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南充浩 オフィシャルブログ

需要を増やす取り組みが先決では?

2013年5月16日 未分類 0

 先日、こんな記事が流れていた。

西陣織出荷額ピークの1割に
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20130509/4421671.html

「西陣織工業組合」は京都府や京都市と一緒に3年に1度、出荷額の調査を行っていて、このほど、おととし1年間の結果がまとまりました。
それによりますと、出荷額は、▼帯地が148億500万円、▼自動車のシートなど室内の装飾品が144億9500万円、それに▼金襴が36億1200万円などと、ほとんどの製品で前回の平成20年よりも20%から60%減っていて、総出荷額は、354億6800万円でした。
これは、前回よりも225億3600万円減っていて、ピークだった平成2年のわずか13%で、400億円を下回るのは統計を取り始めた昭和50年以来初めてです。また、業者の数も369社と、初めて400社を下回り、従業員の数も3126人とピーク時の14%にまで落ち込みました。

とのことである。

理由は日本人全体の着物離れであろう。
要するに需要が激減しているのだろう。

まず、「ちゃんとした」着物は価格が高い。
製造工程から考えると決して高くはないと言われるが、それでも既成の洋装に慣れた現在の日本人からすると高いとしか感じられない。
「10万円で安物、50万円や100万円で普通」という感覚は、一般消費者とは大きくズレているのではないか。

次に現代の日常生活に適していない。
「ちゃんとした」着物を着ると自転車にも乗れない。

このニュースに対して、和装業界では革新的と見なされている製造業の方が
「織り手をもっと育成しなくてはなりませんね」と意見を述べられていた。

その意図には賛成するものの、筆者には順番が逆ではないかと感じられてならない。

というのは、需要を増やさなくては製造業者は儲からない。
儲からない業種に新規参入しようと考える人は少ない。
洋装向けの国内生地メーカーだってどんどん倒産・廃業しているご時世であり、新しくわざわざ国内で生地メーカーを起業しようなどという人はよほどの物好きしかいない。

洋装以下の需要しかない和装業界で新たに「生地織りをしたい」と業界に飛び込む日本人はそうそういないだろう。

筆者は先ほどの記事を見て、「新しい需要を作る取り組みが求められているのではないか?」と考えた。

低価格(ファストファッションほど安くする必要はない)で、着こなしが難しくなく、現代の日常生活にも適応できるような新しい「着物」という商品を作りだす必要があるのではないかと思う。
それによって着用人口を増やし、着物の売上高を増やすことで、生地の需要を増やす。
そうすることで初めて織り手が多数必要となり、新たに育成することが求められるのではないだろうか。

今回の件で、何も和装業界の人を非難したいのではない。

洋装向けの国内生地メーカーにも同じような考え方をされる方は多い。
「生地産地が疲弊している」と報道されればすぐさま「若い織り手を育成する必要がある」と反応される。

けれども需要が少なくて斜陽になっている産業にわざわざ飛び込もうという人はそれほど多くはない。
国内生地メーカーの業績を上向かせる方が先決ではないのかと思う。

「斜陽だから需要を増やそう」というよりは「斜陽だから作り手をさらに増やそう」と考えるのが洋装・和装を問わず製造業者に共通する認識のようだ。
その辺りが多くの製造業者が苦境に追い込まれている原因ではないかと感じられてならない。

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