南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

販促

意味不明の商品説明文を書き連ねてるブランドが多すぎる

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 なんだかんだで、オンライン通販で服や服飾雑貨を買うことが増えた。
もっぱら買うのはユニクロか、一度試着したことのあるアイテムに限られているのだが。

そうすると当たり前だが、定期的にメルマガが来ることになる。
筆者のもとに定期的に届くのは、ユニクロ、ジーユー、アダストリア、Amazonくらいである。
Amazonはいろんなブランドの案内が併記されている。

一応、情報収集も兼ねてそれらのメルマガにはざっと目を通すのだが、正直に言って、意味の分からない商品説明が多い。

商品説明文で一番マシなのはユニクロとジーユーだが、それでも「?」と感じることがある。
それ以外のブランドやAmazonで見かけるブランドの商品説明文はほとんどが「?」である。

あんな意味の分からない説明文を書いているから洋服が売れないのではないか。
あと商品名も企画担当者の自己満足でしかない短縮形が多い。
あれではどんな商品なのか消費者にはまったく伝わらないだろう。
伝わると思ってるならそれは業界人の傲慢である。

例えば

スライバーニットを使用したスライバーチェスターコート。 適度なふくらみ感がありつつ、軽くて暖かな着心地が特徴の素材です。 スタンダードで洗練されたデザインですのでコーディネートに取り入れやすく、 ワードローブに入れて頂きますと大変便利な1着になっております。 オススメはGジャンやライダースなどの軽アウターの上から、コートを羽織って頂くスタイリングです。

これは実際の通販サイトに書かれてある説明文である。

これを読んでどんな商品なのかわかる人がどれだけいるのか、これを読んで「この商品欲しい」と思える人がどれほどいるのか。

まず、「スライバーニット」ってなんやねん、である。
業界人ですらわからない人が相当数いるのではないか。
とくに昨今は業界人の商品知識レベルは劣化しているので。

個人的に気になるのは、このコートの生地は「ニット」なのか「織物」なのかであるが、この文章だけではあまりわからない。スライバーニットを使っていると書いてあるのでニットなのだろうと推測するほかない。

ニット生地だということは、防風性が弱いということになる。
セーターは風を通すから。
そこに対する何らかの施策(生地の裏にフィルムが貼り付けてあるとか)があるのか?
何も書いてないということはないと判断せざるを得ないが、もしそういう施策があるなら書いていないならそれは伝わらない。
伝わっていないことは存在しないのも同然なのである。

防風性が弱いならコートとしてどうなのかということになる。

お薦めはGジャンの上から羽織れと書いているが、防風性が弱い(と仮定するなら)コートをGジャンみたいに保温力の弱い衣類の上から羽織って真冬に着用できると思っているのだろうか。

この文章を作った人、それから商品企画担当者はそんな寒々しい恰好で真冬に出歩いているのか。

また

寒い季節にぴったりなキュウシン柄のニット。
印象的なデザインなのでアウターを羽織った時に、チラッと見える柄が◎
また、ジャガード部分に起毛をかけ、暖かな着心地と肌触りも追求しています。
ホワイト・ブラック・ブラウンなど、ベーシックな色を基調とした配色で、
様々なアウター・ボトムスと合わせられるのもオススメのポイントです。


これも実際のサイトの説明文である。

そもそも「ジャガード」という表記自体が間違いで正しくは「ジャカード」である。

で、これはセーターなのだが、ジャカード編の柄部分に起毛をかけているとあるが、柄のない部分は起毛をかけていないのだろうか?
そういう技法で作られたセーターもあるが、そんな面倒なことをこの低価格ブランドがやるとは思えない。
低価格ブランドなら全面に起毛をかけるか、まったくかけないかのどちらかである。
そのほうが加工コストが安い。

長くなるのでこのあたりにしておくが、どのサイトの説明文もほぼこれらと同様か、これら以下の内容である。

そもそもが、商品名の「キュウシン柄ニット」って何なのか。
首元から胸あたりにかけて柄があって、それが首元を中心とした円形状に広がっているから「求心柄」なのだと思うが、求心をキュウシンとカタカナ表記にすることで何のことやらまったく意味が分からなくなる。もしかして「求心」という漢字を読めないと思っているのだろうか。
それはあまりにも消費者をバカにしているし、自分らの知能レベルに合わせて消費者を判断しているとしか言いようがない。

