南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

産地

「名刺代わりのホームページ」さえ持っていない工場は存在しないのも同然

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 繊維・衣料品に関する製造加工業はいまだにウェブを軽視している人が珍しくない。
もちろんウェブ万能ではないことは言うまでもないが、ウェブ無知ではどうしようもないのが現状なのだがそのことを理解していない人が多い。

社長自らがブログを書くとか、SNSで発信するとかよりもその前段階として「名刺代わりのホームページ」すら持っていない企業・工場は世間が想像するよりもずっと多い。

今の世の中、調べようと思えば最初に「ウェブで検索」する。
「名刺代わりのホームページ」すら持っていなければ、その検索に引っかかることさえない。
つまるところ、仕事の問い合わせが来る可能性はゼロ%である。

「名刺代わりのホームページ」さえ持っていれば、まだ新規の仕事の問い合わせが来る可能性は高まる。ゼロ%ではない。

自らが自らを窮地に追い込んでいながら、仕事がないと嘆いている業者・工場のなんと多いことか。
挙句の果てに「業界構造がおかしい」とか「みんながモノづくりをわかっていない」とか「ファッションが変わった」とか愚痴をこぼすが、それって「名刺代わりのホームページ」さえあれば、何%かは解決できたはずである。

こちらから言えば、完全なる自業自得であり、おかしいのは「名刺代わりのホームページ」さえ持とうとしないそちらの時代遅れの認識である。

先日も、モノづくり系のコンサルタント?プロデューサー?から、「いろいろな工場の強い技術を合わせて商品開発をしてウェブで販売したい」という相談を受けたが、それは大賛成なので、ぜひともやってみればよいのである。

ただし、自社のホームページさえ3年近く更新していない人が、ウェブでどれほど売れるのかはなはだ疑問でしかないが。(笑)

断っておくと、このコンサルタント?は製造にはそれなりに長けておられる。また工場との商品開発も悪くはない。その部分では大いに評価できるが、問題はウェブに対する認識が甘すぎるところである。

モノづくりに長けている人は、思考方法までが「産地のオッサン」化してしまうのだろうか。

おそらく、商品開発はそれなりに成功すると思うが、ウェブでの販売は大失敗するだろう。
ホームページすら持たない者同士の連携して、自分たちが主導するのだから、結果は目に見えている。

ウェブやウェブ販売に強い業者と組むなら成功の可能性は高まるが、それを介さない現在の構想のままで動けば、失敗に終わる可能性は極めて高い。個人的には99%失敗すると見ている。

それはさておき。

日経トレンディの記事で、新興の「Knot(ノット)」という手ごろな腕時計ブランドが掲載されていた。

手ごろな国産腕時計「ノット」、意外な誕生の秘密
http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/1033760/073100012/

当方は3年前まで腕時計をしていなかった。
今でも仕事以外ではあまり腕時計をはめない。

腕時計は嫌いだし、めんどくさい。
あと、夏は手首が蒸れて汗をかく。

それでもあれば便利だし、仕事上スマホを取り出して自国確認できない場合もあるので、それに備えて3年前にホームセンターダイキで腕時計を買った。3000円くらいである。

腕時計がめんどくさいのは、電池交換という部分にもある。
ダイキには、セイコーQ&Qというラインがあり、ここには太陽発電腕時計があった。

電池交換不要である。
しかも10気圧防水なので、これを買った。

しかし、3年も使えば飽きてくる。
先日、Amazonでためしに太陽光発電腕時計を調べてみた。

セイコーのQ&Q
カシオ
シチズンのアルバ

という3国内メーカーの商品を見つけた。
一応検索の縛りは、太陽光で1万円以内という条件を自分で設けた。

だいたい2500~10000円くらいまでの価格帯の商品が3メーカーともある。
もちろん、もっと高い5万円、10万円、20万円以上という商品もセイコー、カシオ、シチズンともにある。

