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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズ需要を支える層

2014年7月29日 未分類 0

 昨日に続いてジーンズについて考えてみたい。

現在、ジーンズには二つの消費者層があるのではないか。

一つはトレンド層
もう一つは非トレンド層

である。

ジーンズ不振と言われて5年以上が経過しているが、都心でジーンズを穿いている人は毎日見かける。
別にジーンズを穿いているからと言って「プッ。ダセえ。ジーンズなんて穿いてやがるww」なんてことは思われないわけである。

トレンド層はスキニーやスリムテイパードという細身シルエットのジーンズを着用している。
色はワンウォッシュやノンウォッシュの濃紺が多い。
このトレンド層は都心にも郊外にも田舎にも存在する。

一方、非トレンド層は男性なら少し太目のストレートシルエット、女性ならブーツカットを穿いていることが多い。
ズボンの背面は装飾でコテコテというのも珍しくない。
この非トレンド層も都心にも郊外にも存在する。

トレンド層はおそらく都心型セレクトショップで買い物をする層だろう。

非トレンド層は、おそらく今流行りのマイルドヤンキーか、それに近いマインドを持っていると感じる。

なぜ、こんなことを言い出すかというと、昨日も書いたブルーウェイの展示会での話である。

「太目ストレートとかブーツカットジーンズの要望がいまだに郊外店からはあるのです」

とのことである。
そして担当者は「トレンド層とは異なる要望が確実にあり、これは無視できない」という。

いろいろなことが考えられるのだが、トレンド層はトレンドにある程度敏感なので、トレンドがデニムトップスへと移行すればジーンズを捨ててデニムシャツを着用する。デニムシャツを着用したら、ジーンズでは色合わせが難しいのでチノパンやカラーパンツ類を着用する。
トレンド層もたまにはジーンズを穿くが、それはカラーパンツのバリエーションの一種としてジーンズをとらえているといえる。

一方、マイルドヤンキーテイストの非トレンド層は間違いなくジーンズの愛好家である。
彼らは根強くジーンズを支持する。ちょうど40代・50代と同じくらいの熱烈なジーンズ支持層である。

最近、筆者はこのトレンド層と非トレンド層が着用するジーンズが同じアイテムだとは思えなくなってきている。

トレンド層の考えるジーンズと、非トレンド層が考えるそれはまったく異なるのではないか。

現在、ジーンズナショナルブランド各社もすっかり縮小してしまった。
売上規模はおそらく、20億円未満となっているだろう。
そうなると、マスに向けた商品提案は不可能である。どこかのテイストに絞り込まなくてはならない。
逆にいうと、トレンド層と非トレンド層でまったくジーンズの嗜好が異なってしまったために、ナショナルブランド各社は売上縮小を余儀なくされたという側面もあるのかもしれない。

ジーンズ業界の年配者はエライさんと話すと、いまだにマスに通じるジーンズがあると認識されているように感じてしまうのだが、それは幻想にすぎないのではないかと思う。
ここまで嗜好が別れてしまうとマス化は難しいだろう。

そんな中で両方に向けた商品を供給するのがエドウインである。
さすがに200億円規模の売上高を維持する国内最大手である。

例えば、トレンド層に向けては、色落ちしにくいデニム生地を使った細身シルエットの「キープブルー」を、
コテコテ装飾が好きな非トレンド層には「XVシリーズ」を提案する。

これをやれているから最大手なのか、最大手だからこれをやらないと維持をできないのか、因果関係は判然としない。

さて、個人的な好みでいうと筆者はコテコテ装飾系のジーンズブランドはあまり好きではない。
しかし、ジーンズというアイテムを厚く支持しているのはコテコテ系を好む非トレンド層ではないかと思えてくる。

コテコテ系の流れを独断を交えてざっとまとめてみる。
まずは2007年ごろで終焉を迎えた高額インポートブランドブームのころに盛り上がった「トゥルーレリジョン」だろう。
ジーンズのバックポケットに太目の糸で大きなステッチが施されており、この2~3年、着用者を見かけることがめっきりと減ったと感じるブランドである。

刺繍やらなんやらでまさしくコテコテ装飾は、韓国のジーンズブランド「レッドペッパー」だろう。
関西だと今でも着用者をごくまれに見かけるが、まさしくマイルドヤンキー的な雰囲気の方が多い。
学生時代は元ヤンキーだったような方も多い。

ついでながら、現在の「エヴィス」の着用者もこの匂いがする方が多いように感じる。

エドウインのXVシリーズもこの流れにある商品群だといえるし、これの着用者はマイルドヤンキーに分類される方が多いように見える。(統計を取ったわけではなく、あくまでも筆者が見かけた体感による)

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(エドウインのXVシリーズ)

この手の商品はトレンドからも外れているし、筆者は好みではないのだが、底堅い需要があるのではないだろうか。不振の影響を被っているジーンズ専業メーカーはこの層に向けた商品を開発することで、大きく伸びることもないが大崩れもしない顧客層を手に入れることができるのではないだろうか。

男女ともジーンズへのこだわりが厚い40代・50代に向けた商品と、マイルドヤンキー的な非トレンド層に向けた商品を2本柱とすればジーンズブランドは小なりといえども安定した売上高が見込めるのではないかと考えている。

ただし、そうなった場合は、安定した売上高と引き換えにブランドイメージがあまり良くなくなるというデメリットもある。

けれども、従来通りにマスを狙った商品を模索しながら「ジーンズが売れない」と嘆いていても仕方がないわけであるから、思い切った手段を取ることも必要なのではないだろうか。

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