南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

考察

入店客数の増減によって売上高を増やす施策は全く異なる

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 今日は、基本的なことを復習がてら。
そんなこと言われなくてもわかっている方は時間が無駄なので飛ばしていただきたい。

4月からまた月に何度か専門学校へ講義に行くことになったが、計数管理の授業で、入店客数について説明したとき、ふと、基本的なことを思い出した。

入店客数の減少はその店、ブランドから顧客が離れているという状態であるということを。

だから、売上高の減少に対して、入店客数の減少が伴っている場合と伴っていない場合では対策がまったく別物になるということである。

入店客数が減少して売上高が減少している場合は、ブランドそのものや店が顧客から見放されているので、根本的な施策を変える必要がある。

一方、入店客数は増加ないし維持されているのに、売上高が減少している場合は、店やブランドそのものは支持されているから、比較的小手先の改善で持ち直す可能性が高い。

多くの方々からすれば、「そんな基本的なことは分かっている」内容だろうが、実際の業績推移や決算会見などを見ていると、自社がどちらに属するのかを分析せずに、場当たり的・泥縄的に対応している企業やブランドが少なからずあると感じる。

岡目八目とはよく言ったもので、外野から見ていると冷静にいろいろなことがわかるが、いざ自分がプレイヤーになると冷静さを欠いてしまう。人間だれしもそうだろう。

多くの苦戦店や苦戦企業を見ていると、入店客数の増減を分析せずに、

1、とりあえず商品価格をやみくもに下げる
2、品ぞろえのラインナップを思い付きで変えてみる
3、とりあえず(深い考えや狙いもなしに)広告を出稿する
4、意味もなく販売員に声掛けを増やさせる

ようなやり方が多いように感じる。

入店客数が減少しているならこういうことをやっても効果が出るまでに時間がかかる。

広告や告知を盛んにすることは効果が期待できるが、狙いや考えがなければ、単なる無駄な出費に終わる。
ファッション雑誌にブランド名と外国人モデルだけを掲載した純広告を出稿してもまったく何の効果もないのは、各ブランドが知っている事例だろう。

まあ、都市伝説の類だろうが、こんなうわさを聞いたことがある。

ユナイテッドアローズの重松理会長は人一倍、入店客数を気にしていたといううわさだ。

入店客数が多いと店の入り口の足拭きマットの傷みが早い。
たくさんの人間に踏まれるからだ。

それとは逆に入店客数が少ないとマットはなかなか傷まない。

足拭きマットは、ダスキンなどの業者からレンタルしている場合が多く、定期的に交換される。
傷みが早いと交換のペースが速くなるし、傷まないと交換のペースは遅くなる。

そこで、うわさによると、重松会長は商業施設内の同業他社の入店客数動向を探るために、出入りのレンタル業者に声をかけ、どの店が傷みが早いかを探っていたといわれる。

あくまでもうわさに過ぎないと思うのだが、それほどに入店客数の増減を重視していたから、そういううわさができたのではないかと考えられる。

入店客数を増やす施策と、買い上げ客数を増やす施策は異なる。
これをプレイヤーであるが故にごっちゃにしてしまっているブランド、企業が多いのではないか。

一度、基本に立ち返ってみることもたまには必要なのかもしれない。



カネもアイデアも知名度もない企業はEコマースでも売れない

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 実店舗での洋服販売不振を受けて、猫も杓子も「EC強化」を打ち出しており、あんまり詳しくなさそうなコンサルと称する人は安易に「EC強化」「ネットショップ」を勧めてくる。

本当に最近の猫と杓子は「EC強化」か「大草直子」かである。

アメリカでは大量の実店舗閉鎖、商業施設閉鎖が相次ぎ、その要因はECの拡大だとされており、日本でも何年か後にはそれに類した(完全に同じではない)動きが見られるようになると考えられる。