その検索で見つけたのがこのKnotというブランドだった。
ほんの3週間ほど前のことである。

価格は1万8000円くらいだ。

それがたまたま記事に掲載されていたので、何とも運命を感じてしまう。

この記事を読むと、時計の国内製造業も繊維製品と同じだということがわかる。

かつて何十社もあった製造業がいまでは1社になっていて、それも大手の丸抱えだから製造を断られたとある。
いろいろと探して廃業寸前の工場を見つけて作ってもらうことに成功したそうだ。

繊維製造業は1社とはいわないが、数が年々減っていることは同じだ。

工場を探すのにひどく苦労したというが、その理由は

ところがそういうところはウェブサイトすら持ってないわけですよ。電話帳にも載ってない。そこで弊社の役員で某大手時計メーカーの開発責任者だった人間の昔のつてをたどったりしていろいろな工場にご連絡をしたんですが、やはりほとんどの工場は時計の生産をやめていました。


とのことであり、ここも繊維製品とまったく同じである。

ウェブサイトすら持っていない。

これは現在のビジネス環境において致命的な失策だ。
ちなみに「ホームページ」という名称はひどく幼稚なので、正しくはウェブサイトと呼ぶ。
永江一石さんではないが、「ホームページ」なんて呼び方をしているウェブ業者は信用するに足りない。
レベルの低い相手にわかりやすく説明するために「ホームページ」を方便として使うことはあっても、「ホームページ」という呼称に何の疑問も持っていない業者はド素人と変わらないといえる。

それにしても分野は違えど、製造加工業というのは押しなべて考え方は似てしまうものなのだろうか。

廃業することが決定している場合は別として、まだまだ工場経営を続けたい、息子や孫に経営を譲りたい、と考えている工場経営者がいるなら、今すぐ「名刺代わりのホームページ」くらいは作るべきである。

良い物を作っていたらどこかから評判を聞きつけて有名な人が注文してきてくれる、なんていう情景は漫画かドラマか池井戸潤の小説の中だけにしか存在していない。


あと、繰り返すが、今現在ウェブをやっていない業者が、いきなりウェブ通販をやってもそれはほとんど失敗するだろう。いまだにウェブを簡単に考えている「モノづくり脳」が多すぎることも、国内の製造加工業者が衰退する理由の一つだろう。

そしてそれは自業自得でしかない。



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「機能性追求」には限界がある

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 今回もそうだが、第一織物の吉岡社長の記事はいつも製造業にとって良いサジェスチョンを与えておられると思う。


高級ブランドが頼る繊維の匠「第一織物」の正体
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/080400148/

まあ、タイトルは陳腐だし、個人的には「匠」という形容詞が嫌いだ。
「美人すぎる〇〇」と同じくらいありふれた形容詞だと思う。

メディアの報道が正しいとするなら、日本は今頃美人であふれかえっているし、匠であふれかえっている。
しかし、現実には、美人は数少ないし、匠もそれほどたくさんいるわけではない。

第一織物は福井の合繊織布工場である。
合繊関係の工場は、合成繊維自体が大量に製造されるため、基本的には低工賃での大量生産が前提となっていることが多い。

そのため、どうしても大量に使用してくれるブランドと薄利多売で取引をすることが多かった。

自動車や機械などへの産業資材供給だったり、大手スポーツメーカーだったり、そういう取り組みが多かったし、今でも多い。

少し前だとユニクロやニトリとの取引も多かった。
ケタ違いの生産数だからだ。

しかし、そんなときでも吉岡社長はメディアで「ユニクロやニトリがいくら美味しいからといって、そこに集中すれば、工賃や納期を相手側にコントロールされる危険があるし、契約がなくなったときには工場が立ちいかなくなる。もっと取引先を分散すべき」という趣旨のことを発言しておられた。

まさにその通りである。

今回の記事でも


「例えば、生地中の糸の密度が100本から101本に上がったことを優位性だと言うこと自体が愚かだ。機能性を打ち出していくような商品は、生産の速さから価格まで考えて、日本に残る道理はない」。

というコメントを出しておられる。

これもその通りで、「糸の密度を100本から101本に上げる」ことを競っている国内の繊維製造加工業者はいまだに珍しくない。

技術的にはその「1本を増やす」ことが難しいのかもしれないが、実際のところ、出来上がった生地、ひいてはその生地で作った服にどれほどの違いがあるのか、ブランドも実感できないし、消費者はもっと実感できない。

