南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

企業研究

日登美の新社長にお会いしてきた話

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 今日は日記みたいな感じで。

先日、久しぶりに日登美の展示会にお邪魔した。
日登美は百貨店向けのメンズパジャマとシニアメンズカジュアルのメーカーだ。

驚いたのが昨年10月に日登美の図師雅文・前社長が急逝されたことだ。
その半年くらい前に大阪展示会でお会いしていたので、ちょっと驚いたのだが、業界紙の報道によると交通事故とのことだった。

もうかれこれ、20年前から断続的にお付き合いしていただいていたのだが、それは突然終わってしまった。

50歳手前になると人を見送ることが多くなり、自分の番もそう遠いことではないと改めて実感する。

そういえば、図師社長の身内を会社で見かけたことがなかったので後継をどうするのだろうと思っていたら、女性が新社長に就任したという記事を業界紙で見かけた。

メンズのパジャマとカジュアルウェアの会社で、社内も男性社員の方が多いから、女性が新社長になるというのは意外だった。


業界紙を読むと、ご息女ということだが、前社長には実子がいなかったため、姪御さんを後継として養子縁組をしたのだそうだ。
証券会社出身とのことで、ビジネスの仕組みやカネの流れについての理解は明るいのではないかと想像した。


古株の副社長、常務はご健在だから、いきさつをお聞きすると、事業を後継するために前社長の亡くなる何か月か前に養子縁組し、本来ならそこから数年間でアパレル業務を勉強してから後継する予定だったが、前社長の急逝で前倒しとなってしまった。


そんなわけで、いざ、新社長の図師綾さんにお会いしてみると、予想外にお若かった。
初対面の女性に年齢を尋ねるわけにもいかないので、20代後半から30代前半くらいだろうと思う。
50歳手前になると20代後半も30代前半もそんなに違いがわからない。

10代、20代の若者が47歳と52歳を区別できないのと同じである。

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(図師綾新社長)


年配の男性社員ばかりの中に若い女性社長というのはちょっと奇異な印象も受けるが、実際に展示会場で見ていると、それなりに溶け込んでいたようで、文字通り「男くさい(笑)」社風がこれからは少し変わるのではないかとも思った。

新社長とお話した感想をいえば、まだ半年なので業界のことに対しては不慣れな感じがあるが、古株の役員がサポートしておられるので、そんなに手ひどい失敗はないと思われるし、おいおいと業界のことには慣れていくのではないかと思う。

前社長の急逝、新社長の急登板という状況なので、事業内容そのものには大きな変化がない。

需要が急増もしない代わりに急減もない百貨店パジャマを基盤にしつつ、メンズカジュアルを展開する。

この展示会訪問で、以前にもこのブログで紹介した谷野美智雄・副社長のコメントを聞かせてもらった。

そう、「物作りが上手い同業他社が、得意とする物作りに注力して売り場変化に対応できず消え去っていった」という内容のあのコメントだ。

カジュアルのVUMPS(ヴァンプス)では、色落ちしにくいデニム生地を使ったパンツとジャケットが提案されていたのが印象に残った。

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(ヴァンプスの色落ちしにくいデニム製品)


これが提案されたのは、通常のデニム生地を使った商品を着用して白いシートの自動車に乗ると、シートにブルーが移染したというクレームがあったことがきっかけとなった。
まあ、その色落ちこそがデニム生地本来の魅力ではあるのだが、それをデメリットに感じるという人も確実にいるということだ。

ちょうど同じ時期に2017秋冬展示会が開催されたジョンブルでも色落ちしにくいデニム生地を使ったGジャンとジーンズが提案されており、こちらは「濃色が気に入っているのでこれ以上色落ちしてほしくない」というファッション的な要望があったことが製造するきっかけとなっている。

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(ジョンブルの色落ちしにくいデニムブルゾン)


デニム関係者やジーンズ業界人の多くは、「デニムは本来色落ちするもの」「色落ちするからこそデニム」という考え方を多かれ少なかれ持っている。
デニムの本来の定義からするとそれはその通りなのだが、色落ちしないでほしいという需要は確実に存在する。

