南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

企業研究

社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

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 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。


バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。


で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。


ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25





表面的な低価格だけを真似て、本質的なサプライチェーンマネジメントを真似ずに凋落した国内大手アパレル各社

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 無印良品が今秋物から一部商品の価格を値下げするそうだ。

https://www.wwdjapan.com/427449

無印良品を運営する良品計画は、今年の春夏に続き、秋冬にも衣料品113点を値下げする。工場を集約すると共に、下着類はファミリマートやサークルKなどのコンビニ約1万8000店舗での展開による大量生産でコストを削減。品質を維持しながら合理化を徹底し、価格を改定することで集客力を高める。秋冬衣料は8月から順次販売する。

紳士用ボクサーブリーフは2枚セット価格を1490円から990円に、婦人用ショーツも同1490円から1290円に値下げする。さらに、秋冬から強化する軽量ダウンは、ブルゾン型を7980円から5990円に、ベスト型を5980円から3990円に値下げする。


とのことだ。

今回の値下げの要因は下着に関しては、コンビニ1万8000店で販売するというスケールメリットを生かしたものだ。
例えば、1店舗あたりに20パックを配布するとして、全店合計すると72万枚(36万セット)のボクサーブリーフが生産できることになり、これほどの枚数があれば、1枚当たりの工賃を引き下げることも、生地値を安くすることも可能になる。

軽量ダウンが安くなる要因は書かれていないが、工賃を叩く以外にも、閑散期に注文する、製造枚数を増やすなどの手法で安くできる。
とくに縫製工場は閑散期に仕事が入ると経営者としてはありがたいから、ダウンに限らず、縫製工賃を安めに設定してもらえる。
この手法は初歩の初歩である。

ユニクロしかり、ジーユーしかり、この無印良品しかり、だが、いよいよスケールメリットのある大資本と、スケールメリットのないそれ以外の弱小アパレル(かつての国内大手アパレルも含む)との差がさらに顕著になってきたと感じる。

ところで、じゃあ、どうしてかつての国内大手アパレルがこの手法を使えなかったのかについて、手短にまとめてみたい。
衣料品生産についてお詳しい方は読む必要がない。極めて基本的なことなので。

ワールドを例に出してみよう。
売上高が3000億円弱あり、年商規模からいえば、相当に大きい。
ジーユーは2000億円弱だからそれよりも大きいことになる。

だったらジーユーと同じスケールメリットを生かした生産方法で、低価格商品を実現できそうなものだが、現実はそうではない。

ワールドでいえば、ピーク時に100前後もブランドがあった。
今はある程度廃止しているが、それでも50ブランドは上回る。

ワールドとしての店舗数でいえば、かなりの店舗数があるが、各ブランドごとの店舗数で見ると、それほど店舗数は多くない。
おわかりだろうか?

100ブランドで1000店舗あっても、1ブランドあたりの平均店舗数は10店しかない。もちろん、実際の店舗数はブランドの強弱によって多い少ないの差は出てくる。
ドレステリアのように5店舗ほどしかなかったブランドもあれば、200店・300店展開するブランドもある。
しかし、無印良品のコンビニ1万8000店と比べると桁違いに少ない。

また、ジーユーは1ブランドで2000億円の売上高があるが、ワールドは100ブランド併せて3000億円である。
となると、1ブランドあたりの売上高はせいぜい200億円とか300億円程度が頂点である。
ジーユーとワールドの各ブランドでは、ブランド規模としては圧倒的に差があるということである。

ユニクロに対しても同じだ。
ユニクロは1ブランドで国内売上高8000億円ある。

となると、ユニクロ、ジーユーに比べると、ワールドは1ブランドあたりの売上高が小さく、売れる枚数も少ないということになり、店舗数から考えても、1ブランドあたりの売り上げ規模から考えてもスケールメリットは発揮できない。
これはワールドに限らず、オンワード樫山、三陽商会、TSIホールディングス、イトキン、すべて同じである。
違うのは抱えているブランドの数だけだ。