業界のおじさんたちもすっかりその気で「EC強化」とか「ネットで売ったら何とかなる」なんて極めてイージーに考えている人が増えた。
もちろん、中には「今のご時世でネットの売上高がポンポン増えるとは思えないが、とりあえずやるだけやる」という、まともなおじさんも相当数いるのだが、ネットに親しんでいないおじさんは本当に極めてイージーに捉えていて、アホらしくてこちらも諫める気にもならない。

失敗して金をドブに捨てるのは筆者ではなくて、イージーなおじさんなので、勝手にどうぞである。

筆者が見るところ、Eコマースはブランドや企業にとっては不可欠だが、そこで成功するにはよほどの「何か」がないと不可能な状況になっていると考えられる。
2005年ごろのように、Eコマースのプレイヤー自体が少なくて、立ち上げればすぐさまある程度の売上高が見込めるという市場ではすでになくなっている。

それを数値を挙げながら永江一石さんが説明しておられるので、イージーなおじさんは熟読してもらいたい。

楽天をやめてどこに行くというんだ、ジョー・・・・
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=32386

発端は、楽天市場の凋落についての日経MJの報道である。
これは事実だ。出店者数も4万店台で足踏みが続いている。

ちなみにYahoo!ショッピングは出店者数が40万店ですでに楽天の10倍となっている。
楽天は抜本的な改革がなされない限り、このまま沈んでしまうだろう。

またAmazonの台頭も著しいし、ファッションならZOZOTOWNの一人勝ちともいえる。
これらに伍して支持されるだけの魅力が楽天市場には皆無である。

で、日経MJの記事は、「自社直営サイトかBASEでがんばる」と結論付けているのだが、これがおかしいと永江さんはご指摘されていて、その通りなのである。

まず、楽天の欠点について

○楽天は制限が多すぎる。しかもダサイ
○インスタなどの外部リンクが貼れない
※インスタ貼ったところで売り上げかわんないですけどね
○使いづらい
※そりゃ基本設計が20年くらい前のものですから・・・
○上納金高すぎ

とのことで、ここに異論のある人はいないだろう。

問題はその次なのだが、現在のEC市場はどうなっているかというところで、

これは講演とかがあるといつも言ってることなんですが、15年前はネットショップとか始めるとすぐに月数十万から数百万くらいの売り上げが上がりました。

商材によっては数ヶ月たったら月商500万とかいう事例もありました。嘘のような本当の話。

しかし現在では、よほど名前の通ったブランドやリアルの店舗が多数あるようなもの、大量の広告投資を行ったケースを除いてはこんな美味しい話はございません。逆に15年前から比較する99%のネットショップはアクセス数、売り上げともに落としているはずです。

とのことで、これも体感的にはその通りではないか。
イージーなおじさんはここに目をつむっているか、そもそもネットを触らないのでまったく知らないかのどちらかなのだろう。

で、ここからが今回の秀逸な部分なのだが、

なかなか年度が古いものがないのだが、日本のB to CのECマーケットは2005年に3.1兆。2015年に13.8兆だから、10年で4.5倍になったわけ。

でね。どうググっても「マーケットは拡大した」というのばかりで、ECサイトの数自体はどうなったかの調査がない。

まあ、数えるだけでも大変だし、調査のしようもないというのもありますが、3年前に講演したときに人力で数えてもらったら、ざっくり見ただけで数十倍以上になってました。細かいのまでみたら数百倍でしょう。

いまでは小洒落た小売店ならたいていサイトがあってネット販売もしている。ほとんど売れてはいないと思うがBASEみたいな無料のCMSもある。BASEみたらこれで30万店がオープンしたとあります。

市場が5倍になっても店舗が数百倍ですよ


とのことで、競争率は格段に高まっている。

イージーなおじさんやイージーなコンサルがECを「魔法の杖」みたいに考えている理由の一つに、EC市場規模の拡大ということが挙げられるが、彼らはECサイトの数がどれだけ増えているかにはまったく気が付いていないのである。

下手をすると、ECサイト数が増えたからEC市場規模が拡大したと考えられないこともない。

確率論だけでいくと、売上規模が5倍になっても、店舗数が数百倍になっていたら、これはかなり競争が激しくなっている。ここを考慮せずにECを「魔法の杖」みたいに考えている人らはちょっとおかしいんじゃないかと思う。