筆者もそのうちの一人で、リジッド(ノンウォッシュ)やワンウォッシュなどの濃紺ジーンズを買った場合、できるだけ色落ちしてほしくないと思う。
なぜなら、その「濃紺」という色を気に入って買っているからだ。色落ちするのは仕方がないとあきらめてはいるが、可能ならばできるだけ色落ちしてほしくない。

筆者のように「色そのもの」が気に入って買っている人間からすると、3年後か5年後に「色が変わってしまう」とそれは別の商品になってしまうからだ。

濃紺のパンツを買ったのに、5年後には薄ブルーのパンツへと「変色」してしまうのなら、その商品を買う理由、所有し続ける理由がなくなってしまう。
それなら、デニムほど色落ちしない濃紺のパンツを買って所有し続けるという選択をする。

あらかじめ色落ち加工を施されたデニムでも同じで、その色落ち具合が気に入って買ったのに、5年後はさらにブルーが薄くなってしまうのなら、無邪気には喜べない。

色落ちしにくいデニムへの要望が少なからずあるということは、デニムが「特別で独立した」な生地ではなく、数ある色の中での一色に過ぎないと見ている消費者が相当数いるということではないか。

需要を作る、消費者を啓蒙するというのも一つのビジネススタイルだが、需要のある商材を供給するというのも一つのビジネススタイルである。色落ちしにくいデニム生地を欲しいという層があるなら、そこへ商品を供給するのも立派なビジネススタイルだといえる。個人的にはデニム業界はその需要を取り込んだ方が良いと思う。

「本物のジーンズとは」「本物のデニムとは」と、作り手のこだわり・マニアのこだわりばかりを押し付けていても仕方がない。

そうそう、日登美がAmazonへの出品ということでごく少数の型数からネット通販を始めたので、ここにアフィリエイトをいくつか貼っておく。(笑)












レナウンの低価格ブランド計画は「隣の芝生」が青く見えただけでは?

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 また今年も月に何度かのファッション専門学校での講義が始まったのだが、若い人たちとの業界認識の差に驚かされる。

何かの話の拍子にレナウンという企業を取り上げたのだが、10人くらいの新1年生は全員、レナウンという社名を知らなかった。また2年生もレナウンという企業名を知らなかった。
身の回りの少人数に対する調査なので「若者全体」に敷衍することは難しいが、レナウンという企業は、年配層やレナウン社員が思っている以上に、若者への認知度は低い。

今回も「若者は不勉強」という老害の批判は相手にしない。
なぜなら、業界人でもない若い人が勉強するのは興味を持つ事柄に限られていて当たり前だからだ。

少なくとも彼らの生活においてレナウンはこれまで、まったくかかわりがなかったということだし、下手をすると彼らの親もレナウンの製品とはかかわりのない生活を送っているということになる。

昨日でめでたく?47歳になった筆者でもレナウンの製品を買うことなんてほとんどない。
昨年に4枚1000円のレナウン製のボクサーブリーフを西友で買ったくらいしかない。それ以外のレナウン商品は10年間買ったことがない。

その昔、Jクルーをライセンス生産していたことがあり、その時にバーゲンで1枚か2枚くらいを買ったことがあったかもしれないが、愛用するには至らなかった。
当時、GAPやユニクロが台頭していたので、比較対象すると割高感があった。
またチノパンやらジーンズも製造販売されていたが、リーバイスやエドウインの7900円、8900円ラインに比べても割高感があった。

次に、サイズ感が異様にデカかったことも愛用しなかった理由である。
アイビー調のカジュアルテイストは好きだったが、他ブランドに比べるとサイズが異様に大きかった。
メタボのオッサンをターゲットにしていたのかと疑問を持ったほどだ。

余談だが、レナウンとの契約を解消したJクルーはアメリカで人気ブランドとなったが、現在は巨額の赤字に苦しんでいる。3年くらい前に突然巨額の赤字転落をしたので、それまでの好調は不良在庫を計上していなかっただけなのではないかと疑っている。

現在、レナウンのブランドラインナップは10年前同様にパッとしない。

ステイタス性があって、「憧れ」対象になるのはアクアスキュータムくらいだろう。
シンプルライフもエンスイートもシルバー向けブランドという認識しかない。バッタ屋で投げ売られても買わない。
アーノルドパーマー、プレイボーイは微妙な印象だ。

