南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

販促

業界の常識は、マス層には知られていないと考えて発信すべき

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 先日、ウェブを眺めていたら、しまむらの「洗える浴衣」が話題になっていた。
そもそも浴衣は洗濯ができる衣類なので一体何を言っているのかと思ってしまう。

しまむらの“洗濯機で洗える”浴衣、業界では当たり前の事をアピールポイントにしたのがエライ!
https://togetter.com/li/1126096

興味のある人は読んでみてもらいたい。

和服に詳しい人、和服を愛用している人なら浴衣が洗濯できることは常識である。
和服に詳しくない筆者でもその程度のことは知っている。

特殊な生地で作られている一部の例外を除いて、基本的に浴衣は綿布で作られてる。
綿布は洗濯が可能である。
故に浴衣は洗濯できる。

多少なりとも生地のことを知っていれば、簡単に導き出せる結論である。

しまむら以外の浴衣も洗濯できる。

浴衣は洗濯できるというこんな常識的なこともマス層は知らないということになり、それをわざわざ、さもすごいことかのようにアピールしたしまむらはやはり慧眼だったというべきだろう。

また、先日、こんなニュースも報道された。

10年前に買ったスニーカー「未使用なのに底が剥がれた」転倒あいつぐ 消費者庁
http://sp.hazardlab.jp/know/topics/detail/2/0/20915.html

これも何を言っているのかと思う。
10年間も放置されていたスニーカーなんて底が加水分解を起こしてボロボロになるに決まっている。
スニーカーの底が永久不変の物だと考えている方がアホである。

これだって、ファッションに興味のある人や靴に少し知識のある人にとっては常識中の常識だ。

記事中には

インターネット調査では、消費者の56.5%がこの事実を「知らなかった」と答えている。

との一文があるが、半数以上の人間はスニーカーの底が加水分解を起こすことを知らないということになる。

ABCマートの店頭で今日、靴を買って帰った客の半分以上は加水分解を知らないということになる。

この驚愕の事実を知っていれば、販売員の接客も変わるのではないかと思う。

浴衣にせよ、加水分解にせよ、愛好家にとっては「常識中の常識」でも、マス層は知らないということで、逆にいえば、マス層に売りたければ「当たり前」のことでもアピールして説明する必要があるということになる。

以前にも、スラックスという単語を知らない人もいるということを書いた。
下半身に着用する衣服をボトムというが、その中でズボンがある。
ズボン、最近ではパンツとも呼ぶ。また英語を元にした呼び名はトラウザーである。

スーツのズボンのような形をしたものをスラックスと呼ぶが、ファッションが好きな人なら、スラックスとはどんなものかをたちどころにイメージできる。
しかし、スラックスとは何かがわからない人もマス層には存在するということで、そういう人にいくら「スラックスが大安売り」なんて連呼しても意味がないということである。
なにせ、スラックスの意味がわからないのだから。

こう考えると、和服、靴のみならず、洋服についてもマス層は相当に知識がないと思って、接客に当たるべきだろう。

業界人、愛好家、ファンの間では初歩の初歩であるようなことさえ、マス層の多くは知らないということで、マス層に売りたければ、初歩の初歩のことを詳細に説明する必要があるということになる。

さて、普段身に付ける洋服でさえ、こうなのだから、繊維製品の製造加工業についてのことはどれほど初歩の初歩までを説明しなくてはならないかが想像できるのではないか。

現在、ウェブが普及し、製造加工業者の自己発信も簡単にできるようになった。
ウェブを使って自己の情報発信を行う製造加工業者も増えた。

しかし、その多くは業界人、愛好家しかわからないような書き方をしており、マス層には伝わっていない。

「うちはド素人のマス層なんぞに発信する必要はない」と思っているなら今のままでも良いが、そうではなく、広くド素人にも知ってもらいたいと思っているなら、業界にとって初歩の初歩のことまで詳細に説明する必要性がある。

あまり、基本的なことを書きすぎると、「同業者に笑われる」と言って嫌悪感を示す製造加工業者がいる。
だが、取引先は同業者なのか?自社の客は同業者なのか?
冷静に考えてみて欲しい。