しかし、技術開発は必要だからそういう開発は地道に続ければよいと思うが、問題は、製造加工業者がそれをセールスポイントとして打ち出すことだ。打ち出すのは構わないが大抵の場合は、何の効果もない。

なぜなら、ブランド側はその効果が分からないからだ。
実際に工場側も効果が分からない場合もある。
もちろん消費者にも伝わらない。

これは無用のスペック自慢でしかない。

吉岡社長が記事でも語っておられるように、最新鋭の設備を備えた中国工場、これからはアセアン工場と高機能・高スペックさを競っても勝ち目は薄いのは事実といえる。

だから第一織物は、機能性の追求ではなく、感性の追求を続けたとのことだ。

「柔らかな手触りがほしい」「とにかく軽い質感がいい」といった高級ブランドの注文に対応できた第一織物は、ファッション向けの合繊生地の市場の拡大とともに急成長を続けている。


これはこれで一つの正解といえる。

しかし、外野から見ていると、この「感性の追求」というのも相当に難しい。
それこそ開発担当者、経営者などの「個人的能力」に頼る部分が相当に大きい。

いくら大事に丁寧に後継者を育成しても、それは数値化しにくいから、すべてを継承させることはできない。また、既存のものを継承させても、新しいものを作り出せるとは限らない。

機能性の追求もつねに他社との競争で、今現在の「世界一」とか「業界一」の高機能は必ず、いずれ追い抜かされる。
だから、機能開発をすることは悪くはないが、売り方として「世界一」「業界一」を謳うことは、そういう「競争」に巻き込まれてしまいやすくなり、厳しい状況に陥る。

第一織物のいう「感性の追求」も、個人的能力に負うところが大きいので、確実性はない。

繊維業界の国内の製造加工業者は、前者の機能開発競争・スペック競争を続けてきて疲弊している部分があるから、「感性」へシフトするということは正解の一つといえる。

しかし、感性を売り物にし始めると、それは個人的能力に負うところが増えるため、継承は不確実になる。

企業運営に「楽チン」な方法なんてないが、どちらを採るにせよ厳しいことには変わりがない。

そして、これは製造加工業者だけではなく、アパレルブランドにもいえることで、感性を売り物にしすぎると二代目・三代目でだいたい劣化する。
まあ、業界には「若社長はバカ社長」みたいなのは数多くいるが。

一方で、製造加工業者のオヤジみたいになって、「去年より重量を200グラム軽減できた」とか「去年より速乾性が5分早まった」とか、そういうことを盛んにアピールするブランドもある。
しかし、ガチのアスリートや登山家以外に、服が200グラム軽くなることに価値を見出す消費者がどこにいるだろうか?
乾くのが5分早くなることに価値を見出す消費者がどこにいるだろうか?
(ガチのアスリートや冒険家を除いて)

製造加工業もそうだが、アパレルブランドでも「高スペック競争」や「感性の追求」の罠にはまった企業は少なくない。
いかに繊維・ファッションビジネスの舵取りが難しいかがわかる。


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これまでの産地コンサルタントが失敗した理由

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 「作ってくれる人に申し訳ないと思わないのか」というのは、先日、報道されたルミネ社長の言葉だが、先日も書いたようにこの言葉にはナンセンスさしか感じない。

「産地保護のためにセール後倒し」

とか

 さんざん、ウェブで先行値引きをやっておきながら、「実店舗のセール後倒し」

とか

以前からルミネの社長の言動は全く賛同も共感もできない。
だれがこの人を支持しているのか疑問しか感じない。

まあ、それはさておき。

繊維製品、伝統工芸品、その他もろもろの製造加工業者は星の数ほどあり、下請け仕事が激減している彼らが志向してるのは、自社ブランド開発・自社製品開発である。

これは彼らが生き残るためには不可欠な取り組みとなっている。

しかし、彼らが成功したケースはほとんどない。
絶対に失敗するとは言わないが、どうだろうか、体感的に8割は失敗しているのではないかと思う。
他業界のことは浅学菲才にしてわからないから、繊維製品に限れば9割前後は失敗しているのではないかと感じる。