合併されたダーバンのスーツはそれなりに評価が高いが、それ以外は完全に存在感がない。

業界人ならレナウンという社名はご存知だろうが、注目しているブランドがあるだろうか?
おそらく業界人と言えどもほとんどないのではないか。

そんなレナウンが、SC(ショッピングセンター)向け・ECサイト向けの低価格ブランドを開発すると発表した。

レナウンが低価格ブランド 18年春発売
https://www.wwdjapan.com/411021

薄ら笑いを浮かべながら「へぇ~」と生返事をするほかないのだが、よほどの「仕掛け」が無い限り失敗に終わると予測する。

SC向け・EC向けの低価格ブランドはレッドオーシャンの血の海状態である。

ユニクロ、ジーユー、ウィゴー、H&M、グローバルワーク、センスオブプレイス、ストライプインターの各ブランドなどなど強豪が犇めきあっている。

これらの強豪(競合ではない。レナウンとは比べ物にならないからだ)各社は、良し悪しは別としてローコストオペレーションを確立している。今まで百貨店を主体にしながらそれでも売れなかったレナウンが付け焼刃で参戦して太刀打ちできるはずがない。

格闘技でいえば、これらの強豪は段位や達人クラスで、新参者のレナウンは白帯の入門者だといえ、まともな勝負にはなりえない。

売上高は早期に50億円を目指すと伝えられているが、そこまでたどり着けずに終わるのではないかと見ている。

今回のレナウンの発表を読むと、「百貨店で売れないからSC・EC」という安易な発想が背景にあると感じられる。そんな安易な発想でやれるほど、SC向けの低価格ブランドは甘くない。

強豪はすでにスケールメリットで収益体制を確立できている中で、今からスケールメリットを目指して構築していくレナウンがどれほど不利なのかは、ビジネス経験者なら容易に予測できるのではないか。

また、ECサイトへの言及も今更ジローであろう。
すでにレナウンもECサイトで各ブランドの販売を行っているが、売上高は7億円とか8億円規模にとどまっている。
赤字とはいえ、650億円もの売上高があるにもかかわらずである。

これまでどれほど、ECサイトでの販売に力を入れてなかったか、どれだけ下手くそだったかが明らかである。
それが新ブランドを発売するとはいえ、急にECサイトでの売上高が増えるようにはならない。
ECこそ、よほどの仕掛けが必要で、レナウンという会社の知名度は自社が思っているほど高くないから、知名度で多くの人がウェブ検索をして流入してくれることを期待はできない。

百貨店でも売上高が回復せず赤字転落し、新ブランド開発も成功しなかったため、これまで自社では手つかずだったSC/EC向けの低価格ブランド開発という結論に達したのだろうが、これは単に「隣の芝生は青かった」というだけに過ぎないのではないかと思う。

自らの会社を有名だと過信しているならそれはすぐさま捨て去るべきで、そうでなければ、今回のSC/EC向けの低価格ブランドが成功することはかなり難しいだろう。














自社の「強み」が「弱み」に転じるとき

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 自社の強みと弱みを把握するというのはどんな企業でも心掛けていると思うのだが、これが実は想像以上に難しい。なぜなら、強みと弱みは同じなので、これが状況によって強みが弱みに転じてしまうからだ。

伊勢丹新宿本店の商品陳列は、特殊で、ブランドごとではなく商品ごとに陳列されている。
また可能な限りブランドごとを壁で区切っていない。

この陳列方法が新宿本店の独自性であり、年間売上高日本一を記録し続けるほどに消費者に支持されている「強み」だと広く認識されている。

しかし、この「強み」が時として「弱み」に転じることがある。

直近でいえば、「クリスチャン・ルブタン」の化粧品の出店誘致である。
昨年6月に、ルブタンは銀座松屋と阪急うめだ本店に化粧品を出店した。

伊勢丹新宿本店も誘致活動を行っていたらしい。
しかし、結果はルブタンに選ばれなかった。

その理由は、「ブランドごとに壁がない」ことだった。

ルブタンは、ブランドごとに壁で区切られている売り場を作りたいと考えていたようで、その条件に合致した銀座松屋と阪急うめだ本店を選んだということであり、昨年インタビューした際に三越伊勢丹HDの大西洋・前社長に明かしていただいた。