同業者にいくら褒められても売れなければ意味はない。そんなカネにもならない称賛なんぞ無用の長物だ。
逆に同業者にいくらバカにされようが、自社の製品なりサービスなりが売れればそれが正解だ。

しまむらの浴衣、スニーカーの加水分解の記事を見ても、業界の常識は世間の非常識だということがわかる。

マス層に広く発信したい製造加工業者はもう一度発信の内容を見直してみる必要がある。




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「吸水速乾」を「部屋干し速乾」と言い換えると新しい需要が生まれた

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 そろそろ暑くなってきた。嫌な季節が始まった。
筆者は暑さが苦手である。できれば夏がない方が良い。
そうはいっても夏はやってくるから、我慢するしかない。

暑くなると、各社はこぞって「吸水速乾機能」を持った洋服を発売するが、個人的にはあまりこの機能が夏に必要だとは思っていない。

というのは、以前にも書いたが、吸水速乾機能を持った肌着を着用するとたしかに汗は吸うが、逆に吸い過ぎて肌着の上に着たシャツが汗でびしょ濡れになってしまうからだ。
吸水速乾肌着を着るなら、上に着るシャツもジャケットもすべて吸水速乾製品でそろえないと意味が無い。

しかし、吸水速乾機能は重宝であることは間違いない。
洗濯をすると乾くのが早い。

ありふれた機能に対して、別の角度からの見方を与えると、それは新しい商品になり、新しい需要が生まれる。
ありふれた吸水速乾機能でも、「洗濯をしたら早く乾きます」という売り方なら新しい需要が生まれる。

こういう売り方が上手いと思うのは、「ディーパーズウェア」ブランドを展開するオールユアーズである。

それについて、ウェブメディアのインディペンドに先日寄稿した。

「必要」に気づき、「形(かたち)」にする “ALL YOURS”
https://independ.tokyo/?p=3091

ブランド立ち上げ時から親しくさせてもらっているが、このブランドはそういう「売り方」が上手い。
このブランドのヒット商品に速乾の「ファストパス」というラインがある。

キャッチコピーは

「真冬に部屋干ししても3時間で乾きます」

というものである。

IMG_2584

(ファストパスのツナギ)


真冬の部屋干しにそれほどの需要があるのかと疑問を感じたが、都心で独り暮らしをする人や、二人暮らしの共働き夫婦などは、洗濯物は部屋干しすることが多いから、ありがたい機能ということになる。

祖父母や大きくなった子供と同居していれば、洗濯を外に干しても雨が降ったり日が暮れりすれば、誰かが取り入れてくれる。
しかし、一人暮らしや共働き夫婦はそうはいかないから、必然的ににわか雨なんかを警戒するなら部屋干しすることが増える。

真夏だと室温も高いから部屋干しでも5時間くらいすれば洗濯物は乾くが、真冬はそうはいかない。
たまに自分も冬の雨の日に部屋干しするが、なかなか乾かない。

そういうときに、この機能は便利だからヒット商品になっているという。

じゃあ、わざわざ洗濯用に新素材を開発したのかというとそうではない。
実は、これは既存の吸水速乾素材なのである。

「吸水速乾素材ですよ」というと夏場しか売れないが、「部屋干し用の速乾素材ですよ」というと一年中売れる。

現在のアパレル業界に欠けているのはこの「視点の転換」「売り方の工夫」だろう。

多くのブランドは固定概念に凝り固まっているから、視点の転換なんてできずにいる。
「売り方の工夫」ということになると、規模やシステムを無視してユニクロに価格追随するか、伝わらない広告をファッション雑誌に掲載するか、どこぞのブランドみたいに低価格な日本製を打ち出すか、くらいしかない。

あとは、マニア・ニッチ層に向けた「物作りの取り組み」を過度にクローズアップするかである。

そしてそのどれもが効果が出ていない。

この4つの手法はありきたりになっており、ちょっとやそっとでは消費者の注意を喚起できない。
それはやっているブランド側が痛感しているだろう。
痛感していないとしたらそれはブランドの構成員と経営者の認識力が著しく低いというしかない。

国内のアパレルブランドの場合、粗悪品は除いて、低価格品とはいえそれなりの品質になってしまっているのだから、ミクロな縫製仕様を過度にアピールしてもよほどのマニア以外には響かない。

