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南充浩 オフィシャルブログ

「物」へのこだわりだけでは伝わらない

2013年6月7日 未分類 0

 「ザクとうふ」で一躍有名になった豆腐メーカーの相模屋食料が第3弾として「ビグ・ザムとうふ」を発売するというニュースが昨日、大々的に報道された。

“連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ!” 相模屋新商品はビグ・ザムとうふ
http://news.mynavi.jp/news/2013/06/06/151/index.html

ガンダム好きでない方は「なんのこっちゃ?」だと思われるが、ガンダム好きからすると「ザク、ズゴックの次がビグザムか。意表を突かれたな~」という驚きをもって迎え入れたいところだろう。

さて、このブログはガンダム話をする場ではないので控えなくてはならないのだが、販促的に見ると、この相模屋食料の手法はかなり効果的だといえる。

一連のガンダムとうふシリーズは社長の鳥越淳司氏が広告塔として露出している点が販促手法として優れていると感じる。
広告塔は別に社長である必要はなく、副社長でも広報担当でも営業部長でもかまわない。
しかし、組織としてのイメージしか見えない企業よりも、個人的な顔が思い浮かぶ企業の方が現在は支持されやすい。それが実態とかけ離れていてもだ。

90年代後半~2000年代前半に隆盛を極めた総合アパレル各社はどうだろうか?
実態は別にして、近年その存在感は薄い。
新ブランド開始くらいは報道されるが、その後は続かない。業界の内外で話題に上ることもない。
経営的に安定しているのはオンワードHDくらいではないのか。

売上高が3000数百億円規模の某総合アパレルはたしかに企業規模は維持している。
多額の長期有利子負債に苦しんでいる側面はあるものの、新ブランドも頻繁に発表している。
しかし、それらが持続的に報道されることは極めて稀だし、いつの間にやらブランドが無くなっていることも珍しくない。
それについては様々な要因はあると思うが、その企業の「顔」となる人物がいないことも大きな要因ではないかと感じる。

一方、相模屋食料のように「パロディー」を利用し、個人の「顔」を前面に押し出した販促を展開し、話題となっているのが昨日も紹介した糸商社の丸安毛糸とレディースニットブランド「フラムクリップ」を展開するピーアイである。企業規模は大手総合アパレルとは比べるべくもないが存在感が増している。
なにせ、あのお固い繊研新聞の新年号の1面トップを飾ったこともあるくらいだ。

両社の直近の展示会案内を見てみよう。
まず、フラムクリップ。

2013top_ryg2

はい。明らかに犬HKの某番組のパロディーです(笑)

次は丸安毛糸。

2014SSCBDCBCD2C5B8

これは「柔らか銀行」のパロディーですね(笑)

一見すると「ふざけている」ようだが、その実「ふざけながら」毎回の展示会案内を企画しているのである。
これらに対して「けしからん!!」と思うか、「面白いね」と思うかは個人の自由だが、原料関係・アパレル関係の販促手法としてはこれまでの業界で類を見ないものといえるだろう。

そういえば豆腐といえば、ザクとうふが話題となるまでは「男前豆腐」の人気が高かった。
個人的な感想では「男前豆腐」も若干のパロディーっぽさはあるものの、食材と製法にこだわった職人的気質を売りにしていたように感じる。
しかし、現在はそういう職人的気質を打ち出した販促というものに対して、消費者は飽きが来ているのではないかと感じる。

これは豆腐だけのことではない。衣料品も同じではないか。

職人的気質を打ち出しがちなアイテムとしてジーンズやスエットなどがある。

「○番手の糸を云々カンヌンして、染めにナンタラ染料を使って、ナンタラという編み機や織り機でどうのこうのしながら生地を作って、最後にあーだこーだといわくのある洗い加工を施しました」。

というのがありがちな打ち出しである。
しかしこの手の打ち出しが受けたのは90年代後半のビンテージジーンズブームまでだろう。
現在の業界にはあまりにも「こだわりの商品」が溢れている。猫も杓子もこだわっている。
こだわりだけでは最早打ちだしは不可能だと考えている。

そこにプラスアルファが必要で、それが個人の顔ではないかと思う。

一連のガンダムとうふシリーズも打ちだしの奇抜さと社長の顔だけではなく、それなりに製造や材料にもポイントがある。まあ、食品のことは詳しくないので実状はどうだかしらないが、紙面で読む分には「物」としてのポイントも見えやすい。

今回の「ビグ・ザムとうふ」は胴体部分は緑がかったアボカド風味だという。また主原料となる大豆には「劇中で大規模な戦闘が展開された「オデッサ」周辺の大豆をごく微量(0.1%以上)使用しており、ビグ・ザムを前線に押し出した地球進行作戦も想定」している。

こういう販促手法は衣料品業界・繊維業界も大いに参考になるのではないだろうか。

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