日経MJの記事では、ユナイテッドアローズやメガネのオンデーズが自社ECで好調な一例として挙げられているが、それ、どっちも大手企業だから!
無名の零細企業が参考にできるモデルケースではない。

無名の零細企業が、「ただ単に」ECサイトを立ち上げたところで、埋没してしまってだれからも注目されない。

イージーな人たちはネットに対して「ネットは世界と直結しているから売れるはず」というが、いくら世界と直結してようが、そのネット空間に店は何百万店・何千万店もある。
何百万店もある中から、どうして無名の店に「わざわざ」客が来るのだろうか。
ちょっと考えればわかりそうなものだが。

永江さんの提示する解決策は

○エッジの効いたオリジナルの商品
○良質なコンテンツSEO
○正しいソーシャルの運用

であり、それを実施てきている企業は極めて少ない。

話は逸れるが、「ユニクロのEC化比率は5%程度と低いのが弱点だ」なんて言ってるちょっとアレな人たちがいるが、ユニクロは自社直営ECだけで売っていて、売上高が400億円以上もある。
シップスやフランドルよりもユニクロのECだけの売上高の方がはるかに大きい。
%だけを見て絶対額を考慮していない「%バカ」の典型といえる。


EC市場が広がる可能性はまだあるが、それ以上に店舗数は増え、競合は激化する。
無策で無名の零細企業が売上高を拡大できる要素はすでにゼロである。EC市場で競争を勝ち抜けるのは、それなりの大手企業か、無名の零細でも「無策ではない」企業に限られる。

カネもアイデアも知名度もない企業が一発逆転できるなんていう甘い市場ではすでになくなっている。








過剰な「モノづくり神話」を創作することは、かえって製造加工業者をミスリードする

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 国内の繊維製造加工業者を鼓舞したいと考えるなら、それはすれば良いと思う。
しかし、その鼓舞の材料に「根拠に基づかない願望」「現実に立脚しない理想」を据えることは、却って製造加工業者をミスリードするだけで有害である。

海外一流ブランドがセールを一切しない理由
日本アパレルが疲弊した「構造的な原因」とは
http://toyokeizai.net/articles/-/167344

この記事は、いわば「理想郷」が語られており、それが現実に立脚していない点が問題である。

そもそも「海外一流ブランドがセールを一切しない」という前提自体が現実ではない。
コメント欄に「エルメスも本国では年2回セールをしている」とある。

それを裏付けるようなこんなブログもある。

1788話 パリSOLDES!これがHERMESエルメスのソルド!♪パリ ブログ
https://ameblo.jp/wanwancocococo/entry-12177105347.html

正規店舗では行わず、別会場で行われているようで、そこに出向いたレポートである。
別会場といえどバーゲンセールはバーゲンセールである。

東洋経済オンラインの記事で説かれているように、ルイ・ヴィトンが一流ブランドになったのは、単に「愚直に物作りに励んだ」とか「職人を大事にした」だけではない。
それは一要素であり、じゃあ、国内の繊維製造加工業者が「愚直に物作りに励んで」「職人を大事にした」のなら、その中からルイ・ヴィトンが生まれるのかというと、その可能性は極めて少ない。
個人的には可能性はゼロだと思う。

ミスリードを引き起こすと感じるのはそういう部分である。

LVMHが世界的ブランドになったのは、そもそもMHと合併し、不動産業も取り込んで、「ディオール」やらなんやらさまざまな高級ブランドを買収に次ぐ買収で巨大資本となったからだ。
巨大資本があるからこそ、販促、広報宣伝に潤沢な資金が投入でき、それゆえにブランドステイタスを向上させることができた。

今の国内の繊維製品の製造加工業者にそういう巨大資本が存在するのか。
ほんの一握りを除いては小規模零細企業ばかりである。
料金が数万円の業界紙へのお付き合い広告ですら出稿できないような財務内容である。