ありきたりな既存の「吸水速乾素材」を、新たな切り口で「部屋干し専用素材」にするような発想力、売り方を身に付ける必要があるのではないか。


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製造加工業者は「物作り」と同じ熱量を「販促」にも費やせ

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 下請け受注の減少から、自社オリジナル製品の開発を始めた製造加工業者は少なくない。
今では産地企業のブランドも珍しくない。

しかし、その多くはなかなかうまく離陸しない。

その理由は大雑把にいって2つある。

1、商品自体のデザインが良くない
2、商品は良いが売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くない

この2つある。

1が起きる背景には、デザインという「形のない物」に金を払いたくないという製造加工業者特有のメンタリティが働くことがある。
デザイナーへの支払いをケチるあまりに、社内や身内の素人にデザインさせてしまうことがある。
それが成功する場合もあるが、多くの場合は素人は素人であり、売り物のレベルには達していない。

物そのものが良くないのだから、売れなくて当然である。

問題は2の場合だ。
物そのものはそこそこの出来であるのに、売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くないため、期待したほど売れないという状況だ。
最近は、製造加工業のオリジナル企画も向上しているので、こちらの場合の方が多くなっている印象がある。

例えば、ラグジュアリーブランド「〇〇」と同じ素材を使って、それよりも形状も工夫したという商品がある。
しかし、ラグジュアリーブランド「〇〇」ほどは当然売れない。
なぜなら、売り方・見せ方・伝え方・パッケージのレベルが全く異なるからだ。

先日、ある業者から新ブランドについての相談を受けた。
その際、一人の同席者がおられた。

商品自体の出来は及第点を越えていた。
だから「物」だけで勝負できるなら、そこそこの売れ行きが十分に期待できる。

そこで、同席者がこう指摘した。

ハイクラスブランドとの競合を目指すなら、例えばお買い上げいただいたときの「箱」と「ショッパー」は必要ですし、値札や下げ札のデザインにも工夫を凝らす必要があります。ハイクラスブランドはそれらも含めて顧客から支持されているのです。

この指摘は納得である。
同席者は12歳くらい年下と若いが、最先端ブランドで展示会やブランディング、ウェブ、印刷物などのディレクションを行っておられ、その指摘はさすがというほかない。

若くて、いわゆる「クリエイションガー」とだけ無責任に叫んでいるような輩とは一線を画している。

日本人には「ボロは着てても心は錦」を美徳とする部分がある。
小銭にシビアな関西人や地方民はとくにそれをよしとする。

パッケージや見せ方、伝え方などは些末な問題で、「物」そのものの品質やらデザインが良ければ、それでいいじゃないかと考える人は日本人には多い。

「ボロいけど安くて美味い飲食店」が支持されるのもそういう理由がある。

これは一面、たしかにそうなのだが、食品にせよ、ファッション用品にせよ「物」そのものの良し悪しだけで判断できる消費者というのは実際はそれほど多くない。
やっぱり、店構えや箱、ショッパー、ディスプレイ、販売員の態度、ステイタス性などにその判断は大きく左右される。

話は少しそれるが、昨今の店頭の同質化問題の一因は、プロであるバイヤーやマーチャンダイザーまでもが、「物」ではなく、店構えやディスプレイ、ステイタス性で商品を判断してしまっている点にあり、プロの素人化が進んでいるともいえる。

「外装ばかり立派で中身は大したことない」という批判は間違ってはいないが、逆にいえば、「大したこともない商品を高値で売ってそれで消費者を納得させられる」というのは大した手腕だともいえる。
それは単に、小手先のキャッチコピーを付けたり、きれいな外国人モデルを使った広告を出稿するだけでは到底なしえないことである。

しかし、商品自体の出来が良いなら、見せ方・売り方・伝え方・パッケージを工夫すれば売れる可能性が格段に高まる。それをやらないことは非常にもったいない。

しかも昨今は低価格ブランドでも商品自体のデザインやクオリティは水準点に達している。
一昔前のように「安かろう悪かろう」という商品は分野を問わず、かなり減っており、「安かろうそこそこ良かろう」が標準といえる。

