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南充浩 オフィシャルブログ

色あせても破れても着用できる

2014年7月28日 未分類 0

 先日、イタリアのジーンズカジュアルブランド「GAS」の来春夏展示会にお邪魔した。

そこでこんな記事にまとめさせていただいた。

http://a-mp.jp/article.php?id=1172

欧州ではブリーチジーンズとリペア加工ジーンズが最注目されているのだという。
シルエットは相変わらずスキニーとスリムテイパードで、こちらはここ数年変わらない。
シルエットが変わらないから色や加工での変化に注目が集まるのだろう。

IMG_2112

(ブリーチとリペア加工を施したGASのレディースジーンズ)

同じ時期に日本の老舗ジーンズ・カジュアルパンツブランド「ブルーウェイ」の今冬展示会にもお邪魔した。

トレンドのソースは全世界共通なのでこちらでもリペア加工風のものが提案されていた。
ブリーチについてはあまり注目していないようだが、かなり薄ブルーになるまで洗い加工を施したジーンズは提案されていた。

そこで印象的だったのが、ブルーウェイの担当者の言葉である。

「色落ちしても破れても着用できるというのはデニム生地アイテムだけです。他の生地やアイテムにない特殊性というのはその部分に尽きるような気がします」。

本来はジーンズというアイテムで考えたいところだが、デニム生地を使ったアイテム全般に敷衍してみるのが実情に即しているだろう。
デニムブルゾン、デニムシャツ、デニムワンピース、デニムスカートなども含める。

ワンウォッシュなりノンウォッシュなりの濃紺から使い込んで色が薄くなっていく。
変なシワができたりして、そのシワに沿って色が剥げ落ちていったりする。
それがデニムの味であり楽しさであるとされている。好き嫌いは別として。

で、いずれどこかの部分の生地が薄くなって破れる。

普通のアイテムならその時点で着用は無理である。
着用しても構わないが明らかに変だと周囲に思われる。

例えば、スーツ。
色あせたスーツ、ひざに穴が開いたスーツ、袖口が擦り切れたスーツ。
これは着用不能だろう。

スーツはフォーマルでありドレスであるからカジュアルアイテムで考えてみる。

例えばスエット。
色あせたくらいはOK。加工によっては細かく穴の開いた商品もある。
しかし、個人的にはそれはジーンズほど市民権を得ていないと感じる。

カジュアルなコート。
例えばメルトン素材のダッフルコートやPコート。

これだって色あせていたら変だし、穴が開いたら買い替えろということになるし、袖口が擦り切れていたらやっぱり見た目は良くない。

最近ではジーンズの考え方を取り入れて加工を施したTシャツやワークパンツも現れているが、発想の原点はデニム素材の経年変化からである。

さて、そういう意味では、欧州でブリーチ加工・リペア加工が最注目されているというのは、デニムという生地の特性に最注目した結果ではないかという気がする。
後付けだけど。

洗い加工を施されたジーンズに果たして目新しさがあるかというと疑問だ。
というのは、多くの消費者は2007年で終了した高額インポートジーンズブームの際に、いやというほど洗い加工の商品を見ているからだ。
あれから7年が経過している。
10代・20代の若者にとっての7年は長いが、オッサン世代にとっての7年なんてつい昨日のことのようなものである。
だから、加工への目新しさがマスで共有できるかという点においては疑問を感じてしまう。

デニム本来の特性を生かした打ち出しとしては洗い加工であるという分析・判断は適切なものだろう。
でも、かつての洗い加工への過度のこだわりが若者たちにとって「ジーンズはダサい」というイメージを抱かせた(トレンドがデニムボトムスからデニムトップスへ移行したことは承知しているが)ことも事実であると感じる。
やたらと「職人のこだわり」的な打ち出しが目立ち、「ジーンズは擦ってなんぼ」みたいな風潮が蔓延したことも、若者のジーンズ離れの一環であったのではないか。

これらは同じ要因の表と裏なので仕方がないとはいえ、物事のバランスを取ることはつくづく難しいと改めて感じさせられてしまう。

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