KHFAA21059-03P-90-O

(キュウシン柄ニットの実例)

http://www.itokin.net/avv/products/detail.php?product_id=82192



 キュウシンと書かれても救心かもしれないし、急進かもしれない。もしかしたら球審かもしれない。

おそらく以前はノルディック柄の一種として紹介されていた柄だが、今の店頭やサイトで見ていると純粋な「ノルディック」ではなく、南米風だったり民族調だったりする柄も含まれているから、「キュウシン」と呼び名を変更したのだと思うが、この中途半端な変更と意味不明のカタカナ表記によって、消費者には一層伝わりにくい商品名となっている。

衣料品業界のオンライン通販は、つまるところ画像に頼りすぎている。
もしかしたら、かつていわれた「オンライン通販に説明文は必要ない。画像がすべてだ」という間違ったやり方をいまだに妄信しているのかもしれない。

オンライン通販に画像は不可欠だが、説明文も不可欠である。
「説明文は短ければ短いほど良い」なんてデマが流布されたこともあるが、実際に手に取って風合いやら触感やら生地の厚みなんかがわからない分、説明文はかなり詳細に書き込む必要がある。

「説明文は短ければ短いほど良い」なんてことをいまだに信じているなら、それはお気の毒なことである。

洋服が売れなくなった理由は様々あるだろうが、こういう伝わらない説明文や意味の分からない商品名などという部分も大きいのではないか。

もう、きれいな画像と、雰囲気だけの意味の分からない説明だけで洋服が売れる時代ではないということを業界人は痛感すべきである。












執拗に告知を繰り返しても消費者にはやっと覚えてもらえる程度

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 経営不振の引責で、三陽商会の社長交代が先日発表となった。

ここに至るまで様々なメディアに三陽商会苦戦の原因を報道したが、やたらと厳しすぎるなあと感じられる記事もあったし、マッキントッシュロンドンの不振のみにクローズアップされた記事が多かったと感じている。

オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがまとめられている不振の原因が最も的確ではないかと思うので、ここに引用してご紹介したい。

http://www.apalog.com/ochi/archive/385

原因は、唯一ブランド戦略ミス(マーケットの読み違い)です。

1、バーバリーがグローバル戦略を取り、ライセンス契約の喪失が見えていたのにも関わらず、自社ブランドを準備出来ていなかったこと。

2.マッキントッシュフィロソフィーが百貨店のボリュームゾーンで広がっていたにも関わらず、格上のブランド「マッキントッシュロンドン」を仕掛けた事。(下から上では逆)

3.クレストブリッジブルーレーベルやブラックレーベルは、バーバリーのブルーレベルとブラックレーベルの企画力と同じだから、ある程度(80%程度)売れると判断した事。
(バーバリーと無名のクレストブリッジ(のブランド認知度・信頼度の差)

4.前社長の力で、百貨店の80%以上の売場を残せたにも関わらず、ブランド力のない商品で
  売上を確保できなかった事。

単品企画力があっても全体のマーチャンダイジング力不足で、良いものでも売れないのです。作り手・売り手の良いものであり、買い手・使い手の良いものではないからなのです。


とのことである。

この中で個人的にも感じているのが、3である。
これは広報宣伝、告知のミスともいえるのだが、発売元と消費者の認識のズレというのは常に起きる。
発売元とすると、その商品を毎日触っており、ブランド開始まで毎日のように準備しているから、そのブランドについては何から何まで熟知している。(当たり前のことだが)

当然、三陽商会のスタッフも「クレストブリッジ」のことは熟知しており、それがバーバリー社との新しいライセンス契約によるものは、社員にとっては「当たり前」のことになっていただろう。

しかし、世間の一般消費者には「クレストブリッジ=バーバリーとの新契約ブランド」という情報はほとんど認識されていなかった。
報道されなかったわけではない。報道もされていたがその程度では一般消費者の記憶に残るほどではなかったということなのである。

実際に、筆者が講義するファッション専門学校で「クレストブリッジがバーバリーとの契約ブランドだと知っている人」と尋ねると、9割の学生は知らなった。
答えてくれた学生の数を合計すると40人弱くらいになるだろう。

「最近の学生は勉強不足」なんて老害みたいな脊髄反射をするなかれ。
そんな老害レスポンスにはまったく価値がない。

ここで注目しなくてはならないのは、世間一般よりもファッションに比較的に興味のある専門学校生のほとんどが知らなかったという事実である。
専門学校生でのこの程度なら、世間一般の消費者の認知度はもっと低いということになる。

