南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

ジーンズ

スタートから1か月間で600本を出荷したジーンズブランド「BMC」

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 リストラ、ブランド廃止、大量閉店、会社倒産、廃業が日常茶飯事なアパレル・繊維業界において、年齢制限やらその他もろもろの理由で再就職ではなく、独立・起業を選ぶ人もいる。

そういう人から相談を受けることが増えたが、基本的には筆者はこの業界での起業をあまりお勧めしない。
右肩下がりの業界なので確率論で言えば失敗する確率の方が高いからである。
今では大企業然としている大手アパレルだってその昔は起業からスタートしているわけだが、彼らの多くは戦後直後とか高度経済成長期やバブル期に創業しており、もちろん並大抵の苦労でなかったことはいうまでもないが、商品が欠乏していた時代なのである意味で、商品を並べたら売れたという要素も大きかった。

もともと商品自体がなので、「市場に無い物」を提案すると売れる確率が高かった。
しかし、現在はそういう時代ではない。
物はあふれているし、基本的にどんなデザイン・テイストの服も流通している。
「画期的に新しいデザイン」の商品というものを考案することすら難しい。

プラットフォームの時代だ!なんていう人もいるが、すでにプラットフォーム自体が溢れかえっており、プラットフォーム間での優劣の格差が大きくなっている。
結局は、品ぞろえの豊富さと割安感(激安ではない)の競争となっており、それを突き詰めるとAmazonには勝てないよねという話になる。

一説にはAmazonの物流倉庫の広さは東京都中野区とほぼ同面積だという。
ネット上ではスペースは無限にあるから、Amazonは中野区と同じ広さの倉庫に並べた商品をネット上で見せられるということになる。
そして価格幅も大きい。高額品もあるが、激安商品もある。

ここで伊勢丹新宿店がいくら「品揃えの豊富さを追求しました」なんて言ったって、中野区ほどの広さの倉庫にある商品すべてを見せているAmazonに勝てるはずもない。
逆に伊勢丹新宿店の品ぞろえの中途半端さが目立つだけになる。
イオンモールがいくら広大でも中野区ほどの広さはない。

この話はまた後日書いてみるが、そういう状況なので、新しいブランドがおいそれと売れる可能性は極めて低い。

安全なのはOEM/ODM屋を開業することだが、ここもすでに山ほど競争相手があって、大手とつながらないと生き残れない。多くの競争相手があるから大手は強気で工賃とマージンを叩いてくる。
嫌ならよそへ仕事を振るよというわけだ。
1枚のマージン50円で100枚のロットの製造を請け負わなくてはならなくなる。
だからOEM/ODM屋を開業するのも茨の道である。

そんな中、エドウインを退職して、ジーンズブランドを起業した人がいる。
ブリッツワークスという社名で、ブルーモンスタークロージング、略して「BMC」というブランドを開始した。

http://www.bmc-tokyo.com/

こんなブランドである。

価格は6900円、生地と加工は日本、縫製は中国製。

販路はジーンズ専門店チェーンで、ターゲット層は30代・40代の父親で、いわゆる昔ながらのジーンズカジュアルが好きな男性と設定する。
ちょっとコテコテ系の加工である。

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で、相談を受けたのだが、正直なところなかなか厳しいのではないかというのが最初の感想だった。

なぜなら、5900・6900・7900円というのはジーンズというアイテムで要望は多いが、メーカーの供給が少ない価格帯である。
市場規模としてはそれなりにあると個人的には見ているが、メーカーからすると「旨味がない」とか「売りにくい」と思われている価格帯で、ほぼ真空状態になっている。

そこにあえて参入するというのは、ハイリスクハイリターンといえる。

しかし、決心が固いようでそのまま起業して活動を開始された。

今回、東京出張で現状をうかがうことができた。
7月末に店頭デビューして、なんと1か月間で600本を地方のジーンズ専門店チェーンに納品したという。
8月も商談が好調に進み、9月末には納品が累計で1000本を越える見込みだともいうから恐れ入る。

