南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

考察

しまむらの転換路線に黄信号?

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 このニュースを読んだときに、「ああ、やっぱりな」と感じた。

しまむらの株価が急落 既存店売上高が4カ月連続減
https://www.wwdjapan.com/419687

一昨年、昨年と各メディアに「勝ち組」と持ち上げられたしまむらの失速である。
しまむらの好調は、以前にこのブログでも紹介したように、冬用の保温ズボンを百万枚単位で売り上げたことによるものである。

定価は3900円で、通常のカジュアルパンツと同じくらいスマートでスリムなシルエットなのに防風性が高いというズボンで、各社とも冬用商品では人気が高い。
ユニクロもライトオンも同様の商品を販売している。

しまむらは、この「裏地あったかパンツ」の大ヒットにより久しぶりの増収増益に転じた。

それによって各メディアはしまむらを「勝ち組」と持ち上げたのだが、業界内部からはその時点で、疑問の声が上がった。

というのは、しまむらの基本的なやり方は、メーカー各社の在庫を安く仕入れてそれを安く販売する。
ただし、在庫だから売り切れ御免で、同じ物は二度と入荷されない。
というものである。

一方、裏地あったかパンツは100万枚を売り上げたわけだから、従来のやり方と異なる方法で商品調達がなされたと見るべきである。
いくら在庫がダブついている衣料品業界とはいえ、同じ商品ばかり100万枚も積み残しているメーカーなんてそうそうにあるわけがない。

100万枚の商品を調達し、販売したというやり方はユニクロ方式に近いものがあったのではないかと考えられるし、販売の思想はユニクロと同じだといえる。

少量(とは言っても、1万枚や2万枚程度は調達している)の売り切り御免方式から、100万枚単位でのユニクロ方式への転換。業界から疑問の声が上がったのはこの部分に対してである。

売り上げ規模の小さい企業なら方向転換は容易だが、5000億円を超えるような大企業になった場合、根底からやり方を変えることはなかなか難しく、莫大な労力と資金が必要になる。

そこまでのものを費やしてユニクロ方式に転換することが果たして、しまむらにとって良いことなのか?というのが業界からの疑問の声だった。

そして、今回のしまむらの失速傾向は、方法の転換にやはり無理があり、歪みが生じているのではないかと考えられる。

しかし、失速傾向とはいえ、まだ5月であり春夏物が不調だっただけで秋冬シーズンは好調に転じるかもしれない。
今後の推移を見守らないことには、失速だと決めつけることは難しい。

それにしても、やはりというべきか、衣料品という商品において、春夏物はヒット商品を作ることが難しいということが図らずもまた証明されたのではないかとも思う。

ユニクロの秋冬偏重は以前から指摘されてきたが、秋冬偏重はユニクロに限ったことではなく、衣料品ブランドは一部を除いてほとんどが秋冬偏重である。

なぜなら、秋冬商品は春夏商品に比べて、コートやジャケット類は単価が高く、売上高を増やしやすい。
さらに、気温的にも重ね着ができることから消費者の購買枚数も春夏に比べて増えやすい。

春夏、特に夏場は高気温であるため、重ね着がしにくい。
男性ならTシャツ1枚、ポロシャツ1枚に軽量ズボンというような服装が主流で極めて着用枚数が少なくなる。
女性でも似たような傾向である。

となると、まとめ買いやコーディネイト購買は少なくなり、売上高は稼ぎにくくなる。

また秋冬、とくに冬物は機能性が実感されやすいが、春夏物はどんなに機能性を高めても、暑さは軽減できない。筆者などは「どっちにしろ暑くて汗は止まらないから、夏物は機能性商品を着る必要はない」とまで思い始めている。

そうなると、吸水速乾だろうが、防臭だろうが、大々的にヒットを飛ばすことは難しい。

以前にジーユーがガウチョパンツを100万枚売ったように、春夏商品こそ、トレンド性がなければヒットしにくいともいえる。
ジーユーでガウチョが売れた理由は機能性ではなく、トレンド性と低価格である。