これでどうやってラグジュアリーブランドになれるのだろうか。

また、ルイ・ヴィトンというブランドは香水はそれほど有名ではないが、LVMH傘下の各ラグジュアリーブランドは香水が人気である。
香水は、ラグジュアリーブランドといえども価格がそれほど高くなく(2000~3000円で手に入る)、庶民でも買いやすい。おまけに洋服やバッグ類、皮革製品に比べて利益率がべらぼうに高い。
広くマス層に販売して高利益を得る、そういうビジネスモデルを確立している。

単に「愚直に物作りに励んだ」だけではない。

本当に製造加工業者を何とかしたいのなら、そういう「儲け方」もレクチャーすべきではないか。

マラソンでも水泳でも熱心に練習をすればほとんどの人がそれなりの距離を走れたり泳げたりするようになる。
4時間とか6時間で42・195キロを走れるようになるだろう。

しかし、2時間6分台で走れるようにはならない。そこには天性の才能が必要になるからだ。

今の国内の製造加工場に「物作りに励めばルイ・ヴィトンになれる」とサジェスチョンするのは、47歳のオッサンに対して「毎日、練習すれば必ず2時間6分台でフルマラソンを走れるようになりますよ」と励ますのと同じようなものである。

それに欧州の一流ブランドが本当に職人や工場を大切にしているのかどうかも怪しい。
ないがしろにしているとまでは思わないが、例えば、イタリアにだって工賃が安くて苦しい経営を強いられている工場がたくさんある。
だから、不法移民を含めた外国人労働者を使っているし、欧州のブランドは人件費と工賃が安いアフリカや東欧、中近東の工場を使っている。

もし、国内の製造加工業者の競争力を高め、自立化させたいのであるなら、「フィクションまみれの神話」を作ることではなく、自ら能動的に営業活動を行うようにさせるべきではないか。

これまで、提携ブランドの下請けに甘んじていた国内工場の多くは、今も下請け根性が染みついており、発注を待っている姿勢が強い。これを受注を獲得するために自ら営業するようにすべきではないか。

そして、自社オリジナル製品開発はその次の段階で、製品開発にはマーケティングやデザインの専門家が介在する必要がある。(専門家もピンキリだから選定は容易ではないが)

製品を作っただけではビジネスは完成しない。

最後は売り場を探す、もしくは売り場を作る必要がある。

ここまでできて初めて「製造加工業者の自立化ができた」ということになる。

そして昨日も書いたように、一流ブランドを作りたいのなら、販促、広報宣伝にも目を向けさせなくてはならない。

誰がどんな屁理屈をこねようと、感情的に反発を覚えようと、商売とは、

安く仕入れて(作って)、できるだけ高く売る

ことが絶対のルールであり、「高く売る」ためには「ブランド化(ブランディング)」「付加価値づくり」が必要不可欠となる。

消費者がその説明に納得できれば、提示した値段で売れるだろうし、納得できなければ、いくら「職人が精魂込めて」作ろうが、「伝統の技が云々」「希少な素材が云々」と叫んだところで、提示した値段では売れない。

提示した値段で売れないのは、「ブランディング」「付加価値づくり」に失敗しているからだ。

マクドナルドが一時期、原価をさらされて批判されたが、それは「ブランディング」「付加価値づくり」に失敗したということに他ならない。

こういうことをまるっと抜きにして「モノづくりに専念した」「職人を大切にした」と吹聴するのは、ファクトリエという会社が自社のビジネスを有利に進めるためのポジショントークでしかない。






安く仕入れて高く売るのが商売の基本

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 商売の基本的ルールは「安く仕入れて高く売る」である。
これは全世界・全業種共通のルールである。

出来るだけ安く仕入れて(作って)、出来るだけ高く売ることが利益を最大化するコツであることも常識といえる。

ブックオフが買い取り価格と売価の差で批判されているが、基本ルールに則っているだけである。
しかし、ブックオフが「価値なし」と判断して0円で引き取った商品を、安値で販売していることが周知されてしまっているため、心情的に消費者が納得できないのである。