そうなると、「物」自体の優劣はそれほどなくなってくるから、見せ方・売り方・パッケージなどの工夫が勝負を左右することになる。

時々、お会いするセメントプロデュースデザインの金谷勉社長から、以前こんな話を聞いた。
大阪の石鹸メーカーをブランディングした際、それまで普通の長方形の石鹸を作っていた地味なメーカーだったが、これを五角形に形状を変更し、パッケージをリニューアルしたところ、かなり売り上げが増え百貨店などからもオファーがあったという。
石鹸の成分そのものは変わっていないにもかかわらずである。

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http://cocoon-soap.com/index.html

製造加工業者はどうしても「作ること」を重視し、それの工夫と改良に邁進する特性があるが、それと同等の熱量を見せ方・売り方・伝え方・パッケージ作りに振り分ける必要がある。
「ボロは着てても心は錦」ではなく、心が錦なら着飾るべきなのである。








陳腐化した「日本製」というキーワード

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 販促ワードとしての「日本製」は陳腐化したと感じる。

ワールドはTHE SHOP TKで「新潟ニット」「長崎シャツ」などを打ち出している。
価格は5500円くらいとなっている。

新潟は五泉というニットの産地があるが、新潟全体がニットの産地ではないから、ニットに詳しい人からすると何とも微妙なネーミングといえる。

新潟ニット



高野口のフェイクファーを和歌山フェイクファーと呼び直すような感じである。

しかし、まあ、わからないではない。

長崎シャツはちょっとわからない。
長崎ちゃんぽんの方がはるかに有名だろう。

長崎シャツ




九州にはシャツの縫製工場が多いから、その背景もあって長崎の工場に決めたのだろうと推測される。
しかし、ウェブサイトに書かれた文言はちょっとわかりにくい。

「220年の歴史、
播州織で仕立てた
長崎シャツ」

と書かれてあり、産地に詳しくない人からすると「播州なのか長崎なのかよくわからない」と感じるのではないか。
それならもっとシンプルに播州織シャツにでもしたほうがわかりやすいのではないか。

さらにサイトには、こうも書かれてある。

そのこだわりを込めた生地は海を渡り、
長崎の工場へと届けられ、
服へと生まれ変わる。

ちょっと大げさすぎないだろうか。
通常、日本語で「海を渡り」といった場合は、海外へ行くことを指す。
日本の四方が海だからだ。

たしかに、播州と長崎の間には海はある。
瀬戸内海と関門海峡だ。
しかし「海を渡る」というにはちょっと狭すぎないか。
せめて日本海くらいは渡ってもらいたい、と思うのは筆者がひねくれているからではないだろう。

まあ、それはさておき。

この業態はおもにショッピングセンターとファッションビルへのテナント出店である。
価格帯は低価格から中価格帯。
ユニクロとほぼ同等か、それに1000円~2000円プラスしたのが中心価格帯になる。

そういう価格帯のブランドまでが「日本製」を打ち出しているのである。
なぜ打ち出すかというとそれが付加価値を高めたり、消費者を動かしてくれるのではないか、とブランド側が考えるからだ。

しかし、そういう価格帯のブランドまでが「日本製」を使うということは、「日本製」という言葉が如何に陳腐化してしまったかということの証明でもある。


だが、これは百歩譲ってもまだ日本製をそれなりに重要視しているといえるが、コムサイズムの打ち出しは最早、日本製を重要視しているとはいえない。

「コムサイズム」、日本の伝統技を海外工場でも
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14922660U7A400C1TI5000/

アパレル大手のファイブフォックス(東京・渋谷)はショッピングセンター向けブランド「コムサイズム」で、国内の伝統技を取り入れた商品群を発売した。職人の技術や伝統的なデザインなどを海外の協力工場に指導し、大量生産して値ごろ感を出す。

とのことだが、言葉もない。

それは単なる無償での海外への技術供与ではないか。
海外工場へ技術を流出させているだけのことではないか。

また、「職人の技術や伝統的なデザイン」というが、製造地は海外工場なわけで、そこに何の付加価値があるのだろうか。
これに付加価値があると考えた人がいるということなのだが、その思考回路はまったく理解ができない。