自社の特性を知ったうえで、価格維持政策を旧大手アパレルが採ればよかったのだが、98年のユニクロブームに慌てふためいて、スケールメリットがないのに低価格対応したことが、大手の凋落する原因の一つにもなった。

スケールメリットがないのに価格対応をすればどうなるかというと、原価率・工賃を下げ、商品が粗悪品になる。
おまけにPOSデータへの過剰な信頼による売れ筋の無限リピート生産と他社の売れ筋丸パクリ、OEM/ODM生産への丸投げが相まって商品は自社内だけではなく、他社間でも同質化してしまった。

品質が悪い上に各ブランドでデザインが同質化してしまったなら、そんな商品が売れるわけもない。売れなくて当たり前である。しかも価格はユニクロよりも微妙に高いままであり、売れるはずがない。


旧大手アパレル各社は、ユニクロの表面的な価格だけを真似、スケールメリットを生かしたサプライチェーンマネージメントという本質を真似ることを考えなかった。


旧大手アパレル各社は負けるべくして負けたといえる。
まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」である。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



多動力 (NewsPicks Book)
堀江 貴文
幻冬舎
2017-05-27





ネット売上高の増加も実店舗売上高の減少をカバーできなかったユナイテッドアローズの5月度売上概況

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 ユナイテッドアローズの5月度売り上げ概況が公表されたが厳しい結果だったといえる。

全社売上高は対前期比4・2%減に終わった。
これだけなら「単に苦戦傾向だったのだな」という話だが、全社売上高の中に含まれているネット通販全店合計売上高は対前期比32・5%増と大幅に増えている。

ネット通販が32・5%も伸びているのに、全店売上高は4・2%減に終わっているということは実店舗売上高がどれだけ低かったのかということになる。

ちなみにアウトレット売上高も対前期比12・7%増となっているから、いかに正規実店舗の売上高が低かったかがわかる。

ネット通販が32・5%増、アウトレットが12・7%と伸びているにもかかわらず、全店売上高は4・2%減なのだから、2つのことが浮かび上がる。

1、正規実店舗の苦戦
2、ネット通販、アウトレットの売上高の小ささ

である。

また5月度は小売全店客数も対前期比3・2%減だから、相当に厳しかったといえる。

4月度も傾向は同じで、ネット通販合計が23・9%増にもかかわらず、全店売上高は1・3%減に終わっている。

ユナイテッドアローズの2017年3月期単体の決算では、ネット通販売上高は202億円、アウトレット売上高は170億円となっている。

このときもネット通販売上高は対前期比で39億円伸びているのに対して、小売(実店舗売上高)は3億1700万円縮小している。アウトレットは3億2900万円増えている。

アウトレットの増加を実店舗売上高の減少で相殺して、ネット通販だけが増えているということになる。


昨今、トレンドに流されやすいアパレル業界の経営方針は、「ネット通販強化」「ネット販売比率向上」を金科玉条のように振りかざして、全員で右へならえを繰り広げているが、これの実現は比較的容易である。

アパレル製品のネット通販売上高は各社とも元が低いので、売上高を伸ばすことは比較的たやすい。
例えば、1000万円の売上高を1500万円に伸ばすことは比較的たやすいが、500億円の売上高を600億円に伸ばすことはかなり難しい。

アパレルブランドの中でもっともネット通販売上高が大きいのがユニクロで、400億円超ある。
当たり前だが他のアパレルブランドのネット通販売上高はこれよりも小さい。

金額自体が小さいものを伸ばすのは比較的簡単だから、各ブランドのネット売上高はしばらくの間は伸び続けるのは当たり前の話である。

また、そうなると自然とネット通販比率は上がるし、ユナイテッドアローズに限らず実店舗売上高は下がるだろうから、ネット通販比率はさらに上昇することになる。

帳簿上の目標はすぐに達成できるだろうが、内実は各社・各ブランドともボロボロになってしまっているという事例は今後珍しいことではなくなるのではないかと思われる。

アメリカではすでに商業施設も含めた大閉店ラッシュが訪れているが、この要因の一つはネット通販の増加と反比例した実店舗売上高の激減だといわれている。

昨年前半ごろまでわが国で「オムニチャネルがー」と叫んでいたオムニチャネラーたちは、おそらくこういう事態を想定していなかったのではないかと勝手に推察している。

実店舗売上高は現状維持ないしは微減で、ネット売上高の大幅増加で、ブランド全体は微増ないし激増という未来図を「口だけオムニチャネラー」たちは思い描いていたのではないか?