これは明らかに三陽商会の広報宣伝、告知のミスである。

おそらく、スタッフは自分たちにとって「当たり前」のことだから、執拗にしつこく広報宣伝、告知をしなかったのだろうと思う。
筆者が目にした範囲でもそれほど「クレストブリッジ=バーバリーの新契約ブランド」ということは強調されていなかった。

これは、発売元では「当たり前」のことでも、消費者には何一つ伝わっていないという好例である。

これは三陽商会に限らず、筆者も含めてすべての企業やブランドにいえることで、当事者にとっては「当たり前」のことでも、執拗に何度も広報宣伝をしないと消費者には認知されないということである。

そしてそういう事態が、衣料品業界では頻繁に起きている。
だから衣料品不振にもつながっている側面がある。

例えば、全国の生地産地の人たちと話していると、産地の人たちは「自分たちの産地のことは業界全体で知られている」と感じていることがわかる。
しかし、製造加工に携わっていない業界関係者に尋ねると、その産地については「ほとんど知らない」という答えが返ってくることは珍しくない。

もちろん、この場合は業界関係者に対して「不勉強だ」と指摘することは当然だとしても、逆に産地関係者はもっと執拗にしつこく、広報・告知をするべきなのである。
むしろそれくらいでやっと覚えてもらえるくらいなのである。

三陽商会にとっては「クレストブリッジ=バーバリー」の認識だったが、一般消費者にとっては「クレストブリッジ=謎の新ブランド」であり、バーバリーに結び付けて考える余地は皆無だった。
そのため、バーバリーブルーレーベル、ブラックレーベルよりも大きく売れ行きが劣ることになった。

知名度は皆無なのに、価格はバーバリーブルーレーベル、ブラックレーベルと同格なのである。
無名のくせに高いブランドなんて売れるはずもない。

そしてそのブランドの背景やストーリーが語られることも不足していた。
正体不明で価格が高い無名ブランドなんて買いたいと思う消費者なんて存在するはずがない。

クレストブリッジに関しては、三陽商会だけの問題ではなく、発売元と消費者の認知のギャップと、広報告知の在り方を考えるうえでの格好の好材料といえるのではないか。




(ブルーレーベルクレストブリッジ)ニット セーター38
BLUE LABEL CRESTBRIDGE (ブルーレーベルクレストブリッジ)







小手先のトレンド論で売上高を大きく左右できた時代はすでに終わっている

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 筆者が40代後半の感性の衰えたオッサンだからかもしれないが、ここ10年間くらいで、洋服において「これぞ画期的だ」というような新機軸のデザインやディテールは見たことがない。

コーディネイトや着こなしなんかではある。

例えば、インナーダウン。
これまでダウンジャケットといえば、アウターとして着る物だったが、薄手にしてジャケットの下に着るという発想である。
登山なんかでは当たり前だったが、これをカジュアルとして提案することは新しかった。
ユニクロのおかげなのか、最近ではおよそファッションとは縁遠い風貌のサラリーマンのオッサンでさえインナーダウンを着ている姿を見かける。

ただし、インナーダウンというコーディネイトもここまで行き渡れば、あとはひたすら商品の微細なマイナーチェンジを続けて何とか売り上げ維持を図るというのがアパレル業界の通例である。

しかし、商品の微細なマイナーチェンジを繰り返すことで売り上げを維持するという手法は、2000年ごろまでなら通用したが、現在では通用しなくなっている。

昨年買ったウルトラライトダウンと今年のウルトラライトダウンがどう違うのか?
物としてはまだ傷んでいないから今年も来年も再来年も着用できる。

いわく「色のトーンが少し変わりました」
いわく「スナップボタンの色を変更しました」
いわく「素材の光沢感を少し抑えました」
いわく「スナップボタンの材質を変えました」
いわく「着丈が1センチ長くなりました」

そんな微細なマイナーチェンジで「買おう」と思う消費者は今はほとんどいない。

可処分所得が減ったこともあるが、社会が成熟化しており、ほとんど変わらない商品を毎年わざわざ買い替えるような不合理な行動はとらない。

多くのアパレル、衣料品販売店はまだこのバブル期の発想のままだ。
微細な小手先の変化で何とか売り上げを作ろうとしており、その究極の発想が「他社の売れ筋を丸パクリする」ことである。