そもそも、数あるコムサシリーズの中で、コムサイズムは大型スーパー向けに開発された低価格ラインだった。
90年代後半に一大ブームを巻き起こしたユニクロへの対抗策だともっぱら噂になった。

たしかに当初はユニクロとほぼ同価格で、デザイン性はイズムの方が高かったからバーゲン時にはけっこうな人気があった。

けれどもそこから10年、15年が経過すると、価格もユニクロよりも高くなったし、見た目のデザイン以外での打ち出しがそれほどなく、機能性や有名デザイナーとのコラボなどを仕掛けるユニクロとはずいぶんと差ができてしまった。
感じ方は人それぞれだが、筆者個人は現在の商業施設でコムサイズムの存在感をほとんど感じない。
それほどに存在感がなくなってしまった。

だから、起爆剤に「日本製」が使いたかったのだろうと推測する。
しかし、本当の日本製(国内で生産した物)を扱うと店頭販売価格がさらに上がる。
そこで、それを海外工場で作らせることで店頭販売価格を抑えようとしたのだろう。

冷静に考えてもらいたいのだが、コムサには「コムサ・デ・モード」「コムサ・コレクション」などの高価格ラインがある。その両ラインでも「日本製」は扱われている。

そうなると、そちらとのすみわけが難しくなる。

さらにいうと、イズムの海外製の日本製は矛盾に陥ってしまう。

イズムの低価格を「日本の職人技」だとすると、本体の「日本製」の高価格は何なのか?ということになる。

一方、イズムの低価格はあくまでも海外製だとすると、じゃあ、それは単なる海外製でほかの海外製品と同一なんですね、ということになる。

違わないか?

こういう事例を見るにつけても、「日本製」ブームは終了したと感じる。

イズムのような低価格ブランドまでが、製造地は別として「日本製」「日本の職人技」を販促のキーワードにするということが、「日本製」ということに価値がなくなりつつあるということになる。

オッサンまでがスキニーパンツを穿くようになったら、スキニーパンツはトレンドアイテムではなくなってしまったというのと同じである。

物作りを標榜するブランドは、今後、日本製プラスアルファ、職人技プラスアルファの打ち出しが求められることになったということである。

そのプラスアルファを真剣に考えないと、陳腐化した「日本製」では消費者には響かなくなっている。











業界では「当たり前」のことでも世間では知られていない

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 卸売り型の衣料品メーカーは、小売店を招いて展示会を開催する。
小売り店はここで仕入れる商品を発注する。

展示会開催サイクルとしては、従来だと半年前であり、2017年秋冬商品なら、まさに今が開催時期である。
2月から4月末ごろまでが秋冬向け展示会の開催時期で、数多くのブランドがこの時期に開催する。

だから9月から11月ごろは来春夏向け商品の展示会が開催され、古くは春秋の年2回での開催が標準だった。


しかし、90年代後半ごろから店頭での売れ行き状況にクイックに対応する目的から、店頭投入の2カ月前、3か月前に展示会を開催するメーカーが増えた。
この場合は、だいたい年間に3回から5回展示会を開催する。


衣料品業界の人間からすると、投入2カ月前の展示会なんて製造のリードタイムが短すぎて、大丈夫なのかとちょっと心配になるが、衣料品業界外の人からすると「店頭の売れ行き状況の変化は早いのに、そんなに時間をかけて大丈夫なの?」という感想になる。実際に、自分もそう言われたことがある。


衣料品業界に限ったことではないが、業界の「当たり前」が広く世間には知られておらず、それがさらにビジネス環境を難しくしているという側面がある。


まともに衣料品を企画提案して、製造するとなると、受注数をまとめてから2カ月くらいで店頭納入するというのはかなりギリギリの作業になる。
製造枚数にもよるが、生地からオリジナルで作るとなると、さらに日程はギリギリになってしまう。


会社や製造物、製造数量によっても異なるが、ざっくりとした目安でいうと、オリジナルの生地を必要分だけ製造するのに最低でも1カ月弱はかかる。そこから生地を裁断して縫製するのに、また最低でも1カ月弱はかかる。こういうことが周知されていれば、2カ月前の展示会開催ということはかなりギリギリだということが理解できる。
大手生地問屋が抱えている生地を使用するなら、生地を作る時間だけは省ける。