彼らの失敗する最大の要因の一つは、「売る場所がない」ことである。
せっかく作ったのは良いが、売る場所を持っていない、売る場所とのつながりがない、ことが彼らのオリジナル製品開発を失敗に導いている。

もちろん、作った物が全然ダメな場合も多い。
いわゆる「作り手気質丸出し」の自己満足商品も多い。
しかし、そうではない商品が出来上がる場合もけっこうな割合であるのだが、そういう商品が売れないのは、彼らに売る力・売り場とのつながりが全く欠如しているからである。

繊維業界をこれまで跳梁跋扈してきた旧型コンサルタントの多くがブランド開発で成功に導けなかった最大の要因が、旧型コンサルタントの多くが売り場とのパイプを持っていないことである。

商品のデザインやら、販促のやり方やら、そういうことを指導できても、出来上がった商品を売り場に持っていく力・人脈がない。だから、いくら良い商品が出来上がっても、製造加工業者は離陸できずに終わる。

産地ブランドでも多くの場合は、3年くらいやって、あとは記念品として開発した商品が残るという結果である。ナンタラ産地組合の事務所に行けば、過去の記念品がところ狭しと飾られている。

ほとんどの場合は「作ってお終い」というのがこれまでの実態だった。

で、こういう製造加工業の現実を見ると「作ってくれる人に申し訳ない」どころか、作ったは良いが売り先のない人の方が数多くおり、作るよりも売ることの方が大変だというのが実際のところといえる。

だから、ルミネの社長の考え方はおかしく、逆に売り場の人間は「こんなダサい商品作って、売ってくれる人に申し訳ないと思わないのか?」くらいを言ってもばちは当たらない。

製造加工業の有力なコンサルタントとして中川政七商店が注目されている。

https://medium.com/to-nine-blog/nakagawamasashichi-1-135cb582a248

ここにも記事が掲載されているが、中川政七商店が重宝がられているのは、自社で売り場を持っているからという要因が大きい。

もちろん、商品づくりのアドバイスも優れているとは思うが、出来上がった商品を売る場がすでに中川政七商店が持っているということが強い。

直営店があり、ウェブ通販がある。
あと百貨店や専門店へ卸すこともできる。

これまでの旧型コンサルタントが持ち合わせていなかった機能である。

これと似たような機能を持っているのが、セメントプロデュースデザインで、直営店はほぼ無いに等しいがウェブ通販、百貨店・専門店への卸売り、ポップアップショップはある。

いずれにせよ、これまで、繊維産地や繊維の製造加工業が、コンサルタントやデザイナーとの協業をやってもほとんど成功しなかったのは、「売り場」へのアプローチができなかったためで、現在注目されている新型のコンサルタントやプロデュース業は自ら「売り場」を備えている。

傍から見ていたら、「己が作らせた物を己の売り場で売って二重に儲けてすごいな」と思ってしまうのだが、製造加工業者からすると「これまでは売り場がなかったが、今回は売り場もセットになっていてありがたい」ということになるらしい。

感謝されながら二重に儲けられるというのは、何ともはや、美味しいシステムとしか言いようがない。

「売り場」を持たない旧型コンサルタントや旧型プロデューサー、旧型デザイナーは今後、ますます食い扶持を減らされることだけは間違いない。



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日本の工芸を元気にする!
中川 政七
東洋経済新報社
2017-02-24





衣料品の国産比率は金額ベースで26%

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 衣料品の国産比率は3%というのは、よく言われることだが、最近これが独り歩きしすぎていると感じる。
この数字が事実であることは間違いないが、この数字は「数量ベース」なのである。

国内で流通している総量に対して3%ということである。

しかし、店頭を見てみると、「日本製」と書かれた衣料品は結構ある。
低価格カジュアル店は別として、3000円台の日本製衣料品も珍しくない。
みなさんの体感的には恐らく3%よりも多いと感じているのではないだろうか。