失礼だが無名のブランドで活動開始早々にこれだけの本数を納品できるのは、上場の滑り出しといえるのではないだろうか。
社長となった青野さんの営業力がすさまじいと思う。

9月以降の商況がどうなるかはまだまだ予断を許さないが、注目の新ブランドといえる。

青野社長と初めてお会いしたのは、昨年10月のデザビレで開催した講演会でだった。
TOKIOの長瀬智也似のイケメンがけっこう前の列で座っておられて、ちょっとウケを狙ってしゃべってみても、ニヤリと不敵な笑み(に見えた)を浮かべるだけだったので、「後でしばかれるかも」と壇上から内心ちょっとビビっていたのだが、終わってから懇親会で話してみると好青年だったのでホッとした次第である。

個人的には5900~7900円で、それなりにデザイン性のあるジーンズは市場に必要ではないかと思っていた。
業界の人も含めて多くの人が事実に反してこう考えている。
「3990円のユニクロか、1万円を越えるジーンズしかない。この価格差はつらい。ユニクロに2000~3000円足して買えるようなファッションジーンズがほしい」と。

実際はそうではなくて、探せば5900~7900円の商品はある。少ないけど。
ただし、あるという情報が消費者にも業界人にもあまり伝わっていないのだ。

そんなわけでその市場に飛び込んで上場の滑り出しを見せた青野社長の胆力には驚嘆するばかりである。

5900~7900円のファッションジーンズというジャンルをぜひとも確立してもらいたいと思う。














ブルーウェイブランドが今秋から正式に復活

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 昨年6月に倒産したブルーワークスカンパニーが展開していた国産ジーンズブランド「ブルーウェイ」と国産スラックスブランド「コントライバンス」の復活が正式に決定した。

昨年倒産したブルーウェイのブランドが復活
https://www.wwdjapan.com/fashion/2016/08/16/00021246.html


といっても、ブルーワークスカンパニーという会社が復活するわけではない。
元ブルーワークスカンパニーの社員が商標権を取得して、今後は企画製造・販売を行うということである。

元ブルーワークスカンパニーの中田直樹氏が、かつての得意先からブランド消滅を惜しむ声を受けて、新会社はね(東京)を設立し社長に就任。今年6月から「コントライバンス」のテスト販売を開始していた。今後は同ブランドの企画・製造、および「ブルーウェイ」の関東地区での卸売りを営業代行として行う。また、元同社の営業部長であり、両ブランドの商標を所有する山本聖人氏は、新会社じんくら(広島)を立ち上げ、西日本で卸売りを担当する。

という経緯だ。

実は今年の6月くらいから「ブルーウェイ」の新商品が出回っているという情報を耳にしていた。
正式に復活したという報せは受け取っていなかったので、おかしいな?と思いながら、もうすぐ正式にブランドが復活するのではないかと推測していた。

もともと昨年6月に倒産したブルーワークスカンパニーだが、その後、同業の何社かが商標獲得に手を挙げたという噂を耳にしていた。
その中の三備地区の某量販店向けカジュアルパンツメーカーがもっとも商標取得に熱心だとも聞いていた。

まったくの第三者的立場から見ると、その某社は旧ブルーウェイの本社とも近隣にある上に、主力商材は1900~4900円の量販店向けの低価格カジュアルパンツであることから、7900円以上の高価格帯のブルーウェイの商品を扱うには打ってつけだった。
自社の主力商品とまったく被らないから住み分けしやすく、新販路獲得もしやすい。
部外者としてはその某社で決まりだろうと勝手に思い込んでいたが、元社員が商標を獲得するというのは予想外だった。

しかし、心情的に考えれば、商標に愛着を持っていた元従業員が獲得するほうがしっくりとくる。

今後の商況がどうなるかはわからないが、ブランドにとっては一番良い結果だったのではないかと思う。

ただ、正式に復活したといっても、商品の供給過多な状況下において、売れ行きが易々と伸びる可能性は低い。
コツコツと小さい売上高を積み重ねるという売り方になると見たほうが良いだろう。