しまむらの「大量調達・大量販売」というユニクロ方式へのビジネスモデルの転換が正解だったかどうかがわかるのはこれからといえる。



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ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03












産業間での人材獲得競争に敗れ続けたアパレル業界

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 2年ほど前のことになるが、筆者にインポート業界の基本を教えてくださった方が引退された。
最終的には某ブランドの社長にまで上り詰められたが、親御さんの介護に専念するということで退職された。

退職のお知らせをメールでいただいたきり、その後は音信がない。

その方がまだ現場で部長をなさっていた2006年ごろのことである。
そのとき、「インポート業界には最近、20代の新入社員があまり入ってこなくなった」と自嘲気味におっしゃっていた。
理由を尋ねると

1、バブル崩壊後のファッション市場の冷え込み
2、インポートも含めたファッション業界の待遇の悪さ
3、ITなどの成長企業への注目(当時)

などを挙げられていた。

インポートブランドは景気の良し悪しは別にして高級で華やかなイメージがあるから派手好き・ミーハーな若い人がそれなりに入ってくるのではないかと思っていたが、意外に若い人たちは賢明で堅実だった。(笑)

そうこうしているうちに10年以上が経過した。

国内アパレル企業も新入社員が確保できずに人手不足が顕著になり始めたし、昔だと手軽なアルバイトと見なされてそれなりに人手が集めやすかった販売員も求人難に陥り始めた。

理由は10年前の挙げられていたインポート業界と同じだろう。

さらに2015年ごろから大卒の求人倍率は好転し始めており、少子化の影響もあり、今後はさらに大卒の就職は有利になると考えられる。
そういえば高卒の就職率もかなり高くなってきた。
2006年ごろよりも今の方がはるかに就職にとっては有利となっている。

大卒求人倍率1.78倍、学生の「売り手市場」続く リクルート
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26H98_W7A420C1000000/

こうなると、国内アパレル企業やインポートアパレル企業にはますます人は入らなくなる。
今の状況なら好待遇の大手企業にも入社できる可能性が高まっているのである。

筆者がもし就活生の親なら、間違いなくアパレル業界ではない大手企業への入社を勧める。

以前に大先輩が、「アパレル業界は、業界間競争に負けて人材獲得が困難になった業界である」とおっしゃっていてまさしくその通りだと感じる。

アパレルが業界間競争に負けたのは何も今に始まったことではなく、バブル期から負け続けてきた。

終戦から我が国の経済を立て直す際、最初の輸出品となったのは繊維製品だった。
1ドルシャツが米国に輸出され、貿易摩擦を引き起こした。

「990円ジーンズなんてありえない!」と目を三角にしている自称クリエイターたちはこういう歴史を知らないだけであり、重化学工業が発達していない国は、低価格繊維製品を製造輸出して外貨を稼ぐのである。それが常道である。
我が国だってそれをやって経済復興の礎を築いた。
それを今、他の発展途上国がやっているだけのことである。

その後、我が国は重化学工業へと舵を切り、その後は、金融やITなどの産業に力を入れた。

繊維は国としての重点産業ではなくなり、このころから産業間競争に負けていたというのが大先輩のおっしゃる趣旨である。

アメリカ合衆国だって繊維製造業は脇役となり、金融やIT、機械製品でGDPを拡大し続けている。

昨今注目されているIT系アパレルの成長企業の多くは、業界外から来た若い経営者が動かしている。
産業間の人材獲得競争で勝った業界から来た人なので、アパレル業界たたき上げの人間よりは随分と優秀である場合が多い。

今後、アパレル産業がある程度回復することがあるとするなら、異業種出身者が業界を完全にけん引するようになったときではないかと思う。

70年代~90年代前半の繊維業界黄金期に内部で若い時代を過ごした今の年配層では、成長プランを描くことは決してできないだろう。




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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


「服」以外への金の使い道が増えたから売れなくなっただけのこと

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 ダイヤモンドオンラインのこの記事はなかなか的確な指摘ではないかと思う。