しかし、いくら目新しい売り場・売り先が増えても、大衆の可処分所得が増えなければ、どこかほかの売り場での買い物を減らすだけのことである。
これは我が国だけのことではなく、アメリカ人も同じ傾向だったといえる。

ネット通販が増えた分、実店舗での買い物を減らしたというのがアメリカ社会の現在だし、ユナイテッドアローズの4月度・5月度売り上げ概況を見ているとそれと同じ状況であることがわかる。


今後、各社・各ブランドのネット通販売上高は増え続けるだろうが、それに反比例して実店舗売上高は減り続けるだろう。


アメリカと同じくらいの規模で起きるのかどうかはわからないが、商業施設も含めての大閉店ラッシュは近い将来起きると考えられる。
ワールドやイトキン、TSIなどの閉店ラッシュ、地方小型百貨店の閉店ラッシュを見ていると、もうすでに起こり始めているのではないかとも思う。


ネット通販売上高が増えてみんなハッピー.。゚+.(・∀・)゚+.゚


なんて、そんなおいしい話は日本にもアメリカにも存在していない。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25




「ジーンズカジュアル業界」なんて枠組みはとっくの昔になくなっていた

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 先日、繊研プラスにこんな記事が掲載された。

マックハウス白土氏“ジーンズカジュアル業界”は幻想
https://senken.co.jp/posts/machouse-siratuchi-170526

極めて当たり前のことであり、「ジーンズカジュアル業界」の要職におられる方がようやくまともな認識になったのだと感じた。

ところが、小島健輔さんのブログを拝読すると、業界ではこの発言に衝撃を受けておられる人がいるそうで、その人々の認識の古さにこちらこそ衝撃を受けている次第である。

ここでいう「ジーンズカジュアル業界」だが、製造・加工業やメーカーと川下に位置する流通で分けて考える必要があることはいうまでもない。

製造加工業やメーカーにはそれぞれ得手不得手がある。
卸売り型アパレルメーカーにも得手不得手がある。

だからこれらについては「ジーンズカジュアル業界」というくくりは依然として存在するし、この先もある程度はそのくくりは存続し続けると考えられる。

ジーンズや厚手カジュアルパンツの縫製が得意な工場と、ウールのスラックスが得意な工場という枠組みは存続するし、ジーンズカジュアルパンツが得意なアパレルメーカーと、婦人ブラウスが得意なアパレルメーカーの枠組みが崩れることもない。

徐々に作れるものを増やしていくということはありえるだろうが、一気に他ジャンルと融合してしまうようなことはない。工場でいえば設備投資が必要だから、とくに難しい。

しかし、小売店やトータル展開のブランドにおいては「ジーンズカジュアル業界」なんていうのは幻想にすぎない。

なぜなら、それらを利用する消費者はテイストミックスで日々衣服を身に付けているからだ。

スーツや作業現場の制服はその限りではないが、それ以外の場合はいずれもテイストミックスで日々着用している。

例えば、スエットやスエットパーカ、スニーカーは元来、スポーツアイテムである。
ジーンズだとワーキング、アメカジ。
テイラードジャケットはトラッド、ドレス。
MA-1ブルゾンはミリタリー、バスクシャツはマリン、マウンテンパーカはアウトドア。

といった具合である。

ジーンズにウエスタンシャツにウエスタンブーツみたいな感じで、すべてのアイテムのテイストを統一して着ている人はまずいない。

Tシャツにジーンズにテイラードジャケットとか、ジーンズとスエットとMA-1ブルゾンとかいうふうに必ずテイストをミックスして着ている。

チノパンにデニムシャツにテイラードジャケットを着てスニーカーを履くなんていうのもテイストミックスだ。

となると「ジーンズカジュアル」テイストで統一して服を買い続ける人はほとんどいないということになる。
消費者やファッションにとっては「ジーンズカジュアル業界」なんていうカテゴリーはとっくの昔になくなっており、それこそ、業界の人が勝手に持っていた幻想にすぎない。