売れている商品を寸分たがわずコピーすれば自社の商品も同じくらい売れると思っている。

先日、関西で売れに売れており、業界で注目を集めている苦楽園のセレクトショップ「パーマネントエイジ」に4~5年ぶりに取材に伺った。

http://www.permanent-age.co.jp/

その取材内容はまた、ウェブメディア「インディペンド」に掲載するが、その中でパーマネントエイジの林行雄社長の言葉の中で印象的なものがあった。

https://independ.tokyo/

「今のアパレル業界は、ナイフとフォークで食べていたトンカツを『今季は箸で食べなさい。そうすれば美味しく感じるでしょう?』という小手先の変化に終始している」

という比喩で、「成熟化した社会ではそういうやり方では物は売れない」という指摘に続いた。

まったく上手い例えだと思うが、売れるようになるためにはトンカツそのものの味付けを変えるか、トンカツではない料理を出すかということが根本的な解決になるのに、そこに踏み込もうという企業、ブランドはあまり多くない。

以前にご紹介した河合拓氏の記事と同様の趣旨だ。

http://news.livedoor.com/article/detail/11470311/

先日、ある業界団体の討議会に参加した。アパレル業界をどうしてゆくべきかという議論が活発になされていたが、業界の常識にどっぷりつかった人は昔のフレームワークから抜け出せず、物事を「XXX系」という括りで語り、「この系」は流行る「この系」は廃れるという具合に昔から繰り広げられている「トレンド議論」を繰り返していた。

中略

「トレンド論」でなく「システム論」、「ビジネスモデル論」こそ重要なのである。分析の軸が間違っているのだ。

という内容で、国内のアパレル事業者にこの観点を持っている者はあまりにも少ない。

もちろん、大企業と町場の個人経営の洋服店が同様の手法で活性化することはないが、個人経営の洋服店がトレンドとかディスプレイとかの手法に特化して売上高を改善することは理解できるが、問題は大企業までもがいまだに同じ発想をしているということである。

大苦戦が続いているワールド、三陽商会、イトキンなどはその典型ではないか。

新ブランドや展示会の記事を読んでもほぼトレンド論に終始している。
トレンド論が正しいやり方であるなら、これまで何十年間もトレンド論に終始してきたアパレル企業がどうしてここまで凋落することになったのか。
そのことだけでもトレンド論だけでは通用しなくなったことを証明している。

トレンド論が無駄とは言わないが、商品トレンドだけで売れ行きを大きく左右できた時代はとっくに過ぎ去り、今後そういう時代に戻ることは二度とない。










ウェブサイトを持たない製造加工業者は存在しないのも同然

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 久しぶりに、染色・洗い加工の福井プレスにお邪魔した。

その際の記事を掲載した。

https://independ.tokyo/column/%e7%a6%8f%e4%ba%95%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%b9/

以前にお邪魔してから仕事内容については大きな変化がなかったので、今回は、掲載した記事とは別に感じたことを少し。

まず、記事中にもあるように、家業だったクリーニング屋とは別にこの染色洗い加工を開始したのは16年前の2000年だった。

fukui004-factory




この当時は97年に起きた北海道拓殖銀行、山一證券の倒産によって不景気感が一気に高まっていたころで、繊維業界は低価格化に対応する目的から雪崩をうったように中国へ工場が移転していた時期であり、製造加工業の倒産廃業が多かった。

そんな時期にわざわざよくも染色洗い加工なんて始められたものだとその胆力に感心するほかない。
しかし、苦しいなら苦しい時期なりのメリットもあるようで、倒産廃業した会社から機械をタダ同然で手に入れられたそうである。

次に疑問に感じたのがそんな「中国移転時期」に国内でどうやって新規事業が受注をとれたのかということである。

その答えは当時ホームページと呼ばれていたウェブサイトを立ち上げたことである。

今は企業ウェブサイトがあって当たり前の時代だが、2000年当時を思い返してみてもらいたい。サイトを所有していた企業は大手か先進企業に限られていたはずだ。
ましてやサイトを所有していた工場は少ない。2016年の現在だって繊維の製造加工業の大半はウェブサイトを所有していない。

