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南充浩 オフィシャルブログ

似たり寄ったりになるのは何の不思議もない

2013年12月17日 未分類 0

 Sumurai ELOというファッション雑誌の1月号で、「マジでオシャレな服が買えるセレクトショップはどこ?(切実)」という4Pの小特集がある。これに普段SNSで交流している人たちが好意的な反応を示している。

ビームス、ユナイテッドアローズ、ジャーナルスタンダード、シップス、アメリカンラグシー、フリークスストアの6つのセレクトショップそれぞれにコーディネイトを提出してもらい、ショップ名を隠してアンケート調査をし、その人気の差を探るという企画である。

詳細は山田耕史さんのブログに詳しいのでそちらを参照していただきたい。
http://t-f-n.blogspot.jp/2013/11/samurai-elo1.html

筆者もさっそく雑誌を読んでみたのだが、気になるのはこの特集のサブタイトルというか小見出しみたいなところに「それぞれのショップの違いが俺たちよくわかりません」というような意味の文言が書かれてあるところである。

おそらく、これは編集者が付けたのだと思うが、彼の偽らざる感想だろう。
そして、彼が衣料品業界の現在の構図を熟知してこういう文言をシレっと書いたのなら、底意地が悪くてなかなか素敵である。

もし、業界の構図を知らずに書いたのだとしたら、素人目からはそう見えるということでこちらも業界にとっては警戒すべきシグナルである。

さて、なぜこんな持って回った言い方をするかというと、これら6つのセレクトショップの商品がそれぞれ似ているのは、現在の業界構造を見れば当たり前だからである。

これらセレクトショップはセレクトと言いながらも、収益追及のために、自社企画商品比率をかなり高めている。
ショップによって比率に差はあるが、6社とも確実に5割を越えている。
元来、企画担当者が存在しないはずのセレクトショップがどうやって自社企画商品を製造しているかというと、OEM/ODM業者に企画製造を依頼しているのである。

大手商社を筆頭に、中堅・小規模商社、大手生地問屋、OEM/ODM専門事務所、とその発注先は多岐にわたる。いずれにも製品化部門があり、そこが手掛ける「製品」とは主にOEM/ODM生産を請け負った製品である。

今回はたまたま6つのセレクトショップを例に挙げているが、これはなにもこの6つに限ったことではない。
多少なりとも名が通っているセレクトショップ、百貨店ブランド、SPAブランドは軒並みこれらを利用している。

ただ、卸売りアパレルメーカー出身の百貨店ブランドやSPAブランドは過去の名残から、縮小したとは言いながらも自社に企画部門を持っており、一定の割合で自社企画製品を供給している。

多岐にわたるOEM請負業者はそれぞれ唯一の得意先とのみ取り引きをしているわけではない。
ほとんどの業者は複数のSPAブランドやセレクトショップの注文を受けている。そうでなくては業者の売上高が伸びないからである。

例えばAという業者があったとして、先に挙げた6つのセレクトショップすべてからいくつかのアイテムの受注を得ていることだってそう珍しいことではない。

同じ業者が企画製造するのだから、似通って当然である。
大手商社の製品化事業部のように企画担当者が複数存在すれば、受注先ごとにそれぞれ別の企画マンに担当させ、同質化をある程度避けることは可能だが、小規模・零細事務所ではそれは無理だ。
一人の企画マンが何社もの企画を担当することも珍しくないのだから、自然と各社のテイストやデザインは似通ってしまう。

だから先の雑誌が書いているように、6つとも似通っているのはまったく不思議ではない。
もっと言えば、全ブランドの商品すべてが似通っていてもまったく不思議ではない。

編集者がこういう構造を熟知していてワザとあのコピーを書いたのなら、なかなか素敵ではないか。

こういう業界構造は改められるどころかさらに加速しつつあるのが現状だと感じる。

業界の不思議な風潮として、つい最近、超有名なセレクトショップのOEM生産を手掛けるようになったA社があったとする。
このA社はそれほど規模が大きくなくても、このA社には遠からず他社からの注文が殺到する可能性がある。
なぜなら、その超有名セレクトショップを手掛けていることが業界内では一つのステイタスと見なされる。
「あのセレクトさんをやっておられるなら、ぜひともうちも」なんて言葉は日常茶飯事で耳にする。

「それってあのセレクトさんと同じような商品が出来上がる可能性があるのですが、御社はあのセレクトさんの完全コピーを目指すのですか?」と疑問を感じることもしばしばある。
あのセレクトさんのオリジナル商品だってどこかの欧米ブランドのコピーであることが多いから、コピーのコピーということになるのだが、そんなことはどうやら関係ないらしい。

こういう風潮は強まっている感こそあるが、緩和される兆しは一向にない。

先の特集だが真面目にやるなら、本来は一冊丸ごとやっても語りつくせないほどのネタである。

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