衣料品をデザインする側、衣料品を仕入れ・販売する側の想像力が予想以上に乏しくて驚くことがある。

これは産地の人たちがよく言うのだが「今のデザイナーや企画マンは生地を見ても、どんな物が作れるか想像できない。昔のデザイナーや企画マンなら、『この生地でパンツを作ったら良さそうですね』とか『スカートにしたら面白いと思いますよ』という反応があった」とのことである。

だから産地の生地展も生地問屋の素材展も、どんどんと製品サンプルの展示が増えている。
仮縫いでも良いから製品の形に仕上げないとデザイナーも企画マンもピンとこないようだ。

朝から晩まで生地と製品を触っていてどうして想像できないのか筆者には不思議でならない。

産地の生地展でも生地問屋の素材展でも、洋服の形に仕上げてサンプル展示した品番は受注が好調なのだそうだ。

なら、これを逆手にとって、自社が売りたい生地を積極的にサンプルに仕上げて展示すれば、自社で受注をある程度コントロールできるということになる。
ハシッコイ生地問屋なんかはすでにこういう誘導をこっそり実行しているに違いない。

自分で選んだつもりになっているデザイナーと企画マンこそ良いカモである。

さて、バイヤーにも同じことが言え、とくにデザイン性の高い小規模ブランドの展示会では、「こんなに濃いデザインの商品をどう組み合わせて売って良いかわからない」という反応が多い。
ブランド側は自社のエッセンスを凝縮したがるので、デザイン性の高いアイテム同士を組み合わせたコーディネイト写真を資料として添付する。

それを見たバイヤーの多くはそういう反応を示す。

けれども、デザイン性の高いアイテムで全身をコーディネイトしている人など今の世の中それほど存在しない。
20年ほど前なら、それは「おしゃれに気合いの入っている人」と見られたかもしれないが、今は「おしゃれオタク」「おしゃれマニア」として見られてしまう。

取り入れるなら、1点か2点で、そのほかはベーシックアイテムを組み合わせる。

たとえばデザイン性の高いジャケットにはベーシックなジーンズやカーゴパンツ、ワークパンツを合わせ、インナーには無地のベーシックなカットソーや、ボタンダウンシャツを合わせる。

というような着こなしになる。

となると、バイヤーはブランド側のスタイルブックだけを見るのではなく、自店で販売しているベーシックアイテムと、ブランドの濃い商品を頭の中で組み合わせてみたら良いのではないか。

それくらいの想像力は普通に備わっていると思うのだが、どうもそうではないらしい。

となると、ブランド側も自社のコテコテ商品だけでコーディネイトしたスタイルブックを渡すのではなく、バイヤー向けに自社のコテコテ商品とベーシックアイテムをコーディネイトしたスタイルブックも渡せば良いのではないだろうか。

産地の生地メーカーや生地問屋のサンプル展示商法よろしく、バイヤーの受注をある程度誘導できるのではないだろうか。

何にしろ、ファッション業界の傾向はよく理解できない。