伊勢丹新宿本店が「強み」として掲げていたことが、「弱み」に転じたことで、当時、大西前社長は「衝撃を受けた」とおっしゃっていた。

今後も、ルブタンと同様の観点を持つブランドが必ず出現するだろう。
そういうブランドが数少ない間は、伊勢丹式陳列は強みであり続けるが、そういうブランドが数多く増えた場合は確実に弱みになる。

その際、変化に対応するのか、それとも従来の姿勢を守り続けるのかが、企業経営者の判断が問われる。

変化に対応すればもちろん反対意見も噴出する。
一方、従来の姿勢を守り続けるのなら、確固たる考え方と、それを補う施策が求めらる。
ただ単に「これが昔からのうちの強みだから」という姿勢のままでは確実に苦境に陥る。

先日、久しぶりに百貨店向けパジャマ・メンズカジュアルアパレルの日登美の展示会にお邪魔した。

その際、谷野美智雄・副社長からこんな話を聞いた。
以前にも書いたように百貨店向け平場メンズカジュアルメーカーというのは、減り続けて現在は残存者利益が出ているが、減り続けているのはバブル崩壊以降だけのことではなく、それ以前からも徐々に減っていったそうだ。

今から、30年前とか35年ほど前のことだそうだが、バブル期よりもさらにたくさんの百貨店向けメンズカジュアルメーカーがあったという。
今年47歳になるオッサン筆者もそのころはまだ中学生や高校生で、それはそれは紅顔の美少年だったのだが(嘘)、当時の百貨店向けメンズカジュアルメーカーなんて記憶に残っていない。

その当時は、ニットの物作りが上手い会社がたくさんあって、日登美ははるかにレベルが下だったという。
しかし、そういう「上手い会社」はバブルを待たずにほとんどが消えてしまったらしい。

理由を尋ねると、「当時、百貨店の平場は単品集積からトータルアイテム提案に変わりつつありました。『物作りが上手い会社』はなまじ上手いものだから、ニット単品の物作り強化に取り組んで、トータルアイテム化に対応しませんでした。うちは下手だったからトータルアイテム化しました。それで生き残れました」と谷野社長。

「上手いからこそ、得意アイテムにしがみついて売り場の変化に対応しなかった・できなかった」とのことで、何やら現在の国内製造加工業全般に通じる教訓性を感じる。

企業は存続してナンボだから、いくら物作りを極めようが、消滅してしまえばお終いである。

商品として売り出す以上、一定の品質は当然求められるが、しかし、変化に対応せずに物作りに集中することは逆効果でしかない。

物作りが上手いからこそ、それにしがみついて変化に対応できずに滅ぶ。
何やらダーウィンの進化論を絵に描いたような事例である。

繊維の国内製造加工業にはこの手の話が掃いて捨てるほどあるし、洋装だけでなく和装業界もまさしくこれではないかと思う。

変化しないことが伝統ではなく、変化に対応して残ったものが伝統になるのではないか。

自社の強みを生かすことは重要だが、強みにしがみついて変化に対応できないと、それは弱みになる。











たまには「定石」を疑ってみよう

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 定石・セオリーとされていることは概ね正当な理由はあるが、変革期においては、それを疑ってみることも一つの視点であるといえる。

先日、Jフロントリテイリングの2017年2月期連結が発表された。
減収減益に終わっており、百貨店事業は各店軒並み減収している。
その中で、東京店だけが対前年比2・2%増と増収している。
売上高は748億円となり、神戸店にあと100億円差にまで迫っている。
改装中の心斎橋店は比較対象にならないので除外すると、京都店、札幌店、梅田店を抑えて、大丸各店中2位の売上高となっている。

http://www.j-front-retailing.com/_data/news/1702_4Q_supplementary_J.pdf

大丸東京店の好調の要因として、地上1階のグランドフロアをスイーツや食品売り場にしたことが挙げられる。

これまで、百貨店の定石では1階グランドフロアは化粧品か高級ブランドと決まっていた。
これを消費者の関心が最も高いスイーツ、食品にしたことが、東京駅隣接という立地も相まって集客装置となったと各報道では指摘されている。

