南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

企業研究

限界点に達しつつある、しまむらのビジネスモデル

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 しまむらの第1四半期決算が2ケタ減益と大幅に悪化し始めた。

その兆候は今年の初めから見えており、既存店売上高が連続して前年割れを起こし始めていた。

しまむらは2016年2月期、2017年2月期で大幅増益して、メディアから持ち上げられたが、2014年2月期・2015年2月期と連続減益しており、当時のメディアの持ち上げ方には疑問を感じていた。

もっとも企業としての売上高自体は増収し続けていたから、強い企業であることは間違いないが、「勝ち組」と持ち上げるのはちょっとやりすぎではないかと思っていた。

しまむらの業績が急減速、「しまラー」惹きつけるネット通販やフリマアプリの脅威
http://www.sbbit.jp/article/cont1/33839

この記事は比較的良く書けていると思う。

2016年2月期の増益に転じた際、長らく量販店やユニクロ、しまむらなど低価格ブランドのカジュアルパンツのOEMを手掛けた友人がこう指摘した。

「今回の増益の起爆剤は、裏地あったかパンツを100万本売ったこと。しかし、これまで売り切れ御免でやってきた企業が、ユニクロと同じ100万本という大量生産・大量販売システムに転換するのはいかがなものか?いずれ反動が来る」

と。

この指摘は早くも的中しつつあるといえるのではないか。

当時のメディアはどこも指摘していなかったが、100万本を売ったということは、100万本を調達したということになり、それはこれまでしまむらが得意としていた仕入れでは実現しにくく、自主企画商品を生産したということになる。
そのビジネスモデルはユニクロと同一のものであり、しまむらとしては異なるシステムを取り込み始めたということになるが、そんなことが簡単にできるはずがないというのが、友人の指摘である。

記事では、しまむらの強みを端的にまとめている。

その基本は「サプライヤーとよい関係を築くこと」。しまむらは「『4つの悪』の追放」という“仕入れの憲法”を打ち出した。4つの悪とは、「返品」「赤黒伝票(伝票の書き換えで見かけの売上を計上する手法)」「(納品後の)追加値引」「(発注した商品を納品させない)未引取」だ。

 しまむらの、全面的にリスクを負い、値下げしても売り切る“仕入れの憲法”を、サプライヤーは「しまむらはフェアな商売をする」と歓迎した。そして売れ残りにならないような、高品質の商品、売れ筋商品、流行遅れになりにくい商品、とっておきの新企画商品を、しまむらに優先的に供給した。店舗の商品の回転が早くなり、在庫が少なくなり、コストは抑えられ、しまむらにも利益になった。

 そうやって、取引先との間で「しまむらファミリー」と呼べそうな関係を構築すると、取引数量が拡大したサプライヤーは「他ならぬしまむらさんのご提案なら、多少の無理はききましょう」と値引き要請にも応じるようになる。そうやって適正な利益を確保しつつ他店より安い価格をつけることができ、それが業容拡大のエンジンになった。



これは事実で、しまむらの取引は綺麗なことで有名だ。
しかし、この「仕入れ」スタイルで運営するには、しまむらは企業規模が大きく成りすぎたといえる。
大手セレクトショップが軒並み「疑似SPA化」したことを見てもそれはわかるだろう。

主力の「ファッションセンターしまむら」だけで1378店舗もある。
これだけ店舗数が増えれば「仕入れ」だけで商品を賄うのは不可能で、実際、あまり報道されないが、しまむらも自主企画商品を製造しているし、OEM/ODM生産も利用している。

店舗数がこれだけ増えれば、スケールメリットがあるから自主生産が増えるのは当然だが、これまでとは異なるビジネスモデルへとすんなり移行できるとは思えない。

また、個人的意見でいえば、しまむらの売り上げ規模、店舗数ともに国内では限界点に達しつつあるのではないかと思う。

売上高は5654億円もある。

いくら、安くて買いやすいとはいえ、国内でこれ以上大幅に売上高を伸ばすことは難しい。

じゃあ、流行りの海外進出はどうか?というと、ユニクロや無印良品とは異なり、しまむらは品揃えの雑多さが魅力で、その雑多さは「日本のローカルチェーンならでは」という部分があり、海外では嗜好が違うのでその魅力は理解されにくいのではないかと思う。

また、都心部に店が少ないこともそろそろ弱点になりつつある。

郊外では店舗数は飽和しつつあるといえるが、1店舗あたりの売上高の低さを考えると家賃の高い都心には出店できにくい。

よしんば都心に出店したとしても現在のしまむらグループの店作りでは、他の低価格ファッションブランドと比べて大きく見劣りしてしまう。
店の見た目については、しまむらグループはかなりダサい。

国内市場ではそろそろ飽和点に達しつつある、しまむらグループは次はどのような取り組みをするのだろうか?

