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南充浩 オフィシャルブログ

成分表示がすべてではない

2013年10月25日 未分類 0

 自分自身もそういう部分があるのだが、多くの人は成分表示を見て良品かどうかを判断する。
例えば「ダウン90%・フェザー10%」という表示のダウンジャケットがあるとする。片方に「ポリエステル100%」の表示がある中綿ジャケットがあるとする。
当然、筆者も含めた多くの人がダウンジャケットの方を「良品」と判断し、両方の価格が一緒ならダウンジャケットを買う。

しかし、ダウンにも等級がいろいろとあってそれは「フィルパワー」というもので表記されている。またポリエステルにもさまざまな種類があり、機能性に優れたもの、手触りや表面感の良いものもある。
だから極端な言い方をすれば、フィルパワーがめちゃくちゃ低いダウンよりは機能性ポリエステルの方が良品である。

昨年見かけた珍品には「フェザージャケット」があった。フェザーの方がダウンよりも多く含まれているダウンジャケットである。しかしフェザーにはダウンほどの保温性はないから、フェザージャケットを買うくらいならポリエステル中綿のジャケットを買った方がずっと良い。

これは綿しかり、カシミヤしかり、ウールしかり、アクリルしかり、シルクしかりである。

先日「カシミヤ100%」の表示があるからと言って高級品とは限らないということを書いた。
ニットの場合、原料をどれだけ使用したかによる重さが重要なのであって、10キロのカシミヤを使用したセーターは当然超高級品だし、10グラム程度のカシミヤしか使わなかったセーターは肉薄のペラペラであるから、比較的安い価格で売ることができる。

反対に合繊のアクリルだって一概に安物とは言えない。
高級アクリルというのもある。

綿も同じである。
とくに綿の場合は原産地によってさらにブランド化がなされている。
けれども厳密にいえば、どこの地域で栽培されたのかという部分だけが重要なのではない。
もちろん農作物であるから栽培地の気候や風土、土質などに出来上がりが大きく左右される。
だから「○○という地域は高級綿が出来やすい」という事実はあるが、○○地域で栽培された綿がすべて高級品にふさわしい品質かというとそうではない。

さて、デニム生地メーカー、クロキの安達康雅部長が、一頃話題となった「ジンバブエコットン」に疑義を呈しておられる。

http://ameblo.jp/yan17bo14/entry-11651374918.html

日本の紡績で使用する綿は、主にアメリカ、オーストラリア、ブラジルなどが主体になっております。稀に一部の紡績会社が、アフリカのジンバブエ綿を宣伝し、有名にしたが、ヨーロッパの高級ブランドなどには、そういったリップサービスでは販売できません。そんなん言われても、我々には関係ないもん!って言われます。

逆に就学児童を労働させているような国の綿などは一切購入しません!とか言われます。また、何処の綿!って謳って販売するより、アメリカやオーストラリアの綿を厳選して、日本の紡績技術を駆使し、安くて良い糸を作る方に注力すべきです。

綿の産地に拘っていたのは、一部の生地ブローカーが同業他社を蹴散らすための作戦だったのだと思います。ジンバブエ綿でもピンキリで、当時の糸価格から想像すると、一番良い綿で作られた糸でなかったと思います。生地を売るためのツールとして利用されたのだと思われます。

綿の品質は、グレードよりステープル(繊維の長さ)で決まります。

とのことである。

しかし、一般消費者が成分表示だけを見て、物の良し悪しを判断するのは仕方がない。
筆者だって安達部長だって専門外の食品については成分表示で良し悪しを判断するしかない。
「○○産地のサバ」なんて表示があったら「良んじゃないだろうか」と思ってしまう。

問題は業界関係者までもが物の良し悪しを成分表示でしか判断できなくなっているところにある。
筆者の経験上、有名SPAブランドのベテラン企画担当者や有名セレクトショップのベテランバイヤーまでもが「カシミヤって書いてあるから良品だよね」とか「○○コットンて書いてあるからだから高級品だよね」という判断を下すことが多い。

おいおい、それじゃあ、買い物に来たオバチャンたちと同じレベルじゃないの。

とそう心の中で突っ込んだことはしばしばある。

例えば、シルクだってそうだ。

シルク100%という表示があると高級品かと思うが、ときどき、ザラザラの表面感でまるで太番手のラミーやヘンプみたいな手触りのシルク製品がある。それでいて値段はそこそこに安い。
これは繊維長(ステープル)の短い安いシルクを使って生地を織っているのである。繊維長(ステープル)の長いシルクは高級品として扱われる。
安い原糸で織っているから生地も安いし、それを使った製品の価格も当然安くなる。

だから「シルク100%」の表示があってもこれは高級品でも良品でもない。価格相応の商品である。

一般消費者がこのシルク製品を「高級品」と思いこむのは仕方がないが、少なからぬ業界関係者までもがこれを「お値打ち品」だと思うことは問題だろう。

と、ここまで書いてきて業界全体が素人化しているのではないかと思えてきた。
それだからこそ、必然的に「日本のファッション業界はウソが多い」という先日の女性の指摘につながるのではないだろうか。

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