実際に何度か東京店を覗いてみたが、グランドフロアは平日昼間でもかなりの来店数である。
もちろん、全員が商品を購入するわけではないが、購買比率が他フロアと変わらないのであれば、集客が多いとそれだけ購買客数は増えるということになる。

蛇足だが、すごく暇なときに、東京店の全フロアを平日昼間に覗いてみたが、5階から上はかなり閑散としていて寂しい印象で、グランドフロアとの対比がすさまじかった。

また、阪急百貨店うめだ本店のグランドフロアはファッション雑貨売り場で、化粧品は2階にある。
かつては化粧品がグランドフロアにあった記憶がある。
化粧品がグランドフロアというのが阪急のかつての定石で、2階への移転はそれなりに反対意見も多かったと聞いている。

しかし、2階に移転しても化粧品の売上高にそれほど影響はなく、それまでの「定石」はなんだったのかという印象もある。

業界関係者からは、グランドフロアは入口があちこちにあるので化粧品売り場独特のニオイを薄めてくれる効果があり、2階だと入口がないのでニオイがこもる危険性があったという意見も聞かれるが、個人的には1階にあっても2階にあってもニオイはそれほど変わらず、クサイものはクサイままだと感じる。

ニオイだけの観点でいえば、1階にあろうが、2階にあろうが8階にあろうがそれほど変わらないだろうというのが個人的な感想である。

こんな風に各社が頑なに信じている「定石」「セオリー」というのは、時代の移り変わりとともに意味がなくなっている場合もある。

もしかしたら最初から意味が無かった場合もある。
単なる信仰とか習慣とか思想とかイデオロギーだけのことだったのかもしれないこともある。

現在、インターネット通販全盛時代を迎えつつあるが、10年前までネット通販で洋服が売れると考えていた人は少なかった。
特に業界人はベテランになればなるほど否定的だった。

今はそこらへんの量販店までが後追いで出店するほど評価の高いZOZOTOWNだが、10年前の業界人の多くはあれを否定的に見ていた。

また、現在は業績が回復していない夢展望だが、スマホが普及する前から携帯通販を重視してきた。
かつて、創業者のインタビューにも伺ったことがあるが、2005年よりも以前から携帯通販を開始して、その当時はネットすら普及していなかったので、賛同者はほとんどいなかったが、競合他社が少なかったこともあり2005年から急速に業績を伸ばして今に至る。

もちろんこのまま全店舗がなくなり、すべてネット通販に置き換わることはないが、「ネットでは服は売れない」という「定石」は短期間の間にひっくり返された。

一概にすべての「定石」を否定する必要もないし、それは危険な行為だが、企業が成長を志向する場合、定石を疑ってみることも有益な手法だろう。
「定石だからアンタッチャブルで」という姿勢が、企業をもっとも苦境に突き落とすのではないか。





陳腐化した「日本製」というキーワード

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 販促ワードとしての「日本製」は陳腐化したと感じる。

ワールドはTHE SHOP TKで「新潟ニット」「長崎シャツ」などを打ち出している。
価格は5500円くらいとなっている。

新潟は五泉というニットの産地があるが、新潟全体がニットの産地ではないから、ニットに詳しい人からすると何とも微妙なネーミングといえる。

新潟ニット



高野口のフェイクファーを和歌山フェイクファーと呼び直すような感じである。

しかし、まあ、わからないではない。

長崎シャツはちょっとわからない。
長崎ちゃんぽんの方がはるかに有名だろう。

長崎シャツ




九州にはシャツの縫製工場が多いから、その背景もあって長崎の工場に決めたのだろうと推測される。
しかし、ウェブサイトに書かれた文言はちょっとわかりにくい。

「220年の歴史、
播州織で仕立てた
長崎シャツ」

と書かれてあり、産地に詳しくない人からすると「播州なのか長崎なのかよくわからない」と感じるのではないか。
それならもっとシンプルに播州織シャツにでもしたほうがわかりやすいのではないか。