別の数字を示すと、「国産比率は約26%」ともいえる。
これは「金額ベース」である。
販売された金額をベースとすると国産比率は26%前後ということになる。

なぜなら、日本製衣料品は比較的高額だからである。
日本製で「Tシャツ590円」なんていう商品は、バッタ屋以外の正規店では存在していない。

となると、自動的に金額ベースでの日本製衣料品比率は高くなる。

経産省が2015年に作成した資料にもそれは明記されている。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/001_03_00.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%A3%BD%E8%A1%A3%E6%96%99%E5%93%81%E6%A7%8B%E6%88%90%E6%AF%94%E9%87%91%E9%A1%8D%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%27

ついでにスクリーンショットも貼っておく。

経産省キャプチャ


輸入品浸透比率が2012年の段階で、金額ベースでは73%になっている。
ということは国産比率は2012年の時点では27%あったということになる。

そこから5年が経過して、国内の縫製加工業者はさらに減っているだろうから、順当に考えると25~26%というのが現在の状況だろう。

金額ベースに比べて、数量ベースが急落した理由は何だろうか?

様々な要因が考えられるが、最大の要因は、衣料品の供給数量が増えたことだろう。
そしてその増えた分量はほぼ中国をはじめとするアジア製だった。

例えば、ユニクロの台頭。

衣料品の供給枚数は20億枚から39億枚に倍増している。
正確には一時期41億枚まで拡大したが、やや減少して39億枚になった。
このあたりの2億枚の減少は、市場の悪さを鑑みて各社が少しずつ生産調整・在庫調整を行った結果だといえるのではないだろうか。

この増えた20億枚のほとんどが中国をはじめとするアジア製だったといえる。

これによって、数量ベースでの国産比率は急落した。
もちろん、国内の製造加工業者が減少し続けているのは言うまでもないが、もし、供給数量がここまで激増しなければ、数量ベースの落ち込みはもう少し緩やかだったのではないかと思う。

要するに、分母が激増した結果、数量ベースの国産比率が急落したのである。

ちょうど、食料自給率の議論と似ている。
我が国の自給率が低いといわれ続けているが、それは「カロリーベース」での議論であって、カロリーベースなる不思議な指標を採用しているのは我が国と韓国くらいだ。

オウベイガーのみなさんが大好きな欧米諸国は「生産額ベース」で食料自給率を論じている。

だから、「欧米に比べて我が国の食料自給率が低すぎる」というのは、基準が異なるので議論としてはおかしい。
生産額ベースでの我が国の食料自給率はだいたい65%前後もある。

本来は、欧米と比較するならこの生産額ベースで論じるべきで、もしカロリーベースで論じたいなら欧米の自給率もカロリーベースで換算し直さないと意味が無い。

なんだか、カロリーベースで大騒ぎしている自給率と、数量ベースで大騒ぎしている国内衣料品比率はちょっと似た構図ではないだろうか。

金額ベースでの26%というのもかなり厳しい状態であることは間違いないが。

とはいえ、国内の衣料品製造業者は減少の一途をたどっており、今後ますます減少することは間違いない。
一部の強い国内業者を残して、最終的には経営が悪化していたり、後継者がいない業者は消滅してしまうだろう。

最近では、ファクトリエやトウキョウベースといった国産品を扱う新興企業が登場しており、それらが発展することで国産業者の減少が食い止められるのではないかという期待が寄せられているように見えるが、それは糠喜びというものではないかと思っている。

なぜなら、ファクトリエやトウキョウベースという企業が扱っている国産業者は、いわば「強者」に分類されるものがほとんどで、弱小零細業者は扱っていない。
極端な言い方をすれば、強者はファクトリエやトウキョウベースが無くても存続し続けるだろうし、弱小零細は取り扱われないのだから、いくらファクトリエやトウキョウベースが巨大化しようと、経営環境は好転しない。
だから弱小零細業者はこれからもどんどんと姿を消し続けていくだろう。

弱小零細業者がもしも、生き残りたいと思うなら、自助努力しかない。

新進著名企業は助けてはくれないし、アパレル業界にキュウレンジャーみたいな究極の救世主は永遠に登場しないからだ。
最近、キュウレンジャーには12人目の新メンバーとして「伝説の救世主」も登場したが、そんな伝説の救世主も業界には永遠に登場しない。


