南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

考察

今の若者より昔の若者の方がよほど「量産型」の服装だった

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 量産型女子とか量産型男子大学生とかいわれるが、正直なところちょっと意味が分からない。

似たような服装をしているということが言いたいのだろうが、「トレンド」と目される服装をこぞって着用するのは今に始まったことではないし、むしろ昔の方がトレンドへの集中度合いはひどかったように感じる。

逆に現在の方が服装は多様化していると感じる。

1970年生まれの筆者の覚えている範囲でいうと、安室奈美恵さんをキャラクターにして、バーバリーブルーレーベルが大ヒットしたのが97年だった。
バーバリーチェックのミニスカートにロングブーツという着こなしだったが、大ブームになり、それこそ20代の女性はこぞってこの服装をしていた。まさしく「アムラー」とかいう量産型女子である。
今の女子大生よりもチェックミニスカ+ロングブーツの比率は高かったと感じる。

また、この少し後に、神戸エレガンスが流行した時、20代女性はこの服装に集中した。

しかし、この両方とも「量産型」とは呼ばれていない。
左を向いても右を向いても似たような服装の女しかいなかったにも拘わらずだ。

ほかにも、2000年ごろに流行したローライズジーンズ。
そこからの派生で2005年ごろにピークを迎えた欧米ブランドのローライズブーツカットジーンズ。

このあたりも女性はまるでユニフォームのようにそろって着用していた。

2005年ごろまではユニフォームのように着用されているビッグトレンドがあった。

しかし、2008年以降はそういうビッグトレンドはなくなった。
かろうじて例を挙げるならスキニージーンズくらいだろうか。

逆に筆者は2005年までの社会に比べて、洋服の着こなしはビッグトレンドがなくなったことから多様化したと感じている。

例えば、3年位前まで老若男女に大人気だったストール。

2017春夏にストールを首に巻いて歩いている人がどれほど存在するだろうか。
ほとんどいないだろう。

3年位前までは老若男女こぞって巻いていた。まさしく量産型ストーラーである。

生地産地はこぞってオリジナルストールを企画製造した。
生地をただまっすぐに裁断して、四方を縫うだけだから、洋服を作るのに比べて格段に楽にできる。
オリジナル製品の入門編としてはうってつけの商材である。

それが徐々にトレンドから消えていった。
着用者が一人消え二人消えという具合だ。気が付いたらほとんどの人が巻かなくなった。

だが、ごくまれに見かけるストールを巻いた人を「うわ、ダサ。何年前の人?」とは思わないだろう。
これは筆者のみならず多くの人の共通した見方ではないかと思う。

今、ストールをこのクソ暑いさなかにわざわざ巻いている人はよほどの愛好家であり、その服装は大枠では「ナチュラル系」と分類されるジャンルに限られている。
いわゆる、綿や麻などの天然繊維の衣服をちょっとユルっと着用しているようなイメージの人たちだ。

ストールを巻いているのを見ても、「ああ、あのジャンルの人たちね」という程度で、流行遅れとは感じない。

ストールだけではなく、ほかのアイテムでも同じではないか。

スキニージーンズが大ブームでも、レギュラーストレートジーンズを穿いた人を「流行遅れ」とは思わない。

今春からワイドパンツの着用者が増えているが、その中にスキニージーンズを着用した人が混じっていても「時代遅れが混じっている」とは思わない。

いずれの場合も「そういうジャンルの服装が好きなのね」としか感じない。

筆者が高校生~大学生だったバブル期はそうではなかった。
ビッグトレンドは毎年次々と生まれては移り変わるし、それにアジャストすることが多くのファッション好きにとっての快楽だった。

トレンドを取り入れない者に対しては「ダサい」「流行遅れ」という見方がなされた。

今の方が各人の服装に関してはずっと寛大だと感じる。
2008年くらいまでの若い人たちの方がよほど「量産型」である。

実像を無視して、今の若い人を「量産型」と揶揄してみたところで洋服の売上高は増えないし好転もしない。
そういう業界のレッテル貼りの体質に対してますます消費者は拒否反応を起こすだろう。

だいたい、衣料品業界にいる人たちの考え方はおかしい。

先日のセール後倒し論の記事でもそうだ。

「業界が停滞しているのはセール早期化によるものだ」なんて八つ当たりに近い意見が述べられている。
アホなのか?