今回、復活発表に先立って、株式会社はねの中田社長から「コントライバンス」のトラウザーをサンプルでいただいた。
濃紺ストレッチデニム素材とカラーストレッチピケ素材があったのだが、ストレッチデニム素材を送っていただいた。

サイズはL(32インチ)を選んで正解だった。
ストレッチ素材ということもあって、ウエストはおそらくM(30インチ)でも合ったのではないかと思う。
なぜなら少し伸びるからだ。

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しかし、筆者の太ももとふくらはぎは太い。
Lでも意外にピタっとするが、Mならレオタード状態になってしまっただろう。

太短い脚のおっさんがシルエットを露わにするのは、他人が見て気持ちの良いものではないだろう。
筆者自身もわざわざそんなものを他人に露出したいとは思わない。

デニム素材だが、表面はフラットで変な凹凸感はない。
中田社長に聞くと「通常のデニム生地なので洗濯を繰り返すうちに色落ちする」そうだが、わざわざ説明せねば、洋服に詳しい人以外はこれがデニム生地だとはわからないだろう。
それほどにフラットな表面感である。

組成は綿98%・ポリウレタン2%だが、表示から予想するよりもストレッチ性は高いように感じる。

丈は8分丈で今風である。

デニム生地特有のズッシリ感もなく、むしろ、合繊が含まれているかと思うくらいに軽さがある。

いわゆるオフィスカジュアルにも着用が可能だ。

今後、色落ちするとどういう見え方になるのか穿き込んで実験してみたいと思う。

ウェブサイトでも通販が開始されているので気になる人はこちらを見てもらいたい。

http://contrivance.jp


さて、ブルーウェイの歴史について検索してみたがウェブ上では出てこない。
そこで昭和63年発行の古い業界誌を引っ張り出してみると、創業は昭和24年とあるから、1949年になる。

ここからは推測だが、この時期に日本では国産ジーンズは誕生していない。
日本で国産ジーンズが作られるようになったのは1960年代以降である。
それに際して、作業服メーカーや学生服メーカーがジーンズメーカーに転身している。
ブルーウェイも創業当時はそういう被服を扱っていたのだろう。

その後、93年にインポートブランドを扱う関連会社としてブルーワークスカンパニーが設立される。
ジーンズチェーン店が相次いで倒産するなどして、ブルーウェイの業績が年々低下し、2012年にブルーワークスカンパニーがブルーウェイを吸収する形で事業を継続した。
しかし、その後も業績の悪化は止まらず2015年6月にブルーワークスカンパニーも倒産した。


それにしても昔はもっとたくさんのジーンズメーカーがあった。
ちょっとページを繰ってみると、フジタツ、ドット、大石貿易、日本ハーフ、サンダイヤアパレル、帝人ワオなどの社名が並んでいる。

各社の年商を見ると最低でも10億円を越えている。
ジーンズをやっていれば儲かった時代だったというわけだ。

作りさえすれば売れていたのが70年代と80年代だった。
一転したのが90年代後半からで、現在の状況に至る。

仮に75年に創業したメーカーがあったとして、不況が押し寄せたのは97年ごろだから、優に22年間の猶予があったといえる。
前半の15年はイケイケドンドンだったとして、残り7年間で社内体制を一新することはできなかったのだろうかと部外者としては疑問に感じる。

しかし、筆者がもし75年当時の社員だったとして、97年に不況が押し寄せても「変わらなければ生き残れない」などとは考えられなかっただろう。
当然経営者も同じだっただろう。

その結果、2000年に入る前に多くのジーンズメーカーが淘汰され、2000年代になってもまだ淘汰が進んだ。

先ごろ、WWDで恒例のジーンズ特集号が発売されたが、ナショナルブランドのジーンズメーカーとして掲載されているのはエドウインとリーバイ・ストラウス・ジャパンだけである。
あとは年配の人なら耳にしたことがないようなインポートブランドやSPAブランドばかりである。