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オミクロンな物作りを追求しても消費者には伝わらない

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 衣料品やファッション雑貨類において、粗悪品は問題外として、要求水準以上のクオリティがあれば、次は「売り方」を工夫すべきである。

産地や工場に行くとよく聞かれるのが「〇〇ブランドの方が売れているけど、うちの方が品質が良い。なぜなら、うちの生地の方が経糸が〇〇本多いから」というような言葉である。

別に経糸に限ったことではない。
ニットやジャージなら目付(めつけ)だったり、目数(めかず)だったりする。
縫製工場ならステッチの幅が〇〇ミリだとかそういう類のことである。

繰り返すが、粗悪品は問題外だ。

しかし、要求水準以上の品質が実現された後、さらに目数を1つ増やすとか、ステッチ幅を1ミリ縮めるとか、そういうミクロなことを追求しても消費者にはわからないし、商品は売れない。

もちろん、物作りの姿勢は否定しない。
それはいくらでも追求すれば良いが、売るためには違うテクニックが必要になる。
「売る」のと「開発する」のとで区別をつけて取り組まねば効果がないし、それをするのが工場の経営者である。

それができないなら工場の経営は他者に譲るべきだろう。

先日、ある国内靴下工場の人に会った。
最近の業績が芳しくないそうだ。

粗悪品を作っているのではない。
むしろ、高品質品を製造している。
だけど売れない。

問題は、品質ではなく、売り方ではないか。

最近は奈良の靴下産地の尽力もあってさまざまな国産靴下ブランドが生まれている。
機能性に焦点を当てたものもあれば、色柄などのファッション性に焦点を当てたものもある。
その中で、もっともポピュラーな国産靴下ブランドといえば、タビオの「靴下屋」だろう。

タビオの靴下はたしかに高品質だが、数ある国産靴下の中でもっとも品質が高いかというとそうでもない。
同等の商品も数々あるし、この某工場はタビオよりも高品質だと自負している。
まあ、控えめに見積もっても同等レベルにはあるだろう。

だが、売れ行き、知名度はタビオと各社では段違いだ。

どうしてそうなったのか。それは「売り方」「見せ方」の問題で、タビオが上手くてその他は下手くそだったからだ。

この某工場の社長は根っからの職人肌らしく、苦境を乗り切るために「さらに高品質化を目指そう」と発破をかけているらしいが、はっきり言ってピントがズレている。

売りたいなら、広報・宣伝に力と金を使うべきだし、販促も強化する必要がある。

単に品質をさらに高めたからといって、売れると考えているなら考え違いも甚だしい。

例えば、合格点が100点満点中60点だとする。
大概の消費者は70点~80点くらいの出来であれば、満足する。
あとは価格とかデザインとか機能性とかそういうところの工夫が重要になる。

ところが、今、この某工場がやろうとしていることは、93点の品質を95点に上げようとすることだ。
大変な難業だと思うが、消費者にはその2点の差はほとんど伝わらない。
なぜなら、消費者は靴下のプロではないからだ。

目数を1つか2つ増やしたところで、何の効果も消費者は実感できない。

それなら、目数を1つか2つ減らして値段を下げたほうがよほど消費者の食いつきが良い。

今回はたまたま靴下工場の人と会ったのでこういう書き方になったが、国内の他の分野の繊維製品もほとんど同じである。
消費者には実感できないミクロを越えたオミクロンな世界を必死になって追求している。

その行為は尊いが、ビジネスには不適合である。

こういうオミクロンな物作りの良さを追求している間は、この某工場の商況は好転しないだろうし、他の国内の繊維製造業の苦境は改善されない。

オミクロンな開発は重要だが、それはあくまでも開発と位置づけ、ビジネスはビジネスとして割り切っての生産が必要とされる。

繊維の製造加工業は、1点作ることに心血を注ぐ「作家活動」ではなく、あくまでも大量生産が基盤となった工業ビジネスに過ぎないのだから、その部分をキチンと区別する必要がある。
区別できない製造加工業は淘汰されてしかるべきである。





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