ユニクロのような大量生産・大量販売方式にするのか?それとも店作りや陳列方法を洗練させるのか?はたまた、グローバルSPA方式に切り替えて海外進出するのか?

いずれにせよ、これまでの「しまむら」モデルのままでさらなる企業規模の拡大というのは、かなり難しくなっていることは間違いない。



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いつの間にかブランド終了していた「パンツワールド」

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 先日、ふと思い出して、「パンツワールド」を検索したところ、ブランド自体が終了していた。
ブランドが終了するということは、売上高が厳しく不採算だったということである。

この「パンツワールド」というのは、ハニーズが開発した新業態で、メンズとレディースの低価格カジュアルパンツ専門ショップで、2013年春からスタートした。

終了したのがいつ頃なのかはっきり知らないが、2017年7月に検索したところブランドとして存在していなかったので、長くても4年間、短ければもっと早い時期にブランドが終了していたと考えられる。

中心価格帯は1900円で、チノパンのようなカジュアルパンツが主体の品ぞろえだった。
もちろん、ハニーズなのですべて自社企画商品であり、ここで展開していた商品はミャンマーの自家工場で製造されたものだとメディアでは伝えられていた。

実は興味があって、2013年春には実際に店頭も見に出かけた。

当時、大阪では、「なんばwalk」という地下商店街に新店をオープンしていた。

目測では20坪未満の店に、メンズとレディースのチノパンが並べられていた。
中心価格帯は1900円だが、1900円を下回る価格のパンツもあった。

当時の印象だけでいうと、売れるのはかなり難しそうだという印象だった。

なぜなら、チノパン、それに類した綿パンしか品ぞろえがなく、定期的に買うには難しいと感じた。
また、カラーチノパンなどもあったが、当時並べられていたカラーはトーンや色彩がビミョーなものが多く、購買意欲をまるでそそらなかった。

低価格ブランドについては、賛否両論あるが、売れている低価格ブランドのほとんどは、

「値段の割に商品が良い」「値段の割にファッション性が高い」

というものだが、残念ながらパンツワールドの商品にそれらは感じられなかった。
お値段通りという感じで、これなら大型スーパーの平場に並んでいるカジュアルパンツとあまり変わらないというのが当時の印象だった。

また、通常、パンツ類はトップスに比べて購買頻度・購買枚数が少ない。
店からすると回転率が低い。

どこのショップで習ったのか忘れたが「トップス3枚~4枚に対して、パンツは1枚の割合で消費者は所有する」という法則があるらしい。

これは各人の所有する洋服で考えてみても当たらずといえども遠からずではないか?

となると、パンツ専門店での購買頻度・来店頻度はトップス売り場を併設している店に比べると必ず低くなる。

おまけに1900円前後という低価格だから、当然利益額は小さい。

購買頻度が低く、1人あたりの購買枚数が少ないのだから、全店舗・ブランド全体での売上高も低くなるし、営業利益額も低くなる。

そうなれば、大阪・難波の地下商店街での家賃さえ支払うことが厳しかったのではないかと考えられる。

難波だけでなく、他の都心の繁華街に出店した店舗はすべて同じだったのではないか。

ハニーズは年間100店舗ペースで出店し、中期的には400店舗体制にすることが目標だと、2013年当時には報道されているが、いずれも当然のことながら未達に終わった。


それにしても、2010年代で「パンツワールド」という屋号は、かなりダサいと感じる。
実は先日、ある専門学校でパンツワールドのことを紹介したところ、学生たちが「クスっ」と笑った。
たしかに、声に出して発音してみると本当にダサい。