消費者の論理でいうと、「価値無しと判断した商品を販売するということはどうなんだ?価値のない物を売るのか?」ということになる。

このあたりは、今後、ブックオフが自社のルールを修正して対応すべきだろうが、「10円で引き取った物を500円で売るのはけしからん」という意見は的外れであるとしか言いようがない。

質屋や古着屋だって安く引き取った商品に利益を乗せて売っているし、商社や問屋もそうであり、ブックオフがけしからんというなら世の中の商売はすべてけしからんということになる。

洋服の新品在庫を安く買ってきて売る「バッタ屋」という業種がある。
バッタ屋で売られている洋服はだいたいが1000円を上限とするほど安い。コート類や有名ブランド物はその限りではないが。

300円とか500円の洋服、ファッション用品なんてざらにある。

だからお客はみんな「安いわ~」と口にして喜んで買っていくのだが、バッタ屋自体はもっと安くで商品を仕入れている。
「段ボール箱何箱で何万円」とかそういう仕入れ方をしているが、その中に詰まっている洋服や雑貨1点あたりの仕入れ値に換算すると、おそらく1点10円~100円程度だろう。

10円で仕入れた洋服を500円で販売するなんてことは普通であり、バッタ屋でそれが問題になることはない。

一時期、マクドナルドが原価をさらされて「けしからん」という声が多数上がっていたが、あれだって、商売としては普通である。要は売価が消費者のマクドナルドに対するイメージに見合っておらず、不当に高いと感じられたからだけのことだ。

安く仕入れた物をどれだけ高く売ることができるかで、利益が決まる。

そのため、各社はできるだけ高く売れるように消費者への説得材料をせっせと構築している。
それが「ブランディング」「付加価値づくり」と呼ばれる作業である。

消費者はその「ブランディング」「付加価値」に納得すれば、提示された売価で購入するのであり、批判されているブックオフは、その「ブランディング」「付加価値づくり」に消費者を納得させられるだけの説得力がないというのが現在の問題点だということができる。

これは一時期のマクドナルドにも同じ問題点があった。
マクドナルドがもっとステイタス性を確立できていれば(その完成図は想像できないが)、バーガーセット1000円でも文句を言う人は少なかっただろう。

欧米のラグジュアリーブランドを称賛する人は多いが、「安く仕入れて(作って)、できるだけ高く売る」という基本を忠実に実践したのが欧米のラグジュアリーブランドである。

例えば、実際に携わっている方が書いた記事がある。

「強いブランドほど原価率は低い」という意外?な事実
http://diamond.jp/articles/-/19282

守秘義務があるので、具体的な数字を出して語ってはおられないが、有名ブランドは一般ブランドの何倍もの売価を設定して販売しているということを説明している。

引用するとこんな感じである。

100円で仕入れた商品でも「ブランド品」として売ると、300円で売れます。同じ製品を「名前だけの商品」として売ると、150円ぐらいでしか売れないのです(数字は例えですが)。


一般的にラグジュアリーブランドの原価率は30%程度だといわれている。
4万円の財布だとだいたい工賃を含んだ原価は13000円程度だということになる。

13000円の原価というのも十分に高いが、ラグジュアリーブランドはそれ以上に高く売るために、「ブランディング」「付加価値づくり」を行ったということである。
そのための手段が、販促であり、広報宣伝ということになる。

そして消費者は、販促、広報宣伝で作られた「ブランド力」「ステイタス性」に満足して財布を4万円で購入しているに過ぎない。


ラグジュアリーブランドが売れたのは、愚直に物作りをし続けただけのことではない。
彼らは莫大な資金を販促、広報宣伝に投入している。
まさにそこには大資本の論理しかない。

また後日に別途書いてみるが、日本の物作りブランドや職人が商品を高く売りたいのなら、品質や原価率の向上にだけこだわるのではなく、見た目のデザイン性と販促・広報宣伝戦略こそ強化すべきなのである。