「百貨店とスーパー」の数字で語られる消費統計と報道の歪み
http://diamond.jp/articles/-/128461

マスコミ各社はだいたいが百貨店の売上高とスーパーの売上高で景気や消費動向を報道するが、それは実態に合っていないのではないかという指摘の記事である。

百貨店の売上高は30年前の水準である5兆円台にまで落ち込んでしまった。
理由は様々あるだろうが、店舗数の減少もその一因であるといえ、地方百貨店の閉店や倒産が響いている。

それ以前に消費市場全体に占める百貨店の割合も縮小している今、景気指標の一つとして統計採用の意味が希薄化しているのである。

もう一つの重要指標であるスーパー。こちらも16年度(15年4月から16年3月まで)の売上高は前年比1.6%減の13兆426万円だった。こちらも97年の16兆8635億円をピークにすでに3兆円以上、減り続ける市場である。


世間では百貨店売上高の減少ばかりに注目が集まっているが、スーパーの売上高も順調に減っているのであり、今後も順調に減り続けるのではないかと思う。逆にスーパーの売上高が増える要因を思いつかない。

にも拘わらず、

しかし、毎月、日本百貨店協会によって発表される百貨店の売上高をマスコミも重宝しているのが現状である。キチンと統計数字をレク付きで発表してくれるのは日本百貨店協会とスーパーの業界団体である日本チェーンストア協会しかなく、マスコミ各社もこの数字で消費動向の報道をするしかないのが現状である。

という状態であり、これはかつて業界紙に属したわが身を振り返ってもまったくその通りだとしか言いようがない。

で、この記事は、例えば15兆円以上にまで成長したネット通販や6兆円を越えるようになったドラッグストア、さらに7兆円規模の家電量販店が反映されていないと指摘しており、これもまったくその通りだといえる。

しかしながら、ようやく最近はコンビニエンスストアの売り上げも集計するようになっているが、依然として各地の経済産業局の管内の経済動向や、各地区の財務局による経済情勢分析でも地元の百貨店やスーパーの動向しか見ていない。

ここで改めて、衣料品不振や百貨店不振の原因が可視化されたように感じる。

要するに個人の金の使い道が増えたのである。

2000年代まではネット通販もなかったし、酒、車、服くらいしか金の使い道がなかった。
そのときに比べると個人の趣味のバリエーションは格段に増えている。

ジョギングをする人もいるだろうし、ロードバイクをする人もいる。
釣りもいるだろうし、携帯電話やパソコンに金をかける人もいる。
ガンプラを買う人もいるし、ゲームに金を使う人もいる。
何が面白いのかわからないがソシャゲに課金する人もいる。
女性ではないからあまり詳しくないが、コスメや化粧品だってバリエーションが増えている。
あからさまに化粧をする男性は少ないが、美容液などを常用する人は以前よりは増えている。

となると、洋服に使える金額は減らざるを得ない。

そこにバブル崩壊からのデフレが始まり衣料品の平均価格も低下した。

日本のアパレル小売り市場は10兆円を割り込んでおり、91年は15兆円以上あったのだから実に4割減となっている。
洋服自体の売れる枚数が減った部分もあるだろうが、平均価格が大きく下落したことも響いている。

一方で、20億点だった衣料品の国内流通点数は39億点にまで増えている。
これも低価格ブランドの大量生産・大量販売によるものである。

市場規模は4割減になったが、流通する商品量は倍増しているということになり、減少したパイを各ブランドで分け合っているというのが正しい現状といえる。
また、それを分け合うブランド数もこの20年間の間に増えているのではないかと思う。

ブランド数についての統計は存在しないが、零細規模のブランドを含めるとそれこそ無数にある。
OEM/ODM業者の急増によって、金さえ払えばだれでも洋服ブランドが立ち上げられるようになっている。(長続きできるかどうかは別として)

結局、洋服も含めた全ジャンルがそろって需要が増加することはなく、何かが増えればその分、ほかの何かへの支出が削られるのであり、洋服は削られる側であるといえる。

さらに洋服分野だけでも同じことがいえる。どこかのブランドの売上高が増えるということは、他のブランドの売上高が減るということである。とくに20年間、所得が増えていない状況が続いているからその傾向は顕著にならざるを得ない。全ブランドがそろって売上高を伸ばすということはありえない。