さらにサイトには、こうも書かれてある。

そのこだわりを込めた生地は海を渡り、
長崎の工場へと届けられ、
服へと生まれ変わる。

ちょっと大げさすぎないだろうか。
通常、日本語で「海を渡り」といった場合は、海外へ行くことを指す。
日本の四方が海だからだ。

たしかに、播州と長崎の間には海はある。
瀬戸内海と関門海峡だ。
しかし「海を渡る」というにはちょっと狭すぎないか。
せめて日本海くらいは渡ってもらいたい、と思うのは筆者がひねくれているからではないだろう。

まあ、それはさておき。

この業態はおもにショッピングセンターとファッションビルへのテナント出店である。
価格帯は低価格から中価格帯。
ユニクロとほぼ同等か、それに1000円~2000円プラスしたのが中心価格帯になる。

そういう価格帯のブランドまでが「日本製」を打ち出しているのである。
なぜ打ち出すかというとそれが付加価値を高めたり、消費者を動かしてくれるのではないか、とブランド側が考えるからだ。

しかし、そういう価格帯のブランドまでが「日本製」を使うということは、「日本製」という言葉が如何に陳腐化してしまったかということの証明でもある。


だが、これは百歩譲ってもまだ日本製をそれなりに重要視しているといえるが、コムサイズムの打ち出しは最早、日本製を重要視しているとはいえない。

「コムサイズム」、日本の伝統技を海外工場でも
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14922660U7A400C1TI5000/

アパレル大手のファイブフォックス(東京・渋谷)はショッピングセンター向けブランド「コムサイズム」で、国内の伝統技を取り入れた商品群を発売した。職人の技術や伝統的なデザインなどを海外の協力工場に指導し、大量生産して値ごろ感を出す。

とのことだが、言葉もない。

それは単なる無償での海外への技術供与ではないか。
海外工場へ技術を流出させているだけのことではないか。

また、「職人の技術や伝統的なデザイン」というが、製造地は海外工場なわけで、そこに何の付加価値があるのだろうか。
これに付加価値があると考えた人がいるということなのだが、その思考回路はまったく理解ができない。

そもそも、数あるコムサシリーズの中で、コムサイズムは大型スーパー向けに開発された低価格ラインだった。
90年代後半に一大ブームを巻き起こしたユニクロへの対抗策だともっぱら噂になった。

たしかに当初はユニクロとほぼ同価格で、デザイン性はイズムの方が高かったからバーゲン時にはけっこうな人気があった。

けれどもそこから10年、15年が経過すると、価格もユニクロよりも高くなったし、見た目のデザイン以外での打ち出しがそれほどなく、機能性や有名デザイナーとのコラボなどを仕掛けるユニクロとはずいぶんと差ができてしまった。
感じ方は人それぞれだが、筆者個人は現在の商業施設でコムサイズムの存在感をほとんど感じない。
それほどに存在感がなくなってしまった。

だから、起爆剤に「日本製」が使いたかったのだろうと推測する。
しかし、本当の日本製(国内で生産した物)を扱うと店頭販売価格がさらに上がる。
そこで、それを海外工場で作らせることで店頭販売価格を抑えようとしたのだろう。

冷静に考えてもらいたいのだが、コムサには「コムサ・デ・モード」「コムサ・コレクション」などの高価格ラインがある。その両ラインでも「日本製」は扱われている。

そうなると、そちらとのすみわけが難しくなる。

さらにいうと、イズムの海外製の日本製は矛盾に陥ってしまう。

イズムの低価格を「日本の職人技」だとすると、本体の「日本製」の高価格は何なのか?ということになる。

一方、イズムの低価格はあくまでも海外製だとすると、じゃあ、それは単なる海外製でほかの海外製品と同一なんですね、ということになる。

違わないか?

こういう事例を見るにつけても、「日本製」ブームは終了したと感じる。

イズムのような低価格ブランドまでが、製造地は別として「日本製」「日本の職人技」を販促のキーワードにするということが、「日本製」ということに価値がなくなりつつあるということになる。

オッサンまでがスキニーパンツを穿くようになったら、スキニーパンツはトレンドアイテムではなくなってしまったというのと同じである。

物作りを標榜するブランドは、今後、日本製プラスアルファ、職人技プラスアルファの打ち出しが求められることになったということである。

そのプラスアルファを真剣に考えないと、陳腐化した「日本製」では消費者には響かなくなっている。











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