業界が停滞して、各社がバカで企画力と販売力がなくて不良在庫を山盛り抱えたから、セールが早期化されたのであり、最初から何もない状態ならセールが早期化される必要もない。
日々の売れ行きが順調で不良在庫を抱えていないならセールを早期化しようなんて考えるはずもない。

因果関係を逆に考えれば、解決策はさらに遠のく。
まあ、解決策なんて100万年先まで遠のけば良くて、その間に業界は淘汰されるだけ淘汰されるべきだと思うが。

横並び気質、売れ筋丸パクリ気質、過剰な欧米崇拝気質、と業界にいる各社・各人の方がよほどに「量産型」ではないか。

「量産型」が跳梁跋扈できる業界は今日も平和でのどかである。


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ファッション=趣味のワンオブゼム

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 衣料品不振を伝える報道が多いが、衣料品業界の人はどうも、まだ「衣料品、ファッションは特別」と考えているフシがあり、どうにも共感ができない。

バブル期の美味しい時代を過ごしてきた年配業界人の観点の多くは取るに足りないことは言うまでもないが、かなり考えの深い若い世代の人でも、やっぱりどこかに「ファッション衣料は特別」だと考えているフシがあり、驚かざるを得ない。

個人的には、「ファッション=趣味のワンオブゼム」で、ガンプラ、釣り、将棋、囲碁、ドライブ、旅行、美食などの趣味の中の一つだと見ている。

筆者は食にはまったく興味がない。
だから、スーパーの惣菜とサイゼリヤと松屋とコンビニ弁当と鳥貴族が毎日のローテーションでもまったく構わない。
世の中には家族の手料理に対して異常に執着を見せる人がいるが、まったく理解できない。
不味い手料理を食べるくらいならサイゼリヤの方がずっとマシだと思っている。
また、外食でも値段の高低は別にして、店や味に並々ならぬこだわりを見せる人もいる。それもまったく理解できない。

それは完全に「趣味の世界」だと思っているので、自分が巻き込まれないなら、他人の行為は否定しない。

ガンプラを集めるのと同じ趣味の世界で、他人に迷惑をかけない限りは否定されるべきものではない。

ファッションもそれと同じ「趣味」だとしか見えない。

高度経済成長期、バブル期には高額なファッション衣料が飛ぶように売れた。
だから、その幻影をいまだに引きずっている人も多い。

70年生まれの筆者は、高度経済成長期の記憶はほとんどない。
80年代からバブル期なら記憶がある。

このブログで何度も書いているように、80年代に「トレンドのファッション衣料」を買おうと思ったら、いわゆるブランドショップか百貨店くらいしか買場がなかった。

多くの人が勘違いしているが、80年代やバブル期にも低価格衣料品は山のように存在した。
ジャスコやダイエーやイズミヤという総合スーパーに安い服は並んでいた。
今のジーユーやしまむらよりは高かったが、それでもブランド物よりは随分と安かった。

トレーナー3000円くらい、カジュアルシャツ2000円くらいだっただろうか。
これは92年ごろの記憶である。

ジャスコやイトーヨーカドーが衣料品で高利益をたたき出していたのはこのころのことで、この時代も低価格衣料品はそれなりに売れていた。

しかし、現在のような「低価格衣料品ブーム」にはならなかった。
なぜなら、商品の見た目があまりにもブランド物と違い過ぎたからだ。

まったく違う物を作ろうとしていたのではない。
ブランド物をコピーしようとしていたのだが、まったくできていなかった。

見た目のデザイン、色柄、生地、すべてが「何かが違う」という感じだった。
当時の服が残っていないか自宅を探したがさすがにすべて捨てていた。
画像があれば一目瞭然なのだが。

筆者が働き始めて間もない95年ごろでさえ、まだまだ差があった。

例えば、店に「ビッグエイト」という耳慣れないメーカーからGジャンが大量に入荷した。
価格は2900円だったのではないかと記憶している。

どこぞの大手メーカーから独立したオッチャンが立ち上げたメーカーだと聞いたが詳細はそれ以上しらない。
もう今は残っていないのではないかと思う。

リーバイスやリー、ラングラー、ボブソンなどのGジャンも扱っていたが、価格は9800円くらいだった。

価格差を考えると断然ビッグエイトを買うべきだと思うが、色・生地の薄さと風合い、シルエット、すべてが違っていた。恐ろしく「ダサくて安物臭い」商品だった。
だから結局、ボブソンだかリーバイスだかのGジャンを9800円で買った。