文字で書くよりもダサく感じる。

文字で書いてても十分にダサいのだが。

反面、わかりやすい。
一発で「パンツ」の店だなとわかる。

わかりやすいが、低価格パンツ専門店というのは、それこそ需要自体が少なかったのではないかと思う。

パンツの購買枚数の少なさ・購買頻度の低さ・所有枚数の少なさを考えるとわかるが、それ以上に、低価格カジュアルパンツというのは、他の低価格ブランドに内包されている。
逆に他の低価格ブランドだと同じ売り場にトップスが並べられているので、コーディネイトが組みやすいから、単品売り場よりも売れやすくなる。

このほかに感じたことは、あまりにもメディアに登場しなさ過ぎた。
これでは知名度も高まらない。

そもそもハニーズという会社自体が取材嫌いなのかあまり報道されない。
せっかくミャンマーに自社縫製工場を作ったのに、ひどい場合だと、業界の人でも知らないことがある。

縫製工場を所有した「真のSPAブランド」なのだから、ハニーズはもっとそのことをアピールしても良いのではないかと思う。



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独立系デザイナーズブランドのゴールになるか?

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 昨日の書いたことの延長線上なのだが、国内デザイナーズブランドを大手企業が買収することが増えてきた。

これは国内デザイナーにとっては喜ばしいことだと思う。
90年代後半のインディーズデザイナーズブーム以降、デザイナーズブランドにはゴールがなかった。

起業したのは良いけれど、そのあと、どうなったら「上がり」なのかが見えず、多くのデザイナーはエンドレスに活動を続けている。(していた)

当時は、大手アパレルの外注企画という仕事があったが、所詮は外注にすぎず、年間契約400万円程度で何年間か契約するだけのことで、そこからの飛躍はない。

下手をすれば1年で契約は打ち切られるから、自分のブランドが売れていないデザイナーにとっては死活問題となる。

当時、オリゾンティが外注企画ではなく、いくつかそういうブランドを抱え込んだが、売れずに早々に廃止している。

良いか悪いかは別にして、欧米だと、有名メゾン、有名ブランドがデザイナーやプロデューサーにそういう独立系デザイナーを高額な年俸で契約する。(年間400万円程度ではなく)
もちろん、契約は長く続く場合もあれば、数年で終わる場合もある。

しかし、数年で終わったところで、「〇〇ブランド前デザイナー」とか「〇〇ブランド元プロデューサー」という肩書が付いて回るから、それでビッグビジネスが展開できる。

これをゴールといえばいいのか、スタートといえば良いのかわからないが、一つの区切りにはなる。
次の明るい展開が待っている。

90年代後半以降の日本ではこういう事例はほとんどない。

デザイナー自身が経営者となって、ビッグブランドに育てれば良いとは思うが、それをできるデザイナーはほとんど見たことがない。
やっぱりデザイナーというのは多くの場合、デザイナーであり経営者ではない。

ファッション専門学校のデザイン学科やデザイン学部の生徒と接する機会があるが、やっぱり彼らは「クリエイト志向」だし、「物作り志向」だ。
学校もそれを良しとしている。

企業に就職して企業内デザイナーとなるならそれでも良いが、ファッション専門学校が看板にしている「デザイナーズブランドを立ち上げるデザイナー」を目指すなら、金勘定は必須だ。
むしろ金勘定の方が重要である。
金勘定のできる人間をパートナーとするなら話は別だが、多くのデザイナーはそうではないし、デザイナー志望学生もそういう発想はない。

なぜ、専門学校がそれを教えないのかが疑問である。

「夢」だけ語って食っていけるならこの世は天国だが、現実世界にそんな天国は存在しない。

逆にそんな天国を作りたいとも思わないが。

近年だと独力で成功したといえるデザイナーズブランドは、ミナペルホネンくらいだろうか。
日経BP社の「誰がアパレルを殺すのか」では、年商30億円・従業員150人とある。
年商30億円規模のデザイナーズブランドは国内では稀だ。

知名度だけは高い東京コレクション常連ブランドも実際の年商はトップクラスで3億~5億円程度しかなく、その他は年商1億円にも満たないものが多い。

年収5000万円なら大したものだが、年商5000万円ということは、ほとんど利益がないことになる。
そこに材料代、工賃、家賃、人件費、水道光熱費、電話代、備品代すべてが含まれるからだ。

しかし、そのミナペルホネンでさえ、年商30億円に対して従業員150人は多すぎるといわれる。
直営店を複数運営するからこその従業員の多さだろうが、人件費はどうなっているのかまったくの疑問でしかない。