考えてみてもらいたいが、毎月5万円の可処分所得があったとして、何もなければ5万円分の洋服を買っているところに、今月20,000円でパーフェクトグレードユニコーンガンダムのプラモを買ったとすると、3万円分しか洋服は買わなくなる。手取りは急には増えないからどこかの支出を減らさざるを得ない。

また、有名ブランドで5万円の服を買ってしまったとしたら、次の給料日までは他のブランドで服は一切買わずに乗り切る。

国内市場規模というのはそういう個人の集合体だから、個人の消費の動向とある部分では似るのが当然といえる。

となると、服が売れないのは日本の市場規模が小さいからでもなく、日本の消費者がアホだからでもなく、日本の消費者がファッションに興味を持たなくなったからでもない。まあ、ジジイ世代の考える「ファッション」には興味は持たなくなっているが。

洋服が売れるようになるには、全体の所得を増やすしかないし、各ブランドは売れたければ39億点に埋没しないような売り方・見せ方・伝え方をするほかない。

その事実が直視できないなら、売れないままに市場から退場するほかない。



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「グッドチョイス・グッドコピー」しか考えられないブランドは無能

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 先日、某OEM企業の人とお会いした。
その人の悩みとは、ポストMA-1ブルゾンが思いつかないということだった。

たしかにMA-1ブルゾンは劇的な復活を遂げた。
復活し始めたのはかれこれ4~5年くらい前となり、この3年間は売れ筋ブルゾンの定番化していた。

90年前後に大ヒットし、当時の男子大学生はほとんど着用していた。
ときどき、大学生のファッションは量産化しているという記事を見かけるが、そんなものは90年ごろも同じだ。
MA-1ブルゾンとリーバイス501というのは当時の量産型大学生のユニフォームだった。

ただ、MA-1ブルゾンの色は様々あった。
オリーブグリーン、シルバーグレー、黒、ネイビー、ワインなどだ。
それぞれの好みに合わせてチョイスしていたが、まあだいたい人気の色は重なる。

それが広まりすぎて現場作業員までが着用するようになり、さらにはタイトシルエットが標準となったことから、身幅もアームホールも広いMA-1ブルゾンはファッションアイテムではなくなった。

昨年秋から今春にかけて猫も杓子もMA-1ブルゾンを着用している。
価格もピンキリで、ユニクロは3990円で販売していて、今春用の薄手MA-1ブルゾンは1990円に値下がりしている。
ジーユーも発売していたが、生地や縫製仕様のクオリティでは格段の差があり、1990円ならユニクロのMA-1ブルゾンを買うことをお薦めする。

IMG_2225

(今年初めに1990円で買ったユニクロの中綿入りMA-1ブルゾン)




さて、ユニクロやジーユーで最終処分価格1990円で投げ売られるようになるとMA-1ブルゾンのトレンドはお終いである。

製造業者もブランド側も次なる飯のタネを探さなくてはならない。

ただし、今秋もまたMA-1はいろいろなブランドから発売されるだろうし、着用者もそれなりに現れるだろう。
大衆に行き渡って、鮮度はなくなるが、だからといって一瞬で消えるわけでもない。

この後何年間かは店頭でも見かけるだろうし、着用者もそれなりに見かけるだろう。
トレンド変化というのはそういうもので、逆に一瞬で消え去る商品の方が珍しい。

近年だと身頃の中ほどで色が切り替えられているバイカラーのジャケットやコートがそれにあたるだろう。
ニットは昨年秋も見かけたがさすがにジャケットやコートは最早店頭では売っていないし、着用者も数少ない。
トッキュウジャーのトッキュウ2号(ブルー)がいつも劇中で着用していたのに。

MA-1ブルゾンが定番アイテムとしてこのまま定着するのか、それとも5年後くらいに再び消え去っているのかはわからない。神のみぞ知るである。

さて、OEM/ODM業者に次のヒット商品を提案しろというのもなかなか酷な話だと感じる。

というのは、いくら腕の良いOEM/ODM業者といえども、販促を仕掛けるのはブランド側の役目である。
例えばミナミ企画(仮名)というOEM業者がいたとして、OEM業者の名前を出して販促を仕掛けたところで一般消費者からすれば「何それ?」である。