今の筆者なら考えられない行動だが、95年当時でさえ、それほどに「商品の見た目」に大きな差があった。

今春に2990円で買った定価3990円のユニクロのGジャンとは比べ物にならないほどの粗末な出来具合だ。

ユニクロのGジャンとて不満はある。
例えば生地が薄いとか、金属のボタンがチャチくさいとか。
しかし、2990円と1万5000円の価格差を考えれば不足はない程度の見た目には仕上がっている。
見るからにダサくて安物臭くはない。

当時のビッグエイトのGジャンは見るからにダサくて安物臭かった。

見た目に差がなくなれば安い方でも構わないと考える人が増えるのは当然である。

食品だって自動車だってパソコンだって自転車だって高性能で低価格な商品はそれなりに売れている。
洋服の買われ方がそうなってもそれほど不思議とは思えない。

http://blogos.com/article/228777/

昨年くらいから話題になっているが、日本におけるアパレル関連の低迷を見ると、もう服の選び方が根本的に変わっている気がする。
で、色んな記事を見ていると、「すべてごもっとも」と思う一方で、「まだまだ業界の人は甘く見てるんじゃないか」という感じもするんだよね。

とある。

この部分には賛同である。業界の人はまだまだファッションを特別なモノとして見ていると感じる。

しかし、実際のところはファッションは趣味の世界のワンオブゼムでしかなくなっていると思う。

「良い物を知れば~」なんて声が業界には多いが、それは興味のない人に「国産のナンチャラ牛を食べてみれば違いが判る」と言ってるのと同じで、余計なお世話でしかない。要らない人にとっては国産のナンチャラ牛なんてわざわざ試す理由がない。

25年前に、ジャスコで買った2900円のなんちゃってジーンズを穿いていた筆者が、リーバイスの501を穿いてみて「ジャスコのなんちゃってジーンズと全く違う」と感動したような「圧倒的な違い」が、今は感じられない。
それはブランド物が劣化したというよりは、低価格ブランドの商品の見た目が向上したということで、その差が感じられない人にとって「良い物を知れ」というのは、海原雄山の食材論と同じで、「知らんがな」としか思えない。

「良い物を知れば」「本物を知れば」という海原雄山理論をぶち上げている間は、衣料品の販売状況が好転するようなことはないと思う。


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社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

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 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。


バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。


で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。


ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25





呉服はアイスクリームの3分の2の市場規模しかない

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 先日、ちょっと驚いてしまったのが、この記事だ。

「明治 エッセルスーパーカップ」が売れている、控え目な理由
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170614-00000030-zdn_mkt-bus_all

明治エッセルスーパーカップというアイスクリームの記事なのだが、

アイスクリーム業界が盛り上がっていることをご存じだろうか。日本アイスクリーム協会によると、2015年の販売金額は4647億円。10年ほど前から、右肩上がりで伸び続けているのだ。

とある。
アイスクリーム市場規模が2015年で4647億円もあるという。

その中で売上高1位に輝き続けているのが、明治エッセルスーパーカップ(定価130円)だという。
記事によると94年発売で95年からトップになり、2000年に2位に後退したものの、2004年にトップに返り咲いてからは現在に至るまでトップを守り続けているという。
実に13年連続トップということになるから、なんともすごい。

それはさておき。

単価が100何十円かのアイスクリームの市場規模が4647億円もあることに驚いた。
この市場規模を見たときに、ふと頭に浮かんだのが呉服の市場規模である。
だいたい毎年2900~3000億円で低推移している。

商品単価が最低でも100倍は違うのに、アイスクリームの方が市場規模が1・5倍も大きい。

もちろん、衣服と「消え物」である食料品を同列に比較することはできない。
衣服は耐久財という側面があり、よほど無茶なことをしない限りは、最低でも3年くらいは持つ。
だから買い替える頻度は低くなる。

