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南充浩 オフィシャルブログ

入門へのハードルを下げるべき

2013年8月21日 未分類 0

 先日、こんなブログを拝読した。書かれてあることはもっともで、呉服販売店は自ら顧客を減らしていると感じた。

素人と玄人の狭間
http://otokokimono.blogspot.jp/2013/08/blog-post_5.html

問題はその後入店してきた若い男性2人と店員のやり取りです。

2人もやはり「何を探しに来たの?」と訊かれ「着物を…」と答えました。
この瞬間、あ、彼らが探してるのは着物じゃなくて浴衣なんだろうな、と感じました。
2人は大学生くらいの風貌だったし、季節柄、入店のきっかけはお祭りや花火じゃないかと予想したのです。
自信のない言葉端からも”浴衣”を”着物”と勘違いしているのでしょう。案の定「今夜お祭りがあって、そこに着て行きたいので」と続けました。

すると店員は「え?今夜?それはちょっと…それにお祭りって、それ、浴衣でしょ?」とまくしたてます。
若者たちも「そう…かな?」と戸惑うところに再び店員は「予算はおいくら?」と強く訊き、気圧された若者は「1万円くらいで…」とさらに小さな声で答えました。

普通のお店では、まともな着物が1万円で、しかも(誂えたら)その日中には買えないってことを認識したのは、僕でもまだ最近ですから、浴衣と着物を同じものだと思っている間違い無く初心者の若者にとっては仕方ないと思いますけど、初めて着る嗜好衣料品に1万円というのは妥当な予算だったとも思います。

しかし店員は「それじゃ着物は無理ですね。浴衣でも、店の表にセールで出しるものくらいしかないです。そこで選んでくださいね」と言葉面からは伝わらないぶっきらぼうさで、僕の恐れていた対応を若い二人にぶつけたのです。
二人は店に入れもせず、すごすごと外に出て行きました。

中略

なぜなら、僕ら着物初心者が、着物という世界に踏み込むのにあたって最も怖いのが「金も知識もないくせに何しに来たの?」という嘲笑と卑下の扱いだから。

とのことである。

筆者はごくたまに着物関係者とお会いすることがあるが、業界は年々縮小し続けているとのことである。
客単価の低下、客数の減少のダブルパンチである。
しかし、すべてのお店ではないにしろ、入門者に対してお店がこのような扱いをしているなら、着物着用人口は増えないだろうし、そもそも着物を着用してみようという消費者も増えない。
依然として一般人にとって着物とは「敷居が高い」というイメージのままである。

筆者の知る範囲では着物人口を増やそうと意気込みを見せる熱い業界人も多いのだが、こういう古い体質のお店や業者が相当数存在するのであれば、新しい取り組みもなかなか実らない。

筆者が懇意にしていただいている着物業界関係者の中に、ひなやの伊豆藏直人社長がおられる。
以前、伊豆藏社長に新しい取り組みに積極的な業界関係者のセミナーに連れて行ってもらったことがあるのだが、その聴講の最中に、隣の席からボソっと「業界からは異端だと批判されるかもしれませんが、ぼくは新しく着物を着てみたいと思う人がいるなら、どんな着方でも良いと思うんですよね。それが例え左前であっても」とおっしゃったので、その自由な発想に驚いた。

着物はご存知のように、左側を上にして着用するのはご法度である。
しかし、筆者も含めて着物を着用しない人はその辺りの作法に関する知識があまりない。
業界関係者としては「基本くらい抑えておいてよね~」とつい思いがちだが、それでは新しい着物ファンは増えにくい。「どんな着方でも受け入れることで着用人口を増やそう。きちんとした着方は着慣れてくればできるようになる」というのが伊豆藏社長の考えだ。

この考えは非常に正しいと感じる。

どんなジャンルにもセオリーとか作法がある。
入門したかったら先にそれらを一通り身に付けろというのではなかなかファンは増えない。
まずは入門へのハードルを下げることがファン層の拡大につながりやすい。

これは着物に限ったことではないだろう。現在不振である業界すべてに通じることではないか。

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