筆者が業界紙でジーンズ関係を担当したのが98年だから、たった18年でガラっと様変わりしたということになる。

ブルーウェイブランドの復活とともに改めて「昭和は遠くになりにけり」だと感じた。







ダメージジーンズにも価格破壊の波

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 ジーンズに詳しい方にとっては当たり前のことなので読み飛ばしてもらいたい。

今春は低価格SPAまでが破れたジーンズを発売している。
あれはわざわざ新品の物を加工で破いているわけで、穴が開いたままの状態の物を「クラッシュ加工」「ダメージ加工」、その穴を布を当てたり、ミシンで破れ目を再度縫ったりして塞いだ物を「リペア加工」と呼ぶ。

似ているけれども厳密に言えば両者は別物である。

このクラッシュ(ダメージ)加工、リペア加工はこれまで中価格帯~高額ブランドのみの展開だったが、今春からついに低価格SPAが発売を開始した。

この加工の好き嫌いは置いておく。

個人的にダメージ加工は嫌いである。
穴が開いているから夏は涼しいが冬は寒い。
たまに真冬でも膝が丸見えになるくらい破れているジーンズを穿いている人を見かけるが寒くないのだろうか?

それと、この加工は穿くときに足先に破れ目が引っかかり易い。
足先が引っかかると破れ目が拡大する。
長年所有すればするほど足先の引っかかる回数が増えて穴が拡大し続け、最後はボロ布のようになってしまう。

それよりは冬でも寒くなく、足先も引っかからないリペア加工の方が好きである。

ユニクロは今春、ダメージ加工のジーンズを3990円で発売した。
H&Mも3900~4900円でダメージ加工ジーンズを発売している。
ZARAはリペア加工ジーンズを7990円で発売しており、一部商品はすでに半額に下がっている。

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(ユニクロのダメージジーンズ)


これまで低価格ブランドにダメージ加工、リペア加工のジーンズがなかったのは加工代が高いからである。
国内の洗い加工場で加工を施した場合、各工場で価格は様々だが最低でも2000円や3000円はするだろう。
そうすると必然的に低価格では展開できなくなる。

当然、これらの低価格SPAは海外の工場で加工を施していると考えられるが、海外の工場でも通常の洗い加工よりは加工賃が高くなるから、3900円前後で発売できるというのはなかなか画期的なことだといえる。

なぜ加工賃が高くなるかというと、各ジーンズを1本ずつ加工してリアルに破らなくてはならない。
リペア加工だと破ってからさらに再度縫わねばならない。
ワンウォッシュだと大量の枚数を洗濯機に突っ込んで洗うことが可能だが、ダメージ、リペア加工はどんなに効率的に組み立てても1本ずつ加工する工程が必ず入る。
その手間賃によって加工賃は高くなる。

ワンウォッシュのジーンズとダメージ加工のジーンズが同じ3990円で発売されるというのはこれまではあり得なかった。
かなり戦略的な重点商品として低価格SPAは位置づけているのではないか。

ただ、好き嫌いのはっきりと別れる商品なので、マス層に広まるかどうかはちょっと不透明ではないか。

今春のこの3ブランドの取り組みを見て、ジーンズの価格破壊も極まったと感じる。
今までは加工賃の問題からダメージ、リペア加工を低価格ゾーンで展開することは難しかった。
それゆえに、ウンチクのある高額ブランドから安くても7000円~8000円商品まででこの加工を囲い込むことができていた。

ところがこれが3900円前後で発売できるようになった。

見た目もそこまでおかしくはない。
ジーンズに詳しい人が見れば、あちこち甘い部分が見えるかもしれないが、一般消費者レベルではこれで十分にそれらしく見えている。

こうなると、もういわゆる商品デザインだけで、低価格商品との差別化は不可能である。
非常に細かいウンチクの世界に逃げ込むくらいしか手はない。
しかしそのウンチクの世界はニッチな市場である。何ブランドもが生息できるほどの規模ではない。