それにいわゆるジーンズカジュアルショップを除いて、ほとんどのショップにはジーンズが1型くらいは並んでいる。

スーツカンパニーにもデニムパンツは並んでいるし、ビームスやユナイテッドアローズにも並んでいる。
ユニクロは日本でもっともたくさんジーンズを販売していると思うが、ジーンズカジュアルテイストの商品だけではなく、テイラードジャケットもスポーツウェアも並べている。

ほとんどのショップはすでにテイストミックスで販売しており、「ジーンズカジュアル業界」という幻想にこだわっていたのは、ほんの一握りのジーンズカジュアルチェーン店のみにすぎない。

そして、ジーンズカジュアルチェーン店自体が失速傾向にある今、その枠組みはマイノリティに落ちてしまったといえる。


マックハウスはようやくまともな認識になったと見るべきで、驚くには値しない。


ただし、マックハウスの今の施策がヒットするとも思えない。
企業はもちろん、試行錯誤を繰り返し正解を作り上げていくものだが、今のマックハウスは試行錯誤段階にあるといえる。

新形態の「スーパーストア」だが、画像で見る限りはどうもユニクロのレディース売り場の類似に見えて仕方がない。これをビジカジスタイルの新提案といわれても、新鮮味はほとんどない。

またビジカジスタイルはユニクロをはじめ、スーツカンパニーなどでもすでに大量に提案されており、新規参入組はかなりの苦戦が強いられると考えられる。

マックハウスの知名度とブランドイメージとステイタス性をもってそこに参入するにはよほどの新機軸が必要となるのではないか。
単にオールドネイビーの空き地に出店しましたというだけでは消費者は集まらないし、注目もしない。


客を集めるための仕掛けも練らないといけないし、新機軸も打ち出さないといけない。

試行錯誤を経てどのような新形態を完成させるのか期待して眺めていたい。ただし、試行錯誤のまま新形態がものにならない場合もある。はてさてどのような結末を迎えるのか。



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高感度高価格帯セレクトショップの成長には限界がある

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 企業規模にかかわらず、売上高は客単価×買い上げ客数からしか生み出されない。

売上高を拡大しようと思えば、客単価か買い上げ客数か、その両方かを上げなくてはならない。

高価格帯は必然的に客単価も買い上げ客数も上昇限界点は比較的すぐに来るし、低価格帯は客単価アップはあまり望めないものの、買い上げ客数はかなり増やすことができる。

ユナイテッドアローズの今回の決算発表は、高価格帯衣料品の限界点というものが露呈したのではないかと感じられた。

今後の成長エンジンとして、UAは中価格帯のグリーンレーベルリラクシングと低価格帯のコーエンを拡大させるという方針を打ち出している。

UAの新中期ビジョン GLR、コーエンを拡大
https://senken.co.jp/posts/united-arrows-new-medium-term-vision

ちなみに2017年3月期連結は売上高1455億3500万円(前年同期比3.3%増)、営業利益91億6500万円(17.2%減)、経常利益94億2000万円(15.7%減)、当期利益51億9100万円(20.1%減)の増収大幅減益に終わっている。

そこでUAが次なる成長戦略として打ち出したのが、高価格帯の本体はあきらめて、グリーレーベルリラクシングとコーエンの拡大だったというわけで、WWDではもっと露骨に「中・低価格業態に軸足移す」という見出しを付けている。

このUAの判断はある意味で正しいといえる。
高価格帯衣料品の拡大には限界点が絶対にある。
富裕層の人口には限りがあるし、貧しい人は憧れても収入的に買うことが難しい。
貧しい人の中にも「万代で65円に値下がりした6枚切りの食パンを買って節約してでも毎年5万円の洋服を1枚は買う」というような人もいるが、そんな人はごく少数しかいない。到底1000億円企業の成長エンジンになるはずもない。客単価面からも人口面からも。

IMG_2849

(万代で買った65円に値下げされた6枚切り食パン)



