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南充浩 オフィシャルブログ

「〇〇産」だけでは価値にはならない

2014年7月24日 未分類 0

 今日は売り方について考えてみたい。

販促コンサルタントの藤村正宏さんのブログでこんな事例が紹介されている。

売れる商品があるというのは幻想。「編集力」を鍛えることが肝要。
http://www.ex-ma.com/blog/archives/909

タイトルはちょっと厳めしいが、内容は、アンティークのカギが1本5000円という高額な価格で売られているというもの。

単にカギとして売るのではなく、ちょっとしたストーリーを付加して売っている。
本文を読んでもらえればわかるが、これは「カギ」単体で売られている。錠前とセットではない。
カギ単体なんて所有していてもほとんどなんの使い道もない。
本文中に紹介されているPOPのように、せいぜいがキーホルダーかストラップとして使えるくらいだろう。

その前にこんな一文が付けられている。

Vintage Key
古い鍵・・・・この鍵で世界の何処かの扉が開くかもしれません。

この一文で使い道のない「カギ単体」に物語性を与えている。
記事によると、このカギは羽田空港の「南青山Shosaikan」という店で売られているそうだ。

これに対して、記事中では、

でも、この仕入れ値はたぶんかなり安いはずです。
ヨーロッパのフリーマーケットなどで、たくさん買ってきた感じです。

「世界の何処かの扉が開くかもしれません」という物語を付加することによって、その編集力で売っている。

物語性がありますよね。
商品そのものの意味を変えて、価値を創出した例です。

商品っていうのは「売れる商品」があるのではなくて、「売れる売り方」があるだけなんです。

とあり、まさしくその通りである。
これを「編集力」と呼ぶのが良いかどうかは筆者にはちょっとためらいがあるのだが、言わんとする内容はその通りだろう。

これに続いて、リンゴという果物の売り方についても示唆されている。

そのへんのスーパーで売っている98円の普通のリンゴにどういう価値をつけて売るか? ということを、グループの皆で考えるんです。
どういう価値をつけるか、という研修。

例えば「アップル」という言葉に引っかけてパソコンと関係させたり、聖書のアダムとイブの話を持ってきたり、栄養価からアプローチしてダイエットにいいとか、リンゴジュース、アップルパイ……。
リンゴ一つだけでも、売り方がものすごくたくさんある。

ただ、みんなそういうことを考えるのが面倒くさいから、「青森県産リンゴ98円」として売るだけ。

とある。

洋服業界は「青森県産リンゴ98円」という売り方を決して笑えない。
同じような売り方をしているではないか。
「Tシャツ1900円」「ダウンジャケット5900円」なんていう売り方は日常茶飯事だし、少し差別化を図る際には「日本製カットソー3900円」とか「岡山県産デニム12800円」という売り方をしている。

見てお分かりのように「青森県産リンゴ98円」と同じ売り方である。

で、とくにそういう傾向が顕著なのが、産地ブランドである。
産地なのだからそれを前面に訴えるのは当然だが、産地ブランドにも各社がある。
例えば、児島で洗い加工を施しているジーンズブランドはいくつもあるわけだから、単に「児島で洗ったジーンズ」だけの打ち出しだと、AブランドもBブランドもCブランドも消費者にとっては同じであり、それぞれにデザイン変化はあるものの、最終的には価格競争に陥りやすい。

「高野口産フェイクファー」とか「西脇産先染め織物」というだけでは付加価値にはなりにくい。
高野口でフェイクファーを製造している会社は何社もあるし、西脇で先染め織物を織っている会社は何社もある。
それぞれどういう特徴があるのかまでを説明しないと、外部から見た場合、甲社の生地も乙社の生地も丙社の生地も同じにしか見えない。

昨今、産地企業が自社オリジナルの製品ブランドを開始するケースが増えている。
産地企業だからこそ、「〇〇産」だけに頼らない売り方を模索するべきだと考えている。

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