こういう低価格ブランドの価格破壊に対して、絶対悪とみなす人も出てくるだろうが、筆者は絶対悪とは思わない。
所詮、服なんて工業製品だから、これまで高額品だったものに対して低価格代替品が登場するのは当たり前である。テレビだってパソコンだってスマホだって電子レンジだって同じことである。

逆にいうとこれまでよくダメージ・リペア加工は持ちこたえたと思う。

しかし、その特別感もこれまでである。
もうジーンズに特別な手法はほぼなくなった。

そしてこの低価格代替品が登場するのは、洋服において何もジーンズだけではない。
もうすでに洋服は低価格代替品が出回っている業界であり、ジーンズにとっての最後の砦ともいえるダメージ・リペア加工にもついに低価格代替品が登場したということになる。

デザインや商品の見え方だけで低価格ブランドとの差別化を図るのは今後ますます困難になるだろう。
かと言ってウンチクの市場はそれほどの規模がない。
ある程度の規模を求めるブランドは、デザインや商品の見え方だけに頼らないブランド作りに取り組まねばならない。

言うは易しだが行うは難しである。
筆者だって「じゃあどうすれば良いのか?」と問われても即座に返答できない。
そういう難しい局面に業界は突入しているとしか言えない。
いやはや。










エドウインが503をリニューアル

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 今回は展示会レポートを。

エドウインが定番ジーンズの「503」を今秋冬からリニューアルする。

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最大のリニューアル点はデニム生地。
強撚糸で織って、そこに液体アンモニア加工を施すことで、綿100%でありながら緩やかなナチュラルストレッチ性と光沢感、ソフト感が出た。
個人的には、そのソフト感が印象に残っている。
14オンスデニムなので市場に出回っているデニム生地より重く感じる。
手にしたときのソフト感を言葉で表現するのは難しいが、しいていうなら、超ヘビーオンスのレーヨン混デニム生地に近いとでも言えば分かりやすいだろうか。

ターゲット層は30代半ばから上のベーシックを好む層。
あくまでもファッション好みではない層と言った方が伝わり易いのではないか。

以前に発表した「Eスタンダード」もベーシック路線だが、こちらはトレンド層を意識しており、非トレンド層の「503」との棲み分けを図る。

さて、この「液体アンモニア加工」だが、日清紡の技術である。
かつてジーンズ業界で一世を風靡したことがある。

90年代半ばにビンテージジーンズが登場するまで、ジーンズというアイテムは「きれい目」路線を進んでいた。
その理由はさまざま考えられる。

作業着として誕生したジーンズがファッションアイテムとなった。
ファッションアイテムにはなったものの、「ドレス」「フォーマル」ジャンルからは阻害されていた。
90年代前半に筆者自身も経験したことがあるのだが、ヨーロッパではジーンズ穿きでは入店すら拒むレストランがあった。
この扱いは日本でも同様である、というより日本は欧米のやり口をコピーしていたに過ぎない。
90年代後半に盛り上がった?カジュアルフライデーでもジーンズは除外されていた。

オッサン世代は当時を思い返してもらいたい。
ゴルフスラックスやチノパンはOKだったが、多くの会社でジーンズは除外されていたはずだ。

それほどにジーンズは「フォーマル」ではないと位置づけられていた。
出自がワーク、カジュアルのジーンズとしては通常の衣服と同等になるためには、きれい目に進むという方向性は当たり前だったといえる。

生地に光沢感があってソフト感があるという「液体アンモニア加工」が各ナショナルブランドで重宝されたのは当然の成り行きだといえる。
この「ジーンズきれい目化路線」の最終形態が、90年代前半に登場したレーヨン、テンセルのソフトジーンズだったのではないかと個人的には見ている。

しかし、その反動から90年代半ばから粗野でワークテイストに溢れたビンテージジーンズがブームとなる。
そのブームを誰が仕掛けたとか仕掛けられたとかそういうことはここでは除外する。

ここからデニム生地にも一気に反動が押し寄せる。
表面に凹凸感があって固くて色落ちのしやすいデニム生地が好まれるようになる。
液体アンモニア加工とは正反対である。
デニム生地を織る糸も、ストレートで滑らかな糸に代わって、節くれだった不均一なスラブ糸が好まれるようになる。

