年当時の水準に戻ったということになる。

衣料品不振のほか、この記事では触れられていないが、日経新聞の記事では食料品も1・8%減と微減しており、苦戦に転じたことがうかがえる。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL20HK5_Q7A120C1000000/

順調なのは、2・0%増となった化粧品を含む雑貨だけである。

衣料品が苦戦していることは隠しようもない事実で、外野から見ていて、百貨店衣料品の売上高が回復することはありえないと感じる。

これまで散々、このブログで書いてきたことの繰り返しになるが、百貨店の衣料品が売れなくなった理由は

1、消費者の可処分所得の減少または伸び悩み
2、百貨店に納品しているアパレル企業の商品企画の劣化
3、低価格ブランド商品の「見た目」の飛躍的な向上
4、ファッション業界人と百貨店関係者の浮世離れ

この4つである。

2と3の原因は、実は同根で、百貨店に納品していたアパレル各社、ワールドやらオンワードやらTSIやらは人件費削減の名目で90年代後半から企画部門を削減し続けている。

企画部門というのは主にデザイナー、パタンナーが属しており、彼らの多くはリストラされ、外部に放り出された。

彼らとて食べていかねばならないから、自分たちでOEM/ODM会社を作ったり、そういう会社に就職したり、商社の製品事業部に入社したりした。

アパレル各社は人件費を削減したのは良いが、結局、モノは企画できなくなるから、そういうOEM/ODM会社に商品企画を依頼するか、商社の製品部門に依頼する。

そういう会社は、特定の1社とだけ契約するわけではなく、売上高を稼ぐためには多くのアパレルと契約する。

百貨店に納品するアパレルの商品企画を手掛けながら、低価格ブランドの商品企画も手掛けるということが日常茶飯事に行われることになる。

同じ会社、同じ人間が企画するので、必然的に両者の企画内容は近しいものになる。

これが90年代後半なら、百貨店アパレルへの納入価格と低価格アパレルへの納入価格には大きな差があったから、百貨店アパレルには上質な素材を使い、低価格アパレルには廉価な素材を使ったりして、商品の見た目にも歴然とした差があった。

しかし、百貨店アパレルが苦戦に転じると、彼らは利益を何とか確保しようと納入価格の引き下げ、原価率の引き下げを平然と行うようになった。貧すれば鈍するを絵に描いたような状態である。

その結果、低価格ブランドと納入価格が大して変わらなくなり、使用素材もクオリティが低下し、商品の見た目も変わらなくなった。

同じような商品なら人間はだれでも安いほうで買う。

2017年現在、低価格ブランドが売れて、百貨店ブランドが売れないのは当たり前のことである。

化粧品を含む雑貨が唯一堅調といえるが、化粧品と衣料品を同様に比較して、化粧品を見習えという論調はミスリードを引き起こす。

化粧品はファッション用品ではあるが、消耗品である。
使い続ければ必ずなくなる。気に入った物は定期的に買いなおす必要がある。

ルブタンの口紅は使い続ければいつかはなくなる。
じゃあ、ルブタンの口紅は定期的に買いなおさねばならなくなる。
毎日使えば使うほどその消耗頻度は高くなり、買いなおすまでの期間は短くなる。

衣料品はどうだろうか。
1度購入すれば何年間も破損しない。
また、いくら気に入ろうが、化粧品ほど毎日使えるわけでもない。

分厚いウールのセーターはいくら気に入ろうが、真夏には着用できない。
せいぜい12月~3月までに4か月間しか着用できない。
保管中に虫に食われた場合は別として、4か月間の着用だから破損するまでには最低でも5年前後はかかるだろう。
保管場所にも限りがあるから、毎年毎年ウールのセーターを買い足すことはできない。

必然的に洋服を年間に買う枚数は制限されてしまう。

おそらく、もっとも洋服を買っている人は、一般消費者ではなく、衣料品業界関係者とアパレル販売員である。

衣料品は、「業界人の業界人による業界人のための商品」という傾向が色濃くなっている部分があるのではないか。

一方、同じ消耗品でありながら、有望視されていた「デパ地下」の食料品が減少しているのはどういうわけだろうか。

食品に関しては知識がないのでその理由はわからない。
もし、ご存知の方がおられたらぜひともご教授いただきたい。

甲斐性なしの貧乏人たる筆者からすると、デパ地下の食料品は化粧品と違って「日常使い」するものではないからかなと思える。
やっぱりハレの日だとか特別な日や贈答に買うけれど、日常的に自家需要として毎日買い続ける人は少ないのではないか、と貧乏人は思う。

あと、百貨店売上高が減少し続けている理由としては、

1、外商が弱っている、または横ばいである
2、地方店を中心に閉店が相次いでおり、百貨店の店舗数が減り続けている

である。

外商の強い百貨店と弱い百貨店の格差が開いていると耳にする。
高島屋や松坂屋、三越などは比較的外商が強いと耳にするが、一方で「うちの外商売上高はそんなに大きくない」と首脳陣が公式発表している百貨店もある。

http://fashion-hr.com/hr-talks/hr-talks_real/4842/

このサイトによると、

外商部の規模自体、バブル期と比べると今は40%くらいに小さくなってしまいましたしね。

と指摘している。

また、地方店はこれまでから閉店・倒産が続いており百貨店店舗数自体が減少し続けており、今後この傾向はますます強まる。
昨年後半にもそごう西武、三越伊勢丹、阪急阪神などが中小型地方店の閉鎖を発表しており、2017年以降はそういうケースがさらに増えると考えられる。
その一方で、今後新しく百貨店が新規オープンすることは考えにくく、店舗数は減少の一途をたどるだろう。

店舗数が減れば、売上高が減るのは当然といえる。

個人的には百貨店売上高は今後さらに縮小すると見ている。
将来的に残っているのは、都心の大型旗艦店のみということになっているのではないか。
そこが百貨店売上高の下げ止まりになるのではないだろうか。

鈴木敏文 孤高
日経BP社
2016-12-22



わがセブン秘録
鈴木 敏文
プレジデント社
2016-12-17










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