まあ、いずれにせよ、ミナペルホネンに並ぶくらいの年商規模のデザイナーズブランドは国内にはほとんどないということに変わりはない。


そういうデザイナーズブランドに対して、アタッチメントやファセッタズムの大手企業による買収は、喜ばしいゴールが提示されたのではないかと思う。


大手企業に買収され、もしかすれば増資されて今までできなかったような新しい展開をすることができるかもしれない。
ビッグブランドに育って、デザイナー本人は巨額のカネを手にして引退でき、「豊かな老後」を迎えられる可能性も出てくる。

ゴールが見えなくてエンドレスに細々と活動し続けることは、若いうちなら良いかもしれないが、50歳・60歳が見えてきた人間にとっては無間地獄にも等しい拷問だろう。
実際に50歳手前の筆者はそういう心境であり、夢に見るのは、巨額のカネを手に入れて引退して「豊かな老後」を迎えることだけである。まあ、実現しそうにはないが。(笑)

今回の相次ぐ買収が成功するか失敗するかはわからない。
昨日も書いたように、そもそも国内に「高額デザイナーズブランド」への需要は限りなく少ない。
価格的にも商品的にも。

しかし、ある程度の実績が作れれば、これらに続く企業が生まれるだろう。
大手によるブランド買収が独立系デザイナーにとって一つのゴールになりえる可能性がある。
何とも喜ばしいことではないか。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



ウェブでこれだけバーゲンが常態化しているのに、実店舗でバーゲンを後倒ししても意味はない

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 今年の6月もそうだが、商業施設を見ていて、何年か前ほどのバーゲン早期化はあまり感じない。

今年は6月30日の金曜日に夏バーゲンを開催する商業施設が多そうで、曜日を考えれば6月30日がベターだと思う。

一方、バーゲンの通知が常に届くのはウェブ通販である。
一昨年に始めてAmazonで買い物をして以来、年間で8回~10回くらいは買うようになった。
主には値引きされたガンダムのプラモデルだが、たまに本を買う。
あと極まれに服や靴を買う。

服や靴はもちろん値引きされた商品しか買わない。

そうなると、Amazonから頻繁にお知らせのメールが送られてくる。
やれタイムセールだ、やれアウトレットセールだ、やれプレセールだ、という具合である。

またユニクロやアダストリアのウェブでもこれまで何回か買ったから、そこからも頻繁にメールで安売りのお知らせが来る。
6月20日にはアダストリアから3通も安売りのお知らせメールが来た。

2つは21日から夏セール開催という内容だが、もう1つは先行セール開催というものだ。

ユニクロはだいたい毎週火曜と金曜に「期間限定割引」のお知らせメールが来る。

GAPはウェブで買ったことがないが会員登録しているからメールが来る。
だいたい、GAPかバナリパで「なんちゃらセール開催中」とか、「〇〇すれば〇%引き」とかそういう内容である。

ウェブからのお知らせだけを見ていたら、ほぼ毎週何かの安売りセールをやっている。

筆者が受け取るのはこの3社がほとんどだが、もっとたくさんの通販サイトを利用したことのある人は、もっとたくさんの安売りのお知らせをそれこそ週に何通も受け取っているだろう。


例えば、ウェブでは買ったことがないが、ナノユニバースは6月21日現在、ウェブでは絶賛バーゲン開催中だ。
しかも「1000円、3000円、5000円の3プライスバーゲン」である。
実店舗でのバーゲン後倒しがどうのこうのなんて論争している次元ではなく、破格の投げ売りを開催している。

キャプチャ



このように、ウェブ通販だけを見ると年がら年中、毎週何かの安売りセールをやっていると感じる。

こんなに安売りセールが頻繁に開催されているなら、何も実店舗で買う必要もなく、安い服が欲しければウェブを検索すれば良いと感じる。
ますます、実店舗離れが起きるだろう。

さて、そういう社会状況になったにもかかわらず、ルミネが今年の7月もセール後倒しを行い、7月28日から開始するとの発表があった。
率直な感想をいえば、こういう状況でルミネだけがセールを後倒しする意味があるのかと感じる。

もちろん、業界、特に製造業系からは歓迎の声があがっており、その気持ちもわかるが、個人的にはその考え方は評価できない。

各社が足並みをそろえているならまだしも、安い商品が欲しい人はいくらでもウェブで手に入るのが現実だ。


じゃあ、どういう売り方が良いのかという話になると、これだけウェブ通販が年がら年中安売りをしているなら、最早全社そろってセール時期を後倒しするというのは実現不可能である。
実店舗でバーゲンを後倒ししたところで、ウェブでやってるなら、多くの客はウェブで購入する。

