来店するけど買わない
2014年8月28日 未分類 0
繊維・アパレル業界の人でもというべきか、繊維・アパレル業界の人だからこそというべきか、印象論のみで論じる方が少なくない。
例えば百貨店の各店舗の売上高である。
京都には小型百貨店が集まっているのだが、もっとも売上高が高いのは高島屋である。
次は大丸であり、ジェイアール京都伊勢丹はその次なのである。
いくらジェイアール京都伊勢丹がこの10年で売上高を伸ばしたとはいえ、この序列は変わっていない。
京都の一番店は今でも高島屋だし、それを大丸が追いかけるという構図は同じなのである。
昨日、フェイスブック友達に教えていただいたブログに2013年度百貨店の売上ランキングが掲載されている。
http://osakacityview.blog.fc2.com/blog-entry-370.html
この元ネタは文中にあるように日経MJである。決してブログ主の「印象論」ではない。
貴重な資料といえる。
上位30位までの表だけを引用する。
高島屋がジェイアール名古屋高島屋も入れると6店舗ランクインしている。
売上高の高い店舗が全国的にまんべんなく存在するといえる。
突出した店舗はないものの、大丸も6店舗ランクインしており、バランスの良さがうかがえる。
ちなみにここでいう大丸は大丸単体のことである。
このあたりの売上ランキングをきちんと認識しないと、百貨店を論じても印象論や好き嫌い論になってしまう。
さて、グランドオープン半年で下方修正を余儀なくされたあべのハルカス近鉄百貨店本店だが、その要因は若い女性向けの専門店街「ソラハ」の不振によるものだと報道されている。
それに向けた近鉄側の対応策もいくつか報道されているが、記事を読む限りにおいては、有効であるとは到底思えない。
例えば昨日のブログでご紹介した近鉄百貨店の高松啓二社長のコメント
「雰囲気や音楽など、若い女性が好むような演出も不十分だった。来店客を呼び込む仕掛けが必要だ」と指摘。数千万円を投じ、9月中旬の完成をめどにソラハの改修に踏み切る。
なんて、どこか他人事のように聞こえてしまう。
「指摘」なんてしている場合なのか、今更指摘するくらいなら計画段階からそれをなぜ指摘しなかったのだろうか。
また、ここで報道されている巻き返し策も疑問を感じる。
http://www.data-max.co.jp/company_and_economy/2014/08/14735/0827_dm1435/
そして、「まだ構想段階ですが、若い女性に人気のモデルさんなどファッションリーダー的な存在の方とのジョイントしたイベントなどを企画して、ご来店を促していきます。
だそうなのだが、現在、マスに向けたファッションリーダーなんてそもそも存在するのだろうか?
90年代後半は安室奈美恵さんが若い女性のマスファッションリーダーだった。
2000年代前半は浜崎あゆみさんが若い女性のマスファッションリーダーだった。
そういうマスが支持するファッションリーダーは今存在するようには思えない。
個々のジャンルに人気のある小ファッションリーダーはたしかに存在する。
しかし、マスを狙う百貨店が特定のジャンルに特化した小ファッションリーダーを起用したところで目指す売り上げ規模を回復できるとは到底思えない。
引用した記事の中で興味深い分析がある。
同社の広報によると、「あべのハルカス近鉄本店の来客数は、グランドオープンの3月~7月の間は、前年同期比で80%増でありました。しかし、買上率が計画の94%に対して80%という結果でした。すなわちご来店くださったお客様の14%の方が計画の6%に加えて何も買うことがなかったという結果です」という。
来客数は大幅に伸びたが買い上げ率は伸びなかったということである。
この現象は何もあべのハルカスだけのことではないと感じる。
事実上の撤退が決まったJR大阪三越伊勢丹だってオープン当時は何十万人もの人が来店し、来店客数の計画は楽々とクリアしたが、売上高がまったく伴っていなかった。
初年度売上高計画をクリアして好調が伝えられるグランフロント大阪も来店客数は、当初計画を大幅に上回っている。売上高の計画達成どころの上回り方ではない。
近年関西で開業した新規の商業施設は、来場者数・来店数はどれも好調であるが、売上高はそこに正比例していない。
こうした状況を見ると、新しい施設ができれば好奇心も手伝うから、来場者は比較的容易に多く集まる。しかし、来場した人々に商品を購入してもらうことは難しくなっているのではないかと感じる。
もしくは購入はするが、単価が低いのかもしれない。
そういう意味では消費者の目はシビアさを増しているのではないか。
そこで消費を促す施策は、どういうものなのかもう一度考え直す必要があるのではないか。
90年代後半までの手法をそのまま実施して結果が得られるような状況にあるとは思えない。
存在していない「ファッションリーダー」とのジョイントだとか、まったく具体性もない「女性が好む演出」だとかでは対応しきれないだろう。
何とも厳しい時代である。