この流れはほんの2,3年前まで続く。
厳密にいうと今でも続いているといえる。

ただし、2008年にスキニージーンズが登場してから、ストレッチ混デニム生地が標準となった。
その影響もあり、デニム生地は全体的に12オンス前後にまで軽量化したが、デニム生地そのものの表情は相変わらずビンテージ感が好まれていた。
この傾向は今でも残っている。しかし、現在は、それと反対の潮流が勢力を盛り返しつつあり、併存している状態だといえる。

エドウインの503に液体アンモニア加工が大々的に採用されるということは、きれい目なジーンズ、きれい目なデニム生地の需要が大々的に復活したと考えられる。

粗野なデニムときれいなデニム、この両方が現在は並立しており、それぞれにファンがいるといえる。
もしかすると購入者は同じで、その日の気分やコーディネイトによって使い分けているだけなのかもしれない。

実は業界紙記者になったころ、液体アンモニア加工の特徴をレクチャーしてもらったが、それほどの違いがあまりわからなかった。
しかし、今回の展示ではそのソフト感がはっきりとわかった。
当時は経験不足でその差異がわからなかったが、20年近くが経過してようやくその違いが分かるようになったということだろうか。

ジーンズファンからするとエドウインのジーンズはきれいすぎると言われる。
縫製などのクオリティの高さは折り紙つきだが、いわゆる粗野感は微塵もない。
今回の503なんてその典型ではないかと思う。

しかし、個人的にはそれで良いのではないかとも思う。
なぜなら、粗野感のあるジーンズを欲しがっている日本人が一体どれほど存在するのか。
それに粗野感あふれるジーンズを企画製造しているブランドは一体いくつ存在するのか。

ならマスメーカーとしてエドウインはマス層に向けた商品を提供すれば良いのではないかと思う。
粗野感あふれるジーンズが欲しい人は多数存在するその手のブランドの商品をチョイスすれば良いのではないか。

ちなみに、エドウインは単一ブランドでありながら、多くのテイストの商品を企画製造している。
けっこう先端層に向けた提案もあるのだが、ブランド名が同じなので、先端層からは敬遠されることもある。
これはもしかしたら、以前の「ボブソン」が踏んだのと同じ轍なのかもしれない。

非トレンド向けの「503」、トレンド層向けの「Eスタンダード」のほか、地方や都心下町に根強く残る元ヤンキー層に向けたこんなコテコテ商品も作り続けている。

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元ヤンキー層のファッションの嗜好にはまったく興味も共感も持てないが、この手の商品が非トレンドアイテムになってから久しく、この手の有力ブランドの存在感がほぼなくなっている。
トゥルーレリジョンはジャパン社を解散しているし、韓国ブランドのレッドペッパーやロリータジーンズもほとんど存在感がない。

オズファーストのクックジーンズが根強い固定ファンを集めているが、東京都心では存在感があまりない。
関西や地方都市限定という印象が強い。

そんな中、エドウインのこの手の商品はそれなりに収益を上げている。
これは残存者メリットといえるだろう。
資金的にゆとりがある大手ならではの戦略ともいえる。

注意深く見ていてもらいたいのだが、日曜日のショッピングセンターにはこれを穿いた元ヤンキー層が多数闊歩していることに気が付くはずである。
都心でもあべのキューズモールでは多数見かける。

そこに市場が残っているから取りに行くというのもまた一つの立派な営業方針といえる。












舵取りが難しいビンテージ系ジーンズブランド

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 ビンテージ系ジーンズブランドの商品企画を経験したことのある人と雑談をした。
90年代半ばから2000年ごろにかけて続々と誕生したビンテージ系ジーンズブランドだが、最近は振るわないといわれている。