先日、西陣織の業者がツイッター上で炎上したが、その後、状況が知られるとともに騒ぎは沈静化した。
ご存知の方も多いと思うが、業者が技術伝承を目的に弟子を募集したのだが、

「西陣織を習いたい、将来的に仕事にしたい方を募集します。ただし最初の半年は給与的なものも出ませんし、その後の仕事を保証はできません。ただ、この西陣織の職人が減りゆくなか、将来的に技術を覚えておきたい方に無料で教授いたします」

と書いてしまって、ブラック企業だという批判が続出した。

しかし、この業者の書き込みは内情を知っている人間からすると、そういう意図がなかったと読み取れるし、実際に業者も後付けだが「習い事をする感覚で入門してもらいたい」とそういう説明をしている。

現在、西陣織に限らず、技術者は老齢化している。国内の洋服縫製工場も同じで最年少工員は60代という工場だって珍しくない。
技術を伝えるためには後継者を募集しなくてはならないのだが、なかなか集まらない。

賃金が低いからだ。

低価格衣料が注目されている洋服関係の賃金が低いことは多くの人は体感的に理解できるが、何十万円もする着物関係の職人が低賃金だということは多くの人はあまり理解できていなかったのではないか。

「半年給与なし。仕事保証なし」  京都・西陣織職人の「弟子募集」はブラックと言えるのか
http://www.j-cast.com/2017/03/18293227.html?p=all

これはきちんと取材をした良記事だがこの中で、

「いま、西陣織の職人の平均年齢は75歳程度です。こうした熟練の職人は、もう年金を貰っていますよね。そこで起きたのが、年金の支給額を踏まえた上で『工賃』が決まるといった現象なんです」

   佐々木さんによれば、こうした動きによって西陣織全体の工賃の相場が大きく下がることになった。その結果、「西陣織だけでは家族を支えていくことができない」と判断した40~50代の職人が、次々と転職するという動きが出た。

とある。

今の主力となる職人は75歳前後であり、彼らは年金を支給されている。
その年金額があって、そこに少しだけ工賃をプラスオンするという仕組みになっている。

何十万円・何百万円の商品を製造しているのに工賃は安いのである。
おそらく工賃は1カ月トータルで数万円程度なのではないかと個人的には推測している。

それが基準になるので、若い世代の職人に支払われる工賃も激安になる。
支払う側からすると「超ベテラン(75歳)の職人がこの工賃なのに、どうして年数の浅い君らにこれ以上を支払わなくてはならないのか」という理屈が成り立っているということになる。

そういう状況だということは業界に近しい人間なら知っているが、広く世間一般には知られていない。

だから、反射的に「ブラックだ」という批判が出てしまったのではないか。
知らない人間からすると何十万円もの商品を作っているのだから、それなりに高い工賃をもらっていると想像できてしまう。

ちなみに何十万円もする着物なのに工賃が異様に安くなってしまったのは、着物の売れ行きが不振になったことに加えて、着物業界の取引が何段階もの多重構造のままであることが理由として挙げられる。
洋服のようなSPA業態はなかなか着物は難しいだろうが、多重構造を少しシンプルにするだけで、販売価格を下げられるか、職人の工賃を上げられるか、ができるようになる。

今回、このブログで何が言いたかったのかというと、業界で「当たり前と思われていることも広く知らしめる必要があるのではないかということである。

そうすれば今回のような炎上は起きなかっただろうし、洋服ブランドが2カ月前に展示会を開催して「遅い」と批判されることもない。

各社、各業界とも情報発信に力を入れ始めているが、そういう基本的な「当たり前」のことも発信すべきではないかと思う。

基本がコモンセンスとして共有されていないから、各社の発信が伝わりにくいのではないかと思う。
業界や自分たちが「当たり前」と思っていることが、実はあまり知られていないと事例だということは、想像以上にあるのではないか。
それをコモンセンス化できれば商況が好転する部分も出てくるのではないかと思う。和装洋装に限らず。

日本の工芸を元気にする!
中川 政七
東洋経済新報社
2017-02-24




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