先日、繊維専門商社のヤギの決算発表に出席したが、ヤギには大きく分けて3つの商材がある。

1、繊維原料分野 2、テキスタイル分野 3、繊維二次製品分野

である。

要するに原料から製品製造まで手掛けているということになり、売上高はそれぞれ182億円、141億円、757億円となっている。

繊維二次製品分野は757億円もあり、ODM生産の受注を進めたことで微増収となっている。

売上高757億円といえばかなりの企業規模だが、じゃあ、ヤギの名前で販促プロモーションを行ったところで消費者からすると「何?その企業?」ということなる。

OEM/ODM業者はいくら企業規模が大きく成っても消費者からの知名度は低い。
だから彼らが販促プロモーションをやったところで消費者には響かない。販促プロモーションはあくまでもブランド側の仕事なのである。

そして、現在の国内市場において、「物」だけで売れることはほとんどない。

「MA-1ブルゾンがダメになったから、じゃあ代わりにダッフルコートを並べましょう」

なんてイージーな提案で消費者が買ってくれるはずもない。
それは2000年ごろまでの古いアパレルの売り方である。

今は何かのプロモーションと組み合わせないと売れない。

となると、プロモーションも抜きで「次なるヒットアイテムの提案」をOEM/ODM業者に求めるブランド側が無能だということになる。
ブランド側が「こういうプロモーションを仕掛けるからそれと相乗効果のありそうなアイテムを提案してほしい」というのが本筋である。

それができないなら最早ブランドなんて必要なくなる。

これほど衣料品不振が叫ばれ、それが身に染みているはずなのに、いまだに旧時代の「グッドチョイス・グッドコピー」のやり方を製造側に求めるブランドが多いということは、本当にアパレル業界は化石が集まっているとしか思えない。
そりゃ衣料品の売れ行きも悪くなるはずだわ。


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高感度高価格帯セレクトショップの成長には限界がある

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 企業規模にかかわらず、売上高は客単価×買い上げ客数からしか生み出されない。

売上高を拡大しようと思えば、客単価か買い上げ客数か、その両方かを上げなくてはならない。

高価格帯は必然的に客単価も買い上げ客数も上昇限界点は比較的すぐに来るし、低価格帯は客単価アップはあまり望めないものの、買い上げ客数はかなり増やすことができる。

ユナイテッドアローズの今回の決算発表は、高価格帯衣料品の限界点というものが露呈したのではないかと感じられた。

今後の成長エンジンとして、UAは中価格帯のグリーンレーベルリラクシングと低価格帯のコーエンを拡大させるという方針を打ち出している。

UAの新中期ビジョン GLR、コーエンを拡大
https://senken.co.jp/posts/united-arrows-new-medium-term-vision

ちなみに2017年3月期連結は売上高1455億3500万円(前年同期比3.3%増)、営業利益91億6500万円(17.2%減)、経常利益94億2000万円(15.7%減)、当期利益51億9100万円(20.1%減)の増収大幅減益に終わっている。

そこでUAが次なる成長戦略として打ち出したのが、高価格帯の本体はあきらめて、グリーレーベルリラクシングとコーエンの拡大だったというわけで、WWDではもっと露骨に「中・低価格業態に軸足移す」という見出しを付けている。

このUAの判断はある意味で正しいといえる。
高価格帯衣料品の拡大には限界点が絶対にある。
富裕層の人口には限りがあるし、貧しい人は憧れても収入的に買うことが難しい。
貧しい人の中にも「万代で65円に値下がりした6枚切りの食パンを買って節約してでも毎年5万円の洋服を1枚は買う」というような人もいるが、そんな人はごく少数しかいない。到底1000億円企業の成長エンジンになるはずもない。客単価面からも人口面からも。

IMG_2849

(万代で買った65円に値下げされた6枚切り食パン)