一部のブランドは上手く方向転換したが、それは例外的で、大多数は縮小傾向にある。

それは一般消費者が「本物の良さをわからなくなった」からではない。
商品価格の高さという要素を除外して考えても、ビンテージ系ジーンズが非トレンドアイテムだからだ。

今のジーンズトレンドとはまったく別世界になっている。
トレンドというのはいわば「マス」商品であり、ビンテージ系ブランドは非トレンドなのでニッチ商品、マニア向け商品である。

マニア向け商品というのは、当然、需要が少ない。
マニアと呼ばれる人の人口は基本的に少ないからだ。

需要が少ないから売上高が減るのは当たり前である。

トレンドということで考えてみると、ジーンズのマス商品は相変わらずスキニーだといえる。
ただ、スキニーブームが長続きしていることに対して飽きがあるので、腰回りと太ももに少しゆとりを持たせたテイパードや全体的に少しだけゆとりを持たせたスリムストレートなども支持を得ている。

しかし、基本的にシルエットは「細身」であり、それを苦痛なく穿いてもらうためには、ストレッチ混デニム生地の採用が不可欠といえる。

筆者も一昨年以降購入したパンツはすべてストレッチ混であり、細身シルエットが続く限りにおいて、ストレッチ混ではない生地のパンツを買うことはないだろう。
穿いていて苦痛だからである。
45歳にもなったら着用して苦痛が生じるような衣服を買うことはない。

女性だとワイドパンツやフレアへの注目が高まっているといわれるが、以前のブーツカットブームのように緩やかなフレアがマスになることはあってもワイドパンツがマス化することは難しいのではないか。
丈が短いガウチョタイプは引き続きマスになるが、フルレングスのワイドパンツが似合う人は日本人では少ない。足が長くて、尻が高い位置にない人以外は不恰好である。
しかし、日本人の多くは足が短くて、尻が低い位置についている。
ガウチョみたいな短い丈ならまだしも、フルレングスのワイドには不向きな体型である。

女性も引き続き、細身を基本としたまま、気分転換商材としてガウチョやフレア、一部のワイドを着用するのではないか。

ビンテージ系ジーンズの特徴は、綿100%デニム生地を使用しており、しかも厚手である。
マスである細身には向かない。
よほど我慢強い人でないと、そういう素材で作られた細身パンツを着用し続けることはできない。

だから従来のビンテージ系ジーンズの多くは、太目のシルエットである。
そしてこの「太目」は現在注目されているトレンドとしてのワイドとは異なる。
トレンドのワイドは、如何にストンと落ちて流れるようなシルエットになるかがカギであることに対して、ビンテージ系の太目は、生地が固くて厚いから流れ落ちずに裾に溜まる。
同じ太目でもまったくシルエットが異なる。また素材の性質も異なる。

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仮にワイドがトレンドになってもビンテージ系ブランドがトレンド主流になることはないだろう。

ビンテージ系ブランドとして採りうる方策は2つである。

1、ストレッチ混デニム生地を採用して、トレンドの細身シルエットを大々的に打ち出す
2、このまま少数のマニアに向けて細々と事業を継続する


1を採った場合は、従来のファンは間違いなく離れる。
新しいファンを獲得できれば良いが、新しいファンが獲得できない恐れもある。

しかし、年間売上高が10億円を越えるくらいの規模になると、マス層を一部獲得しないことには企業規模を維持できない。

ビンテージ系の大型ブランドにとっては難しい選択である。

年間売上高が5億円以下の小規模ブランドだと2の方策で良い。
ビッグブランドになりたいならその方策では無理だが、現状維持で良しとするならマニア向けに徹すれば良い。

ただ、今後もビンテージ系のあの商品がマストレンドになることは考えにくい。
また96年、97年当時のあの商品に戻ってくることもない。
トレンドはいつか回帰するが、その当時そのままではない。どこかが変化している。
これを業界では「螺旋的進化」と例える人が多い。

ビンテージ系ジーンズブランドは、現状維持を目的としながら少人数小規模運営に徹するのがもっとも賢明だろう。
そして、創業者や現在の運営者の引退とともにブランドも終えるというのが理想的な結末といえる。









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