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南充浩 オフィシャルブログ

鶏肋なのか?

2014年9月11日 未分類 0

 8~9年前に知り合ったデザイナーはバッグのオリジナルブランドを展開していた。
2006年ごろから積極的に百貨店の期間限定売り場を展開していた。

1週間~1か月くらいのポップアップショップを百貨店内で展開するわけである。

大手企業にも属しておらず、大手企業の支援も受けていない身であったから、百貨店に限らず都心の商業施設に常設店を構えることは難しい。
資金を借りれば良いのだが、何しろ出店に伴う費用は莫大である。
借りることをためらう気持ちはよくわかる。筆者だって当事者となれば、手が震える。

で、彼らの出した結論が百貨店で期間限定売り場を頻繁に行うことだった。
この答えは間違っていないと今でも思う。

一方、先日、業界紙の先輩と雑談させていただいたのだが、この方は「昔から百貨店の期間限定売り場という手法に疑問を抱いてきた」とおっしゃる。
その理由は、委託販売という名の消化仕入れ形式を主力取引形態として温存させ続ける百貨店の体質に疑問を感じるからだという。
買い取りをせずに逃げる手段の一つとしての側面を期間限定売り場に見ておられるのだろう。

これは一理ある。

しかし、最近はちょっと期間限定売り場の効能を認めだしたそうだ。

小資本のブランドがともかくもメジャーな売り場にローリスクで進出できるという側面に注目し始めたからである。

そういう意味では先のバッグデザイナーは半歩速い動きだったといえる。

さて、その後、2010年ごろからバッグデザイナーはあまり見かけなくなった。
逆に今度は期間限定売り場ばかりでは思うように売上高が増えなかったのだろう。
いくらローリスクだといってもリターンも低ければ事業は継続できない。

例えば、百貨店の催事で1週間で150万円くらいの売上高があったとする。
扱う商品の単価にもよるが、今の店頭状況では1週間で150万円強の売上高があればまずまず成功だといえるだろう。

そのうち、人件費とか送料、交通費、百貨店へ納める歩率(だいたい売上高の3割~4割)などを差し引くと手元に残るのは75万円前後ということになる。

さらに商品の製造原価がそこから差し引かれる。

となると、手元に利益はいくばくも残らない。
原価率を30%に抑えていたとして45万円かかっている。
75万円から45万円を差し引くと残りは30万円である。

これを年間に6回繰り返したとして手元には180万円前後しか残らないことになる。

売上高が毎回増えていけばそれでも良いが、150万円の売上高が200万円になり、さらに300万円になり、500万円になるというようなことはなかなか考えづらい。
そうなる可能性がゼロではないが、そこまでに長い年月が費やされることになり、3年程度でそこまで成長することはかなり稀なケースといえるだろう。

そんな感じでおそらくは彼らは期間限定ショップという取り組みをやめてしまったのだろう。

広告告知費や販促費の一環という観点でとらえると、期間限定ショップは有益である。
通常の広告なら費用は払いっぱなしになるが、期間限定ショップなら確実に何万円かはリターンされる。

しかし、これを主要業務とするとなると利益も薄いし、売上高が莫大に増える公算は少ない。

このあたりの取り組むバランスは実に難しいと思う。
三国志の故事でいうと「鶏肋」というやつだろうか。
鶏の肋は、食べるには肉が少なすぎるが、旨味はあるので捨てるにも惜しいという意味である。

業界紙の先輩との雑談をしながら、かつて知り合ったバッグデザイナーを思い出して、そんなことをつらつらと考えていた。

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