となると、買いやすい価格帯のブランドを拡大するしか成長は望めない。

低価格ブランドなら客単価の上昇は望めなくても、買い上げ客数の大幅増加は見込める。まあ、中価格帯も高価格帯に比べれば買い上げ客数の増加は実現しやすいだろう。

高価格帯を主力としながら、売上高1000億円規模を越えれば、そこが限界で、高価格帯のままさらなる成長を望むなら、それはグローバル展開しかない。
要するに国内の人間は食い散らかしたから、全世界の人間を食うということであり、これを顕著にやっているのが欧米のラグジュアリーブランドだといえる。

あんな馬鹿高い商品は欧米では富裕層しか絶対に買わないから、国内市場ではすぐに限界点に達する。成長し続けようと考えるなら、他国の富裕層をすべて取り込むしかない。

欧米ラグジュアリーブランドには及ばないもののUAの価格帯でもほぼ同じことがいえる。

ファッション業界には売り上げ規模とか市場規模とかに無頓着なオサレさんもたくさんおられて、「他の高価格帯セレクトショップは成長できているではないか」という主張が聞こえてきたりするのだが、それは売上高が20億円とか50億円程度だから「まだ伸び代がある」というだけのことで、そのセレクトショップも1000億円を越えるならUAと同じ状況に陥ることになる。

8000億円もの売上高をユニクロが稼ぐことができたのは低価格帯だからであり、ユニクロがUAのような商品しか扱っていなかったならそこまで買い上げ客数を増やすことは不可能だった。

繊研プラスには2019年と2020年の業績予想グラフが掲載されているが、微増収微増益である。
売上高1500~1600億円くらいの推移である。2000億円にははるかに及ばない。
これは本当に冷静に推測したと感じる。

UAという高価格セレクトショップの伸び代はこのくらいしかないと思う。

しかし、個人的にはグリーンレーベルリラクシングとコーエンの成長性については疑問を感じる。

まず、グリーンレーベルリラクシングだが、価格帯が中途半端で低価格店と並ぶと見劣りする。
筆者愛用の「あべのキューズモール」の2階にグリーンレーベルリラクシングが入店したのだが、他の施設内店舗と比べるとやっぱり「高い」と感じる。

あべのHOOPにあったころにはそれなりににぎわっていたように見えるが、キューズモールに移転してからはあまり店内に人がいるのを見たことがない。

同じ2階にグローバルワークやアズールやZARAがあり、「高い」と感じられてしまう。
夏冬のセール時期は特にだ。

グローバルワークやアズール、ZARAの値下げ率、値引き率は大きく、GLRは小さい。

となると、GLRの出店場所は都心ファッションビルに限定される。
都心ファッションビルだけでそこまで劇的に拡大は難しいだろう。

次にコーエンである。

コーエンは価格的には買い上げ客数を増やしやすいが、商品内容は以前よりは向上したとはいえ、他の低価格ブランドと比べるとイマイチ特色がない。
それに低価格ゾーンはユニクロ、ジーユー、H&M、しまむら、ウィゴーなど強豪がひしめいており、顧客対象人口は多いものの、シェアを拡大することはかなり難しい。

また人材面からもUAというオサレ企業には難しいのではないかと思う。

GLRはまだしもコーエンにそこまで「高感度人材」は必要ない。
しかしUAという高感度セレクトショップに入社した人間はほぼもれなく「高感度志向」か「高感度気取り」であり、そこに人材と市場のミスマッチを感じる。
低価格市場専用の人材を多数導入しないと現状の「高感度志向」「高感度気取り」の人材だけでは難しいのではないか。

これはあくまでも個人的主観に過ぎないが、株式公開は高感度高価格帯セレクトショップという業態には不向きではないかと思っている。株式公開をすると株主からは持続的な成長を求める。これは当たり前なのだが、高感度高価格帯セレクトショップという業態では本来、対応し続けられない。

UAはなかなか厳しい舵取りが続くのではないかと思う。



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UAの信念 ―すべてはお客様のために
ユナイテッドアローズ
日経事業出版センター
2014-10-21




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