だったら、店舗はセールを後倒しせず、今年なら6月30日で足並みをそろえるべきだろう。

そして、1月~3月に入荷した「古い商品」を70%オフくらいで叩き売って、集客装置としつつ、5月ごろに入荷した新しい商品を10%オフとか20%オフくらいで販売するのが正解ではないか。

どうしても売れ残った商品は,そのあとのバーゲン末期で大幅値引きをして投げ売る。

こういう方法で各社は乗り切るべきだろう。

ウェブがこれほどバーゲンを早期化・常態化している中で、たかがルミネだけがバーゲンを後倒しにしたところで、業界の趨勢がそちらに向かうことはないし、各社がバーゲンを後倒ししたところで、ウェブはそれに縛られないだろうから今のバーゲン常態化は続くだろう。

そうなるとますます実店舗の売上高が下がりウェブでの購入率が高まる。
これが進み過ぎるとアメリカのように実店舗の大量閉鎖につながることになる。

各社がそういう結果を望まないなら、バーゲンの後倒しなんていう非現実的なファンタジーとは決別すべきではないか。

ウェブがこれだけ、バーゲン早期化・常態化している中で、実店舗のバーゲン後倒しという施策は何ら意味が無い。

バーゲン品が欲しい人はウェブないし、他の商業施設で買うだけのことにしかならない。
業界からバーゲンがなくなることはないし、定価販売が広がることもない。


ところで、繊研プラスを読むと、ルミネの新井社長のこんなコメントが掲載されているがこれは事実だろうか?

「ファッションビジネス業界が膠着(こうちゃく)状態にある大きな要因はセール(の早期化)ということをオーナーの人たちも分かっている。『夏のセールはやめましょう』という幹事会社もある。そもそも、これから暑くなる時期にセールをやるのはおかしい。本来なら、8月スタートにしたかった」という。


この人がセールを8月にやりたいというのは個人の嗜好の問題なのでどうでもいい。
疑問を感じるのはその前段である。

ファッションビジネス業界が膠着状態にある大きな要因はセールの早期化とあるが、これは事実誤認だろう。
セールが早期化しているから膠着しているのではなく、膠着して不良在庫がダブついているからセールが早期化しているのである。
因果関係を完全に取り違えている。

で、セールを後倒しすればその膠着状態が解除されるのかというと、その可能性は極めてゼロに近い。

膠着しているのは、セールの開始時期が早いからとか遅いからではなく、国内のファッション業界が、消費者の消費行動・嗜好の変化に対応できなくなっているからである。

また、オーナーが「夏のセールをやめましょう」と言ったというのも本当だろうか。
もし事実ならそのオーナーはよほどのアホか、リップサービスをふるまう人かのどちらかだろう。

ルミネに出店しているブランドというのは、個人経営のブティックではなくて、ある程度の店舗数を持ったチェーン店が9割以上である。
そういう大手企業のオーナーが「夏のセールをやめましょう」というなら、ルミネに出店しているテナントだけでなく、自社が各地に何店舗か構えている路面店で夏のセールをやめれば良いのである。

路面店ならだれに気兼ねすることもない。
ファッションビルや百貨店やショッピングモールのように、管理されているわけでもない。

セールをやめるのも後倒しするのも自由自在である。

自社の路面店ですらセールをやめられないような企業のオーナーがなぜ、「夏のセールをやめましょう」なんてことを発言できるのだろうか。

この発言が本心なのだとしたら、そのオーナーがよほどのアホか恥知らずである。


今後もルミネはバーゲンは後倒しし続けるだろう。
しかし、その動きはルミネだけに限定されたものとなり、今後は淀川の花火大会よろしく、単なる夏の風物詩の一つとして認識されるにとどまるだろう。

「また今年も、ルミネがバーゲン後倒し宣言をしたわ。そろそろ夏よね~」なんて会話が毎年6月には聞かれるようになるかもしれない。



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バーゲン後倒しに敬意を表して、現在、値下げ販売されているナノユニバースの商品のいくつかをどうぞ~♪




















社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

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 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。


バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。


で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。


ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25





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