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南充浩 オフィシャルブログ

ファッションで地域振興なんて幻想

2013年12月20日 未分類 0

 「ファッションで地域振興」みたいな標語を耳にすることがあるが、個人的にはちょっと無理がありすぎるのではないかと感じる。

というのは、有名なブランド、アパレル、セレクトショップの本社、または本社機能は東京23区内に集中している。厳密に言えば「ファッションで地域振興」にもっともふさわしいのは東京23区内ではないかと感じる。

東京以外だとアパレルの本社、または登記上の本社がある程度の数存在するのは、大阪、神戸、京都、岐阜、名古屋、岡山(井原・児島含む)、福山、福岡くらいだろう。

この数都市は、いわば「地元ファッション企業」によるイベント類の興業が可能だ。

範疇をもう少し広げてみて、繊維生地産地ということで考えてみると、これらに加えて静岡県、福井県、石川県、新潟県、和歌山県、今治(愛媛県)、滋賀県、西脇(兵庫県)、愛知県、徳島県などが入る。

それ以外の地域ではファッション産業、繊維産業がほとんどない。

あるのは画一化・均一化された郊外型大型ショッピングセンターか駅前のファッションビルくらいである。
そしてショッピングセンターにもファッションビルにも入居しているブランドショップの大多数は東京に本社を構える。一部は大阪、神戸、京都本社だが少数派である。

アパレルの本社もなく、生地産地でもない地域が「ファッション興業」を行うとすると、ショッピングセンターか駅前のファッションビルしか存在しないわけで、その中に入居しているブランドショップは単なる東京からの出張所である。
ショッピングセンターや駅前ファッションビルに対して地域を挙げて興業することが、果たして地元民の望んだ「地域振興」なのだろうか?筆者にはどうにも違和感がある。

もちろん、ショッピングセンターやファッションビルで働く人々の大多数は地元民であり、彼らの勤める職場が活性化すると何らかの経済効果は多少なりとも期待できる。
それは間違いないが、本来の意味の「地域振興」ではないように感じる。

本来なら、地元の名産品とか名物とかを作り出して、それの知名度が高まることによって経済効果をもたらすというのが理想形だろう。
そういう名産品を作るなら食品が一番適しているだろう。
各都道府県には何かしら名物に近い食品があるからだ。

特定の農作物の生産量がすごく多い県もあるし、特定の料理が有名な地域もある。
昨今人気のB級グルメなんていうのもこの範疇に属するだろう。

翻って、でファッションは?

である。

今治のタオルとか、岡山・広島のジーンズとかそういう物がどれほどあるか。

大手SPAブランドだとか、全国チェーンのセレクトショップだとか、そういうのをいくらアピールしても地域の産業振興にはならないし、そういうのを買うために他府県からわざわざ来る客は存在しない。
なぜなら、各地に同じ店が多数存在するからだ。
わざわざ他府県まで出かけずとも近所のショッピングセンターや最寄駅のファッションビルで事足りる。
どうしてもというなら、それらの大型旗艦店が集積する東京23区内に行ったほうが楽しめる。

ということで、客は東京に吸い寄せられる。

極端な言い方をすればわざわざ他府県まで出かけてユニクロの商品を買いたいなんて言う人がどれだけ存在するのか。近所のユニクロで十分ではないか。同じ商品を各地で売ってるわけだから。
それでもユニクロにも大型店専用商品とか旗艦店専用商品なんていうのが一部存在する。
そういう商品が欲しい客は東京や大阪の大型店や旗艦店に行く。

そういうことである。

先に挙げた地域ですら「ファッションで地域振興」は相当にこじつけ感があるのに、それ以外の地域は最早、牽強付会にすぎるといわねばならない。

「ファッションで地域振興」なんて幻想は早く捨て去るべきである。

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