いち早くウェブサイトを所有したことで、ウェブ検索で引っかかりやすくなり、あまり苦労することなく受注が舞い込んだという。

「知られていないのは存在しないのも同然」なのである。

いくら技術に自信があろうが、いくら設備が良かろうが、ウェブ検索でモノを調べる時代に、ウェブサイトを所有していなければウェブ検索には引っかかってこない。表示されない会社や工場を、検索者は知ることができない。
だからウェブ検索で表示されない会社や工場は、世間一般にとって「存在しないのも同然」なのである。

受注が欲しければウェブサイトかせめて公式ブログは所有すべきである。

数年前から繊維製造業の救世主のように扱われているファクトリエだが、ウェブに引っかからない縫製工場を探すために電話帳を調べまくったそうだ。

もし、ウェブを持たない製造加工業者が第二のファクトリエの出現を待っているとしたら、それはほぼ徒労に終わる。ファクトリエのような行動をしてまで製造加工業者を調べたいという意欲のある人間はほとんど皆無だからだ。第二のファクトリエ的な取り組みをしたいという稀有な人間が出現する可能性は年末ジャンボ宝くじの1等当選と同じくらいに低確率だろう。

そんなものの出現を待っている間に国内製造加工業者の多くは廃業か倒産に追い込まれる。

筆者からすればそれは自業自得としか感じないのだが、もし、生き残りたいと強く望む製造加工業者がいるなら、今からでもウェブサイトか公式ブログを開設すべきである。それもせずに嘆くだけなら、単なるワガママに過ぎない。

また、福井プレスは個人向けに「染め直し屋」というサービスも行っている。

基本料金は5000円、あとはアイテムによって200グラムで400円というように料金設定されている。

http://somenaosiya.jp/

これもネットで受注が集まっており、ここでもネットの重要性がよくわかる。

世間的にリユース、リサイクルが大きな潮流となる少し前から取り組んでいる。小規模工場という不利な点を逆手にとって、個人向けという極小ロットに対応したことになる。

ただ、最安価格でも5400円くらいになるので、その値段以下の洋服の染め直しを依頼する人はほとんどいない。逆にいうと高額ブランド品を持ち込む人ばかりだということで、三陽商会のバーバリーが終了するにあたって、着古したバーバリーのトレンチコートを持ち込む人が多かったという。
もう三陽商会製のバーバリーコートは買えないから、染め直して寿命を延長させたいという人が多い。

しかし、一方で課題もあって、そういう高額ブランド品を所有しているのは35歳以上の人で、それ以下の若い世代は高額ブランド品を持っていないので、顧客にはならないということである。
5000円も払うくらいなら低価格ブランドの新品を買った方が安くつくからだ。

今後、新規客層をどのように獲得するかについては福井プレスの福井社長も頭を悩ませている。

ここから話はそれるが、先日やっと冬物への衣替えを完了させた。

その際に、捨てたい洋服が結構出てきた。
正確にいうと捨てる決心がついた洋服である。

しかし、不燃物に出すのはなんだかもったいない。
大半は着用可能だからだ。単にサイズが合わなくなったとかデザインが古臭くなったとかが理由だからだ。

幸いというか不幸にもというか、今、筆者のワードローブはほとんどがユニクロと無印良品で占められている。両方とも古着回収を行っているという点では幸いだが、こんな価格の服しか買えないほどの低収入だということは不幸だといえる。

で、ユニクロと無印良品に何度かにわけて古着を持ち込んだ。
ユニクロの受け取り方はかなり大雑把で内容物を確認されることもない。
受け取ったあとは難民に寄付される。

無印良品の場合は、自社製品かどうかタグを確かめられて、1000ポイントを付与される。
受け取ったあと、どうなるかというと藍色に染め直されて、re-mujiとして限定店舗で販売される。

天神大名、 名古屋名鉄百貨店、有楽町、京都BAL、アトレ恵比寿、グランフロント大阪の6店舗でしか販売されていない。

大規模チェーンだからたくさん持ち込まれるとはいえ、安定的に持ち込まれるわけではないから、この程度の店舗数で展開するのが正解だろう。

染め直された商品の販売価格は2900円だという。

無印良品側とすれば持ち込まれた商品の仕入れ値はタダだから、純粋に染め直す工賃のみということになる。

極小ロットならそれこそ工賃が上乗せされるから福井プレスのように最低でも5400円くらいになるが、無印良品のように大量に持ち込まれるなら、そういう基本料金はほぼ不要になり、単に工賃を枚数で割り算するだけになる。しかも藍色のみで効率的に染め直せるから工賃自体もそれほど高くない。だから2900円での販売が可能になる。