一方、食料品は食べてしまえばなくなるから、毎日でも買い替え需要が発生する可能性がある。
従って年間トータルすれば個人がすさまじい量を消費している可能性もある。
その辺は衣料品とはだいぶと異なる。

とはいえ、低単価のアイスクリームでさえ4600億円の市場規模が作れるなら、高単価の呉服がそれの3分の2程度しかない市場規模だというのはちょっと努力不足ではないかと思ってしまう。

アイスクリーム好きな個人が毎日、1個ずつ必ずエッセルスーパーカップを食べ続けたとすると、年間36000円くらいを支出していることになる。
毎日必ず1個を1年間食べ続ける人というのはそれほど多くないから、一人がアイスクリームに支出する金額はもっと小さくなるだろう。

それでも多数の人が買うことによって、4600億円もの市場規模になるということだ。

記事では、明治エッセルスーパーカップを売り続けるために、すさまじい商品開発の努力が語られている。
記事ではあまり語られなかったが、売り方も様々工夫されているのではないかと推測する。

翻って呉服はどうだろうか。
そこまで「売れるため」の商品開発がなされているだろうか?

近年、新しい売り方、デザイン、コーディネイトが発表されてはいるが、SNS上で見ている限りにおいては、決まりきったフォーマットを全く崩そうとしない守旧派も数多くいる。
それこそ「あんなペラペラは着物じゃない」とか「あれは着物らしくない」とかそういう批判が多く、通称「着物警察」とまで呼ばれている。

まずは利用者の裾野を広げることの方が大切なのに、それに真向から反対して、ハードルを上げてばかりいる。
めんどくさい着物警察に絡まれるくらいなら、着物なんて着たくもなくなる。
おまけに洋服よりもはるかに高額である。

高いカネを払ったのにグダグダ言われるなら、ユニクロで買った990円のTシャツでも着ていた方がナンボかマシだ。

先日、誤解による炎上から明るみに出たように、呉服関係の製造加工業は後継者難である。
もちろん洋服の国内の製造加工業も後継者難である。

どちらも後継者難に陥っている理由は、事業を継承しても儲からないからだ。

儲からないから志望者が集まらない。
儲かれば志望者が集まる。

じゃあ、左前だろうが、ペラペラだろうが、インクジェットプリントだろうが、着物をたくさん売れば良いのではないかと思う。
入門のハードルを下げて、その上で正式なルールを教えるようにすればよいのではないか。

最初から厳格にルールを押し付けると、そんなめんどくさい物は誰だってやりたくないと感じる。
別に着物業界が消滅したところで、大概の人には何の影響もない。

明治エッセルスーパーカップが廃止になる方がよほど影響が大きい。

製造加工の技術を残そう!と主張するなら、儲かる業界にすることを考えるべきだろう。
儲かるようになれば、全部は無理にせよ、いくつかの製造加工業は確実に残る。

低単価のアイスクリームでさえ4600億円の市場規模が努力次第では作れているのだから、高単価の着物は努力次第では、もう少し市場規模を押し上げることは可能なのではないか。
ついついそんな風に考えてしまう。


門外漢の自分にはこれ以上何もプランもないが、和装関係者でいろいろと考えてみてもらいたい。
今のままなら呉服の市場規模はさらに縮小するだろうし、それにつれて製造加工業は減り続けるだろう。
もう手遅れだという声もあるが、何とかしたいと考えている和装関係者がいるなら、もっと「売るための努力」をする必要があるのではないかと思う。


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表面的な低価格だけを真似て、本質的なサプライチェーンマネジメントを真似ずに凋落した国内大手アパレル各社

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 無印良品が今秋物から一部商品の価格を値下げするそうだ。

https://www.wwdjapan.com/427449

無印良品を運営する良品計画は、今年の春夏に続き、秋冬にも衣料品113点を値下げする。工場を集約すると共に、下着類はファミリマートやサークルKなどのコンビニ約1万8000店舗での展開による大量生産でコストを削減。品質を維持しながら合理化を徹底し、価格を改定することで集客力を高める。秋冬衣料は8月から順次販売する。

紳士用ボクサーブリーフは2枚セット価格を1490円から990円に、婦人用ショーツも同1490円から1290円に値下げする。さらに、秋冬から強化する軽量ダウンは、ブルゾン型を7980円から5990円に、ベスト型を5980円から3990円に値下げする。