欧米ラグジュアリーブランドを見習う点があるとするならそこであり、それを論じないままで「職人の技」や「物作りの魂」だけを強調するのは、製造加工業者をミスリードすることになり、有害極まりない。



たまには「定石」を疑ってみよう

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 定石・セオリーとされていることは概ね正当な理由はあるが、変革期においては、それを疑ってみることも一つの視点であるといえる。

先日、Jフロントリテイリングの2017年2月期連結が発表された。
減収減益に終わっており、百貨店事業は各店軒並み減収している。
その中で、東京店だけが対前年比2・2%増と増収している。
売上高は748億円となり、神戸店にあと100億円差にまで迫っている。
改装中の心斎橋店は比較対象にならないので除外すると、京都店、札幌店、梅田店を抑えて、大丸各店中2位の売上高となっている。

http://www.j-front-retailing.com/_data/news/1702_4Q_supplementary_J.pdf

大丸東京店の好調の要因として、地上1階のグランドフロアをスイーツや食品売り場にしたことが挙げられる。

これまで、百貨店の定石では1階グランドフロアは化粧品か高級ブランドと決まっていた。
これを消費者の関心が最も高いスイーツ、食品にしたことが、東京駅隣接という立地も相まって集客装置となったと各報道では指摘されている。

実際に何度か東京店を覗いてみたが、グランドフロアは平日昼間でもかなりの来店数である。
もちろん、全員が商品を購入するわけではないが、購買比率が他フロアと変わらないのであれば、集客が多いとそれだけ購買客数は増えるということになる。

蛇足だが、すごく暇なときに、東京店の全フロアを平日昼間に覗いてみたが、5階から上はかなり閑散としていて寂しい印象で、グランドフロアとの対比がすさまじかった。

また、阪急百貨店うめだ本店のグランドフロアはファッション雑貨売り場で、化粧品は2階にある。
かつては化粧品がグランドフロアにあった記憶がある。
化粧品がグランドフロアというのが阪急のかつての定石で、2階への移転はそれなりに反対意見も多かったと聞いている。

しかし、2階に移転しても化粧品の売上高にそれほど影響はなく、それまでの「定石」はなんだったのかという印象もある。

業界関係者からは、グランドフロアは入口があちこちにあるので化粧品売り場独特のニオイを薄めてくれる効果があり、2階だと入口がないのでニオイがこもる危険性があったという意見も聞かれるが、個人的には1階にあっても2階にあってもニオイはそれほど変わらず、クサイものはクサイままだと感じる。

ニオイだけの観点でいえば、1階にあろうが、2階にあろうが8階にあろうがそれほど変わらないだろうというのが個人的な感想である。

こんな風に各社が頑なに信じている「定石」「セオリー」というのは、時代の移り変わりとともに意味がなくなっている場合もある。

もしかしたら最初から意味が無かった場合もある。
単なる信仰とか習慣とか思想とかイデオロギーだけのことだったのかもしれないこともある。

現在、インターネット通販全盛時代を迎えつつあるが、10年前までネット通販で洋服が売れると考えていた人は少なかった。
特に業界人はベテランになればなるほど否定的だった。

今はそこらへんの量販店までが後追いで出店するほど評価の高いZOZOTOWNだが、10年前の業界人の多くはあれを否定的に見ていた。

また、現在は業績が回復していない夢展望だが、スマホが普及する前から携帯通販を重視してきた。
かつて、創業者のインタビューにも伺ったことがあるが、2005年よりも以前から携帯通販を開始して、その当時はネットすら普及していなかったので、賛同者はほとんどいなかったが、競合他社が少なかったこともあり2005年から急速に業績を伸ばして今に至る。

もちろんこのまま全店舗がなくなり、すべてネット通販に置き換わることはないが、「ネットでは服は売れない」という「定石」は短期間の間にひっくり返された。

一概にすべての「定石」を否定する必要もないし、それは危険な行為だが、企業が成長を志向する場合、定石を疑ってみることも有益な手法だろう。
「定石だからアンタッチャブルで」という姿勢が、企業をもっとも苦境に突き落とすのではないか。





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