買う側とすると古着だからいくら「エコ」だ「リユース」だといっても、あまりに高額になれば消費意欲は落ちる。
5000円を越えるとちょっと手が出にくい。

こう考えると、無印良品は大規模チェーン店の利点を上手く生かして染め直し品を低価格販売しているといえる。やはり「数は力」なのである。

一方の福井プレスの染め直し屋は、藍色のみということなく制限はあるが、もっと色数が多い。またラベルなどは一度取り外してから染めて、染め直した後に再度縫製する。このためラベルが染まってしまうことはない。

これは小ロットを逆手に取ったサービスだし、無印良品のやり方と差別化できていて、低価格競争に巻き込まれにくい取り組みといえる。

それにしても無印良品のように大手にも「数の力」を効率的に生かした染め直しサービスが出現しており、創意工夫のない染め直し業者はうかうかできない情勢になりつつあるといえる。









啓蒙活動をしないなら、体感気温に合わせた商品展開を考えてみたら?

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 11月下旬の寒波でコートが動いたと報じられている。
この動きは価格帯は関係なく、低価格店でも百貨店でも同様だったようだ。

しかし、11月の寒波もほんの数日で終わり、下旬から12月5日まではかなり暖かい日が続いている。

11月は全般的に平均気温が高かったのではないかと思うし、このままの気温推移なら12月も暖かいのではないかと思う。

業界ではいまだに「低価格品は実用衣料、中高価格はファッション衣料」と主張する人が多いのだが、実際の売れ行きはともに体感気温に即した実用衣料的になっていると言わざるを得ない。

もちろん、季節先取りで買う人もいまだに存在するが、その人数は限られており、「ファッション」を標榜するブランドはこの少ないパイを取り合うことになる。
そのファッション層の財布も無限ではないので、必然的に選ばれるブランドと選ばれないブランドが出てくる。

本当に「ファッション」を標榜したいなら、季節先取りで購入するファッション層の人数を増やす努力をする必要があり、それをしないままだと永遠に少ないパイを奪い合うことが続く。

とはいってもそういう啓蒙活動は難しいし、成功する可能性もない。
よほどに優れた経営者やデザイナー、プロデューサーでなければ成功は難しいだろうと思う。

世の中の大半以上の凡人が取り組むなら、実需に即した対応が無難だろう。

上場しているセレクトショップ、大手百貨店は月次売上を公開するが、要因分析の大半を天候要因が占めている。
「猛暑で」「暖冬で」「雨が多くて」「気温が高くて」「気温が低くて」などなど。

衣料品の役割の一つに体温調節があるから、天候要因に左右されることは当然と言えるが、「ファッション」を気取っているこれらが天候要因のみでしか好不振を語れないのは情けない限りではないか。

だったらもっと気温に即した商品投入時期を模索してみてはどうか。
どうせ、大半以上のファッション企業が啓蒙活動などできないのだから。

例えば、気象庁のこんなデータがある。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=46&block_no=47670&year=&month=&day=&view=a2

1981年~2010年までの月別の横浜の平均気温である。

9月の平均気温は23・3度となっている。
これは6月の平均気温である21・3度よりも高い数値である。
となると、9月はまだ長袖の秋物を着る気温ではないということになる。

ちなみに12月の平均気温は8・5度で、世間が想像するよりも高い気温ではないか。
そして3月の平均気温は9・1度で12月とほぼ同じである。

こう考えると、常に天候要因を好不振の最大理由として挙げているアパレル、セレクトショップ、百貨店はこういうデータに基づいた商品投入時期を再設定すべきではないか。

ナントカの一つ覚えみたいに8月21日に秋物が、10月21日に防寒コートが立ち上がるなんていうことを続けていて一体何の意味があるのだろうか。

気温に即して考えるなら9月は夏服だし、3月は冬服である。

繰り返すが、仮にも「ファッション」を標榜するブランドは天候要因に左右されない売り方を考えるべきだというのが大前提だが、それができないなら、気温に即した商品展開を考えるべきではないか。

それを放置したままで「猛暑が」「高気温が」「暖冬が」などと天候要因を嘆かれても、自業自得としか言いようがない。

いくら嘆いても天候は、業界人が望むようには変動しない。
嘆くばかりで何の工夫も凝らさないのは、怠慢以外の何物でもない。
そして怠慢な業界が衰退するのは当然である。








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