とのことだ。

今回の値下げの要因は下着に関しては、コンビニ1万8000店で販売するというスケールメリットを生かしたものだ。
例えば、1店舗あたりに20パックを配布するとして、全店合計すると72万枚(36万セット)のボクサーブリーフが生産できることになり、これほどの枚数があれば、1枚当たりの工賃を引き下げることも、生地値を安くすることも可能になる。

軽量ダウンが安くなる要因は書かれていないが、工賃を叩く以外にも、閑散期に注文する、製造枚数を増やすなどの手法で安くできる。
とくに縫製工場は閑散期に仕事が入ると経営者としてはありがたいから、ダウンに限らず、縫製工賃を安めに設定してもらえる。
この手法は初歩の初歩である。

ユニクロしかり、ジーユーしかり、この無印良品しかり、だが、いよいよスケールメリットのある大資本と、スケールメリットのないそれ以外の弱小アパレル(かつての国内大手アパレルも含む)との差がさらに顕著になってきたと感じる。

ところで、じゃあ、どうしてかつての国内大手アパレルがこの手法を使えなかったのかについて、手短にまとめてみたい。
衣料品生産についてお詳しい方は読む必要がない。極めて基本的なことなので。

ワールドを例に出してみよう。
売上高が3000億円弱あり、年商規模からいえば、相当に大きい。
ジーユーは2000億円弱だからそれよりも大きいことになる。

だったらジーユーと同じスケールメリットを生かした生産方法で、低価格商品を実現できそうなものだが、現実はそうではない。

ワールドでいえば、ピーク時に100前後もブランドがあった。
今はある程度廃止しているが、それでも50ブランドは上回る。

ワールドとしての店舗数でいえば、かなりの店舗数があるが、各ブランドごとの店舗数で見ると、それほど店舗数は多くない。
おわかりだろうか?

100ブランドで1000店舗あっても、1ブランドあたりの平均店舗数は10店しかない。もちろん、実際の店舗数はブランドの強弱によって多い少ないの差は出てくる。
ドレステリアのように5店舗ほどしかなかったブランドもあれば、200店・300店展開するブランドもある。
しかし、無印良品のコンビニ1万8000店と比べると桁違いに少ない。

また、ジーユーは1ブランドで2000億円の売上高があるが、ワールドは100ブランド併せて3000億円である。
となると、1ブランドあたりの売上高はせいぜい200億円とか300億円程度が頂点である。
ジーユーとワールドの各ブランドでは、ブランド規模としては圧倒的に差があるということである。

ユニクロに対しても同じだ。
ユニクロは1ブランドで国内売上高8000億円ある。

となると、ユニクロ、ジーユーに比べると、ワールドは1ブランドあたりの売上高が小さく、売れる枚数も少ないということになり、店舗数から考えても、1ブランドあたりの売り上げ規模から考えてもスケールメリットは発揮できない。
これはワールドに限らず、オンワード樫山、三陽商会、TSIホールディングス、イトキン、すべて同じである。
違うのは抱えているブランドの数だけだ。

自社の特性を知ったうえで、価格維持政策を旧大手アパレルが採ればよかったのだが、98年のユニクロブームに慌てふためいて、スケールメリットがないのに低価格対応したことが、大手の凋落する原因の一つにもなった。

スケールメリットがないのに価格対応をすればどうなるかというと、原価率・工賃を下げ、商品が粗悪品になる。
おまけにPOSデータへの過剰な信頼による売れ筋の無限リピート生産と他社の売れ筋丸パクリ、OEM/ODM生産への丸投げが相まって商品は自社内だけではなく、他社間でも同質化してしまった。

品質が悪い上に各ブランドでデザインが同質化してしまったなら、そんな商品が売れるわけもない。売れなくて当たり前である。しかも価格はユニクロよりも微妙に高いままであり、売れるはずがない。


旧大手アパレル各社は、ユニクロの表面的な価格だけを真似、スケールメリットを生かしたサプライチェーンマネージメントという本質を真似ることを考えなかった。


旧大手アパレル各社は負けるべくして負けたといえる。
まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」である。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



多動力 (NewsPicks Book)
堀江 貴文
幻冬舎
2017-05-27





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