となると、買いやすい価格帯のブランドを拡大するしか成長は望めない。

低価格ブランドなら客単価の上昇は望めなくても、買い上げ客数の大幅増加は見込める。まあ、中価格帯も高価格帯に比べれば買い上げ客数の増加は実現しやすいだろう。

高価格帯を主力としながら、売上高1000億円規模を越えれば、そこが限界で、高価格帯のままさらなる成長を望むなら、それはグローバル展開しかない。
要するに国内の人間は食い散らかしたから、全世界の人間を食うということであり、これを顕著にやっているのが欧米のラグジュアリーブランドだといえる。

あんな馬鹿高い商品は欧米では富裕層しか絶対に買わないから、国内市場ではすぐに限界点に達する。成長し続けようと考えるなら、他国の富裕層をすべて取り込むしかない。

欧米ラグジュアリーブランドには及ばないもののUAの価格帯でもほぼ同じことがいえる。

ファッション業界には売り上げ規模とか市場規模とかに無頓着なオサレさんもたくさんおられて、「他の高価格帯セレクトショップは成長できているではないか」という主張が聞こえてきたりするのだが、それは売上高が20億円とか50億円程度だから「まだ伸び代がある」というだけのことで、そのセレクトショップも1000億円を越えるならUAと同じ状況に陥ることになる。

8000億円もの売上高をユニクロが稼ぐことができたのは低価格帯だからであり、ユニクロがUAのような商品しか扱っていなかったならそこまで買い上げ客数を増やすことは不可能だった。

繊研プラスには2019年と2020年の業績予想グラフが掲載されているが、微増収微増益である。
売上高1500~1600億円くらいの推移である。2000億円にははるかに及ばない。
これは本当に冷静に推測したと感じる。

UAという高価格セレクトショップの伸び代はこのくらいしかないと思う。

しかし、個人的にはグリーンレーベルリラクシングとコーエンの成長性については疑問を感じる。

まず、グリーンレーベルリラクシングだが、価格帯が中途半端で低価格店と並ぶと見劣りする。
筆者愛用の「あべのキューズモール」の2階にグリーンレーベルリラクシングが入店したのだが、他の施設内店舗と比べるとやっぱり「高い」と感じる。

あべのHOOPにあったころにはそれなりににぎわっていたように見えるが、キューズモールに移転してからはあまり店内に人がいるのを見たことがない。

同じ2階にグローバルワークやアズールやZARAがあり、「高い」と感じられてしまう。
夏冬のセール時期は特にだ。

グローバルワークやアズール、ZARAの値下げ率、値引き率は大きく、GLRは小さい。

となると、GLRの出店場所は都心ファッションビルに限定される。
都心ファッションビルだけでそこまで劇的に拡大は難しいだろう。

次にコーエンである。

コーエンは価格的には買い上げ客数を増やしやすいが、商品内容は以前よりは向上したとはいえ、他の低価格ブランドと比べるとイマイチ特色がない。
それに低価格ゾーンはユニクロ、ジーユー、H&M、しまむら、ウィゴーなど強豪がひしめいており、顧客対象人口は多いものの、シェアを拡大することはかなり難しい。

また人材面からもUAというオサレ企業には難しいのではないかと思う。

GLRはまだしもコーエンにそこまで「高感度人材」は必要ない。
しかしUAという高感度セレクトショップに入社した人間はほぼもれなく「高感度志向」か「高感度気取り」であり、そこに人材と市場のミスマッチを感じる。
低価格市場専用の人材を多数導入しないと現状の「高感度志向」「高感度気取り」の人材だけでは難しいのではないか。

これはあくまでも個人的主観に過ぎないが、株式公開は高感度高価格帯セレクトショップという業態には不向きではないかと思っている。株式公開をすると株主からは持続的な成長を求める。これは当たり前なのだが、高感度高価格帯セレクトショップという業態では本来、対応し続けられない。

UAはなかなか厳しい舵取りが続くのではないかと思う。



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UAの信念 ―すべてはお客様のために
ユナイテッドアローズ
日経事業出版センター
2014-10-21




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